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審決分類 |
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載 A61F 審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備 A61F 審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 A61F 審判 全部申し立て 2項進歩性 A61F |
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管理番号 | 1102826 |
異議申立番号 | 異議2003-72218 |
総通号数 | 58 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1997-06-10 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-09-03 |
確定日 | 2004-06-23 |
異議申立件数 | 1 |
訂正明細書 | 有 |
事件の表示 | 特許第3383497号「使い捨ての体液吸収性着用物品」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 訂正を認める。 特許第3383497号の請求項1に係る特許を維持する。 |
理由 |
1.手続の経緯 本件特許第3383497号は、平成7年11月30日の出願に係り、平成14年12月20日に設定登録がなされ、平成15年3月4日にその特許掲載公報が発行され、その後、株式会社日本触媒より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成16年5月6日に特許異議意見書の提出とともに訂正請求がなされたものである。 2.訂正の適否についての判断 2-1.訂正の内容 特許権者は本件特許明細書の記載を訂正明細書のとおりに訂正することを求めており、その具体的な内容は以下のとおりのものである。 A.【特許請求の範囲】の【請求項1】の記載中、 「とによって構成されていること」とあるのを、 「とによって構成され、前記ポリマー粒子が互いに密に接している状態で体液と接触すると、前記体液が前記第1ポリマー粒子に吸収されて前記第1ポリマー粒子が膨潤する一方、容易に膨潤することのない前記第2ポリマー粒子が膨潤する前記第1ポリマー粒子間に体液の浸透可能な空隙を提供すること」と訂正する。 B.明細書の段落【0006】の記載中、 「とによって構成されていること」とあるのを、 「とによって構成され、前記ポリマー粒子が互いに密に接している状態で体液と接触すると、前記体液が前記第1ポリマー粒子に吸収されて前記第1ポリマー粒子が膨潤する一方、容易に膨潤することのない前記第2ポリマー粒子が膨潤する前記第1ポリマー粒子間に体液の浸透可能な空隙を提供すること」と訂正する。 C.明細書の段落【0004】及び【0011】に記載された「高給水性ポリマー粒子」を「高吸収性ポリマー粒子」と訂正する。 2-2.訂正の適否 訂正事項Aは、訂正前の【請求項1】に係る発明を特定する「ポリマー粒子」を構成する第1ポリマー粒子と第2ポリマー粒子とが、「前記ポリマー粒子が互いに密に接している状態で体液と接触すると、前記体液が前記第1ポリマー粒子に吸収されて前記第1ポリマー粒子が膨潤する一方、容易に膨潤することのない前記第2ポリマー粒子が膨潤する前記第1ポリマー粒子間に体液の浸透可能な空隙を提供する」という関係にあるものと特定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、当該訂正事項Aに係る事項は、特許明細書の段落【0024】に記載されている。 訂正事項Bは、訂正事項Aにより訂正された特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを整合させるためのものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。 訂正事項Cは明らかな誤記の訂正を目的とするものである。 上記の訂正事項は、いずれも、訂正前の明細書に記載された範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。 以上のとおりであるから、上記の訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。 3.特許異議の申立てについて 3-1.取消理由通知の概要 [理由1] 本件明細書の記載は、概略下記(a)(b)の点で特許法第36条第4項及び第6項第2号に規定する要件を満たしていないので、本件請求項1に係る特許は取り消されるべきである。 (a)本件明細書の特許請求の範囲に記載された吸水時間の測定方法は、技術的に不明確であり、特許を受けようとする発明が明確でない。 (b)本件明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許請求の範囲に記載された第1ポリマー粒子の吸水速度及び、第1ポリマー粒子と第2ポリマー粒子の吸水速度の差を求めるに当たり、測定試料である各ポリマー粒子がどのようにして入手されたものであるのか明確に開示していないので、当業者が本件発明を実施できる程度に明確かつ十分に記載しているものとは認められない。 [理由2] 本件請求項1に係る発明は、参考資料1及び2の記載を参照すれば、その出願前に頒布された刊行物1乃至刊行物4のいずれかに記載された発明であって、特許法第29条第1項第3号の規定に該当し、特許を受けることができないものであるから、その特許は取り消されるべきである。 3-2.[理由1]について (a)について 訂正明細書の【特許請求の範囲】の記載は以下のとおりである。 「【請求項1】 吸水性繊維質材料と高吸水性ポリマー粒子とからなる吸液性コアの少なくとも一部を透液性シートで被覆してなる使い捨ての体液吸収性着用物品において、 前記ポリマー粒子が下記条件で測定される10秒以下の短い吸水時間を有する第1ポリマー粒子と、該第1ポリマー粒子よりも10秒以上長い吸水時間を有し、かつ該第1ポリマー粒子に一体的に接合した第2ポリマー粒子とによって構成され、前記ポリマー粒子が互いに密に接している状態で体液と接触すると、前記体液が前記第1ポリマー粒子に吸収されて前記第1ポリマー粒子が膨潤する一方、容易に膨潤することのない前記第2ポリマー粒子が膨潤する前記第1ポリマー粒子間に体液の浸透可能な空隙を提供することを特徴とする前記物品。 測定条件 (1)0.9%食塩水25mlを50mlビーカーに入れ、マグネチックスタラにより直径7mm,長さ20mmの回転素子を500r.p.m.で回転させ、撹拌する。 (2)1gの高吸水性ポリマー粒子を撹拌中のビーカーに入れ、目視により該ポリマー粒子が前記食塩水を全量吸収するまでに要する吸水時間を測定する。」 上記の【特許請求の範囲】【請求項1】の記載によれば、上記(1)(2)に示された測定条件によって得ようとする事項は、(i)「第1ポリマー粒子の吸水速度が10秒以下の短い吸水速度であること」、(ii)「第2ポリマー粒子が第ポリマー粒子よりも10秒以上長いこと」であると認められる。 そして、上記測定事項(ii)については、第1ポリマー粒子と第2ポリマー粒子との吸水時間の差異を求めるものであり、上記(1)(2)には規定されていないが、たとえば、温度や湿度のように吸水時間に影響することが推測される他の測定条件について、当業者が技術常識に照らして想定しうる条件とし、該条件及び目視によりポリマー粒子が食塩水を全量吸収したとする判断基準を両者について同一のものとすれば、両者の差異を求めることができることは明らかである。 一方、測定事項(i)は第1ポリマー粒子の吸水時間そのものを求めるものであり、たとえば、温度や湿度のように上記(1)(2)に規定された測定条件以外の測定条件や目視判断の基準によってその絶対値が異なり、「吸水時間」を正確に把握し得ないという問題点が生じることが予測される。 そこで上記の問題点について検討すると、本件明細書の【特許請求の範囲】において規定する第1ポリマー粒子の吸水時間は、「10秒以下の短い吸水時間」というものであり、さらに第2ポリマー粒子の吸水時間との速度差の基準として設定されていることを見れば、上記の数値の特定は、上記測定条件(1)(2)とともに、当業者が技術常識に照らして想定しうる条件下で、測定した結果、「ポリマー粒子が食塩水を全量吸収」したと見られるまでに要する時間が、当該分野の常識に照らして短い、10秒を超えることがない時間であるいう程度のことを規定しているものと解釈することができ、「10秒」に格別の臨界的意義があるものとも認められない。 してみれば、本件明細書の【特許請求の範囲】には、「吸水時間」について、完全な測定条件及び正確な判定基準が示されているということはできないとしても、そのことによって、本件請求項1に係る発明の把握ができないものとなるというものではない。 したがって、上記(a)の点によって、本件請求項1に係る特許を取り消さなければならないものとはいえない。 (b)について 本件明細書には、複合体ポリマー粒子の製造法の実施例として、水溶性エチレン性不飽和単量体を重合反応させることにより第1ポリマー粒子を製造する過程において、第2ポリマー粒子をその重合反応系に添加して得られる旨(【0013】の記載参照)及び、添加される(第2)ポリマー粒子には、市販されている一般的な吸水性樹脂を用いることができる旨(【0021】の記載参照)が記載されている。してみれば、本件明細書の【特許請求の範囲】に規定する第1ポリマー粒子及び第2ポリマー粒子のそれぞれの吸水速度の測定に当たって、第1ポリマー粒子の試料として、水溶性エチレン性不飽和単量体を重合反応させることにより(第2ポリマー粒子を添加することなく)製造されたポリマー粒子を用い、第2ポリマー粒子の試料として、上記重合反応系に添加する前の市販の一般的な吸水性樹脂からなるポリマー粒子を用いることは当業者が容易に想到し得ることであり、試料の調整について明記されていないことをもって、本件明細書の記載によっては、当業者が本件請求項1に係る発明を実施し得ないとすることはできない。 したがって、上記(b)の点も本件請求項1に係る特許を取り消すべき理由とはなりえない。 3-3.[理由2]について 3-3-1.本件発明 本件請求項1に係る発明は、上記「3-2.[理由1]について」の項で示したとおりの、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。 3-3-2.取消理由通知に提示した刊行物等の記載事項 刊行物1[米国特許第4734478号明細書(異議申立人の提出した甲第2号証)]には、吸収性樹脂からなる吸収剤の製造技術に関する事項が記載されており、実施例に、吸収剤(1)、(2)を水とともに混合攪拌し、混合物を造粒解砕して得られた吸収剤(5)、(6)がもとの吸収剤(1)、(2)に比べて、粒径分布が大径側にあり、これを紙オムツに使用した時にしみ出し量が減少しているという測定結果が示されている。 刊行物2[特開平2-227435号公報(異議申立人の提出した甲第3号証)]には、おむつ等の吸収性物品に有用な吸液性ポリマー組成物に関して、ベースポリマー粒子を表面架橋してベースポリマー粒子よりも大きいサイズの粒子を造粒することにより、吸収速度の速いポリマー粒子を得られること、ベースポリマーについて粒子サイズが大きいほど吸収速度が小さくなる傾向があることが示されている。 刊行物3[国際公開WO91/17200号公報(異議申立人の提出した甲第4号証)]には、高吸水性樹脂粉末を粘結し、これを必要に応じて破砕造粒して所望の範囲内の粒度を有する高吸水性樹脂を得ること、このようにして得られた高吸水性樹脂粉末の粘結造粒物が紙おむつ等の衛生用品に利用されることが記載されている。 刊行物4[特開平6-184212号公報(異議申立人の提出した甲第5号証)」には、アクリル酸モノマーの装填材料Iの逆懸濁重合の後、そこにアクリル酸モノマーの装填材料IIを供給して重合させることにより、体液を吸収し、かつ保持するためのサニタリー製品に用いられる粉末超吸収剤を製造する従来方法とその改良が記載され、そのようにして得られた超吸収剤の顕微鏡写真として比較的大きな粒子と比較的小さな粒子が一体的に結合しているようにみえるものが示されている。 参考資料1[「JIS K 7224」平成8年3月31日、日本規格協会発行(異議申立人の提出した甲第1号証)]は、高吸水性樹脂のボルテックス法による吸水速度の試験方法を規定するもので、試験液等の調整及び試験温度・湿度、試験器具、試料、操作、終点の判定基準等が示され、また、高吸水性樹脂の粒径が小さいほど吸水時間が短いことが示されている。 参考資料2[試験成績報告書 石崎邦彦作成(異議申立人の提出した甲第6号証)]は、上記刊行物1〜3に実施例として示されたポリマー粒子について、追試した原料の粒径分布及び粒径分布毎の吸水時間の測定結果並びに得られた吸水剤の顕微鏡写真を示す報告書である。 3-3-3.対比・判断 上記刊行物1乃至4のいずれにも、おむつ等の体液吸収性着用物品に使用する高吸水性ポリマー粒子について、高吸水性ポリマー粒子が粒径によって吸水能力や吸水速度に違いがあることが開示されており、また、高吸水性ポリマー粒子の粒径は、刊行物1及び2にも記載されているように通常は所定の範囲内での分布を有し、必ずしも均一ではないことから、吸水速度の異なるポリマー粒子が混在しておむつ等の体液吸収性物品に用いられることを推察することはでき、また造粒された吸水性ポリマーとして粒径の異なるすなわち吸水速度の異なる粒子が一体的に接合した状態にあるような吸水性ポリマーが混在しうることは刊行物4或いは参考資料2に添付された顕微鏡写真から推察することはできる。 しかしながら、本件請求項1に係る発明における第1ポリマー粒子と第2ポリマー粒子とが一体的に接合してなる「高吸水性ポリマー粒子」の特徴点である、「ポリマー粒子が互いに密に接している状態で体液と接触すると、前記体液が前記第1ポリマー粒子に吸収されて前記第1ポリマー粒子が膨潤する一方、容易に膨潤することのない前記第2ポリマー粒子が膨潤する前記第1ポリマー粒子間に体液の浸透可能な空隙を提供する」点については、上記刊行物1乃至4のいずれにも記載されておらず、参考資料1及び2を参照しても、上記刊行物1乃至4に上記の特徴点が記載されていると見なすべき理由を見いだすことはできない。 さらに、本件請求項1に係る発明は、上記の特徴点を具備することにより、明細書に記載されたように体液を吸収した表面近傍の第1ポリマー粒子が膨潤しても第2ポリマー粒子の存在により表層近傍でゲルブロックを形成することなく下方の第1ポリマー粒子が有効利用されるという上記刊行物等の記載からは予測し得ない効果を奏するものと認められる。 したがって、本件請求項1に係る発明は、上記参考資料1及び2に開示された事項を参照しても、上記刊行物1乃至4に記載された発明ということはできず、また、上記刊行物1乃至4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものということもできない。 4.異議申立人の主張 異議申立人は、上記の当審で通知した取消理由の[理由1]及び[理由2]に相当する理由に加えて、本件請求項1に係る発明は、甲第1及び6号証(参考資料1及び2)を参酌すれば、甲第2乃至5号証(刊行物1乃至4)に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をし得たものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであることを理由として、その特許を取り消すべきである旨を主張しているが、本件請求項1に係る発明が、上記参考資料1及び2に開示された事項を参照しても、上記刊行物1乃至4に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということができないことは上記「3-3-3.対比・判断」の項で述べたとおりである。 5.むすび 以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1に係る特許を取り消すことはできない。 また、他に本件請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
発明の名称 |
(54)【発明の名称】 使い捨ての体液吸収性着用物品 (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 吸水性繊維質材料と高吸水性ポリマー粒子とからなる吸液性コアの少なくとも一部を透液性シートで被覆してなる使い捨ての体液吸収性着用物品において、 前記ポリマー粒子が下記条件で測定される10秒以下の短い吸水時間を有する第1ポリマー粒子と、該第1ポリマー粒子よりも10秒以上長い吸水時間を有し、かつ該第1ポリマー粒子に一体的に接合した第2ポリマー粒子とによって構成され、前記ポリマー粒子が互いに密に接している状態で体液と接触すると、前記体液が前記第1ポリマー粒子に吸収されて前記第1ポリマー粒子が膨潤する一方、容易に膨潤することのない前記第2ポリマー粒子が膨潤する前記第1ポリマー粒子間に体液の浸透可能な空隙を提供することを特徴とする前記物品。 測定条件 (1)0.9%食塩水25mlを50mlビーカーに入れ、マグネチックスタラにより直径7mm,長さ20mmの回転素子を500r.p.m.で回転させ、撹拌する。 (2)1gの高吸水性ポリマー粒子を撹拌中のビーカーに入れ、目視により該ポリマー粒子が前記食塩水を全量吸収するまでに要する吸水時間を測定する。 【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】 この発明は、使い捨ておむつや生理用ナプキン等の使い捨ての体液吸収性着用物品に関する。 【0002】 【従来の技術】 従来、この種着用物品において、粉砕パルプと高吸水性ポリマー粒子とからなる吸液性コアを透液性シートで被覆して使用することは慣用技術として知られている。また、その高吸水性ポリマー粒子が、吸水すると粘着性を帯びて粒子どうしが結合し、ゲルブロックを形成し易いこともよく知られている。かかるゲルブロックは、吸液性コア内での体液の浸透を阻止するように作用するから、例えばそれがコアの表層近くに形成されると、体液が横漏れする原因となる。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】 このような高吸水性ポリマー粒子のゲルブロックの形成を防止するための方策の一つは、ポリマー粒子をそれと共に使用する粉砕パルプ等の吸水性繊維質材料の中に分散し、粒子どうしが密に接しないようにすることである。ところが、吸液性コアの大きさには限度があるから、このようなポリマー粒子の使い方では、その使用量に制約を受け、思うようにポリマー粒子を多くすることができないことがある。この問題を解消するために、吸水速度の速いポリマー粒子と遅いポリマー粒子とを併用することがある。例えば、吸水速度の異なる2種類のポリマー粒子を混合し、その混合物が吸液性コアの中で一つの層を形成するように使用する。ところが、2種類のポリマー粒子の粒径が大きく異なると、それらを均一に混合することが難しい。また、それら2種類のポリマー粒子を混合することなく、それぞれが吸液性コアの中で別々の層を形成し、速度の遅いポリマー粒子層が上方に位置し、速度の速いポリマー粒子層がそれよりも下方に位置し、これら両層間に粉砕パルプが介在するような構成にすることもできるが、この場合には、吸液性コアの製造工程でポリマー粒子の供給が少なくとも2回となり、工程がそれだけ複雑になる。 【0004】 そこで、この発明では、前記従来技術の問題を一挙に解決すべく、吸液性コア内で高吸水性ポリマー粒子が容易にゲルブロックを形成することがないようにすることを課題にしている。 【0005】 【課題を解決するための手段】 前記課題を解決するために、この発明が前提とするのは、吸水性繊維質材料と高吸水性ポリマー粒子とからなる吸液性コアの少なくとも一部を透液性シートで被覆してなる使い捨ての体液吸収性着用物品である。 【0006】 かかる前提において、前記ポリマー粒子が下記条件で測定される10秒以下の短い吸水時間を有する第1ポリマー粒子と、該第1ポリマー粒子よりも10秒以上長い吸水時間を有し、かつ該第1ポリマー粒子に一体的に接合した第2ポリマー粒子とによって構成され、前記ポリマー粒子が互いに密に接している状態で体液と接触すると、前記体液が前記第1ポリマー粒子に吸収されて前記第1ポリマー粒子が膨潤する一方、容易に膨潤することのない前記第2ポリマー粒子が膨潤する前記第1ポリマー粒子間に体液の浸透可能な空隙を提供することがこの発明の特徴である。 【0007】 測定条件 (1)0.9%食塩水25mlを50mlビーカーに入れ、マグネチックスタラにより直径7mm,長さ20mmの回転素子を500r.p.m.で回転させ、撹拌する。 (2)1gの高吸水性ポリマー粒子を撹拌中のビーカーに入れ、目視によりこのポリマー粒子が前記食塩水を全量吸収するのに要する吸水時間を測定する。 【0008】 【実施例】 添付の図面を参照し、使い捨て体液吸収性着用物品として使い捨ておむつを例にとり、この発明の詳細を説明すると、以下のとおりである。 【0009】 図1に部分破断斜視図で示すおむつ1は、透液性表面シート2と、不透液性裏面シート3と、これら両シート2,3間に介在する吸液性コア4とによって構成され、両シート2,3がコア4の周縁から延出する部分で重なり合い、水密に接合している。おむつ1の長手方向は、前側胴域(前身頃)6と、後側胴域(後身頃)7と、これら前後側胴域6,7間に位置する股下域8とからなり、後側胴域7の端縁9と、股下域8の左右各側縁10との近傍には、それぞれ腰周り弾性部材13と脚周り弾性部材14とがあり、これら両部材13,14が表裏面シート2,3間にあって、両シート2,3の少なくとも一方の内面に伸長状態で接合している。後側胴域7の左右各側縁部16にはテープファスナ15がある。 【0010】 図2は、図1のII-II線端面図である。この図において、コア4は、上層21と、下層22と、これら上下層21,22を被覆するティッシュペーパー23とで構成されている。上層21は、坪量190g/m2有し、90重量%の粉砕パルプ25と10重量%の熱溶融性繊維26との混合物である。下層22は、坪量430g/m2有し、50重量%の粉砕パルプ25と、5重量%の熱溶融性繊維26と、45重量%の高吸水性ポリマー粒子27とで構成され、ポリマー粒子27が層をなして分布し、その上下に粉砕パルプ25と熱溶融繊維25との混合物の層28A,28Bがある。上下層21,22は、熱処理されて各層内と層間の熱溶融繊維25が互いに溶着することにより一体化し、コア4全体の型崩れが防止されている。ティッシュペーパー23は、おむつ1の製造工程において粉砕パルプ25等の飛散を防ぎ、コア4の取扱いを容易にするものであり、コア4の性状によってはその使用を省くことができる。 【0011】 図3に模式的な拡大図で示す高吸水性ポリマー粒子27は、吸水速度が相対的に速く、粒径が比較的小さい第1ポリマー粒子27Aと、この粒子に接合し、吸水速度が相対的に遅く、粒径が比較的大きい第2ポリマー粒子27Bとで構成され、全体として0.2〜0.8mmの粒径を有する。第1ポリマー粒子27Aと第2ポリマー粒子27Bとは、次の測定条件で10秒以上の吸水時間の差を有し、かつ、第1ポリマー粒子27Aは、10秒以下の短い吸水時間を有する。 【0012】 吸水時間の測定条件 (1)25mの10.9%食塩水を50mlビーカーに入れ、マグネチックスタラにより直径7mm,長さ20mmの回転素子を500r.p.m.で回転させ、撹拌する。 (2)1gの高吸水性ポリマー粒子を撹拌中のビーカーに入れ、目視によりそのポリマー粒子が食塩水を全量吸収するのに要する吸水時間を測定する。 【0013】 吸水速度の異なる第1,2ポリマー粒子27A,27Bの複合体であるポリマー粒子27は、例えば、水溶性エチレン性不飽和単量体を重合反応させることにより吸水速度の速い第1ポリマー粒子27Aを製造する過程において、吸水速度の遅い第2ポリマー粒子27Bをその重合反応系に添加することにより得ることができる。 【0014】 このポリマー粒子27の製法をさらに具体的に言えば、水溶性エチレン性不飽和単量体には、(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸およびそれらのアルカリ塩、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミドなどの非イオン性単量体、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのアミノ基含有不飽和単量体やそれらの4級化合物などを使用することができる。これらの水溶性エチレン性不飽和単量体は、2種以上を混合して使用することもできる。なお、ここで(メタ)アクリル酸とその誘導体は、アクリル酸とその誘導体とに替えることができる。これらの水溶性エチレン性不飽和単量体は、通常水溶液の状態で使用する。 【0015】 これらの水溶性エチレン性不飽和単量体は、炭化水素溶媒を使用して逆相懸濁重合させる。炭化水素溶媒としては、脂肪族炭化水素溶媒、脂環族炭化水素溶媒および芳香族炭化水素溶媒がある。脂肪族炭化水素溶媒には、n-ヘキサンやn-ヘプタン、リグロインなどがあり、脂環族炭化水素溶媒には、シクロペンタンやメチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどがあり、芳香族炭化水素溶媒には、ベンセンやトルエン、キシレンなどがある。これらの炭化水素溶媒は、2種以上を混合して使用することもできる。 【0016】 逆相懸濁重合の際には、炭化水素溶媒に界面活性剤や高分子保護コロイドを添加する。これら界面活性剤と高分子保護コロイドとは併用してもよい。その界面活性剤は、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を逆相懸濁重合できるものであればよく、例えば、ソルビタン脂肪酸エステルやポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の非イオン性界面活性剤を使用できる。また、高分子保護コロイドには、例えば、エチルセルロースやエチルヒドロキシエチルセルロース、酸化変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、無水マレイン酸変性EPDM(エチレン・プロピレン・ジエン・ターポリマー)などがある。 【0017】 これらの非イオン性界面活性剤および高分子保護コロイドは、脂肪酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルメチルタウリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルスルホン酸塩などのアニオン性界面活性剤と併用することができる。界面活性剤および/または高分子保護コロイドの使用量は、通常、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液の0.1〜5重量%、好ましくは0.2〜3重量%である。 【0018】 水溶性エチレン性不飽和単量体の重合には架橋剤を使用することができる。その架橋剤としては、重合性不飽和基を2個以上有するエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリンポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリンなどのポリオール類のジまたはトリ(メタ)アクリル酸エステル類、これらのポリオール類とマレイン酸、フマール酸などの不飽和酸類とを反応させて得られる不飽和ポリエステル類、N,N’-メチレンビスアクリルアミドなどのビスアクリルアミド類、ポリエポキシドと(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるジまたはトリ(メタ)アクリル酸エステル類、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどのポリイソシアネートと(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとを反応させて得られるジ(メタ)アクリル酸カルバミルエステル類、アリル化デンプン、アリル化セルロース、ジアリルフタレート、N,N’,N”-トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼンなどがある。また、架橋剤として、反応性官能基を2個以上有する、例えば、ジグリシジルエーテル化合物、ハロエポキシ化合物、イソシアネート化合物などを用いることもできる。これら架橋剤の使用量は、水溶性エチレン性不飽和単量体の0.001〜5重量%である。 【0019】 重合反応には、ラジカル重合開始剤を使用する。このラジカル重合開始剤には、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムなどの水溶性ラジカル重合開始剤や過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリルなどの油溶性ラジカル重合開始剤を使用することができる。これらのラジカル重合開始剤の使用量は、水溶性エチレン性不飽和単量体の0.005〜1.0モル%である。 【0020】 重合反応の温度は、使用する重合開始剤により異なるが、通常、20〜110℃、好ましくは40〜80℃である。 【0021】 水溶性エチレン性不飽和単量体の重合反応系に添加する高吸水性ポリマー粒子には、市販されている一般的な吸水性樹脂を用いることができる。具体的には澱粉-アグリロニトリルグラフト共重合体の加水分解物や澱粉-アクリル酸グラフト共重合体の中和物などの澱粉系吸水性樹脂、酢酸ビニル-アクリル酸エステル共重合体のケン化物、ポリアクリル酸部分中和物、無水マレイン酸-イソブチレン共重合体および水溶性エチレン性不飽和単量体の重合物などがある。 【0022】 重合反応系に添加する高吸水性ポリマー粒子の量は、反応系の水溶性エチレン性不飽和単量体の5〜50重量%である。 【0023】 重合反応系に吸水性ポリマー粒子を添加する時機としては、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液中に最初から添加しておく場合の他に、水溶性エチレン性不飽和単量体水溶液を炭化水素溶媒に分散させた後に引き続き高吸水性ポリマー粒子を添加する場合などがある。 【0024】 【発明の効果】 この発明にかかる着用物品では、高吸水性ポリマー粒子が吸水速度の速い第1ポリマー粒子と、該第1ポリマー粒子よりも10秒以上遅い吸水速度を有し、かつ、この粒子に一体的に接合した第2ポリマー粒子とで構成されている。この高吸水性ポリマー粒子では、ポリマー粒子が層を形成するように多量に使用され、粒子どうしが互いに密に接している状態のところに体液が流れてくると、体液の一部は、ポリマー粒子層の表面近傍で第1ポリマー粒子に吸収され、該第1ポリマー粒子が膨潤して粒子間隙を埋め、体液の下方への浸透を阻止するように作用する。一方、吸水速度の遅い第2ポリマー粒子は容易に膨潤することがなく、膨潤する第1ポリマー粒子間に体液の浸透を可能にする空隙を提供する。体液は、その空隙を通り下方の第1ポリマー粒子に接触し、そこで吸収される。このように、第2ポリマー粒子の存在は、層をなす高吸水性ポリマー粒子がその表層近傍でゲルブロックを形成することを防止する。それにより、ポリマー粒子層の下方にある第1ポリマー粒子の有効利用が可能になる。 【図面の簡単な説明】 【図1】 使い捨ておむつの部分的破断斜視図。 【図2】 図1のII-II線端面図。 【図3】 高吸水性ポリマー粒子の模式的拡大図。 【符号の説明】 1 使い捨て着用物品(使い捨ておむつ) 2 透液性シート(表面シート) 4 コア 25 吸水性繊維質材料 27 高吸水性ポリマー粒子 27A 第1ポリマー粒子 27B 第2ポリマー粒子 |
訂正の要旨 |
審決(決定)の【理由】欄参照。 |
異議決定日 | 2004-06-07 |
出願番号 | 特願平7-311912 |
審決分類 |
P
1
651・
113-
YA
(A61F)
P 1 651・ 537- YA (A61F) P 1 651・ 536- YA (A61F) P 1 651・ 121- YA (A61F) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 福井 美穂 |
特許庁審判長 |
鈴木 美知子 |
特許庁審判官 |
粟津 憲一 溝渕 良一 |
登録日 | 2002-12-20 |
登録番号 | 特許第3383497号(P3383497) |
権利者 | ユニ・チャーム株式会社 |
発明の名称 | 使い捨ての体液吸収性着用物品 |
代理人 | 白浜 吉治 |
代理人 | 小林 義孝 |
代理人 | 松本 武彦 |
代理人 | 小林 義孝 |
代理人 | 白浜 吉治 |