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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C22C
管理番号 1105778
審判番号 不服2003-14579  
総通号数 60 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-06-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-07-30 
確定日 2004-11-05 
事件の表示 平成 6年特許願第331565号「溶接性に優れたプラスチック成形金型用鋼」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 6月25日出願公開、特開平 8-165542〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成6年12月8日の出願であって、平成15年6月24日付けで拒絶査定がなされ、平成15年7月30日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

2.本願発明
本願請求項1乃至4に係る発明は、本願明細書の特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載された事項により特定されるとおりの「溶接性に優れたプラスチック成形金型用鋼」であるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という)は、次のとおりである。
「【請求項1】重量%で
C :0.10〜0.25%
Si:0.25超〜0.35%
Mn:1.20〜2.20%
P :≦0.020%
S :0.01〜0.05%
Cr:1.60〜3.00%
Mo:0.03〜2.00%
V :0.01〜0.40%
B :≦0.002%
残部実質的にFeから成り且つ下記式
BH値=326+847.3(C%)+18.3(Si%)-8.6(Mn%)-12.5(Cr%)≦460
を満足する組成を有する溶接性に優れたプラスチック成形金型用鋼。」

3.原査定の理由の概要
原査定の理由の概要は、本願請求項1乃至4に係る発明は、本願出願前頒布された刊行物1(特開平3-177536号公報)に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。

4.引用刊行物の記載事項
原査定で引用された刊行物1(特開平3-177536号公報)には、次の事項が記載されている。
(1)「(1)C :0.1〜0.3%、Mn:0.5〜3.5%、Cr:1.0〜3.0%、Mo:0.03〜2.0%、V :0.01〜1.0%およびS:0.01〜0.10%を含有し、Si:0.25%以下、P:0.02%以下、B :0.002%以下であって残部が実質的にFeからなり、かつ下式
BH=326.0+847.3(C%)+18.3(Si%)-8.6(Mn%)-12.5(Cr%)≦460
をみたす合金組成を有する、予熱および後熱を必要とせず、溶接性にすぐれたプラスチック成形金型用鋼。」(特許請求の範囲の請求項1)
(2)「本発明は、プラスチック成形金型の製作に使用するプレハードン鋼の改良に関する。」(第2頁左下欄)
(3)引用刊行物1の第7頁第5表には、具体的な合金組成例「No.11」として「重量%、残部Fe、C:0.14、Si:0.17、Mn:1.62、Cr:2.03、Mo:0.48、V:0.20、P:0.012、S:0.025、B:0.0005、Ni:-、Ca、Pb、Zr、Te:-、BH:408」と記載されている。

5.当審の判断
引用刊行物1の上記(1)には、「C :0.1〜0.3%、Mn:0.5〜3.5%、Cr:1.0〜3.0%、Mo:0.03〜2.0%、V :0.01〜1.0%およびS:0.01〜0.10%を含有し、Si:0.25%以下、P:0.02%以下、B :0.002%以下であって残部が実質的にFeからなり、かつ下式
BH=326.0+847.3(C%)+18.3(Si%)-8.6(Mn%)-12.5(Cr%)≦460
をみたす合金組成を有する、予熱および後熱を必要とせず、溶接性にすぐれたプラスチック成形金型用鋼」という発明(以下、「引用発明1」という)が記載され、そして、この引用発明1の具体例である「No.11」の合金組成と本願発明1とを対比すると、No.11の合金組成は、本願発明1とその「Si含有量」の点で相違するのみであるから、本願発明1と引用発明1とは、「重量%で、C :0.10〜0.25%、Si含有、Mn:1.20〜2.20%、P :≦0.020%、S :0.01〜0.05%、Cr:1.60〜3.00%、Mo:0.03〜2.00%、V :0.01〜0.40%、B :≦0.002%、残部実質的にFeから成り且つ下記式
BH値=326+847.3(C%)+18.3(Si%)-8.6(Mn%)-12.5(Cr%)≦460
を満足する組成を有する溶接性に優れたプラスチック成形金型用鋼」という点で一致し、次の点で相違していると云える。
相違点:本願発明1は、「Si:0.25超〜0.35%」であるのに対し、引用発明1は、「Si:0.25%以下」である点
次に、この相違点について検討するに、本願発明1のSiの限定理由は、本願明細書の段落【0014】の「Siは脱酸作用,耐酸化性,焼入性,基地硬さを高める点で有効な成分である。但し0.25%以下では原料配合面で経済性が悪いため0.25%を超える量とする。一方0.35%より多くなると靱性,溶接性が低下するため上限を0.35%とする。」という記載によれば、脱酸作用や焼入性等の改善のためであるが、本願発明1のようなプラスチック成形金型用プレハードン鋼において、そのSiを脱酸作用や焼入性等の改善の観点から、0.25%を超えて添加する程度のことも、例えば特開平2-15117号公報、特開昭61-163248号公報、特開昭60-204869号公報及び特開昭52-65557号公報にみられるように周知の事項であるから、引用発明1の上限0.25%より多くSiを含有させる程度のことは当業者が周知事項に基づいて容易に想到することができたと云うべきである。
なお、請求人は、審判請求書において、Siの0.25%を超えた含有は、スクラップの使用を可能とするから、経済的に有利であると主張している。 しかしながら、本願発明1は、「プラスチック成形金型用鋼」という合金の発明に係るものであるから、その発明の新規性進歩性等は、基本的には合金の成分組成、新たな性質や用途等特許請求の範囲に記載された本願発明1の構成によって判断されるべきものであって、その合金を製造する原料の種類等に影響されるものではない。そして、本願発明1のSiの含有量の上記相違点については、前示のとおりであるから、請求人の上記主張は、採用することができない。

6.むすび
したがって、本願発明1は、引用刊行物1に記載された発明と周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶されるべきである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-08-26 
結審通知日 2004-08-31 
審決日 2004-09-13 
出願番号 特願平6-331565
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C22C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 朝幸  
特許庁審判長 沼沢 幸雄
特許庁審判官 綿谷 晶廣
原 賢一
発明の名称 溶接性に優れたプラスチック成形金型用鋼  
代理人 吉田 和夫  

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