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審決分類 審判 全部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) B65H
管理番号 1103521
審判番号 無効2003-35267  
総通号数 59 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1988-02-29 
種別 無効の審決 
審判請求日 2003-07-01 
確定日 2004-07-05 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第1832090号発明「シ-ト分割巻取装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第1832090号の請求項1に係る発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 理由
1.手続の経緯
本件特許第1832090号に係る発明についての出願は、昭和61年8月18日に特許出願されたものであって、平成5年6月16日に特公平5-39854号として出願公告がなされ、平成6年3月29日に、その発明について特許の設定登録がなされた。
これに対し、請求人カンプフ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー マシーネンファブリークより、平成15年7月1日に、無効審判の請求がなされ、被請求人株式会社片岡機械製作所より、平成15年9月22日に、答弁書および訂正請求書が、平成15年10月15日に、上申書が提出され、その後、請求人及び被請求人より、平成15年12月19日に、それぞれ口頭審理陳述要領書が提出され、同日口頭審理が行われ、その後、被請求人より、平成16年2月6日に、上申書が提出されたものである。

2.訂正の請求について
被請求人は、平成15年9月22日付け訂正請求書により、本件特許明細書の訂正を請求しているので、まずこの訂正の可否について検討する。

上記訂正請求書の訂正の内容は、本件特許発明の明細書および図面を訂正請求書に添付した訂正明細書のとおりに訂正しようとするものであり、その訂正の内容は、概略以下の訂正事項A〜Eのとおりである。

訂正事項A
特許請求の範囲にかかる記載を、
「スリッターにより分割して両側へ振分けた帯状シートを、回転駆動機構により中心駆動される巻芯に、タッチローラ押付け機構により押し付けられるタッチローラを介して巻取り、巻太りにつれて巻芯の支持位置を上記タッチローラから離す巻取装置において、
振分け片側毎に設けられ、夫々、シート幅方向に直角な方向にのびる案内レールと、
上記案内レール上を進退可能であって、該案内レールにより上下方向及びシート幅方向への動きを阻止されるはめ合い部材を固定した脚台と、
上記脚台に固定され、振分け片側毎の全ての巻芯に共通するようにシート幅方向に設けた間隔調整台と、
上記間隔調整台上面の鳩尾形突条に摺動可能に係合し、該間隔調整台に固定可能であって、各巻芯に対応して設けた各左右一対の巻芯支持体と、
モータと、前記案内レールに沿って設けられ、上記モータにより回転駆動されるネジ棒と、前記脚台に設けられ、上記ネジ棒に螺合するメネジとからなり、シ一トロールの巻太りにつれて前記脚台、間隔調整台、巻芯支持体を一体に後退させ、該巻芯支持体における巻芯支持位置をタッチローラから離すことが可能であると共に、当該脚台、間隔調整台、巻芯支持体における進退方向への動きを制止する駆動装置とを備え、
シートロールの巻太りによってタッチローラが押されて下がった時、前記モータによりネジ棒を回転駆動し、当該ネジ棒に螺合するメネジを設けた脚台、間隔調整台、巻芯支持体を一体に後退させることを特徴とするシート分割巻取装置。」と訂正する。

訂正事項B
発明の詳細な説明の「課題を解決するための手段」の欄(公報第1頁第2欄第23行から公報第2頁第3欄第16行)を、
「本発明は、この種の巻取装置において品質のよいシートロールを得るには、従来より種々提案されている巻取張力や接触圧、巻取位置へのシート供給張力の制御のみではなく、そのシートロール自体が高速回転してもがたつきを生じないことが必要であるという点に鑑み開発されたものであって、スリッターにより分割して両側へ振分けた帯状シートを、回転駆動機構により中心駆動される巻芯に、タッチローラ押付け機構により押し付けられるタッチローラを介して巻取り、巻太りにつれて巻芯の支持位置を上記タッチローラから離す巻取装置において、振分け片側毎に設けられ、夫々、シート幅方向に直角な方向にのびる案内レールと、上記案内レール上を進退可能であって、該案内レールにより上下方向及びシート幅方向への動きを阻止されるはめ合い部材を固定した脚台と、上記脚台に固定され、振分け片側毎の全ての巻芯に共通するようにシート幅方向に設けた間隔調整台と、上記間隔調整台上面の鳩尾形突条に摺動可能に係合し、該間隔調整台に固定可能であって、各巻芯に対応して設けた左右一対の各巻芯支持体と、モータと、前記案内レールに沿って設けられ、上記モータにより回転駆動されるネジ棒と、前記脚台に設けられ、上記ネジ棒に螺合するメネジとからなり、シートロールの巻太りにつれて前記脚台、間隔調整台、巻芯支持体を一体に後退させ、該巻芯支持体における巻芯支持位置をタッチローラから離すことが可能であると共に、当該脚台、間隔調整台、巻芯支持体における進退方向への動きを制止する駆動装置とを備え、シートロールの巻太りによってタッチローラが押されて下がった時、前記モータによりネジ棒を回転駆動し、当該ネジ棒に螺合するメネジを設けた脚台、間隔調整台、巻芯支持体を一体に後退させることを特徴とするものである。」
と訂正する。

訂正事項C
発明の詳細な説明の「作用」の欄(公報第2頁第3欄第18行から第26行)を、
「すなわち、本発明における巻芯支持体は、はめ合い部材を固定した脚台、間隔調整台を介して、シート幅方向に直角な方向にのびる案内レールに支持されて進退可能であるものの、上下方向及びシート幅方向への動きを阻止されている。しかも、上記巻芯支持体は、脚台、間隔調整台を介して、駆動装置により、その進退方向への自由な動きも制止されている。したがって、帯状シートを高速で巻取ったとしても、その巻芯支持体が上下方向やシート幅方向、更には進退方向に振動し、がたつきを生じさせることはない。」
と訂正する。

訂正事項D
発明の詳細な説明の「実施例」の欄(公報第2頁第3欄第28行から公報第4頁第7欄第2行)を、次のD-1〜D-7のように訂正する。

D-1,公報第2頁第4欄第2行から第18行の記載を、
「さて、この実施例においては、基盤11上、シート幅方向に直角にのびて固定された案内レール12a、後述するように上記案内レール12aにゆるみなく、浮き上がり不能にはまった脚台14.シート幅方向に長くのびるように設けられ、前記脚台14に固定した間隔調整台13、上記間隔調整台13上面の鳩尾形突条13aに摺動可能に支持され、且つ固定手段を構成するクランプ15により該間隔調整台13に固定可能な巻芯支持体10、そして、前記脚台14を介して両側の間隔調整台13、更には巻芯支持体10を後退させるための駆動装置を備えている。尚、上記駆動装置は、後述するように駆動装置本体(モータ)16、前記案内レール12aに沿って設けられ、該駆動装置本体16により回転駆動されるネジ棒16a、前記脚台に設けられ、上記ネジ棒16aに螺合するメネジ16bとから構成される。」と訂正する。

D-2,公報第2頁第4欄第20行から第35行の記載を、
「上記構成要素は巻芯Cを強固に支持し、仮にシートロールRが偏心成長して高速回転してもシートの横ずれを生じさせる程度の振動を生ぜしめないものでなければならない。したがって、床面又は基盤上の案内レール12aはしっかり固定されており、これに上下左右の動きを阻止されつつ案内レール12aに移動可能に係合したはめ合い部材14a(第3図)の上に固定された脚台14、及びその上に固定した間隔調整台13、更には、上記間隔調整台13に摺動係合し、巻取中はクランプ締めで固定される夫々の巻芯支持体10は結果として一体構造をなし、振動を受け付けない耐振構造、つまり巻芯に振動を起こさせようとする力が働いても、これに同調しない十分な重量と剛性を持っており、その相互間もゆるみなく接続して、床面又は基盤と直結した形になるようにしている。」と訂正する。

D-3,公報第2頁第4欄第36行から第39行の記載を、
「すなわち、巻芯支持体10は、間隔調整台13、脚台14を介して、前記案内レール12a上に、上下方向及びシート幅方向への動きを阻止された状態で載っている。」と訂正する。

D-4,公報第3頁第1行から第15行の記載を、
「第2図に示すように、両側のタッチローラ2を、夫々の支持腕21をもつ調整台22が交互に入り組んで支持する。そして、調整台22にはタッチローラ押付け機構23のほか、図示しない周知の検出装置、制御装置が設けられている。また、両側のシートロールの巻き取り時、待機位置から受取位置へ出て、シートロールRをシート幅方向へ搬送するコンベア機構をシートロール下方空間に設けている。さらに、間隔調整台13を固定した両側の脚台14は、後方へ長く突き出て、案内レール12aとの係合面積を大にし、その結果、間隔調整台13の安定度を高めている。また、その脚台14,14間の上面に作業床板17をはり、巻取位置の両外側での作業を行い易くしている。」と訂正する。

D-5,公報第3頁第5欄第16行から第32行の記載を、
「さて、この装置の運転要領の概略を説明すると、先ず、第1図の左側に示すように、実線位置へ後退した各1対の巻芯支持体10で新しい巻芯Cを支持したら、駆動装置16により、脚台14、間隔調整台13を介してすべての巻芯支持体10,10をタッチローラ2の方へ前進させ、第1図左側の鎖線のようにして巻芯Cをタッチローラ2に接しさせる。つまり、駆動用のネジ棒16aは脚台14の下面に設けたメネジ16bに螺合しているので、駆動装置本体16で上記ネジ棒16aを回転させることにより、当該脚台14は前進、又は後進が可能である。なお、第3図に示すように、脚台14の下面の四か所につけたはめ合い部材14aは、断面横H字状をなす二本の案内レール12aに上からくわえ込むようにしてかぶさり、該案内レールにより上下動、更には左右動不能に保持されている。」と訂正する。

D-6,公報第3頁第6欄第6行から第25行の記載を、
「このように、本実施例装置によれば、抗振構造として、重量も剛性も十分な巻芯支持機構により巻芯Cの両端を強固に阻止支持する。つまり、巻芯支持体10は、夫々の下面を、抗振構造の間隔調整台13の上面の鳩尾形突条13aに固くクランプ15で締め付け固定され、更に、この間隔調整台13は、脚台14のはめ合い部材14aを介して案内レール12aにしっかりと支持されている。したがって、当該巻芯支持体10は、その上下左右方向への動きを一切阻止されている。また、前記巻芯支持体10は、間隔調整台13の脚台14のメネジ16bを介して駆動装置16のネジ棒16aにより、その進退方向への自由な動きを制止されている。すなわち、巻芯支持体10、間隔調整台13、脚台14、案内レール12a、駆動装置のすべてが一体の抗振構造となって巻芯Cの振動を抑えるものであり、それ故、高速でシート巻取りを行ったとしても、シートロールにおいてシートの横ずれを生ずるような振動は生じない。」と訂正する。

D-7,公報第3頁第6欄第34行から第4頁第7欄第2行の記載を、
「以上、一実施例について説明したが、本発明は実施条件に応じて、設計者の周知技術により多様に変化、応用することが可能である。」と訂正する。

訂正事項E
図面の簡単な説明の欄(公報第4頁第8欄第4行から第10行)を、
「第1図は本発明の-実施例の正面図、第2図は同上の平面図、第3図は同上の案内レール、脚台関係の断面図である。
10…巻芯支持体、12a…案内レール、13…間隔調整台、14…脚台、14a…はめ合い部材、16…駆動装置本体(モータ)、16a…ネジ棒、16b…メネジ。」と訂正する。

3.訂正の当否に対する判断
上記訂正事項Aは、請求項1中の「案内機構」を「案内レール」に減縮するとともに、「案内レール」と「駆動装置」及び「巻芯支持体」の関係を、訂正前の明細書における実施例の記載(公報2ページ4欄2行〜39行及び図面)に基づき、「はめ合い部材を固定した脚台」、「間隔調整台」を具体化する限定を加えて明確化したものであり、また、公報第3頁第5欄第1行から第5行、同頁同欄第23行から第42行、同頁第6欄第8行から第25行の記載及び図面に基づき、「タッチローラ」を、「タッチローラ押付け機構により巻芯に押し付けられるもの」に、「案内レール」を、「振分け片側毎に基盤に固定されるもの」に、「案内レールに沿って進退可能」な「脚台」を、「案内レール上を進退可能」なものに、「間隔調整台」を「振分け片側毎の全ての巻芯に共通するようなもの」に、「左右一対の巻芯支持体」を、「間隔調整台上面の鳩尾形突条に摺動可能に係合し」且つ「各巻芯に対応して各々設けたもの」に、「駆動装置」を「モータと、前記案内レールに沿って設けられ、上記モータにより回転駆動されるネジ棒と、前記脚台に設けられ、上記ネジ棒に螺合するメネジとからなるもの」に、それぞれ減縮するものであり、併せて、「シート分割巻取装置」の上記した構成部分が、「シートロールの巻太りによってタッチローラが押されて下がった時、前記モータによりネジ棒を回転駆動し、当該ネジ棒に螺合するメネジを設けた脚台、間隔調整台、巻芯支持体を一体に後退させる」ように滅縮するものである。
したがって、上記訂正事項Aは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そして、上記訂正事項Aは、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

また、上記訂正事項Bは、「指示位置」との誤記を「支持位置」と訂正するとともに、上記訂正事項Aに整合させて、発明の詳細な説明の記載を訂正するものであるから誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明を目的とするものであり、上記訂正事項C〜Eは、上記訂正事項Aに整合させて、発明の詳細な説明あるいは図面の簡単な説明の記載を訂正するものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
そして、上記訂正事項B〜Eは、上記訂正事項Aの場合と同様に、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

以上のとおりであるから、上記訂正は、平成6年法律第116条(以下「平成6年法」という)による改正前の特許法第134条第2項ただし書き、並びに特許法第134条第5項において準用する平成6年法改正前の特許法第126条第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

4.本件発明の要旨
本件特許発明の要旨は、訂正が認められるので、訂正明細書の特許請求の範囲に記載された次のとおりのものである(便宜上、分説し、記号A〜Fをつけて示す)。

「A.スリッターにより分割して両側へ振分けた帯状シートを、回転駆動機構により中心駆動される巻芯に、タッチローラ押付け機構により押し付けられるタッチローラを介して巻取り、巻太りにつれて巻芯の支持位置を上記タッチローラから離す巻取装置において、
B.振分け片側毎に設けられ、夫々、シート幅方向に直角な方向にのびる案内レールと、
C.上記案内レール上を進退可能であって、該案内レールにより上下方向及びシート幅方向への動きを阻止されるはめ合い部材を固定した脚台と、
D.上記脚台に固定され、振分け片側毎の全ての巻芯に共通するようにシート幅方向に設けた間隔調整台と、
E.上記間隔調整台上面の鳩尾形突条に摺動可能に係合し、該間隔調整台に固定可能であって、各巻芯に対応して設けた各左右一対の巻芯支持体と、
F.モータと、前記案内レールに沿って設けられ、上記モータにより回転駆動されるネジ棒と、前記脚台に設けられ、上記ネジ棒に螺合するメネジとからなり、シ一トロールの巻太りにつれて前記脚台、間隔調整台、巻芯支持体を一体に後退させ、該巻芯支持体における巻芯支持位置をタッチローラから離すことが可能であると共に、当該脚台、間隔調整台、巻芯支持体における進退方向への動きを制止する駆動装置とを備え、
G.シートロールの巻太りによってタッチローラが押されて下がった時、前記モータによりネジ棒を回転駆動し、当該ネジ棒に螺合するメネジを設けた脚台、間隔調整台、巻芯支持体を一体に後退させることを特徴とするシート分割巻取装置。」

5.請求人及び被請求人の主張の概略
A.請求人の主張
審判請求書に記載された予備的主張、ならびに口頭審理において確認したところによると、請求人の主張は、訂正後の本件特許発明は、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本件特許は特許法第123条第1項第2号の規定により無効とすべきものであるというものである。
〈証拠方法〉
甲第1号証:米国特許第3915404号明細書
甲第2号証:特公昭43-28412号公報
甲第3号証:米国特許第2984427号明細書
甲第4号証:特公昭61-22171号公報
甲第5号証:特公昭57-28658号公報
甲第6号証:特開昭60-236958号公報
甲第7号証:米国特許研究会 翻訳解説「米国特許入門-海外進出企業必携-」(日刊工業新聞社 昭和56年11月20日初版1刷発行)

B.被請求人の主張
これに対して、被請求人の主張は、本件特許発明は、甲第1号証に記載された発明に、甲第2号証ないし甲第5号証に記載された発明を適用することにより、当業者が容易に発明をすることができたものではないから、請求人の主張する無効理由は失当であるというものである。

6.当審の判断
A.各甲号証の記載事項
1)甲第1号証(米国特許第3915404号明細書)には、図面とともに、次の記載事項1-1〜記載事項1-4が記載されている(審判請求人が提出した翻訳文で示す。なお、"winding shaft"又は"rewind shaft"を「巻芯」と訳しているが、「巻軸」の方が適訳であるので、そのように訂正して示す。)。
記載事項1-1.(第1欄第2行〜同欄第11行;翻訳文第1頁第2〜8行)
「本発明は、複数の巻取ローラを受け取るための少なくとも1つの可動な巻軸と、さらに各巻取ローラ用の接触ローラとを有するローラ巻取装置に関する。
この形式のローラ巻取装置は、ウエブまたはフォイルから縦方向に分割されたストリップを巻き取るのに使用される。多くの場合、ローラ巻取装置は、分割装置と組み合わせられる。互いに隣接するウエブの各分割ストリップは、異なる巻軸に交互に巻き取られる。」

記載事項1-2.(第2欄第23〜43行;翻訳文第2頁第25行〜第3頁第9行)
「図1および図2を参照すると、2つの巻軸4のキャリヤ3のための2つのガイド路2が、装置フレーム1に装着されている。モータ6によって駆動される調整スピンドル5は、キャリヤ3を移動させる。収容手段7は、軸受プレート41に装着され、キャリヤ軸8を受け取り、そのキャリヤ軸8上には複数の接触ローラ9が回転可能に装着されている。装置は、分割シャフト10と、カウンター分割シャフト11を含む。さらに、複数のガイド兼戻しローラ12がウエブ13または分割ストリップ14のために設けられており、この分割ストリップ14は、巻取ローラ16上に巻き取られることになる。ガイドローラ15は、接触線の範囲の材料のストリップが巻取ローラ16に対して実質的に接線方向に動くように、各接触ローラ9と協働する。それによって、接触ローラ9は、材料のストリップの引張応力から解放され、戻りローラとしてではなく、材料のストリップ用の接触ローラとしてのみ作用する。駆動モータ17は、たとえば駆動ベルト等の適切な手段によって分割装置や搬送ローラを駆動する。モータ18は、巻軸4の各々に関係する。」

記載事項1-3.(第3欄第28〜37行;翻訳文第4頁第3〜7行)
「図4は、巻取ローラ16の外周39を概略的に示す。キャリヤ軸8は、巻軸4に装着された巻取ローラ16の数に対応して、複数の接触ローラ9を収容している。接触ローラは、既に述べたように、軸方向に調整可能であり、そのため、それぞれの巻取ローラに対して迅速且つ精密に調整することができる。これは装置の調整時間が比較的短いことを意味する。」

記載事項1-4.(第3欄第11〜19行;翻訳文第4頁第14行〜第4頁第20行)
「調整ホイール42により、キャリヤ軸8の関係するジャケット20は、張力ばね34が所望の接触圧力を形成するように調整される。すべての接触ローラは、関係する巻取ローラ16に対して同一の接触圧力で支持される。各個別の接触ローラは、関係する偏心リング29により、独立して旋回することができる。外周39は、光バリヤ光電検出装置(図示せず)によって走査される。その信号の結果として、調整スピンドル5のためのモータ6が制御され、その結果、キャリヤ3はそれに応じて動かされる。」

そこで、甲第1号証には、ウエブ又はフォイル13を縦方向にストリップ14に分割し、巻き取るための巻取装置が記載されていると認められる(記載事項1-1)。
この巻取装置は、図1に示すように、分割シャフト10とカウンター分割シャフト11とによりウエブを縦方向に分割して、両側に振り分けたストリップ14を、張力ばね34、ジャケット20等を含む接触ローラ押付け手段により押し付けられる接触ローラ9を介して巻取ローラ16に巻き取り、巻太りにつれて、巻取ローラ16の巻軸4の支持位置を接触ローラ9から離すものである(記載事項1-2,1-4)。
巻軸4は、複数の巻芯を支持し、これらの巻芯上に分割ストリップ14が巻かれ、巻取ローラ16が形成されるものと認められるが(図1)、この巻軸4はモータ18により駆動されて、巻芯及び巻取ローラ16を中心駆動するとともに、ガイド路2に沿って移動可能なキャリア3に軸支されて保持されており、このキャリア3は、モータ6によって駆動される調整スピンドル5を介して、ガイド路に沿って、巻太りにつれて接触ローラ9から離れる方向に動かされるようになっている(記載事項1-2,1-4)。すなわち、より具体的には、巻取ローラ16が巻太ると、一方で接触ローラ9は偏心リング29により旋回して、外周の増加分だけ後ろに下がるが、他方、巻取ローラ16の外周39が光バリヤ光電検出装置により走査され、その信号の結果として調整スピンドル5のためのモータ6が制御され、その結果、キャリア3はそれに応じて、接触ローラ9から離れる方向に動かされるようになっている(記載事項1-3,1-4)。
また、調整スピンドル5は、モータ6により回転することによって、キャリア3を移動させるものであるが、図1,2には、ネジを表す記号により示されている(甲第7号証参照。該記号は、本件特許発明の明細書添付図面においても、ネジ棒16aを示すため用いられている)ことから、ネジ棒状の部材であることは明らかである。

2)甲第2号証(特公昭43-28412号公報)の2頁右欄1行〜3頁左欄32行及び3頁右欄29行〜33行には、図面と共に、カッタ22により分割して両側へ振分けた帯状シートを、液圧モータ44、46により中心駆動される巻芯に主接触ドラム26を介して巻取り、巻太りにつれて巻芯の支持位置を主接触ドラム26から離す巻取装置が記載されている。
この巻取装置は、振分け片側毎に設けられ、夫々、シート幅方向に直角な方向にのびる床道56、58、60、62と、床道56、58、60、62に進退可能に支持される巻返しアーム36、38、40、42と、巻返しロール28、30と主接触ドラム26との間の締め圧力を制御するとともに、シートの巻太りにつれて巻返しアーム36、38、40、42を後退させ、巻返しアーム36、38、40、42における巻芯支持位置を主接触ドラム26から離すことが可能である圧縮空気シリンダとピストンから成る組立部分74、76とを備えている。この場合、巻返しアーム36、38、40、42は、横断的に配置される軌道50によって、ロールの幅に応じて横方向に調節自在に往復台48、52の上に坦持されている。そして、往復台48、52は、床道56、58、60、62によって、台54の上に滑動自在に装着されている。

3)甲第3号証(米国特許第2984427号明細書)の1欄8行〜22行及び3欄43行〜5欄66行(審判請求人による甲第3号証の部分翻訳文1頁3行〜12行及び4頁16行〜8頁15行)には図面と共に、スリッター10cによりストリップ10bに分割して両側へ振分けたウエブ10aを、電動モータ35、35′により中心駆動される巻軸11、12にプラテンドラム13を介して巻取り、巻太りにつれて巻軸11、12の支持位置をプラテンドラム13から離す分割・巻取装置であって、振分け片側毎に設けられ、夫々、ウエブ10a幅方向に直角な方向にのびる平行軌道部材15、16と、平行軌道部材15、16に進退可能に支持される、軸受要素21、23と、空圧装置42、43とを備える分割・巻取装置10が記載されている。
特に、甲第3号証の3欄72行〜4欄13行(部分翻訳文6頁11〜17行)には、次のような記載がある。
「巻軸11用のそのような装着は、巻軸11を水平姿勢に支持するための、且つ巻軸11を、常に水平面にあり上記ドラムに対して平行であるように、プラテンドラム13に向かっておよびこれから離れるように動すことができるための適切な手段を具備する。これは、一対の平行軌道部材15,16によって達成され、平行軌道部材の一方、すなわち平行軌道部材15は、図3に斜視図で部分的に示され、これは、いずれか適切な手段によって間隔をおいて固定的に保持される一対の平行な溝レール17,18を具備し、これらには、可動軸受要素21の凸縁19,20をそれぞれ受容するための溝17a,18aが設けられ、・・・軸受け要素21は、平行軌道部材15に沿って摺動可能であり」
したがって、甲第3号証には、スリッターにより分割して両側へ振分けた帯状シートを、回転駆動機構により中心駆動される巻芯にタッチローラ(プラテンドラム13)を介して巻取り、巻太りにつれて巻芯の支持位置を上記タッチローラから離す巻取装置において、巻芯を、常に水平面にありタッチローラに対して平行に離接するように案内することが記載されており、そのために、平行軌道部材15、16の、間隔をおいて固定的に保持される一対の平行なレール17、18の溝17a、18a内に、軸受要素21、23の凸縁19、20をはめ合わせることにより、軸受け要素の平行軌道部材に沿った摺動のみを許容し、その上下方向、ウエブ幅方向への動きを規制するようにしたものが記載されていると認められる。

4)甲第4号証(特公昭61-22171号公報)
甲第4号証には、軌道レール16に沿って進退可能であって、該軌道レールにより上下方向及び左右方向への動きを阻止されるはめ合い部材である、四方向荷重形リニアベアリングのベアリング本体1が記載されている。

5)甲第5号証(特公昭57-28658号公報)の2欄9行〜13行、4欄10行〜5欄11行及び6欄6行〜26行には、図面と共に、接触ローラ19に接触しながらテープ等をロール33に巻取るための巻取装置が記載されている。
この巻取装置のロール33のロール軸5は、保持体4に軸受されて保持されており、この保持体4には静止ナット8が備えられており、この静止ナット8には、送りモータ6により回転駆動される送り軸7が螺合している。そして、この保持体4は、台車を介して可動であって、ロール33の直径の増加にしたがって、送りモータ6の起動により、接触ローラ19から遠ざかる方向に、枠1に沿って移動することができるものと認められる。

B.対比判断
本件発明と、甲第1号証記載のもの(以下「引用発明」という)とを対比すると、次のようである。
引用発明の巻取装置は、甲第1号証の図1に示すように、分割シャフト10とカウンター分割シャフト11とによりウエブ13を縦方向に分割して、両側に振り分けたストリップ14を、接触ローラ9を介して、モータ18により中心駆動される巻取ローラ16に巻き取り、巻太りにつれて、巻取ローラ16の巻芯の支持位置を、巻軸4とともに、接触ローラ押付け手段により押し付けられる接触ローラ9から離すものであるので、本件発明の、スリッターにより分割して両側へ振分けた帯状シートを、回転駆動機構により中心駆動される巻芯にタッチローラ押付け機構により押し付けられるタッチローラを介して巻取り、巻太りにつれて巻芯の支持位置を上記タッチローラから離す「巻取装置」に相当する。
そして、引用発明の、「分割シャフト10とカウンター分割シャフト11」、「モータ18」、「巻芯」、「接触ローラ9」は、それぞれ本件発明の「スリッター」、「回転駆動機構」、「巻芯」、「タッチローラ」に相当する。
また、引用発明の「巻軸4」は巻芯を支持するものであるから、本件発明の「巻芯支持体」に対応する。
引用発明のガイド路2は、甲第1号証の1,2図に明示されるように、振分け片側毎に設けられていて、ウエブまたはストリップの幅方向と直角な方向にのびているので、本件発明の、振分け片側毎に設けられ、夫々、シート幅方向に直角な方向にのびる「案内レール」に相当する。
引用発明のキャリア3は、ガイド路上を進退移動可能であるので、本件発明の、案内レール上を進退可能な「脚台」に対応する。
引用発明の、モータ6によって駆動される調整スピンドル5は、巻取ローラ16の巻太りにつれて駆動され、巻芯を取り付けた巻軸4を支持するキャリア3を接触ローラ9から離す方向に移動させるものである。したがってこのものは、本件発明の、シートの巻太りにつれて脚台と巻芯支持体を一体に後退させ、巻芯支持体における巻芯支持位置をタッチローラから離すことが可能である「駆動装置」に対応する。

そこで、両者は、本件特許発明の用語を用いて表現すると、次の点で一致する。
「A.スリッターにより分割して両側へ振分けた帯状シートを、回転駆動機構により中心駆動される巻芯にタッチローラ押付け機構により押し付けられるタッチローラを介して巻取り、巻太りにつれて巻芯の支持位置を上記タッチローラから離す巻取装置において、
B.振分け片側毎に設けられ、夫々、シート幅方向に直角な方向にのびる案内レールと、
C’.上記案内レール上を進退可能な脚台と、
E’.巻芯に対応して設けた巻芯支持体と、
F’.モータと、前記案内レールに沿って設けられ、上記モータにより回転駆動されるネジ棒からなり、シートロールの巻太りにつれて前記脚台、巻芯支持体を一体に後退させ、該巻芯支持体における巻芯支持位置をタッチローラから離すことが可能な駆動装置とを備え、
G’.シートロールの巻太りによってタッチローラが押されて下がった時、前記モータによりネジ棒を回転駆動し、前記脚台、巻芯支持体を一体に後退させることを特徴とするシート分割巻取装置。」

そして、両者は、次の相違点i〜iiiで相違する(かっこ内に引用発明の対応する部材名を示す)。
相違点i.構成Cについて、本件発明の脚台は「案内レール上を進退可能であって、該案内レールにより上下方向及びシート幅方向への動きを阻止されるはめ合い部材を固定した」ものであるのに対し、引用発明の脚台(キャリア3)は、案内レール(ガイド路2)上を進退可能であるが、案内レール(ガイド路2)により上下方向及びシート幅方向への動きを阻止されるはめ合い部材を固定したものであるか否か明らかではない点。

相違点ii.構成D及びEについて、本件発明は、脚台に固定され、振分け片側毎の全ての巻芯に共通するようにシート幅方向に設けた「間隔調整台」を備えており、間隔調整台上面の鳩尾形突条に、各巻芯に対応して設けた左右一対の「巻芯支持体」が摺動可能に支持され、該間隔調整台に固定可能になっているのに対し、引用発明は、脚台(キャリア3)に巻軸支持部を有し、これに支持される巻軸4により振り分け片側毎の全ての巻芯を支持しているものであって、巻芯支持体の構成が本件発明と異なるとともに、格別間隔調整台に相当するものを備えていない点。

相違点iii.構成F及びGについて、本件発明の「駆動装置」は、「モータと、前記案内レールに沿って設けられ、上記モータにより回転駆動されるネジ棒と、前記脚台に設けられ、上記ネジ棒に螺合するメネジとからなり、シ一トロールの巻太りにつれて前記脚台、間隔調整台、巻芯支持体を一体に後退させ、該巻芯支持体における巻芯支持位置をタッチローラから離すことが可能であると共に、当該脚台、間隔調整台、巻芯支持体における進退方向への動きを制止する」ものであるのに対し、引用発明の駆動装置は、モータ(モータ6)と、案内レール(ガイド路2)に沿って設けられ、モータにより回転駆動されるネジ棒(調整スピンドル5)により、シートロール(巻取ローラ16)の巻太りにつれて脚台(キャリア3)、巻芯支持体(巻軸4)を一体に後退させ、該巻芯支持体における巻芯支持位置をタッチローラ(接触ローラ9)から離すことが可能であるが、脚台(キャリア3)とネジ棒(調整スピンドル5)との関係が不明であるとともに、脚台等の進退方向への動きを制止するものであるか否か明らかでない点。

(相違点iについて)
上記相違点iについて判断する。
甲第3号証には、スリッターにより分割して両側へ振分けた帯状シートを、回転駆動機構により中心駆動される巻芯にタッチローラ(プラテンドラム13)を介して巻取り、巻太りにつれて巻芯の支持位置を上記タッチローラから離す巻取装置において、巻芯を、常に水平面にありタッチローラに対して平行に離接するように案内することが記載されており、そのために、平行軌道部材15、16に軸受要素21、23をはめ合わせることにより、軸受け要素の平行軌道部材に沿った摺動のみを許容し、その上下方向、ウエブ幅方向への動きを規制するようにしたものが記載されている。
なお、軌道部材に沿った軸受け要素の摺動のみを許容するような、軌道部材と軸受け要素との具体的なはめ合わせ構造自体は、例えば甲第4号証に示すようなものを含め、種々の構造が一般に周知となっている。

引用発明は、ガイド路2に沿って移動可能なキャリア3に支持される巻軸4の巻芯にシート(ストリップ14)を巻取るものであり、正確な巻取りのためには、甲第3号証記載のものと同様に、ガイド路に沿ったキャリアの正確な移動が必要であることは明らかであるから、引用発明に甲第3号証記載の技術思想を適用し、相違点iに係る本件発明の構成のようにしようとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(相違点iiについて)
上記相違点iiについて判断する。
甲第2号証には、カッタ22により分割して両側へ振分けた帯状シートを、中心駆動される巻芯に主接触ドラム26を介して巻取り、巻太りにつれて巻芯の支持位置を主接触ドラム26から離す巻取装置において、床道56、58、60、62によって、台54の上に滑動自在に装着されている往復台48、52と、往復台上に横断的に配置される軌道50によって、ロールの幅に応じて横方向に調節自在に往復台48、52の上に坦持されている巻返しアーム36、38、40、42と、巻返しアームに支持された巻芯とを備えたものが記載されている。
そして、甲第2号証記載の巻取装置は、本件発明及び引用発明と同じ技術分野に属する、帯状シートの分割巻取装置に係るものであるので、引用発明において、甲第2号証の記載に倣って、巻芯支持手段として、巻軸4に代えて、往復台上の軌道に巻返しアームを摺動可能に設けたものをキャリア3に固定することは、当業者が容易に想到し得たことである。
ここで、巻軸4は、複数の巻芯を共通して支持しており、これらを一斉に後退移動させるものであるので、置換の後も同様に複数の巻芯が一斉に後退移動できるように、一つの共通の往復台に複数組の巻返しアームを各巻芯に対応して設け、複数の巻芯を支持可能に構成することは、当業者が当然考慮し得た事項である。
また、甲第2号証には、巻返しアームが、往復台上に固定可能である点については、明示的に記載されていないが、仮に巻返しアームが固定不能であるとすると、巻取時に巻返しアームの間隔が変わって巻返しロールが離脱する虞があることから、往復台上に固定可能とすることは、当業者が当然考慮し得た事項である。また、同様に、甲第2号証には、軌道50の形状について格別明記されていないが、巻返しロール28が主接触ドラム26に押圧されて巻取りが行われることから、押圧力によって、仮に軌道上で巻返しアームが傾動するようなことがあれば、巻取りが困難となることも当業者が当然考慮し得た事項であるとともに、摺動体の傾動を防止するような、鳩尾形突状形状をした軌道は、例えば、甲第6号証(第1,6,7図参照)に示すように周知の技術事項でもあるので、軌道の形状を鳩尾形突状形状とすることは、甲第2号証記載の技術思想の適用にあたって、当業者が適宜なし得た設計的事項にすぎない。

(相違点iiiについて)
上記相違点iiiについて判断する。
引用発明の調整スピンドル5は、モータ6によって回転駆動されることによってキャリア3を移動させるものであり、甲第1号証の図1,2には、ネジ棒状の部材として示されているが、かかる回転駆動されるネジ棒と、これに螺合するメネジ等の被移動部材からなる、往復移動機構自体は、例えば、甲第5号証に、送りモータ6により回転駆動されるネジ棒状の送り軸7と、これに螺合する静止ナット8からなる構成として示されるもののように、当該技術分野において周知の技術事項であるから、甲第1号証に接した当業者は、調整スピンドル5の開示より、ネジ棒とメネジとからなる往復移動機構を、容易に認識し得たと認められる。
そして、この種の、ネジ棒とメネジとからなる往復移動機構において、ネジ棒の回転運動を、メネジのネジ棒に沿った直線運動に変換する一方、メネジからの直線運動は、いわゆるセルフロックにより、ネジ棒の回転運動に変換せず、その結果メネジの進退方向への動きを制止するものは周知であるが、そもそも引用発明の調整スピンドルは、巻取ローラ16の巻太りに応じてキャリア3の位置を積極的に制御するための手段であるから、外乱によりキャリアが調整スピンドルを回転させて勝手に移動してしまうような往復移動機構では、その目的を達することができないことは明らかであるので、キャリアの進退方向への動きを制止するようなタイプの往復移動機構とすることは、当業者が当然考慮し得たことと言える。

(被請求人の主張について)
被請求人は、本件特許発明は、振動阻止を目的として開発されたものであり、当該目的のために意図的に様々な構成を採用しているのに対し、甲第1〜5号証は、いずれも、本件特許発明が解決課題とする「巻芯を支持する巻芯支持体における上下方向、シート幅方向、更には進退方向へのがたつきの防止」を意識するものではなく、両者は発明の目的においてあきらかに相違するものである旨主張する。
しかしながら、シートロールの巻取において、振動を防止する必要のあることは、当該技術分野において従来周知の一般的課題にすぎないものであり、当業者が装置の設計にあたり当然考慮すべきものである。
この点につき、例えば周知例として、特開昭48-99563号公報(2ページ右上欄1〜2行)、実願昭58-112245号(実開昭60-23157号)のマイクロフィルム(2ページ1〜8行)、特開昭59-36057号公報(2ページ左上欄1〜17行)、実願昭58-184092号(実開昭60-90242号)のマイクロフィルム(12ページ16〜18行)等を参照されたい。
したがって、かかる一般的な課題の明示的記載が甲第1〜5号証のいずれにも見出せないとしても、かかる課題は当業者が当然考慮すべき一般的なものであるから、かかる記載の欠如から、ただちに、契機となる課題に欠けるので、甲第1〜5号証記載のものより本件特許発明を想到することは容易でないと結論する被請求人の主張は、採用できない。

以上のとおりであるので、本件特許発明は、甲第1号証ないし甲第5号証に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

7.むすび
したがって、本件請求項1に係る発明についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第123条第1項第2号の規定により、これを無効にすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
シート分割巻取装置
(57)【特許請求の範囲】
スリッターにより分割して両側へ振分けた帯状シートを、回転駆動機構により中心駆動される巻芯に、タッチローラ押付け機構により押し付けられるタッチローラを介して巻取り、巻太りにつれて巻芯の支持位置を上記タッチローラから離す巻取装置において、
振分け片側毎に設けられ、夫々、シート幅方向に直角な方向にのびる案内レールと、
上記案内レール上を進退可能であって、該案内レールにより上下方向及びシート幅方向への動きを阻止されるはめ合い部材を固定した脚台と、
上記脚台に固定され、振分け片側毎の全ての巻芯に共通するようにシート幅方向に設けた間隔調整台と、
上記間隔調整台上面の鳩尾形突条に摺動可能に係合し、該間隔調整台に固定可能であって、各巻芯に対応して設けた各左右一対の巻芯支持体と、
モータと、前記案内レールに沿って設けられ、上記モータにより回転駆動されるネジ棒と、前記脚台に設けられ、上記ネジ棒に螺合するメネジとからなり、シートロールの巻太りにつれて前記脚台、間隔調整台、巻芯支持体を一体に後退させ、該巻芯支持体における巻芯支持位置をタッチローラから離すことが可能であると共に、当該脚台、間隔調整台、巻芯支持体における進退方向への動きを制止する駆動装置とを備え、
シートロールの巻太りによってタッチローラが押されて下がった時、前記モータによりネジ棒を回転駆動し、当該ネジ棒に螺合するメネジを設けた脚台、間隔調整台、巻芯支持体を一体に後退させることを特徴とするシート分割巻取装置。
【発明の詳細な説明】
(産業上の利用分野)
この発明は、スリッターにより分割して両側へ振分けた帯状シートを、回転駆動機構により中心駆動される巻芯にタッチローラを介して巻取り、巻太りにつれて巻芯の支持位置を上記タッチローラから離す形式の巻取装置に関する。
(従来の技術)
この種の巻取装置において、シート幅方向に直角な方向にのびる案内レールで巻芯支持体を進退可能に支持し、シートの巻太りにつれて該巻芯支持体に所定の駆動機構で後退させることは、例えば特開昭60-112555号公報で公知である。
(発明が解決しようとする課題)
しかし、上記公報に記載のものは、単に案内レール上に巻芯支持体を載せ、その重力で案内レール上に保持しているに過ぎない。つまり、シートの巻取りに際して生ずる振動等の要因により、その巻芯支持体は案内レール上で上下方向やシート幅方向、更には進退方向に微小に動き、がたつきを生ずる。そのため、上記公報の形式を採用した場合には、例えば横滑りし易い性質を有するプラスチックフィルムシートの巻取りに際し、がたつきを生じない程度に巻取速度を落とさなければ、その振動によってロールの端面が不揃いになり、甚だしい場合には巻取中にシートが完全に横ずれし、作業を停止しなければならない。
すなわち、上記公報に記載のものによっては、昨今における高速巻取の要請に応えることができない。
(課題を解決するための手段)
本発明は、この種の巻取装置において品質のよいシートロールを得るには、従来より種々提案されている巻取張力や接触圧、巻取位置へのシート供給張力の制御のみではなく、そのシートロール自体が高速回転してもがたつきを生じないことが必要であるという点に鑑み開発されたものであって、スリッターにより分割して両側へ振分けた帯状シートを、回転駆動機構により中心駆動される巻芯に、タッチローラ押付け機構により押し付けられるタッチローラを介して巻取り、巻太りにつれて巻芯の支持位置を上記タッチローラから離す巻取装置において、振分け片側毎に設けられ、夫々、シート幅方向に直角な方向にのびる案内レールと、上記案内レール上を進退可能であって、該案内レールにより上下方向及びシート幅方向への動きを阻止されるはめ合い部材を固定した脚台と、上記脚台に固定され、振分け片側毎の全ての巻芯に共通するようにシート幅方向に設けた間隔調整台と、上記間隔調整台上面の鳩尾形突条に摺動可能に係合し、該間隔調整台に固定可能であって、各巻芯に対応して設けた左右一対の各巻芯支持体と、モータと、前記案内レールに沿って設けられ、上記モータにより回転駆動されるネジ棒と、前記脚台に設けられ、上記ネジ棒に螺合するメネジとからなり、シートロールの巻太りにつれて前記脚台、間隔調整台、巻芯支持体を一体に後退させ、該巻芯支持体における巻芯支持位置をタッチローラから離すことが可能であると共に、当該脚台、間隔調整台、巻芯支持体における進退方向への動きを制止する駆動装置とを備え、シートロールの巻太りによってタッチローラが押されて下がった時、前記モータによりネジ棒を回転駆動し、当該ネジ棒に螺合するメネジを設けた脚台、間隔調整台、巻芯支持体を一体に後退させることを特徴とするものである。
(作用)
すなわち、本発明における巻芯支持体は、はめ合い部材を固定した脚台、間隔調整台を介して、シート幅方向に直角な方向にのびる案内レールに支持されて進退可能であるものの、上下方向及びシート幅方向への動きを阻止されている。しかも、上記巻芯支持体は、脚台、間隔調整台を介して、駆動装置により、その進退方向への自由な動きも制止されている。したがって、帯状シートを高速で巻取ったとしても、その巻芯支持体が上下方向やシート幅方向、更には進退方向に振動し、がたつきを生じさせることはない。
(実施例)
以下、本発明の実施例を第1〜3図に基づいて説明する。
先ず、第1図により明らかなように、本実施例装置においては、上方から供給されるシートSをスリッターKにより分割し、振分用案内ローラ1から左右のタッチローラ2,2を経て両側のシートロールRに巻取る方式を採用している。なお、第1図の右半分はシートロールを巻きあげた状態、左半分は巻き上げたシートロールRをコンベア機構へ渡して巻芯支持体10を後退させた状態を示すものであり、その左半分には、巻芯支持体10を前進させ、支持した巻芯Cをタッチローラ2に接しさせた巻取開始時の状態を鎖線で示している。つまり、巻芯Cは、第1図左半分に描いた巻取開始時の鎖線位置から、シートロールの巻太りにつれて次第にタッチローラ2からはなれ、最終的には第1図左半分に描いた巻取完了の実線位置に至る。
さて、この実施例においては、基盤11上、シート幅方向に直角にのびて固定された案内レール12a、後述するように上記案内レール12aにゆるみなく、浮き上がり不能にはまった脚台14、シート幅方向に長くのびるように設けられ、前記脚台14に固定した間隔調整台13、上記間隔調整台13上面の鳩尾形突条13aに摺動可能に支持され、且つ固定手段を構成するクランプ15により該間隔調整台13に固定可能な巻芯支持体10、そして、前記脚台14を介して両側の間隔調整台13、更には巻芯支持体10を後退させるための駆動装置を備えている。尚、上記駆動装置は、後述するように駆動装置本体(モータ)16、前記案内レール12aに沿って設けられ、該駆動装置本体16により回転駆動されるネジ棒16a、前記脚台に設けられ、上記ネジ棒16aに螺合するメネジ16bとから構成される。
上記構成要素は巻芯Cを強固に支持し、仮にシートロールRが偏心成長して高速回転してもシートの横ずれを生じさせる程度の振動を生ぜしめないものでなければならない。したがって、床面又は基盤上の案内レール12aはしっかり固定されており、これに上下左右の動きを阻止されつつ案内レール12aに移動可能に係合したはめ合い部材14a(第3図)の上に固定された脚台14、及びその上に固定した間隔調整台13、更には、上記間隔調整台13に摺動係合し、巻取中はクランプ締めで固定される夫々の巻芯支持体10は結果として一体構造をなし、振動を受け付けない耐振構造、つまり巻芯に振動を起こさせようとする力が働いても、これに同調しない十分な重量と剛性を持っており、その相互間もゆるみなく接続して、床面又は基盤と直結した形になるようにしている。
すなわち、巻芯支持体10は、間隔調整台13、脚台14を介して、前記案内レール12a上に、上下方向及びシート幅方向への動きを阻止された状態で載っている。
なお、この装置の中央部には、両側巻取位置の各巻芯Cに対応する各タッチローラ2の支持腕21を右又は左へ突き出した調整台22、該調整台22を載せてシート幅方向にのびるタッチローラ案内台20が設けられている。
第2図に示すように、両側のタッチローラ2を、夫々の支持腕21をもつ調整台22が交互に入り組んで支持する。そして、調整台22にはタッチローラ押付け機構23のほか、図示しない周知の検出装置、制御装置が設けられている。また、両側のシートロールの巻き取り時、待機位置から受取位置へ出て、シートロールRをシート幅方向へ搬送するコンベア機構をシートロール下方空間に設けている。さらに、間隔調整台13を固定した両側の脚台14は、後方へ長く突き出て、案内レール12aとの係合面積を大にし、その結果、間隔調整台13の安定度を高めている。また、その脚台14,14間の上面に作業床板17をはり、巻取位置の両外側での作業を行い易くしている。
さて、この装置の運転要領の概略を説明すると、先ず、第1図の左側に示すように、実線位置へ後退した各1対の巻芯支持体10で新しい巻芯Cを支持したら、駆動装置16により、脚台14、間隔調整台13を介してすべての巻芯支持体10,10をタッチローラ2の方へ前進させ、第1図左側の鎖線のようにして巻芯Cをタッチローラ2に接しさせる。つまり、駆動用のネジ棒16aは脚台14の下面に設けたメネジ16bに螺合しているので、駆動装置本体16で上記ネジ棒16aを回転させることにより、当該脚台14は前進、又は後進が可能である。なお、第3図に示すように、脚台14の下面の四か所につけたはめ合い部材14aは、断面横H字状をなす二本の案内レール12aに上からくわえ込むようにしてかぶさり、該案内レールにより上下動、更には左右動不能に保持されている。
ところで、新しい核巻芯Cに各分割シートの切断端を接着等し、図示しない巻芯駆動機構の運転を開始すると中心駆動される巻芯C外周のシートロールRは次第に巻き太る。すると、その分だけタッチローラ2が押されて下がり、一定量に達すると周知のように所定の検出装置が発信し、これに同期制御した各駆動装置本体16は各ネジ棒16aを一斉に一定量だけ回転させる。これによって、脚台14、間隔調整台13、巻芯支持体10は一体になって一定量、後退を始める。なお、検出装置がタッチローラの極めて微小な後退量の検出により発信する場合、巻芯は連続的にタッチローラから少しずつ離反しているように見える。また、タッチローラ側にオイルダンパー等を設け、シートロールから受ける力の急変によるタッチローラの変位に抗するようにしておくことが好ましい。
このように、本実施例装置によれば、抗振構造として、重量も剛性も十分な巻芯支持機構により巻芯Cの両端を強固に阻止支持する。つまり、巻芯支持体10は、夫々の下面を、抗振構造の間隔調整台13の上面の鳩尾形突条13aに固くクランプ15で締め付け固定され、更に、この間隔調整台13は、脚台14のはめ合い部材14aを介して案内レール12aにしっかりと支持されている。したがって、当該巻芯支持体10は、その上下左右方向への動きを一切阻止されている。また、前記巻芯支持体10は、間隔調整台13の脚台14のメネジ16bを介して駆動装置16のネジ棒16aにより、その進退方向への自由な動きを制止されている。すなわち、巻芯支持体10、間隔調整台13、脚台14、案内レール12a、駆動装置のすべてが一体の抗振構造となって巻芯Cの振動を抑えるものであり、それ故、高速でシート巻取りを行ったとしても、シートロールにおいてシートの横ずれを生ずるような振動は生じない。
一方、シート分割幅が変わり、スリッターKの位置を変えたときは、各巻芯支持体10のクランプ15を緩め、間隔調整台13上を滑らせて対応位置に付ける。これにともない、タッチローラ2の位置も変えるが、この場合には左右共用の案内台20の上を滑らせることにより、両側のタッチローラ2を同時に位置決めしてゆくことができる。
以上、一実施例について説明したが、本発明は実施条件に応じて、設計者の周知技術により多様に変化、応用することが可能である。
(発明の効果)
以上説明したように、本発明によれば、巻芯を支持する巻芯支持体における上下方向、シート幅方向、更には進退方向へのがたつきを防止することができるのであり、従来装置に比して画期的に振動阻止力を強め、振動によるシート横ずれ現象の防止、シートロール端面の不均一防止をはかることが可能になる。また、巻取中における巻芯支持体の進退方向へのがたつきが制止されるので、後退途中の巻芯支持体の位置を確実に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の一実施例の正面図、第2図は同上の平面図、第3図は同上の案内レール、脚台関係の断面図である。
10…巻芯支持体、12a…案内レール、13…間隔調整台、14…脚台、14a…はめ合い部材、16…駆動装置本体(モータ)、16a…ネジ棒、16b…メネジ。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2004-05-07 
結審通知日 2004-05-11 
審決日 2004-05-25 
出願番号 特願昭61-191619
審決分類 P 1 112・ 121- ZA (B65H)
最終処分 成立  
前審関与審査官 菅野 あつ子  
特許庁審判長 粟津 憲一
特許庁審判官 山崎 豊
鈴木 公子
登録日 1994-03-29 
登録番号 特許第1832090号(P1832090)
発明の名称 シ-ト分割巻取装置  
代理人 福田 武通  
代理人 福田 伸一  
代理人 福田 伸一  
代理人 山崎 利臣  
代理人 福田 賢三  
代理人 加藤 恭介  
代理人 福田 武通  
復代理人 三留 和剛  
代理人 福田 賢三  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 久野 琢也  
代理人 加藤 恭介  
代理人 矢野 敏雄  

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