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審決分類 審判 一部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) A01C
管理番号 1103523
審判番号 無効2002-35536  
総通号数 59 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1993-02-09 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-12-19 
確定日 2003-11-17 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2652476号発明「整列苗の分離装置における苗案内体」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第2652476号の請求項1に記載された発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第2652476号の請求項1ないし請求項2に係る発明についての出願は、平成3年7月25日に出願され、平成9年5月23日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、株式会社サークル鉄工より請求項1を無効とする旨の無効審判が請求され、平成15年3月18日に被請求人より答弁書と共に訂正請求書が提出され、平成15年4月30日付けで無効理由を通知したところ平成15年7月7日に被請求人より意見書と新たな訂正請求書が提出されると共に、平成15年3月18日付けの訂正請求を取下げる旨の取下書が提出され、さらに平成15年9月16日に請求人より弁駁書が提出されたものである。

2.訂正の適否の判断
(1)被請求人が求める訂正の内容
被請求人が求める平成15年7月7日付けの訂正の内容は、本件特許発明の明細書及び図面を以下のa及びbのとおりに訂正することを求めるものである(下線部は訂正個所である。)。
訂正事項a
特許明細書の特許請求の範囲の請求項1を
「【請求項1】 個々の苗に分離可能に左右方向と列方向に整然と連結した整列苗を移動させて分離部に供給して個々の苗に分離する装置において、整列苗を載せて縦方向に移動させる縦移動機構を設け、縦移動機構の左右の分離部側には整列苗の横方向の位置を案内する一対の苗案内回転体を設け、苗案内回転体はベルトとその表面の弾性接触部材からなり、ベルトの内方の間隔は整列苗の左右方向より広くし、弾性接触部材の内方の間隔は整列苗の左右方向より狭くし、整列苗の縦移動機構による移動側面に接し、縦移動機構による整列苗の移動により自由に回転移動する整列苗の分離装置における苗案内体。」と訂正する。
訂正事項b
発明の詳細な説明の段落【0005】を
「【課題を解決するための手段】
請求項1の発明の整列苗の分離装置における苗案内体は、個々の苗Paに分離可能に左右方向と列方向に整然と連結した整列苗Pを移動させて分離部40に供給して個々の苗Paに分離する装置において、整列苗Pを載せて縦方向に移動させる縦移動機構20を設け、縦移動機構20の左右の分離部40側には整列苗Pの横方向の位置を案内する一対の苗案内回転体30を設け、苗案内回転体30はベルト31とその表面の弾性接触部材からなり、ベルトの内方の間隔は整列苗Pの左右方向より広くし、弾性接触部材の内方の間隔は整列苗Pの左右方向より狭くし、整列苗Pの縦移動機構20による移動側面に接し、縦移動機構20による整列苗Pの移動により自由に回転移動するものである。」と訂正する。

(2)訂正請求に対する請求人の主張
請求人は弁駁書において、被請求人の求める訂正に対して以下の主張をしている。
被請求人は特許明細書の特許請求の範囲の請求項1の「分離可能に整然と連結した整列苗」を「分離可能に左右方向と列方向に整然と連結した整列苗」と、また「苗案内回転体は整列苗の縦移動機構による移動側面に接し、」を「苗案内回転体はベルトとその表面の弾性接触部材からなり、ベルトの内方の間隔は整列苗の左右方向より広くし、弾性接触部材の内方の間隔は整列苗の左右方向より狭くし、整列苗の縦移動機構による移動側面に接し、」と、それぞれ訂正することを求めているが、該訂正中の「苗案内回転体」の構成を限定する「弾性接触部材」は、段落【0045】及び図5-図7でいう「スポンジ体32」を包含する上位概念ではあるが、「スポンジ体32」から直接的かつ一義的に導き出される概念ではないから、願書に添付した明細書または図面に記載した事項の範囲内のものに該当しないばかりではなく、実質上特許請求の範囲を拡張しまたは変更するものに該当するものであるので不適法な訂正であり、認められないものである。

(3)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否についての当審の判断
上記訂正事項aについて検討すると、「分離可能に整然と連結した整列苗」を「分離可能に左右方向と列方向に整然と連結した整列苗」とする訂正は、「整列苗」について、特許明細書の段落【0017】、【0021】、【0035】、【0038】、及び図1-図10等の記載に基いてより具体的に限定するものであるので、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、変更するものではない。また「苗案内回転体は整列苗の縦移動機構による移動側面に接し、」を「苗案内回転体はベルトとその表面の弾性接触部材からなり、ベルトの内方の間隔は整列苗の左右方向より広くし、弾性接触部材の内方の間隔は整列苗の左右方向より狭くし、整列苗の縦移動機構による移動側面に接し、」とする訂正は、「苗案内回転体」について、特許明細書の段落【0022】、【0023】、【0036】、【0044】、【0045】、及び図5-図7等の記載に基いてより具体的に限定するものであるので、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当しており、また特許明細書及び図面全体の記載に徴すれば、上記訂正によって特許明細書に記載されていた事項以外の事項を包含することとなったとはいえないから、新規事項の追加には該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張しまたは変更するものではない。また、上記訂正事項bは、上記特許請求の範囲の減縮に伴って、減縮された特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、上記訂正事項のいずれも新規事項の追加に該当するものではない。

(4)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第134条第5項の規定によって準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第第1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.本件発明
特許第2652476号の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認められる。
「個々の苗に分離可能に左右方向と列方向に整然と連結した整列苗を移動させて分離部に供給して個々の苗に分離する装置において、整列苗を載せて縦方向に移動させる縦移動機構を設け、縦移動機構の左右の分離部側には整列苗の横方向の位置を案内する一対の苗案内回転体を設け、苗案内回転体はベルトとその表面の弾性接触部材からなり、ベルトの内方の間隔は整列苗の左右方向より広くし、弾性接触部材の内方の間隔は整列苗の左右方向より狭くし、整列苗の縦移動機構による移動側面に接し、縦移動機構による整列苗の移動により自由に回転移動する整列苗の分離装置における苗案内体。」

4.当事者の主張
(1)請求人の主張
請求人は、本件発明の特許を無効にすべき理由として以下の点を主張している。
(1-1)無効理由1
a.本件発明においては「横移動機構10」が、その目的を達成し効果を挙げるのに必要不可欠であるにもかかわらず、特許請求の範囲の請求項1は「横移動機構10」を構成要件として包含しておらず、同請求項1には発明の詳細な説明に記載されている発明とは別異の発明が記載されているから、本件の出願は特許法第36条第5項第1号の規定に適合していない。
b.本件発明は、「横移動機構10」を必要不可欠としているにもかかわらず、平成7年12月11日付けの手続補正により「横移動機構」が特許請求の範囲から削除され、その結果、本件発明は本件の出願当初の明細書および図面に記載された事項の範囲内でないものにまでその技術的範囲を拡張し、その効力を及ばせることとなっているのであるから、上記補正は新規事項の追加に該当し本来違法であり、また「横移動機構10」を欠如している特許請求の範囲の請求項1には発明の構成に欠くことができない事項のみが記載されていないので、本件の出願は特許法第36条第5項第2号の規定に適合していない。
c.本件の特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が容易にその実施をすることができる程度に記載されておらず、本件の出願は特許法第36条第4項の規定に適合していない。
(1-2)無効理由2
本件発明は、甲第1号証に記載の発明に基いて、または、甲第1号証と甲第2号証(および/または甲第3号証)に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
甲第1号証:実願昭60-8101号(実開昭61-125217号)の願 書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィル ム
甲第2号証:特公昭44-28445号公報
甲第3号証:特公昭44-28444号公報
また請求人は、平成15年9月16日付けの弁駁書において、被請求人が求める訂正は認められるべきではないが、仮に訂正が認められるとしても、訂正しようとしている「苗案内回転体」の構成は本件特許の特許出願前に公知の技術であるとして甲第4号証及び甲第5号証を提示し、訂正後の本件発明は、当審が通知した無効理由に引用されている刊行物1または刊行物2に記載の発明と甲第4号証及び甲第5号証に記載された公知技術とを組み合わせることにより、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない旨を主張している。
甲第4号証:特開昭58-212711号公報
甲第5号証:特公昭61-27002号公報

(2)被請求人の主張
一方被請求人は以下の点を主張している。
(2-1)無効理由1に対して
a.本件発明は「整列苗の分離装置における苗案内体」に関するものであり、その請求項1に記載された事項が発明の詳細な説明に記載されていることは明らかであり、本件の出願は特許法第36条第5項第1号の規定に適合していないとの主張は理由がない。
b.本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により、「整列苗の分離装置における苗案内体」としてまとまりのある一の技術思想がとらえられるのであり、その発明が明確に記載されているのは明らかであるから、本件の出願は特許法第36条第5項第2号の規定に適合していないとの主張は理由がない。また、本件発明は平成3年7月25日の出願に係るものであり、その補正に関してはいわゆる「要旨変更か否か」が問題になるのであって、補正が明細書又は図面の要旨を変更するか否かの判断は「発明の構成に関する技術的事項」に基き行うこととされ、「技術的事項」は明細書又は図面に記載された発明の構成を中心として、発明の目的又は効果についての記載を参酌して把握される技術的な事項を意味するのであり、上位レベルなり下位レベルの如何を問わないものとされており、平成7年12月11日付けの手続補正は新規事項の追加に該当するとする主張は理由がない。
c.本件発明の構成については、目的、効果とともに、図面を参照しつつ、その具体化した実施例に関する内容についての説明も行いながら、発明の詳細な説明において明瞭に記載しているので、本件の出願は特許法第36条第4項の規定に適合していないとの主張は理由がない。
(2-2)無効理由2に対して
甲第1号証ないし甲第3号証及び、当審が通知した無効理由に引用されている刊行物1ないし刊行物3のいずれにも、訂正後の本件発明(以下、単に「本件発明」という)における「苗案内回転体はベルトとその表面の弾性接触部材からなり、ベルトの内方の間隔は整列苗の左右方向より広くし、弾性接触部材の内方の間隔は整列苗の左右方向より狭くし」の構成については何ら記載がなく、その示唆もされていない。そして、本件発明は上記の構成により、特許明細書に記載された格別顕著な作用、効果を奏するものであるから、本件発明は甲号各証または各引用刊行物に記載された発明に基いて当業者が容易になし得たものではなく、請求人の主張及び無効理由通知に係る無効理由にはいずれも理由がない。

5.無効理由2に対する当審の判断
(1)刊行物に記載された発明
当審が通知した無効理由において引用した、本件特許の出願前に頒布された刊行物である刊行物1(特開昭58-803号公報)及び刊行物3(実願昭59-93109号(実開昭61-7926号)の願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム)には、それぞれ以下の発明が記載されていると認められる。
刊行物1(特開昭58-803号公報)
1-a「1は本発明の紙筒苗の分離装置である。・・・その構成は、分離を所望する紙筒苗2を展開した状態で右方へ搬送するベルトコンベア3の上面に当該コンベアの進行方向3′とは直交方向をもって剥離用ロール群4を回転自在に垂下せしめ」(第1頁右下欄第13行-第2頁左上欄第3行)
1-b「1Dは上記コンベアの左方上面に配設されたガイド板」(第2頁右上欄第4-5行)
1-c「育苗された紙筒苗2を上記ベルトコンベア上にガイド板を利用して右方に向けて装着する。・・・進行するベルトコンベア上の紙筒苗は右方へ進み、当該紙筒苗の側壁に回転するロール単体が接触し、・・・紙筒苗単体は・・・分離される。」(第2頁右上欄第12行-左下欄第4行)
1-d「本発明のものによれば連続している紙筒苗を極めて容易かつ確実に分離することができる」(第2頁左下欄第8-10行)
1-e上記1-aないし1-dの記載及び図面第1-5図の記載によれば、「紙筒苗2」は「紙筒苗単体」が左右方向と列方向に連結された集合体であることが明らかである。
上記記載より、刊行物1には以下の発明(以下、「引用発明1」という)が記載されていると認められる。
「分離を所望する紙筒苗2を展開した状態で右方へ搬送するベルトコンベア3の上面に当該コンベアの進行方向3′とは直交方向をもって剥離用ロール群4を回転自在に垂下せしめ、育苗された紙筒苗2を上記コンベアの左方上面に配設されたガイド板を利用して右方に向けて装着すると、進行するベルトコンベア上の紙筒苗は右方へ進み、当該紙筒苗の側壁に回転するロール単体が接触して紙筒苗単体が分離される、連続している紙筒苗を極めて容易かつ確実に分離することができる紙筒苗の分離装置。」

刊行物3(実願昭59-93109号(実開昭61-7926号)の願書に 添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム)
3-a「本考案は田植機における苗の縦送り装置に関し、」(第1頁第17行)
3-b「苗載台(A)の下部側で隣り合う両苗載面(a)(a)の間の仕切り枠部(2)内両側には両ベルト(3)(3)をそれぞれ掛装するが、両ベルト(3)(3)は縦方向に間隔をおいて軸架した4個のロール(15)にそれぞれ掛装するとともに、両ベルト(3)(3)の外側面が苗載面(a)上のマット苗の側面に接触できるよう仕切り枠部(2)の両側面から少しく突出するようにして回動自在に架設し」(第4頁第2-9行)
3-c「苗載台(A)の各苗載面(a)上にマット苗をそれぞれ載置して、苗載台(A)の横方向移動にともなって各植付爪(14)がマット苗の下端部からブロック苗を掻取って田面に植付けることになり、横一列の掻き取りが終ると、・・・マット苗を縦送りすることになり、再び横一列に掻取られて植付けが続行されることになる。」(第4頁第17行-第5頁第7行)
3-d「マット苗が縦送りされる状態では、・・・ベルト(3)は回動自由となり、側面がベルト(3)に接触するマット苗はスムーズに縦送りされることになる。」(第5頁第16行-第6頁第2行)
上記記載より、刊行物3には以下の発明(以下、「引用発明3」という)が記載されていると認められる。
「苗載台(A)の各苗載面(a)上にマット苗をそれぞれ載置して、苗載台(A)の横方向移動にともなって各植付爪(14)がマット苗の下端部からブロック苗を掻取って田面に植付ける田植機における苗の縦送り装置において、苗載台(A)の下部側で隣り合う両苗載面(a)(a)の間の仕切り枠部(2)内両側にベルト(3)(3)をそれぞれ掛装し、両ベルト(3)(3)は縦方向に間隔をおいて軸架した4個のロール(15)にそれぞれ掛装するとともに、両ベルト(3)(3)の外側面が苗載面(a)上のマット苗の側面に接触できるよう仕切り枠部(2)の両側面から少しく突出するようにして回動自在に架設し、横一列の掻き取りが終るとマット苗を縦送りし、マット苗が縦送りされる状態ではベルト(3)は回動自由となり、側面がベルト(3)に接触するマット苗はスムーズに縦送りされ、再び横一列に掻取られて植付けが続行される、田植機における苗の縦送り装置。」

(2)対比・判断
本件発明と引用発明1とを対比すると、
引用発明1における「紙筒苗」は左右方向と列方向に連結されているから(刊行物1の記載事項1-e)、引用発明1における「分離を所望する紙筒苗」は本件発明における「個々の苗に分離可能に左右方向と列方向に整然と連結した整列苗」に実質的に対応しており、以下同様に、「紙筒苗単体」は、「個々の苗」に、「紙筒苗」は「整列苗」に、「搬送する」は「移動させて」に、「紙筒苗は右方へ進み」は「分離部に供給して」に、「分離装置」は「分離する装置」に、「紙筒苗を展開した状態で右方へ搬送するベルトコンベア」は「整列苗を載せて縦方向に移動させる縦移動機構」に、それぞれ対応している。ここで引用発明1において、「育苗された紙筒苗」は「コンベアの左方上面に配設されたガイド板を利用して右方に向けて装着」されるものであるから、上記「ガイド板」は紙筒苗の移動側面に接して紙筒苗の横方向の位置を案内するものであり、一対の「苗案内体」であるといえる点で本件発明の「苗案内回転体」と共通している。そして「苗案内体」である上記「ガイド板」は「ベルトコンベア」の左右の分離部側に設けられているものである。
そうすると、両者は以下の点で一致し、また相違していると認められる。
一致点:
個々の苗に分離可能に左右方向と列方向に整然と連結した整列苗を移動させて分離部に供給して個々の苗に分離する装置において、整列苗を載せて縦方向に移動させる縦移動機構を設け、縦移動機構の左右の分離部側には整列苗の横方向の位置を案内する一対の苗案内体を設け、苗案内体は整列苗の縦移動機構による移動側面に接する、整列苗の分離装置における苗案内体。
相違点:
苗案内体が、本件発明においては苗案内回転体であって、ベルトとその表面の弾性接触部材からなり、ベルトの内方の間隔は整列苗の左右方向より広くし、弾性接触部材の内方の間隔は整列苗の左右方向より狭くし、縦移動機構による整列苗の移動により自由に回転移動するものであるのに対して、引用発明1においてはガイド板であって、縦移動機構(ベルトコンベア)による整列苗(紙筒苗)の移動により自由に回転移動するものではない点。
上記の相違点について検討する。
引用発明3は、「マット苗」の一部(「ブロック苗」)を掻取って田面に植付ける田植機において、「マット苗」を載せて縦送りする「縦送り装置」を設け、「マット苗」の両側には、移動する「マット苗」の側面に接触して自由に回動する「ベルト」を備えており、該「ベルト」はその機能に照らすと、「縦送り装置」による「マット苗」の移動側面に接して自由に回転移動すると共に、「マット苗」の横方向の位置を案内する一対の苗案内回転体であるということができる。そして、引用発明1も引用発明3も共に苗の移植機であって、引用発明1における「紙筒苗」も引用発明3における「マット苗」も移植される苗の形態としてきわめて周知であり、これら周知の形態の苗の移植に関する技術が相互に転用できることは当業者にとって自明であるから、引用発明1において、整列苗の縦移動機構による移動側面に接する苗案内体である一対の「ガイド板」に代えて、引用発明3が備える一対の苗案内回転体に関する上記技術事項を適用することは、当業者が容易に想起し得ることである。
ところで一般に、一対の対向するベルトにより被搬送物を搬送するに際して、上記ベルトの表面にスポンジ等の弾性接触部材を設けて、該弾性接触部材が被搬送物の移動表面に接するように構成することはきわめて周知(例えば、下記の周知例1ないし周知例3があげられる。)である。さらに引用発明1と同様の技術分野に属する紙筒苗の移植機においても、同じく一対の対向するベルトの表面にスポンジ等の弾性接触部材を設けて、該弾性接触部材が紙筒苗の移動表面に接するように構成することは周知(例えば、下記の周知例4ないし周知例6があげられる。)である。ここで上記周知技術において、一対の対向するベルトの表面の弾性接触部材が被搬送物(周知例1ないし周知例3)あるいは紙筒苗(周知例4ないし周知例6)の移動表面に接するのであり、「接する」のは、弾性接触部材が被搬送物あるいは紙筒苗の幅方向に弾性変形することによるものであることは明らかであるから、一対の対向するベルトと被搬送物あるいは紙筒苗との関係は、ベルトの内方の間隔は被搬送物あるいは紙筒苗の幅より広く、弾性接触部材の内方の間隔は被搬送物あるいは紙筒苗の幅より狭いことは自明な事項である。
そうすると、引用発明1における一対の「ガイド板」に代えて、引用発明3が備える苗案内回転体に関する技術事項を適用する際に上記周知技術を勘案し、一対の苗案内回転体のベルトに弾性接触部材を設けて、弾性接触部材が整列苗の縦移動機構による移動表面、すなわち移動側面に接するようにすることは単なる設計事項にすぎない。そして、一対の苗案内回転体のベルトと整列苗との関係は、ベルトの内方の間隔は整列苗の左右方向より広く、弾性接触部材の内方の間隔は整列苗の左右方向より狭いことは上記したとおり自明な事項である。
すなわち上記相違点に係る構成は、周知技術を勘案しつつ引用発明1に引用発明3が備える技術事項を適用することにより当業者が容易に想到することができたものであり、本件発明の作用効果も、引用発明1並びに引用発明3及び周知技術が奏する作用効果から当業者が容易に予測できる範囲内のものであって、格別なものとはいえない。
【周知例】
周知例1:特開昭54-159979号公報
「ベルトコンベア(2)及び(4)」の回動表面をいずれもスポンジ製とし、「ベルトコンベア(2)」の「上面(B2)」と、「ベルトコンベア(4)」の「下面(B4)」とを近接または接触させた、物品搬送装置が記載されている。(第1頁右下欄第12-15行及び図面)
周知例2:特開昭51-149677号公報
「ベルトコンベヤ1」の上方にスポンヂのような弾力性材料により構成される「ベルト4」を架設した果実移送装置が記載されている。(特許請求の範囲及び第1頁右下欄第9-19行並びに図面)
周知例3:実公昭52-831号公報
相対向する「縦送り挟持ベルト5,5」及び「横送り挟持ベルト7,7」の挟持面に「スポンジ材14,14」を添着した藺草用の刈取機が記載されている。(第2頁第3欄第1-11行及び図面第2-5図)
周知例4:特公昭61-27002号公報(甲第5号証)
「苗転送コンベア29」を構成する「一対のベルト30,30′」の表面にスポンジを貼着するか「毛状体38」を植設した、紙筒苗の如き土付苗の移植機が記載されている。(特許請求の範囲及び第3頁第5欄第12-29行並びに図面第3図)
周知例5:実願昭57-134316号(実開昭59-38706号)の願 書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム
「搬送ベルト52」の表面にスポンジ又は弾性物を張設し、これと平行する「挟持ベルト53」と対をなし、「紙筒苗P」を挟持して移送する、移植機の苗選別装置が記載されている。(第3頁第16行-第4頁第3行及び第10頁第2-9行並びに図面第3図)
周知例6:実願昭62-66885号(実開昭63-177111号)の願 書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム
ゴムの如き材質で作られた「搬送ベルト8,8′」の表面に、同様の材質からなる「列状突起」を形成し、該「列状突起」は根本が太く先に行くほど細く、弾性変形して「紙筒苗P」を挟持して移送する、移植機における苗送りベルトが記載されている。(第2頁第5-16行及び第4頁第4行-第5頁第13行並びに図面第1-3図)

6.むすび
以上のとおりであるから、本件発明は、引用発明1及び引用発明3並びに周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当するので、請求人の主張する他の理由を検討するまでもなく、その特許は無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
整列苗の分離装置における苗案内体
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
個々の苗に分離可能に左右方向と列方向に整然と連結した整列苗を移動させて分離部に供給して個々の苗に分離する装置において、整列苗を載せて縦方向に移動させる縦移動機構を設け、縦移動機構の左右の分離部側には整列苗の横方向の位置を案内する一対の苗案内回転体を設け、苗案内回転体はベルトとその表面の弾性接触部材からなり、ベルトの内方の間隔は整列苗の左右方向より広くし、弾性接触部材の内方の間隔は整列苗の左右方向より狭くし、整列苗の縦移動機構による移動側面に接し、縦移動機構による整列苗の移動により自由に回転移動する整列苗の分離装置における苗案内体。
【請求項2】
整列苗を載せて往復移動して分離部の一対の回転体に分離される苗を供給する横移動機構を設け、横移動機構上には横移動機構の移動端で整列苗を載せて縦方向に間欠的に移動させる縦移動機構を設けた請求項1記載の整列苗の分離装置における苗案内体。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、農作物の移植栽培で、個々の苗に分離可能に整然と連結した紙筒育苗容器による紙筒苗のような整列苗を使用する移植機などにおいて、整列苗から個々の苗に分離する分離装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
紙筒苗のような整列苗から一対の回転体により個々の苗に自動的に分離する分離装置は、本発明者らが特願平2-410686号として提案した。この整列苗の分離装置は、整列苗を載せて往復移動して一対の回転体に分離される苗を供給する横移動機構を設け、横移動機構上には横移動機構の移動端で整列苗を載せて縦方向に間欠的に移動させる縦移動機構を設けていた。そして、この分離装置の苗案内体は、横移動機構枠の左右上方に整列苗の幅よりやや広い間隔で縦方向に長く固定して設けていた。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来の技術の分離装置の整列苗の幅よりやや広い間隔で固定して設けた苗案内体では、整列苗を確実に案内することが難しかった。つまり、整列苗の幅より広すぎる苗案内体では、整列苗の位置が分離部に対して決まらないし、端の苗が倒れたりすることがある。また、整列苗の幅にほぼ合った苗案内体では、整列苗が苗案内体に全く触れずに移送されることはなく、縦移動機構の整列苗の移送により整列苗の移動側面と苗案内体の間の摩擦により苗が分離されたり擦り切れたりすることがあり、正常に分離部に苗を供給できない。
【0004】
本発明は、以上のような問題点を解決し、確実に整列苗の横方向の位置を案内し、苗に損傷を与えずに分離部に供給する苗案内体により、連続的に確実に個々の苗に分離する高性能・高能率な整列苗の分離装置を提供し、移植栽培を飛躍的に広げることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明の整列苗の分離装置における苗案内体は、個々の苗Paに分離可能に左右方向と列方向に整然と連結した整列苗Pを移動させて分離部40に供給して個々の苗Paに分離する装置において、整列苗Pを載せて縦方向に移動させる縦移動機構20を設け、縦移動機構20の左右の分離部40側には整列苗Pの横方向の位置を案内する一対の苗案内回転体30を設け、苗案内回転体30はベルト31とその表面の弾性接触部材からなり、ベルト31の内方の間隔は整列苗Pの左右方向より広くし、弾性接触部材の内方の間隔は整列苗Pの左右方向より狭くし、整列苗Pの縦移動機構20による移動側面に接し、縦移動機構20による整列苗Pの移動により自由に回転移動するものである。
【0006】
請求項2の発明の整列苗の分離装置における苗案内体は、整列苗Pを載せて往復移動して分離部40の一対の回転体42に分離される苗Paを供給する横移動機構10を設け、横移動機構10上には横移動機構10の移動端で整列苗Pを載せて縦方向に間欠的に移動させる縦移動機構20を設けた請求項1記載のものである。
【0007】
【作用】
請求項1の発明では、縦移動機構20の左右の分離部40側には整列苗Pの横方向の位置を案内する一対の苗案内回転体30を設け、苗案内回転体30は整列苗Pの縦移動機構20による移動側面に接しているから、装置が傾いたり振動しても分離部40に対する整列苗Pの位置を規制できる。
【0008】
また、苗案内回転体30は縦移動機構20による整列苗Pの移動により自由に回転移動するから、縦移動機構20の整列苗Pの移送により整列苗Pとそれが接している苗案内回転体30とが一体に移動する。また、整列苗Pを縦移動機構20に載せるときにも整列苗Pを送り込むと整列苗Pとそれが接している苗案内回転体30とが一体に移動する。
【0009】
請求項2の発明では、整列苗Pを載せて往復移動して分離部40の一対の回転体42に分離される苗Paを供給する横移動機構10を設け、横移動機構10上には横移動機構10の移動端で整列苗Pを載せて縦方向に間欠的に移動させる縦移動機構20を設けたから、整列苗Pの分離される苗Paは順次連続的に分離部40の一対の回転体42に供給される。
【0010】
【実施例】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して説明する。
【0011】
個々の苗Paに分離可能に整然と連結した整列苗Pとして、紙筒育苗容器による紙筒苗を示している。この紙筒育苗容器は、展開すると六角柱状の上下が開口した紙筒を、整然と水溶性糊で貼り合わせたものである。この紙筒中に培土を詰めて播種して育苗すると苗が生長して紙筒苗の整列苗Pとなり、移植時には適度の連結強度を保つようになっている。
【0012】
つぎに、この整列苗Pを個々の苗Paに分離する分離装置について説明する。
【0013】
図1において、1は機枠であり、機枠1は平面視が略長方形の枠を成している。そして、機枠1上には横移動機構10および縦移動機構20を設ける。
【0014】
横移動機構10は、機枠1に沿って設けた一対のレール11と、レール11に沿って往復移動可能な一対の横移動機構枠12と、横移動機構枠12の下方で一対のレール11の間にレール11と平行に設けた軸16とからなる。
【0015】
横移動機構枠12は一対のレール11上に設け、横移動機構枠12のレール11に対応する四方の下面にはレール11の方向に回転するガイドローラ14を設け、ガイドローラ14は自由に回転するよう横移動機構枠12に係止される。また、軸16には往溝と復溝とが無端交叉状に形成した円筒カムが刻まれており、横移動機構枠12に設けた図示しない突起と噛み合っていて、軸16が回転することにより横移動機構枠12がレール11の方向に連続的に往復移動するようになっている。
【0016】
横移動機構10の横移動機構枠12には、横移動機構10の移動方向と直交する方向に移動する縦移動機構20を設ける。そして、縦移動機構20のベルト25上には整列苗Pを載せて横移動機構10の移動端で横移動機構10の移動方向と直交する方向(図1の下方向)に間欠的に移動させる。
【0017】
縦移動機構20には、横移動機構枠12内に横移動機構10の移動方向に長く同一高さで平行にプーリ22,24を設け、プーリ22,24の間にはベルト25を掛け渡す。そして、プーリ22には、横移動機構枠12が横方向に移動し、その移動端でのみ軸16の回転が伝導されるようにし、横移動機構10の移動端で整列苗Pの苗列の一列分よりやや多くベルト25を移動させるようにプーリ22を回転させる。
【0018】
機枠1の外方で縦移動機構20の移動方向にレール11と平行に規制体枠2を設け、規制体枠2から垂直上方に規制体軸3を設け、規制体軸3の上端には自由に回転する一対の苗規制ベルト5を掛け渡す。
【0019】
苗規制ベルト5は、横移動機構10の移動方向に長くその左右に設け、その整列苗P側の面はベルト25の搬送終端とほぼ同じ位置とし、左右一対の苗規制ベルト5の内方の端部間は、整列苗Pを分離して繰り出す分離部40の一対の回転体42が納まる間隔を開けておく。
【0020】
一対の横移動機構枠12の苗規制ベルト5側端部から上方に一対のベルト駆動枠26を設け、ベルト駆動枠26から苗規制ベルト5方向に上下2本のベルト駆動ピン27を設ける。ベルト駆動ピン27は苗規制ベルト5の整列苗P側の面に設けた孔に通っており、横移動機構10が往復移動するとベルト駆動ピン27を介して苗規制ベルト5の整列苗P側の面が同じ方向に往復移動する。
【0021】
縦移動機構20のベルト25の左右端上方で一対の横移動機構枠12の内方の分離部40側には、整列苗Pの横方向の位置を案内する一対の苗案内回転体30を設ける。
【0022】
苗案内回転体30はベルト31とその表面に貼着したスポンジ体32からなり、ベルト31の内方の間隔は整列苗Pの横方向より広くし、スポンジ体32の内方の間隔は整列苗Pの横方向より狭くする。そして、スポンジ体32が整列苗Pの縦移動機構20の移動側面につぶれて接して整列苗Pを規制する。
【0023】
一対の横移動機構枠12の内方の分離部40側には、ベルト25の移動方向に長くコの字状の一対の苗案内体枠33を設け、苗案内体枠33にはベルト25の移動方向に所定間隔に垂直方向の一対のピン34を係止し、ピン34には自由に回転するプーリ35をはめ込み、そのプーリ35間にベルト31を掛け渡す。そして、ベルト31はスポンジ体32に接した整列苗Pの移動により自由に回転移動する。また、ベルト31の内方の裏面に接するプーリ37を設け、プーリ37は苗案内体枠33から垂直方向に設けたピン36により自由に回転するよう係止する。
【0024】
一対の横移動機構枠12の内方で苗案内回転体30の反対側には一対の固定の苗案内体38を設け、ベルト25上の整列苗Pを案内する。
【0025】
機枠1の外方で縦移動機構20の移動方向の中央部で一対の苗規制ベルト5の内方間に分離部40を設ける。
【0026】
分離部40の上方には分離部枠41を設け、分離部枠41から下方に一対の軸を設け、その軸に一対の回転体としての弾性体のローラ42をはめ込んで設ける。ローラ42は円筒形のスポンジ体で、ローラ42はベルト25に載せられた整列苗Pの側面の上部と下部に接当する位置とし、一対のローラ42は個々の苗Paの紙筒直径より狭い間隔とし、一対のローラ42は互いの対向面が整列苗Pより遠ざかる方向に同一速度で回転させ、その周速は横移動機構10の移動速度の約3倍とする。
【0027】
また、横移動機構10により整列苗Pが近付いてくる側のローラ42より遠ざかる側のローラ42をやや整列苗Pに近く位置させ、遠ざかる側のローラ42の整列苗P側の端部を苗規制ベルト5の整列苗P側の面より整列苗Pからやや遠く位置させる。整列苗Pの分離される苗Paには、先ず分離される苗Paに近付いてくる側のローラ42が接当し、続いて遠ざかる側のローラ42が接当する。そして、整列苗Pの側面が回転する一対のローラ42に順次接当することにより連続して個々の苗Paに分離され、分離された個々の苗Paはローラ42に挾まれて整列苗Pの反対側に立垂状態のまま繰り出す。
【0028】
さらに、ローラ42は、横移動機構枠12が横方向に移動しその移動端で整列苗Pの移動方向が変わるため、横移動機構10の移動端で位置を進退させる。
【0029】
ローラ42の整列苗Pの反対側から外方に、分離部枠41から下方に設けた軸により、一対の平ベルト43を設ける。平ベルト43はローラ42から分離されて繰り出された個々の苗Paを受取り、紙筒の中間部を挾んで搬送し、整列苗Pの反対側に繰り出す。
【0030】
平ベルト43の搬送終端から直角方向に、分離部枠41から下方に設けた軸により、一対の平ベルト44を設ける。平ベルト44は平ベルト43の搬送終端から繰り出された個々の苗Paを受取り、紙筒の上部を挾んで搬送し繰り出す。
【0031】
つぎに、作動を説明する。
【0032】
横移動機構10の横移動機構枠12は所定のその移動端とし、整列苗Pを横移動機構10上の縦移動機構20としてのベルト25上に載せ、その整列苗Pの前端の分離される苗列が苗規制ベルト5に接して退いているローラ42に接する位置まで送り込む。
【0033】
このとき、ベルト31はベルト25による整列苗Pの移動により自由に回転移動するから、整列苗Pを送り込むと整列苗Pとそれが接しているベルト31とが一体に移動でき、摩擦により苗Paが分離されたり擦り切れたりすることなく、苗Paに損傷を与えない。
【0034】
適宜な手段により軸16などが回転し、横移動機構枠12が横方向に移動すると整列苗Pが横方向に移動し、ローラ42や平ベルト43などが回転する。
【0035】
横移動機構枠12の横方向の移動により、整列苗Pの最前列の分離される苗列は順次退いたローラ42の前端に接する。このとき、退いたローラ42の回転方向は整列苗Pの移動方向に正転して同一であり、その周速は整列苗Pの移動速度より速くしているから、分離される苗Paは後続する次の苗列とローラ42との間に挾まれて転動され、転がりながら整列苗Pの移動速度よりも速い速度で動かされることにより、順次分離される苗Paの次の苗や後続する次の苗列との連結部を剥されて無理なく個々の苗Paに分離される。
【0036】
このとき、ベルト31のスポンジ体32は整列苗Pのベルト25による移動側面に接しているから、装置が傾いたり振動しても、また整列苗Pが横移動機構10により往復移動しても分離部40の一対のローラ42に対する整列苗Pの位置を規制でき、端の苗Paが倒れたりすることなく、確実に整列苗Pの最前列の分離される苗列を一対のローラ42に供給できる。
【0037】
退いたローラ42により分離されて繰り出された苗Paは、続いて進み出たローラ42に接触し、進み出たローラ42は退いたローラ42とは反対方向に回転しているので、一対のローラ42の間から挾まれて繰り出される。また、万一退いたローラ42により分離されなかった苗Paも、進み出たローラ42により分離され繰り出される。そして、一対のローラ42により挾まれて繰り出された苗Paは、そのまま直ちに平ベルト43,44により挾まれてより遠くに繰り出される。
【0038】
整列苗Pの最前列の分離される苗列の分離が全て終り、横移動機構枠12が移動端に達すると、整列苗Pはベルト25により苗列の一列分だけ縦方向に移動し、同時にローラ42が進退して役割を交代し、横移動機構枠12は今までと反対方向に整列苗Pを横移動させて次の列の分離が開始される。
【0039】
このとき、ベルト31はベルト25による整列苗Pの移動により自由に回転移動するから、ベルト25の整列苗Pの移送により整列苗Pとそれが接しているベルト31とが一体に移動でき、摩擦により苗Paが分離されたり擦り切れたりすることなく、苗Paに損傷を与えない。
【0040】
また、整列苗Pはベルト25により苗列の一列分より多く移送されようとするが、新たな分離される苗列は苗規制ベルト5に接当し、整列苗Pの底面とベルト25の間で滑って苗列の一列分のみしか移送されない。そのため、分離される苗列は苗規制ベルト5に規制され、分離される苗列と一対のローラ42の相互関係は正しく保たれ、確実に分離される。
【0041】
さらに、横移動機構枠12の反対側の移動端でも同様にベルト25が整列苗Pを間欠移動させ、連続的に個々の苗Paに分離される。
【0042】
このとき、整列苗Pの分離される苗Paは順次連続的に分離部40の一対のローラ42に供給されるから、整列苗Pを連続的に個々の苗Paに分離することができる。
【0043】
以上の実施例では、整列苗Pとして紙筒育苗容器による紙筒苗を示したが、土壌そのものを所定形状に固めたものや、育苗培地そのものが整然と連結している無機物繊維や高分子化合物によるものでも、個々の苗Paに分離可能に整然と連結されているものであれば良い。
【0044】
また、苗案内回転体30としてベルト31によるものを示したが、苗案内回転体30はローラのようなものでも良く、多数のローラを列状に並べても良い。
【0045】
また、苗案内回転体30としてベルト31とその表面に貼着したスポンジ体32からなるものを示したが、整列苗Pに弾性的に接触させるため苗案内回転体30そのものを横移動機構10の移動方向に弾性的に移動可能に保持しても良い。
【0046】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、縦移動機構の左右の分離部側には整列苗の横方向の位置を案内する一対の苗案内回転体を設け、苗案内回転体は整列苗の縦移動機構による移動側面に接しているから、装置が傾いたり振動しても分離部の一対の回転体に対する整列苗の位置を規制でき、端の苗が倒れたりすることなく、確実に整列苗の最前列の分離される苗列を一対の回転体に供給できる。
【0047】
また、苗案内回転体は縦移動機構による整列苗の移動により自由に回転移動するから、縦移動機構の整列苗の移送により整列苗とそれが接している苗案内回転体とが一体に移動でき、摩擦により苗が分離されたり擦り切れたりすることなく、苗に損傷を与えない。
【0048】
また、整列苗を縦移動機構に載せるときにも同様に、整列苗を送り込むと整列苗とそれが接している苗案内回転体とが一体に移動するから、縦移動機構の整列苗の移送により整列苗とそれが接している苗案内回転体とが一体に移動でき、摩擦により苗が分離されたり擦り切れたりすることなく、苗に損傷を与えない。
【0049】
請求項2の発明によれば、整列苗を載せて往復移動して分離部の一対の回転体に分離される苗を供給する横移動機構を設け、横移動機構上には横移動機構の移動端で整列苗を載せて縦方向に間欠的に移動させる縦移動機構を設け、整列苗の分離される苗は順次連続的に分離部の一対の回転体に供給されるから、整列苗を連続的に個々の苗に分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】整列苗の分離装置における苗案内体の一実施例を示す平面図である。
【図2】その正面図である。
【図3】その側面図である。
【図4】図1の作動状態を示す平面図である。
【図4】図1の一部を切り欠いた部分拡大図である。
【図6】図2の一部を切り欠いた部分拡大図である。
【図7】図7のA-A線に沿う断面図である。
【図8】図3の部分拡大図である。
【図9】図3の一部を切り欠いた部分拡大図である。
【図10】図1の一部を切り欠いた部分拡大図である。
【符号の説明】
10 横移動機構
20 縦移動機構
30 苗案内回転体
40 分離部
42 回転体としてのローラー
P 整列苗
Pa 苗
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2003-09-22 
結審通知日 2003-09-26 
審決日 2003-10-07 
出願番号 特願平3-209884
審決分類 P 1 122・ 121- ZA (A01C)
最終処分 成立  
特許庁審判長 村山 隆
特許庁審判官 渡部 葉子
藤井 俊二
登録日 1997-05-23 
登録番号 特許第2652476号(P2652476)
発明の名称 整列苗の分離装置における苗案内体  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 中村 誠  
代理人 勝田 裕子  
代理人 原田 敬志  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 勝田 裕子  
代理人 中村 誠  
代理人 原田 信市  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 幸長 保次郎  

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