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審決分類 |
審判 全部申し立て 判示事項別分類コード:354 H01L 審判 全部申し立て 特17条の2、3項新規事項追加の補正 H01L 審判 全部申し立て 判示事項別分類コード:351 H01L 審判 全部申し立て 2項進歩性 H01L |
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管理番号 | 1102800 |
異議申立番号 | 異議2001-73071 |
総通号数 | 58 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1994-10-18 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2001-11-14 |
確定日 | 2004-06-23 |
異議申立件数 | 2 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3164956号「CVDにより大面積のガラス基板上に高堆積速度でアモルファスシリコン薄膜を堆積する方法」の請求項1ないし9に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3164956号の請求項1ないし8に係る特許を維持する。 |
理由 |
I.手続の経緯 本件特許第3164956号の発明についての出願は、平成6年1月28日(パリ条約による優先権主張、平成5年1月28日、米国)の出願であって、平成13年3月2日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、平井貞雄及び松原いづみより特許異議の申立がなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成15年7月14日に異議意見書が提出され、さらに取消理由が通知され、その指定期間内である平成16年3月11日に訂正請求がなされたものである。 II.訂正の適否について 1.訂正の内容 (1)訂正事項a 訂正前の請求項1中の「アモルファスシリコン膜を堆積する」を「アモルファスシリコン膜をガラス基板とガラス基板の上方に載置されたガスマニホールドの間の間隔を調整する機能を用いて堆積する」と、又「堆積速度が、毎分300〜3000オングストロームの範囲で得られるように、ガスマニホールドと基板の間隔を維持する」を「堆積速度が、毎分500〜3000オングストロームの範囲で得られるように、ガスマニホールドと前記ガラス基板の間隔を調整する」と訂正する。 (2)訂正事項b 訂正前の請求項1中の「被処理基板」を「被処理ガラス基板」と、同「b)基板」を「b)前記ガラス基板」と、同「c)前記基板」を「c)前記ガラス基板」と訂正し、又訂正前の請求項2、7中の「前記基板」を訂正後の請求項2、6中の「前記ガラス基板」と訂正する。更に訂正前の請求項2における「請求項1に記載の方法。」を「請求項1に記載の堆積方法。」と訂正する。 なお、上記「請求項1に記載の堆積方法。」と訂正する点は、訂正請求書の「(3)訂正の要旨」欄にはないが、添付された全文訂正明細書において訂正されているので訂正事項として認定した。 (3)訂正事項c 請求項5を削除するとともに、訂正前の請求項6〜9を1つづつ繰り上げて、請求項5〜8とし、訂正後の請求項6、7の従属請求項をそれぞれ請求項5、6と訂正する。 2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の有無の存否 (1)訂正事項aにおいて、アモルファスシリコン膜を、「ガラス基板とガラス基板の上方に載置されたガスマニホールドの間の間隔を調整する機能を用いて」堆積した点は、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当し、この点は特許明細書の段落【0016】に記載され、またガスマニホールドとガラス基板の「間隔を調整」した点は、上記の点との整合を図ったものであり、明りょうでない記載の釈明に該当し、さらに堆積速度を「毎分500〜3000オングストロームの範囲」にした点は、特許請求の範囲の減縮に該当し、この点は特許明細書の段落【0026】に記載されている。 (2)訂正事項bにおいて、「基板」を「ガラス基板」とした点は、特許請求の範囲の減縮に該当し、この点は特許明細書の段落【0012】等に記載されている。 (3)訂正事項cにおいて、請求項5を削除した点は、特許請求の範囲の減縮に該当し、また訂正前の請求項6〜9を請求項5〜8に繰り上げ、訂正後の請求項6、7の従属請求項をそれぞれ請求項5、6と訂正した点は、明りょうでない記載の釈明に該当する。 そして、訂正事項a〜cは、いずれも願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであり、また実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 3.むすび 以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 III.異議申立について 1.異議申立の概要 (1)申立人平井貞雄の場合 申立人は、証拠として下記の甲第1〜6号証を提出して、訂正前の請求項1〜9に係る発明は、甲第1号証に記載された発明であるか、または甲第1〜6号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1〜9に係る発明の特許は、特許法第29条第1項または第2項の規定に違反してされたものであり、並びに本件請求項1〜9に係る発明の特許は、明細書に記載不備があり、同法第36条第4、5項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであるから、これを取り消すべき旨主張している。 甲第1号証:特開昭63-223178号公報 甲第2号証:「’93 最新液晶プロセス技術」 平成4年10月1日 株式会社プレスジャーナル発行、41頁 甲第3号証:「電子技術総合研究所彙報第51巻第5、6号」 昭和62 年6月20日株式会社オーム社発行、370〜377頁 甲第4号証:特開平3-149525号公報 甲第5号証:平成11年8月9日提出の意見書 甲第6号証:平成10年9月29日提出の意見書 (2)申立人松原いづみの場合 申立人は、証拠として下記の甲第1〜9号証を提出して、訂正前の請求項1〜9に係る発明は、甲第1〜9号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件請求項1〜9に係る発明の特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、並びに本件請求項1〜9に係る発明の特許は、明細書に記載不備があり、同法第36条第4、5項に規定する要件を満たしていない特許出願に対してされたものであり、また特許明細書に記載した事項には、願書に最初に添付した明細書または図面に記載した事項の範囲内ではないものがあるから、本件請求項1〜9に係る発明の特許は、同法第17条の2第2項に規定する要件を満たしていない補正をした特許出願に対してされたものであり、これを取り消すべき旨主張している。 甲第1号証:特開平2-25074号公報 甲第2号証:特開昭56-105627号公報 甲第3号証:特開平2-184082号公報 甲第4号証:特開平1-139771号公報 甲第5号証:特開平2-7420号公報 甲第6号証:特開平2-14568号公報 甲第7号証:特開平4-367221号公報 甲第8号証:特開平2-49470号公報 甲第9号証:特開平3-149525号公報 2.本件発明 上記のとおり訂正は認められるから、本件特許の請求項1〜8に係る発明(以下、「本件発明1」〜「本件発明8」という。)は、訂正明細書に記載された、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 薄膜トランジスタのためアモルファスシリコン膜をガラス基板とガラス基板の上方に載置されたガスマニホールドの間の間隔を調整する機能を用いて堆積するプラズマ化学気相堆積の方法であって、 a)その内部で基板支持体上に被処理ガラス基板が載置される真空チャンバを与え、該真空チャンバ内の圧力を0.5〜1.5トールに維持し、 b)前記ガラス基板を270〜350℃に維持し、 c)前記ガラス基板の上方に載置されるガスマニホールドから、モノシランガスと水素ガスを、チャンバ内に通過させ、 d)堆積速度が、毎分500〜3000オングストロームの範囲で得られるように、ガスマニホールドと前記ガラス基板の間隔を調整するプラズマ化学気相堆積方法。 【請求項2】 前記c)の前に、前記ガラス基板の表面が水素プラズマに曝露される請求項1に記載の堆積方法。 【請求項3】 前記c)の前に、約500オングストローム/分よりも低い堆積速度で、アモルファスシリコンの第1の層が堆積される請求項1に記載の方法。 【請求項4】 前記アモルファスシリコンの第1の層の厚さが、約500オングストローム以下である請求項3に記載の方法。 【請求項5】 前記ガラス基板上にパターン化されたゲート層を有する請求項1に記載の方法。 【請求項6】 前記ガラス基板が、前記パターン化ゲート層の上にゲート絶縁層を有する請求項5に記載の方法。 【請求項7】 前記ゲート絶縁層がシリコン窒化物である請求項6に記載の方法。 【請求項8】 n+ドープアモルファスシリコンの薄い層が、該アモルファスシリコン膜の上に堆積される請求項1に記載の堆積方法。」 3.当審が平成15年9月2日付で通知した取消理由において引用された各刊行物の記載事項 (1)刊行物1:(特開平2-25074号公報、申立人松原いづみの甲第1号証) 刊行物1には、薄膜トランジスタ及び薄膜トランジスタの製造方法に関し、次の事項が記載されている。 「第2図は、・・・従来の薄膜トランジスタを示す断面図であり、図において、(1)は例えばガラス等の絶縁性基板、(2)はゲート電極、(3a)、(3b)はゲート絶縁膜、(4)はシリコン系半導体層で、例えばアモルファスシリコン層、・・・である。」(1頁右下欄15行〜2頁左上欄3行)、 「第1図はこの発明の一実施例による半導体レーザを示す断面図であり、(3b)は絶縁層、(4a)は絶縁層(3b)上に形成された第1のシリコン系半導体層、(4b)は第1の半導体層(4a)上に形成された第2のシリコン系半導体層である。この実施例においては通常の化学気相成膜法により真空中で絶縁層(3b)上に第1の半導体層(4a)を形成した後、真空を破ることなく第2の半導体層(4b)を形成している。導入するガスはシランガス(SiH4)と水素ガス(H2)の混合ガスを用いている。半導体層の形成条件は、・・・反応ガス圧130pa、基板温度250℃である。高周波電力値は、第1の半導体層(4a)形成時の値を第2の半導体層(4b)形成時の値の1/3としている。第1の半導体層(4a)形成時の高周波電力値の方が、第2の半導体層(4b)形成時の高周波電力値よりも小さいという特徴のため、第3図、第4図より明らかなように、第1の半導体層(4a)は、第2の半導体層(4b)に比較して成膜速度は低いが、絶縁層(3b)と良好な界面を形成し、高い電界効果移動度を有する。一方、半導体層全体を第1の半導体層形成時の条件で製造する場合よりも大幅に成膜速度を短縮できる。」(3頁左上欄6行〜右上欄8行)、 その実際の値について、「この実施例での実際の値は次の通りである。第1の半導体層(4a)のみで、半導体層を3000Å形成した場合の・・・成膜時間は1時間であった。第2の半導体層(4b)のみで半導体層を3000Å形成した場合の・・・成膜時間は9分であった。第1の半導体層(4a)を200Å形成した後に第2の半導体層(4b)を2800Å形成した場合の・・・成膜時間は12分20秒であった。」(3頁左下欄1〜11行) (2)刊行物2:(特開平1-139771号公報、同申立人の甲第4号証) 刊行物2には、窒化珪素、酸化珪素及びオキシ窒化珪素のような物質のプラズマ促進された化学的蒸着に関し、第1図には、化学的蒸着に使用されるガス入口マニホールド11を含む平行プレートCVD(化学的蒸着)反応器10が示され、その反応器10の記載によれば、サスセプター12及びサスセプターの上面上に支持されるウエハーの上方に載置されるガス入口マニホールドフェースプレート30から、ガスをチャンバ内に通過させ、反応器10に幅広い加工能力を与えるようにマニホールドフェースプレート30とサスセプター12上に支持されたウエハー14との間の間隔を狭く維持することが認められる。 また、該ガス入口マニホールドフェースプレート30の他のCVD反応器への適用について、「第1図に示したガス入口マニホールド11及びフェースプレート30の使用により、上述の平行プレート反応器10加工能力は増大され、また一般に他のCVD反応器及び特に他の平行プレート反応器の加工能力が増大されるであろう。」(4頁右下欄18行〜5頁左上欄3行)と記載されている。 (3)刊行物3:(特開平2-7420号公報、同申立人の甲第5号証) 刊行物3には、被水素化処理部とアモルファスシリコン部が設けられた半導体装置の製造方法に関し、第1図、第2図、及び関連記載によれば、基板上に設けられた電極9aの表面を水素プラズマ処理した後、その表面にプラズマCVD法によりアモルファスシリコン部10を形成することが示されている。 (4)刊行物4:(特開平2-49470号公報、同申立人の甲第8号証) 刊行物4には、薄膜トランジスタの製造方法に関し、次の事項が記載されている。 「第3図(a)に見られるように、ガラス基板のような透明絶縁性のTFT基板P上に、Ti膜をスパッタ法により約70nmの厚さに成膜した後、これをパターニングしてゲート電極Gを形成する。次いで、反応槽内に上記TFT基板Pを入れ、シランとアンモニアを原料ガスとするP-CVD法により、同図(b)に見られる如く、SiN:H膜1を約300nmの厚さに形成する。・・・更に同図(c)に示すように、動作半導体層であるa-Si:H層3をシランガスを用いて形成し、保護膜であるSiO2膜4をシランガスと亜酸化窒素(N2O)ガスを用いて形成する。次に同図(d)に示す如く、上記SiO2膜4上にポジ型のレジスト膜・・・を塗布し、これをTFT基板Pの背面から露光して、ゲート電極Gに位置整合したレジスト膜を形成し、これをマスクとして上記SiO2膜4の露出部を除去し、次いで、n+a-Si:H層5とその上にTi膜6を形成した後、リフトオフ法により上記n+a-Si:H層5とTi膜6の不要部を除去して、ソース電極Sとドレイン電極Dを形成し、本実施例による逆スタガード型のTFTが完成する。」(3頁左上欄10行〜右上欄15行)、 該記載におけるSiN:H膜1の作用について、「ゲート絶縁膜であるSiN:H膜1」(2頁右下欄2行)と記載され、また、a-Si:H層3の形成手段について、「シランを原料とするP-CVD法による動作半導体層であるa-Si:H層3の形成」(2頁右下欄5〜7行)と記載されている。 (5)刊行物5:(特開平3-149525号公報、同申立人の甲第9号証) 刊行物5には、アモルファスシリコン薄膜トランジスタ用の絶縁構造に関し、次の事項が記載されている。 「本発明によれば、改良した多重層ゲート絶縁/誘電体構造を有するFETを形成するには、まず、好ましくはスパッタリングによって基板34′上にゲート金属層24′(第5図)を堆積する。この基板は好ましくはガラスパネル34′aの上に酸化シリコン等のような光透過絶縁材から成る層34′bを堆積したものである。ゲート金属層24′はパターン形成されエッチングされて、ゲート電極、走査線および・・・冗長なゲート金属部を形成する。」(8頁右下欄14行〜9頁左上欄3行)、 その多重層ゲート絶縁/誘電体構造の材料について、「約1000-3000オングストロームの厚さを有するSiNの第1の層54は好ましくはPECVD法によってゲート金属層24′上に堆積される。」(9頁左上欄20行〜右上欄3行)及び「約200オングストローム以下の厚さを有する第2の薄いSiN層56が第1のSiN層の上に(好ましくはPECVD法によって)堆積される。」(9頁右上欄9〜12行)と記載されている。 アモルファスシリコン薄膜について、「第5図を再び参照すると、半導体材料、好ましくはアモルファスシリコン(a-Si)の層38′がPECVDによってSiN層56上に堆積され、半導体材料、好ましくはN+導電率を有するようにドープ処理されたa-Siから成る第2の層40′が第1のa-Si層38′上に堆積される。」(10頁左上欄14〜19行)と記載されている。 4.当審の判断 4-1.特許法第29条第2項違反について (1)本件発明1について 上記「(1)刊行物1」の記載をまとめると、刊行物1には、「薄膜トランジスタの製造するための、絶縁性基板上に第2の半導体膜を堆積する通常の化学気相成膜法であって、反応ガス圧130pa(0.975トール)、基板温度250℃として、モノシランガスと水素ガスを用いることにより、第2の半導体膜を堆積し、第2の半導体膜の堆積速度が9分で3000Åとなるようにした化学気相成膜法」が記載されている。 そこで、本件発明1と刊行物1に記載の発明とを対比すると、刊行物1に記載の「第2の半導体膜」は、本件発明1の「アモルファスシリコン膜」に相当する。また刊行物1の従来技術には、薄膜トランジスタを形成する基板として「ガラス基板」が記載され、上記の「絶縁性基板」には「ガラス基板」が含まれることは明らかであるから、この「絶縁性基板」は本件発明1の「ガラス基板」に相当する。また刊行物1に記載の「通常の化学気相成膜法」としてプラズマ化学気相成膜法は周知の手段であるから、この「通常の化学気相成膜法」は本件発明1の「プラズマ化学気相堆積」に相当する。さらに刊行物1に記載の化学気相成膜法は、真空下で行っている以上、真空チャンバ内の基板支持体上に基板を載置した状態で実施していることは当然のことである。 そうすると、両者は、「薄膜トランジスタのためアモルファスシリコン膜を堆積するプラズマ化学気相堆積の方法であって、その内部で基板支持体上に被処理ガラス基板が載置される真空チャンバを与え、該真空チャンバ内の圧力を0.5〜1.5トールの内の0.975トールに維持し、モノシランガスと水素ガスを、チャンバ内に通過させた、プラズマ化学気相堆積方法」の点で一致するものの、次の点で相違する。 相違点a:基板温度について、本件発明1は270℃〜350℃であるのに対し、刊行物1に記載の方法は250℃である点。 相違点b:基板とガスマニホールドの間隔の調整について、本件発明1は、ガラス基板とガラス基板の上方に載置されたガスマニホールドの間の間隔を調整する機能を用いて堆積しているのに対し、刊行物1に記載の方法はガスマニホールドを用いて堆積することが不明である点。 相違点c:成膜ガスについて、本件発明1は、ガラス基板の上方に載置されるガスマニホールドからモノシランガスと水素ガスをチャンバ内に通過させているのに対し、刊行物1に記載のモノシランガスと水素ガスは、そのような方法でチャンバ内を通過させていることが不明である点。 相違点d:堆積速度について、本件発明1は堆積速度が毎分500〜3000オングストロームの範囲であるのに対し、刊行物1に記載の第2の半導体層の堆積速度は、9分間で3000Å、すなわち毎分333Åで形成している点。 そこで上記相違点について次に検討する。 相違点a、b、dについて 刊行物2には、ガスマニホールドを用いたプラズマ化学気相堆積法により基板上に窒化珪素を堆積する場合において、マニホールドフェースプレートとウエハーとの間の可変の狭い間隔、並びに高圧力可能性、広い圧力範囲などを全て結合して、反応器に幅広い加工能力を与えることが記載され、マニホールドと基板との間の間隔の調整、反応器内の高圧力などにより、堆積速度能力を増すことが示唆されているものの、刊行物2に記載のプラズマ化学気相堆積法は基板上に窒化珪素を堆積するものであって、本件発明1のように、薄膜トランジスタのためのアモルファスシリコン膜をガラス基板に堆積するプラズマ化学気相堆積法ではない。 そうすると、刊行物1に記載の薄膜トランジスタのためアモルファスシリコン膜を堆積するプラズマ化学気相堆積法において、刊行物2に記載のガスマニホールドを用いたプラズマ化学気相堆積法を適用する場合に、マニホールドと基板との間の間隔の調整、反応器内の高圧力などにより、堆積速度能力を増す方法を、そのまま刊行物1に記載のプラズマ気相堆積法に採用することはできないし、ましてや本件発明1のように、真空チャンバ内の圧力を0.5〜1.5トールに維持し、ガラス基板を270〜350℃に維持した上で、さらに堆積速度が、毎分500〜3000オングストロームの範囲で得られるように、ガスマニホールドと前記ガラス基板の間隔を調整することを容易に想到することはできない。 そして、本件発明1は、堆積速度が、シランガスの高速流を伴い、かつ圧力、RF電力、ガス流速、電極間隔、及び基板温度を含む処理パラメータを最大限最適化することにより達成されるとともに、温度と圧力及び可変間隔を有するCVD反応装置により、従来の方法と反応装置の堆積速度に対して、堆積速度で1桁の改善が生じるという明細書に記載の顕著な効果を奏するものである。 したがって、相違点cについては検討するまでもなく、本件発明1は、刊行物1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることはできない。 (2)本件発明2〜8について 本件発明2、3、5、8は請求項1を引用し、本件発明4は請求項3を引用し、本件発明6は請求項5を引用し、本件発明7は請求項6を引用する発明であって、本件発明2〜8は、いずれも本件発明1の構成をすべて含むものであり、本件発明1が上記刊行物1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができない以上、本件発明2〜8についても刊行物1、2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることはできない。 そして、本件発明1〜8は、刊行物3〜5の記載をみても、刊行物1〜5に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることはできない。 4-2.特許法第36条第4、5項違反について (1)申立人平井貞雄の主張 申立人は申立書15頁18行〜20頁3行において、本件特許明細書の請求項1〜4、6、8、9の記載、及び発明の詳細な説明の記載には不備がある旨の主張をしている。即ち、請求項1のd)堆積速度が所定の範囲になるように、ガスマニホールドと基板の間隔を維持する構成が不明確であり、かつ容易に実施することができる程度に記載されておらず、請求項4の第1の層の厚さが、約500オングストローム以下である点、請求項8のゲート絶縁層がシリコン窒化物である点、請求項9のn+ドープアモルファスシリコンの薄い層が、該アモルファスシリコン膜の上に堆積される点は、明細書中に記載されておらず、また各請求項には発明の構成に欠くことのできない事項が記載されていない不備がある旨主張している。 しかしながら、訂正後の請求項1の「堆積速度が、毎分500〜3000オングストロームの範囲で得られるように、〜間隔を調整する」記載について、堆積速度は特許明細書の段落【0026】に記載されており、また特許明細書の段落【0010】〜【0012】、段落【0026】には、温度と圧力及び間隔を変更することにより堆積速度を改善することが記載され、また段落【0016】には、昇降装置によって間隔を調節することができ、この間隔は通常約25.4mmに保持されていることが記載され、さらに実施例1、2には、間隔を25.4mmとすることが記載されているから、特許明細書には、請求項1の構成自体明確に、また間隔の調整についても当業者が容易にその実施をすることができる程度に記載されているものである。 また、訂正後の請求項4の「第1の層の厚さが、約500オングストローム以下である」記載については、段落【0013】には、低堆積速度でのアモルファスシリコンの薄い層が本発明の高堆積速度で堆積される前に堆積される厚みとして「およそ1000オングストロームかそれより小さい」と記載され、元々およそ1000オングストロームより小さいという前提があり、実施例2の段落【0031】に、「第1の層を厚さ500オングストロームで堆積」すること、段落【0023】には、「アモルファスシリコン薄膜は、300〜3000オングストロームという適正な厚みにする」ことが記載されているから、約500オングストローム以下とすることも特許明細書に開示されていることになる。 さらに、訂正後の請求項7(訂正前の請求項8)の「ゲート絶縁層がシリコン窒化物である」は特許明細書の実施例1に記載され、訂正後の請求項8(訂正前の請求項9)の「n+ドープアモルファスシリコンの薄い層が、該アモルファスシリコン膜の上に堆積される」は段落【0041】に記載されている。 したがって、申立人の主張はいずれも採用できない。 (2)申立人松原いづみの主張 申立人は申立書45頁17行〜49頁26行において、本件特許明細書の請求項1、3、4の記載には不備がある旨の主張をしている。即ち、請求項1の堆積速度を増大させるべく電力、ガス流量が明確でなく、請求項3の約500オングストローム/分よりも低い堆積速度である点、請求項4の第1の層の厚さが、約500オングストローム以下である点は、明細書中に記載されていない不備がある旨主張している。 しかしながら、請求項1の記載については、特許明細書の実施例1、2には電力値が一定で、圧力と基板温度を増大させると堆積速度が増大する記載がある。 また、請求項3の記載については、特許明細書の段落【0005】には、従来の方法では約100〜300オングストローム/分の堆積速度であることが記載され、段落【0026】には、「従来の方法と反応装置が約1分当り100〜300オングストロームの堆積速度であるのと相違して」、本発明では「1分当り500〜3000オングストロームの堆積速度すなわち、堆積速度で1桁の改善が生じる。」と記載されている。これに対して、低堆積速度については、段落【0013】に、「厚みがおよそ1000オングストロームかそれよりも小さい低堆積速度(1000オングストローム/分又は、これよりも小さい)」とあり、元々1000オングストローム/分よりも小さいという前提があり、実施例2の段落【0032】には、低堆積速度につき「堆積速度は480オングストローム/分」と記載されているから、本発明の堆積速度とは異なる従来の堆積速度に相当する低堆積速度が「約500オングストローム/分よりも低い」堆積速度であることは実質的に示されているものと認められる。 また、請求項4の「第1の層の厚さが、約500オングストローム以下である」記載については、上記(1)で示したと同じく段落【0013】、実施例2の段落【0031】、段落【0023】の記載からすれば、約500オングストローム以下とすることは特許明細書に開示されているといえる。 したがって、申立人の主張はいずれも採用できない。 4-3.特許法第17条の2第2項違反について 申立人松原いづみは、本件特許明細書には、出願当初の明細書に記載した事項の範囲内でない記載がある旨の主張をしている。即ち、請求項3の約500オングストローム/分よりも低い堆積速度である点、請求項4の第1の層の厚さが、約500オングストローム以下である点は、出願当初の明細書に記載した事項の範囲内での補正ではない。 しかしながら、請求項3の約500オングストローム/分よりも低い堆積速度である点は、上記「4-2.(2)」で示したと同じく出願当初の明細書の【0005】【0013】【0026】【0032】に記載されたことにより、請求項4の第1の層の厚さが、約500オングストローム以下である点は、出願当初の明細書の請求項5に「第1の層は、約1000オングストロームの厚みになるまでは低堆積方法を・・・用いて」と記載され、さらに上記「4-2.(2)」で示したと同じく出願当初の明細書の【0013】【0031】【0023】に記載されたことにより、出願当初の明細書に記載されている事項の範囲内であると認められるから、補正が新規事項に該当するものではない。 したがって、申立人の主張は採用できない。 また、その他の異議申立の理由及び証拠は、本件発明1〜8を取り消すべき理由として採用することができない。 IV.むすび 以上のとおりであるから、特許異議の申立の理由及び証拠によっては、本件発明1〜8に係る特許が拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものであるとする理由を発見しない。 また、他に本件発明1〜8に係る特許が拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものであるとする理由を発見しない。 よって、平成6年法律第116号附則第14条の規定に基づく、平成7年政令第205号第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 CVDにより大面積のガラス基板上に高堆積速度でアモルファスシリコン薄膜を堆積する方法 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 薄膜トランジスタのためアモルファスシリコン膜をガラス基板とガラス基板の上方に載置されたガスマニホールドの間の間隔を調整する機能を用いて堆積するプラズマ化学気相堆積の方法であって、 a)その内部で基板支持体上に被処理ガラス基板が載置される真空チャンバを与え、該真空チャンバ内の圧力を0.5〜1.5トールに維持し、 b)前記ガラス基板を270〜350℃に維持し、 c)前記ガラス基板の上方に載置されるガスマニホールドから、モノシランガスと水素ガスを、チャンバ内に通過させ、 d)堆積速度が、毎分500〜3000オングストロームの範囲で得られるように、ガスマニホールドと前記ガラス基板の間隔を調整するプラズマ化学気相堆積方法。 【請求項2】 前記C)の前に、前記ガラス基板の表面が水素プラズマに曝露される請求項1に記載の堆積方法。 【請求項3】 前記C)の前に、約500オングストローム/分よりも低い堆積速度で、アモルファスシリコンの第1の層が堆積される請求項1に記載の方法。 【請求項4】 前記アモルファスシリコンの第1の層の厚さが、約500オングストローム以下である請求項3に記載の方法。 【請求項5】 前記ガラス基板上にパターン化されたゲート層を有する請求項1に記載の方法。 【請求項6】 前記ガラス基板が、前記パターン化ゲート層の上にゲート絶縁層を有する請求項5に記載の方法。 【請求項7】 前記ゲート絶縁層がシリコン窒化物である請求項6に記載の方法。 【請求項8】 n+ドープアモルファスシリコンの薄い層が、該アモルファスシリコン膜の上に堆積される請求項1に記載の堆積方法。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】 本発明は、大面積のガラス基板上にアモルファスシリコン薄膜を堆積することに関する。さらに詳しくは本発明は、化学気相成長により、活性アモルファスシリコン薄膜の堆積に関する。 【0002】 【従来の技術】 液晶セルの製造において、2枚のガラス基板は、その間にサンドイッチされている液晶物質の層によって互いに結合されている。ガラス基板は、液晶物質の配向を変えるための電源に接続できる導電膜(これは、ITO膜のように少なくとも透明である必要がある)を有している。液晶セルの様々な領域には、導電膜の適正なパターニング(Patterning)によってアクセスすることができる。ごく最近では、薄膜トランジスタは、液晶セルの各領域に別々に、かつ高速でアドレスするために用いられてきた。このような液晶セルは、テレビやコンピュータのモニタのようなアクティブマトリクスディスプレイに有用である。 【0003】 液晶モニタの解像度に対する要望が増大するにつれて、画素と称される液晶セルの多くの領域に個別にアドレスすることが望まれている。それ故、最近のディスプレイでは、約100万画素もあり、各画素に個別にアドレスができるよう、ガラス基板の上には少なくとも同数のトランジスタが形成される必要がある。 【0004】 異なるタイプの薄膜状トランジスタが最近では使用されているが、その殆どは、上面にアモルファスシリコン層を有するパターン化されたゲート金属の上にゲート絶縁層を堆積する必要がある。金属接点は、アモルファスシリコンとアルミニウム接点の被覆層との間の接触を改善するため、上部にドープ(dope)シリコンの薄い層を持つことができるアモルファスシリコン層の上に堆積されている。 【0005】 グロー放電又はプラズマ型処理によりアモルファスシリコン層を堆積する方法が知られている。しかし、膜の堆積速度は例えば、1分間につき約100〜300オングストロームと全く低い。そのため、厚さが約5000オングストローム程度までの膜は、薄膜トランジスタ製造のために必要とされるが、これには、比較的長い堆積時間が要求され、これらの膜の製造コストは増大する。コストを低減するためにCVD膜の堆積速度を改善することは望ましいことである。 【0006】 例えば、寸法が約350×450×1.1mmという大きな寸法と重量のあるガラス基板であると、通常、その上に薄膜を堆積するために大きな反応チャンバーが必要となる。そして、これら薄膜の連続する堆積のため基板を1つの反応チャンバーから他の反応チャンバーに移送するために、大型でしばしばスピードが遅い移送装置が必要となる。しかし、真空システムは、最近では複数の基板を真空下にあらしめると共に、これらをまとめてCVD温度に加熱でき、これらを特別に設計されたCVDチャンバーに1つずつ移動できるマルチチャンバーによって作られてきた。上記CVDチャンバーは薄膜、特には、アモルファスシリコンの薄膜を堆積でき、冷却チャンバーに移送して戻すことができ、これらは真空環境を破ることなくなされる。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】 しかし、このようなシステムの効率を最大にするためには、システム内でのガラス基板の休止時間(idle time)が最小であるべきである。 【0008】 こうしてアモルファスシリコン薄膜の堆積速度を改良することは、膜の堆積の厚さを約5000オングストロームまで上げるのに必要とされる時間を減少するために強く望まれている。 【0009】 【課題を解決するための手段】 本発明者は、一般的に従来方法よりも速い堆積速度で、アモルファスシリコン薄膜を堆積する方法を見出した。この方法が上述のような真空システムに使用されるとき、薄膜の堆積のために必要とされる時間は、大幅に減少され、それにより、トランジスタを形成するため大面積のガラス基板の全体の製造効率が改良される。 【0010】 改良された堆積速度は、ガス流速、圧力、RF電力、基板温度及びガスマニホールドと基板との間隙を含む処理パラメータを最大限活用することによって達成される。 【0011】 高堆積速度のアモルファスシリコン層のもつトランジスタ諸特性は、基板層の界面を調整することにより改善される。つまり、上記の諸特性は本発明の高堆積速度でのアモルファス堆積の前に、その表面を短時間水素プラズマにさらすか、又は、本発明の高堆積速度での堆積方法によってアモルファスシリコンを堆積する前に低堆積速度でアモルファスシリコンの最初の層を形成することにより改善される。 【0012】 【実施例】 本発明者は、前もって形成されたゲート金属領域と、CVD法により改善された堆積速度の下で堆積されたゲート絶縁層を有する大面積のガラス基板上にアモルファスシリコン膜を堆積できる方法を見出した。この改善された堆積速度は、シランガスの高流速を伴ない、かつ圧力、RF電力、ガス流速、電極間隙、及び基板温度を含む処理パラメータを最大限最適化することにより達成される。 【0013】 これらの膜で製造される装置のトランジスタ諸特性を改善するために、アモルファスシリコンと基板との界面に影響を与える2つの手段つまり、2つのアモルファスシリコン堆積層と、アモルファスシリコン堆積前の水素プラズマの安定性が開発されている。前記2つの層の実現において、厚みがおよそ1000オングストロームかそれよりも小さい低堆積速度(1000オングストローム/分又は、これよりも小さい)のアモルファスシリコンの薄い層が、本発明の高堆積速度で堆積される前に堆積される。水素プラズマの安定性の実現において、水素プラズマは、本発明の高堆積速度でアモルファスシリコンの堆積が実行される直前に、約10秒程度の短い時間流される。 【0014】 ワン等(Wang et al)の米国特許第4,892,753には、本CVDプロセスを実施するに適した特徴を有するところの、プラズマ増強型CVD反応装置について説明されている。この反応装置は、半導体ウエハの処理については説明されているけれども、適切な寸法調整については、現在の大面積のガラス基板に適用するであろう。 【0015】 この反応装置につき、図1を参照してさらに説明する。 【0016】 図1は、通常はアルミニウムで作製されていて、かつ反応領域12を有する真空チャンバー10の切断面図である。基板14は、サセプタ内に埋設された抵抗発熱体により加熱されるような適当な支持具又はサセプタ16で支持されている。基板14の上方には、前駆体反応ガス、キャリアガスおよび、パージガスをガス入口19から反応領域12に供給するガスマニホールドプレート18が存在している。基板14とガスマニホールド18との間の間隙-d-は昇降装置40によって調節することができる。ガスマニホールドと基板との間の間隙調整機能により、ガラス基板の上に必要とされる膜均一性を保持しつつ、広範囲にわたる堆積条件を最大限最適化することが可能となる。基板14とガスマニホールドプレート18の間の間隙-d-は通常約25.4mm(約1インチ)に保持されている。 【0017】 昇降装置40は2つの機能を有している。チャンバー(図示せず)に近い位置にあるロボットで操作される基板支持アーム20により基板14がチャンバー10内に移送されたとき、チャンバー内の当該基板14の位置は、当該点線14Aで示されている。このとき、リフトピン41は当該基板を支持するため持上げられている。その後、昇降装置40はサセプタ16と基板14を処理位置に持ち上げる。処理中は閉塞自在な開口30は、ロボットの支持アーム20により基板14の出し入れができるように開口されている。処理中は、閉塞可能な開口30はピストン駆動のスリットバルブ32により閉じられている。 【0018】 ガスマニホールドプレート18は、当該プレート18の上に均等に分配された複数の貫通孔を有する板である。ここで使用可能なマニホールドプレート18は、全体の面積が、基板14と略同じサイズの板に約10000個の開口を有する。 【0019】 ガスマニホールドプレート18は、ガス分配システムの一部であって、このガス分配システムは、プロセスガスを基板14を横切って、かつ基板の端部に向けて外側に放射状に流し、排出口22から排出するようになっている。遮へい板やシャドウ・フレーム24は、基板14の端部の上に堆積がなされないようにするためにある。 【0020】 ガスマニホールド18の温度は、当該ガスマニホールド18上での反応固形生成物の堆積を最小限に抑えるよう調整されている。 【0021】 RF電力の供給とネットワーク(図示せず)のマッチングにより、反応領域12において、前駆体ガス(Precursor gases)からプロセスガス(Process gases)のプラズマを生成し、かつ維持できる。13.56MHZの高周波RF電力が使用されるのが好ましいが、これは決定的なことではなく、これよりも低周波数を使用してもよい。さらに、ガスマニホールドプレート18は、サセプタ又は基板支持具16が接地されているときにRF駆動される。チャンバーの壁は保護用セラミック材で覆われている。このデザインは、ガスマニホールドプレート18と支持具16との間の高度のプラズマ閉じ込めを許容し、それにより、反応種の濃度及び対象の薄膜の堆積速度を増大することができる。 【0022】 ガスマニホールドプレートと基板との間の間隙-d-を比較的小さく維持することにより、チャンバー自体を一層小さくでき、堆積処理が一層コントロールし易くなり、さらに、反応領域12の小さい容積が当該反応領域12に供給されたガス成分における急速な変化を許容し、反応ガスやパージガスは引き続いて行なわれる堆積の間に急速に取り除かれ、取り換えられる。 【0023】 本発明では、アモルファスシリコン薄膜は、水素キャリアガス(500から2000sccm)中の前駆体ガス(100から1500sccm)としてシランガスを用いて堆積される。本発明者等は、予期しないことにアモルファスシリコン薄膜は、300〜3000オングストロームという適正な厚みにするための或条件の下で急速な速度で堆積されることを見出した。 【0024】 アモルファスシリコン膜の品質は、IR吸収により測定されるような膜中の水素結合(bonding)によって測定される。Si-Hの2000cm-1でのピーク位置と、全幅の半分が最大110cm-1以下の半分であることが良品質のアモルファスシリコン膜であることを示している。高品質のアモルファスシリコン膜は、オフモードにおけるしきい値電圧、電子移動性及び漏れ電流などのような良いトランジスタ電気特性を産み出すにちがいない。 【0025】 ガラス板の温度は、効率的な堆積のために十分高温でなければならないが、当該大面積のガラス基板が曲がるおそれがあるときは、約450℃以下に維持されなければならない。通常約270〜350℃の堆積温度は、アモルファスシリコン薄膜のために維持される。 【0026】 この堆積方法の圧力は、従来方法のそれよりも幾分高く維持されるが、本発明者等は、これは、高堆積速度の達成に寄与するものであると信じている。通常、反応チャンバー内の圧力は、約0.5Torr以上に維持されるべきであり、望ましくは約0.8〜1.5Torrに維持されるのがよい。いずれにしても、上記の温度と圧力及び上述された可変間隙を有するCVD反応装置により、従来の方法と反応装置が約1分当り100〜300オングストロームの堆積速度であるのと相違して、1分当り500〜3000オングストロームの堆積速度すなわち、堆積速度で1桁の改善が生じる。 【0027】 本発明は、つぎの実施例においてさらに説明されるが、当該発明は、そこでの詳細な説明に制限されない。 【0028】 実施例1 上面にアレイ状に堆積されており、かつ前もって選択されたパターンのゲート金属パッドを有し、また、その上に約2500オングストロームの厚さのシリコン酸化層を有し、またその上に約500オングストローム厚のシリコン窒化層を有する360×450×1.1mm厚のガラス基板は、CVDチャンバーに入れられて真空の下におかれた。基板が水素流入の下で320℃まで加熱され、アモルファスシリコン薄膜は、以下の条件の下で堆積された。 【0029】 SiH4 275 sccm H2 1550 sccm 電力 300 watts 圧力 1.2 Torr 間隙 25.4mm(1000 mils) サセプタ温度 397℃ 基板温度 320℃ アモルファスシリコン堆積速度は、944オングストローム/分であり、膜は3000オングストローム厚に堆積された。この膜の応力は-6.9×109ダイン/cm2であると測定された。Si-Hピーク位置は2000cm-1であり、ピーク幅は120cm-1より小であった。 【0030】 上記の基板で製造された完成トランジスタはテストされた。そして、しきい値電圧、オフモードにおける移動度及び漏れ電流を含む満足しうるデバイス特性を有することが見い出された。またこれらの特性は、従来の堆積装置と方法を用いて達成される特性に匹敵した。 【0031】 実施例2 低堆積速度プロセス 実施例1の工程は、アモルファスシリコンの2つの層を、同一のチャンバー内で連続して堆積することを除いて続行された。第1の層は、次の条件を用いて500オングストロームの厚さに堆積された。 【0032】 SiH4 275 sccm H2 1550 sccm 電力 300 watts 圧力 0.8 Torr 間隙 25.4mm(1000 mils) サセプタ温度 397℃ 基板温度 310℃ 堆積速度は、480オングストローム/分であった。この方法で堆積された膜は、IR吸収によって測定されるとき良品質であった。 【0033】 急速堆積速度プロセス 第2の層は次の条件を使用して、上記の層の上に全体で3000オングストロームの厚さに堆積された。 【0034】 SiH 1320 sccm H2 1550 sccm 電力 900 watts 圧力 0.8 Torr 間隙 25.4mm(1000 mils) サセプタ温度 397℃ 基板温度 310℃ この方法での堆積速度は、3100オングストローム/分であった。またこの方法で処理された膜は、IR吸収で測定されるときに良品質であった。 【0035】 この2つのアモルファスシリコンの層で製造された半導体装置は、実施例1や従来の堆積装置及び方法に匹敵する電気特性を有しており、しかも非常に高速度で堆積された。 【0036】 実施例3 実施例1の工程は、水素プラズマの安定化ステップが、実施例2の高堆積速度方法を使用して3000オングストロームの堆積を行なう前に実行されることを除いて、続行された。水素プラズマの安定化は、次の条件の下で10秒間実行された。 【0037】 H2 1550 sccm 電力 300 watts 圧力 0.8 Torr 間隙 25.4mm(1000 mils) サセプタ温度 397℃ 基板温度 310℃ 条件が、例えばシランガスが流れ始め、かつ電力が900ワットまで増加されるなどの堆積ステップに用いられる諸条件にと変化している間、プラズマは滞留した。 【0038】 水素プラズマの安定化と、アモルファスシリコンの急速堆積速度とを使用して製造された装置は、実施例1や従来の堆積装置と方法によって製造された装置に匹敵する電気的特性を有していた。 【0039】 こうして圧力、電力および前駆体ガスのガス流速を変化させることによって堆積速度は変わった。通常は、より高いシラン:水素の比率が堆積速度を増加させる。 【0040】 必要ならば、アモルファスシリコン層は、本願優先権主張の基礎となった米国特許出願と同時に出願されたロウ(Law et al)等の米国特許出願第08/010109号同時係属出願である“シリコン窒化薄膜を堆積する方法”の中で説明されている方法すなわち、“ガス流入マニホールドと基板との間に接近した間隙を有する真空チャンバーの内部において、温度が約300〜350℃、圧力が少なくとも約0.8Torrのもとで、上記基板上にシラン、アンモニアを含む前駆体ガス(Precursor gas)から絶縁用シリコン窒化膜を堆積することを含む化学気相成長方法”によって堆積されたシリコン窒化層の上に堆積することができる。 【0041】 必要に応じて、n+がドープされた薄いアモルファスシリコン層は、アモルファスシリコンと、その次に堆積されたアルミニウムコンタクト間の抵抗を低減するために、ここに説明されているように堆積されたアモルファスシリコン層の上に堆積することができる。これは、水素流に0.5%容量として250sccmのPH3を加えて反応ガス混合物にすることを除き、実施例1の工程に続けてなされる。 【0042】 上記のCVD法は、半導体基板の多段階製法のために知られているシステム、例えばメイダン等(Maydan et al)による米国特許第4951601又は、薄膜トランジスタの製造のため大面積ガラス基板上に多層を堆積するために設計された真空システム等に開示されているシステムに利用できる。なお、この真空システムは、ノーマン・ターナ等による米国特許出願第08/010684号“生産性が改善された真空処理装置”及び同時に出願され引用形式で組込まれた米国特許出願第08/010683号“大面積のガラス板を加熱及び冷却する方法及び装置”の中で説明されている。この真空システムについては、図2を参照して以下に説明する。 【0043】 図2は、大面積のガラス基板上に複数膜を堆積するための真空システムの平面図である。 【0044】 図2を参照すると、堆積システム111は大面積のガラス基板上に複数の薄膜を堆積するため一連のチャンバーを備えている。カセット112A,112B,112C,112Dは、その上に大きなガラス基板を貯蔵するため複数の棚を内包している。ロボット114は、1回に1つのガラス基板をカセット112から2つの連結冷却及びロードロックチャンバー116A,116Bの内の1つに、閉塞自在な開口117を通じて大気に移送するのに用いられる。また、システム100は、ガラス基板を堆積温度まで上げる加熱チャンバー118を含んでいる。2つの冷却/ロードロックチャンバー116及び加熱加熱チャンバー118と共に、一連の4つのCVDチャンバー120,122,124,126は、これらと真空トランスファチャンバー128を画成する。冷却/ロードロックチャンバー116Aと116Bと加熱チャンバー118は、垂直方向に索引(index)できる昇降装置(図示せず)に搭載されたカセットを保持している。これらの加熱及び冷却カセットは、ガラス基板が加熱され又は冷却されている間、当該ガラス基板をその内部で支持するために熱伝導性の棚を有している。 【0045】 ロボット114が、ガラス基板をカセット112から冷却/ロードロックチャンバー116Aのカセットの中に移送した後、他のガラス基板がロボット114によって冷却チャンバーカセット116Aに移送されている時は、昇降装置は1つの棚の高さ分だけカセットを持上げ(又は持下げ)る。チャンバー116Aのカセットの中にすべての棚が充填されたとき、閉塞自在な開口117は閉じられ、チャンバー116A内は排気される。望ましい圧力に達したとき、トランスファーチャンバー128に近い閉塞自在な開口131は開放される。トランスファーロボット(図示せず)は、全てのガラス基板を冷却/ロードロックチャンバー116Aから、その内部でガラス基板が堆積温度近くまで加熱されている加熱チャンバー118の中にあるカセットに移送する。加熱チャンバー118内のカセットと冷却チャンバーカセット116Aは、それぞれの移送の後、トランスファチャンバー128内にあるトランスファーロボットに別の棚を存在させるため、持上げられ又は下げられる。 【0046】 ガラス基板が堆積温度に達したとき、トランスファーロボットは、ガラス基板を予め選択された順序で1つまたは2つ以上のCVDチャンバー120,122,124又は126へ次々と移送する。例えば、第1番目のシリコン窒化物の薄膜は、CVDチャンバー120内で堆積される。第2番目のアモルファスシリコンの薄膜はCVDチャンバー122内で堆積される。第3番目のドープされたアモルファスシリコン薄膜はCVDチャンバー124内でドープされ第4番目も同様に行なわれる。予め選択された全ての堆積が行なわれたとき、トランスファーロボットは、処理されたガラス基板を冷却/ロードロックチャンバー116Aに移送して戻す。閉塞自在な開口131は、冷却/ロードロックチャンバー116A内のすべての棚が満されたときには閉じられる。同時に、ロボット114は、他の一群の(batch of)ガラス基板を、別のカセット112cから冷却/ロードロックチャンバ116Bの中のカセット112cに移送し、装填が完了したときに、チャンバー116Bを排気する。 【0047】 冷却/ロードロックチャンバー116A内の処理されたすべてのガラス基板が室温近くまで冷やされたとき、チャンバー116Aは、大気圧と同じにされ、閉塞し得る開口117は開放されて、ロボット114は今処理されて冷却されたガラス基板を脱着(unload)カセット112に戻る。 【0048】 こうして、システム100は作業を続行できるように作られている。ガラス基板の一連の(batch of)加熱及び冷却という組合わせと、例えば数分という比較的長い時間を要する作業と、例えば1分以下という比較的短い時間がかかる単一基板CVD方法によりシステム100の生産性と作業効率を最大にすることができる。 【0049】 本発明は、いくつかの具体例と実施例によって説明されているが、本発明はそれに限定されることを意味しない。ここでのCVD法は、実用的な堆積速度のもとで、高品質の膜を得るために、ガス流速、圧力及び温度を調整できる他のチャンバーを使用して実施することができる。 【0050】 【発明の効果】 以上説明したように、本発明によると、ガラス基板上にアモルファスシリコン膜を堆積するに際し、従来方法で用いられているよりも高圧力を操作すると共に、この圧力及び温度を含む堆積パラメータを最大限活用することにより高品質のアモルファスシリコン膜を高堆積速度で製造することができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 大面積のガラス基板上にアモルファスシリコン薄膜を堆積するのに有効なCVD反応装置の横断面図である。 【図2】 図1のCVD反応装置を含むガラス基板を製造するための真空システムの平面図である。 【符号の説明】 14…ガラス基板、18…ガスマニホールドプレート、116A,116B…ロードロックチャンバー、118…加熱チャンバー、120,122,124,126…CVDチャンバー。 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2004-05-31 |
出願番号 | 特願平6-8713 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
YA
(H01L)
P 1 651・ 561- YA (H01L) P 1 651・ 354- YA (H01L) P 1 651・ 351- YA (H01L) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 松本 邦夫、加藤 浩一、守安 太郎 |
特許庁審判長 |
城所 宏 |
特許庁審判官 |
瀬良 聡機 市川 裕司 |
登録日 | 2001-03-02 |
登録番号 | 特許第3164956号(P3164956) |
権利者 | アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド |
発明の名称 | CVDにより大面積のガラス基板上に高堆積速度でアモルファスシリコン薄膜を堆積する方法 |
代理人 | 塩田 辰也 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |
代理人 | 山田 行一 |
代理人 | 長谷川 芳樹 |
代理人 | 寺崎 史朗 |
代理人 | 寺崎 史朗 |
代理人 | 塩田 辰也 |
代理人 | 山田 行一 |