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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L |
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管理番号 | 1102642 |
審判番号 | 不服2002-14985 |
総通号数 | 58 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1994-10-18 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-08-08 |
確定日 | 2004-09-09 |
事件の表示 | 平成5年特許願第73282号「薄膜形成装置」拒絶査定不服審判事件〔平成6年10月18日出願公開、特開平6-291049〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成5年3月31日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成16年5月10日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 「半導体ウェハなどの基板表面上に、二極放電形プラズマCVD法により加熱状態下にて薄膜を形成させる装置であって、上記基板の加熱手段が、焼結助剤を含まず、陽イオン不純物が0.1重量%以下であって、平均結晶粒径5〜50μmの高純度窒化アルミニウム質セラミックスからなることを特徴とする薄膜形成装置。」(以下、「本願発明」という。) 2.当審の拒絶理由 一方、当審において平成16年3月3日付けで通知した拒絶の理由の概要は、本願発明は、本願の出願前に頒布された特開昭63-140085号公報(以下「引用例1」という。)、特開平3-279264号公報(以下「引用例2」という。)、特開昭63-85055号公報(以下「引用例3」という。)に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。 3.引用例 そして、上記各引用例には、以下の事項が記載されている。 (1)引用例1 (1a)「(1)半導体ウェハー、単結晶サファイアなどの板状体を載置し、該板状体表面に膜を被着する装置であって、上記板状体を載置する台座が20W/m・k以上の熱伝導係数をもったセラミック材から成ることを特徴とする成膜装置。 (2)上記セラミック材がアルミナ、炭化珪素系焼結体、窒化アルミ焼結体である特許請求の範囲第1項記載の成膜装置。」(特許請求の範囲) (1b)「このうち、例えば第1図には成膜装置としてのプラズマCVD装置の概略図を示すが、これにおいてチャンバーC中にアルゴン、酸素、窒素、アンモニア等のキャリアガスの導入のもとに、放電電極Eと基板電極Sとの間に高周波電圧を印加してプラズマ放電を発生せしめるが、このうち基板電極Sは例えば480〜500℃(成膜材料などによって異なる)にヒータHでもって加熱してあり、この基板電極S上に載置台Dをセットし、この載置台D上に膜を形成する板状体Pを設置した後、該板状体を上記温度に加熱状態のもとに揮発性の金属化合物を送り込み板状体Pの表面での化学反応によって結晶質又は非結晶質を析出させ板状体表面に薄膜を形成している。」(第1頁右欄第4-17行) (1c)「第3図は熱伝導率180〜250W/m・kの窒化アルミニウムで載置台1を構成したもの」(第2頁左下欄第9-10行) (1d)「本発明成膜装置によれば熱伝導にすぐれ、熱膨張係数が小さく、かつ耐蝕、耐熱性をもったセラミック材製の載置台で構成したことから、膜厚が均一で、歪のないすぐれた物性をもった薄膜を備えた半導体素子等を提供することができる。」(第2頁右下欄第19行-第3頁左上欄第4行) (2)引用例2 (2a)「窒化アルミニウム粉末を成形し、助剤を添加しないで焼結した焼結体を、還元雰囲気中の減圧下を含む雰囲気圧下で焼成し、窒化アルミニウム結晶粒中の酸素量を低減することを特徴とした高熱伝導性窒化アルミニウム焼結体の製造方法。」(特許請求の範囲) (2b)「窒化アルミニウム(AlN)は高温で強度低下が少なく、化学的耐性にも優れているため、耐熱材料として用いられる一方、熱伝導性が優れ、熱膨張率がSiと近い等を利用して半導体装置の放熱板材料、回路基板用絶縁材料としても有望視されている。」(第1頁左欄第18行-右欄第4行) (2c)「この事実に基づいて検討した結果が本発明であり、・・・助剤を添加しないで焼結した焼結体(この焼結体は、酸素含有量が2重量%以下でかつFe、Si等の金属不純物が0.1重量%以下であることが望ましい。)」(第2頁左下欄第7-13行) (2d)「以上説明したように本発明によれば、無添加で高熱伝導性の窒化アルミニウム焼結体を生成することができる。この方法によれば高純度かつ高強度で、高温でも変形しにくい焼結体が得られる。 粒界相の存在がないため焼結体の色ムラがなく、」(第2頁右下欄第16-20行) (2e)第1表の焼結体特性の粒径及び熱伝導率の欄には、実施例1:15μm、220W/m・K、実施例2:10μm、190W/m・K、実施例3:18μm、215W/m・K、実施例4:30μm、180W/m・K、実施例5:19μm、185W/m・K、実施例6:20μm、215W/m・K、実施例7:12μm、200W/m・Kである助剤を添加しないで焼結したAlN焼結体が記載されている。 (3)引用例3 (3a)「アルミニウムを除く金属の総量が1000ppm以下であり、相対密度が98%以上であることを特徴とする高密度窒化アルミニウム常圧焼結体。」(特許請求の範囲第1項) (3b)「AlNは周期律表のIII族に属するAlとV族に属するNとの化合物であり、その焼結体が高強度、高熱伝導率を備えるという特徴を利用してGaAsなどのIII-V族化合物半導体の製造装置用部品をこのAlN焼結体でつくることが望まれている。」(第1頁右欄第3-8行) (3c)「こうした焼結助剤は一般に高温における蒸気圧が比較的高く、・・・かかるAlN常圧焼結体製としても、得られるIII-V族化合物半導体単結晶は充分な物性を備えるものではなかった。」(第2頁左上欄第13行-右上欄第1行) (3d)「AlN常圧焼結体を得るにあたって常用されているアルカリ土類元素や希土類元素の化合物といった焼結助剤は本発明焼結体製造にあたっては一切配合しない。」(第3頁右上欄第11-14行) (3e)「本発明によれば、従来技術によっては得られなかった高密度にして、かつ、高純度のAlN常圧焼結体が得らる。このAlN常圧焼結体は焼結助剤を含んでなく、しかも焼結助剤以外にも金属不純物はきわめて少量しか含んでいない高純度品であるため、微量金属不純物による汚染を嫌う用途にはきわめて好適である。・・・本発明焼結体は、半導体・・・の製造装置部品用として好適である。」(第5頁左上欄第17行-右上欄第8行) (3f)「さらに本発明焼結体は焼結剤を含有していないため長期間使用中にも焼結助剤が析出・浸潤・揮散するようなことがなく、」(第5頁右上欄第18-20行) 3.対比・判断 摘記事項(1a)には、「半導体ウェハー、単結晶サファイアなどの板状体を載置し、該板状体表面に膜を被着する装置であって、上記板状体を載置する台座が20W/m・k以上の熱伝導係数をもったセラミック材から成ることを特徴とする成膜装置。」及びそのセラミック材として窒化アルミ焼結体が例示されており、摘記事項(1c)には、「熱伝導率180〜250W/m・kの窒化アルミニウムで載置台」が形成されていることが示されている。 また、摘記事項(1b)には、「第1図には、成膜装置としてのプラズマCVD装置の概略図を示す」として、「放電電極Eと基板電極Sとの間に高周波電圧を印加してプラズマ放電を発生せしめる」「基板電極Sは・・・ヒータHでもって加熱してあり、この基板電極S上に載置台Dをセットし、この載置台D上に膜を形成する板状体Pを設置した後、該板状体を上記温度に加熱状態のもとに・・・板状体表面に薄膜を形成している」ことが示されており、放電電極Eと基板電極Sとの間にプラズマ放電を形成する、二極放電形プラズマCVD法により加熱状態下にて薄膜を形成させる装置が示されているといえるので、これらの事項を総合すると、引用例1には、「半導体ウェハー、単結晶サファイアなどの板状体表面に、二極放電形プラズマCVD法により加熱状態下にて薄膜を形成させる装置であって、上記板状体を載置する台座が窒化アルミニウムセラミック材から成る成膜装置。」の発明(以下、「引用例1の発明」という。)が記載されている。 そして、本願発明と引用例1の発明とを対比すると、本願発明の基板の「加熱手段」とは、基板へ熱を伝導させて加熱する構成である基板の「支持部材(サセプタ)」を少なくとも概念として含んでおり、引用例1の発明における「載置する台座」は、本願発明における基板の「加熱手段」に相当している。 また、引用例1の発明の「半導体ウェハー、単結晶サファイアなどの板状体」「窒化アルミニウムセラミックス材」「成膜装置」は、それぞれ本願発明の「半導体ウェハなどの基板」「窒化アルミニウム質セラミックス」「薄膜形成装置」に相当するので、両者は、「半導体ウェハなどの基板表面上に、二極放電形プラズマCVD法により加熱状態下にて薄膜を形成させる装置であって、上記基板の加熱手段が窒化アルミニウム質セラミックスからなる薄膜形成装置」の点で一致し、本願発明の窒化アルミニウム質セラミックスが、焼結助剤を含まず、陽イオン不純物が0.1重量%以下の高純度であって、平均結晶粒径5〜50μmであるのに対して、引用例1の発明がそのような記載のない点で相違する。 上記相違点について検討する。 摘記事項(2c)における「Fe、Si等の金属不純物が0.1重量%以下」とは、「鉄やシリコンなどの陽イオン不純物が0.1重量%以下」であることを示しており、摘記事項(2e)には、平均結晶粒径10〜30μmのものが示されているといえるので、摘記事項(2a)〜(2e)全体からみて引用例2には、「焼結助剤を含まず、陽イオン不純物が0.1重量%以下の高純度であって、平均結晶粒径10〜30μmである高強度、高熱伝導率の窒化アルミニウム焼結体」が記載されているといえる。 また、引用例3には、摘記事項(3a)の「アルミニウムを除く金属の総量が1000ppm以下であり、」との記載、及び摘記事項(3e)の「このAlN常圧焼結体は焼結助剤を含んでなく、しかも焼結助剤以外にも金属不純物はきわめて少量しか含んでいない高純度品であるため、微量金属不純物による汚染を嫌う用途にはきわめて好適である。・・・本発明焼結体は、半導体・・・の製造装置部品用として好適である。」との記載により、窒化アルミニウム焼結体は、「焼結助剤を含まず、アルミニウムを除く金属の総量が1000ppm以下」の高純度であれば、微量金属不純物による汚染を嫌う半導体の製造装置部品用として好適に使用できることが示唆されているし、一方、引用例1の発明における、半導体ウェハーを載置する台座の窒化アルミニウムセラミック材は、微量金属不純物による汚染を嫌う半導体の製造装置部品の一つであることが明らかである。 してみると、引用例1の発明における窒化アルミニウムセラミック材として、引用例2に記載された、焼結助剤を含まず、陽イオン不純物が0.1重量%以下の高純度である高強度、高熱伝導率の窒化アルミニウム焼結体をその平均結晶粒径を含めて採用することは、当業者が容易に想到し得ることである。 そして、本願発明の効果も引用例1-3の記載から予測できるもので、顕著でない。 よって、本願発明は、引用例1-3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明することができたものである。 4.むすび 以上のとおりであるから、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-07-06 |
結審通知日 | 2004-07-13 |
審決日 | 2004-07-29 |
出願番号 | 特願平5-73282 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H01L)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 加藤 浩一 |
特許庁審判長 |
城所 宏 |
特許庁審判官 |
市川 裕司 瀬良 聡機 |
発明の名称 | 薄膜形成装置 |