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審決分類 |
審判 査定不服 特29条の2 特許、登録しない。 G03B |
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管理番号 | 1104042 |
審判番号 | 不服2002-15425 |
総通号数 | 59 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1994-12-02 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-08-12 |
確定日 | 2004-09-27 |
事件の表示 | 平成 5年特許願第144283号「照明装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 6年12月 2日出願公開、特開平 6-332044〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成5年5月24日に出願した特願平5-144283号であって、平成14年7月10日付けで拒絶査定がなされ、これに対し平成14年8月12日に拒絶査定に対する審判請求がなされた。 2.本願発明 本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。 「閃光を放射するための発光手段と、該発光手段に対して被写体とは反対側に位置決めされ前記発光手段が放射した光束を反射するための反射手段と、前記発光手段に対して被写体側に位置決めされ前記発光手段が直接放射した光束および前記反射手段が反射した光束を被写体に向かって照射するための屈折手段とを備えた照明装置であって、 前記屈折手段はそのレンズ光軸に対して回転対称形状を有するフレネルレンズからなり、該フレネルレンズの被写体側の面は前記レンズ光軸に対して垂直な平面であり、前記フレネルレンズの他方の面はフレネル面であり、 前記発光手段の光軸と前記反射手段の光軸は共軸であって照明装置の基準光軸を構成し、 前記レンズ光軸は前記基準光軸に対して一定角度だけチルトし、前記フレネルレンズのレンズ中心は前記基準光軸と前記フレネルレンズとの交点であるレンズ交点から一定距離だけシフトしており、 前記レンズ光軸のチルトに基づく照射方向の前記基準光軸に対する偏りが、前記レンズ中心のシフトに基づく照射方向の前記基準光軸に対する偏りによって実質的に補正されており、 被写体に向かう前記レンズ光軸の方向を示す単位ベクトルをLとし、被写体に向かう前記基準光軸の方向を示す単位ベクトルをKとし、前記レンズ交点から前記レンズ中心を結ぶベクトルをMとし、前記屈折手段の焦点距離をfとすると、前記ベクトルL、KおよびMは同一平面内に存在し、前記ベクトルLとMは垂直であり、 前記パラメータによって表現される基準値であって、前記シフト量に対応するベクトルMの大きさ|M|と前記チルト量に対応するベクトルLとKとの内積(L・K)との積を前記焦点距離fで除して無次元化した値|M|・(L・K)/fが、前記レンズ光軸のチルトに基づく照射方向の偏りに対して前記レンズ中心のシフトに基づく照射方向の偏りが大きくなってしまう限界を定義する上限値と、前記レンズ中心のシフトに基づく照射方向の偏りに対して前記レンズ光軸のチルトに基づく照射方向の偏りが大きくなってしまう限界を定義する下限値とで定義される範囲内にあり、 前記上限値は0.2であり且つ前記下限値は0.03であることを特徴とする照明装置。」 3.引用例 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願日前の他の出願であって、その出願後に出願公開された特願平4-46273号(特開平5-216098号公報)(以下、先願明細書という。)には、以下の技術事項が記載されている。 ア.【0006】【発明が解決しようとする課題】 従来の照明装置ではフレネルレンズが反射部材の光軸に対して垂直となるように装着している。この為、照明装置から放射される光束の照明方向が反射部材の光軸に対して対称となっている。 【0007】 しかしながら照明装置の中にはカメラ本体に装着する場合や、カメラ本体に内蔵している場合に組立上やデザイン上の理由によりフレネルレンズを反射部材に対して傾けて配置しなければならない場合がある。 【0008】 このような場合には照明装置からの光束のうちフレネルレンズを傾けた方向に多くの光束が射出してしまう。この為、被写体の中央に照射される光束が少なくなり、被写体の明るさが不均一になってきてムラのある画像が得られるという問題点があった。 イ.【0017】【実施例】 図1は本発明の実施例1の要部斜視図、図2は図1の要部断面図である。 【0018】 同図において1は内面を反射面とした一次元方向に曲率を有したシリンドリカル状の反射部材である。反射部材1は図2において紙面と垂直方向に長くなっている。1aは反射部材1の光軸である。 【0019】 2は閃光を放射する円筒状の閃光放電管(Xe管)であり、その棒状の発光面2aが反射部材1の曲率中心に位置するように押え部材5により保持して配置している。 【0020】 3はフレネルレンズであり、円形のフレネルレンズより成っている。フレネルレンズ3は反射部材1の光軸1aに対して照明装置を使用するとき上方(カメラを正常に構えたときの上方、以下同じ)に傾けて、かつその中心が反射部材の中心(光軸1a)に対して下方にずれるようにして配置している。 【0021】 即ち、フレネルレンズの傾けた方向(図2では上方で所定方向という。)と逆方向(下方向)にフレネルレンズ3の中心3aが反射部材1の光軸1aからずれるように設定している。 ウ.【0025】 本発明ではフレネルレンズ3を傾け、かつその中心を反射部材1の中心から距離Lだけずらすことにより、照射範囲が図3に示すように光軸1aに対して略対称となるようにしている。 【0026】 これに対して図4はフレネルレンズ3を常に傾けただけの配光特性の説明図である。同図に示すように配光特性は一方向に強くなり、同図ではθ3<θ2となってきて、この照明装置を用いたときは照明ムラのある画像となってしまう。 エ.【0034】【発明の効果】 以上のように本発明によれば、組立上やデザイン上の理由からフレネルレンズを反射部材に対して傾けて装着したとき、照射方向のずれを補正し、常に被写体の所定方向に光束を効率的に照射することができ、又赤目緩和用の光源(補助光源)からの光束を被写体側の所定方向に照射することができ、ストロボ写真としてムラのない画像が得られる写真用カメラやビデオカメラ等に好適な照明装置を達成することができる。 したがって、先願明細書には、上記各記載事項及び各図面から、以下の発明(以下、先願発明、という。)が記載されている。 「閃光を放射する閃光放電管2と、閃光放電管2に対して被写体とは反対側に位置決めされ前記閃光放電管2が放射した光束を反射するための反射部材1と、前記閃光放電管2に対して被写体側に位置決めされ前記閃光放電管2が直接放射した光束および前記反射部材1が反射した光束を被写体に向かって照射するためのフレネルレンズ3とを備えた照明装置であって、 前記フレネルレンズ3はそのレンズ光軸に対して回転対称形状を有するフレネルレンズからなり、該フレネルレンズ3の被写体側の面は前記レンズ光軸に対して垂直な平面であり、前記フレネルレンズの他方の面はフレネル面であり、 前記閃光放電管2の光軸と前記反射手段の光軸は共軸であって照明装置の基準光軸1aを構成し、 前記レンズ光軸は前記基準光軸に対して一定角度だけ傾け、前記フレネルレンズのレンズ中心は前記基準光軸と前記フレネルレンズとの交点であるレンズ交点から一定距離Lだけずらしており、 前記レンズ光軸の傾けに基づく照射方向の前記基準光軸1aに対する偏りが、前記レンズ中心のずれLに基づく照射方向の前記基準光軸1aに対する偏りによって補正されている照明装置。」 4.対比 本願発明と先願発明とを対比すると、先願発明の「閃光放電管2」、「反射部材1」、「フレネルレンズ3」、「傾け」、「一定距離Lだけずらし」は、それぞれ、本願発明の「発光手段」、「反射手段」、「屈折手段及びフレネルレンズ」、「チルトし」、「一定距離だけシフトし」に相当する。 したがって、両者は、「閃光を放射するための発光手段と、該発光手段に対して被写体とは反対側に位置決めされ前記発光手段が放射した光束を反射するための反射手段と、前記発光手段に対して被写体側に位置決めされ前記発光手段が直接放射した光束および前記反射手段が反射した光束を被写体に向かって照射するための屈折手段とを備えた照明装置であって、 前記屈折手段はそのレンズ光軸に対して回転対称形状を有するフレネルレンズからなり、該フレネルレンズの被写体側の面は前記レンズ光軸に対して垂直な平面であり、前記フレネルレンズの他方の面はフレネル面であり、 前記発光手段の光軸と前記反射手段の光軸は共軸であって照明装置の基準光軸を構成し、 前記レンズ光軸は前記基準光軸に対して一定角度だけチルトし、前記フレネルレンズのレンズ中心は前記基準光軸と前記フレネルレンズとの交点であるレンズ交点から一定距離だけシフトしており、 前記レンズ光軸のチルトに基づく照射方向の前記基準光軸に対する偏りが、前記レンズ中心のシフトに基づく照射方向の前記基準光軸に対する偏りによって実質的に補正されていることを特徴とする照明装置。」である点で一致し、以下の点で一応相違している。 相違点; 本願発明では、「被写体に向かう前記レンズ光軸の方向を示す単位ベクトルをLとし、被写体に向かう前記基準光軸の方向を示す単位ベクトルをKとし、前記レンズ交点から前記レンズ中心を結ぶベクトルをMとし、前記屈折手段の焦点距離をfとすると、前記ベクトルL、KおよびMは同一平面内に存在し、前記ベクトルLとMは垂直であり、 前記パラメータによって表現される基準値であって、前記シフト量に対応するベクトルMの大きさ|M|と前記チルト量に対応するベクトルLとKとの内積(L・K)との積を前記焦点距離fで除して無次元化した値|M|・(L・K)/fが、前記レンズ光軸のチルトに基づく照射方向の偏りに対して前記レンズ中心のシフトに基づく照射方向の偏りが大きくなってしまう限界を定義する上限値と、前記レンズ中心のシフトに基づく照射方向の偏りに対して前記レンズ光軸のチルトに基づく照射方向の偏りが大きくなってしまう限界を定義する下限値とで定義される範囲内にあり、 前記上限値は0.2であり且つ前記下限値は0.03である」点を限定しているのに対し、先願発明では、そのような限定がない点。 5.当審の判断 相違点について検討する。 請求人も認める(審判請求書の手続補正書第4頁)ように先願発明は、フレネルレンズのレンズ光軸が反射部材の光軸すなわち基準光軸に対してチルトしている場合、レンズ中心を基準光軸からシフトさせることにより、チルトに基づく偏りをシフトに基づく偏りで補正し、撮影レンズの照明範囲を偏りなく照明することができることを開示している。 すなわち、先願発明は、上記相違点を除き、本願発明と同一構成で、同一の作用・効果を奏している発明であり、チルト量、シフト量とも本願発明と同程度のものと考えられる。 してみれば、先願発明においても、当然上記相違点の数値範囲を満足していると考えられ、逆に言えば本願発明は先願発明のものを単に式あるいは数値で表現したものに過ぎず、そのように表現したことにより、照明装置というものの発明である両者に技術的に意義のある差異が生じたものとは認められない。 本願発明の実施例においても、所定のチルト角θに対し、照明の偏りを補正するためのシフト量が△であり、上記相違点の式で計算すると0.07(他の実施例では、0.10)となり、上記数値範囲に入っていたとするもので、本願発明の数値範囲において、先願発明に比し、作用・効果上、格別意義のある差異が生ずることを示すものではない。 6.むすび したがって、本願発明は、上記先願明細書に記載された発明と同一であり、特許法第29条の2の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する 。 |
審理終結日 | 2004-08-06 |
結審通知日 | 2004-08-06 |
審決日 | 2004-08-17 |
出願番号 | 特願平5-144283 |
審決分類 |
P
1
8・
16-
Z
(G03B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 越河 勉 |
特許庁審判長 |
末政 清滋 |
特許庁審判官 |
辻 徹二 瀬川 勝久 |
発明の名称 | 照明装置 |
代理人 | 山口 孝雄 |