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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C23C
管理番号 1102809
異議申立番号 異議2002-71621  
総通号数 58 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1992-10-09 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-07-08 
確定日 2004-06-30 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3243258号「プラズマCVD装置」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3243258号の請求項1、2に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3243258号の請求項1及び2に係る発明は、平成3年3月14日に特許出願され、平成13年10月19日に特許権の設定登録がなされ、その後、請求項1及び2に係る特許について特許異議申立人山口雅行より特許異議申立てがなされ、取消理由が通知され、その指定期間内である平成14年11月25日に訂正請求(後日取り下げ)がなされた後、再度の取消理由が通知され、その指定期間内である平成16年6月1日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
2-1.訂正の内容
平成16年6月1日になされた訂正請求は、願書に添付された明細書(以下、「特許明細書」という。)を訂正請求書に添付された明細書(以下、「訂正明細書」という。)のとおりに訂正することを求めるもので、その内容は以下のとおりである。
a.特許請求の範囲の請求項1を、「第1の膜を成膜する所定数の反応室と、成膜した膜厚量を累積して積算し管理する累積積算膜厚管理部を有し、前記第1の膜とは異なる第2の膜を成膜し、前記第1の膜を成膜する反応室よりクリーニングの必要頻度が高いとともにこの第1の膜を成膜する所定数の反応室より多い数の反応室とを具備し、前記第2の膜を成膜する反応室のいずれか一のみを選択的に用いて前記第2の膜を成膜し、この第2の膜を成膜するいずれか一の反応室の前記累積積算膜厚管理部によって管理している累積して成膜した前記第2の膜の膜厚量が所定の量に達すると、前記第2の膜を成膜する反応室のいずれか他のみを選択的に用いて前記第2の膜を成膜することを特徴とするプラズマCVD装置。」と訂正する。
b.特許請求の範囲の請求項2を、「第2の膜を成膜する反応室は、第1の膜を成膜する反応室より後工程に設けられることを特徴とする請求項1記載のプラズマCVD装置。」と訂正する。
c.明細書の【0007】段落を、「【課題を解決するための手段】本発明のプラズマCVD装置は、第1の膜を成膜する所定数の反応室と、成膜した膜厚量を累積して積算し管理する累積積算膜厚管理部を有し、前記第1の膜とは異なる第2の膜を成膜し、前記第1の膜を成膜する反応室よりクリーニングの必要頻度が高いとともにこの第1の膜を成膜する所定数の反応室より多い数の反応室とを具備し、前記第2の膜を成膜する反応室のいずれか一のみを選択的に用いて前記第2の膜を成膜し、この第2の膜を成膜するいずれか一の反応室の前記累積積算膜厚管理部によって管理している累積して成膜した前記第2の膜の膜厚量が所定の量に達すると、前記第2の膜を成膜する反応室のいずれか他のみを選択的に用いて前記第2の膜を成膜するものである。」と訂正する。
d.明細書の【0008】段落を、「【作用】本発明のプラズマCVD装置は、第1の膜を成膜する反応室より、クリーニングの必要頻度が高い第2の膜を成膜する反応室の数を多くし、これら第2の膜を成膜する反応室のいずかを選択的に用いて第2の膜を成膜することにより、クリーニングの必要頻度が高い第2の膜を成膜する反応室の数が多いので、装置のクリーニングのための停止回数が少なくなる。また、第2の膜を成膜する反応室の累積積算膜厚管理部にてこの反応室で成膜する第2の膜の膜厚量を累積して積算し管理し、いずれか一の反応室のみを選択的に用いて第2の膜を成膜し、このいずれか一の反応室の累積積算膜厚管理部によって管理している累積して成膜した第2の膜の膜厚量が所定の量に達すると、第2の膜を成膜する反応室のいずれか他のみを選択的に用いて第2の膜を成膜する。」と訂正する。
e.明細書の【0016】段落を、「【発明の効果】本発明のプラズマCVD装置によれば、第1の膜を成膜する反応室より、クリーニングの必要頻度が高い第2の膜を成膜する反応室の数を多くし、これら第2の膜を成膜する反応室のいずかを選択的に用いて第2の膜を成膜することにより、クリーニングの必要頻度が高い第2の膜を成膜する反応室の数が多いので、装置のクリーニングのための停止回数が少なくなり稼働率を向上でき、また、第2の膜を成膜する反応室の累積積算膜厚管理部にてこの反応室で成膜する第2の膜の膜厚量を累積して積算し管理し、いずれか一の反応室のみを選択的に用いて第2の膜を成膜し、このいずれか一の反応室の累積積算膜厚管理部によって管理している累積して成膜した第2の膜の膜厚量が所定の量に達すると、第2の膜を成膜する反応室のいずれか他のみを選択的に用いて第2の膜を成膜できる。」と訂正する。
2-2.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び拡張・変更の存否
訂正事項aは、以下の3つの訂正事項を含むものである。
a-1.特許明細書の請求項1に記載の4箇所の「一の膜」を「第1の膜」と訂正し、「他の膜」を「第2の膜」と訂正する。
a-2.特許明細書の請求項1に記載の「膜厚の堆積を管理する累積積算膜厚管理部」を「成膜した膜厚量を累積して積算し管理する累積積算膜厚管理部」と訂正する。
a-3.特許明細書の請求項1に記載の「具備したこと」を、「具備し、前記第2の膜を成膜する反応室のいずれか一のみを選択的に用いて前記第2の膜を成膜し、この第2の膜を成膜するいずれか一の反応室の前記累積積算膜厚管理部によって管理している累積して成膜した前記第2の膜の膜厚量が所定の量に達すると、前記第2の膜を成膜する反応室のいずれか他のみを選択的に用いて前記第2の膜を成膜すること」と訂正する。
そして、訂正事項a-1及びa-2は、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当し、訂正事項a-3は、「前記第2の膜を成膜する反応室のいずれか一のみを選択的に用いて前記第2の膜を成膜し、この第2の膜を成膜するいずれか一の反応室の前記累積積算膜厚管理部によって管理している累積して成膜した前記第2の膜の膜厚量が所定の量に達すると、前記第2の膜を成膜する反応室のいずれか他のみを選択的に用いて前記第2の膜を成膜すること」という新たな構成要件を付加するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正に該当すると云える。また、訂正事項a-1、a-2及びa-3は、特許明細書【0010】段落及び【0012】段落に記載された事項に基づくものであるから、特許明細書に記載された事項の範囲内で明細書の記載を訂正するものであると云える。さらに、訂正事項a-1、a-2及びa-3は、本件の請求項1に係る発明の課題に変更を及ぼすというものでもないので、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
訂正事項bは、明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当すると云える。また、この訂正事項bは、特許明細書の記載に基づくものであって、新規事項の追加に該当せず、しかも実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
訂正事項c乃至eは、訂正事項a及びbによる特許請求の範囲の訂正に伴い発明の詳細な説明の記載を訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明に該当する。また、この訂正事項c乃至eは、特許明細書の記載に基づくものであって、新規事項の追加に該当せず、しかも実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものでもない。
2-3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号。以下「平成6年改正法」という。)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年改正法による改正前の特許法第126条第1項ただし書及び第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議申立てについて
3-1.本件発明
特許第3243258号の請求項1及び2に係る発明(以下、「本件発明1」及び「本件発明2」という。)は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものである。
「【請求項1】第1の膜を成膜する所定数の反応室と、成膜した膜厚量を累積して積算し管理する累積積算膜厚管理部を有し、前記第1の膜とは異なる第2の膜を成膜し、前記第1の膜を成膜する反応室よりクリーニングの必要頻度が高いとともにこの第1の膜を成膜する所定数の反応室より多い数の反応室とを具備し、前記第2の膜を成膜する反応室のいずれか一のみを選択的に用いて前記第2の膜を成膜し、この第2の膜を成膜するいずれか一の反応室の前記累積積算膜厚管理部によって管理している累積して成膜した前記第2の膜の膜厚量が所定の量に達すると、前記第2の膜を成膜する反応室のいずれか他のみを選択的に用いて前記第2の膜を成膜することを特徴とするプラズマCVD装置。
【請求項2】第2の膜を成膜する反応室は、第1の膜を成膜する反応室より後工程に設けられることを特徴とする請求項1記載のプラズマCVD装置。」
3-2.取消理由通知
当審が通知した取消理由は、本件発明1及び2は、いずれも、下記の刊行物1及び3、又は刊行物2及び3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、本件発明1及び2に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであるから、取り消すべきものであるというものである。
刊行物1:特開昭58-182220号公報
(特許異議申立人が提出した甲第1号証)
刊行物2:特開昭60-64426号公報
(特許異議申立人が提出した甲第2号証)
刊行物3:特開平1-231936号公報
(特許異議申立人が提出した甲第4号証)
3-3.各刊行物に記載された事項
(1)刊行物1には、図面と共に以下の事項が記載されている。
1-ア.「1.タンデムアモルファス光起電力セルを連続的に製造する為の多重チヤンバー装置であつて、各セルは少なくとも2つの3層ユニットからなる1つの総厚みを有し、各ユニットは1つの中間真性層の反対側に各々作用的に随伴した1つのP型層及び1つのn型層を含んでいるものにおいて;基板材料(11)と;各セルユニットの三つの沈積層を形成する為に各三つ組連続体の終端へのP型層(16a〜c)及びn型層(20a〜c)の沈積と、各三つ組連続体のP型層とn型層の間の真性層(18a〜c)の沈積とを行うべく順次配置された、タンデムセル(10)の各3層ユニットの為の三つ組の沈積チャンバー(28,30,32,34,36,38)と;各三つ組体沈積チャンバーを通つて基板材料を連続的に移動させる為の手段(60)と;3層ユニットの相続く層を基板材料上及びそこに先行して沈積された層上へ沈積させる為の手段と;・・・3層体の各層を沈積させる為に予め選択された反応ガス混合物を各チャンバー内へ導入する為の手段と;各先行する三つ組のチャンバーの第3のチャンバー(32)中のガス混合物と隣接する後続の三つ組のチャンバーの第1のチャンバー(38)内のガス混合物との相互汚染を実質的に防止する為の手段(40)と;各三つ組のチャンバーの第2のチャンバー中のガス混合物を各三つ組のチャンバーの第1及び第3のチャンバー内のガス混合物から実質的に隔離する為の手段(58d,58e,58h,58i)と;の組合せからなり、各セルが3つのアモルファス層から形成された相続く3層ユニットを有するようなタンデム光起電力セルを複数個連続的に基板材料上に製造することを特徴とする前記装置。」(特許請求の範囲 第1項)
1-イ.「6.特許請求の範囲第1項から同第5項までの何れか1項に記載の装置において、・・・前記装置。
7.特許請求の範囲第6項記載の装置において、各沈積チャンバーに随伴した沈積手段が更に1つの陰極(88a〜h)と1つの無線周波数発信器(92a〜h)と1つのチューナー(90a〜h)とを含むグロー放電型沈積手段であって、それによって反応ガス混合物が解離されることを特徴とする前記装置。」(特許請求の範囲 第6及び7項)
1-ウ.「装置は次のものにより構成される:基板11が通過する間に、基板の沈積表面上にp型導電性のアモルファス半導体層を沈積させる第1沈積チャンバー28;基板11が通過する間に、基板の沈積表面上のp型半導体層の上に基礎アモルファス半導体層を沈積する第2の沈積チャンバー30;基板11が通過する間に、基板の沈積表面上の基礎アモルファス半導体層の上に、n型導電性の半導体層を沈積させる第3の沈積チャンバー32;基板11が通過する間に、基板の沈積表面上のn型半導体層の上に、p型導電性の第2のアモルファス半導体層を沈積させる第4の沈積チャンバー34;基板11が通過する間に基板の沈積表面上の第2のp型半導体層の上に第2の基礎アモルファス半導体層を沈積させる第5の沈積チャンバー36;基板11が通過する間に、基板11の沈積表面上の第2の基礎アモルファス半導体層の上に第2のn型アモルファス半導体層を沈積させる第6沈積チャンバー38。」(第15頁右下欄7行〜第16頁左上欄5行)
1-エ.「それぞれの沈積チャンバー内を通過する経路の長さは、それぞれ与えられたチャンバー内で沈積されるp型層、基礎層、n型層の厚さと比例するので、基板上に所望の厚さの層を沈積させるためには、(1)個々の沈積チャンバー内の基板の通過経路を増減するか(2)基板材料のウエブの速度を増減することが可能であることもまた明らかであろう。」(第16頁左上欄17行〜同頁右上欄4行)
1-オ.「第2沈積チャンバーは、長さにおいて約100インチの広がりを有することに注意せよ。もしもその長さの単一カソードが実際にその中に入れられたとすると・・・相応に大きな損失を伴って生じてしまう。従って、より小さなカソードを複数用いることが採用された。簡単のために、第5図にはたった2つのカソード88cと88dが示されているが・・・実際には3個のそのようなカソードが基礎沈積チャンバー30内に間隔を取って設けられていることが理解されるべきである。ひとつの沈積チャンバー内の隣接カソード間の距離は、重要であると思われていたが、驚くべきことにそのような隣接カソード間の距離は、逆に沈積された半導体層の質に影響を与えないということがつきとめられた。特に、3個の隔てられたカソードによって沈積された半導体は、単一の長く延びたカソードによって沈積された半導体物質と実質的に同じ特質を有していた。」(第28頁左下欄16行〜同頁右下欄16行)
1-カ.「それぞれの沈積チャンバーは、少なくとも部分的に、それぞれのカソードを、取り囲んで反応ガス混合物がカソード部分にとじこめられるように、シールドを設けるようにしてもよい。」(第29頁左上欄2〜5行)
1-キ.「第1沈積チャンバー28内の約30インチのカソードは、100〜200オングストロームの厚さを有するp型半導体層を作る。第2沈積チャンバー内での全体で約100インチのカソードは、基礎半導体層の2000〜3000オングストロームの厚さをもたらす。第3沈積チャンバー32内の約12インチのカソードは、50〜100オングストロームのn型半導体層を作る。第4沈積チャンバー34内の約12インチのカソードは、50〜150オングストロームの厚さのp型半導体を作る。第5沈積チャンバー36内の約30インチのカソードは、1000オングストロームの厚さの基礎半導体層を作る。第6沈積チャンバー38内の約12インチのカソードは、約50〜100オングストロームの厚さのn型合金層を作る。」(第29頁右上欄5〜20行)
1-ク.「N.電気的ステーション
Fig8は、この発明のグロー放電沈積装置26を形成するために組合わせられる多重チャンバーの模式図を示し、前述したように:ガスゲート58a-58i;・・・基板;・・・アイドラーローラ・・・;調整器90a-90hによって制御される電源92a-92hに付随するカソード88a-88h;チャンバーから浄化器148に有害な反応ガス混合物を排気するためのポンプシステムA-E;・・・を示す。Fig8は、ブラックボックスの形で、操作コンソール150及び電気制御キャビネット152を付加している。操作コンソール150は、・・・合金層厚さモニター;を含み、スペクトロメータ制御装置;真空圧力制御装置;反応ガス流制御装置;反応ガス制御装置;及びオン-オフスイッチを制御する。電気的制御キャビネット152は主遮断スイッチ、ヒュズ、変成器、ヒータ制御装置、モータ起動装置、及びシーケンス連動制御装置を含む。」(第35頁右下欄5行〜第36頁左上欄13行)
1-ケ.「Fig11には、この発明の沈積装置26の28のような1つの沈積チャンバーの断面を示している。沈積チャンバー28は、・・・反応ガスをプラズマ領域に閉じこめるシールド31、カソード88、・・・着脱可能なパウダートラップ37を含む。・・・加熱された反応ガスはパウダートラップの遮蔽板37dに接触するので、シラン粉のような粉が形成され沈積チャンバー28の壁上に進入したり付着したりせず遮蔽板上に集められる。このように沈積装置28の周期的清掃及びその装置が大変容易になる。千フィートの長さの基板材料の沈積工程に続いてチャンバーを開くと、パウダートラップ37は直ちにチャンバーからはずされ、清掃されたトラップと交換される。このようにして、清掃工程は(1)沈積装置の使用不能時間を減じ、(2)チャンバーの内壁上に集まるパウダーの量を最小にするように単純化される。」(第37頁右上欄1行〜同頁左下欄18行)
(2)刊行物2には、図面と共に以下の事項が記載されている。
2-ア.「(4)仕切り板によって複数の連続した反応室に区切られた反応容器と、それぞれの反応容器の器壁の一部に設けられた励起光入射用窓と、前記励起光入射用窓を通して反応容器内に励起光を照射する手段と、前記仕切り板を開閉する手段と、前記仕切り板が開かれている間に、ある反応室内に装填されている被膜形成基板を、外気にさらすことなしに、下流側の他の反応室へ移送する手段と、反応室内に装填されている被膜形成基板を予定温度まで加熱する手段と、被膜形成基板が反応室に装填されている反応シーケンスにおいて、当該反応室に予定の反応ガスを供給して、前記基板上に予定の反応生成物薄膜を形成する手段と、被膜形成基板が反応室に装填されていない反応シーケンスにおいて、当該反応室にエッチングガスを供給して、前記励起入射用窓の内面に堆積された反応生成物をエッチング除去する手段と、各反応室内のガスを吸引する排気手段とを具備したことを特徴とする気相反応薄膜形成装置。」(特許請求の範囲 第4項)
2-イ.「反応容器21の励起光入射窓22Aの内面にも、気相反応による生成物の膜が堆積し、励起光の透過が悪くなる。しかも、光化学反応の速度は励起光の照射強度に依存するため、シリコンウエハ25の表面よりも反応容器の光入射窓22Aの内面に反応生成物膜が堆積しやすいという傾向がある。前記気相反応による生成物の膜は、励起光に対しては不透明である。このように励起光に対して不透明な膜が、光入射窓22Aの内面に堆積すると、シリコンウエハ25に到達する励起光の照射強度が低下するので、前記シリコンウエハ25上の反応速度は著しく減少し、ついには反応が停止されてしまう。このため所望の膜厚を得るのに必要な反応時間が長くなるばかりでなく、著しい場合には所望の膜厚が得られなくなるという欠点がある。」(第3頁左上欄13行〜同頁右上欄11行)
2-ウ.「実施例2
第3図は、本発明による方法を実施するのに適した膜形成装置の、反応系の第2の実施例を示す概略側断面図である。・・・反応容器71は、長さ方向に連続した5つの反応室71-A〜71-Eに、・・・区切られている。」(第5頁右上欄3〜11行)
2-エ.「この実施例による反応シーケンスの一例を第1表に示す。この表から明らかなように、反応シーケンスの第1段階では、・・・を、第1の薄膜形成基板25として第1の反応室に導入し、その表面上にn型シリコン膜を形成した。・・・5分間の反応により、基板25上に約450〜600Åのn型シリコン膜が形成できた。・・・反応シーケンスの第2段階では、該基板25を、・・・第2の反応室71-Bに移送した。そこで、先に形成されたn型シリコン膜の上面に、i型シリコン膜を積層形成した。・・・このシーケンスで形成されたi型シリコン膜の厚さは、前記n型シリコン膜とほぼ同じであった。・・・一方、前記のように、第2反応室71-Bにおいて、第1の基板25上にi型シリコン膜を形成している間に、第1の反応室71-Aには・・・を供給し、光入射用石英ガラス板73-Aの内面の堆積物(シリコン膜)をエッチング除去して清浄化した。反応シーケンスの第3段階では、第1の基板を第3の反応室71-Cへ移送すると共に、第1の反応室71-Aには、新たに第2の基板を導入した。そして、第1及び第3の反応室71-A、71-Cでは、それぞれn型、i型のシリコン膜形成反応を行なわせ、第2の反応室71-Bでは、光入射用石英ガラス板73-Bの内面の堆積物のエッチング除去を実施した。この場合、第1反応室71-Aの光入射用石英ガラス板73-Aの内面は、先の第2シーケンスでエッチングによって清浄化されているので、第1段階におけると全く同じ条件でn型シリコン膜を形成することができた。以後同様にして、第1表の反応シーケンス4,5,6を繰り返すことによって、基板25を順次下流側の反応室へ移送し、所望膜厚のi層およびp層を積層形成することができる。この実施例では、それぞれの反応室についてみると、光CVD法によるシリコン膜形成工程と、前記反応の結果、光入射用石英ガラス板の内面に堆積したシリコン膜のエッチング除去工程とが、交互に繰り返されるので、光CVD法を実施するシーケンスでは、光入射用石英ガラス板は初期状態にまで清浄化されており、全く同じ条件で光CVD法を連続して実施することができる。なお、本実施例で、i型シリコン膜の形成に3つの連続した反応室を用いたのは・・・約2000Åの膜厚を効率よく堆積させるため、3回のデポジションに分けたためである。」(第5頁右下欄15行〜第7頁左上欄4行)として、第6頁左上欄には、第1表として、シーケンス1〜6において反応室71-A〜71-Eで行われる処理、即ちn層形成、i層形成、p層形成の基板処理又はエッチングが記載されている。
(3)刊行物3には、図面と共に以下の事項が記載されている。
3-ア.「反応炉例えば半導体ウエハを熱処理反応させるCVD、拡散炉等では、プロセス中にウエハ以外の反応容器等に反応生成物が付着し・・・半導体製品の歩留まりが悪化するので、定期的に反応管等を洗浄する必要があった。」(第1頁左下欄16行〜同頁右下欄1行)
3-イ.「シリコン気相エピタキシャル成長プロセスは、第4図に示すオペレーションタイム(T)に実行される各種プロセスより実施され、・・・本発明の洗浄方法は、このプロセスが終了後、例えば200℃〜500℃程度に降温された後にドライエッチングタイム(D)として実行される。なお、このような洗浄の仕方としては、下記の2通りの方法が考えられる。
(1)・・・
(2){ΣTi(i=1〜n)+D}を一つのパターンとしてとらえ、これを繰り返すもので、n回のデポジションで付着した膜を、一回のドライエッチングタイム(D)でエッチングして初期状態に戻す方法である。」(第4頁右下欄2〜20行)
3-ウ.「このような洗浄は、上記シリコン気相エピタキシャル成長装置の反応炉にのみ適用されるものではなく、第5図、第6図に示すように、CVDプロセス、酸化プロセスにも同様に適用することができる。」(第5頁左下欄7〜11行)
3-4.対比、判断
(1)本件発明1について
上記3-3で摘記した記載事項1-ア〜ケからみて、刊行物1には連続的に移動する基板材料上にP型層、中間真性層、n型層を順次沈積させてアモルファス光起電力セルを連続的に製造するための装置が記載されており、記載事項1-イ、ク、ケからみて、各層を沈積する手段がプラズマCVD法であることは明らかであるから、刊行物1には「プラズマCVD装置」が記載されていると云える。そして、記載事項1-ア、ウからみて、上記装置は、P型層を沈積する為のチャンバーと、中間真性層を沈積する為のチャンバーと、n型層を沈積する為のチャンバーとを具備しており、記載事項1-エ、オ、キからみて、中間真性層は他の層より厚く、中間真性層を沈積する為のチャンバーは他の層を沈積するためのチャンバーより長いため、中間真性層を沈積する為のチャンバーは複数のカソードを具備しており、記載事項1-カからみて、該複数のカソードにはそれぞれのカソードを取り囲んで反応ガス混合物混合物がカソード部分に閉じこめられるようにシールドが設けられていると云える。さらに、記載事項1-クからみて、上記装置は、合金層厚さモニターを含む操作コンソールを具備したものである。そこで、最初のP型層及び中間真性層の沈積に着目して記載事項1-ア〜ケを総合して整理すると、刊行物1には次の発明が記載されていると云える。
「P型層を沈積する為のチャンバーと、中間真性層を沈積する為のチャンバーとを具備し、合金層厚さモニターを含む操作コンソールを具備したプラズマCVD装置であって、P型層より厚い中間真性層を沈積する為のチャンバーは複数のカソードを具備しており、それぞれのカソードを取り囲んで反応ガス混合物が該カソード部分にとじこめられるようにシールドが設けられているプラズマCVD装置。」
本件発明1と刊行物1に記載された発明を対比すると、後者における「P型層」、「中間真性層」は、前者における「第1の膜」、「第2の膜」に相当し、後者における「チャンバー」は、前者における「反応室」に相当し、後者における「沈積」は、前者における「成膜」に相当する。そして、後者における「P型層」と「中間真性層」は異なるものであることは明らかであるから、両者は、
「第1の膜を成膜する所定数の反応室と、前記第1の膜とは異なる第2の膜を成膜する反応室を具備するプラズマCVD装置。」
で一致し、次の点で相違する。
(i)前者は、第2の膜を成膜する反応室が、成膜した膜厚量を累積して積算し管理する累積積算膜厚管理部を有するのに対し、後者は、プラズマCVD装置が合金層厚さモニターを含む操作コンソールを具備するものではあるが、第2の膜を成膜する反応室にかかる累積積算膜厚管理部を有するものではない点。
(ii)前者は、第2の膜を成膜する反応室が、第1の膜を成膜する反応室よりクリーニングの必要頻度が高いのに対し、後者はかかる点が明確でない点。
(iii)前者は、第2の膜を成膜する反応室が、第1の膜を成膜する所定数の反応室より多い数であるのに対し、後者は、第2の膜を成膜する反応室内にシールドで取り囲まれた複数のカソードを有するものではあるが、シールドで取り囲まれた部分がそれ自体で反応室を構成するとは必ずしも云えないため、第2の膜を成膜する反応室が第1の膜を成膜する反応室より多いとは云えない点。
(iv)前者は、第2の膜を成膜する反応室のいずれか一のみを選択的に用いて第2の膜を成膜し、この第2の膜を成膜するいずれか一の反応室の累積積算膜厚管理部によって管理している累積して成膜した第2の膜の膜厚量が所定の量に達すると、第2の膜を成膜する反応室のいずれか他のみを選択的に用いて第2の膜を成膜するものであるのに対し、後者は、かかる特定がない点。
そこで、これらの相違点について刊行物2及び3に記載された事項を検討する。
上記3-3で摘記した記載事項2-ア〜エからみて、刊行物2には、基板上にn型シリコン膜、i型シリコン膜及びp型シリコン膜を順次形成する気相反応薄膜形成装置が記載されており、該気相反応が光CVD法であることは記載事項2-エにも記載されているところであるから、刊行物2には、「光CDV装置」が記載されていると云える。そして、記載事項2-エからみて、i型シリコン膜の膜厚がn型シリコン膜及びp型シリコン膜より厚く、n型シリコン膜及びp型シリコン膜を形成するための反応室よりi型シリコン膜を形成するための反応室の数が多いことは明らかであるから、n型シリコン膜及びi型シリコン膜の形成に着目して記載事項2-ア〜エを総合して整理すると、刊行物2には次の発明が記載されていると云える。
「n型シリコン膜を形成する反応室と、i型シリコン膜を形成する反応室とを具備する光CVD装置であって、n型シリコン膜より厚いi型シリコン膜を形成する上記i型シリコン膜を形成する反応室は、上記n型シリコン膜を形成する反応室より多い数の反応室を有し、反応室に基板が装填されている反応シーケンスにおいて光CVD法により基板上に薄膜を形成すると共に、反応室に基板が装填されていない反応シーケンスにおいて光入射窓の内面に堆積された反応生成物質薄膜をエッチングにより除去する反応シーケンスを繰り返す光CVD装置。」
刊行物2に記載された発明における「n型シリコン膜」、「i型シリコン膜」は、それぞれ、本件発明1における「第1の膜」、「第2の膜」に相当し、刊行物2に記載された発明における「n型シリコン膜」、「i型シリコン膜」は互いに異なるものであることは明らかであるから、刊行物2には、「光CVD装置」についてではあるが、「第1の膜を成膜する所定数の反応室と、前記第1の膜とは異なる第2の膜を成膜し、この第1の膜を成膜する所定数の反応室より多い数の反応室とを具備すること」は記載されていると云える。しかし、刊行物2には、上記相違点(i)で挙げた本件発明1の構成要件である、第2の膜を形成する反応室が、成膜した膜厚量を累積して積算し管理する累積積算膜厚管理部を有することは記載されておらず、また、相違点(ii)で挙げた本件発明1の構成要件である、第2の膜を形成する反応室が、第1の膜を成膜する反応室よりクリーニングの必要頻度が高いことも明確でない。さらに、刊行物2には、相違点(iv)で挙げた本件発明1の構成要件である、第2の膜を成膜する反応室のいずれか一のみを選択的に用いて第2の膜を成膜し、この第2の膜を成膜するいずれか一の反応室の累積積算膜厚管理部によって管理している累積して成膜した第2の膜の膜厚量が所定の量に達すると、第2の膜を成膜する反応室のいずれか他のみを選択的に用いて第2の膜を成膜することについては、記載も示唆もされていない。
また、刊行物3には、記載事項3-ア〜ウからみて、「CVDプロセスにおいてウエハ以外の反応容器等に付着した反応生成物を除去し、反応容器を洗浄するために、n回のデポジションで付着した膜を一回のドライエッチングタイム(D)でエッチングすること」が記載されているとは云える。しかし、刊行物3の記載事項を検討しても、上記相違点(iv)で挙げた本件発明1の構成要件である、第2の膜を成膜する反応室のいずれか一のみを選択的に用いて第2の膜を成膜し、この第2の膜を成膜するいずれか一の反応室の累積積算膜厚管理部によって管理している累積して成膜した第2の膜の膜厚量が所定の量に達すると、第2の膜を成膜する反応室のいずれか他のみを選択的に用いて第2の膜を成膜することは、記載も示唆もされていない。
してみると、刊行物2及び3を検討しても、上記相違点(iv)で挙げた本件発明1の構成要件である、第2の膜を成膜する反応室のいずれか一のみを選択的に用いて第2の膜を成膜し、この第2の膜を成膜するいずれか一の反応室の累積積算膜厚管理部によって管理している累積して成膜した第2の膜の膜厚量が所定の量に達すると、第2の膜を成膜する反応室のいずれか他のみを選択的に用いて第2の膜を成膜することは、記載も示唆もされていない。
そして、本件発明1は、上記相違点(iv)で挙げた本件発明1の構成要件により本件訂正明細書に記載された効果を奏するものである。
してみると、他の相違点について詳細に検討するまでもなく、本件発明1は、刊行物1乃至3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは云えない。
(2)本件発明2について
本件発明2は、本件発明1をさらに限定したものであるから、本件発明1と同様、刊行物1乃至3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは云えない。
3-5.その他の異議申立理由及び証拠について
また、その他の異議申立理由及び証拠について検討しても、本件発明1及び2を取り消すべき理由として採用することはできない。
3-6.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠方法によっては本件発明1及び2についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1及び2についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
したがって、本件発明1及び2についての特許は拒絶の査定をしなければならない特許出願に対してされたものと認めない。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令第205号)第4条第2項の規定により、上記のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
プラズマCVD装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 第1の膜を成膜する所定数の反応室と、
成膜した膜厚量を累積して積算し管理する累積積算膜厚管理部を有し、前記第1の膜とは異なる第2の膜を成膜し、前記第1の膜を成膜する反応室よりクリーニングの必要頻度が高いとともにこの第1の膜を成膜する所定数の反応室より多い数の反応室とを具備し、
前記第2の膜を成膜する反応室のいずれか一のみを選択的に用いて前記第2の膜を成膜し、この第2の膜を成膜するいずれか一の反応室の前記累積積算膜厚管理部によって管理している累積して成膜した前記第2の膜の膜厚量が所定の量に達すると、前記第2の膜を成膜する反応室のいずれか他のみを選択的に用いて前記第2の膜を成膜する
ことを特徴とするプラズマCVD装置。
【請求項2】 第2の膜を成膜する反応室は、第1の膜を成膜する反応室より後工程に設けられる
ことを特徴とする請求項1記載のプラズマCVD装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、たとえば薄膜トランジスタ等を製造するプラズマCVD装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、たとえばアクティブマトリックス型液晶表示ディスプレイに用いる薄膜トランジスタの製造には、基板に複数の膜種の薄膜を連続的に形成するインライン型プラズマCVD装置が用いられている。このプラズマCVD装置は、図2に示すように、搬入室1、反応室2、搬出室3およびトレー搬送部4から構成される。また、トレー搬送部4には、基板着脱部5が形成されている。
【0003】
そして、このトレー搬送部4に設けられた基板着脱部5ではトレーに基板を搭載し、搬入室1に基板に搭載したトレーを搬送する。搬入室1では、室内を低圧にしトレーを所定の温度まで加熱し反応室2に搬送する。また、反応室2は、予め真空加熱状態にしておき、トレーが搬送されると室内に反応ガスを導入し、一定圧力にコンダクタンスバルブ等により保持させた後、高周波放電により基板上に薄膜を形成して、所定時間の放電終了後、搬出室3に搬送する。そして、搬出室3では、真空状態でトレーを搬入し大気圧状態に室内圧力を変化させた後、トレー搬送部4にトレーを搬出する。この搬出されたトレーは、再び基板着脱部5に戻され基板取り外しが行なわれる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記構成では反応室2での薄膜累積膜厚がある一定量を越えると、基板の成膜中に取込まれるゴミの量が異常に増加するため、歩留まりが著しく低下する。したがって、反応室2での薄膜の累積膜厚が一定量に達する以前に反応室2内のクリーニングをする必要がある。ところが、この作業にかかる時間は装置の稼働率低下の大きな要因になっていた。
【0005】
また、複数の膜種を連続して順次異なる反応室2にて形成する場合、膜種によりクリーニングが必要となる累積膜厚量が異なるため、クリーニング実施時期が反応室2ごとに異なってしまうので、その都度、反応室2に対応して装置を停止させなくてはならない。
【0006】
本発明は上記問題点に鑑みなされたもので、クリーニング頻度を減少させるとともに、装置稼働率を向上させ、しかも、歩留まりの低下を抑制するプラズマCVD装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明のプラズマCVD装置は、第1の膜を成膜する所定数の反応室と、成膜した膜厚量を累積して積算し管理する累積積算膜厚管理部を有し、前記第1の膜とは異なる第2の膜を成膜し、前記第1の膜を成膜する反応室よりクリーニングの必要頻度が高いとともにこの第1の膜を成膜する所定数の反応室より多い数の反応室とを具備し、前記第2の膜を成膜する反応室のいずれか一のみを選択的に用いて前記第2の膜を成膜し、この第2の膜を成膜するいずれか一の反応室の前記累積積算膜厚管理部によって管理している累積して成膜した前記第2の膜の膜厚量が所定の量に達すると、前記第2の膜を成膜する反応室のいずれか他のみを選択的に用いて前記第2の膜を成膜するものである。
【0008】
【作用】
本発明のプラズマCVD装置は、第1の膜を成膜する反応室より、クリーニングの必要頻度が高い第2の膜を成膜する反応室の数を多くし、これら第2の膜を成膜する反応室のいずれかを選択的に用いて第2の膜を成膜することにより、クリーニングの必要頻度が高い第2の膜を成膜する反応室の数が多いので、装置のクリーニングのための停止回数が少なくなる。また、第2の膜を成膜する反応室の累積積算膜厚管理部にてこの反応室で成膜する第2の膜の膜厚量を累積して積算し管理し、いずれか一の反応室のみを選択的に用いて第2の膜を成膜し、このいずれか一の反応室の累積積算膜厚管理部によって管理している累積して成膜した第2の膜の膜厚量が所定の量に達すると、第2の膜を成膜する反応室のいずれか他のみを選択的に用いて第2の膜を成膜する。
【0009】
【実施例】
以下、本発明の一実施例を、一般に、ボトムゲート型のいわゆる逆スタガー構造といわれる、アクティブマトリックス液晶ディスプレイ用の薄膜トランジスタの製造用のインライン型プラズマCVD装置を用いて図面を参照して説明する。
【0010】
このプラズマCVD装置は、図1に示すように、搬入室11、加熱室12、第1反応室13、第1冷却室14、第2反応室15、第3反応室16、第4反応室17、第2冷却室18、搬出室19およびトレー搬送部20が順次配設されて構成される。また、トレー搬送部20には、基板着脱部21が設けられている。さらに、第2反応室15および第3反応室16には、それぞれ累積積算膜厚管理部22,23が設けられ、これら累積積算膜厚管理部22,23は、放電時間の累積時間カウンタを使用している。そして、トレー搬送部20に設けられた基板脱着部21において、基板を搭載したトレーは搬入室11に搬入され、大気圧状態から低圧状態にされた後、加熱室12に低圧状態にて搬送され所定の温度、たとえば300℃まで加熱される。その後、第1反応室13において窒化シリコン膜(SiNx)を所定の膜厚、たとえば約200nm成膜し、第1冷却室14において約250℃まで低圧雰囲気中にて冷却され、第2反応室15あるいは第3反応室16のいずれかにおいてアモルファスシリコン(α-Si)膜を所定の膜厚、たとえば約50nm成膜し、第4反応室17において窒化シリコン膜(SiNx)を所定の膜厚、たとえば約200nm成膜する。そして、第2冷却室18にて約150℃以下まで基板温度を冷却させ、搬出室19に搬入され搬出室19内を低圧状態から大気圧状態にした後、装置から搬出される。なお、第1反応室13から搬出室19までのトレーの移動は、低圧状態下にて行なわれる。
【0011】
一般に、反応室は成膜すればするほど発塵が多くなり、ある累積膜厚を越えると急激的にその量が増加する。基板側での換算膜厚で窒化シリコンの場合約50μm、アモルファスシリコンの場合約5μm程度の累積にて発塵が増大しクリーニングが必要となる。したがって、第1反応室13および第4反応室17は50μm/200nm=250回、第2反応室15および第3反応室16は5μm/50nm=100回成膜を実施したらクリーニングを要する。
【0012】
上記実施例ではアモルファスシリコン用の反応を第2反応室15または第3反応室16の2室構成としているため100回×2=200回の成膜実施にてクリーニングを実施すればよい。したがって、従来100回に1回行なっていたクリーニングを、半分の200回に1回に減らすことができる。また、第2反応室15および第3反応室16の累積積算膜厚管理部22,23により、装置のクリーニング直後は第2反応室15を使用してアモルファスシリコン成膜を実施し、第2反応室15の累積膜厚が5μmに達した時点で、自動的に第3反応室16にてアモルファスシリコン成膜が可能となるようにしている。さらに、第3反応室16での累積膜厚が5μmに達した時点で、クリーニング実施要求をCRTなどに表示可能となっている。
【0013】
なお、加熱室12を設けずに、搬入室11にて加熱を行なってもよく、また、第2冷却室18を設けずに、搬出室19にて冷却を行なってもよい。そして、膜種は窒化シリコンとアモルファスシリコンに限るものではなく、シリコンオキサイド(SiOx)等であってもよい。
【0014】
さらに、累積積算膜厚管理部は第2反応室15および第3反応室16に設ける場合に限るものではなく、他の反応室にあってもよい。
【0015】
また、同一膜を形成するための反応室の数は、発塵が急激に増加するまでの累積される膜厚および製品に必要な膜厚の関係から設定すればよい。
【0016】
【発明の効果】
本発明のプラズマCVD装置によれば、第1の膜を成膜する反応室より、クリーニングの必要頻度が高い第2の膜を成膜する反応室の数を多くし、これら第2の膜を成膜する反応室のいずれかを選択的に用いて第2の膜を成膜することにより、クリーニングの必要頻度が高い第2の膜を成膜する反応室の数が多いので、装置のクリーニングのための停止回数が少なくなり稼働率を向上でき、また、第2の膜を成膜する反応室の累積積算膜厚管理部にてこの反応室で成膜する第2の膜の膜厚量を累積して積算し管理し、いずれか一の反応室のみを選択的に用いて第2の膜を成膜し、このいずれか一の反応室の累積積算膜厚管理部によって管理している累積して成膜した第2の膜の膜厚量が所定の量に達すると、第2の膜を成膜する反応室のいずれか他のみを選択的に用いて第2の膜を成膜できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明のプラズマCVD装置の一実施例を示すブロック図である。
【図2】
従来例のプラズマCVD装置を示すブロック図である。
【符号の説明】
13 第1反応室
15 第2反応室
16 第3反応室
17 第4反応室
22,23 累積積算膜厚管理部
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-06-08 
出願番号 特願平3-49634
審決分類 P 1 651・ 121- YA (C23C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 宮澤 尚之  
特許庁審判長 石井 良夫
特許庁審判官 西村 和美
岡田 和加子
登録日 2001-10-19 
登録番号 特許第3243258号(P3243258)
権利者 東芝電子エンジニアリング株式会社 株式会社東芝
発明の名称 プラズマCVD装置  
代理人 樺沢 襄  
代理人 樺沢 聡  
代理人 樺沢 襄  
代理人 樺沢 聡  
代理人 樺沢 襄  
代理人 樺澤 聡  

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