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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01N
管理番号 1103713
審判番号 不服2002-83  
総通号数 59 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-03-05 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-01-04 
確定日 2004-09-16 
事件の表示 平成 9年特許願第212893号「排気ガス浄化装置の再生システム」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 3月 5日出願公開、特開平11- 62558〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本願発明
本願は、平成9年8月7日の出願であって、その請求項1、2に係る発明は平成13年11月8日付けの手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、特許請求の範囲の請求項1に記載される発明は、次のとおりである。

「内燃機関の排気通路に設置し、多孔質炭化珪素焼結体よりなる排気ガス浄化用ハニカムフィルタおよび該フィルタに形成した排気ガス流通孔の内壁表面に担持された酸化触媒を備えた排気ガス浄化装置と、前記フィルタを再生するために該フィルタのガス流入側の前方に配置したヒータと、該ヒータの前方で前記浄化装置に設けた助燃空気の流入口と、前記ヒータに供給する電力と助燃空気の供給を制御するコントロールユニットとからなることを特徴とする、排気ガス浄化装置の再生システム。」

2.引用例の記載事項
これに対して、原査定の拒絶の理由で引用した特開平9-88551号(以下、「引用例1」という。)には、次のような技術的事項が記載されている。

a.「【0001】【発明の属する技術分野】本発明は、内燃機関の排気浄化装置に係り、詳しくは排気浄化装置に用いられ、エンジンの排気中に含まれる微粒子成分(パティキュレート)を捕集するディーゼルパティキュレートフィルタの再生に関するものである。」

b.「【0009】従って、請求項1に記載の発明によれば、フィルタは内燃機関の排気系に設置され、内燃機関から排出される排気ガス中に含まれるパティキュレートが捕集される。発熱手段はフィルタの上流側に配設され、そのフィルタの上流側から空気供給手段によって2次空気が供給される。予熱制御手段によって、発熱手段が発熱されてフィルタが加熱されるとともに、空気供給手段が制御されて加熱されたフィルタに対して2次空気が供給されてフィルタが予熱される。そのフィルタが予熱された後、燃焼制御手段によって発熱手段が発熱されてフィルタが加熱されるとともに、空気供給手段が制御されて加熱されたフィルタに対して2次空気が供給されてフィルタに捕集されたパティキュレートが燃焼される。」

c.「【0013】ディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、DPFという)11は、排気管12を介してディーゼルエンジン13に接続されている。DPF11はハニカム形状の筒体であって、本形態ではコーディエライトにて形成されている。DPF11は、エンジン13からの排気ガスを透過させ、その透過時に排気ガス中に含まれるパティキュレートを捕集する。DPF11を透過した排気ガスは、大気中に放出される。」

d.「【0014】DPF11は、排気管12に連結された収容筒14内に配設されている。収容筒14において、DPF11はマウント材15によって収容筒14内の所定位置に支持されている。また、収容筒14において、DPF11の前側(上流側)には発熱手段としてのヒータ16が設けられ、DPF11の後側(下流側)には後処理装置17が設けられている。ヒータ16は、再生処理時にDPF11を加熱してDPF11が捕集したパティキュレートを燃やすためのものである。(後略)」

e.「【0015】また、収容筒14には送気管19が連結されている。送気管19には、エアクリーナ20が設けられている。エアクリーナ20は、再生処理時にDPF11へ供給する空気を清浄化するために設けられている。また、送気管19には、空気供給手段としてのエア供給ポンプ21が設けられ、エアクリーナ20から空気を取り入れ、その空気をDPF11に供給するようになっている。
(後略)」

f.「【0023】即ち、コントローラ31は、ヒータ16の温度が第1の設定温度に達すると、タイマ31bを制御して経過時間を計測し、その経過時間に応じた制御情報をROM31aから読み出す。そして、コントローラ31は、その読み出した制御情報によって、温度センサ18からの検出信号に基づいてヒータ16の温度を制御するとともに、流量センサ24からの検出信号に基づいてエア供給ポンプを駆動制御して2次空気供給量を制御する。」

g.「【0071】(前略)(11)上記形態では、DPF11は、コーディエライトで形成したが、SiC等その他のセラミックで形成したフィルタに応用してもよい。」

そして、記載fにおいて、ヒータ16の温度を制御することが、実際には前記ヒータに供給する電力を制御することになることは、当業者にとって技術常識である。
また、記載gにおいて、SiCは炭化珪素を意味するものであり、セラミックは焼結体といえるものであるから、上記記載は炭化珪素焼結体を含むことは明らかである。
そうすると、以上の記載、及び図1〜5の記載等からみて、引用例1には次の発明が記載されているものと認められる。
内燃機関の排気管12に設置し、炭化珪素焼結体よりなるハニカム形状のディーゼルパティキュレートフィルタ(以下、DPFという)11を備えた排気浄化装置と、前記DPFを再生するためにDPFのガス流入側の前方に配置したヒータ16と、該ヒータの前方で前記排気浄化装置に設けた二次空気の流入口と、前記ヒータ16に供給する電力と二次空気の供給を制御するコントローラ31とからなる排気浄化装置の再生システム。

3.対比
そこで、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)と上記引用例1に記載された発明とを対比すると、引用例1に記載された発明の「排気管12」、「ハニカム形状のDPF11」、「排気浄化装置」、「二次空気」、「コントローラ31」は、その技術的意義からみて、それぞれ本願発明1の「排気通路」、「排気ガス浄化用ハニカムフィルタ」、「排気ガス浄化装置」、「助燃空気」、「コントロールユニット」に相当する。
したがって、両者の一致点及び相違点は下記のとおりである。

(一致点)
「内燃機関の排気通路に設置し、炭化珪素焼結体よりなる排気ガス浄化用ハニカムフィルタを備えた排気ガス浄化装置と、前記フィルタを再生するために該フィルタのガス流入側の前方に配置したヒータと、該ヒータの前方で前記浄化装置に設けた助燃空気の流入口と、前記ヒータに供給する電力と助燃空気の供給を制御するコントロールユニットとからなる排気ガス浄化装置の再生システム。」

(相違点)
(イ)排気ガス浄化用ハニカムフィルタについて、本願発明1は多孔質炭化珪素焼結体よりなるものであるのに対し、引用例1に記載された発明は炭化珪素焼結体よりなるものであるが、多孔質のものかどうか明らかではない点。

(ロ)本願発明1は、排気ガス浄化用ハニカムフィルタに形成した排気ガス流通孔の内壁表面に酸化触媒を備えているのに対し、引用例1に記載された発明は上記の構成を有していない点。

4.当審の判断
以下、前記相違点(イ)、(ロ)について検討する。
・相違点(イ)について
排ガス中に含まれるパーティキュレートを除去するためには、多数のガス通過孔が必要であり、そのためにフィルタとして用いられるセラミックが多孔質であることは技術常識である。(必要であれば、特開平6-33734号公報参照。)
したがって、引用例1において、フィルタが多孔質であることは、当業者が当然に予測し得るものである。

・相違点(ロ)について
排ガス浄化用のフィルタに酸化触媒を備えた点は、本願出願前、当業者にとって周知の技術である。(例えば、特開平3-23307号公報の第2頁右下欄第3〜14行参照、特開平9-13954号公報の第3頁段落【0010】〜第4頁【0013】参照。)
したがって、引用例1に記載された発明の排気ガス浄化ハニカムフィルタに上記周知技術を適用し、もって、本願発明1の相違点(ロ)に係る構成のようにすることは、当業者が容易になし得るものである。

また、本願発明1の作用効果について検討すると、本願明細書には、
「本発明の再生システムにおいては、ヒータによって熱せられる最も高温の位置が、前端部になり、この状態において、助燃空気を供給すると燃焼が開始する。このようにフィルタ内の最も高温の位置と燃焼開始点が一致するので、昇温時間が著しく短くなる。また、ヒータからの熱の排気ガス浄化用ハニカムフィルタ内での伝導は、該フィルタの長手方向に沿って行われるので、効率よく燃焼伝播が行われ、前端部が助燃空気により冷却されることもなく、長手方向に均一になり、応力分布が発生し難い燃焼伝播となる。これにより、焼却可能なパティキュレートの量は著しく増加し、かつ、安全に短時間に再生できるシステムが構成し得る。」(段落【0008】)、
「この再生システムの優れた燃焼メカニズムを達成するための構成として、本発明では、排気ガス浄化用ハニカムフィルタの材料として多孔質炭化珪素焼結体を採用している。本材料は、熱伝導率が非常に高く、ヒータからの直接の熱量や助燃空気がヒータ表面を通過することにより熱交換した熱量をフィルタ後方や半径方向に効率よく伝播するのに役立ち、局所的な過剰燃焼が生じても安全に熱拡散をすることができ、このような、パティキュレート量の多い少ないを問わずに完全に、短時間に、安全に再生を達成することが可能になる。このため、パティキュレートを燃焼させる際に起きる温度分布のバラツキが解消され、パティキュレートの焼却に要する時間をさらに短縮することができるとともに、焼却可能なパティキュレートの量も増加させることができる。」(段落【0009】)と記載されている。
一方、引用例1に記載された発明においても、本願発明1と同様の構成を有しているため、本願発明1と同様の効果を奏することは、当業者であれば十分に予測可能である。すなわち、引用例1に記載された発明には「フィルタのガス流入側の前方に配置したヒータ」、及び「炭化珪素焼結体よりなる排気ガス浄化用ハニカムフィルタ」といった本願発明1と同様な構成を有している。「フィルタのガス流入側の前方に配置したヒータ」によりフィルタの前端部が助燃空気のより冷却されることもなく、長手方向に均一になり、応力分布が発生し難い燃焼伝播となること、「炭化珪素焼結体よりなる排気ガス浄化用ハニカムフィルタ」といった熱伝導率の高い材料を用いたことにより、熱量をフィルタ後方や半径方向に効率よく伝播するのに役立ち、パティキュレート量を短時間に、安全に再生を達成することが可能になるとともに、パティキュレートを燃焼させる際に起きる温度分布のバラツキが解消されることは当業者であれば十分に予測可能であるといえる。
したがって、本願発明1の奏する効果は、引用例1に記載された発明及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

5.むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-07-13 
結審通知日 2004-07-20 
審決日 2004-08-02 
出願番号 特願平9-212893
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 亀田 貴志  
特許庁審判長 西野 健二
特許庁審判官 清田 栄章
平城 俊雅
発明の名称 排気ガス浄化装置の再生システム  
代理人 杉村 興作  

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