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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H05K
管理番号 1104242
審判番号 不服2004-730  
総通号数 59 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-07-15 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-01-08 
確定日 2004-10-07 
事件の表示 平成7年特許願第354511号「電子部品搭載用基板」拒絶査定不服審判事件〔平成9年7月15日出願公開、特開平9-186414〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯、本願発明
本願は、平成7年12月27日の出願であって、その請求項1〜3に係る発明は、平成16年2月5日付の手続補正書及び平成16年6月18日付けの手続補正書で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1〜3に記載されたされた事項により特定される次のとおりのものと認める(以下、「本願発明1」〜「本願発明3」という。)。
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 厚み30〜200μmの,可撓性を有する電気絶縁性のガラス繊維入りエポキシ系材料からなるフレキシブルフィルム1と,
該フレキシブルフィルム1を貫通し,パンチにより穴明け加工した,電子部品搭載用凹部11を形成するための貫通穴10と,
該貫通穴10を塞ぐよう上記フレキシブルフィルム1の上面側に設けた,厚み50〜1500μmの硬質の放熱金属板2と,
上記フレキシブルフィルム1における上記貫通穴10と上記放熱金属板2とにより囲まれた,電子部品8を搭載するための搭載用凹部11と,
上記フレキシブルフィルム1における該搭載用凹部11の開口側に設けた片面回路としての導体回路3を有し,上記開口側とは反対側の上記放熱金属板2を設ける側には導体回路3を設けていないことを特徴とする電子部品搭載用基板。
【請求項2】 請求項1において,上記放熱金属板2は,上記フレキシブルフィルム1の上面側の全面に設けられていることを特徴とする電子部品搭載用基板9。
【請求項3】 請求項1又は2において,上記フレキシブルフィルム1には,搭載用凹部11の開口側に,導体回路3とマザーボード995との間を接続するための接合手段35を設けてなることを特徴とする電子部品搭載用基板9。」
なお、符号は当審で参考のために付したものである。

【2】当審の拒絶理由
これに対して、当審において平成16年4月19日付けで通知した拒絶の理由の概要は、「本願の各請求項に係る発明は、本願の出願前に日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。」というものである。

刊行物一覧
<引用例>
特開平7-226457号公報
(英国特許出願公開第2286084号明細書参照)
<周知例>
1.実願平4-86824号(実開平6-45364号)の
CD-ROM
2.特開昭64-36494号公報
3.実願平2-23588号(実開平3-113865号)の
マイクロフィルム
4.特開昭60-97686号公報
5.特開平5-82925号公報

【3】引用例等

1.特開平7-226457号公報[英国特許出願公開第2286084号明細書(1995年8月2日発行)参照](以下、「引用例」という。)には、「電子パッケージ及びその製造方法」に関し、図面とともに、以下の事項が記載されている。
なお、英国特許出願公開第2286084号明細書は、原査定の拒絶の理由に引用されたものであって、引用例のパテントファミリーであり、引用例の翻訳が不明瞭である場合、参考にする。

ア.「【特許請求の範囲】
【請求項1】実質的に剛性な、熱伝導性の支持部材31と、少なくとも1層の回路層17を持つ誘電部材15を有し、上記支持部材31に電気絶縁状態で直接接合された薄い回路基板11と、上記支持部材31に熱伝導状態で接合され、上記回路基板11の回路17と電気的に接続される半導体装置41とを有することを特徴とする電子パッケージ13。
【請求項2】上記熱伝導性支持部材31は金属シート部材からなることを特徴とする請求項1に記載の電子パッケージ。
【請求項3】上記金属シート部材は銅からなることを特徴とする請求項1に記載の電子パッケージ。
【請求項4】上記熱伝導性支持部材31は、その中に少なくとも1個の窪み33を有し、上記半導体装置41はその窪み33の位置で上記支持部材31に接合させたことを特徴とする請求項1に記載の電子パッケージ。

【請求項8】上記熱伝導性支持部材31は、上記電子パッケージ13の操作の際に上記半導体装置41より発生した熱にたいするヒートシンク部材として、また上記回路基板11をほぼ平面方向に維持するための補強部材として作用することを特徴とする請求項1に記載の電子パッケージ。
【請求項9】上記回路基板11は上記回路の第1層17、第2層19を有し、上記回路の層の一方19は上記熱伝導性支持部材31に対面することを特徴とする請求項1に記載の電子パッケージ。

【請求項15】上記薄い回路基板11に電気的に接続された第2回路基板27をさらに有し、上記薄い回路基板11の回路層17の選択された位置に設けた複数のハンダ部材23をさらに有し、上記回路基板11,27間の電気的接続を行うことを特徴とする請求項1に記載の電子パッケージ。」(第1欄第1行〜第2欄第10行)
なお、符号は当審で参考のために付したものである。

イ.「【産業上の利用分野】本発明は電子パッケージに関し、詳細には、回路形成した基板およびその部品としての半導体装置(チップ)を利用する電子パッケージに関する。さらに詳細には、本発明は情報操作システム(コンピュータ)分野での利用に適した電子パッケージに関する。」(第3欄第9行〜第14行)

ウ.「【0003】近代の電子パッケージ産業における電子パッケージの主たる目的は、これらパッケージの部品を構成する種々の部材(例えば、半導体チップや回路基板)の回路密度をかなり増大させることにあると理解されている。こうした密度の増加は、半導体チップの操作中に発生する熱の増加も効果的に除去する必要があり、こうした排熱は基本的にチップ温度をある範囲に維持することであり、この温度範囲に維持することでチップの高い耐久性を得、パッケージ全体の操作寿命を伸ばすことになる。」(第3欄第31行〜第40行)

エ.「【0011】図1において、11は本発明の望ましい実施例による電子パッケージ13(図4参照)に使用される薄い回路基板である。薄い基板11は誘電物質の比較的薄い(例えば、約0.0254mmから約0.127mm厚)層の形状をした誘電部材15から構成するのが望ましい。誘電物質はポリイミドが望ましく、これはKaptonという商品名(Dupont社)およびUpilex という商品名(Ube Industry社)で市販されている。望ましくは、基板11は少なくとも1層の回路層17を有し、その回路は当業界で公知の光リソグラフ法により形成することができる。普通、この回路は構成部品として銅あるいは同様な接続金属を有する。図1に示された実施例では、基板11はさらに誘電部材15の反対側に第1回路層17からの第2回路層19を有する。この第2回路層も第1回路層と同様な物質で、公知のプロセスにより形成される。両回路層17と19の相互接続はメッキをした貫通孔(PTH)21または他の適切な手段を使用して行うことができる。」(第4欄第39行〜第5欄第6行)

オ.「【0017】図3では、ハンダ部材23を所定位置に設けた回路基板11が熱伝導性支持部材31に直接、接合されている。支持部材31は、図示のように細長く、ほぼ平坦な形状をしており、望ましくは窪み33を有する。支持部材31は、例えば銅のような優れた熱伝導性物質の単一金属シートが望ましい。
本発明の望ましい実施例では、支持部材31は本来の厚さが約0.508mmの銅シートから形成されている。この厚さの支持部材31はほぼ剛性で、最終パッケージ構造の強化部材として作用し、これにより基板11をこれに接合すると薄い回路基板(支持部材がないと、フレキシブルで容易に曲がってしまう)をほぼ平坦にすることができる。これは本発明の重要な特徴を表している。特に、外部基板(図6および図9)へのハンダ付けのような後続の処理をこの構造が受けることになるので、基板11の平面が図5(および図8)に示すような構造に効果的に維持できるという点である。」(第6欄第23行〜第39行)

カ.「【0019】図4では、半導体チップ41が同様に支持部材31、望ましくは窪み33の位置に直接、接合されている状態が示されている。チップ41は公知のチップから選択することができ、従って種々異なったサイズであるが、それらの全てが本発明の部品として容易に適合可能である。チップ41は、上記した3M社製のScotchcastのような優れた熱伝導性接着剤を使用して支持部材31に接合させるのが望ましい。例えば、アースとしてチップ41を支持部材31に電気的に接続する必要があれば、接着剤も電気伝導性を有するものを選択することができる。」(第6欄第45行〜第7欄第8行)

キ.「【0023】図6では、基板11と支持部材31がPCB27上に電気的に接続されている状態が示されている。望ましい実施例では、PCB27は、基板11上のハンダ球23の対応のパターンに匹敵する固定パターンによりPCB27の上面62上に間隔をとって配置された複数の導電部材61(例えば、銅パッド)を有する。ハンダ球23を有する基板は、ハンダ球23が物理的に各導電部材61に接触するように物理的にPCB27に係合させるように下げられる。そして、熱(例えば、210℃)を少なくとも部分的に溶融したハンダ部材23に加え、導電部材61との接合を形成する。」(第7欄第47行〜第8欄第7行)

ク.「基板11’は図1の基板11と若干異なる。すなわち、回路層17はその部品として複数の出っ張った導電性リード71を有し、このリード71が基板内に形成された内部開口部73を覆うように伸びている。図4の望ましい実施例では、基板11も同様な開口部73を有していることが分かる。」(第8欄第34行〜第39行)

ケ.「【発明の効果】パッケージの半導体チップと薄い回路基板の両方を共通の熱伝導性支持部材に接合させ、その熱伝導性支持部材はヒートシンク部材と薄い回路基板の剛性な支持を行う補強部材の両方の役割を担う。このパッケージは、最終パッケージ内でチップと回路基盤(注.“回路基板”の誤記)の両方の効果的な接合を確実にするのと同時に、この回路上の少なくとも1層に対する半導体チップの位置決めを容易にする。さらに、本発明によるパッケージはPCBのような独立した導電性基板への位置決めや接続にも容易に適応可能である。」(第11欄第46行〜第12欄第9行)

上記の記載事項エにおける「誘電部材15」「誘電物質」は、英国特許出願公開第2286084号明細書の記載を参酌すれば、「a dielectric member 15」「dielectric material」の訳であるが、この「dielectric」は、当該プリント回路基板分野では一般には「電気絶縁性の」と訳すべきものである。なお、請求人も平成15年11月12付の意見書に「a dielectric member 15(絶縁部材)」と記載し、また、平成16年2月5日付の手続補正書(方式)の【請求の理由】の欄に「ポリイミド製の絶縁板(dielectric member)15」と記載していることからも明らかである。
したがって、「誘電部材15」「誘電物質」は、以下において「電気絶縁部材15」「電気絶縁材料」と記すことにする。

また、同じく記載事項エによれば、この「電気絶縁部材15」は、望ましくはポリイミド製であり、厚さは比較的薄く、例えば、約0.0254mmから約0.127mm(約25.4μm〜約127μm)であると記載されていること、及び記載事項オに「この厚さの支持部材31はほぼ剛性で、最終パッケージ構造の強化部材として作用し、これにより基板11をこれに接合すると薄い回路基板(支持部材がないと、フレキシブルで容易に曲がってしまう)をほぼ平坦にすることができる。」と記載されていることから、「電気絶縁部材15」は、「薄く、可撓性を有するフレキシブルフィルム」であることは明らかである。
なお、ポリイミド樹脂が、エポキシ樹脂と共に、フレキシブルプリント基板(FPC)の代表的な電気絶縁材料であることは周知である(例えば、下記周知例1,5参照)。

図1からみて、電気絶縁部材15で形成される薄い回路基板11の中心部には、「貫通穴」が形成されており(但し、「貫通穴」の形成方法については記載されていないが)、図4〜6からみて、その「貫通穴」の上面は熱伝導性支持部材31で塞がれて下面側は半導体チップ41の搭載用の開口部73を形成している。
また、この熱伝導性支持部材31は、同時に電気絶縁部材15の上面の全面に設けられている。

そして、熱伝導性支持部材31は、記載事項ア(請求項8)、ウ、オ、ケに記載されているように、半導体チップ41から発生する熱を効果的に放散させるヒートシンク部材としての役割と、フレキシブルな薄い回路基板11の補強部材としての役割とを有するものであり、例えば銅のような優れた熱伝導性物質の単一金属シートであって、その厚さが約0.508mm(約508μm)の銅シートから形成されている。

なお、第1回路層17と第2回路層19に関し、第1回路層17は電気絶縁部材15の開口部73の開口側、すなわち図3〜図6において電気絶縁部材15の下面に形成され、第2回路層19は熱伝導性支持部材31側、すなわち図3〜図6において電気絶縁部材15の上面に形成されるものであるが、記載事項アの請求項1の「少なくとも1層の回路層を持つ誘電部材を有し」や記載事項エの「基板11は少なくとも1層の回路層17を有し」という記載からみて、引用例においては第1回路層17のみとすることも示唆されている。

上記の記載事項に図面を参照すると、引用例には次の発明が記載されているものと認められる(以下、「引用発明」という。)。
「厚み約25.4〜約127μmの、可撓性を有する電気絶縁性のポリイミドからなるフレキシブルフィルム状の電気絶縁部材15と、
該電気絶縁部材15を貫通し、半導体チップ41の搭載用開口部73を形成するための貫通穴と、
該貫通穴を塞ぐよう上記電気絶縁部材15の上面側の全面に設けた、厚み約508μmの金属シート部材からなる実質的に剛性の熱伝導性支持部材31と、
上記電気絶縁部材15における上記貫通穴と上記熱伝導性支持部材31とにより囲まれた、半導体チップ41を搭載するための開口部73と、
上記電気絶縁部材15における開口部73の開口側に設けた、少なくとも1層の第1回路層17と、
必要に応じて、上記熱伝導性支持部材31側に設けた第2回路層19と、両回路層17,19を相互接続する、メッキした貫通孔(PTH)21と、
よりなる、電子パッケージ13に使用される薄い回路基板11であって、
上記電気絶縁部材15には、開口部73の開口側に、第1回路層17と第2回路基板PCB27との間を接続するためのハンダ球23を設けてなる薄い回路基板11。」

2.実願平4-86824号(実開平6-45364号)のCD-ROM(以下、「周知例1」という)には、「フレキシブルプリント回路基板」に関し、図面とともに、以下の事項が記載されている。
コ.「【実用新案登録請求の範囲】
【請求項1】可撓性を有する程度に薄いガラスエポキシシートの片面または両面に銅箔による回路パターンを形成してなるフレキシブルプリント回路基板において、使用状態で屈曲を受ける部分の両側縁に補強銅箔パターンを形成したことを特徴とするフレキシブルプリント回路基板。」
サ.「【0005】
ところが本考案者等の検討によると、厚さ50μm 程度の薄いガラスエポキシシートを用いたプリント回路基板は、従来のポリイミドフィルムを用いたプリント回路基板ほどの柔軟性はないものの、屈曲配線には十分耐え得る程度の可撓性を有することが判明した。」(第3頁第21行〜第25行)
シ.「【0011】
【実施例】以下、本考案の実施例を図面を参照して詳細に説明する。図1は本考案の一実施例を示す。このフレキシブルプリント回路基板は、厚さ50±20μmのガラスエポキシシート1の片面(または両面)に厚さ18μmまたは35μmの電解銅箔により回路パターン2を形成すると共に、使用状態で屈曲を受ける部分Aの両側縁に補強銅箔パターン4を形成したものである。
【0012】
ガラスエポキシシート1としては、厚さを薄くするため、繊維径D=5μm、密度=経56本×緯56本/インチ、厚さ38μmのガラス繊維織布に、エポキシ樹脂を含浸させたものを使用した。このガラスエポキシシート1の片面(または両面)に銅箔を張り付け、常法によりパターンエッチングすることにより回路パターン2および補強銅箔パターン4を形成した後、ルーター加工またはプレス打抜き加工により所望の外形に加工する。」(第5頁第4行〜第17行)

以上のことから、周知例1には、「フレキシブルプリント回路基板において、ポリイミドフィルムに代えて可撓性を有する程度に薄い(厚さ50±20μm の)ガラスエポキシシートを用いて、その片面銅箔による回路パターンを形成し、プレス打抜き加工により所望の外形に加工する」点が記載されている。

3.特開昭64-36494号公報(以下、「周知例2」という。)には、「ICカード用プリント配線板」に関し、図面とともに、以下の事項が記載されている。
ス.「(11)は、基板本体であり、一般にはガラスエポキシ複合材料からなる銅張積層板であり、その他、…、ポリイミド樹脂フィルムなどからなるリジッド或いはフレキシブル基板等が使用される。
前記基板本体(11)に、ドリルによる穴あけ或いは金型による打抜きを行ない、貫通孔(13)並びにキャビティ孔(14)を加工した後、銅箔を張り合せる。この後、レジスト形成、エッチングの工程を経て、必要な配線パターンを形成する。」(第2頁左下欄第14行〜右下欄第6行)
セ.「前記コンタクト端子(12)を必要な厚さに突出させた後、ICカード用プリント配線板(10)にICチップ(16)等の電子部品を搭載し、」(第3頁左下欄第12行〜第14行)
ソ.「実施例1
0.13mm厚さ(以下、mm厚さのことをtと略記する)のガラスエポキシ樹脂基板(…)を用いて、キャビティ孔(14)及び直径1.0mm(以下、mm直径のことをφと略記する)の貫通孔(13)を金型により打ち抜き、0.025tの電解銅箔を接着剤層面に熱圧着プレスにより接着し、接着剤を完全硬化させる。」(第3頁右下欄第7行〜第15行)

以上のことから、周知例2には、「0.13mm厚さのガラスエポキシ樹脂製のフレキシブル基板に、ICチップ(16)等の電子部品を搭載するためのキャビティ孔(14)を金型で打抜いて形成した」点が記載されている。

4.実願平2-23588号(実開平3-113865号)のマイクロフィルム(以下、周知例3」という。)には、「フレキシブル配線板(FPC)」に関し、図面とともに、以下の事項が記載されている。
タ.「FPC形状を金型で打抜く時、銅箔パターンと反対側に銅箔より軟らかい材料をはさみ打抜くと良い。」(第2頁第19行〜第3頁第1行)
第4図にはFPC打抜実施例として、FPC9とダイ11の間に軟らかい材料10を挟んで、パンチ8で打抜く点が記載されている。

5.特開昭60-97686号公報(以下、「周知例4」という。)には、「フレキシブル回路基板の製造法」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。
チ.「先ずフレキシブルベース材1の両面に接着剤2を有し、その一方面に銅箔等の導電箔3を接合した所謂フレキシブル片面銅張板を用意してこれにパンチング又はドリリング等で所要のプリパンチ部の為の透孔4を設け」(第1頁右下欄第11行〜第16行)

6.特開平5-82925号公報(以下、「周知例5」という。)には、「ポリアミック酸フィルム及びその製造方法」に関し、図面とともに以下の事項が記載されている。
ツ.「【産業上の利用分野】本発明は、接着剤層を持たない2層フレキシブル印刷回路用基板およびカバーレイフィルムなどに利用可能な、延伸されたポリアミック酸フィルム及びその製造方法に関するものである。」(第1欄第17行〜第20行)
テ.「【0003】一方、TAB等に用いられる支持フィルム層に孔加工がされ、かつ導体配線を有するフレキシブル印刷回路用基板の製造方法としては、予め支持フィルム層にパンチング等で孔加工を行い、接着剤を用いて導体層を貼合わせた後、配線回路を形成する方法や…」(第1欄第39行〜第43行)
ト.「【発明が解決しようとする課題】本発明の目的とするところは、従来のワニスキャスティング法では実現できなかった、延伸された一般のポリイミドフィルムの持つ耐折性、耐アルカリ性、耐溶剤性、耐熱性、電気特性、機械特性を有するポリイミド層を持ち、しかも蒸着法では選択することができない圧延箔等、自由な導体箔を用いることが出来る、接着剤層のない2層フレキシブル印刷回路板を作製可能とする、所定の厚みを有し、また必要により孔加工された、延伸を施したポリアミック酸フィルム及びその製造法を提供するものである。」(第2欄第32行〜第41行)

上記の記載から、周知例5には、以下の事項が記載されている。
「ポリイミドフィルムからなるフレキシブル印刷回路用基板において、パンチングで孔加工を行って、導体層を貼合わせ後、配線回路を形成した点」

【4】対比・判断
1.本願発明1と引用発明とを対比すると、左欄の引用発明の構成は右欄の本願発明1の構成に相当している。
引用発明 本願発明1
電気絶縁部材15 フレキシブルフィルム1
半導体チップ41 電子部品8
開口部73 電子部品搭載用凹部11
剛性の熱伝導支持部材31 硬質の放熱金属板2
第1回路層17 導体回路3
回路基板11 電子部品搭載用基板9
また、引用発明のポリイミドも、本願発明1のガラス繊維入りエポキシ系材料と同様に、電気絶縁性材料であることは明らかである。
したがって、両者の一致点、相違点は次のとおりであると認められる。

<一致点>
「可撓性を有する電気絶縁性材料からなるフレキシブルフィルムと,
該フレキシブルフィルムを貫通し,電子部品搭載用凹部を形成するための貫通穴と,
該貫通穴を塞ぐよう上記フレキシブルフィルムの上面側に設けた硬質の放熱金属板と,
上記フレキシブルフィルムにおける上記貫通穴と上記放熱金属板とにより囲まれた,電子部品を搭載するための搭載用凹部と,
上記フレキシブルフィルム1における該搭載用凹部の開口側に設けた導体回路を有する電子部品搭載用基板。」

<相違点>
(1)フレキシブルフィルムの電気絶縁性材料として、本願発明1は「ガラス繊維入りエポキシ系材料」であるのに対し、引用発明は「ポリイミド」である点。
(2)フレキシブルフィルムの厚みに関し、本願発明1は「30〜200μm」であるのに対し、引用発明は「約25.4〜約127μm」である点。
(3)電子部品搭載用凹部を形成するため、フレキシブルフィルムに形成した貫通穴の形成手段として、本願発明1では「パンチによる穴明け加工」によるのに対し、引用発明では、形成手段については記載されていない点。
(4)放熱金属板の厚みに関し、本願発明1は「50〜1500μm」であるのに対し、引用発明は「約508μm」である点。
(5)フレキシブルフィルムに形成する導体回路に関し、本願発明1では「電子部品搭載用凹部11の開口側に設けた片面回路であって、開口側とは反対側の上記放熱金属板2を設ける側には導体回路3を設けていない」のに対し、引用発明では「電子部品搭載用凹部(開口部73)の開口側に設けた第1回路層17と、放熱金属板(熱伝導性支持部材31)側に設けた第2回路層19」とからなる両面回路とした点。

上記各相違点について、以下に検討する。
<相違点(1)について>
フレキシブルフィルムからなるフレキシブルプリント回路基板(FPC)の電気絶縁材料として、「ガラス繊維入りエポキシ系材料」を用いることは従来周知の事項であり(例えば、周知例1、2参照)、引用発明において、「ポリイミド」に代えて、「ガラス繊維入りエポキシ系材料」を用いることは、当業者にとって容易に想到できたことである。

<相違点(2)について>
引用発明のフレキシブルフィルム(電気絶縁部材15)の厚み「約25.4〜約127μm」は、本願発明1の「30〜200μm」に対し相当部分が重なり、かつその相違は、当業者にとって、可撓性、機械的強度、基板全体の厚さを考慮して設定し得る単なる設計的事項にすぎない。

<相違点(3)について>
フレキシブルプリント回路基板において、貫通穴を形成するのに、パンチによる穴明け加工手段を用いることは、従来周知の事項であり(例えば、周知例1〜5参照。特に、周知例2の貫通穴は、電子部品搭載用凹部を形成するための貫通穴であり、また、周知例1,2はフレキシブルフィルムの材料としてガラス繊維入りエポキシ系材料を用いている。)、引用発明において、パンチによる穴明け加工で貫通穴を形成することは、当業者が容易に想到できたことである。

<相違点(4)について>
引用発明における放熱金属板(熱伝導性支持部材31)の厚み「約508μm」は、本願発明の「50〜1500μm」に含まれ、かつその相違は、当業者にとって、放熱性能、機械的強度、基板全体の厚さを考慮して設定し得る単なる設計的事項にすぎない。

<相違点(5)について>
フレキシブルフィルムに形成する導体回路において、導体回路を形成する面を片面とするか両面とするかは、例えば、周知例1の記載事項コに「片面または両面」と単なる選択肢として示されているように、単なる設計的事項にすぎない。
そして、引用発明においても、電気絶縁部材15は少なくとも第1回路層17を有すればよいのであるから、引用発明において、フレキシブルフィルム(電気絶縁部材15)の電子部品搭載用凹部(開口部73)の開口側に設けた片面回路(第1回路層17のみ)とすることは、当業者にとって容易に想到できたことである。

なお、請求人は、意見書において、引用発明にはスルーホール(貫通孔PTH21)が設けられている旨、主張しているが、これは両面に導体回路17,19が形成される場合のものであり、片面回路とするならば、このようなスルーホールを設ける必要はない。

2.本願発明2と引用発明とを対比すると、引用発明も、本願発明2の「放熱金属板(熱伝導性支持部材31)は,フレキシブルフィルム(電気絶縁部材15)の上面側の全面に設けられた」点は備えている。

3.本願発明3と引用発明とを対比すると、引用発明の「第2回路基板PCB27」「ハンダ球23」は、それぞれ本願発明3の「マザーボード995」「接合手段(半田ボール35)」に相当するので、引用発明も本願発明3の「フレキシブルフィルム(電気絶縁部材15)には,搭載用凹部(開口部73)の開口側に,導体回路(第1回路層17)とマザーボード(第2回路基板PCB27)との間を接続するための接合手段(ハンダ球23)を設けてなる電子部品搭載用基板(薄い回路基板11)」を全て備えている。

そして、本願発明1〜3が奏する効果も、上記引用例及び従来周知の事項から予測できる程度であって格別顕著なものではない。

【5】むすび
したがって、本願発明1〜3は、引用例に記載された発明と従来周知の事項から容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-08-04 
結審通知日 2004-08-10 
審決日 2004-08-23 
出願番号 特願平7-354511
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 長屋 陽二郎  
特許庁審判長 八日市谷 正朗
特許庁審判官 ぬで島 慎二
田々井 正吾
発明の名称 電子部品搭載用基板  
代理人 高橋 祥泰  

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