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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06K |
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管理番号 | 1107544 |
審判番号 | 不服2002-1099 |
総通号数 | 61 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1998-08-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-01-21 |
確定日 | 2004-11-24 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第308656号「識別カードとの暗号化通信のための近距離場人体結合のためのシステム及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 8月25日出願公開、特開平10-228524〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1. 手続の経緯・本願発明 本願は、平成9年11月11日(パリ条約による優先権主張1996年11月14日、米国)の出願であって、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成13年9月27日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。 「 電子通信装置であって、 i)情報の項目を記憶する手段と、 ii)前記情報の項目を表す暗号化電気信号を生成する手段と、 iii)前記生成する手段からの前記信号を前記ユーザの身体に結合する物理インタフェースと、 を含む、ユーザに持ち運ばれる、または身に付けられる携帯用送信機と、 i)受信機と前記ユーザの身体との間の電気結合を確立する物理インタフェースと、 ii)前記物理インタフェースを通じて、前記ユーザの身体から前記暗号化信号を受信する手段と、 iii)所定時間間隔の窓を設定して前記信号を解読し、前記情報の項目を獲得する解読手段と、 iv)前記情報の項目に応答して、アクションを実行する手段と、 を含む、受信機と、 を含む、電子通信装置。」 2. 引用例 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、特開昭59-130979号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。 (A)「本発明は、或る設備の利用を利用許可を受けた者にのみ限定するための安全確認(防護)装置であって、」 (第2頁右下欄第2行から同欄第4行) (B)「携帯用装置10の電気回路は第3図にブロック図の形で示されている。この回路は、従来の腕時計が既に適当な発振器26と周波数分割器28を含んでいるため、特に電子式の腕時計に組込むのに特に適している。確認コードは揮発性であっても、不揮発性であってもよいが、・・・(中略)・・・このコードワードは、コード登録装置32と照合ワード登録装置36とにより並列的に多重化回路38に送られ、該回路38によりコードワードと照合ワードとが中継速度約3kHzのデジタルビットが順に並んだ直列型にてデジタルエンコーダ40に送信される。・・・(中略)・・・コードワードと照合ワードの双方のパルスはエンコーダ40において分割器28の第二出力装置から得られた32kHzの搬送信号と公知の方法により結合され、エンコーダの出力装置44にてパルス位置変調信号を発生する。この例においては、エンコーダの出力装置はCMOSゲート46となっている。・・・(中略)・・・この低いインピーダンス信号出力装置46は時計10の導電部分48、たとえば第4図に示されている裏板50、に結合している。」 (第4頁右上欄第8行から同頁左下欄第19行) (C)「制御ユニットは第6図のブロック図に更に詳細に示されている。・・・(中略)・・・ このように、利用者が接触部材12に接触した時に、腕時計10から送信される信号は遮蔽ケーブル66を通って同調増幅器68に送られる。・・・(中略)・・・増幅信号が復調器70により復調され、低周波増幅器72により増幅され、そしてデジタルしきい回路74により方形パルス信号としてデジタル直列デコーダ76に送られる。このデコーダは発振器80により時間を読まれるタイミング回路78の制御下にコードワードと照合ワードとを並列形態に再構成する。なお、この二つのワードは照合回路82に送られ、そこでコードワードは何らかの送信上のエラーを検出するために照合ワードと照合される。照合されたコードワードは比較装置84に送られ、そこで記憶装置86に記憶されているデジタル接近許可コードと比較される。 ・・・(中略)・・・このように上記の比較装置が出力ワードを発生し、これが出力デコーダ88において解読され三個の設備始動防護回路90、92、94を始動させる。」 (第4頁右下欄第7行から第5頁右上欄第11行) 以上の記載及び第3図によれば、引用例1には、下記の発明(以下、「引用例1に記載された発明」という。)が記載されている。 デジタル確認コードを記憶しておくための記憶装置(30)と、 デジタル確認コードを並列ワードとしたコードワードと、照合ワードとを、直列のデジタルビットとして出力する多重回路(38)と、 多重回路の出力からパルス位置変調信号を発生するデジタルエンコーダ(40)と、 デジタルエンコーダの出力が接続され、利用者の皮膚に接触する導電部分(48)と、 を有する腕時計型の携帯用装置と、 利用者の指が接触する接触部材(12)と、 接触部材を通じて利用者の身体からパルス位置変調信号を受け取る同調増幅器(68)と、 同調増幅器の出力信号を復調する復調器(70)と、 復調器の出力信号からコードワードと照合ワードを再構成するデジタル直列デコーダ(76)と、 コードワードと照合ワードを照合する照合回路(82)と、 コードワードを記憶されているデジタル接近許可コードと比較する比較装置(84)と、 比較回路からの出力に基づき設備を作動させる設備始動防護回路(90,92,94)と、 を有する制御ユニットと からなる安全確認装置。 また、原査定の拒絶の理由に引用された、特開昭63-24384号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。 (A)「本発明は、変更可能で予測不能なコードの電子的な生成、および装置またはシステムの許可された個人即ちユーザを確実に識別する目的のためかかるコードの検証および比較を行ない、然る後保護されたシステムまたは施設に対する特に許された取引きまたは接近を実施するため許可を与える装置および方法に関する。」 (第6頁左下欄第7行から同欄第13行) (B)「最終的にユーザに許可もしくは接近を許与することになる予測不能コード40(第1図乃至第3図)を生成するためには、固定コード即ちシード10および(または)ピン45はシード10および(または)ピン45を静的変数として維持する予め定めたあるアルゴリズムに対して入力されなければならない。このアルゴリズムは、典型的には、ユーザに対して計算機20(第2図)の形態で与えられ、これは予め定めたアルゴリズムを実施するためのプログラムがロードされている。この計算機20は、望ましくは電子計算機からなり、更に望ましくは予め定めたアルゴリズムの諸機能を格納し実施するため充分な量の揮発性の動的メモリーを備えマイクロプロセッサからなる。このコンピュータ20は、クレジット・カードの体裁とおおよその寸法を有するカード20(第2図)内に提供されることが最も望ましい。」 (第9頁右下欄第10行から第10頁左上欄第6行) (C)「シード10および(または)ピン45を静的変数として使用することに加えて、ユーザに対して最終的に接近または許可90を与える予測不能コード40、70を計算するため、第2の変数である動的変数30、60(第1図、第1A図)を使用するように予め定めたアルゴリズムが構成されている。動的変数は、カードシード10および(または)ピン45がカードコンピュータ20またはホストまたはACM50のいずれか一方のアルゴリズムに入力される時間間隔で定義され決定されるコード、典型的には1つの番号を含む。動的変数は、静的変数が予め定めたアルゴリズムに入力された日付および時分により定義されることが最も望ましい。」 (第10頁左下欄第8行から同欄第20行) (D)「第1図においては、このような動的変数を確保する最も望ましい手段は電子的なディジタル・クロックの如き時計装置により、この装置は従来周知の手段によって静的変数10および(または)ピン45の入力(ステップaまたはc)に応答して、カード20またはホストまたはACM50の予め定めたアルゴリズムに対して日付または特定の時間間隔(例えば、1分、2分、5分等)を自動的に入力する(ステップa1またはc1)。」 (第10頁右下欄第8行から同欄第16行) (E)「第1図においては、第1の予測不能コード40が上記の如く生成された後、このような最初の予測不能コード40が「2番目の」予測不能コード70と比較され、このコードもまた最初の予測不能コード40の生成のため用いられた同じ予め定めたアルゴリズムを含むホストまたはACM50に対して固定コード/カード・シード10(および、使用する場合はピン45)を入力する(ステップc)ことによりユーザによって生成される。」 (第12頁右上欄第17行から同頁左下欄第5行) (F)「ステップeおよびe2(第1A図)を同じ時分または他の接近された時間間隔(セル)内で実施する必要は、本発明のほとんどの望ましい実施態様においては取除かれる。第3図および第4図においては、カード20は、コード40がカード・クロックにより定義される如く生成された時間セルに基づいて結果のコード40を生じる。カード・クロックおよびホストまたはACMのクロック125が相互および実時間と同期されることを説明のため仮定し、またユーザが適正なカード・シード10および結果のコード40をカード20により生成された結果のコード40と同じ時間セル内にホストまたはACM50に対して入れるものとすれば、ホスト50は複数の一連の結果のコード即ち「窓」(第1図の1つの予測不能コード70とは対照的に)を生じるプログラムが与えられることが望ましい。[本文において用いられように、用語「セル」とは、文脈に従って、結果のコードの生成が結果のコード自体に基く予め定めた期間の時間間隔を意味するものとする。]「窓」を構成する種々の2番目の予測不能コードは、ユーザがシード10、コード40およびピン45を第3図のホスト・クロック125および第4図に示される如き1つ以上の境界の時間セル例えば-2、-1、および+1、+2により定義される如くホストまたはACM50に対して適正にエントリする時間セルに基づいてホストまたはACM50によって計算される。ホストまたはACM50のプログラムはこの時、カードの結果のコード40を第4図に示されるホスト・セルの窓として計算される全ての個々の結果コードと比較して、ホスト・セルのどれかとカード・コード40との間に整合状態が存在するかどうかを判定する。」 (第12頁右下欄第2行から第13頁左上欄第13行) (G)「しかし、カード・クロックおよびホスト・クロック125が実時間との同期状態から外れ得る更に典型的な場合、例えばカード・クロックがホスト・クロックに比して進む場合においては、整合するホストの結果のコードを生じるためホストの窓の中心時間セルの後に「続く」セルの生成が必要となる。」 (第13頁右下欄第18行から第14頁左上欄第4行) 以上をまとめると、引用例2には、下記の発明(以下、「引用例2に記載された発明」という。)が記載されている。 カードにおいて、固定コードと、カード・クロックにより定義される1つの時間セルとに基づき、予め定めたアルゴリズムに従って第1の予測不能コードを算出し、 ホスト・コンピュータにおいて、前記固定コードと、ホスト・クロックにより定義される一連の複数の時間セルとに基づき、前記予め定めたアルゴリズムに従って複数の2番目の予測不能コードを算出するとともに、前記第1の予測不能コードと前記各2番目の予測不能コードとを比較し、前記2番目の予測不能コードのいずれかと前記第1の予測不能コードとの間に整合状態が存在するかどうかを判定する、 ホスト・コンピュータによりカードを識別する装置。 3. 対比 以下、本願発明と引用例1に記載された発明とを対比する。 引用例1に記載された発明における、「デジタル確認コードを記憶しておくための記憶装置」、「デジタルエンコーダの出力が接続され、利用者の皮膚に接触する導電部分」、「腕時計型の携帯用装置」、「利用者の指が接触する接触部材」、「制御ユニット」、「安全確認装置」は、それぞれ本願発明における、「情報の項目を記憶する手段」、「前記生成する手段からの前記信号を前記ユーザの身体に結合する物理インタフェース」、「ユーザに持ち運ばれる、または身に付けられる携帯用送信機」、「受信機と前記ユーザの身体との間の電気結合を確立する物理インタフェース」、「受信機」、「電子通信装置」に相当する。 引用例1に記載された発明における、「多重回路」及び「デジタルエンコーダ」の機能は、情報の項目から電気信号を生成する点で、本願発明における、「前記情報の項目を表す暗号化電気信号を生成する手段」の暗号化以外の機能と対応する。 引用例1に記載された発明における、「接触部材を通じて利用者の身体からパルス位置変調信号を受け取る同調増幅器」と、本願発明における、「前記物理インタフェースを通じて、前記ユーザの身体から前記暗号化信号を受信する手段」とは、物理インタフェースを通じてユーザの身体から電気信号を受信するものである点において共通する。 引用例1に記載された発明における、「復調器」及び「デジタル直列デコーダ」の機能は、本願発明における、「前記情報の項目を獲得する解読手段」の機能と対応する。 引用例1に記載された発明における、「照合回路」、「比較装置」及び「設備始動防護回路」の機能は、本願発明における、「前記情報の項目に応答して、アクションを実行する手段」の機能に対応する。 したがって、本願発明と引用例1に記載された発明とは、 電子通信装置であって、 i)情報の項目を記憶する手段と、 ii)前記情報の項目を表す電気信号を生成する手段と、 iii)前記生成する手段からの前記信号を前記ユーザの身体に結合する物理インタフェースと、 を含む、ユーザに持ち運ばれる、または身に付けられる携帯用送信機と、 i)受信機と前記ユーザの身体との間の電気結合を確立する物理インタフェースと、 ii)前記物理インタフェースを通じて、前記ユーザの身体から前記電気信号を受信する手段と、 iii)前記電気信号から前記情報の項目を獲得する手段と、 iv)前記情報の項目に応答して、アクションを実行する手段と、 を含む、受信機と、 を含む、電子通信装置。 である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点1] 本願発明は、「前記情報の項目を表す暗号化電気信号を生成する手段」を有するのに対し、引用例1に記載された発明における、「前記情報の項目を表す電気信号を生成する手段」は暗号化機能を有しない点。 [相違点2] 本願発明は、「所定時間間隔の窓を設定して前記信号を解読し、前記情報の項目を獲得する解読手段」を有するのに対し、引用例1に記載された発明における「前記電気信号から前記情報の項目を獲得する手段」は、所定時間間隔の窓を設定して暗号化電気信号を解読する機能を有しない点。 4. 当審の判断 上記相違点1及び2について検討する。 [相違点1]について 携帯用送信機から受信機に情報を送る際に該情報を暗号化することは、例えば、原査定の拒絶の理由に引用された特開平8-97777号公報に示されるように周知慣用技術であり、引用例1に記載された発明に、前記周知慣用技術を採用し、「デジタルエンコーダ」に暗号化機能を持たせるようにすることは、当業者が適宜なし得たことである。 [相違点2]について 引用例2には、固定コードと時間セルから所定のアルゴリズムに従って生成される一種の暗号である「予測不能コード」が、カード側とホスト・コンピュータ側で一致するか否か、すなわちカードとホスト・コンピュータが共通のアルゴリズムに従って暗号化を行っているか否かによりカードの正当性を識別する発明において、カード・クロックとホスト・クロックの同期ずれに起因するカード側とホスト・コンピュータ側の時間セルの差違により、第1の予測不能コードと2番目の予測不能コードとの不一致が生ずることを防止するために、ホスト・コンピュータが複数の時間セル、すなわち所定時間間隔の窓を設定し、該窓内の複数の時間セルに基づき生成された複数の2番目の予測不能コードのいずれかと第1の予測不能コードとが一致すればカードが正当なものと識別されたとするものが記載されている。 ここで、暗号化アルゴリズムと復号化アルゴリズムは表裏一体をなすものであるから、引用例2に記載された発明を、ホスト・コンピュータに暗号化アルゴリズムに代えて復号化アルゴリズムを格納しておき、前記復号化アルゴリズムに従ってホスト・コンピュータが第1の予測不能コードから固定コードと時間セルを再現し、前記再現された時間セルがホスト・クロックにより定義される一連の複数の時間セルのいずれかと整合し、かつ、前記再現された固定コードが正当なものと整合すればカードを正当なものと識別するように構成できることは当業者にとって自明である(このように、ユーザから送られた暗号をホストが復号することにより再現されたユーザ側の時刻が、ホスト側の時刻に対して所定の許容範囲(すなわち所定時間間隔の窓)内にある場合に、以降のユーザ側の識別処理を継続する識別装置の周知例として、必要があれば、例えば、特開平7-107086号公報(特に【0025】から【0028】の記載参照。)又は特開平7-334080号公報(特に【0037】から【0040】の記載参照。)を参照されたい。)。 したがって、引用例1に記載された発明における「デジタル直列デコーダ」に、所定の時間間隔の窓を設定して暗号化電気信号を解読する機能を持たせることは、引用例2に記載された発明に基き、当業者が容易になし得たことである。 よって、上記相違点1及び2は格別なものとは認められない。 そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用例1に記載された発明及び引用例2に記載された発明から、当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。 5.むすび したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明及び引用例2に記載された発明に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論の通り審決する。 |
審理終結日 | 2004-06-24 |
結審通知日 | 2004-06-29 |
審決日 | 2004-07-12 |
出願番号 | 特願平9-308656 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 前田 仁 |
特許庁審判長 |
吉岡 浩 |
特許庁審判官 |
小田 浩 松浦 功 |
発明の名称 | 識別カードとの暗号化通信のための近距離場人体結合のためのシステム及び方法 |
代理人 | 市位 嘉宏 |
代理人 | 坂口 博 |
代理人 | 渡部 弘道 |