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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B62J
管理番号 1104091
審判番号 不服2002-580  
総通号数 59 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-03-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-01-11 
確定日 2004-10-01 
事件の表示 平成8年特許願第240842号「車両用ヒータ内蔵グリップ」拒絶査定不服審判事件〔平成10年3月31日出願公開、特開平10-81282〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成8年9月11日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成16年6月28日付けの手続補正書によって全文補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 ゴム製のグリップ本体(35)内に、その略全周にわたって発熱素子(55)が埋設一体化され、その発熱素子(55)は、振幅方向をグリップ本体(35)の周方向に沿わせた矩形波状に形成されている車両用ヒータ内蔵グリップにおいて、
発熱素子(55)は、該発熱素子(55)によりグリップ全体を温めつつ少ない消費電力量で指先とグリップに強く接触する掌の親指側とを効果的に温めるために、車両の進行方向に沿うグリップ本体(35)の前部側の前記矩形波のピッチを後部側よりも短くすることで該前部側の分散密度を後部側よりも高くし、且つグリップ本体(35)の内端側の前記矩形波のピッチを外端側よりも短く且つ該内端側の前記矩形波の振幅を該外端側よりも大きくすることで該内端側の分散密度を外端側よりも高くして、グリップ本体(35)内に分散、配置されることを特徴とする車両用ヒータ内蔵グリップ。」(以下、「本願発明」という。)

2.引用刊行物とその記載事項
当審における平成16年4月22日付けで通知した拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内において頒布された刊行物とその記載事項は以下のとおりである。

刊行物1:特開平8-26165号公報(発行日:平成8年1月30日)
刊行物2:実願昭60-122498号(実開昭62-30986号)の
マイクロフィルム

(1)刊行物1
刊行物1には、「自動二輪車用ヒータ内蔵グリップ」に関し、図1〜14とともに次の事項が記載されている。
A)「【請求項1】 自動二輪車のハンドルパイプ又はスロットルパイプに外嵌される円筒形状のゴム製グリップ本体内にフレキシブルプリント配線板ヒータ回路が埋設一体化された自動二輪車用ヒータ内蔵グリップにおいて、
前記グリップ本体のハンドルパイプ又はスロットルパイプに臨むヒータ回路配設領域が、円筒型又は周方向の一部が切り欠かれた略円筒型の合成樹脂製インナーピースによって構成され、このインナーピースの内周面には互いに連通する複数本の溝が形成され、かつ溝内には、インナーピース外周面に延在するフレキシブルプリント配線板ヒータ回路を被覆する被覆用ゴム層に一体化されたパイプ圧接用ゴム層が充填されるとともに、前記インナーピースが周方向複数個に分割されたことを特徴とする自動二輪車用ヒータ内蔵グリップ。」(第2頁第1欄第2〜15行)

B)「【産業上の利用分野】本発明は、オートバイ等の自動二輪車用のヒータ内蔵グリップに係わり、特に面状ヒータであるフレキシブルプリント配線板ヒータ回路(以下、単にFPCヒータという)を内蔵したグリップに関する。」(第2頁第1欄第23〜27行)

C)「【0003】しかし、図12,13に示すグリップでは、FPCヒータ4がグリップ本体の周方向略半分しか延在しておらず、グリップ本体1の略半分の領域しか緩まらない。そこで図14に示すように、周方向の一部3aが切り欠かれた略円筒状のインナーピース3の外周面にFPCヒータ4を巻装し、その上に被覆ゴム層5を成形したヒータ内蔵グリップや、図示しないが、インナーピース3を円筒状としたヒータ内蔵グリップが提案されており、FPCヒータ4がグリップ本体の略全周に延在しているので、グリップを握る手全体が効率よく暖められるというものである。なお符号7は、インナーピース3の内周面に縦横に延びている溝で、この溝7にパイプ圧接用ゴム層6が充填されている。」(第2頁第1欄第42行〜第2欄第4行)

D)「【実施例】次に、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1は本発明に係わる自動二輪車用ヒータ内蔵グリップの一実施例を示す斜視図、図2は同グリップの要部であるグリップ本体の縦断面図、図3〜5は同グリップ本体の横断面図(図2に示す線 III- III,IV-IV,V-Vに沿う断面図)、図6はインナーピースの拡大斜視図、図7はインナーピースに巻装する前のフレキシブルプリント配線板ヒータ回路とその電気回路を示す図、図8および図9はグリップ本体の成形の様子を説明する説明図、図10は面取りされた平坦面位置におけるFPCヒータの弛みを説明する説明図である。
【0012】これらの図において、符号10は、表面がゴムで被覆された円筒型のグリップ本体で、自動二輪車のハンドルパイプ又はスロットルパイプに外嵌固定されることでグリップを構成する。グリップ本体10は、円筒型の合成樹脂製インナーピース12の外側にフレキシブルプリント配線板ヒータ回路(以下、FPCヒータという)20が巻装され、その上に被覆ゴム層16が成形一体化されて、インナーピース12と被覆ゴム層16との間にFPCヒータ20が延在する構造となっている。」(第3頁第3欄第12〜31行)

E)「【0016】またインナーピース12は円筒形状に形成されているが、インナーピース12の外周面の分割位置に沿った部位(分割片12a,12bの接合部に沿った領域)には、面取りされた平坦面12c(12c1 ,12c2 )が形成されるとともに、左右の対向する平坦面12c1 ,12c2 の一方の平坦面12c2を除いたインナーピース全周領域にFPCヒータ20が延在した構造で、グリップ本体10の全体が緩められるようになっている。」(第3頁第4欄第33〜41行)

F)「【0017】また被覆ゴム層16とインナーピース12間に延在するFPCヒータ20は、銅箔ストリップパターン30をベースフィルムとオーバーフィルムとで積層した断面構造で、展開すると、図7に示すように略正方形状となっている。FPCヒータ20の一側縁部には、図2,3,7に示されるように、グリップ外に導出される電源接続用の導出部21が形成されている。この導出部21には、発熱源として作用する蛇行した導箔パターン32に連絡する銅箔の露出した2個のランドR1 、R2 が形成されており、それぞれのランドR1 、R2 には、雄コネクタ26(図2,3参照)内の2本の端子27が当接し、それぞれの端子27,27には、電源であるバッテリから延びる通電用のコード28の先端に設けた雌コネクター29が接続される。なお雄コネクター26は、インナーピース12の上側分割片12aに係合し、かつインナーピース12を覆っている被覆ゴム層16によってグリップ本体10に成形一体化されており、インナーピース12の外側に被覆ゴム層16が成形される際に、この雄コネクター26もインナーピース12に一体化される。符号38は、FPCヒータ20の補強用銅箔ストリップ34形成位置に一定ピッチで設けられた円孔で、FPCヒータ20上の被覆ゴム層16がこの円孔38内において直接インナーピース12に接着することで、FPCヒータ20の剥離が防止される構造となっている。
【0018】また銅箔ストリップパターン30中の発熱源である蛇行する銅箔ストリップ32は、X方向と直交するグリップ本体の周方向(FPCヒータの巻装方向)に対応するY方向に延在して、グリップ本体の周方向に作用する外力に対する曲げ剛性が高められており、被覆ゴム層16の成形工程において、FPCヒータ20の発熱作用を営む銅箔ストリップ32にしわが生じにくい構造となっている。銅箔ストリップ32の周りには、FPCヒータ20の外側縁部に沿って補強用の導箔ストリップ34が延在し、さらに銅箔パターン32形成領域にもY方向に延在する補強用の銅箔ストリップ34が延在して、FPCヒータ20の曲げ剛性が高められて、FPCヒータ20が変形しにくい構造となっている。なおこの補強用の銅箔ストリップ34は、図7中、斜線で示す。」(第4頁第5欄第5〜43行)

上記A)〜F)の記載と、併せて図1〜14を参照すれば、
刊行物1の自動二輪車用ヒータ内蔵グリップにおいて、グリップ本体10は、円筒型の合成樹脂製インナーピース12の外側にフレキシブルプリント配線板ヒータ回路20が巻装され、その上に被覆ゴム層16が成形一体化されて、インナーピース12と被覆ゴム層16との間にフレキシブルプリント配線板ヒータ回路20が延在する構造となっているので、
ゴム製のグリップ本体10内にフレキシブルプリント配線板ヒータ回路20が埋設一体化されているものと認められるし、
インナーピース12の外周面の分割位置に沿った部位(分割片12a,12bの接合部に沿った領域)には、面取りされた平坦面12c(12c1 ,12c2 )が形成されるとともに、左右の対向する平坦面12c1 ,12c2 の一方の平坦面12c2を除いたインナーピース全周領域にフレキシブルプリント配線板ヒータ回路20が延在した構造であるので、
グリップ本体10内に、その略全周にわたってフレキシブルプリント配線板ヒータ回路20が延在しているものと認められ、
フレキシブルプリント配線板ヒータ回路20は、発熱源である蛇行する銅箔ストリップ32は、X方向と直交するグリップ本体の周方向(FPCヒータの巻装方向)に対応するY方向に延在していることから、
フレキシブルプリント配線板ヒータ回路20は、振幅方向をグリップ本体10の周方向に沿わせた矩形波状に形成されているといえる。
したがって、刊行物1には「ゴム製のグリップ本体10内に、その略全周にわたってフレキシブルプリント配線板ヒータ回路20が埋設一体化され、そのフレキシブルプリント配線板ヒータ回路20は、振幅方向をグリップ本体10の周方向に沿わせた矩形波状に形成されている自動二輪車用ヒータ内蔵グリップ 」が記載されているものと認められる。(以下、「刊行物1の発明」という。)

(2)刊行物2
刊行物2には、「二輪車等のグリップヒータ装置」に関し、第1図〜第4図とともに次の事項が記載されている。
G)「このグリップヒータとしては、例えばグリップラバー内にニクロム線等の導電性発熱体を埋め込み、これをバッテリなどの電源に接続して通電する構成のものなどが知られている。」(第2頁第4〜7行)

H)「そこで、本考案では、ハンドルグリップの内部に導電性発熱体を配置してなるグリップヒータ装置において、前記発熱体の配置に基づくグリップ表面の温度分布を、グリップを握ったときの手の平にあたる部分の温度が低く、それ以外の部分の温度が高くなるように設定した構成としたものである。
「作用」
グリップ部分を握った状態においては、グリップ表面の温度分布に基づき、凍えやすい手の指先部分などが手の平部分よりも十分に暖められ、全体としては均一に暖かく感じるようになるので、発熱体の発熱量が有効に利用されることになる。」(第2頁第17行〜第3頁第9行)

I)「第1図は、本考案の第1実施例を示すもので、同図において符号Gが、二輪車等におけるハンドルパイプ1に装着されて構成されたハンドルグリップである。このハンドルグリップGは、実施例では、ハンドルパイプ1に対して直接装着されプラスチックや合成ゴムなどの絶縁性素材にて形成された絶縁パイプ2と、この絶縁パイプ2の上に一体的に設けられたグリップラバー3とから構成されている。また、このグリップラバー3の内側、すなわちグリップラバー3と絶縁パイプ2の間にはニクロム線などからなる導電性発熱体Aが絶縁パイプ2を中心としてコイル状に巻装されている。そして、この実施例における前記コイル状の発熱体Aは、グリップエンド側からその基端部側(左側)に向かうに従ってコイルの巻き数が密になるように配置された構成となっている。
発熱体Aをこのような配置関係にすると、グリップGの基端部側になる程、発熱体Aによる単位面積あたりの発熱量が大きくなるので、その基端部側はグリップエンドの近くに比べてグリップGの表面温度が高くなる。従って、グリップGを握ったときの状態において、特に、親指や人差し指、中指などが効率良く暖められる。この点は、これらの手指をハンドル操作やスイッチ操作あるいはブレーキ操作など、運転中において頻繁に使用しかつ、凍えやすいところでもある点を考慮した場合、きわめて効果的である。また、このようにグリップG表面の温度分布が基端部側程高くなるので、よく使用する指先部分などが高温となり、手の平部分が低温となり、全体として均一に暖かく感じるようになる。」(第3頁第13行〜第5頁第3行)

J)「第2図は、本考案の第2実施例を示すもので、この実施例では、グリップラバー3と絶縁パイプ2との間に位置させる線状の発熱体Aを、絶縁パイプ2の長手方向に沿って延在させつつこれを順次折り返して絶縁パイプ2の回りに配置し、かつ、グリップGを握った状態のとき、総ての指先部分があたる位置に発熱体Aを密に配置して、集中配置部Mを形成した構成としたものである。
発熱体Aをこのような配置関係とした場合、グリップ表面の温度分布が、一番凍えやすい総ての指先部分で高温、手の平部分で低温となり、全体として均一に暖かく感じるようにすることができる。」(第5頁第4〜16行)

K)「第3図および第4図は、本考案の第3実施例を示すもので、この実施例では、順次折り返して格子状に蛇行する形態の発熱体Aを全体として筒状に成型し、一方、絶縁パイプ2の外周面に、前記発熱体Aの折り返し部を係止させるための突起2aを複数個設け、これらの突起および折り返部を利用して、筒状の発熱体Aを絶縁パイプ2に装着した上から、グリップラバー3を装着して一体に固定する構成としたものである。」(第5頁第17行〜第6頁第5行)

L)「以上説明したように、本考案にあっては、ハンドルグリップの内部に導電性発熱体を配置してなるグリップヒ-タ装置において、前記発熱体の配置に基づくグリップ表面の温度分布を、グリップを握ったときの手の平にあたる部分の温度が低く、それ以外の部分の温度が高くなるように設定した構成としたので、同じ電力消費量であっても、凍えやすい指先部分などを十分に暖め、手の平部分などはそれよりも低温となるようにして、全体としては均一に暖かく感じられるようにすることができ、これによってグリップヒータの持つ機能を最適なものに近付けることができるという優れた効果を奏する。」(第6頁第14行〜第7頁第6行)

上記G)〜L)の記載と、併せて第1図〜第4図を参照すれば、
刊行物2の二輪車等のグリップヒータ装置は、
第1図に示される第1実施例において、
グリップラバー3の内側、すなわちグリップラバー3と絶縁パイプ2の間にはニクロム線などからなる導電性発熱体Aが絶縁パイプ2を中心としてコイル状に巻装されていることから、
グリップラバー3の内側に、その全周にわたって発熱体Aが配置されているものと認められるし、
発熱体Aは、同じ消費電力であっても、親指や人差し指、中指などが効率良く暖められ、全体としては均一に暖かく感じるように、
グリップエンド側からその基端部側に向かうに従ってコイルの巻き数が密になるように配置された構成となっていることから、
発熱体Aは、該発熱体Aによりグリップ全体を温めつつ少ない消費電力量でグリップに強く接触する掌の親指側を効果的に温めるために、ハンドルグリップの内端側の分散密度を外端側よりも高くして配置されるものと認められ、
第2図に示される第2実施例において、
グリップラバー3と絶縁パイプ2との間に位置させる線状の発熱体Aを、絶縁パイプ2の長手方向に沿って延在させつつこれを順次折り返して絶縁パイプ2の回りに配置し、かつ、グリップGを握った状態のとき、総ての指先部分があたる位置に発熱体Aを密に配置して、集中配置部Mを形成した構成としており、
凍えやすい手の指先部分が、車両の進行方向に沿うグリップの前部側にあることは自明の事項であることから(必要であれば実願昭62-56587号(実開昭63-162694号)のマイクロフィルムの第6図を参照)、
発熱体Aは、該発熱体Aによりグリップ全体を温めつつ少ない消費電力量で指先を効果的に温めるために、車両の進行方向に沿うハンドルグリップの前部側の分散密度を後部側よりも高くして配置されるものと認められる。
また、第2図には発熱体Aが、ハンドルグリップの周方向に沿って、総ての指先部分があたる位置に近付くにつれて密に配置されることが図示されている。

したがって、刊行物2には「グリップラバー3の内側に、その全周にわたって発熱体Aが配置された二輪車等のグリップヒータ装置において、
発熱体Aは、該発熱体Aによりグリップ全体を温めつつ少ない消費電力量でグリップに強く接触する掌の親指側を効果的に温めるために、ハンドルグリップの内端側の分散密度を外端側よりも高くして、グリップラバー3の内側に、配置されることを特徴とする二輪車等のグリップヒータ装置。」の発明(以下、「刊行物2の第1の発明」という。)と、
「グリップラバー3の内側に、その周にわたって発熱体Aが配置された二輪車等のグリップヒータ装置において、
発熱体Aは、該発熱体Aによりグリップ全体を温めつつ少ない消費電力量で指先を効果的に温めるために、車両の進行方向に沿うハンドルグリップの前部側の分散密度を後部側よりも高くして、グリップラバー3の内側に、配置されることを特徴とする二輪車等のグリップヒータ装置。」の発明(以下、「刊行物2の第2の発明」という。)が記載されているものと認められる。

3.対比・判断
本願発明と、刊行物1の発明とを対比すると、刊行物1の発明の「グリップ本体10」は本願発明の「グリップ本体(35)」に、同様に「フレキシブルプリント配線板ヒータ回路20」は「発熱素子(55)」にそれぞれ相当する。
また、自動二輪車は車両の一種である。
よって本願発明と刊行物1の発明とは、「ゴム製のグリップ本体内に、その略全周にわたって発熱素子が埋設一体化され、その発熱素子は、振幅方向をグリップ本体の周方向に沿わせた矩形波状に形成されている車両用ヒータ内蔵グリップ」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点:本願発明では、発熱素子(55)は、該発熱素子(55)によりグリップ全体を温めつつ少ない消費電力量で指先とグリップに強く接触する掌の親指側とを効果的に温めるために、車両の進行方向に沿うグリップ本体(35)の前部側の前記矩形波のピッチを後部側よりも短くすることで該前部側の分散密度を後部側よりも高くし、且つグリップ本体(35)の内端側の前記矩形波のピッチを外端側よりも短く且つ該内端側の前記矩形波の振幅を該外端側よりも大きくすることで該内端側の分散密度を外端側よりも高くして、グリップ本体(35)内に分散、配置されるのに対し、
刊行物1の発明では、フレキシブルプリント配線板ヒータ回路20によりグリップ全体を温めつつ少ない消費電力量で指先とグリップに強く接触する掌の親指側とを効果的に温めるために、フレキシブルプリント配線板ヒータ回路20の分散密度をグリップ本体の場所によって異ならせることは記載されていない点。

次に、上記相違点について検討する。
刊行物2の第1の発明には、「発熱体Aは、該発熱体Aによりグリップ全体を温めつつ少ない消費電力量でグリップに強く接触する掌の親指側を効果的に温めるために、ハンドルグリップの内端側の分散密度を外端側よりも高くして配置されること」が記載されており、
刊行物2の第2の発明には、「発熱体Aは、該発熱体Aによりグリップ全体を温めつつ少ない消費電力量で指先を効果的に温めるために、車両の進行方向に沿うハンドルグリップの前部側の分散密度を後部側よりも高くして配置されること」が記載されている。
そして、発熱素子が矩形波状に形成されているヒータにおいて、発熱素子の分散密度を異ならせる構成として、
発熱素子の矩形波のピッチを異ならせることは、本願出願前に周知(例えば実願昭50-132309号(実開昭52-45252号)のマイクロフィルム、特開昭61-124085号公報、実願昭63-48729号(実開平1-153325号)のマイクロフィルム参照)であるし、
発熱素子の矩形波の振幅を異ならせることも、本願出願前に周知(例えば実願昭58-179130号(実開昭60-87494号)のマイクロフィルム〔特に第9頁第4〜13行、第6,7図参照〕、特開昭61-93582号公報〔特に第2頁右上欄第17〜19行、第7図参照〕、特開平5-343167号公報〔特に【0014】段落、図1参照〕参照)である。

そうすると、上記相違点における本願発明の発熱素子の分散密度の分散、配置については、刊行物2の第1の発明及び刊行物2の第2の発明に基づいて、この発明の属する技術分野で通常の知識を有する者であれば容易に想到することができた事項であって、
発熱素子が矩形波状に形成されている刊行物1の発明において、発熱素子の分散密度を異ならせる構成として、上記各周知技術を採用することに格別の困難性は認められない。
また、本願発明が奏する作用効果も、刊行物1、2に記載された発明及び上記各周知技術に示唆された事項から予測される程度以上のものでもない。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1、2に記載された発明及び上記各周知技術に基づいて、この発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-08-04 
結審通知日 2004-08-10 
審決日 2004-08-23 
出願番号 特願平8-240842
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B62J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小山 卓志  
特許庁審判長 八日市谷 正朗
特許庁審判官 増岡 亘
鈴木 久雄
発明の名称 車両用ヒータ内蔵グリップ  
代理人 落合 健  
代理人 仁木 一明  

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