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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  B65D
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  B65D
審判 全部申し立て 特36条4項詳細な説明の記載不備  B65D
管理番号 1104417
異議申立番号 異議2003-72750  
総通号数 59 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2002-06-18 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-11-11 
確定日 2004-07-16 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3404630号「紙製ひだ付容器とその製造方法」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3404630号の請求項1ないし3に係る特許を取り消す。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3404630号は、平成12年12月5日の出願であって、平成15年3月7日に設定の登録がなされ、平成15年5月12日にその特許掲載公報が発行された後、飯田訓子より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成16年5月6日に特許異議意見書の提出とともに訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否
2-1.訂正の内容
特許権者は本件特許明細書の記載を訂正明細書のとおりに訂正することを求めており、その具体的な内容は以下の通りである。
A.訂正前の特許請求の範囲の【請求項1】乃至【請求項3】における「加熱収縮性プラスチックフィルム」を「二軸延伸ポリプロピレンフィルム又はポリエチレンフィルム」と訂正する。
B.訂正前の特許請求の範囲の【請求項1】乃至【請求項3】における「冷却固化」を「冷風を当てることにより冷却して固化」と訂正する。
C.訂正前の特許請求の範囲の【請求項2】乃至【請求項3】における「剛性」を「拡開変形に対する剛性」と訂正する。

2-2.訂正の適否
訂正事項Aは、訂正前の【請求項1】乃至【請求項3】に係る発明を特定する「プラスチックフィルム」を「二軸延伸ポリプロピレンフィルム又はポリエチレンフィルム」に限定しようとするものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、訂正前に「加熱収縮性プラスチックフィルム」としていて、発明の詳細な説明に記載された事項との関係においてその概念が不明りょうであったものを明りょうにしたものである。そして、訂正事項Aは、特許明細書の段落【0010】・【0012】・【0013】に記載されている。
訂正事項Bは、訂正前の【請求項1】乃至【請求項3】に係る発明を特定する「冷却固化」を「冷風を当てることにより冷却して固化」と限定しようとするものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、訂正前に単に「冷却固化」としていて、その概念が不明りょうであったものを明りょうにしたものである。そして、訂正事項Bは、特許明細書の段落【0010】に記載されている。
訂正事項Cは、訂正前の【請求項2】乃至【請求項3】に係る発明を特定する「剛性」を「拡開変形に対する剛性」と限定しようとするものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、訂正前に単に「剛性」としていて、その概念が不明りょうであったものを明りょうにしたものである。そして、訂正事項Cは、特許明細書の段落【0010】・【0011】・【0012】・【0017】に記載されている。
上記の訂正事項は、いずれも、願書に添付した明細書に記載された範囲内の訂正であり、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。
したがって、上記の訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについて
3-1.特許異議の申立ての概要
異議申立人は、証拠として下記の甲第1号証乃至甲第3号証並びに参考資料1及び2を提出し、訂正前の請求項1及び請求項2に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、請求項3に係る発明は、甲第1号証乃至甲第3号証に記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、さらに特許請求の範囲の記載に不備があり、請求項1乃至請求項3に係る発明は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないので、その特許を取り消すべきである旨を主張している。
証拠及び参考資料
甲第1号証:特開平11-240111号公報
甲第2号証:「食品包装便覧」1988年3月1日 社団法人日本包装技術協会発行
甲第3号証:特開2000-247376号公報
参考資料1:特開平11-313615号公報
参考資料2:実公昭55-10243号公報

3-2.本件発明
前記のとおり訂正が認められるので、請求項1乃至請求項3に係る発明は、訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至請求項3に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】 プラスチックフイルムを貼着した複合紙で容器底部の周囲に多数の縦ひだを有する容器胴部を一体起立成形した紙製容器において、二軸延伸ポリプロピレンフィルム又はポリエチレンフィルム1を貼着した複合紙2を加熱しながら容器底部3の周囲に多数の縦ひだ4を有する容器胴部5を一体起立成形後、冷風を当てることにより冷却して固化することで、前記各縦ひだ同士の隔離を防ぎ容器胴部5の拡開を阻止可能となした紙製ひだ付容器。
【請求項2】 プラスチックフイルムを貼着した複合紙で容器底部の周囲に多数の縦ひだを有する容器胴部を一体起立成形してひだ付容器を作る方法において、二軸延伸ポリプロピレンフィルム又はポリエチレンフィルム1を貼着した複合紙2を加熱済みの対をなすプレス成形金型で加熱収縮させながら容器底部3の周囲に多数の縦ひだ4を有する容器胴部5を一体起立成形後、前記二軸延伸ポリプロピレンフィルム又はポリエチレンフィルム1を冷風を当てることにより冷却して固化することで、前記各縦ひだ4の拡開変形に対する剛性を強化して容器胴部5の拡開を阻止可能となした紙製ひだ付容器の製造方法。
【請求項3】 前記複合紙2に予じめ前記縦ひだ4に対応した多数の折り目線を形成しておき、これら各折り目線を基準として、前記複合紙2を加熱済みの対をなすプレス成形金型で加熱収縮させながら容器底部3の周囲に前記折り目線に基づいた多数の縦ひだ4を有する容器胴部5を一体起立成形後、前記二軸延伸ポリプロピレンフィルム又はポリエチレンフィルム1を冷風を当てることにより冷却して固化することで、前記各縦ひだ4の拡開変形に対する剛性を強化して容器胴部5の拡開を阻止可能となした請求項2記載の紙製ひだ付容器の製造方法。」

3-3.取消理由通知で引用された刊行物に記載された事項
当審が通知した取消しの理由に引用された刊行物1(特開平11-313615号公報、異議申立人の提出した参考資料1)には、以下の事項が図面とともに記載されている。
(a)「 紙の一面に、熱収縮性を有する合成樹脂から成る保形性合成樹脂層を設け、この合成樹脂層の外面に耐熱層を設けた積層シートを加熱成形して、底壁とその周縁から立ち上る周壁を形成した焼成菓子用容器。」[特許請求の範囲【請求項1】]
(b)「【発明の技術分野】この発明は、菓子生地を焼成する際に、生地を充填する容器に関する。[段落番号【0001】]
(c)「【従来の技術】この種の容器は、一般にアルミニウム箔や紙又は紙と合成樹脂の複合体を成形して周壁に多数のフレア(flare)を形成したカップ形状になっている。・・・」[段落番号【0002】]
(d)「【発明の課題】このようなカップに要求される物性は、加熱焼成時の耐熱性は勿論のことであるが、菓子生地の充填から焼成、販売にいたる過程で形状が崩れないこと、即ち保形性である。・・・」[段落番号【0003】]
(e)「【課題の解決手段】上記の課題を解決するために、この発明においては、紙の一面に、熱収縮性を有する無延伸合成樹脂から成る保形性合成樹脂層を設け、この合成樹脂層の外面に耐熱層を設けた積層シートを加熱成形して、前記保形性合成樹脂層に収縮応力を付与して紙の形状を保持するようにしたのである。・・・」[段落番号【0006】]
(f)「【実施の形態】・・・図1は、この発明の容器を形成するために用いる積層シートを示す。図示のように、積層シート1は、紙2の一面に保形性合成樹脂層3を設け、層3の外面に耐熱性外面層4を設けたものである。・・・」[段落番号【0009】]
(g)「前記保形性合成樹脂層3は、後述する加熱成形によって容器形状を保持するための層であって、加熱によって1〜6%程度好ましくは2〜5%程度の収縮性を有する合成樹脂、例えば無延伸ポリプロピレン樹脂や無延伸ポリエチレン樹脂などの無延伸ポリオレフィン樹脂が適当である。・・・」[段落番号【0010】]
(h)「上記のような積層シート1を用いて容器を成形する。まずシート1を120℃程度で加熱成形し、成形終了後に成形型を160℃程度に昇温して約10秒から20秒成形型内に保持する。このとき、保形性合成樹脂層3が1〜6%の範囲内で収縮しようとし、その収縮応力が紙の形状を固定して、紙2の復元性を阻止する機能を発揮し、容器の形状を安定的に保持する。出来上った容器の一例を図4に示す。この容器10は、底壁から立ち上る周壁に多数のフレア11を設けたものであるが、容器形状はこれに限定されず、平面形状が楕円形や長円形のほか、フレアの代りに折り畳み部又はひだを複数設けたトレイ形又は箱形のようなものでもよい。・・・」[段落番号【0015】]
(i)「【実施例1】厚さ16μmのポリエステルフィルムと坪量50g/m2 の純白紙をポリエチレンの押し出しによって貼り合せた。ポリエチレンの厚さは15μmであった。この積層シートをポリエステルフィルム側を内面にして120℃で加熱成形し、成形型を160℃に昇温し、15秒間保持した。容器形状は底面の径が約62mm、高さが約22mm、開口部の径が約72mmで周壁に多数のフレアを形成した円形カップ状のものであった。・・・」[段落番号【0018】]

3-4.対比・判断
3-4-1.請求項1に係る発明について
請求項1に係る発明(以下、「前者」という。)と、刊行物1に記載された発明(以下、「後者」という。)とを対比する。
後者の「焼成菓子用容器」は、菓子生地を焼成する際に生地を充填する容器であるので、前者の「紙製ひだ付容器」に相当する。(記載b)
前者の「プラスチックフィルム」は、加熱収縮性を有するものであり、具体的に二軸延伸ポリプロピレンフィルム又はポリエチレンフィルムと特定するものであるが、後者の保形性合成樹脂層に使用する「熱収縮性を有する合成樹脂」は、具体的には無延伸ポリプロピレン樹脂や無延伸ポリエチレン樹脂などを好適材料とするものであり、これらポリプロピレンやポリエチレンは延伸の有無に拘わらず加熱による収縮性を有するものであるので、後者の「熱収縮性を有する合成樹脂」は、前者の「プラスチックフィルム」に相当する。(記載a、e及びg)
後者の「積層シート」は、紙の一面に熱収縮性を有する保形性合成樹脂層を設けたものであるので、前者の「複合紙」に相当する。(記載a他)
後者の「多数のフレアを有する周壁」は、底壁の周縁から立ち上る周壁に多数のフレアを形成したものであり、前者の「縦ひだを有する容器胴部」に相当する。(記載a、h、i及び図4参照)(なお、「フレア」は一般的概念では、「縦ひだ」とは異なるものを指すこともあるが、記載hによれば、図4に示すものを「フレア」と称しており、これは前者の「縦ひだ」と同じものと認められるので、両者を相当関係にあるものと認定した。)
後者の焼成菓子用容器は、積層シートを加熱成形して、底壁とその周縁から立ち上る多数のフレアを有する周壁を形成したものであり、加熱成形した後は周壁に多数のフレアを形成したカップ形状が保持されるものである。(記載a及びh)(記載d、e、h及びi)
してみると、両者は、「プラスチックフイルムを貼着した複合紙で容器底部の周囲に多数の縦ひだを有する容器胴部を一体起立成形した紙製容器において、ポリプロピレンフィルム又はポリエチレンフィルムを貼着した複合紙を加熱しながら容器底部の周囲に多数の縦ひだを有する容器胴部を一体起立成形後、前記各縦ひだを保持し容器胴部の拡開を阻止可能となした紙製ひだ付容器」である点で一致しており、以下の点で一応相違している。
[相違点1]前者においては、成形後冷風を当てることにより冷却して固化することで、各縦ひだ同士の隔離を防ぐ、としているのに対し、後者においては、成形後の処理について記載がなく、フレアを有する周壁(縦ひだを有する容器胴部)の形状が保持されることについての記載はあるが、各フレア同士の隔離を防ぐことについて明記していない点。
そこで以下、相違点1について検討する。
加熱により容器を一体起立成形する場合、その後工程で冷却して固化することは通常おこなわれていることである。(一例として、甲第2号証参照。) 刊行物1にはその旨の記載はないが、後者においても、一体起立成形後には当然何らかの冷却して固化する処理をしていると解するのが妥当である。他方、プラスチックの成形技術の分野において、冷却時間の短縮や固化を早めることを目的として、加熱成形後に冷却処理をする手段として冷風を当てることは、従来広く知られた技術的事項である。(必要ならば、実願平4-11867号《実開平5-72427号》のCD-ROM、特開平1-127313号公報、特開平5-16945号公報等参照。) してみると、後者において、前記周知の技術的事項を採用することは当業者が容易に想到し得る事項である。そして、前記冷風をあてることにより冷却して固化する手段を採用すれば、後者においても、結果として各フレア同士の隔離が防がれることは予測されることであり、相違点1に格別の技術的意義はみいだせない。
したがって、請求項1に係る発明は、刊行物1に記載された発明及び従来周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
なお、特許権者は、異議意見書において、『「冷風を当てることにより冷却して固化」することは、従来の周知技術である加熱成形後に常温にて放置し冷却することとは異なり、極めて短時間で冷却を可能とするばかりでなく、固化した状態の強度が高くなる』旨を主張しているが、これらのことが当該技術分野において従来周知の事項であることは前述のとおりであり、当該特許権者の主張は認めない。

3-4-2.請求項2に係る発明について
請求項2に係る発明は、請求項1に係る「紙製ひだ付容器」の製造方法に係るものであって、請求項1に係る発明に「加熱済みの対をなすプレス成形金型を使用する」(要件1)及び「縦ひだの拡開変形に対する剛性を強化する」(要件2)という要件を付加したものであるが、請求項2に係る発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、前記「3-4-1.請求項1に係る発明について」で検討した相違点1に加え、刊行物1に記載された発明においては、前記の要件1及び要件2を備えていない点で相違している。(以下、要件1に係る事項を「相違点2」、要件2に係る事項を「相違点3」という。)
そこで相違点2及び相違点3について検討すると、プレス成形において金型として加熱済みの対のものを使用することは例示するまでもなく従来周知の技術であるので、相違点2は当業者が容易に採用しうる設計的事項にすぎず、縦ひだの拡開変形に対する剛性を強化することは、容器を加熱成形した結果生じた性質を記したにすぎないものであるので、相違点3に格別の技術的意義はみいだせない。
したがって、前記「3-4-1.請求項1に係る発明について」で検討した事項に鑑みれば、請求項2に係る発明も、刊行物1に記載された発明及び従来周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

3-4-3.請求項3に係る発明について
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明に、「複合紙に予じめ縦ひだに対応した多数の折り目線を形成しておき、これら各折り目線を基準として、折り目線に基づいて成形する」という限定を付加したものであり、請求項3に係る発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、前記「3-4-1.請求項1に係る発明について」及び「3-4-2.請求項2に係る発明について」で検討した相違点1乃至相違点3に加え、刊行物1に記載された発明においては、前記の限定を備えていない点で相違している。(相違点4)
そこで検討すると、加熱により容器を一体起立成形する場合、複合紙に予じめ縦ひだに対応した多数の折り目線を形成しておくことは従来周知の技術であるので、相違点4は当業者が容易に採用しうる設計的事項にすぎない。(一例として、甲第3号証参照。)
したがって、前記「3-4-1.請求項1に係る発明について」及び「3-4-2.請求項2に係る発明について」で検討した事項に鑑みれば、請求項3に係る発明も、刊行物1に記載された発明及び従来周知の技術的事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおり、請求項1乃至請求項3に係る特許は、いずれも、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、請求項1乃至請求項3に係る特許は、特許法第113条第2号の規定に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
紙製ひだ付容器とその製造方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 プラスチックフィルムを貼着した複合紙で容器底部の周囲に多数の縦ひだを有する容器胴部を一体起立成形した紙製容器において、二軸延伸ポリプロピレンフィルム又はポリエチレンフィルム1を貼着した複合紙2を加熱しながら容器底部3の周囲に多数の縦ひだ4を有する容器胴部5を一体起立成形後、冷風を当てることにより冷却して固化することで、前記各縦ひだ同士の隔離を防ぎ容器胴部5の拡開を阻止可能となした紙製ひだ付容器。
【請求項2】 プラスチックフィルムを貼着した複合紙で容器底部の周囲に多数の縦ひだを有する容器胴部を一体起立成形してひだ付容器を作る方法において、二軸延伸ポリプロピレンフィルム又はポリエチレンフィルム1を貼着した複合紙2を加熱済みの対をなすプレス成形金型で加熱収縮させながら容器底部3の周囲に多数の縦ひだ4を有する容器胴部5を一体起立成形後、前記二軸延伸ポリプロピレンフィルム又はポリエチレンフィルム1を冷風を当てることにより冷却して固化することで、前記各縦ひだ4の拡開変形に対する剛性を強化して容器胴部5の拡開を阻止可能となした紙製ひだ付容器の製造方法。
【請求項3】 前記複合紙2に予め前記縦ひだ4に対応した多数の折り目線を形成しておき、これら各折り目線を基準として、前記複合紙2を加熱済みの対をなすプレス成形金型で加熱収縮させながら容器底部3の周囲に前記折り目線に基づいた多数の縦ひだ4を有する容器胴部5を一体起立成形後、前記二軸延伸ポリプロピレンフィルム又はポリエチレンフィルム1を冷風を当てることにより冷却して固化することで、前記各縦ひだ4の拡開変形に対する剛性を強化して容器胴部5の拡開を阻止可能となした請求項2記載の紙製ひだ付容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、パン、ケーキ、菓子等の食品生地を入れて天火焼き、蒸しなどに用いるパン、ケーキ等の加熱加工食品用紙製ひだ付容器とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
この種の紙製ひだ付容器としては、従来、例えば実公平7-6782号公報記載のものが有った。
【0003】
この従来の技術は、薄紙に通常PETと称するポリ・エチレン・テレフタレート、つまり、ポリエステルで作ったフイルムを貼着し、該薄紙及びPETフイルムをプレス成形により、底部と少なくとも一部にひだを備えた壁部とからなると共にPETフイルムが薄紙の内面となる皿状に成形したパン焼き皿である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記した従来の技術に用いているPET(ポリエステル)フイルムは、熱可塑性プラスチックフイルムのうちで、軟化点が最も高く(260℃以上)、従って一般調理温度(180℃前後)では剛性(stiffness)の極めて高いプラステックであり、高温の調理での耐油性にも優れている。
【0005】
しかしながら複数の縦ひだの集合からなる縦ひだ付容器では、各ひだ自体の剛性が高くても元来1枚の紙を加圧してすぼめた状態の縦ひだ付容器のため、内容物の重みも加わって容器胴部における縦ひだが一つずつ少しでも伸びれば容器胴部が拡開崩壊して、内容物が流出し易い。
【0006】
ひだ付容器を形成する胴部に貼着してあるPETフイルムが相互に熱接着性(ヒートシール)があれば、該容器形成する時の加熱加圧により縦ひだ同士が熱接着して一体化し、容器胴部の崩壊を防止できるが、PET(ポリエステルフイルム)は軟化点が極めて高い樹脂のため、ヒートシールは殆ど不可能である。
【0007】
また、PETフイルムの価格は、包装フイルムの御三家と呼ばれるPET、PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)のうち、PE、PPフイルムの3〜4倍と高価のため紙ケースと呼ばれる廉価な容器には使用できないという問題点が有った。
【0008】
この発明は、前記した各問題点を除去するために、フイルム価格がPET(ポリエステル)フイルムの約半値以下である加熱収縮性プラスチックフイルムを貼着した複合紙を容器素材として用いることで、縦ひだ付きの紙製容器胴部の外力による拡開変形と、容器収納物の加熱加工時における容器胴部の拡開変形とを安価に防止することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記したこの発明の目的は、プラスチックフイルムを貼着した複合紙で容器底部の周囲に多数の縦ひだを有する容器胴部を一体起立成形してひだ付容器を作るに当たり、加熱収縮性プラスチックフイルム1を貼着した複合紙2を加熱済みの対をなすプレス成形金型Pで加熱収縮させながら容器底部3の周囲に多数の縦ひだ4を有する容器胴部5を一体起立成形後、前記加熱収縮性プラスチックフイルム1を冷却固化することで、前記各縦ひだ4の剛性を強化して容器胴部5の拡開を阻止可能としたことで達成できた。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態例について図面を参照して説明する。
先ず、この発明の基本形態は、プラスチックフイルムを貼着した複合紙で容器底部の周囲に多数の縦ひだを有する容器胴部を一体起立成形してひだ付容器を作るに当たり、図2のように、二軸延伸ポリプロピレンフイルムなどの加熱収縮性プラスチックフイルム1をカレンダードポリプロピレンをバインダー1aとしてクラフト紙などの用紙2aに貼着した複合紙2をフイルム1の軟化点付近まで加熱済みの雌雄一対のべベルギャー状の周知のプレス成形金型で加熱し複合紙2を収縮させながらプレス成形することで、図1のように容器底部3の周囲に多数の縦ひだ4を有する容器胴部5を一体起立させて縦ひだ付紙製容器を成形後、前記加熱収縮性プラスチックフイルム1に冷風を当てるなどして冷却固化することで、前記各縦ひだ4の剛性を強化することができ、容器胴部5の外力による拡開を阻止可能とすることができた。
【0011】
また、本発明における前記容器内食品生地の加熱加工時における前記各縦ひだ4同士の収縮に伴なう接近作用により、容器胴部5の拡開変形をも安価に防止することもできた。
【0012】
すなわち、ポリプロピレン、ポリエチレン、PET等の加熱収縮性フイルムを貼着した複合紙を用いた底部、胴部一体形のひだ付紙容器は、加熱加圧による容器形成時の用紙貼着フイルムの熱収縮により、胴部の縦ひだが固化するため、容器の胴部は容器の外部へ倒れるような変形も生ぜず、また容器の内容充填物による胴部縦ひだの外部への押し出し崩壊も生じなかったし、容器内食品生地の加熱加工時における外熱による容器胴部5の拡開変形も防ぐことができた。
【実施例】
【0013】
用紙2a…100g/平方メートル 晒クラフト紙
用紙2aの片面へ2軸延伸ポリプロピレンフイルム(BOP:Binary orientcd(P.P))からなる加熱収縮性フイルム1を厚さ20μmで貼着して複合紙2を得た。
用紙2aと上記延伸フイルムとの貼着用材(バインダー)としては、厚さ15μmのカレンダードポリプロピレンCPP(いわゆる生PP)を用いた。
加熱収縮性プラスチックフイルム1は、図1に示す実施例では容器の内部(内側)になるように貼着したが、容器の外側でもよい。また、上記加熱収縮性延伸フイルム1の貼着は図3に示すように用紙2の両面でもよい。
【0014】
一般に加熱収縮性延伸フイルムとしては、ポリエチレンPE、ポリプロピレンPP、ポリエチレンテレフタレートPET、塩化ビニール、スチロールがあるが、公害以外、軟化点等の観点から実用的にはPP(2軸延伸ポリプロピレン:BOP)が最適である。
【0015】
そして、上記のようにして作った複合紙2を約150〜180℃程度に昇温した前記成形金型で挟み込み、加熱収縮させながら容器胴部5に多数の縦ひだ4を形成したひだ付紙容器を作ることができた。
【0016】
なお、縦ひだ4の平面的な形状としては、前記図1、図3に示すようなアコーディオン式形状のもの以外に、連続鳩尾形状のものや、連続Ω字状とか、連続稲妻形状の縦ひだ4としてもよいが、これらの平面的輪郭形状の縦ひだ4の場合には、複合紙2に予じめ上記各縦ひだ4に対応した折り目を付けた複合紙を用いることで実施できた。
【0017】
【発明の効果】
この発明は、以上のような形態を採用したので、以下に記載の効果を奏する。
フイルム価格がPET(ポリエステル)フイルムの約半値以下である加熱収縮性プラスチックフイルム1を貼着した複合紙2を加熱済みの対をなすプレス成形金型で加熱収縮させながら容器底部3の周囲に多数の縦ひだ4を有する容器胴部5を一体起立成形後、前記加熱収縮性プラスチックフイルム1を冷却固化することで、前記各縦ひだ4の剛性を強化して容器胴部5の外力による拡開変形を防止できると共に、前記容器内食品生地の加熱加工時における前記各縦ひだ4同士の収縮に伴なう接近作用により、容器胴部5の拡開変形をも安価に防止することができたという優れた工業的効果が有る。
【0018】
請求項3の発明によれば、縦ひだ4の平面的輪郭形状をより一層複雑な形状構造にすることができるという効果を付加できた。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明による紙製ひだ付容器の斜視図
【図2】
本発明による紙製ひだ付容器に用いる複合紙の一例を示す拡大断面図
【図3】
本発明による紙製ひだ付容器の他の例を示す斜視図
【符号の説明】
1 加熱収縮性フイルム
1a 加熱収縮性フイルムと用紙とのバインダー
2 加熱収縮性フイルムを貼着した複合紙
2a 用紙(紙素材)
3 容器底部
4 縦ひだ
5 縦ひだの多数を有する容器胴部
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-05-31 
出願番号 特願2000-369666(P2000-369666)
審決分類 P 1 651・ 537- ZA (B65D)
P 1 651・ 121- ZA (B65D)
P 1 651・ 536- ZA (B65D)
最終処分 取消  
前審関与審査官 田村 嘉章  
特許庁審判長 鈴木 美知子
特許庁審判官 溝渕 良一
山崎 豊
登録日 2003-03-07 
登録番号 特許第3404630号(P3404630)
権利者 伊藤 禎美
発明の名称 紙製ひだ付容器とその製造方法  
代理人 高橋 功一  
代理人 旦 武尚  
代理人 高橋 功一  
代理人 旦 武尚  

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