• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 一部無効 2項進歩性 訂正を認める。無効とする(申立て全部成立) A01C
管理番号 1103524
審判番号 無効2002-35544  
総通号数 59 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-08-13 
種別 無効の審決 
審判請求日 2002-12-25 
確定日 2003-11-17 
訂正明細書 有 
事件の表示 上記当事者間の特許第2823521号発明「移植機の苗供給装置」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 訂正を認める。 特許第2823521号の請求項1に記載された発明についての特許を無効とする。 審判費用は、被請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第2823521号の請求項1ないし請求項3に係る発明についての出願は、平成7年2月7日に出願され、平成10年9月4日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、株式会社サークル鉄工より請求項1を無効とする旨の無効審判が請求され、平成15年3月18日に被請求人より答弁書と共に訂正請求書が提出され、平成15年6月19日に請求人より弁駁書が提出されたものである。

2.訂正の適否の判断
(1)被請求人が求める訂正の内容
被請求人が求める訂正の内容は、本件特許発明の明細書及び図面を以下のa及びbのとおりに訂正することを求めるものである(下線部は訂正個所である。)。
訂正事項a
特許明細書の特許請求の範囲の請求項1を
「【請求項1】 個々の苗に分離可能に整然と連結した整列苗を移動させて分離部に供給して個々の苗に分離し植付装置に供給する装置において、整列苗を載せて分離部に分離される苗を縦方向に移動させる縦移動機構を設け、縦移動機構の左右には整列苗の移動側面を案内する一対の苗案内回転体を設け、苗案内回転体は整列苗の移動側面に接して縦移動機構による整列苗の移動により自由に回転移動し、苗案内回転体には苗案内ベルトを掛け渡し、一対の苗案内回転体の苗案内ベルトの分離部側の間隔は整列苗の縦移動機構による移動側面の幅に対応して、苗案内ベルトの分離部側が個別に水平方向に回転することで変化し、苗案内ベルトの分離部側の反対側の間隔は整列苗の縦移動機構による移動側面の最大の幅以上とする移植機の苗供給装置。」と訂正する。
訂正事項b
発明の詳細な説明の段落【0016】を
「【課題を解決するための手段】
請求項1の発明の移植機の苗供給装置は、個々の苗91に分離可能に整然と連結した整列苗90を移動させて分離部50に供給して個々の苗に分離し植付装置80に供給する装置において、整列苗90を載せて分離部50に分離される苗91を縦方向に移動させる縦移動機構20を設け、縦移動機構20の左右には整列苗90の移動側面を案内する一対の苗案内回転体30を設け、苗案内回転体30は整列苗90の移動側面に接して縦移動機構20による整列苗90の移動により自由に回転移動し、苗案内回転体30には苗案内ベルト31を掛け渡し、一対の苗案内回転体30の苗案内ベルト31の分離部50側の間隔は整列苗90の縦移動機構20による移動側面の幅に対応して、苗案内ベルト31の分離部50側が個別に水平方向に回転することで変化し、苗案内ベルト31の分離部50側の反対側の間隔は整列苗90の縦移動機構20による移動側面の最大の幅以上とするものである。」と訂正する。

(2)訂正請求に対する請求人の主張
請求人は弁駁書において、被請求人の求める訂正に対して以下の主張をしている。
被請求人は特許明細書の特許請求の範囲の請求項1の「一対の苗案内回転体の苗案内ベルトの分離部側の間隔は整列苗の縦移動機構による移動側面の幅に対応して変化」させる構成を、「一対の苗案内回転体の苗案内ベルトの分離部側の間隔は整列苗の縦移動機構による移動側面の幅に対応して、苗案内ベルトの分離部側が個別に水平方向に回転することで変化」させる構成に訂正することを求めているが、該訂正は、特許明細書の発明の詳細な説明に記載されている、「苗案内体枠35の中間部に、一端をピン38により水平方向に自由に回転するように止められている苗案内可動枠37が、もう一端のピン39にはめ込まれたプーリ33が苗案内ベルト31の縮みによりプーリ32の方向に引かれることにより、整列苗90の方向に付勢されている」構成のもの(下位概念事項)以外の上位概念事項をも包含するものであり、実質上特許請求の範囲を変更するものであるので不適法な訂正であり、認められないものである。

(3)訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び特許請求の範囲の拡張・変更の存否についての当審の判断
これらの訂正事項について検討すると、上記訂正事項aは、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1の「(苗案内ベルトの分離部側の間隔は)変化し」について、「(苗案内ベルトの分離部側の間隔は)苗案内ベルトの分離部側が個別に水平方向に回転することで変化し」と、より具体的に限定するものであり、この限定は特許明細書の段落【0032】〜【0036】、及び図4〜図10の記載に基くものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当する。そして特許明細書及び図面全体の記載に徴すれば、上記訂正によって特許明細書に記載されていた事項以外の事項を包含することとなったとはいえないから、上記訂正は新規事項の追加には該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張しまたは変更するものではない。また、上記訂正事項bは、上記特許請求の範囲の減縮に伴って、減縮された特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載との整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当するものではない。

(4)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第134条第5項の規定によって準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書き、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.本件発明
特許第2823521号の請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、訂正明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものと認められる。
「個々の苗に分離可能に整然と連結した整列苗を移動させて分離部に供給して個々の苗に分離し植付装置に供給する装置において、整列苗を載せて分離部に分離される苗を縦方向に移動させる縦移動機構を設け、縦移動機構の左右には整列苗の移動側面を案内する一対の苗案内回転体を設け、苗案内回転体は整列苗の移動側面に接して縦移動機構による整列苗の移動により自由に回転移動し、苗案内回転体には苗案内ベルトを掛け渡し、一対の苗案内回転体の苗案内ベルトの分離部側の間隔は整列苗の縦移動機構による移動側面の幅に対応して、苗案内ベルトの分離部側が個別に水平方向に回転することで変化し、苗案内ベルトの分離部側の反対側の間隔は整列苗の縦移動機構による移動側面の最大の幅以上とする移植機の苗供給装置。」

4.当事者の主張
(1)請求人の主張
請求人は、本件発明の特許を無効にすべき理由として以下の点を主張している。
(1-1)無効理由1
a.本件の特許明細書には、「横移動機構10」を備えた一連の構成の「移植機の苗供給装置」が唯一の実施例として記載されており、「横移動機構10」は発明の目的を達成し効果を挙げるのに必要不可欠であるにもかかわらず、特許請求の範囲の請求項1は「横移動機構10」を構成要件として包含しておらず、同請求項1には発明の詳細な説明に記載されている発明とは別異の発明が記載されているから、本件の出願は特許法第36条第5項第1号の規定に適合していない。
b.本件発明は、「横移動機構10」を必要不可欠としているにもかかわらず、特許請求の範囲の請求項1は「横移動機構10」を欠如しており、同請求項1には発明の構成に欠くことができない事項のみが記載されていない。また、同請求項1に記載されている「苗案内回転体は整列苗の移動側面に接して縦移動機構による整列苗の移動により自由に回転移動し」の記載は不明瞭であるので、本件の出願は特許法第36条第5項第2号の規定に適合していない。
c.本件の特許明細書の発明の詳細な説明は、当業者が容易にその実施をすることができる程度に記載されておらず、本件の出願は特許法第36条第4項の規定に適合していない。
(1-2)無効理由2
本件発明は、甲第1号証に記載の発明に基いて、または、甲第1号証と甲第2号証(および/または甲第3号証もしくは甲第4号証)に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
被請求人が求める訂正は認められるべきではないが、仮に訂正が認められるとしても、甲第1号証、甲第3号証、甲第4号証により、訂正を求めている構成には発明力が存在しないのであり、訂正に係る本件発明は、訂正前の本件特許発明と同様、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
甲第1号証:特開平5-30812号公報
甲第2号証:特公昭44-28445号公報
甲第3号証:実願昭56-57214号(実開昭57-169727号)の 願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィ ルム
甲第4号証:実願昭60-88887号(実開昭61-206518号)の 願書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィ ルム

(2)被請求人の主張
一方被請求人は以下の点を主張している。
(2-1)無効理由1に対して
a.本件発明は「移植機の苗供給装置」に関するものであり、その請求項1に記載された事項が発明の詳細な説明に記載されていることは明らかであり、本件の出願は特許法第36条第5項第1号の規定に適合していないとの主張は理由がない。
b.本件特許明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により、「移植機の苗供給装置」としてまとまりのある一の技術思想がとらえられるのであり、その発明が明確に記載されているのは明らかであるから、本件の出願は特許法第36条第5項第2号の規定に適合していないとの主張は理由がない。
c.本件発明の構成については、目的、効果とともに、図面を参照しつつ、その具体化した実施例に関する内容についての説明も行いながら、発明の詳細な説明において明瞭に記載しているので、本件の出願は特許法第36条第4項の規定に適合していないとの主張は理由がない。
(2-2)無効理由2に対して
甲第1号証ないし甲第4号証のいずれにも、訂正後の本件発明(以下、単に「本件発明」という)における「一対の苗案内回転体の苗案内ベルトの分離部側の間隔は整列苗の縦移動機構による移動側面の幅に対応して、苗案内ベルトの分離部側が個別に水平方向に回転することで変化し、苗案内ベルトの分離部側の反対側の間隔は整列苗の縦移動機構による移動側面の最大の幅以上とする」構成について記載も示唆もされていない。また、本件発明や甲第1号証に記載された発明においては、その苗案内回転体は整列苗の移動側面に接して縦移動機構による整列苗の移動により自由に回転移動するものであるのに対し、「苗案内回転体の苗案内ベルト」に相当する、甲第3号証の「ベルトコンベアのエンドレスベルト」も甲第4号証の「姿勢整列ベルトのエンドレスベルト」も、いずれもモータで駆動自在の構成であって構成を異にし、これらの技術事項をそのまま甲第1号証に記載された発明に適用して組み合わせることはできない。そして、本件発明は上記の構成により、特許明細書に記載された格別顕著な作用、効果を奏するものである。

5.無効理由2に対する当審の判断
(1)甲第1号証に記載された発明
本件発明の出願前に頒布された刊行物である、甲第1号証(特開平5-30812号公報)には、以下の記載がある。
a.「個々の苗に分離可能に整然と連結した整列苗を移動させて分離部に供給して個々の苗に分離する装置において、整列苗を載せて往復移動して分離部の一対の回転体に分離される苗を供給する横移動機構を設け、横移動機構上には・・・整列苗を載せて縦方向に間欠的に移動させる縦移動機構を設け、縦移動機構の左右の分離部側には整列苗の横方向の位置を案内する一対の苗案内回転体を設け、苗案内回転体は整列苗の縦移動機構による移動側面に接し、縦移動機構による整列苗の移動により自由に回転移動する整列苗の分離装置における苗案内体。」(第2頁第1欄第2-12行)
b.「本発明は、農作物の移植栽培で、個々の苗に分離可能に整然と連結した紙筒育苗容器による紙筒苗のような整列苗を使用する移植機などにおいて、整列苗から個々の苗に分離する分離装置に関する。」(第2頁第1欄第15-18行)
c.「苗案内回転体30はベルト31とその表面に貼着したスポンジ体32からなり、ベルト31の内方の間隔は整列苗Pの横方向より広くし、スポンジ体32の内方の間隔は整列苗Pの横方向より狭くする。そして、スポンジ体32が整列苗Pの縦移動機構20の移動側面につぶれて接して整列苗Pを規制する。」(第3頁第3欄第38-43行)
d.「苗案内回転体30としてベルト31とその表面に貼着したスポンジ体32からなるものを示したが、整列苗Pに弾性的に接触させるため苗案内回転体30そのものを・・・弾性的に移動可能に保持しても良い。」(第4頁第6欄第11-15行)
e.図面中、特に図5等の記載によれば、一対の「ベルト31」の間隔は「ベルト31」の「分離部」側も「分離部」側の反対側もほぼ同じであるといえる。
そして、上記の記載事項c.及びd.によれば、「整列苗Pに弾性的に接触させるため」に、一対の「苗案内回転体30」は「ベルト31」の表面に「スポンジ体32」を「貼着」するか、「苗案内回転体30そのものを弾性的に移動可能に保持」することにより、「苗案内回転体30」の「ベルト31」が「整列苗に弾性的に接」するように構成されている。
そうすると、甲第1号証にはつぎの発明(以下、「引用発明」という)が記載されていると認められる。
「農作物の移植栽培で、個々の苗に分離可能に整然と連結した紙筒育苗容器による紙筒苗のような整列苗を使用する移植機などにおいて、整列苗から個々の苗に分離する分離装置に関する発明であって、個々の苗に分離可能に整然と連結した整列苗を移動させて分離部に供給して個々の苗に分離する装置において、整列苗を載せて往復移動して分離部の一対の回転体に分離される苗を供給する横移動機構を設け、横移動機構上には整列苗を載せて縦方向に間欠的に移動させる縦移動機構を設け、縦移動機構の左右の分離部側には整列苗の横方向の位置を案内する一対の苗案内回転体を設け、苗案内回転体のベルトは整列苗の縦移動機構による移動側面に弾性的に接し、縦移動機構による整列苗の移動により自由に回転移動する整列苗の分離装置における苗案内体。」

(2)対比・判断
本件発明と引用発明とは、「個々の苗に分離可能に整然と連結した整列苗を移動させて分離部に供給して個々の苗に分離する装置において、整列苗を載せて分離部に分離される苗を縦方向に移動させる縦移動機構を設け、縦移動機構の左右には整列苗の移動側面を案内する一対の苗案内回転体を設け、苗案内回転体は整列苗の移動側面に接して縦移動機構による整列苗の移動により自由に回転移動する」ものである点で共通している。また、引用発明は「横移動機構」を備えているのに対して、本件発明は「横移動機構」を発明特定事項としてはいないが、本件発明が「横移動機構」を具備するものを包含することは本件特許請求の範囲及び実施例の記載から明らかであるから、両者は、この点においても共通する。
そして引用発明は、「整列苗を使用する移植機」における「整列苗の分離装置」を備えており、分離された「個々の苗」は「移植機」の植付装置に供給されることは明らかであるから、同引用発明は本件発明における「(個々の苗に分離し)植付装置に供給する装置」に対応する構成を備えていると共に、実質的に「移植機の苗供給装置」を開示しているということができる。また引用発明における「苗案内回転体」は、「整列苗」の「移動側面」を「案内」するものであり、該「苗案内回転体」を構成する「ベルト」は、実質上「苗案内ベルト」であるといえるから、同引用発明は本件発明における「苗案内回転体には苗案内ベルトを掛け渡し」に対応する構成を備えているといえる。さらに引用発明における一対の「苗案内回転体」の「ベルト」(「苗案内ベルト」)は、「整列苗」の縦移動機構による移動側面に弾性的に接するものであることから、移動側面の幅に対応するものである点で本件発明における一対の「苗案内回転体」の「苗案内ベルト」と共通している。
そうすると、両者は以下の点で一致し、また相違していると認められる。
一致点:
個々の苗に分離可能に整然と連結した整列苗を移動させて分離部に供給して個々の苗に分離し植付装置に供給する装置において、整列苗を載せて分離部に分離される苗を縦方向に移動させる縦移動機構を設け、縦移動機構の左右には整列苗の移動側面を案内する一対の苗案内回転体を設け、苗案内回転体は整列苗の移動側面に接して縦移動機構による整列苗の移動により自由に回転移動し、苗案内回転体には苗案内ベルトを掛け渡し、一対の苗案内回転体の苗案内ベルトは整列苗の縦移動機構による移動側面の幅に対応するものである移植機の苗供給装置、である点。
相違点:
整列苗の縦移動機構による移動側面の幅に対応するものである一対の苗案内回転体の苗案内ベルトの間隔が、本件発明においては、分離部側の間隔は苗案内ベルトの分離部側が個別に水平方向に回転することで変化し、苗案内ベルトの分離部側の反対側の間隔は整列苗の縦移動機構による移動側面の最大の幅以上とするものであるのに対して、引用発明においては、分離部側も分離部側の反対側もほぼ同じである点。
上記の相違点について検討する。
一般に、水平搬送ベルトの両側に設けた、被搬送物の移動側面を案内する一対の案内体の間隔を、案内体の前部である搬出側(出口側)は被搬送物の幅に対応して個別に水平方向に回転することで変化し、搬出側(出口側)の反対側である搬入側(入口側)は被搬送物の最大の幅以上とすることは周知の技術(例えば、下記の周知例1及び周知例2があげられる)であり、また農業分野においても同様の技術事項が周知(例えば、下記の周知例3及び周知例4があげられる)である。特に周知例3は、引用発明と共通の技術的範疇に属する移植機における周知技術を開示しており、水平に架設された苗送りベルトの両側に設けた、苗(マット状苗)の移動側面を案内する一対の側板の間隔を苗(マット状苗)の幅よりも大とし、苗載台前端の苗取り口側において上記一対の側板の前部にガイド板を苗取り口方向に向かって個別に揺動自在に附勢して設け、苗載台前端で左右方向に広がろうとする苗を内側に寄せて、苗取り口に向かって円滑に苗を供給するものである。この周知例3において、案内体である一対のガイド板が個別に揺動、すなわち水平方向に回転することで、一対のガイド板の間隔は苗(マット状苗)の幅に対応して変化するものであり、苗取り口側の反対側における左右両側板の間隔は苗(マット状苗)の苗送りベルトによる移動側面の最大の幅以上とされているものである。同周知例3は、苗取り口においてマット状苗を一定の大きさの苗に掻き取って移植する、マット状苗を使用する移植機における周知技術であり、マット状苗も紙筒苗も苗の形態としてきわめて周知であって、各々の形態の苗の移植技術が相互に転用できることは当業者にとって自明である。そうすると、これらの周知技術を技術的前提とし、引用発明において「一対の苗案内回転体」が「整列苗」の移動側面に弾性的に接する接触部を「一対の苗案内回転体」の前部とし、「一対の苗案内回転体」がその前部において個別に「整列苗」の移動側面に弾性的に接するようにすることは当業者が困難なく想起できることである。そうすると、引用発明において、一対の苗案内回転体のベルト(苗案内ベルト)が整列苗の縦移動機構による移動側面の幅に対応する部分である、移動側面に弾性的に接する接触部は、ベルト(苗案内ベルト)の前部である整列苗の分離部側となり、分離部側の反対側の間隔は整列苗の縦移動機構による移動側面の最大の幅以上となって、ベルト(苗案内ベルト)が整列苗の分離部側において個別に弾性的に接することでベルト(苗案内ベルト)の分離部側は実質上個別に水平方向に回転することとなり、個別に水平方向に回転することでベルト(苗案内ベルト)の分離部側の間隔は整列苗の移動側面の幅に対応して変化することとなる。そして本件発明が奏する効果も、引用発明及び周知技術が奏する効果から予測できる範囲内のものであり、格別のものとはいえない。
したがって、本件発明は引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

【周知例】
周知例1:実願昭53-126276号(実開昭55-43748号)の願 書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム
「平ベルトコンベア1」によって移送される物品の形状に対応して、「スプリング5」を備えた「ガイド板3」が自由回転する可動シュートが記載されており、図面第1図及び第2図によれば、「平ベルトコンベア1」の両側には「固定シュート6」が立設されており、両側の「固定シュート6」の間隔は、「平ベルトコンベア1」の幅及び「ガイド板3」の先端部の間隔よりも大きく形成されている。(第2頁第5-19行並びに図面第1図及び第2図)
周知例2:特開昭60-128121号公報
「主コンベア(2)」の両側部に「容器(A)」の移送方向に対し直角方向の位置を規制するべく相対峙させた「ガイド板(22)(23)」を設けるとともに、「主コンベア(2)」の両側方に相対峙して立設した一対の「枢軸(31)(31)」を支点にそれぞれ孤回動自在に枢着させた揺動自在な「矯正棹(32)(32)」の自由端部を「圧縮バネ(33)(33)」により「主コンベア(2)」側に付勢するようにした、トレー状容器に内容物を収納する方法及びその装置が記載されている。(第2頁右上欄第4-7行及び第3頁左下欄第16行-右下欄末行並びに図面第2図及び第7図)
周知例3:実願平1-104737号(実開平3-43919号)の願書に 添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム
「苗載台(2)」における左右の「側板(2a)」の前端部に、「枢軸(24)」を支点として「ガイド板(23)(23)」を揺動自在に、左右方向から内方の「苗取り口(2b)」方向に向かって附勢して設け、「苗送りベルト(19)」で苗を後方より押した場合、「苗載台(2)」の前端で左右方向に広がろうとする苗を内側に寄せ「苗取り口(2b)」に対して円滑な供給をする苗の移植機が記載されている。(第7頁第3-6行及び第8頁第3-18行並びに図面第3図)
周知例4:実願昭53-157650号(実開昭55-72814号)の願 書に添付した明細書及び図面の内容を撮影したマイクロフィルム
「ベルトコンベア(3)」の移送経路両側脇に位置する「フレーム(1)」部分に、左右一対の「ガイド杆(8),(8)」を、その移送方向上手側端部を支点として横巾方向に揺動自在に枢着し、これら両「ガイド杆(8),(8)」の移送方向下手側端部と前記「フレーム(1),(1)」に設けた左右一対の「ブラケット(9),(9)」との間に、前記両「ガイド杆(8),(8)」の横巾方向の揺動を案内する機能と、両「ガイド杆(8),(8)」の「杆部分(8A),(8A)」を「育苗箱(2)」の横巾(l1)よりも小さな対向間隔(l2)に規制する機能とを有する「規制部材(10),(10)」を、「圧縮スプリング(11),(11)」を介装して設けた連続播種装置が記載されている。(第4頁第13行-5頁第17行及び図面第2図)

6.むすび
以上のとおりであるから、本件発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、その特許は特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、同法第123条第1項第2号に該当するので、請求人の主張する他の理由を検討するまでもなく、その特許は無効とすべきものである。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
移植機の苗供給装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
個々の苗に分離可能に整然と連結した整列苗を移動させて分離部に供給して個々の苗に分離し植付装置に供給する装置において、整列苗を載せて分離部に分離される苗を縦方向に移動させる縦移動機構を設け、縦移動機構の左右には整列苗の移動側面を案内する一対の苗案内回転体を設け、苗案内回転体は整列苗の移動側面に接して縦移動機構による整列苗の移動により自由に回転移動し、苗案内回転体には苗案内ベルトを掛け渡し、一対の苗案内回転体の苗案内ベルトの分離部側の間隔は整列苗の縦移動機構による移動側面の幅に対応して、苗案内ベルトの分離部側が個別に水平方向に回転することで変化し、苗案内ベルトの分離部側の反対側の間隔は整列苗の縦移動機構による移動側面の最大の幅以上とする移植機の苗供給装置。
【請求項2】
個々の苗に分離可能に整然と連結した整列苗を移動させて分離部に供給して個々の苗に分離し植付装置に供給する装置において、整列苗を載せて往復移動して分離部に分離される苗を横方向に移動させる横移動機構を設け、分離部の左右には整列苗の縦方向の位置を規制する一対の苗規制ベルトを設け、苗規制ベルトの整列苗側の面は横移動機構の移動に対応して同じ方向に移動し、苗規制ベルトの整列苗に対応する表面に整列苗の苗列の一列分以上の厚さの帯状弾性体を設け、帯状弾性体は薄肉の中空形状とした移植機の苗供給装置。
【請求項3】
個々の苗に分離可能に整然と連結した整列苗を移動させて分離部に供給して個々の苗に分離し植付装置に供給する装置において、整列苗を載せて分離部に分離される苗を縦方向に移動させる縦移動機構を設け、分離部には整列苗の分離される苗の移動側面に接する一対の分離回転体を設け、分離回転体の下部に縦移動機構の表面に一端で接する一対の薄い円盤を設け、薄い円盤の径は分離回転体の径より大として分離された苗の底部を支持する移植機の苗供給装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、農作物の移植栽培で、個々の苗に分離可能に整然と連結した紙筒育苗容器による紙筒苗のような整列した苗を使用する移植機において、整列苗から個々の苗に分離し植付装置に供給する移植機の苗供給装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
紙筒苗のような整列苗から個々の苗に分離する苗供給装置の、整列苗の縦方向への移動を案内する一対の苗案内回転体としては、本発明者らが特開平5-30812号として提案している。
【0003】
この苗供給装置の一対の苗案内回転体は、整列苗が横移動機構により往復移動したり機械の進行により振動しても、正しく分離部に導かれるようにしようとするもので、次々と補給される整列苗の幅が多少変化しても、その端の苗を不要に分離したりして損傷を与えることなく供給しようとするものである。つまり、機械的に整列苗を個々の苗に分離しようとすればおのずと整列苗は正しく分離部に導かれなければ正常に分離されないし、分離部に達する前に分離して倒れてしまった苗は分離部で正常に分離されないから、正常に本圃に植え付けられずに捨てられてしまい無駄を生じる。
【0004】
この一対の苗案内回転体では、一対のピンに自由に回転するプーリをはめ込み、そのプーリ間にベルトを掛け渡したものを対向して設けている。そして、そのベルトの表面にはスポンジ体を貼着し、整列苗の縦移動機構による移動側面の幅が変わっても、その変形により確実に端の苗を保持しようとするものである。また、そのベルトはスポンジ体により整列苗の移動側面に接していて、縦移動機構による整列苗の移動により自由に回転移動して、整列苗とそれが接している苗案内回転体とが一体に移動することにより、端の苗が摩擦により不要に分離されることがないものである。また、苗案内回転体は整列苗に弾性的に接触させるため苗案内回転体そのものを横移動機構の移動方向に弾性的に移動可能に保持しても良いことは示されている。これを第1の従来例とする。
【0005】
また、紙筒苗のような整列苗から個々の苗に分離する苗供給装置の、整列苗の横方向への移動を案内する一対の苗規制ベルトとしては、本発明者らが特開平5-23022号として提案している。
【0006】
この苗供給装置の一対の苗規制ベルトは、整列苗と一体に移動することにより苗規制ベルトに接する苗が摩擦により分離されて倒れたり擦り切れたりするのを防止したり、整列苗が縦移動機構により余分に移動するのを正しい位置で受け止めたり、整列苗の分離される苗列、および分離される苗列に後続していて分離される苗列の苗が分離されたことにより露出した後続の苗列が、不要に倒れてしまうのを防ごうとするものである。つまり、整列苗が苗規制ベルトと一体に移動しないと摩擦により擦り切れたり、整列苗の分離される苗が分離部の分離回転体に強く接すると分離された苗がつぶれてしまい、苗傷みが発生しその後の生育に影響を与える。また、分離部に達する前に倒れてしまった苗は分離部で正常に分離されないから、正常に本圃に植え付けられずに捨てられてしまい無駄を生じる。
【0007】
この一対の苗規制ベルトでは、分離部の左右に設けられて整列苗の縦方向の位置を規制し、苗規制ベルトの整列苗側の面は横移動機構の移動に対応して同じ方向に移動し、苗規制ベルトの整列苗に対応する表面に整列苗の苗列の一列分以上の厚さの弾性体を設けている。この弾性体は細幅の帯状のスポンジ状のもので、苗規制ベルトの表面の上端と下端に設けられ、整列苗の前端の苗列の側面に接し、移動する整列苗によりほぼつぶれる程度の弾性であると示されている。これを第2の従来例とする。
【0008】
また、紙筒苗のような整列苗から個々の苗に分離する苗供給装置の、苗の底部を支持する回転体としては、実公平4-10724号として提案されている。
【0009】
この苗供給装置の苗の底部を支持する回転体は、列状に隣接して繰り出される紙筒苗の紙筒底部から育苗土が脱落するのを防止しようとするものである。つまり、紙筒苗の紙筒底部から育苗土が脱落すると、苗傷みが発生しその後の生育に影響を与えるし、脱落した育苗土は機械上に堆積して搬送中の紙筒苗の底部に接触して障害を与える。
【0010】
この苗の底部を支持する回転体では、列状に隣接する紙筒苗を縦姿勢で誘導搬送する回転ベルトであり、その苗出口部に近接して臨む一対の分離回転体により個々の苗に分離するもので、前記苗を誘導搬送する回転ベルトの下端部にL状に屈折した形状に多数の舌片を設け、舌片により回転ベルトの底部を形成せしめるものである。これを第3の従来例とする。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
前記第1の従来の技術の、整列苗の縦方向への移動を案内する一対の苗案内回転体では、縦移動機構による整列苗の移動により自由に回転移動する苗案内回転体のベルトの表面にスポンジ体を貼着していた。しかし、現在分離中の整列苗に後続する整列苗を密着させて供給する際に、現在分離中の整列苗が一対の苗案内回転体の中まで進行していると、後続する整列苗を先行する整列苗に密着させるべく進行させても一対の苗案内回転体は先行する整列苗に接しているので自由に回転移動しないため、後続する整列苗の端の苗はスポンジ体との摩擦により不要に分離されることがあった。
【0012】
また、前記第1の従来の技術では、スポンジ体に替えて苗案内回転体そのものを横移動機構の移動方向に弾性的に移動可能に保持して、苗案内回転体を整列苗に弾性的に接触させても良いことは示されている。しかし、単に苗案内回転体を横移動機構の移動方向に弾性的に移動可能に保持したのでは、現在分離中の整列苗に後続する整列苗を密着させて供給する際に、現在分離中の整列苗の幅が狭く一対の苗案内回転体の中まで進行していて、後続する整列苗の幅が広いとこれを先行する整列苗に密着させるべく進行させると、幅の広い後続する整列苗により一対の苗案内回転体は回転移動してしまい、先行する整列苗の端の苗は苗案内回転体との摩擦により不要に分離されることがあった。
【0013】
前記第2の従来技術の、整列苗の横方向への移動を案内する一対の苗規制ベルトでは、苗規制ベルトの整列苗に対応する表面に整列苗の苗列の一列分以上の厚さの弾性体を設けている。この弾性体はスポンジ状のもので、移動する整列苗によりほぼつぶれる程度の弾性であると示されているが、紙筒苗の苗列の一列分以上の厚さの紙筒苗の移動によりほぼつぶれる程度のスポンジは、発泡部分の多いかなり柔らかいスポンジが要求される。しかし、この柔らかいスポンジは発泡部分が多いために機械的強度が弱く、苗規制ベルトの表面に設けられ、苗規制ベルトの整列苗に対応する面の端部のプーリを通過する度に屈曲により極度につぶされて伸ばされ、スポンジが苗規制ベルトから剥がれたりちぎれてしまったりすることがあった。
【0014】
前記第3の従来技術の、苗を誘導搬送する回転ベルトの下端部にL状に屈折した形状に多数の舌片を設けている。けれども、紙筒底部から育苗土が脱落するのは紙筒部に力を加えたときであって、分離部に誘導搬送するときにはそれほど脱落するものではない。そして、整列苗を縦移動機構としてのベルトに載せているものでは、整列苗の分離される苗の底部は分離部に誘導されるまでベルトに支持されているので育苗土の脱落の心配はない。しかし、分離部の一対の分離回転体は個々の苗に分離するための力を紙筒部に加えて挾み、かつ分離された苗の底部を支持するものは無いから、ここでは紙筒底部からの育苗土の脱落の心配がある。つまり、分離回転体により紙筒底部から育苗土が脱落し、苗傷みが発生しその後の生育に影響を与え、脱落した育苗土は機械上に堆積して搬送中の紙筒苗の底部に接触して障害を与えることがあった。
【0015】
本発明は、移植機の植付装置に分離された個々の苗を供給するための苗供給装置において、整列苗を確実に分離部に供給し不要に分離されることのない苗案内回転体により、また整列苗を確実に分離部に供給しスポンジが剥がれたりちぎれてしまったりすることのない苗規制ベルトにより、また整列苗を確実に個々の苗に分離し紙筒底部からの育苗土の脱落がない分離回転体により、高性能・高能率な移植機を提供することを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明の移植機の苗供給装置は、個々の苗91に分離可能に整然と連結した整列苗90を移動させて分離部50に供給して個々の苗に分離し植付装置80に供給する装置において、整列苗90を載せて分離部50に分離される苗91を縦方向に移動させる縦移動機構20を設け、縦移動機構20の左右には整列苗90の移動側面を案内する一対の苗案内回転体30を設け、苗案内回転体30は整列苗90の移動側面に接して縦移動機構20による整列苗90の移動により自由に回転移動し、苗案内回転体30には苗案内ベルト31を掛け渡し、一対の苗案内回転体30の苗案内ベルト31の分離部50側の間隔は整列苗90の縦移動機構20による移動側面の幅に対応して、苗案内ベルト31の分離部50側が個別に水平方向に回転することで変化し、苗案内ベルト31の分離部50側の反対側の間隔は整列苗90の縦移動機構20による移動側面の最大の幅以上とするものである。
【0017】
請求項2の発明の移植機の苗供給装置は、個々の苗91に分離可能に整然と連結した整列苗90を移動させて分離部50に供給して個々の苗91に分離し植付装置80に供給する装置において、整列苗90を載せて往復移動して分離部50に分離される苗91を横方向に移動させる横移動機構10を設け、分離部50の左右には整列苗90の縦方向の位置を規制する一対の苗規制ベルト40を設け、苗規制ベルト40の整列苗90側の面は横移動機構10の移動に対応して同じ方向に移動し、苗規制ベルト40の整列苗90に対応する表面に整列苗90の苗列の一列分以上の厚さの帯状弾性体41を設け、帯状弾性体41は薄肉の中空形状としたものである。
【0018】
請求項3の発明の移植機の苗供給装置は、個々の苗91に分離可能に整然と連結した整列苗90を移動させて分離部50に供給して個々の苗91に分離し植付装置80に供給する装置において、整列苗90を載せて分離部50に分離される苗91を縦方向に移動させる縦移動機構20を設け、分離部50には整列苗90の分離される苗91の移動側面に接する一対の分離回転体51を設け、分離回転体51の下部に縦移動機構20の表面に一端で接する一対の薄い円盤52を設け、薄い円盤52の径は分離回転体51の径より大として分離された苗91の底部を支持するものである。
【0019】
【作用】
請求項1の発明では、一対の苗案内回転体30の苗案内ベルト31の分離部50側の間隔は整列苗90の縦移動機構20による移動側面の幅に対応して変化するから、整列苗90の幅が狭くなっても広くなっても苗案内ベルト31が端の苗91を保持して分離部50に正しく導く。
【0020】
また、苗案内ベルト31の分離部50側の反対側の間隔は整列苗90の縦移動機構20による移動側面の最大の幅以上としたから、後続する整列苗90を先行する整列苗90に密着させるべく進行させても、後続する整列苗90の端の苗91は苗案内ベルト31に接しないし、幅の広い後続する整列苗90により苗案内ベルト31が回転移動することもない。
【0021】
請求項2の発明では、苗規制ベルト40の整列苗90に対応する表面に整列苗90の苗列の一列分以上の厚さの帯状弾性体41を設け、帯状弾性体41は薄肉の中空形状としたから、発泡部分の少ない堅いスポンジや発泡部分の全く無いゴム状物質でも、移動する整列苗90によりほぼつぶれる程度の弾性となる。
【0022】
請求項3の発明では、分離回転体51の下部に縦移動機構20の表面に一端で接する一対の薄い円盤52を設け、薄い円盤52の径は分離回転体51の径より大として分離された苗91の底部を支持するから、分離された苗91の底部は縦移動機構20表面から薄い円盤52により支持され、底部からの育苗土の脱落の心配が無い。
【0023】
【実施例】
以下、本発明の一実施例を図面を参照して説明する。
【0024】
個々の苗91に分離可能に整然と連結した整列苗90として、紙筒育苗容器による紙筒苗を示している。この紙筒育苗容器は、展開すると六角柱状の上下が開口した紙筒を、整然と水溶性糊で貼り合わせたものである。この紙筒中に培土を詰めて播種して育苗すると苗が生長して紙筒苗の整列苗90となり、水溶性糊は灌水により徐々に溶けて無くなり、紙筒は腐敗の進行により徐々に互いに結合し、移植時には適度の連結強度を保って個々の苗91に分離可能に整然と連結するようになっている。
【0025】
つぎに、この紙筒苗による整列苗90を個々の苗91に分離し植付装置80に供給する苗供給装置を装備した移植機について説明する。
【0026】
図1において、1は機枠であり、機枠1は平面視が略長方形の枠体を成していて、図示しないトラクターに取り付けられて牽引され進行する。そして、機枠1の上方には上部枠2を設け、上部枠2の上方には苗載台3を設け、苗載台3の下方の上部枠2に横移動機構10および縦移動機構20と分離部50を設ける。機枠1の下方左右には接地輪4を設け、接地輪4は圃面Eに接地していて機枠1の進行により回転して装置の動力を供給する。機枠1と上部枠2の間に苗選別整列装置70を設け、苗選別整列装置70は苗選別整列装置枠71に支持され、苗選別整列装置70と圃面Eの間には植付装置80を設ける。
【0027】
横移動機構10は、上部枠2上に移植機の進行方向に沿って設けた一対のレール11と、レール11に沿って往復移動可能な一対の横移動機構枠12と、横移動機構枠12の下方で一対のレール11の間にレール11と平行に設けた軸14とからなる。
【0028】
横移動機構枠12は分離部50側にやや低く傾斜して一対のレール11上に設け、横移動機構枠12のレール11に対応する四方の下面にはレール11の方向に回転するガイドローラ13を設け、ガイドローラ13は自由に回転するよう横移動機構枠12に係止される。また、軸14には往溝と復溝とが無端交叉状に形成した円筒カムが刻まれており、横移動機構枠12に連なる突起と噛み合っていて、軸14が回転することにより横移動機構枠12がレール11の方向に連続的に往復移動するようになっている。
【0029】
横移動機構10の横移動機構枠12には、横移動機構10の移動方向と直交する方向に移動する縦移動機構20を設ける。そして、縦移動機構20のベルト23上には整列苗90を載せて横移動機構10の移動端で横移動機構10の移動方向と直交する方向(図3の左方向)に間欠的に移動させる。
【0030】
縦移動機構20には、横移動機構枠12内の分離部50側に横移動機構10の移動方向に長くその傾斜に沿って平行にプーリ21,22を設け、プーリ21,22の間にはベルト23を掛け渡す。プーリ21には、横移動機構枠12が横方向に移動し、その移動端でのみカム15とカム27により軸14の回転が伝導されるようにし、横移動機構10の移動端で整列苗90の苗列の一列分よりやや多くベルト23を移動させるようにプーリ21を回転させる。そして、ベルト23上には分離部50に供給する整列苗90を載せ、横移動機構10と縦移動機構20により連続的に整列苗90の分離される苗91を分離部50に導く。
【0031】
また、横移動機構枠12内の分離部50から遠い側に平行に複数のプーリ24,25を設け、プーリ24,25の間には複数の細幅ベルト26を掛け渡す。そして、プーリ24は一方向クラッチを介してプーリ21と連結されており、プーリ21が横移動機構枠12の移動端で回転するとき共に回転して細幅ベルト26を移動させる。また、プーリ24は一方向クラッチにより細幅ベルト26を進行させる方向には自由に回転し、細幅ベルト26上に補給された整列苗90をベルト23上の整列苗90に追い付かせて密着させる。
【0032】
縦移動機構20のベルト23の左右端上方で一対の横移動機構枠12の内方の分離部50側には、整列苗90の横方向の位置を案内する一対の苗案内回転体30を設ける。
【0033】
苗案内回転体30は苗案内ベルト31と、その両端のプーリ32,33と、中間の複数の受ローラ34からなり、一対の苗案内ベルト31の分離部50側の間隔は整列苗90の縦移動機構20による移動側面の幅に対応して変化し、苗案内ベルト31の分離部50側の反対側の間隔は整列苗90の縦移動機構20による移動側面の最大の幅以上とする。
【0034】
一対の横移動機構枠12の内方の分離部50側には、ベルト23の移動方向に長くコの字状の一対の苗案内体枠35を設け、苗案内体枠35の内方端部にはベルト23の移動方向に所定間隔に垂直方向の複数のピン36をはめ込み、ピン36には自由に回転するプーリ32および複数の受ローラ34をはめ込む。苗案内体枠35の分離部50側内方には苗案内可動枠37を設け、その一端は苗案内体枠35の中間部に垂直方向のピン38により水平方向に自由に回転するように止められ、もう一端には垂直方向のピン39をはめ込み、ピン39には自由に回転するプーリ33をはめ込む。
【0035】
苗案内ベルト31はゴムのように伸縮自在な無端帯であり、プーリ32とプーリ33の間に伸ばして掛け渡す。一対のプーリ32の間隔は整列苗90の最大の幅以上とし、それに掛け渡された一対の苗案内ベルト31の間隔は整列苗90の縦移動機構20による移動側面の最大の幅以上とする。受ローラ34はスポンジ体の柔らかいローラであり、苗案内ベルト31が整列苗90に押されたとき変形して逃げてそれらの移動を妨げない。苗案内可動枠37は、そのピン39にはめ込まれたプーリ33が苗案内ベルト31の縮みによりプーリ32の方向に引かれることにより、整列苗90の方向に付勢されている。そして、整列苗90の縦移動機構20による移動側面の幅が狭いと一対のプーリ33の間隔が狭くなり、幅が広いと押されて一対のプーリ33の間隔が広くなり、それに掛け渡された一対の苗案内ベルト31の間隔は整列苗90の縦移動機構20による移動側面の幅に対応して変化する。
【0036】
そして、苗案内回転体30の苗案内ベルト31は整列苗90の移動側面に接して縦移動機構20による整列苗90の移動により自由に回転移動し、苗案内ベルト31が整列苗90の端の苗91を保持して分離部50に正しく導く。
【0037】
分離部50の左右には整列苗90の縦方向の位置を規制する一対の苗規制ベルト40を設け、左右一対の苗規制ベルト40の内方の端部間は、整列苗90を分離して繰り出す一対の分離回転体51が納まる間隔を開けておく。
【0038】
上部枠2の外方で縦移動機構20の移動方向にレール11と平行に細長い角パイプ状の規制体枠42を設け、規制体枠42から垂直上方に4本の規制体軸43を設け、規制体軸43の上部に一対の規制ベルト枠44を設け、規制ベルト枠44の両端には自由に回転するプーリ45を各々はめ込み、プーリ45に一対の苗規制ベルト40を掛け渡す。
【0039】
苗規制ベルト40は、横移動機構10の移動方向に長くその左右に設け、その整列苗90側の面はベルト23の搬送終端とほぼ同じ位置とし、苗規制ベルト40の下端はベルト23の上面よりやや高くし上端は整列苗90の上面よりやや低くする。苗規制ベルト40の整列苗90側の裏面には規制ベルト枠44が接して苗規制ベルト40が整列苗90に押されてもたわまないように案内し、苗規制ベルト40の裏面は規制ベルト枠44の案内面を滑るため滑りやすく加工する。
【0040】
苗規制ベルト40の表面の上端側と下端側に細幅の帯状弾性体41を設ける。帯状弾性体41は整列苗90の苗列の一列分以上の厚さであり、薄肉の中空形状である。この薄肉の中空形状の代表例は図11に示すように方形のものであるが、図13に示すように円形のもの、またはこれらを組み合わせたものでも良い。また、さらに柔らかくするためには、図15に示すように薄肉の中空形状の一部を切り取ったものや、図11や図13に示す中空形状に部分的に孔を開けたものでも良い。このような形状の帯状弾性体41とすることにより、ある程度堅い弾性体でもベルト23により移動する整列苗90によりほぼつぶれる程度の弾性となる。
【0041】
なお、帯状弾性体41は苗規制ベルト40の表面の全周に設ける必要はなく、少なくも整列苗90に対応する面にのみ設ければ良いが、帯状弾性体41の往復移動端でその端部が両端のプーリ45による屈曲部を越えて貼り付けられている方が剥がれに対する抵抗力がある。
【0042】
苗規制ベルト40の整列苗90側の面は横移動機構10の移動に対応して同じ方向に移動する。
【0043】
一対の横移動機構枠12の分離部50側には苗案内体枠35と一体に一対のベルト駆動枠47を設け、ベルト駆動枠47から苗規制ベルト40方向に上下2本のベルト駆動ピン48を設ける。ベルト駆動ピン48は苗規制ベルト40の整列苗90側の面に設けた孔に通っており、横移動機構10が往復移動するとベルト駆動ピン48を介して苗規制ベルト40の整列苗90側の面が同じ方向に往復移動する。
【0044】
整列苗90は立垂状態でベルト23上に載せられ、横移動機構枠12の横移動機構10による往復移動により共に移動し、分離部50の一対の分離回転体51に順次接することにより連続的に個々の苗91に分離される。苗91が分離されたことにより露出した後続の苗列は、押しつぶれていた帯状弾性体41が復元して接することにより保持される。分離された苗91は一対の分離回転体51に挾まれて繰り出され、転向装置60に受け渡される。整列苗90の一列を全て分離し終えるとベルト23は苗列の一列分よりやや多く間歇回行するが、整列苗90は苗規制ベルト40の帯状弾性体41を押しつぶして苗列の一列分のみ移動し、横移動機構枠12の反対方向への移動により新たな苗列の分離が開始され、連続的に分離される苗91が分離部50に供給される。
【0045】
分離部50には、整列苗90の分離される苗91の移動側面に接する一対の分離回転体51と、分離回転体51の下部に一対の薄い円盤52とを設ける。
【0046】
苗選別整列装置枠71から上方に突出した一対の分離軸53と、一対の分離軸53の上部に上中下の3段にはめ込まれた分離回転体としての一対の分離ローラ51と、分離ローラ51の下部に縦移動機構20のベルト23表面に一端で接する一対の薄い円盤52を設ける。
【0047】
分離ローラ51は略円筒形を成し、その直径は苗91の紙筒直径の約3倍とし、天然ゴム,合成ゴム,軟質合成樹脂などのゴムのような弾性体から成り、その外周面と中心の間の端面から多数の細長い孔を設け、容易に変形するようになっている。分離ローラ51は回転する分離軸53にその中心孔をはめ込まれ、一対の分離ローラ51は互いの対向面が転向装置60の方向に向かうように回転していて、その外周面で整列苗90の側面に接し、その上下の分離ローラ51の間から転向装置60の一対のベルト61の始端が始まる。
【0048】
一対の薄い円盤52は厚さが1mm以下の鋼製の撓みやすい丸い円盤であり、分離軸53にその中心孔をはめ込まれ、分離軸53と一体に回転するよう固定される。薄い円盤52は分離ローラ51の下部であり、その上面が一対の分離ローラ51に挾まれた苗91の底面とほぼ一致する高さとし、ベルト23側はその下面の一端でベルト23表面に接する。薄い円盤52の直径は分離ローラ51の直径より大とし、その直径は苗91の紙筒直径の約4倍とする。
【0049】
整列苗90は一対の分離ローラ51に順次接することにより連続的に個々の苗91に分離され、分離された苗91は一対の分離ローラ51に挾まれて繰り出され、転向装置60に受け渡される。また分離される苗91は、縦移動機構20上ではそのベルト23に底部を支持され、分離ローラ51により苗91が分離されるとその底部は薄い円盤52に移り、薄い円盤52により支持されつつ一対の分離ローラ51に挾まれて繰り出されるから、底部からの育苗土の脱落の心配が無い。
【0050】
転向装置60は、分離部50と苗選別整列装置70の間に設け、分離部50により立垂状態で分離された苗91を横向き状態に連続的に転向させる。転向装置60には一対のベルト61を設け、一対のベルト61はその対接面間にて苗91の紙筒の中間部を挾んで搬送する。
【0051】
転向装置60の搬送終端から苗選別整列装置70を設ける。苗選別整列装置枠71から横搬送ベルト72,73を水平方向に連ねて設け、横搬送ベルト72,73は横向き状態の苗91を搬送する。苗選別整列装置70では、苗91の葉の生えていない欠株苗を除去し、間隔の不揃になった苗91列を一旦密着整列させた後、所定間隔後に苗91を植付装置80に受け渡す。
【0052】
植付装置80は一対の弾性円盤によるもので、苗選別整列装置70から横向き状態で受け渡された苗91を立垂状態として圃面Eに植え付ける。
【0053】
つぎに、この苗供給装置の作動を説明する。
【0054】
横移動機構10の横移動機構枠12は所定のその移動端とし、整列苗90を横移動機構10上の細幅ベルト26上に載せ、ベルト23および細幅ベルト26を一体に回行移動させてベルト23上に移載し、その整列苗90の前端の分離される苗列が苗規制ベルト40に接して押しつぶしかつ分離ローラ51に接して押しつぶす位置まで送り込む。一対の苗案内ベルト31はベルト23による整列苗90の移動により自由に回転移動し、整列苗90とそれが接している苗案内ベルト31とが一体に移動する。
【0055】
このとき、図6から図8に示すように、一対の苗案内ベルト31の分離部50側の間隔は整列苗90のベルト23による移動側面の幅に対応して変化し、整列苗90の幅が狭くなっても広くなっても苗案内ベルト31が端の苗91を保持して分離部50に正しく導くから、整列苗90は分離ローラ51により分離されるまで確実に保持されて案内され、正常に分離される。
【0056】
機械の進行により軸14などが回転し、横移動機構枠12が横方向に移動すると整列苗90が横方向に移動し、苗規制ベルト40の整列苗90側の面が同じ方向に往復移動し、分離ローラ51やベルト61などが回転する。横移動機構枠12の横方向の移動により、整列苗90の最前列の分離される苗列は順次分離ローラ51に接することにより、転がりながら連結部を剥されて無理なく連続的に個々の苗91に分離される。
【0057】
このとき、図17および図18に示すように、分離ローラ51の下部にベルト23の表面に一端で接する一対の薄い円盤52を設け、薄い円盤52の径は分離ローラ51の径より大として分離された苗91の底部を支持し、分離された苗91の底部はベルト23表面から薄い円盤52により支持されるから、底部からの育苗土の脱落により苗傷みが発生したり機械上に堆積したりすることがない。
【0058】
分離された苗91は一対の分離ローラ51に挾まれて繰り出されて転向装置60に受け渡され、転向装置60の一対のベルト61はその対接面間にて苗91の紙筒の中間部を挾んで搬送して苗選別整列装置70に受け渡される。苗選別整列装置70の横搬送ベルト72,73は横向き状態の苗91を搬送し、欠株苗を除去し整列させた後に植付装置80に受け渡す。植付装置80は苗91を立垂状態として圃面Eに植え付ける。
【0059】
整列苗90の最前列の分離される苗列の分離が全て終り、横移動機構枠12が移動端に達すると、整列苗90はベルト23と苗規制ベルト40の帯状弾性体41により苗列の一列分だけ縦方向に移動し、苗案内回転体30は整列苗90の移動により自由に回転移動し、横移動機構枠12は今までと反対方向に整列苗90を移動させて次の列の分離が開始される。
【0060】
このとき、図12または図14に示すように、苗規制ベルト40の整列苗90に対応する表面に整列苗90の苗列の一列分以上の厚さの帯状弾性体41を設け、帯状弾性体41は薄肉の中空形状とし、発泡部分の少ない堅いスポンジや発泡部分の全く無いゴム状物質でも、移動する整列苗90によりほぼつぶれる程度の弾性となるから、機械的強度と必要な柔らかさを両立させることができる。
【0061】
さらに、横移動機構枠12の反対側の移動端でも同様にベルト23が整列苗90を間欠移動させ、連続的に個々の苗91に分離される。
【0062】
ベルト23および細幅ベルト26上の整列苗90は分離され植え付けられることにより徐々に減少する。このため、細幅ベルト26上の整列苗90が無くなったとき、細幅ベルト26上に補給し先行する整列苗90に追い付かせて密着させる。補給が遅れてベルト23上の整列苗90が少なくなったときには、細幅ベルト26上に整列苗90を補給しベルト23上の整列苗90に追い付かせて密着させる。
【0063】
このとき、苗案内ベルト31の分離部50側の反対側の間隔は整列苗90のベルト23による移動側面の最大の幅以上とし、後続する整列苗90を先行する整列苗90に密着させるべく進行させても、後続する整列苗90の端の苗91は苗案内ベルト31に接しないし、幅の広い後続する整列苗90により苗案内ベルト31が回転移動することもないから、整列苗90の端の苗91が苗案内ベルト31との摩擦により不要に分離されることがない。
【0064】
以上の実施例では、整列苗90として紙筒育苗容器によるものを示したが、育苗培地そのものが育苗容器を形成している無機物繊維や高分子化合物によるものでも、個々の苗91に分離可能に整然と連結されているものであれば良い。
【0065】
また、苗案内ベルト31の分離部50側の間隔が整列苗90の縦移動機構20による移動側面の幅に対応して苗案内ベルト31の伸縮により変化するものを示したが、苗案内ベルト31の伸縮によらず適宜なバネによものや端面の電機的検出機構とそれによる電子制御による移動機構により変化させても良い。
【0066】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、一対の苗案内回転体の分離部側の間隔は整列苗の縦移動機構による移動側面の幅に対応して変化し、整列苗の幅が狭くなっても広くなっても苗案内回転体が端の苗を保持して分離部に正しく導くから、整列苗は分離ローラにより分離されるまで確実に保持されて案内され、正常に分離される。
【0067】
また、苗案内回転体の分離部側の反対側の間隔は整列苗の縦移動機構による移動側面の最大の幅以上とし、後続する整列苗を先行する整列苗に密着させるべく進行させても、後続する整列苗の端の苗は苗案内回転体に接しないし、幅の広い後続する整列苗により苗案内回転体が回転移動することもないから、整列苗の端の苗が苗案内回転体との摩擦により不要に分離されることがない。
【0068】
請求項2の発明によれば、苗規制ベルトの整列苗に対応する表面に整列苗の苗列の一列分以上の厚さの帯状弾性体を設け、帯状弾性体は薄肉の中空形状とし、発泡部分の少ない堅いスポンジや発泡部分の全く無いゴム状物質でも、移動する整列苗によりほぼつぶれる程度の弾性となるから、機械的強度と必要な柔らかさを両立させることができる。
【0069】
請求項3の発明によれば、分離回転体の下部に縦移動機構の表面に一端で接する一対の薄い円盤を設け、薄い円盤の径は分離回転体の径より大として分離された苗の底部を支持し、分離された苗の底部は縦移動機構表面から薄い円盤により支持されるから、底部からの育苗土の脱落により苗傷みが発生したり機械上に堆積したりすることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】苗供給装置を装備した移植機の一実施例を示す側面図である。
【図2】その正面図である。
【図3】その部分拡大背面図である。
【図4】図3のA矢視図である。
【図5】図4の作動状態を示す図である。
【図6】図4の部分拡大図である。
【図7】図7の作動状態を示す図である。
【図8】図6の作動状態を示す図である。
【図9】図6の一部を切り欠いた部分拡大図である。
【図10】図9の作動状態を示す図である。
【図11】図3の一部を切り欠いた部分拡大図である。
【図12】図11の作動状態を示す図である。
【図13】図11の別な実施例を示す図である。
【図14】図13の作動状態を示す図である。
【図15】図11の別な実施例を示す図である。
【図16】図3の一部を切り欠いた部分拡大図である。
【図17】図17の一部を切り欠いた部分拡大図である。
【図18】図6の部分拡大図である。
【符合の説明】
10 横移動機構
20 縦移動機構
30 苗案内回転体
31 苗案内ベルト
40 苗規制ベルト
41 帯状弾性体
50 分離部
51 分離回転体としての分離ローラ
52 薄い円盤
80 植付装置
90 整列苗
91 苗
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審理終結日 2003-09-22 
結審通知日 2003-09-26 
審決日 2003-10-07 
出願番号 特願平7-42469
審決分類 P 1 122・ 121- ZA (A01C)
最終処分 成立  
前審関与審査官 吉田 英一  
特許庁審判長 村山 隆
特許庁審判官 渡部 葉子
藤井 俊二
登録日 1998-09-04 
登録番号 特許第2823521号(P2823521)
発明の名称 移植機の苗供給装置  
代理人 勝田 裕子  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 中村 誠  
代理人 原田 信市  
代理人 中村 誠  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 勝田 裕子  
代理人 幸長 保次郎  
代理人 原田 敬志  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ