ポートフォリオを新規に作成して保存 |
|
|
既存のポートフォリオに追加保存 |
|
PDFをダウンロード |
審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A41B |
---|---|
管理番号 | 1105266 |
審判番号 | 不服2002-8420 |
総通号数 | 60 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2000-08-15 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-05-13 |
確定日 | 2004-10-06 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第535451号「多片吸収体を組み立てる方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年10月 9日国際公開、WO97/36564、平成12年 8月15日国内公表、特表2000-510356〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、1997年3月25日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1996年4月3日、米国)を国際出願日とする出願であって、その請求項1乃至10に係る発明は、平成15年9月11日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至10に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1には以下のとおり記載されている。 「(a)トップシートと、トップシートに接続されているバックシートと、トップシートとバックシートの間に配置された吸収性コアと、を備えるシャーシを第1の速度V1で第1のアセンブリーステーションへと供給するステップ; (b)耳ウエブを第1の速度V1よりも小さな第2の速度V2で第2のアセンブリーステーションへと供給するステップ; (c)固定部材基板を第2の速度V2よりも小さな第3の速度V3で第2のアセンブリーステーションへと供給するステップ; (d)固定部材基板を個々の固定部材へと切断するステップ; (e)第2のアセンブリーステーションにおいて、個々の固定部材を耳ウエブに接合するステップ; (f)耳ウエブを個々の固定部材と接合されている個々の耳片へと切断するステップ; (g)第1のアセンブリーステーションにおいて、個々の固定部材と接合されている個々の耳片をシャーシに接合させて多片吸収製品を形成するステップ; を備えており、 第2のアセンブリーステーションにおいて耳ウエブに接合される個々の固定部材は、第1のアセンブリーステーションにおいてシャーシに接合される個々の耳片よりもシャーシの供給の方向において短く、 第1のアセンブリーステーションにおいてシャーシに接合される個々の耳片はシャーシの供給の方向においてシャーシよりも短い、 ことを特徴としている多片吸収製品を組み立てる方法。」 (以下、これにより特定される発明を「本願発明」という。) 2.引用文献 これに対して、当審が平成15年11月19日付けで通知した拒絶理由に引用した特開昭59-76902号公報(以下、「刊行物1」という)には、以下の事項が図面とともに記載されている。 (イ)「透水性トップシートと不透水性バックシートとの間に該両シートよりも幅狭い吸収性コアを介在させ、該コアの両側端から延出する該両シートによって形成されるサイドフラップ部中の長さ方向に伸長状態で伸縮部材を取り付け、かつ一方のウエスト部の両側端から締め付け用帯片を延出させるようにしてある使い捨ておむつの製法において、前記おむつ本体と前記締め付け用帯片とをそれぞれ別個に形成し、該おむつ本体の一方のウエスト部の前記サイドフラップ部に該締め付け用帯片の一側端を重ね合せて一体的に接着することを特徴とする前記おむつの製法」[特許請求の範囲(1)] (ロ)「締め付け用帯片をシート部分と粘着テープ部分とから形成し、該シート部分をおむつ本体のサイドフラップ部に接着しかつ該粘着テープ部分を該シート部分に設ける特許請求の範囲第1項記載の使い捨ておむつの製法」[特許請求の範囲(2)] (ハ)「締め付け用帯片の素材である連続シートに粘着テープ部分を設けておむつ本体の製造ラインにおける連続おむつ本体の搬送速度のl/L(ただし、lは個々のおむつ本体に取り付けるべき締め付け用帯片の縦の長さ、Lは個々のおむつ本体の縦の長さ)の速度で搬送する工程と;前記連続おむつ本体の搬送速度と同じ周面速度で回動するサクションロールと、該ロールと同じ周面速度で回動し該ロールの周面に対向配置されたカッターとを備え、該カッターの1回動ごとに前記連続シートを該サクションロールの周面上において切断して締め付け用帯片に形成するとともに、該帯片を該サクションロールに保持させ該ロールの回動で前記おむつ本体の製造ラインへ搬送する工程と;前記サクションロールの回動搬送で前記帯片の一側端を前記おむつ本体の製造ライン上に搬送される連続おむつ本体のサイドフラップ部に重ね合せ、該重ね合せ部分を該サクションロールの周面に対向配置された超音波溶着手段で一体的に溶着する工程と;からなる特許請求の範囲第1項記載の使い捨ておむつの製法」[特許請求の範囲(3)] (二)「第5図においては、…(中略)…おむつ1本体に締め付け用帯片17を取り付ける方法を実施するための装置の概略が示されている。図中Aは前記おむつ1本体の製造ライン、Bは前記帯片17の製造ラインを示している。」[第3頁右下欄第6〜10行] (ホ)「ラインAにおいては、前記トップシート8、前記バックシート9と同幅に形成されたそれらの素材である連続シート108と連続シート109との間に前記コア10がそれらシートの長さ方向に一定間隔をおいて…(中略)…接着剤で介在固定され、…(中略)…状態の連続おむつ本体101が矢標aの方向へ一定速度で送られる。」[第3頁右下欄第11〜19行] (ヘ)「ラインBにおいては、前記締め付け用帯片17を構成する前記シート部分18と同幅に形成されたその素材である連続シート118a、118bの供給ロール19a、19bと、…(中略)…前記帯片17を構成する前記粘着テープ部分7と同幅に形成されたその素材である連続粘着テープ107の供給ロール22と、ニップロール23と、…(中略)…第1サクションロール24と、…(中略)…第1サクションロール24の周面上に接触対向する第2サクションロール25と、第1サクションロール24に対してフリーの状態で近接対向するカッター26と、第2サクションロール25の周面上に近接対向する第2超音波溶着手段27とがそれぞれ図示のごとく配置されている。」[第4頁左上欄第5〜20行] (ト)「ニップロール23の送り速度は、最終的に形成されるべき個々の前記おむつ1本体に取り付けられる帯片17の長さ(縦)をlとし、該おむつ本体の長さをLとすると、ラインAにおける前記連続おむつ本体101の搬送速度のl/Lに設定されている。また第1サクションロール24の周面速度は、ラインAにおける前記連続おむつ本体101の搬送速度と同じく設定されている。」[第4頁左上欄第20行〜同頁右上欄第7行] (チ)「供給ロール19a、19bから矢標bの方向へ送り出された連続シート118a、118bは、…(中略)…一体的に溶着される。かくして一体化された連続シート118cは、…(中略)…その一側端には、ニップロール23へ到る間に連続粘着テープ107が一定長さに切断されその粘着面で一体的に接着され、この切断、接着を行うための装置は図示されていないが、これは、たとえば、従来一般に使い捨ておむつの粘着テープ取り付け装置として利用されているものが配置される。」[第4頁右上欄第12行〜同頁左下欄第4行] (リ)「かくして一体化された帯片用連続シート117は、ニップロール23を経て第1サクションロール24に導かれる。…(中略)…ニップロール23の送り速度は,ラインAにおける前記連続おむつ本体101の搬送速度のl/Lに、かつ第1サクションロール24の周面速度は、連続おむつ本体101の搬送速度と同じく設定されているから、帯片用連続シート117は、第1サクションロール24の周面上でスリップしながらサクション区域S1で保持され、カッター26で一定長さに切断される。」[第4頁左下欄第4〜14行] (ヌ)第1図及び第4図には、おむつ1本体の後側区域3におけるウエスト部5の両側端に縦方向において個々のおむつ1本体の長さよりも短い締め付け用帯片17が取り付けられ、該帯片17がシート部分18と、該シート部分18より短い粘着テープ部分7よりなることが示されている。 上記の記載事項によれば、刊行物1には、下記の発明が記載されているということができる(以下、「引用発明」という。) 「(A)トップシートとバックシートの素材である連続シート(108、109)が、それらの間に配置された吸収性コア(10)を介在固定してなるおむつ(1)本体を所定の搬送速度で、サクションロール(24、25)、カッター(26)及び超音波溶着手段(27)を備えた、締め付け用帯片(17)を構成するシート部分(18)の素材である連続シート(118c)を切断・接着する装置へ供給するステップ; (B)連続シート(118c)をおむつ(1)本体の搬送速度のl/Lの速度で、連続粘着テープ(107)を切断・接着する装置へ供給するステップ; (C)連続粘着テープ(107)を前記(B)の切断・接着する装置へ供給するステップ; (D)連続粘着テープ(107)を個々の粘着テープ(7)へと切断するステップ; (E)前記(B)の切断・接着する装置において、個々の粘着テープ(7)を連続シート(118c)に接着するステップ; (F)連続シート(118c)をカッター(26)で個々の粘着テープ(7)が接合されている個々の締め付け用帯片(17)へと切断するステップ; (G)個々の粘着テープ(7)と接合されて個々の締め付け用帯片(17)を構成しているシート部分(18)を超音波溶着手段(27)でおむつ(1)本体に接合して、使い捨ておむつを形成するステップ; を備えており、 個々の粘着テープ(7)は、個々の締め付け用帯片(17)のシート部分(18)よりもその長さ方向、すなわち供給方向において短く、 個々の締め付け用帯片のシート部分(18)は、おむつ1本体よりもその長さ方向、すなわち供給方向において短い、 使い捨ておむつの製造方法」 3.対比・判断 本願発明と上記引用発明とを対比する。 引用発明の「使い捨ておむつ」、「おむつ(1)本体」、「締め付け用帯片を構成するシート部分の素材である連続シート(118c)」、「締め付け用帯片を構成するシート部分(18)」、「連続粘着テープ(107)」及び「粘着テープ(7)」は、それぞれ、本願発明の「多片吸収製品」、「シャーシ」、「耳ウエブ」、「耳片」、「固定部材基板」及び「固定部材」に相当し、引用発明における「サクションロール(24、25)、カッター(26)及び超音波溶着手段(27)を備えた、締め付け用帯片を構成するシート部分の素材である連続シート(118c)を切断・接着する装置」及び「連続粘着テープ(107)を切断・接着する装置」は、それぞれ、本願発明の「第1のアセンブリーステーション」及び「第2のアセンブリーステーション」に相当し、引用発明におけるおむつ(1)本体の供給速度を本願発明のように第1の速度V1とし、連続シート(118c)の供給速度を第2の速度V2とすれば、V2は、V1のl/Lであり(lはLより小さいので)、V1より小さいことは明らかである。してみれば、本願発明と引用発明とは、 「(a)トップシートと、トップシートに接続されているバックシートと、トップシートとバックシートの間に配置された吸収性コアと、を備えるシャーシを第1の速度V1で第1のアセンブリーステーションへと供給するステップ; (b)耳ウエブを第1の速度V1よりも小さな第2の速度V2で第2のアセンブリーステーションへと供給するステップ; (c)固定部材基板を第2のアセンブリーステーションへと供給するステップ; (d)固定部材基板を個々の固定部材へと切断するステップ; (e)第2のアセンブリーステーションにおいて、個々の固定部材を耳ウエブに接合するステップ; (f)耳ウエブを個々の固定部材と接合されている個々の耳片へと切断するステップ; (g)第1のアセンブリーステーションにおいて、個々の固定部材と接合されている個々の耳片をシャーシに接合させて多片吸収製品を形成するステップ; を備えており、 第2のアセンブリーステーションにおいて耳ウエブに接合される個々の固定部材は、第1のアセンブリーステーションにおいてシャーシに接合される個々の耳片よりもシャーシの供給の方向において短く、 第1のアセンブリーステーションにおいてシャーシに接合される個々の耳片はシャーシの供給の方向においてシャーシよりも短い、 ことを特徴とする使い捨ておむつの製造方法」 である点で一致しており、本願発明が、「固定部材基板を第2の速度V2よりも小さな第3の速度V3で第2のアセンブリーステーションへと供給する」としているのに対し、引用発明においては、連続シート(118c)に粘着テープ(7)を取り付けるために、前記(B)の切断・接着する装置へ連続粘着テープ(107)を、供給する速度について記載されていない点でのみ相違している。 そこで、相違点について検討すると、刊行物1には、連続粘着テープを切断・接着する装置としては、「従来一般に使い捨ておむつの粘着テープ取り付け装置として利用されているものが配置される」(記載(チ))と記載されているところ、一般に、長さの異なる部品を、連続して供給される長尺部材から切断して組み立てるに際して、長さの長い部品を構成する長尺物の供給経路中に、短い部品を構成する長尺物を、上記の長い部品を構成する長尺物の供給速度より小さい速度で供給し、切断しながら間欠的に上記の長い部品を構成する長尺物上に配置することは、本願出願前周知慣用の技術手段であり、該慣用手段を、引用発明における「切断・接着する装置」に適用して、連続粘着テープ(107)の供給速度を、連続シート(118c)の供給速度、すなわち本願発明でいう第2の速度V2より小さい速度、すなわち本願発明でいう第3の速度V3とすることは当業者が容易になし得る事項である。 なお、上記の慣用手段については、引用発明の前記(A)の切断・接着する装置における連続シート(118c)とおむつ(1)本体の供給速度の関係もこれに相当するほか、使い捨ておしめにファスナーを取り付ける際に、長尺のファスナー材をその供給速度より大きい速度で回転する真空ドラムに供給し、カッターホイールで所定の長さに切断し、上記真空ドラムと同じ速度で移動する、おしめの構成要素である長尺のフィルムに一定の間隔で固定するようにすることが、前記当審で通知した拒絶の理由に引用した特開平1-168901号公報にも図面とともに記載されている。[第7頁右上欄第15行〜同頁右下欄第5行の記載参照] 請求人は、平成16年2月25日付けの意見書において、3つの連続した部材から連続して使い捨ておむつを製造するのに必要な3つの連続した部材間の相対的な供給速度の関係を開示したものが示されていないことをもって、本願発明に、上記特開平1-168901号公報に示されたような手段を適用することはできない旨主張しているが、上記の本願出願前周知の技術的事項から、引用発明における連続粘着テープ(107)と連続シート(118c)の相対的な供給速度の関係V3<V2が容易に推認できる以上、引用発明に明示されたV2<V1の関係とから見て、3者の関係V1>V2>V3も容易に推認できるので、請求人の上記主張は採用できない。 4.むすび 以上のとおりであるから、本願請求項1に係る発明は、上記刊行物1に記載された発明及び本願出願前周知の技術的事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであって、許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-05-10 |
結審通知日 | 2004-05-11 |
審決日 | 2004-05-25 |
出願番号 | 特願平9-535451 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(A41B)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 千葉 成就 |
特許庁審判長 |
鈴木 美知子 |
特許庁審判官 |
粟津 憲一 溝渕 良一 |
発明の名称 | 多片吸収体を組み立てる方法 |
代理人 | 白根 俊郎 |
代理人 | 村松 貞男 |
代理人 | 橋本 良郎 |
代理人 | 風間 鉄也 |
代理人 | 鈴江 武彦 |