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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 (159条1項、163条1項、174条1項で準用) 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1107295
審判番号 不服2001-17175  
総通号数 61 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-08-21 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-09-27 
確定日 2004-11-15 
事件の表示 平成 9年特許願第 23751号「樹脂充填剤および多層プリント配線板」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 8月21日出願公開、特開平10-224034〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本特許出願は、平成9年2月6日の出願であって、平成13年8月21日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、これに対して、平成13年9月27日付けで審判請求がされるとともに、平成13年10月25日付けで手続補正(以下、本願補正という。)がなされたものである。

第2 本願補正についての補正却下の決定
1.補正却下の決定の結論
平成13年10月25日付けの手続補正を却下する。

2.理由
上記手続補正は、平成14年改正前の特許法第17条の2第1項第3号の規定に基づいたものであり、下記(1) の補正前の特許請求の範囲の請求項1〜2が、下記(2) の補正後の特許請求の範囲の請求項1に補正されている。

(1)補正前の特許請求の範囲
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 配線基板の表面に生じる凹部あるいは該基板に設けたスルーホールに充填される樹脂充填剤であって、その添加成分として、シラン系カップリング剤でコーティングされた最大粒子の粒径が15μm以下の無機粒子を含むことを特徴とする樹脂充填剤。
【請求項2】 配線基板の表面に生じる凹部あるいは該基板に設けたスルーホールに樹脂充填剤を充填し、硬化した後、その配線基板上に層間樹脂絶縁剤と導体回路を交互に積層してなる多層プリント配線板において、
前記樹脂充填剤は、その添加成分としてシラン系カップリング剤でコーティングされた最大粒子の粒径が15μm以下の無機粒子を含むことを特徴とする多層プリント配線板。」

(2)補正後の特許請求の範囲
「【特許請求の範囲】
【請求項1】 基板上に設けた内層の導体回路間に生じる凹部および該基板に設けたスルーホールに樹脂充填剤を充填し、硬化した後、その基板上に層間樹脂絶縁剤と他の導体回路とを交互に積層し、導体回路同士がバイアホールによって電気的に接続されてなる多層プリント配線板において、
前記樹脂充填剤は、樹脂成分、硬化剤および添加成分とからなり、前記添加成分としてシラン系カップリング剤でコーティングされた平均粒子径が0.1〜5.0μmである無機粒子を含み、さらに、硬化された樹脂充填剤の表層部が、前記内層の導体回路の表面と同一平面となるように研磨・平滑化され、その平滑面上に層間樹脂絶縁層が形成されていることを特徴とする多層プリント配線板。」

審判請求書によれば、本願補正のうち、特許請求の範囲における補正の骨子は以下のとおりであるものと認める。

(3)審判請求書の「特許請求の範囲」における補正の骨子
ア.「樹脂充填剤」に係る請求項1を削除する。
イ.「多層プリント配線板」に係る請求項2を、請求項1(単一請求項)とした。
ウ.新たな請求項1において、
(ア)多層プリント配線板の前提条件として、「導体回路同士がバイアホールを介して電気的接続される」構造を明確化した。
(イ)「樹脂充填剤」に含まれる「無機粒子の平均粒径を0.1〜5.0μm」に限定した。
(ウ)「硬化された樹脂充填剤の表層部が、内層の導体回路の表面と同一平面となるように研磨・平滑化されている」構造を追加した。

しかしながら、上記(イ)に係る、補正前の請求項2の「最大粒子の粒径が15μm以下の無機粒子」を、補正後の請求項1の「平均粒子径が0.1〜5.0μmである無機粒子」とすること、上記(ウ)に係る、補正前の請求項2で特定されていない「樹脂充填剤の表層部」に関して、補正後の請求項1の「硬化された樹脂充填剤の表層部が、前記内層の導体回路の表面と同一平面となるように研磨・平滑化され」ている構造を追加することは、明らかに、補正前の請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものではなく、特許法第17条の2第4項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮( 第36条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)に該当しないし、第17条の2第4項の他の各号に掲げる事項にも該当しない。
そして、これは、たとえ、この特許請求の範囲の補正が、補正前の請求項2を削除し、補正前の請求項1を補正後の請求項1とした補正であるとみても、同様であることはいうまでもないことである。
以上により、本願補正は、特許法第17条の2第4項第1号〜第4号に掲げる事項でないものを目的とするものであると認められるから、特許法第159条において読み替えて準用する特許法第53条の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明
第2のとおり、平成13年10月25日付けで手続補正が却下されたから、本願の請求項1及び請求項2の発明(以下、このうち、請求項1の発明を「本願発明」という。)は、平成12年10月4日付け手続補正書でされた特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載されたとおりのものと認められる。
そして、その内容は、前記第2の2.(1)に記載されたとおりである。

第4 引用例
これに対して、原査定の拒絶理由に引用された
刊行物1:特開平7-202433号公報
刊行物2:特開平8-302161号公報
には、以下の事項が記載されている。

1.刊行物1の記載事項
(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】 樹脂絶縁層によって電気的に絶縁された複数の導体回路を設けてなる多層プリント配線板の製造方法において、
スルーホールまたはバイアホールを有する内層回路板上に、無溶剤感光性樹脂組成物からなる液状充填剤を供給して付着させ、その上層にフィルム状の接着剤を重ね合わせた後、減圧下で押圧してラミネートすることにより、充填剤層と接着剤層との複合層からなる樹脂絶縁層を形成することを特徴とする多層プリント配線板の製造方法。
【請求項2】 上記無溶剤感光性樹脂組成物は、感光性樹脂と熱硬化性樹脂の混合物を用いることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】 上記無溶剤感光性樹脂組成物は、無機充填材を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の製造方法。
・・・」
(2)「【0002】
【従来の技術】多層プリント配線板は、交互に積層した導体回路と樹脂絶縁層を有し、その内・外層の回路を、スルーホールまたはバイアホールによって接続,導通させてなるものである。したがって、この多層プリント配線板は、一般に、スルーホール、バイアホールまたは回路間の段差を起因とするミクロな凹凸が不可避に生じ、いわゆる平滑性に乏しいという問題点があった。」
(3)「【0006】
【課題を解決するための手段】発明者は、上記目的の実現に向け鋭意検討を行った結果、以下の内容を要旨構成とする本発明に想到した。すなわち、本発明の多層プリント配線板の製造方法は、樹脂絶縁層によって電気的に絶縁された複数の導体回路を設けてなる多層プリント配線板の製造方法において、スルーホールまたはバイアホールを有する内層回路板上に、無溶剤感光性樹脂組成物からなる液状充填剤を供給して付着させ、その上層にフィルム状の接着剤を重ね合わせた後、減圧下で押圧してラミネートすることにより、充填剤層と接着剤層との複合層からなる樹脂絶縁層を形成することを特徴とする多層プリント配線板の製造方法である。」
(4)「【0007】そして、この発明はさらに、下記の方法によることが、より好ましい実施形態となる。すなわち、上記無溶剤感光性樹脂組成物は、感光性樹脂と熱硬化性樹脂の混合物を用いることが望ましく、また、無機充填材を含むものを用いることが望ましい。・・・」
(5)「【0011】すなわち、本発明によれば、
・・・液状充填剤を用いることにより、内層回路に設けられたスルーホール,バイアホールまたは導体回路間段差によって生じる隙間(窪み)をそれぞれ平滑に埋めることができると同時に、真空ラミネーターなどを用いることにより、樹脂絶縁層を連続形成できるので、平滑性と生産性とに優れる多層プリント配線板を安価に製造できる。」
(6)「【0014】本発明において、上記液状充填剤として、無溶剤感光性樹脂組成物を用いる理由は、溶剤を含む組成物では、低圧状態にすると、溶剤が揮発してしまい粘度が変化してしまうからである。上記感光性樹脂組成物は、感光性樹脂と熱硬化性樹脂の混合物であることが望ましい。この理由は、感光性樹脂単独の組成物を用いると、スルーホールまたはバイアホール内部に充填された樹脂に露光光が届かず、光硬化が不十分となるからである。また、この感光性樹脂組成物は、シリカ,アルミナ,ジルコニア,タルクなどの無機充填剤を含むことが望ましい。硬化収縮が低減されるからである。」

したがって、刊行物1には、「多層プリント配線板の表面のスルーホール、バイアホールまたは導体回路間段差によって生じる窪みを平滑に埋めるとともに該配線板に設けたスルーホールに充填される無溶剤感光性樹脂組成物からなる液状充填剤であって、その添加剤として無機充填剤を含む液状充填剤」が、記載されている。

2.刊行物2の記載事項
(7)「【特許請求の範囲】
【請求項1】a.数平均分子量Mnが、1200以下のエポキシ樹脂を30〜100部と、
b.カルボン酸含有アクリルゴム、またはカルボン酸含有アクリロニトリルブタジエンゴムを30〜70部と、
c.エポキシ樹脂の硬化剤と、
d.硬化促進剤と
からなることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】エポキシ樹脂の硬化剤として、ノボラック型フェノール樹脂あるいはノボラック型クレゾール樹脂を、30〜100部含有することを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
・・・
【請求項4】無機フィラーを30〜200部と、シランカップリング剤を0.5〜5部を含有することを特徴とする請求項1〜3のうちいずれかに記載の樹脂組成物。
・・・」
(8)「【0011】本発明は、作業環境に優れ、かつ経済的に優れた多層配線板を製造するための、樹脂組成物・・・を提供することを目的とする。」
(9)「【0014】本発明に用いる、数平均分子量(Mn)が1200以下のエポキシ樹脂としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、環式脂肪族エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂等があり、さらにこれらに臭素等のハロゲンを付加したエポキシ樹脂を用いることもできる。・・・」
(10)「【0026】無機フィラーとしては、放熱性を高めるためには、アルミナ粉末、窒化アルミニウム粉末、窒化ほう素粉末、結晶性シリカ、非晶性シリカなどを用い、溶融粘度の調整やチクロトロピック性を付与するためには、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、アルミナ、結晶性シリカ、非晶性シリカ、珪酸ジルコニウム、タルク、硫酸バリウムなどを用い、難燃性を付与するためには、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムなどを用いることができる。・・・」
(11)「【0027】・・・このシランカップリング剤は、前記無機フィラーの界面を被覆するに十分な量を添加することが好ましく、・・・」
(12)「【0035】
【実施例】
実施例1
工程1;35μmの銅箔を両面に貼り合わせた銅張りガラス布エポキシ樹脂積層板・・・を用い、不要な銅箔を選択的にエッチング除去して、内層回路板を作成する。
工程2;銅箔上に、乾燥後の厚さが80μmとなるように、以下の組成の樹脂組成物を塗布し、90℃で10分間乾燥して、樹脂付き銅箔を作成する。
・・・
工程3;工程2で作成した樹脂付き銅箔を、工程1で作成した内層回路板の表面に、樹脂側が内層回路板側となるように重ねるようにラミネートする。・・・
工程4;以下の組成の溶液を用いて、以下の条件でケミカルエッチングを行ない、バイアホールを形成する。
・・・
工程5;170℃で30分間、穴をあけた積層物を乾燥し、樹脂組成物を硬化させる。
工程6;めっき液・・・に、70℃で60分間浸漬し、さらに硫酸銅電解めっきを行なって、最外層の銅箔、バイアホールの内壁、ケミカルエッチングによって露出した内層回路の導体上に、厚さ20μmの導体層を形成する。
工程7;最外層の回路を形成するために、回路となる箇所と、バイアホールの部分にエッチングレジストを形成し、エッチングレジストから露出した銅をエッチング除去する。」

第5 対比
刊行物1記載の発明の「多層プリント配線板」、「窪み」、「無溶剤感光性樹脂組成物からなる液状充填剤」、「無機充填剤」は、それぞれ、本願発明の「配線基板」、「凹部」、「樹脂充填剤」、「無機粒子」に相当する
したがって、本願発明と刊行物1記載の発明は、次の点で、一致・相違する。
1.一致点
「配線基板の表面に生じる凹部あるいは該基板に設けたスルーホールに充填される樹脂充填剤であって、その添加成分として、無機粒子を含む樹脂充填剤。」
2.相違点
本願発明の無機粒子が、シラン系カップリング剤でコーティングされており、その最大粒子の粒径が15μm以下であるのに対して、刊行物1記載の発明においては、対応する無機充填剤について、かかる特定がされていない点。

第6 当審の判断
上記第5の2.相違点について検討すると、刊行物2には、多層配線板を製造するための樹脂組成物が無機フィラーを含有することが記載されており、さらに、この無機フィラーがシランカップリングによって被覆されていることが示されている。
そして、刊行物2に記載された無機フィラーのシランカップリングに関する事項を、刊行物1の液状充填剤の添加剤である無機充填剤に適用して、本願発明の「無機粒子が、シラン系カップリング剤でコーティングされて」いる構成とすることは、当業者であれば、容易に想到しうることである。
また、無機粒子の最大粒子の粒径が15μm以下であることは、明細書の【0044】の記載からは、内層銅パターンの厚み以下にすることに、技術的意義があるものと推認しても、特許請求の範囲の記載では、内層銅パターンについて特定されていないから、本願発明においては無意味なものと認められ、また、粒径の設定も樹脂充填剤の特性を改善するために、当業者が適宜好適化しうるものである。[15μm以下という数値自体を選択することについても、例えば、特開平5-239377号公報(特に、【0001】、【0009】、及び【0013】等を参照。)に、熱可塑性樹脂の特性を改善するために、シランカップリング剤で表面処理した無機充填剤の最大粒子径を8μm以下とすることが、記載されており、格別の技術的意義は認められない。]

第7 むすび
以上のとおり、本特許出願の請求項1に係る発明は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項について検討するまでもなく、本特許出願についての拒絶をすべき旨の査定を取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-09-08 
結審通知日 2004-09-14 
審決日 2004-09-28 
出願番号 特願平9-23751
審決分類 P 1 8・ 572- Z (H05K)
P 1 8・ 121- Z (H05K)
P 1 8・ 56- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 豊島 ひろみ  
特許庁審判長 八日市谷 正朗
特許庁審判官 田々井 正吾
鈴木 久雄
発明の名称 樹脂充填剤および多層プリント配線板  
代理人 中村 盛夫  
代理人 小川 順三  

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