• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1105682
審判番号 不服2002-4840  
総通号数 60 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-01-10 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-03-22 
確定日 2004-11-01 
事件の表示 平成7年特許願第150457号「多層プリント配線板」拒絶査定不服審判事件〔平成9年1月10日出願公開、特開平9-8465〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成7年6月16日の出願であって、原審において、2回の拒絶理由が通知され、これに対して、請求人(出願人)より平成12年1月31日付け及び平成13年1月22日付けでそれぞれ意見書の提出とともに手続補正がされたが、平成14年2月7日付けで拒絶査定がなされた。
この拒絶査定を不服として、平成14年3月22日に本件審判請求がなされるとともに、当該請求の日から30日以内の平成14年4月22日付けで手続補正がなされたものである。

【2】平成14年4月22日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成14年4月22日付けの手続補正を却下する。

[補正却下の決定の理由]
1.手続補正後の本願発明
本件手続補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「基板上に樹脂絶縁層と導体層とを積層して、前記導体層はバイアホールを介して接続されてなる多層プリント配線板において、
前記樹脂絶縁層上には粗化層が形成されるとともに、前記導体層は前記粗化層上にめっきにより形成され、そのめっき形成された導体層は、少なくとも信号層と電源層とで構成され、さらに前記電源層の導体パターンを格子状とし、その格子状の導体パターン間に存在する樹脂絶縁層は、それに隣接する上層の樹脂絶縁層との間で、樹脂-樹脂間接合されていることを特徴とする多層プリント配線板。」(以下、「本願補正発明」という。)
と補正された。
上記補正は、請求項1に係る発明の構成を更に限定するものであって、平成6年改正前の特許法第17条の2第3項第2号に規定する「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
そこで、上記の本願補正発明が、平成6年改正前の特許法第17条の2第4項において読み替えて準用する同法第126条第3項に規定する要件(独立特許要件)に適合するかについて、以下で検討する。

2.引用例とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本件特許出願前に日本国内において頒布された刊行物である、実願平3-68994号(実願平5-21471号)のCD-ROM(以下、「引用例」という。)には、「集積回路用パッケージ」に関して、図1とともに、第5頁第16行〜第6頁第14行に、
「集積回路用パッケージ1は、絶縁基板2と、この絶縁基板2の表面に形成されたポリイミド配線基板3とを備え、このポリイミド配線基板3の表面に集積回路(図示しない)が搭載されるものである。
……
ポリイミド配線基板3は、本考案の多層配線層で、薄い低誘電率のポリイミド樹脂による絶縁層3aを、複数積層して形成したものである。ポリイミド配線基板3の各絶縁層3aの表面には、信号の伝達を行う信号配線層7や、格子状に形成された電源層8a、8b(面状電極層)が形成されている。
また、ポリイミド配線基板3には、一端が終端抵抗5に接続され、他端がポリイミド配線基板3の表面まで延ばされた導体柱6が形成されている。同様に、終端抵抗5と接続される信号配線層7も、ポリイミド配線基板3の表面まで延ばされた導体柱6に電気的に接続されている。」
と記載されている。

上記の「信号配線層7」や「電源層8a、8b」は「導体層」といえるので、上記記載事項及び図1の記載を総合すると、引用例には、
「絶縁基板2上にポリイミド樹脂による絶縁層3aと導体層とを積層して、前記導体層は導体柱6を介して接続されてなる集積回路用パッケージ1において、
前記導体層は、少なくとも信号配線層7と電源層8a、8bとで構成され、さらに前記電源層8a、8bの導体パターンを格子状とした集積回路用パッケージ1」
の発明(以下、「引用例記載の発明」という。)が記載されていると認められる。

(なお、絶縁層から発生するガスによる膨れを防止することは周知の課題であって、当該周知の課題を解決するために、電源層の導体パターンをメッシュ状(格子状)とすることは、従来から一般的に行われている事項である(例えば、特開平7-74475号公報の段落【0004】、特開昭63-70442号公報の第3頁左下欄第1〜8行、実願平2-6202号(実開平3-97973号)のマイクロフィルムの明細書第3頁第3〜5行、参照)。
そして、引用例記載の発明においても、絶縁層3aとしてポリイミド樹脂を用いていることから、上記周知の課題を解決するために、「電源層8a、8bの導体パターンを格子状とした」とみることができる。
また、本願明細書に記載の、残留溶剤の蒸発による膨れを防止するという課題は、上記周知の課題と同様あるいは類似のものといえる。)

3.対比・判断
本願補正発明と引用例記載の発明とを対比すると、引用例記載の発明の「絶縁基板2」、「ポリイミド樹脂による絶縁層3a」、「導体柱6」、「集積回路用パッケージ1」、「信号配線層7」、「電源層8a、8b」は、それぞれ、本願補正発明の「基板」、「樹脂絶縁層」、「バイアホール」、「多層プリント配線板」、「信号層」、「電源層」に相当するので、本願補正発明と引用例記載の発明とは、
「基板上に樹脂絶縁層と導体層とを積層して、前記導体層はバイアホールを介して接続されてなる多層プリント配線板において、
前記導体層は、少なくとも信号層と電源層とで構成され、さらに前記電源層の導体パターンを格子状とした多層プリント配線板」
である点で一致し、次の2点(相違点1及び2)で相違している。

《相違点1》
本願補正発明では、「前記樹脂絶縁層上には粗化層が形成されるとともに、前記導体層は前記粗化層上にめっきにより形成され」ているのに対して、引用例記載の発明では、そのような「粗化層」の形成や「めっき」による形成についての言及がない点。
《相違点2》
本願補正発明では、「その格子状の導体パターン間に存在する樹脂絶縁層は、それに隣接する上層の樹脂絶縁層との間で、樹脂-樹脂間接合されている」のに対して、引用例記載の発明では、格子状の導体パターン間に存在する樹脂絶縁層(ポリイミド樹脂による絶縁層3a)とそれに隣接する上層の樹脂絶縁層(ポリイミド樹脂による絶縁層3a)との接合関係についての言及がない点。

そこで、上記各相違点について以下で検討する。
《相違点1》について
樹脂絶縁層上に粗化層を形成し、当該粗化層上にめっきにより導体層を形成することは周知の技術であって(例えば、原審の拒絶査定時に引用された特開平4-372193号公報の段落【0002】、同じく特開平5-41575号公報の段落【0002】及び【0003】、参照)、上記相違点1でいう本願補正発明の構成事項は、上記周知の技術を適用することによって、当業者であれば容易に想到できた事項である。
《相違点2》について
引用例記載の発明においても、ポリイミド配線基板3はポリイミド樹脂による絶縁層3aを複数積層して一体のものに形成したものであるので、格子状の導体パターン間に存在する樹脂絶縁層(ポリイミド樹脂による絶縁層3a)とそれに隣接する上層の樹脂絶縁層(ポリイミド樹脂による絶縁層3a)とは樹脂-樹脂間接合されているといえるし、また、上記相違点1で示した周知の技術を適用したものにおいては、樹脂-樹脂間の凹凸嵌合状態で接合されるといえるので、上記相違点2でいう本願補正発明の構成事項は、当業者にとって自明な事項を限定したものにすぎない。

また、本願補正発明が奏する作用効果も、引用例記載の発明及び周知の技術から予測される程度以上のものでもない。

したがって、本願補正発明は、引用例記載の発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願補正発明は、その特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるので、平成6年改正前の特許法第17条の2第4項において読み替えて準用する同法第126条第3項の規定に違反するものである。
したがって、本件手続補正は、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

【3】本願発明について
1.本願発明
平成14年4月22日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし3に係る発明は、平成12年1月31日付け及び平成13年1月22日付けの各手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載されたとおりのものと認められるところ、本願の請求項1に係る発明は次のとおりのものである。
「基板上に樹脂絶縁層と導体層とを積層して、前記導体層はバイアホールを介して接続されてなる多層プリント配線板において、
前記樹脂絶縁層上には粗化層が形成されるとともに、前記導体層は前記粗化層上にめっきにより形成され、そのめっき形成された導体層は、少なくとも信号層と電源層とで構成され、さらに前記電源層の導体パターンを格子状としたことを特徴とする多層プリント配線板。」(以下、「本願発明」という。)

2.引用例とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例とその記載事項は、上記【2】2.に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記【2】で検討した本願補正発明から、その構成事項の一部を削除したものに相当する。
そうすると、本願発明の構成を全て含み、更に構成を限定している本願補正発明が、上記【2】3.に記載したとおり、引用例記載の発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例記載の発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

【4】むすび
したがって、本願発明(請求項1に係る発明)は、引用例記載の発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、請求項2及び3に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-08-25 
結審通知日 2004-08-31 
審決日 2004-09-13 
出願番号 特願平7-150457
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H05K)
P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中川 隆司  
特許庁審判長 八日市谷 正朗
特許庁審判官 鈴木 久雄
田々井 正吾
発明の名称 多層プリント配線板  
代理人 小川 順三  
代理人 中村 盛夫  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ