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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B60J
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B60J
管理番号 1107149
審判番号 不服2003-21641  
総通号数 61 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2000-03-07 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-11-06 
確定日 2004-11-12 
事件の表示 平成10年特許願第245313号「車両用合成樹脂製ドアアウタパネル」拒絶査定不服審判事件〔平成12年3月7日出願公開、特開2000-71772〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成10年8月31日の出願であって、平成15年9月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成15年11月6日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成15年12月8日付けで手続補正がなされたものである。

【2】平成15年12月8日付けの手続補正についての補正却下の決定

[補正却下の決定の結論]
平成15年12月8日付けの手続補正を却下する。

[理 由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「ガスアシスト射出成形法により形成され、内面側にドアフレーム(F)が配設される車両用ドアアウタパネル(P)であって、
パネル本体(1)と、そのパネル本体(1)の内面に一体に設けられて該パネル本体(1)との間で閉断面を形成する補強用中空突条(8)とを有しており、
その補強用中空突条(8)は、車体側方からドアアウタパネル(P)に作用した衝突荷重を該中空突条(8)から車体フレームのサイドシル(9)を経て車体フレームに伝達し得るように、該サイドシル(9)に対向して車体前後方向に延びていると共に、その中空突条(8)の鉛直な側壁(23)の外面又は壁中に、該中空突条(8)の中空部に臨んでいない取付部(111 〜113)が設けられ、
該取付部(111 〜113)に前記ドアフレーム(F)が取付けられることを特徴とする、車両用合成樹脂製ドアアウタパネル。」
と補正された。

上記補正は、新規事項を追加するものではなく、特許法17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成15年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-104952号公報(以下、「引用例」という。)には、次の技術事項が記載されている。
(イ)「この発明は、自動車用ドアなどの車両用開閉体の組立て構造に関し、少なくともアウタパネルが樹脂製である車両用開閉体を組立てるのに用いられる構造に関するものである。」(段落番号【0001】)
(ロ)「この実施例における車両用開閉体は、自動車用ドア(図4参照)であって、合成樹脂製のアウタパネルと金属製のインナパネルを備えている。」(段落番号【0008】)
(ハ)「図1〜図3に示すアウタパネル1は、その裏面に、両側および下側の周縁部に沿って連続した突条2が一体成形してあって、この突条2の内側に連続した中空部3を有している。また、前記突条2のインナパネル側の面には、該突条2の長手方向に所定の間隔で複数のボルト取付孔4が形成してある。このボルト取付孔4は、四角形頭部5aを有するボルト5を取付けるためのものであって、前記頭部5aが挿通し得る矩形部4aと、前記ボルト5のねじ部5bのみが挿通し得る切欠部4bを有している。」(段落番号【0009】)
(ニ)「前記中空部3を有するアウタパネル1は、例えばガスインジェクションモールディング法により成形される。つまり、当該アウタパネル1の成形型内に熱可塑性樹脂を射出したところで、成形型内のノズルから前記突条2の端面部分に不活性ガスを加圧注入する。このとき、前記アウタパネル1は、本体部分に比べて突条2の部分の肉厚が大であることから、外側に比べて突条2の中心部の樹脂温度が高く、樹脂の流動抵抗が小さい状態になっている。したがって、先述の不活性ガスが突条2の中心に沿って流入し、連続した中空部3が得られることとなる。」(段落番号【0010】)

ところで、図3の記載事項を参酌すると共に、記載事項(ハ)によれば、“突条2”の一部分である水平部分は、少なくとも、ドアの下端近傍において車体の前後方向に延びていることが認められるから、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「ガスインジェクションモールディング法により成形され、内面側に金属製のインナパネル6が配設される自動車用ドアAのアウタパネル1であって、
パネル本体と、そのパネル本体の内面に一体に設けられて該パネル本体との間で閉断面を形成する中空部3を有する突条2とを有しており、
その中空部3を有する突条2は、ドアの下端近傍において車体前後方向に延びていると共に、ボルト5が設けられ、該ボルト5に前記インナパネル6が取付けられる自動車用の合成樹脂製ドアアウタパネル。」

3.対比
本願補正発明と引用発明とを対比するに、引用発明における「インナパネル」は、金属製であることからみて、本願補正発明の「ドアフレーム」に相当するものと認められ、また、引用発明の「ガスインジェクションモールディング法」、「自動車用ドアのアウタパネル1」、「中空部3を有する突条2」、「ボルト5」は、それぞれ、本願補正発明の「ガスアシスト射出成形法」、「車両用ドアアウタパネル」、「補強用中空突条」、「取付部」に相当するから、
両者には、次の一致点、相違点が認められる。

<一致点>
「ガスアシスト射出成形法により形成され、内面側にドアフレームが配設される車両用ドアアウタパネルであって、
パネル本体と、そのパネル本体の内面に一体に設けられて該パネル本体との間で閉断面を形成する補強用中空突条とを有しており、
その補強用中空突条は、車体前後方向に延びていると共に、取付部が設けられ、該取付部に前記ドアフレームが取付けられる車両用合成樹脂製ドアアウタパネル。」

<相違点>
補強用中空突条に関し、本願補正発明は、車体側方からドアアウタパネルに作用した衝突荷重を該中空突条から車体フレームのサイドシルを経て車体フレームに伝達し得るように、該サイドシルに対向して車体前後方向に延びていると共に、その中空突条の鉛直な側壁の外面又は壁中に、該中空突条の中空部に臨んでいない取付部が設けられるのに対し、引用発明では、車体前後方向に延びていると共に、取付部が設けられてはいるものの、それ以上についての言及はなされていない点。

4.当審の判断
上記<相違点>について、以下に検討する。
引用発明の、中空部3を有する突条2(補強用中空突条)の水平部分が、ドアの下端近傍において車体前後方向に位置するように配置されている一方、車体フレームのサイドシルは、自動車用ドアの下端側面に臨接していることが一般的である(参考例 「図解自動車用語五か国語辞典」p205〜p207、1992年11月25日株式会社アイピーシー発行)から、引用発明の突条2も、サイドシルに対向して車体前後方向に延びていることが認められる。
そうであれば、この中空部3を有する突条2においても、車体側方からドアアウタパネルに作用した衝突荷重を中空部3を有する突条2から車体フレームのサイドシルを経て車体フレームに伝達し得ることが明らかであるし、しかも、壁面に、中空部に臨んでいないように取付部を設けること自体は、従来周知の技術事項であって(参考例 特開平7-117572号公報の図4に記載されている技術事項)、取付部の設置箇所に係る点について格別のものが認められないから、この相違点でいう本願補正発明のように構成することに格別の創意を見出すことができない。

そして、本願補正発明により得られる効果も、前記した従来周知の技術事項を考慮に入れれば、引用例に記載された発明から、当業者であれば予測できる程度のものであって、格別なものとはいえない。

したがって、本願補正発明は、従来周知の技術事項を考慮することにより、引用例に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

【3】本願発明について
平成15年12月8日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の各請求項に係る発明は、出願当初の明細書の特許請求の範囲の請求項1〜4に記載されたものであるところ、その請求項1に係る発明は、次のとおりのものと認める。
「【請求項1】 ガスアシスト射出成形法により形成された車両用ドアアウタパネル(P)であって、パネル本体(1)と、そのパネル本体(1)の内面に設けられ、且つ車体フレームのサイドシル(9)に対向して車体前後方向に延びる補強用中空突条(8)とを有することを特徴とする車両用合成樹脂製ドアアウタパネル。」

1.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記【2】2.に記載したとおりである。

2.対比・判断
本願の請求項1に係る発明は、前記【2】で検討した本願補正発明から一部の構成を省いたものである。
そうすると、本願の請求項1に係る発明の構成要件を全て含み、さらに、他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「【2】4.」に記載したとおり、従来周知の技術事項を考慮することにより、引用例に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願の請求項1に係る発明も、同様の理由により、当業者が容易に発明をすることができたものである。

3.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の請求項2〜4に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-09-14 
結審通知日 2004-09-15 
審決日 2004-09-28 
出願番号 特願平10-245313
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B60J)
P 1 8・ 575- Z (B60J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 島田 信一  
特許庁審判長 八日市谷 正朗
特許庁審判官 田々井 正吾
鈴木 久雄
発明の名称 車両用合成樹脂製ドアアウタパネル  
代理人 落合 健  
代理人 仁木 一明  

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