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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A41B
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A41B
管理番号 1102827
異議申立番号 異議2003-72226  
総通号数 58 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1999-04-20 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-09-04 
確定日 2004-06-28 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3385188号「使い捨ておむつ」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3385188号の請求項1に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3385188号は、平成9年9月30日の出願に係り、平成14年12月27日に設定登録がなされ、平成15年3月10日にその特許掲載公報が発行され、その後、奥平登志子及び菱刈純子より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成16年5月6日に特許異議意見書の提出とともに訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
2-1.訂正の内容
特許権者は本件特許明細書の記載を訂正明細書のとおりに訂正することを求めており、その具体的な内容は以下のとおりのものである。
A.【特許請求の範囲】の【請求項1】の記載中、
「少なくとも前記折曲線の近傍と前記折曲線に平行する前記第2カフの内側縁の近傍とに前記おむつの前後方向へ延びる弾性伸縮部材が伸長状態で取り付けられている」とあるのを、
「前記折曲線の近傍に前記おむつの前後方向へ延びる第2弾性伸縮部材と、前記折曲線に平行する前記第2カフの内側縁の近傍に前記方向へ延びる第1弾性伸縮部材とがそれぞれ伸長状態で取り付けられ、前記第2弾性伸縮部材は、互いに平行する複数条の弾性伸縮部材から構成されていて、前記第1弾性伸縮部材よりも短い」と訂正する。
B.明細書の段落【0006】の記載中、
「少なくとも前記折曲線の近傍と前記折曲線に平行する前記第2カフの内側縁の近傍とには、前記おむつの前後方向へ延びる弾性伸縮部材が伸長状態で取り付けられている。」とあるのを、
「前記折曲線の近傍に前記おむつの前後方向へ延びる第2弾性伸縮部材と、前記折曲線に平行する前記第2カフの内側縁の近傍に前記方向へ延びる第1弾性伸縮部材とがそれぞれ伸長状態で取り付けられている。前記第2弾性伸縮部材は、互いに平行する複数条の弾性伸縮部材から構成されていて、前記第1弾性伸縮部材よりも短い。」と訂正する。

2-2.訂正の適否
訂正事項Aは、訂正前の【請求項1】に係る発明を特定する、折曲線の近傍と第2カフの内側縁の近傍とに伸長状態で取り付けられる、おむつの前後方向へ延びる弾性伸縮部材を、それぞれ、「第2弾性伸縮部材」、「第1弾性伸縮部材」としたうえで、そのうちの、第2弾性伸縮部材について、「互いに平行する複数条の弾性伸縮部材から構成されていて、前記第1弾性伸縮部材よりも短い」ものと特定するもので、特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、当該訂正事項Aに係る事項は、特許明細書の段落【0011】に記載されている。
訂正事項Bは、訂正事項Aにより訂正された特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とを整合させるためのものであり、明りょうでない記載の釈明を目的とするものである。
上記の訂正事項は、いずれも、訂正前の明細書に記載された範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
以上のとおりであるから、上記の訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについて
3-1.取消理由通知の概要
当審が通知した取消理由の概要は、本件請求項1に係る発明は、その出願前に頒布された下記の刊行物1乃至3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その特許は取り消されるべきであるというものである。
刊行物1:特開平6-30963号公報(異議申立人奥平登志子の提出した甲第1号証、異議申立人菱刈純子の提出した甲第1号証)
刊行物2:特開平6-209967号公報(異議申立人奥平登志子の提出した甲第3号証、異議申立人菱刈純子の提出した甲第3号証)
刊行物3:特開平8-215239号公報(異議申立人菱刈純子の提出した甲第4号証)

3-2.本件発明
本件請求項1に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される下記のとおりのものである。
「おむつにおける体液吸収の主要部位が透液性表面シートと、不透液性裏面シートと、これら両シート間に介在する吸液性コアとで構成されており、前記おむつの両側縁部には、前記おむつの前後方向へ延び、弾性伸縮性を備えている脚周り部と、前記おむつの前後方向へ延び、前記おむつの内側へ向かって前記おむつの内面に倒伏し、前記前後方向への弾性伸縮性を備えている防漏カフとが形成されている使い捨ておむつであって、
前記コアが、前記おむつの幅方向へ延びる前後それぞれの端縁と、前記前後方向へ延びる一対の側縁とを有し、前記側縁が、少なくとも前記前後方向の中央部位において前記コアの内側へ向かって湾曲しており、
前記防漏カフが、前記コアの側縁から側方へ延出している前記表面シートおよび裏面シートを少なくとも一部分として含み、前記側縁と該側縁の両端部を結ぶ仮想線とによって囲まれる範囲に広がる第1カフと、前記第1カフからの前記おむつ幅方向への延長部位が前記仮想線と該仮想線の外側において該仮想線に平行する第2の仮想線とのいずれかを折曲線にして前記おむつの内面へ倒伏するように折曲されることで形成された第2カフとで構成されていて、前記折曲線の近傍に前記おむつの前後方向へ延びる第2弾性伸縮部材と、前記折曲線に平行する前記第2カフの内側縁の近傍に前後方向へ延びる第1弾性伸縮部材とがそれぞれ伸長状態で取り付けられ、前記第2弾性伸縮部材は、互いに平行する複数条の弾性伸縮部材から構成されていて、前記第1弾性伸縮部材よりも短いことを特徴とする前記おむつ。」

3-3.取消理由通知に提示した刊行物の記載事項
上記刊行物1には、以下の事項が記載されている。
a.「液透過性のトップシートと、これに相対する液不透過性且つ蒸気透過性のバックシートと、これら両シート間に配置された吸収体とを有する吸収性本体、及び該吸収性本体が接合され且つ着用時に着用者のウエストを囲んで該吸収性本体を着用者にあてて保持する最外層シートを備え、上記最外層シートの腹側部及び背側部それぞれの両側縁部を接合固定してウエスト開口部と一対のレッグ開口部とを形成した使い捨ておむつであって、
上記吸収体の形状は長手方向中央に凹部を有する砂時計型であり、上記吸収性本体の幅方向両側に延出するサイドフラップ部の両側縁部には、伸縮弾性部材が長手方向に亘って張設されており、該伸縮弾性部材を有する上記サイドフラップ部の両側縁部が吸収体側に折り返されて、折り返されたサイドフラップ部の長手方向両端部が上記吸収体の上方の上記トップシートの表面に接合固定されていることを特徴とする使い捨ておむつ。」(【特許請求の範囲】【請求項1】)
b.「上記最外層シートの上記レッグ開口部に、伸縮弾性部材が設けられ、該伸縮弾性部材によりレッグギャザーが形成されていることを特徴とする請求項1記載の使い捨ておむつ。」(【特許請求の範囲】【請求項2】)
c.「請求項1に記載の使い捨ておむつは、最外層シートに吸収性本体を接合し、該吸収性本体を着用者の股下部に当て、通常の下着と同様にして着用する。着用中においては、吸収性本体のサイドフラップ部はその両側縁部に配置された伸縮弾性部材の伸縮力により該サイドフラップ部が起立されて、排泄物を保持する袋状の立体ギャザーが形成される。
このような、袋状の立体ギャザーは、サイドフラップ部の両側縁部に伸縮弾性部材を張設し、それを折り畳んでその長手方向両端部を接合固定するだけという簡単な構成で、容易に形成することができる。」(【0008】【作用】)
d.「請求項2に記載の発明によれば、最外層シートに第2レッグギャザーを形成するものであるから、排泄物の漏れを確実に防止できる。」(【0009】)
e.【図1】及び【図2】には、おむつの前後方向へ延びる最外層シートの両側縁部が、伸縮弾性部材24を備えたレッグ開口部7、7を構成していることが示され、【図2】〜【図6】には、サイドフラップ18が、おむつの前後方向の中央部位において内側に向かって湾曲した凹部を有する吸収体17(【図5】及び【図6】の「14」は誤記と認められる)の側縁から側方へ延出しているトップシート15及びバックシート16を含んでおり、該サイドフラップ18の折り返し部が、吸収体17の側縁の両端部を結ぶ仮想線の近傍(【図2】)、或いは該仮想線の外側において該仮想線と平行する線上(【図4】)にあり、サイドフラップ18は、該折返し部によって、それより吸収体側縁側の部分と、そこからおむつ内面へ倒伏されるように折り返される部分とに区分されることが示されている。
上記の記載によれば、刊行物1には、
「おむつにおける吸収性本体が液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、これら両シート間に介在する吸収体とを有しており、前記おむつの両側縁部には、前記おむつの前後方向へ延び、弾性伸縮性を備えている最外層シートで形成されたレッグ開口部と、前記おむつの前後方向へ延び、前記おむつの内側へ向かって前記おむつの内面に倒伏し、前記前後方向への弾性伸縮性を備えているサイドフラップとが形成されている使い捨ておむつであって、
前記吸収体が、おむつの前後方向の中央部位に凹部を有する砂時計型であり、
前記サイドフラップが、前記吸収体の側縁から側方へ延出している前記トップシートおよびバックシートを少なくとも一部分として含み、前記吸収体の側縁と該側縁の両端部を結ぶ仮想線とによって囲まれる範囲に広がるサイドフラップ部分と、該部分からの前記おむつ幅方向への延長部位が前記仮想線と該仮想線の外側において該仮想線に平行する線とのいずれかを折曲線にして前記おむつの内面へ倒伏するように折曲されることで形成された部分とで構成されていて、前記折曲線に平行する内面に倒伏された部分の内側縁の近傍に前記おむつの前後方向へ延びる弾性伸縮部材が張設されていることを特徴とする前記おむつ。」
が記載されているということができる。
上記刊行物2には、幼児用のおむつのような吸収用品の縦方向に延び、内縁36と外縁38とを有し、内縁36とC字折りされた縦方向両端縁が吸収用品の身体側ライナに結合され、外縁38がフラップ弾力材40によって弾性力を付与された「閉込めフラップ34」に関して、上記C字折り形態に形成されたときの折り線48に位置するように第2の組の弾力材である折り線フラップ弾力材52を具備する例について、折り線フラップ弾力材52は閉込めフラップ34が比較的大きい幅を有しているときに使用するのに特に適していること、弾力材の1またはそれ以上の個々のストランドからなり、例えば、複数の弾力材ストランドを空間的に分離し、概ね平行な配列に構成することが可能であることが記載され[第12欄第27〜37行の記載参照]、図12、13には閉込めフラップ34の折り線48近傍に2本の折り線フラップ弾力材52が示されている。
上記刊行物3には、使い捨ておむつのような使い捨て体液処理用品に関して[第1欄第22〜23行の記載参照]、透液性表面シートと不透液性裏面シートとの間に吸液性コアが介在し、該コアの左右各側縁から水平方向に延出する左右一対の第1フラップを有する用品本体の左右各側縁部上面に、該上面からの起立性向を備え、前記本体の前後方向に延びる左右一対の伸縮性第2フラップを有し、前記第2フラップを前記上面にその前後方向に延びる接合線によって固着した基端部とそれに並行する自由縁部との間で前記本体幅方向断面がジグザグ形状を画くように前記本体の内側とそれから離間した外側とにおいて交互に折曲して重ね、かつ、それによって並列する前記内側の各折曲線は重なり合うことがないように相対的に上方に位置するものを前記外側へ順次ずらし、該折曲線の各々に沿って弾性伸縮部材を伸長状態で前記第2フラップに貼着するとともに、前記外側へずらした弾性伸縮部材は外側に位置するものほどその両端部を前記本体の端縁に近づけて実質的にその上面に固定すること[第2欄第5〜23行の記載参照]、及び、その場合、各伸縮部材の両端部の間隔は本体の外側に位置するものほど広くなるから、用品が上に向かって広がるように湾曲すると、本体内側の伸縮部材が相対的に下方に位置し、外側の伸縮部材がそれよりも上方に位置する結果、ジグザグ形状に折り重ねた第2フラップは、本体の内側に向かって開口する複数のポケットを形成すること[第2欄第25〜37行の記載参照]等が図面とともに記載されている。

3-4.対比・判断
本件請求項1に係る発明と上記刊行物1に記載された発明とを対比すると、後者における「吸収性本体」、「液透過性のトップシート」、「液不透過性のバックシート」、「吸収体」、「レッグ開口部」、「サイドフラップ」は、前者における「体液吸収の主要部位」、「透液性表面シート」、「不透液性裏面シート」、「吸液性コア」、「脚周り部」、「防漏カフ」に相当し、後者において「長手方向中央に凹部を有する砂時計型であり」ということは、前者でいう「おむつの幅方向へ延びる前後それぞれの端縁と、前記前後方向へ延びる一対の側縁とを有し、前記側縁が、少なくとも前記前後方向の中央部位において前記コアの内側へ向かって湾曲しており」ということになり、後者でいう「張設」は「伸長状態で取り付ける」ことであるので、後者においてサイドフラップを構成する、砂時計型の吸収体の側縁と該側縁の両端部を結ぶ仮想線とによって囲まれる範囲に広がる部分を「第1カフ」と、該部分から前記おむつ幅方向への延長部位が前記仮想線あるいは該仮想線の外側において該仮想線に平行する第2の仮想線とを折曲線にして前記おむつの内面へ倒伏するように折曲されることで形成された部分を「第2カフ」と称すれば、両者は、
「おむつにおける体液吸収の主要部位が透液性表面シートと、不透液性裏面シートと、これら両シート間に介在する吸液性コアとを有しており、前記おむつの両側縁部には、前記おむつの前後方向へ延び、弾性伸縮性を備えている最外層シートで形成された脚周り部と、前記おむつの前後方向へ延び、前記おむつの内側へ向かって前記おむつの内面に倒伏し、前記前後方向への弾性伸縮性を備えている防漏カフとが形成されている使い捨ておむつであって、
前記コアが、前記おむつの幅方向へ延びる前後それぞれの端縁と、前記前後方向へ延びる一対の側縁とを有し、前記側縁が、少なくとも前記前後方向の中央部位において前記コアの内側へ向かって湾曲しており、
前記防漏カフが、前記コアの側縁から側方へ延出している前記表面シートおよび裏面シートを少なくとも一部分として含み、前記吸収体の側縁と該側縁の両端部を結ぶ仮想線とによって囲まれる範囲に広がる第1カフと、前記第1カフからの前記おむつ幅方向への延長部位が前記仮想線と該仮想線の外側において該仮想線に平行する第2の仮想線とのいずれかを折曲線にして前記おむつの内面へ倒伏するように折曲されることで形成された第2カフとで構成されていて、前記折曲線に平行する前記第2カフの内側縁の近傍に前後方向へ延びる弾性伸縮部材が伸長状態で取り付けられている前記おむつ。」
である点で一致しており、前者において、上記折曲線に平行する前記第2カフの内側縁の近傍に前後方向へ延びる弾性伸縮部材である第1弾性伸縮部材とともに折曲線の近傍におむつの前後方向へ延びる第2弾性伸縮部材が伸長状態で取り付けられ、前記第2弾性伸縮部材は、互いに平行する複数条の弾性伸縮部材から構成されていて、前記第1弾性伸縮部材よりも短いとされているのに対し、後者においては、前者における第2弾性伸縮部材に相当する伸縮弾性部材は取り付けられていない点で相違している。
そこで上記の相違点について検討すると、
上記刊行物2及び3には、本件請求項1に係る発明の「防漏カフ」に相当する「閉込めフラップ34」あるいは「伸縮性第2フラップ」を幅方向に折曲し、その折曲線の近傍におむつの前後方向へ延びる(第2の)弾性伸縮部材を伸長状態で取り付けることが記載されており、刊行物2には、上記(第2の)弾性伸縮部材は、閉じ込めフラップの幅が比較的広いときに適用されること及び複数のストランドを平行に配列して構成されること等が示され、刊行物3には、折曲線に沿って取り付けられる弾性伸縮部材の両端部の間隔が外側に位置するものほど広いとされ、内方の折曲線における弾性伸縮部材は、本件発明の第1弾性伸縮部材に相当する自由縁部における(第1の)伸縮弾性部材よりも短いことが示唆されているものと認められるが、上記「閉込めフラップ34」及び「伸縮性第2フラップ」のいずれも、本件請求項1に係る発明の「防漏カフ」のように、「コアの側縁から側方へ延出している表面シートおよび裏面シートを少なくとも一部分として含み、コアの側縁と該側縁の両端部を結ぶ仮想線とによって囲まれる範囲に広がる第1カフと、前記第1カフからのおむつ幅方向への延長部位が前記仮想線あるいは該仮想線の外側において該仮想線に平行する第2の仮想線を折曲線にして前記おむつの内面へ倒伏するように折曲されることで形成された第2カフとで構成されて」いるものではなく、そのため、本件請求項1に係る発明の「防漏カフ」や、刊行物1に記載された「第2カフ」のようにコアの湾曲した側縁によりその形状や挙動が規制されるものでもないので、それらの折曲線近傍に本件請求項1に係る発明の「第2弾性伸縮部材」と同様の弾性伸縮部材が配され、その構成の一部において、たまたま本件請求項1に係る発明の「第2弾性伸縮部材」と共通するところがあったとしても、その技術的意義は全く異なるものであり、これを刊行物1に記載された発明に適用して本件請求項1に係る発明の構成となすことを、予測させるものは何もない。
そして本件請求項1に係る発明は、上記のような、コアの側縁から側方へ延出している表面シートおよび裏面シートを少なくとも一部分として含み、コアの側縁と該側縁の両端部を結ぶ仮想線とによって囲まれる範囲に広がる第1カフと、前記第1カフからのおむつ幅方向への延長部位が前記仮想線あるいは該仮想線の外側において該仮想線に平行する第2の仮想線を折曲線にして前記おむつの内面へ倒伏するように折曲されることで形成された第2カフとで構成されている「防漏カフ」の折曲線の近傍に、互いに平行する複数条の弾性伸縮部材から構成されていて、第1弾性伸縮部材よりも短い第2弾性伸縮部材を伸長状態で取り付けることにより、上記刊行物1乃至3の記載からは予測し得ない作用・効果を奏するものと認められる。
したがって、本件請求項1に係る発明は、上記刊行物1乃至3に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものということはできない。

4.異議申立人の主張
異議申立人奥平登志子は、上記刊行物1及び2の他に、甲第2号証(特開平7-289583号公報)及び甲第4号証(特開平7-289584号公報)を提示し、本件請求項1に係る発明が特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないこと、及び本件明細書の記載は【特許請求の範囲】に記載された「第2の仮想線」について【発明の詳細な説明】に何ら説明されていないので本件請求項1に係る発明は【発明の詳細な説明】に記載された発明とはいえないので特許法36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないことを理由に本件請求項1に係る特許を取り消すべき旨を主張しているが、上記甲第2号証及び甲第3号証のいずれにも、上記「3-4.対比・判断」の項で述べた相違点に係る事項は記載も示唆もされておらず、また、本件請求項1に係る発明の「第2の仮想線」が、コアの側縁の両端部を結ぶ仮想線の外側において該仮想線に平行する仮想線であることは、明細書及び図面の記載から明らかであるので、上記異議申立人の主張はいずれも理由がない。
また、異議申立人菱刈純子は、上記刊行物1乃至3の他に、甲第2号証(特開平9-117472号公報)を提示し、本件請求項1に係る発明が特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない旨を主張しているが、上記甲第2号証にも、上記「3-4.対比・判断」の項で述べた相違点に係る事項は記載も示唆もされていない。さらに、異議申立人は、上記刊行物2及び3に記載されたような防漏カフの途中に第2の弾性伸縮部材を配して起立を促すという技術思想を刊行物1に記載されたおむつに適用する際に、防漏カフがトップシートやバックシートとは別の部材で構成されることや防漏カフの基端部の位置は、阻害要因とはならない旨も主張しているが、刊行物1に記載された「第2カフ」が、材質や基点の点で刊行物2及び3に記載された「閉込めフラップ34」及び「伸縮性第2フラップ」と相違しているのみならず、コアとの関係において、形状や挙動が特定され、そのことによって、上記刊行物1乃至3の記載からは予測し得ない作用・効果を奏するものと認められるるものであることは上記「3-4.対比・判断」の項で述べた通りであるので、上記異議申立人の主張も採用できない。

5.むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1に係る特許を取り消すことはできない。
また、他に本件請求項1に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
使い捨ておむつ
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 おむつにおける体液吸収の主要部位が透液性表面シートと、不透液性裏面シートと、これら両シート間に介在する吸液性コアとで構成されており、前記おむつの両側縁部には、前記おむつの前後方向へ延び、弾性伸縮性を備えている脚周り部と、前記おむつの前後方向へ延び、前記おむつの内側へ向かって前記おむつの内面に倒伏し、前記前後方向への弾性伸縮性を備えている防漏カフとが形成されている使い捨ておむつであって、
前記コアが、前記おむつの幅方向へ延びる前後それぞれの端縁と、前記前後方向へ延びる一対の側縁とを有し、前記側縁が、少なくとも前記前後方向の中央部位において前記コアの内側へ向かって湾曲しており、
前記防漏カフが、前記コアの側縁から側方へ延出している前記表面シートおよび裏面シートを少なくとも一部分として含み、前記側縁と該側縁の両端部を結ぶ仮想線とによって囲まれる範囲に広がる第1カフと、前記第1カフからの前記おむつ幅方向への延長部位が前記仮想線と該仮想線の外側において該仮想線に平行する第2の仮想線とのいずれかを折曲線にして前記おむつの内面へ倒伏するように折曲されることで形成された第2カフとで構成されていて、前記折曲線の近傍に前記おむつの前後方向へ延びる第2弾性伸縮部材と、前記折曲線に平行する前記第2カフの内側縁の近傍に前記方向へ延びる第1弾性伸縮部材とがそれぞれ伸長状態で取り付けられ、前記第2弾性伸縮部材は、互いに平行する複数条の弾性伸縮部材から構成されていて、前記第1弾性伸縮部材よりも短いことを特徴とする前記おむつ。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、使い捨ておむつに関する。
【0002】
【従来の技術】
特開平7-289584号公報に開示のおむつは、おむつ内面からの起立性向を有する防漏カフを備えている。このカフは、ほぼ三日月形の伸縮性シートであって、おむつの長手方向へ伸長され、円弧部分がおむつ内面の長手方向に接合されている。かかるおむつによれば、股下域で丈が高く、胴周り開口近傍で丈の低いカフを形成することができる。このようなカフを備えたおむつは、胴周りの開口近傍で嵩張ることがなく、着用するのに好ましいものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記公知技術のおむつは、三日月形のカフを取り付けるべきおむつの本体部分を予め湾曲させておかなければ、そのカフを取り付けることができない。おむつをそのように湾曲させながらカフを取り付ける工程は、おむつの生産速度を高めるうえで障害となる。また、カフに伸縮性シートを使用することは、材料コストを高める一因となる。
【0004】
この発明は、前記公知技術の如きカフを有するおむつにおいてのこれら問題を解消することを課題にしている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題を解決するために、この発明が前提とするのは、おむつにおける体液吸収用の主要部位が透液性表面シートと、不透液性裏面シートと、これら両シート間に介在する吸液性コアとで構成されており、前記おむつの両側縁部には、前記おむつの前後方向へ延び、弾性伸縮性を備えている脚周り部と、前記おむつの前後方向へ延び、前記おむつの内側へ向かって前記おむつの内面に倒伏し、前記前後方向への弾性伸縮性を備えている防漏カフとが形成されている使い捨ておむつである。
【0006】
かかる前提において、この発明が特徴とするところは、前記おむつを次のように構成することにある。すなわち、前記コアが、前記おむつの幅方向へ延びる前後それぞれの端縁と、前記前後方向へ延びる一対の側縁とを有し、前記側縁が、少なくとも前記前後方向の中央部位において前記コアの内側へ向って湾曲している。前記防漏カフが、前記コアの側縁から側方へ延出している前記表面シートおよび裏面シートを少なくとも一部分として含み、前記側縁と該側縁の両端部を結ぶ仮想線とによって囲まれる範囲に広がる第1カフと、前記第1カフからの前記おむつ幅方向への延長部位が前記仮想線と該仮想線の外側において該仮想線に平行する第2の仮想線とのいずれかを折曲線にして前記おむつの内面へ倒伏するように折曲されることによって形成された第2カフとで構成されている。前記折曲線の近傍に前記おむつの前後方向へ延びる第2弾性伸縮部材と、前記折曲線に平行する前記第2カフの内側縁の近傍に前記方向へ延びる第1弾性伸縮部材とがそれぞれ伸長状態で取り付けられている。前記第2弾性伸縮部材は、互いに平行する複数条の弾性伸縮部材から構成されていて、前記第1弾性伸縮部材よりも短い。
【発明の詳細な説明】
【0007】
【発明の実施の形態】
添付の図面を参照して、この発明に係る使い捨ておむつの詳細を説明すると、以下のとおりである。
【0008】
図1,2,3は、おむつ1の部分破断平面図と、そのII-II線およびIII-III線切断面を示す図である。これらの図において、おむつ1は、幅方向中央部に位置するおむつ本体2と、本体2の両側部から側方へ延出するフラップ3とで構成されている。
【0009】
おむつ本体2は、透液性表面シート6と、不透液性裏面シート7と、これら両シート6,7間に介在する吸液性コア8とを有している。図1では、コア8の外形線の大部分が鎖線で示されている。この図から明らかなように、コア8は、前後端縁11,12と、両側縁13とを有し、側縁13がコア4の内側へ向かって湾曲している。その側縁13の両端部16,17を結ぶ仮想線と側縁13との離間距離は、側縁13の中央部において5〜40mmの範囲にあることが好ましい。
【0010】
表裏面シート6,7は、コア8の端縁11,12と側縁13とから延出する部分で重なり合い、ホットメルト接着剤(図示せず)を介して互いに接合している。一体となったこれらシート6,7が、コア8の側縁13から延出している部分は、側縁13の前後両端部16,17を結ぶ仮想線を折曲線18として、表面シート6を内側にして折曲され、本体2の内面に倒伏している。これらシート6,7の側縁13と折曲線18とで囲まれる部位が第1防漏カフ21を形成し、本体2に倒伏している部位が第2防漏カフ22を形成し、これら第1,2防漏カフ21と22とで本体2の防漏カフ25を形成している。第2防漏カフ22は、コア8の前後端縁11,12よりも外に位置している前端部23と後端部24とが、接着剤(図示せず)を介して本体2の内面に接合している。第2防漏カフ22は、折曲線18に平行して前後方向へ延びる内側縁26を有する。
【0011】
第1,2防漏カフ21,22からなる防漏カフ25は、内側縁26に沿って前後端部23,24間に延びる第1弾性伸縮部材27と、折曲線18に沿って前後端部23,24間の中央部に位置していて、第1弾性伸縮部材27よりも短い第2弾性伸縮部材28とを有し、これら第1,2弾性伸縮部材27,28が伸長状態で表裏面シート6,7の少なくとも一方の内面に接合している。第1弾性伸縮部材27は、内側縁26に平行であることが好ましい。第2弾性伸縮部材28は折曲線18に沿って前後方向へ延びていればよく、折曲線18に平行である他に、多少湾曲していたり屈曲していたりしてもよい。かかる第2弾性伸縮部材28は、互いに平行する複数条の弾性伸縮部材で構成することもできる。
【0012】
フラップ3は、第1防漏カフ21の動きを拘束することがないように内側縁部31の内面がホットメルト接着剤32を介してコア8の両側縁13とその延長線の間よりも内側の範囲において本体2の側部外面に接合している。フラップ3の外側縁部33は、おむつ着用者の胴周りと脚周りとを覆うことができるように、前後のウイング部34,36と、これら両ウイング部34,36間に位置する脚周り湾曲部37とで構成されている。後ウイング36の胴周り方向と湾曲部37の脚周り方向とには、胴周り弾性伸縮部材41と脚周り弾性伸縮部材42とが伸長状態で接合している。図示例の弾性伸縮部材41,42は、フラップ3の内面に露出していて肌に触れる状態にあるが、フラップ3を2枚のシートの積層体にして、それらシートの少なくとも一方の内面に接合することで、弾性伸縮部材41,42が直接肌に触れることを防ぐこともできる。後ウイング36の側縁部には、前ウイング34の外面に着脱可能なテープファスナ38が取り付けられている。
【0013】
図4は、図1のおむつが着用されるときの状態を示す斜視図であって、おむつの前後方向が表面シート6を内側にして湾曲している。おむつがこのように湾曲すると、防漏カフ25は、第1,2弾性伸縮部材27,28それぞれが収縮して、第1防漏カフ21がコア8の側縁13を基端にしてフラップ3の内面から起立し、第2防漏カフ22が本体2の内面から起立して、全体としてほぼ三日月形の大きな防漏壁を形成する。かかる状態にある防漏カフ25の高さは、コア8の側縁13から第2防漏カフ22の内側縁26までの距離であり、この距離は、本体2の前後方向の中央域(股下域)で最も大きく、コア8の前後端縁11,12へ近づくにつれて小さくなる。かかる防漏カフ25は、着用したおむつが下がったときに生じる着用者の身体とおむつとの間隙からの体液の漏れを効果的に防止することができる。
【0014】
このようなおむつにおいて、表面シート6には、不織布や開孔プラスチックシートを使用することができ、裏面シート7にはプラスチックシートを使用することができる。コア8には、粉砕パルプや粉砕パルプと高吸収性ポリマーとの混合物を使用することができる。フラップ3には、不織布やプラスチックシート、これらの積層体を使用することができる。フラップ3のこれらの素材は、疎水性のものでも親水性のものでもよいが、いずれにせよ通気性と液透過性とを備えていることが好ましい。おむつの各部材を接合するには、ホットメルト接着剤等の接着剤の他に、部材が熱溶融性のものであれば、溶着技術を利用することもできる。
【0015】
図示例で表裏面シート6,7の積層体として示された防漏カフ25は、コア8の側縁13近傍のみを表裏面シート6,7の積層体として、残余の部位を裏面シート7のみで構成したり、表裏面シート6,7とは異なる適宜の防水性シートに代えたりすることができる。フラップ3は、本体2の側部それぞれに接合している一対のものに代えて、一枚のシートからなる砂時計型のものにし、そのシートの中央部位内面に本体2を接合してこの発明を実施することもできる。
【0016】
【発明の効果】
この発明に係る使い捨ておむつでは、内側へ湾曲しているコアの側縁に沿っておむつ内面から起立する防漏カフが、股下域で特に丈が高く、胴周り域で丈が低くなるから、かかる形状の防漏カフを従来技術のように別部材として用意することが不要となり、そうした部材による製造コストの上昇を抑えることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
おむつの部分破断平面図。
【図2】
図1のII-II線切断面を示す図。
【図3】
図1のIII-III線切断面を示す図。
【図4】
湾曲しているおむつの斜視図。
【符号の説明】
6 表面シート
7 裏面シート
8 コア
11,12 端縁
13 側縁
16,17 端部
18 折曲線
21 第1カフ
22 第2カフ
25 防漏カフ
27,28 弾性伸縮部材
37 脚周り湾曲部(脚周り部)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-06-10 
出願番号 特願平9-266186
審決分類 P 1 651・ 537- YA (A41B)
P 1 651・ 121- YA (A41B)
最終処分 維持  
特許庁審判長 鈴木 美知子
特許庁審判官 粟津 憲一
溝渕 良一
登録日 2002-12-27 
登録番号 特許第3385188号(P3385188)
権利者 ユニ・チャーム株式会社
発明の名称 使い捨ておむつ  
代理人 小林 義孝  
代理人 小林 義孝  
代理人 白浜 吉治  
代理人 白浜 吉治  

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