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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C03B
審判 全部申し立て 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  C03B
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  C03B
管理番号 1107874
異議申立番号 異議2002-72771  
総通号数 61 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1992-08-20 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-11-20 
確定日 2004-10-12 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3283887号「ガラス板の湾曲成形方法及びその装置」の請求項1ないし13に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3283887号の訂正後の請求項1ないし13に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許3283887号の請求項1〜13に係る発明についての出願は、平成3年8月16日の出願であって、平成14年3月1日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、その特許について、特許異議申立人 旭硝子株式会社(以下、「申立人」という)より特許異議の申立てがなされた。そして、当審において取消理由通知がなされ、その指定期間内の平成15年11月20日に訂正請求書(第1回)及び特許異議意見書が提出された。またその後当審において取消理由通知がなされ、再度平成16年8月18日に訂正請求書(第2回)及び特許異議意見書が提出され、第1回訂正請求書が取り下げられたものである。
2.訂正の適否
(1)訂正の内容
本件訂正の内容は、本件特許明細書を訂正請求書に添付された訂正明細書のとおりに、すなわち訂正事項a〜cのとおりに訂正しようとするものである。
訂正事項a
特許明細書の【特許請求の範囲】を次のとおりに訂正する。
「【請求項1】ガラス板の湾曲成形温度に実質的に等しい温度を有する湾曲成形ステーションで実施されるガラス板の湾曲成形方法において、前記ガラス板を前記湾曲成形温度まで予加熱し、予加熱した前記ガラス板を前記湾曲成形ステーションに導入して、湾曲成形用の上方部材の下方の水平位置に配置し、前記水平位置から、前記予加熱したガラス板を、上昇ガス流により移送して前記上方部材に接触させ、前記ガラス板が前記上方部材に接触しているときに、前記湾曲成形温度よりも高温のガスを、前記ガラス板の下面の局部的表面部分に向けて吹き出すことを開始して、該局部的表面部分のガラス流動性を該ガラス板の他の部分よりも増加させ、以って前記上昇ガス流により、該局部的表面部分に沿って該ガラス板を曲げ、前記局部的表面部分に沿って曲げられた前記ガラス板を、前記上方部材の下に配置した加圧フレーム型式の下方湾曲部材の上に置くこと、を特徴とする方法。
【請求項2】前記ガスの吹き出し時間が5秒以下であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】前記ガスの吹き出し圧力が350Pa以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】前記ガスの温度が前記湾曲成形温度より少なくとも100℃だけ高いことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の方法。
【請求項5】前記ガスの温度が950℃以上であることを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】前記ガラス板が予め620℃以上の温度まで均一に加熱されることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の方法。
【請求項7】前記ガスの吹き出しの間に、前記ガスにさらされる前記局部的表面部分が、前記湾曲成形温度から少なくとも10℃だけ更に加熱されることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の方法。
【請求項8】湾曲成形炉と、該湾曲成形炉に内設されてガラス板を運搬する水平コンベアと、該湾曲成形炉の端部に対し等温状態で該湾曲成形炉に隣接して、該水平コンベアが内部に達するとともに、雰囲気がガラス板の湾曲成形温度に実質的に等しい温度を有する湾曲成形ステーションとを具備し、該湾曲成形ステーションが、前記水平コンベアの上方に配置される上方部材と、ガラス板を該水平コンベアから移送して該上方部材に接触させる気体圧力手段と、該ガラス板を該気体圧力手段の上昇ガス流の作用により該上方部材に接触させた後に、該ガラス板を受けるために該上方部材の下方に配置される加圧フレーム型式の下方部材とを備えてなる、ガラス板の湾曲成形装置において、ガラス板が前記上方部材に接触しているときに、該ガラス板の下面の局部的表面部分に向けた強制的な上昇気流による、前記湾曲成形温度よりも高温のガスの吹き出しを開始して該局部的表面部分を加熱するとともに、該局部的表面部分のガラス流動性を該ガラスの他の部分よりも増加させる加熱手段を備えることを特徴とする装置。
【請求項9】前記加熱手段が前記下方部材を担持するキャリッジに設けられることを特徴とする請求項8記載の装置。
【請求項10】前記加熱手段が、前記高温のガスを吹き出すノズル、多孔管、又は吹き出し室から構成されることを特徴とする請求項8又は9記載の装置。
【請求項11】前記加熱手段に、前記湾曲成形炉内で予め加熱され、次いで電気炉を通って成形温度まで加熱された圧縮空気を供給することを特徴とする請求項10記載の装置。
【請求項12】前記加熱手段に、前記湾曲成形ステーションの外側に装着されたバーナにより生成され、かつブロアにより加速された噴霧ガスを供給することを特徴とする請求項10記載の装置。
【請求項13】前記加熱手段がアセチレンバーナからなることを特徴とする請求項8又は9記載の装置。」
訂正事項b
特許明細書の段落【0015】を次のとおりに訂正する。
「【課題を解決するための手段と作用】 上記目的を達成するため、本発明に係るガラス板の湾曲成形方法は、ガラス板の湾曲成形温度に実質的に等しい温度を有する湾曲成形ステーションで実施されるガラス板の湾曲成形方法において、ガラス板を湾曲成形温度まで予加熱し、予加熱したガラス板を湾曲成形ステーションに導入して、湾曲成形用の上方部材の下方の水平位置に配置し、水平位置から、予加熱したガラス板を、上昇ガス流により移送して上方部材に接触させ、ガラス板が上方部材に接触しているときに、湾曲成形温度よりも高温のガスを、ガラス板の下面の局部的表面部分に向けて吹き出すことを開始して、局部的表面部分のガラス流動性をガラス板の他の部分よりも増加させ、以って上記上昇ガス流により、局部的表面部分に沿ってガラス板を曲げ、局部的表面部分に沿って曲げられたガラス板を、上方部材の下に配置した加圧フレーム型式の下方湾曲部材の上に置くこと、を特徴とするものである。また、この吹き出し時間は、5秒を超えて継続しないようにされる。」
訂正事項c
特許明細書の段落【0026】を次のとおりに訂正する。
「本発明はさらに、湾曲成形炉と、該湾曲成形炉に内設されてガラス板を運搬する水平コンベアと、湾曲成形炉の端部に対し等温状態で湾曲成形炉に隣接して、水平コンベアが内部に達するとともに、雰囲気がガラス板の湾曲成形温度に実質的に等しい温度を有する湾曲成形ステーションとを具備し、湾曲成形ステーションが、水平コンベアの上方に配置される上方部材と、ガラス板を水平コンベアから移送して上方部材に接触させる気体圧力手段と、ガラス板を気体圧力手段の上昇ガス流の作用により上方部材に接触させた後に、ガラス板を受けるために上方部材の下方に配置される加圧フレーム型式の下方部材とを備えてなる、ガラス板の湾曲成形装置において、ガラス板が上方部材に接触しているときに、ガラス板の下面の局部的表面部分に向けた強制的な上昇気流による、湾曲成形温度よりも高温のガスの吹き出しを開始して局部的表面部分を加熱するとともに、局部的表面部分のガラス流動性をガラスの他の部分よりも増加させる加熱手段を備えることを特徴とする装置を提供する。」
(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
訂正事項aは、(a1)請求項1において羅列的な段階の記載を相互関係を明確にし、経時的に整理するものであって、(a1-1)「上方部材の下方の水平位置に配置」を「予加熱した前記ガラス板を前記湾曲成形ステーションに導入して、湾曲成形用の上方部材の下方の水平位置に配置」と限定し、(a1-2)「前記上方部材に接触」を「前記水平位置から、前記予加熱したガラス板を、上昇ガス流により移送して前記上方部材に接触」と限定し、(a1-3)「前記湾曲成形温度よりも高温のガスをガラス板下面の湾曲対象表面部分に向けて吹き出す段階を具備し、この吹き出す段階が、ガラス板が前記上方部材に接触しているときに開始」を「前記ガラス板が前記上方部材に接触しているときに、前記湾曲成形温度よりも高温のガスを、前記ガラス板の下面の局部的表面部分に向けて吹き出すことを開始して、該局部的表面部分のガラス流動性を該ガラス板の他の部分よりも増加させ、以って前記上昇ガス流により、該局部的表面部分に沿って該ガラス板を曲げ」と限定整理し、(a1-4)「下方湾曲部材上に置く」を「前記局部的表面部分に沿って曲げられた前記ガラス板を、前記上方部材の下に配置した加圧フレーム型式の下方湾曲部材の上に置く」に限定するものであり、また、(a2)請求項4において「少なくとも150℃だけ高い」を明細書の記載と整合を図るために「少なくとも100℃だけ高い」と訂正するものであり、(a3)請求項7において「前記表面要素が少なくとも」を請求項7で引用する請求項に「表面要素」の記載はなく、明細書を通じて整合を図るために「前記局部的表面部分が、前記湾曲成形温度から少なくとも」と訂正し、また、(a4)請求項8において、発明を特徴付ける技術的事項の相互関係を明確にし、(a4-1)「水平コンベア」を「湾曲成形炉に内設されてガラス板を運搬する水平コンベア」に限定し、「湾曲成形ステーション」について「湾曲成形炉の端部に対し等温状態で該湾曲成形炉に隣接して、該水平コンベアが内部に達するとともに」、「ガラス板を該水平コンベアから移送して該上方部材に接触させる気体圧力手段と、該ガラス板を該気体圧力手段の上昇ガス流の作用により該上方部材に接触させた後に、該ガラス板を受けるために該上方部材の下方に配置される加圧フレーム型式の下方部材とを備えてなる」と限定し、また、「加熱手段」について「該ガラス板の下面の局部的表面部分に向けた強制的な上昇気流による、前記湾曲成形温度よりも高温のガスの吹き出しを開始して該局部的表面部分を加熱するとともに、該局部的表面部分のガラス流動性を該ガラスの他の部分よりも増加させる加熱手段」と限定するものであり、また、(a5)請求項9において明細書の発明の詳細な説明の記載と整合を図るために「加熱手段が前記下方部材を担持するキャリッジに設けられる」と訂正するものであり、また(a6)請求項10において「ノズル」を「高温のガスを吹き出すノズル」に限定するものである。以上のとおりであるから、訂正事項aは特許請求の範囲の減縮を目的とする訂正及び明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。また、訂正事項b及びcは、請求事項aと整合を図るとともに特許請求の範囲の記載と整合を図るものであるから、訂正事項b及びcは明りょうでない記載の釈明を目的とする訂正に該当する。そして、上記訂正事項a乃至cは、本件特許明細書の段落【0001】、【0014】〜【0018】、【0022】〜【0028】及び【0033】〜【0043】に、特に(a1-3)の「ガラス流動性」は段落【0017】に、また(a1-4)の「加圧フレーム型式の下方部材」は段落【0024】【0036】に記載されるのであるから、訂正事項a乃至cは願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内の訂正であり、新規事項の追加に該当せず実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものでもない。
(3)むすび
したがって、上記訂正は、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項の規定に適合するので、当該訂正を認める。上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項から第4項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。
3.取消理由について
3-1.本件発明
上記のとおり、訂正は認められるから、本件特許の訂正後の請求項1〜13に係る発明(以下「本件発明1」〜「本件発明13」という)は、訂正された特許明細書に記載された次のとおりのものである。
【請求項1】ガラス板の湾曲成形温度に実質的に等しい温度を有する湾曲成形ステーションで実施されるガラス板の湾曲成形方法において、前記ガラス板を前記湾曲成形温度まで予加熱し、予加熱した前記ガラス板を前記湾曲成形ステーションに導入して、湾曲成形用の上方部材の下方の水平位置に配置し、前記水平位置から、前記予加熱したガラス板を、上昇ガス流により移送して前記上方部材に接触させ、前記ガラス板が前記上方部材に接触しているときに、前記湾曲成形温度よりも高温のガスを、前記ガラス板の下面の局部的表面部分に向けて吹き出すことを開始して、該局部的表面部分のガラス流動性を該ガラス板の他の部分よりも増加させ、以って前記上昇ガス流により、該局部的表面部分に沿って該ガラス板を曲げ、前記局部的表面部分に沿って曲げられた前記ガラス板を、前記上方部材の下に配置した加圧フレーム型式の下方湾曲部材の上に置くこと、を特徴とする方法。
【請求項2】前記ガスの吹き出し時間が5秒以下であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】前記ガスの吹き出し圧力が350Pa以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】前記ガスの温度が前記湾曲成形温度より少なくとも100℃だけ高いことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の方法。
【請求項5】前記ガスの温度が950℃以上であることを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】前記ガラス板が予め620℃以上の温度まで均一に加熱されることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の方法。
【請求項7】前記ガスの吹き出しの間に、前記ガスにさらされる前記局部的表面部分が、前記湾曲成形温度から少なくとも10℃だけ更に加熱されることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の方法。
【請求項8】湾曲成形炉と、該湾曲成形炉に内設されてガラス板を運搬する水平コンベアと、該湾曲成形炉の端部に対し等温状態で該湾曲成形炉に隣接して、該水平コンベアが内部に達するとともに、雰囲気がガラス板の湾曲成形温度に実質的に等しい温度を有する湾曲成形ステーションとを具備し、該湾曲成形ステーションが、前記水平コンベアの上方に配置される上方部材と、ガラス板を該水平コンベアから移送して該上方部材に接触させる気体圧力手段と、該ガラス板を該気体圧力手段の上昇ガス流の作用により該上方部材に接触させた後に、該ガラス板を受けるために該上方部材の下方に配置される加圧フレーム型式の下方部材とを備えてなる、ガラス板の湾曲成形装置において、ガラス板が前記上方部材に接触しているときに、該ガラス板の下面の局部的表面部分に向けた強制的な上昇気流による、前記湾曲成形温度よりも高温のガスの吹き出しを開始して該局部的表面部分を加熱するとともに、該局部的表面部分のガラス流動性を該ガラスの他の部分よりも増加させる加熱手段を備えることを特徴とする装置。
【請求項9】前記加熱手段が前記下方部材を担持するキャリッジに設けられることを特徴とする請求項8記載の装置。
【請求項10】前記加熱手段が、前記高温のガスを吹き出すノズル、多孔管、又は吹き出し室から構成されることを特徴とする請求項8又は9記載の装置。
【請求項11】前記加熱手段に、前記湾曲成形炉内で予め加熱され、次いで電気炉を通って成形温度まで加熱された圧縮空気を供給することを特徴とする請求項10記載の装置。
【請求項12】前記加熱手段に、前記湾曲成形ステーションの外側に装着されたバーナにより生成され、かつブロアにより加速された噴霧ガスを供給することを特徴とする請求項10記載の装置。
【請求項13】前記加熱手段がアセチレンバーナからなることを特徴とする請求項8又は9記載の装置。
3-2.取消理由
(1)本件訂正前の請求項1〜13に係る発明は、刊行物1、2に記載された発明であるか、もしくは刊行物1,2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第1項第3号もしくは同法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(2)請求項1〜13に記載される発明に関し、
(ア)請求項1の記載において、どのうようにしてガラス板を湾曲させるかが不明確であるとともに、「高温のガスを吹き出す・・・開始される」と記載されるが、その効果が明細書の発明の詳細な説明に記載されておらず、また、請求項1における各段階の時間的な前後関係が不明瞭であり、また、「湾曲対象表面部」の意味も不明確である。
(イ)請求項2の記載において、「ガスの吹き出し時間が5秒以下」とあるが、発明の詳細な説明の欄の「5秒以上継続しないようにされる」との記載と矛盾する。
(ウ)請求項4に「湾曲成形温度より少なくとも150℃だけ高い」とあるが、その数値限定については発明の詳細な説明の記載に記載がない。
(エ)請求項6に「ガラス板が予め620℃以上の温度まで均一に加熱」とあるが、発明の詳細な説明には「620〜650℃まで上昇」とあるが、上限値はないとしてもよい旨の記載はない。
(オ)請求項7に「前記表面要素が少なくとも10℃だけ更に加熱」と記載されるが、その記載以前に「表面要素」の記載はなく、また、何に対して「10℃だけ更に加熱」されるのか不明である。
(カ)請求項8には「湾曲成形炉」、「水平コンベア」及び「湾曲ステーション」の互いの位置関係、接続関係が不明確である。また「ガラス板を回収する」こと、及び「湾曲対象表面部分」の技術内容が不明確である。
(キ)請求項10の記載では、加熱作用をどのように実現するのか不明瞭である。
(ク)請求項12の「湾曲ステーションの外側」の意味が不明確である。
以上のように上記記載事項の構成が明瞭とはいえないから、特許法第36条第5項第1号及び第2号の規定により特許を受けることができない。
3-3.刊行物に記載された事項
(1)刊行物1:米国特許第2,817,928号明細書(申立人の提出した甲第1号証)には、次の事項が記載されている。
(1a)「本発明は、その目的のために、ガラスまたは他の熱可塑性材料の物品、および特に、曲率が中央部分と境界部分上において異なる曲率の物品、例えば一定の腕時計用ガラス、および縁部において中央部へ向けてよりも強まる曲率を有するテレビジョンガラス球の底部分を構成するプレートなどの物品を成形する方法を有する。」(第1欄15〜22行、訳文)
(1b)「異なる曲率と複合曲線を有するガラスまたは他の熱可塑性物品を製造する、本発明に従う方法は、物品の全ての表面上に最小曲率を得るように物品を予備的形状へ合致させる段階と、およびこの予備的に成形された物品を、より強い曲率を付与する必要がある部分を加熱し、かつその部分だけを、この曲率をその部分に付与するのに必要な高温まで加熱した後に、最終形態にする段階とから構成され、最終曲率を既に受け入れた予備的に成形された物品の部分は、破損の全てのリスクが避けられる、引張り力を除去する最低温度と表面の欠陥が現れる温度との間の温度に維持される。」(第1欄46〜60行、訳文)
(1c)「ガラスのシートは先ず、金型2上に載置され、その金型上に、シートが縁部において重なる。凹部のこの金型は、製造される物品の中央部分へ付与される所定の曲率を有する。このガラスと金型は、適切な温度まで加熱され、ついで、金型の底部を通過して真空ポンプと連通するオリフィス3を通して、ガラスと金型との間に形成される空間内に真空が生じる。2つの表面へ加えられる圧力の差のために、全体のガラスシートには、その中央部分だけに意図される曲率が生じる。」(第2欄44〜54行、訳文)
(1d)「空気が、オリフィス3を通して流入させられ、かくして自由にされた物品は、物品の中央部分と同一の曲率を有する凸状の吸引エレメント4(図2)により取り上げられる。」(第2欄61〜64行、訳文)
(1e)「物品の真下に置かれる環状ガスバーナ5の手段により、その物品の境界部分が非常に高温に加熱される。一方、その中央部分は、吸引エレメントの金属との接触により冷却される。大きく湾曲されるガラスの部分の上端面を加熱するために、小さい寸法のオリフィス10が、吸引エレメントの周りに設けられて、ガラスの上端を加熱する状態で、内側へ火炎を引き出す。吸引エレメント上に依然懸垂されたままの物品が、金型(図3)まで動かされ、・・・・。物品は、金型と吸引エレメントとの間に加圧成形され、かくして一定の形状になる。この加圧成形は、オリフィス10を通して連続的に加えられる真空により容易にされる。」(第2欄70行〜第3欄17行、訳文)
(2)刊行物2:特開昭64-14121号公報(申立人が提示した甲第2号証)には、次の事項が記載されている。
(2a)「加熱炉(1)内の処理ステーション(ST)にて板ガラス(1)の側部を深曲げ成形する板ガラスの曲げ成形装置であって、上記処理ステージ(ST)に処理可能温度まで加熱された板ガラス(1)を水平姿勢で搬送する搬送手段(3)と、上記処理ステージ(ST)に対応して配置されると共に板ガラス(1)の曲げ成形形状に対応した湾曲面(15)が形成されるモールド(10)と、上記板ガラス(1)の深曲げ箇所に対応したモールドの深曲げ湾曲面(15b)を除く一般湾曲面(15a)に対して上記板ガラス(1)を密接保持させて仮成形する仮成形手段(20)と、上記モールド(10)の深曲げ湾曲面(15b)に対応した板ガラス(1)の側部に対し前記深曲げ湾曲面(15b)側へ向けて曲げ成形させるべく圧縮気体を吹付るブロー曲げ手段(30)とを備えた板ガラスの曲げ成形装置。」(特許請求の範囲請求項1)
(2b)「板ガラス1は加熱炉2内に配設された搬送ロールからなるコンベア3で曲げ処理ステージSTまで搬送されるようになっており、この曲げ処理ステーションSTに対応した上部には板ガラス1の曲げ成形用モールド10が設けられる・・・板ガラス1の曲げ成形形状に対応した形状のクエンチリング61が進退自在に配設され、曲げ成形装置にて曲げ成形された湾曲板ガラス1を冷却処理ステージST1側へ搬送するようになっている。」(第4頁左下欄1〜末行)
(2c)「上記仮成形装置20は、上記曲げ処理ステージSTの下部において配設されるリフトジェット装置21と、上記モールド10の成形面14にエア吸引力を生じさせる吸引装置25とで構成されている。」(第5頁左上欄1〜5行)
(2d)「コンプレッサ31(第2図参照)からの配管32の先端部に端部が塞がれたT字状の吹付け管33を接続し、この吹付け管33の長手方向部位には所定ピッチ(25〜27mm程度)毎に吹付けノズル34を固定する」(第5頁右上欄3〜7行)
(2e)「上記モールド10の深曲げ湾曲面15bに対向した位置に設定された吹付けノズル34からエアが上記板ガラス1の側部に吹付けられる」(第6頁左上欄7〜10行)
(2f)「例えば高圧の圧縮空気については吹付けられた空気により板ガラスGが冷却されないように予め高温に加熱しておくことが好ましい。」(第6頁右上欄15〜18行)
4.取消理由についての判断
4-1.取消理由(1)について
4-1-1.本件発明1について
(1)一致点・相違点
刊行物1の(1a)〜(1e)の記載を本件発明の記載振りに則って整理すると、刊行物1には、「曲率が中央部と境界部分上において異なる曲率の物品の成形方法であって、まず金型上にガラスシートを載置して適当温度まで加熱し、金型底部のオリフィスから真空ポンプで吸引して中央部が一定の曲率を有するガラスシートとし、次いで吸引エレメントによりガラスシートを取り上げ、その状態でガラスシートの境界部分を環状ガスバーナで高温に加熱し、金型で加圧成形する成形方法。」の発明(以下、「刊行1発明」という。)が記載されているといえる。
そこで、本件発明1と刊行1発明を対比すると、刊行1発明の「金型上にガラスシートを載置して適当温度まで加熱し」は、中央部を一定の曲率に成形しているところからみて本件発明1の「ガラス板を前記湾曲成形温度まで予加熱し」に相当し、同様に刊行1発明の「吸引エレメント」が本願発明の「上方部材」とみれ、刊行1発明の「ガラスシートの境界部分を環状ガスバーナで高温に加熱し」は本件発明1の「高温のガスを、前記ガラス板の下面の局部的表面部分に向けて吹き出す」ことに相当することから、両者は「ガラス板の湾曲成形方法において、前記ガラス板を前記湾曲成形温度まで予加熱し、予加熱した前記ガラス板を前記上方部材に接触させ、前記ガラス板が前記上方部材に接触しているときに、前記湾曲成形温度よりも高温のガスを、前記ガラス板の下面の局部的表面部分に向けて吹き出し、該局部的表面部分に沿って該ガラス板を曲げ」る点で一致し、以下の点で相違する。
相違点a:本件発明1ではガラス板の湾曲成形方法が「ガラス板の湾曲成形温度に実質的に等しい温度を有する湾曲成形ステーションで実施される」のに対し、刊行1発明ではかかる構成がない点
相違点b:本件発明1では「予加熱した前記ガラス板を前記湾曲成形ステーションに導入して、湾曲成形用の上方部材の下方の水平位置に配置し、前記水平位置から、前記予加熱したガラス板を、上昇ガス流により移送して前記上方部材に接触させ」るのに対し、刊行1発明では「吸引エレメントによりガラスシートを取り上げ」ている点
相違点c:本件発明1では「前記ガラス板が前記上方部材に接触しているときに、前記湾曲成形温度よりも高温のガスを、前記ガラス板の下面の局部的表面部分に向けて吹き出すことを開始して、該局部的表面部分のガラス流動性を該ガラス板の他の部分よりも増加させ、以って前記上昇ガス流により、該局部的表面部分に沿って該ガラス板を曲げ、前記局部的表面部分に沿って曲げられた前記ガラス板を、前記上方部材の下に配置した加圧フレーム型式の下方湾曲部材の上に置く」のに対し、刊行1発明では、「ガラスシートの境界部分を環状ガスバーナで高温に加熱し、金型で加圧成形する」ものである点
そこで、まず、相違点b、cについて検討する。
刊行物2には、「リフトジェット装置及び吸引装置とで構成された仮成形装置」(記載事項2c)により「モールドに、処理ステージに処理可能温度まで加熱された板ガラスを密着保持させて仮成形」(記載事項a)し、その後「板ガラスの側部を深曲げ成形する」(記載事項2a)ものであり、「予め高温に加熱された高圧の圧縮空気」(記載事項2f)を「深曲げ湾曲面に対向した位置に設定された吹付けノズルから板ガラスの側部に吹付ける」(記載事項2a、2e)ことが記載されている。この記載から、刊行物2には「リフトジェット及び吸引によりモールドに板ガラスを密着保持し、板ガラスの深曲げ湾曲面に高温の圧縮空気を吹き付ける」ことが記載されているといえる。この記載から見ると刊行物2には相違点bに係る本件発明1の構成は記載され、相違点cに係る本件発明1の「高温のガスの吹き出す」こと、「ガス流によりガラス板を曲げる」ことについて開示がある。しかしながら、刊行物2に記載された「高温のガス」は記載事項2fからみると「空気により板ガラスが冷却されない」ものであることから、本件発明1の「前記湾曲成形温度よりも高温のガス」とまではいえなく、しかもその「高温のガス」を「ガラス板が前記上方部材に接触しているときに、前記ガラス板の下面の局部的表面部分に向けて吹き出すことを開始する」ことについては何ら記載がなく、更に本件発明1は「局部的表面部分のガラス流動性を該ガラス板の他の部分よりも増加させ、以って上昇ガス流により板ガラスを曲げている」のに対し、刊行物2に記載のものは「高温の圧縮空気を吹き付けることにより板ガラスを曲げている」のであるから、板ガラスの曲げに関する技術的事項が両者で同じであるとはいえない。
そして、本件発明1は、上記相違点に係る構成を採用することにより、明細書記載の効果を奏するものといえる。
したがって、本件発明1は、相違点aを検討するまでもなく、刊行物1、2に記載の発明であるとも、刊行物1,2に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともすることはできない。
4-1-2.本件発明2〜7について
本件発明2〜7は、本件発明1を引用して、さらに限定するものであるから、本件発明1と同じ理由により、本件発明2〜7は、刊行物1、2に記載の発明であるとも、刊行物1,2に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともすることはできない。
4-1-3.本件発明8について
本件発明8は、本件発明1のガラス板の湾曲成形方法を具現化するための装置の発明であり、カテゴリ-に違いがあるにせよ、実質上構成の違いがないことから、本件発明1でみたと同じ理由により、刊行物1、2に記載の発明であるとも、刊行物1,2に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともすることはできない。
4-1-4.本件発明9〜13について
本件発明9〜13は、本件発明8を引用して、さらに限定するものであるから、本件発明8と同じ理由により、本件発明9〜13は、刊行物1、2に記載の発明であるとも、刊行物1,2に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものともすることはできない。
4-2.取消理由(2)について
上記訂正により、記載不備(ア)〜(ク)に係る理由は解消された。
5.結論
以上のとおりであるから、取消理由及び異議申立の証拠によっては、本件訂正後の請求項1〜13に係る発明についての特許を取り消すことができない。
また、他に本件訂正後の請求項1〜13に係る発明の特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
ガラス板の湾曲成形方法及びその装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 ガラス板の湾曲成形温度に実質的に等しい温度を有する湾曲成形ステーションで実施されるガラス板の湾曲成形方法において、
前記ガラス板を前記湾曲成形温度まで予加熱し、
予加熱した前記ガラス板を前記湾曲成形ステーションに導入して、湾曲成形用の上方部材の下方の水平位置に配置し、
前記水平位置から、前記予加熱したガラス板を、上昇ガス流により移送して前記上方部材に接触させ、
前記ガラス板が前記上方部材に接触しているときに、前記湾曲成形温度よりも高温のガスを、前記ガラス板の下面の局部的表面部分に向けて吹き出すことを開始して、該局部的表面部分のガラス流動性を該ガラス板の他の部分よりも増加させ、以って前記上昇ガス流により、該局部的表面部分に沿って該ガラス板を曲げ、
前記局部的表面部分に沿って曲げられた前記ガラス板を、前記上方部材の下に配置した加圧フレーム型式の下方湾曲部材の上に置くこと、
を特徴とする方法。
【請求項2】 前記ガスの吹き出し時間が5秒以下であることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】 前記ガスの吹き出し圧力が350Pa以下であることを特徴とする請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】 前記ガスの温度が前記湾曲成形温度より少なくとも100℃だけ高いことを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の方法。
【請求項5】 前記ガスの温度が950℃以上であることを特徴とする請求項4記載の方法。
【請求項6】 前記ガラス板が予め620℃以上の温度まで均一に加熱されることを特徴とする請求項1〜5の何れかに記載の方法。
【請求項7】 前記ガスの吹き出しの間に、前記ガスにさらされる前記局部的表面部分が、前記湾曲成形温度から少なくとも10℃だけ更に加熱されることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の方法。
【請求項8】 湾曲成形炉と、該湾曲成形炉に内設されてガラス板を運搬する水平コンベヤと、該湾曲成形炉の端部に対し等温状態で該湾曲成形炉に隣接して、該水平コンベヤが内部に達するとともに、雰囲気がガラス板の湾曲成形温度に実質的に等しい温度を有する湾曲成形ステーションとを具備し、該湾曲成形ステーションが、前記水平コンベヤの上方に配置される上方部材と、ガラス板を該水平コンベヤから移送して該上方部材に接触させる気体圧力手段と、該ガラス板を該気体圧力手段の上昇ガス流の作用により該上方部材に接触させた後に、該ガラス板を受けるために該上方部材の下方に配置される加圧フレーム型式の下方部材とを備えてなる、ガラス板の湾曲成形装置において、
ガラス板が前記上方部材に接触しているときに、該ガラス板の下面の局所的表面部分に向けた強制的な上昇気流による、前記湾曲成形温度よりも高温のガスの吹き出しを開始して該局部的表面部分を加熱するとともに、該局部的表面部分のガラス流動性を該ガラス板の他の部分よりも増加させる加熱手段を備えることを特徴とする装置。
【請求項9】 前記加熱手段が前記下方部材を担持するキャリッジに設けられることを特徴とする請求項8記載の装置。
【請求項10】 前記加熱手段が、前記高温のガスを吹き出すノズル、多孔管、又は吹き出し室から構成されることを特徴とする請求項8又は9記載の装置。
【請求項11】 前記加熱手段に、前記湾曲成形炉内で予め加熱され、次いで電気炉を通って成形温度まで加熱された圧縮空気を供給することを特徴とする請求項10記載の装置。
【請求項12】 前記加熱手段に、前記湾曲成形ステーションの外側に装着されたバーナにより生成され、かつブロアにより加速された噴霧ガスを供給することを特徴とする請求項10記載の装置。
【請求項13】 前記加熱手段がアセチレンバーナからなることを特徴とする請求項8又は9記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、概して自動車に取り付けるための湾曲され強化されたガラス板の製造技術に関する。特に本発明は、ガラス板を、湾曲成形炉中で予め加熱し、上方部材の下方の水平位置に配置し、ガス圧力によって上方部材に押し付けて圧縮し、その圧縮搬送工程後、下方湾曲部材の上に置くことを含み、こうして湾曲成形されたガラス板が好ましくは熱強化形式の被制御冷却工程を受けるようにする技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
湾曲成形する目的でガラス板を予め加熱する場合、経済的及び品質的観点から最も有利な技術はトンネル型の包囲体を使用するものである。ガラス板は、水平方向又は実質的水平方向に配置された一般にモータ駆動ローラによる基台からなるコンベヤ手段により、この包囲体を通って長手方向に移動する。本発明の主題である上記の湾曲成形技術のみを考えた場合、ガラス板は炉の出口において、上方部材の下方で停止される。この上方部材は、水平コンベヤからその中心が開放した略環状のフレーム型下方部材へのガラス板の搬送に関与する。
【0003】
これらの技術は多くの改良の主題であり、その例は、特に、フランス特許公報B-2085464号、ヨーロッパ特許公報B-3391号、B-5306号、B-169770号、B-240418号、及びB-241355号に記載されており、更に詳細にはこれらを参照すべきである。
【0004】
湾曲成形に必要とされる変形は多くの方法にて行われ、これらは上方及び下方部材によって遂行されるそれぞれの役割りにおいて著しく異なる。所望される湾曲率が小さい場合、上方部材は単純な平板から構成され、この平板はガラス板を環状フレーム上に解放し、このフレームの周縁がガラス板の最終形状を形成する(ヨーロッパ特許公報B-3391号、B-240418号)。また、それより僅かに大きい湾曲率の場合、上方部材自体が湾曲して、少なくともガラス板を予成形し(フランス特許公報B-2085464号、ヨーロッパ特許公報B-169770号、B-241355号)、このガラス板は場合に応じて、下方部材上にてその必要とされる特定形状に仕上げられる。いずれの場合でも、この下方部材はその後の強化工程中、支持フレームとしての機能を果たす。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
複雑な形状の窓ガラスを得るために上記の工程を継続しようとする場合、加圧工程が必要なことは明らかである。この加圧工程は、特別な加圧フレームによって行なわれるのが最も一般的であり、ガラス板は湾曲成形後に特定の強化フレーム上に搬送される。加圧フレームは単一の連続的なレールではなく、相互に関節式に接続された一連の要素から構成され、このフレームは、閉じるにつれてガラス板の側方部分を例えば中央部分に向けて動かす。更に、このような精密化は、下方湾曲フレームに代えて、主としてガラス板の中央部分を支持することを目的とする一体の加圧金型又は他の同等手段の使用を伴うことが多いことも認識すべきである。しかしこの場合、光学的品質を適正に制御することはより困難であり、したがって、下方部材がその中心にて開放されたフレーム型式からなる場合に特に関心を持つべきである。
【0006】
更に精密な湾曲成形機械を開発しようとするこのような試みには、生産率の低下、特に、単にガラスに対する取り扱い工程数が増加するという理由に起因してガラスの光学的品質が劣化するという問題が伴う。更に、いかなる変形方法を選択しようとも、湾曲成形に伴う主たる問題点はガラス板の温度を適正に制御することにある。ガラスの流動学的挙動は周知であり、次のように極めて簡単に要約することが出来る。即ち、変形時間が一定の場合、表面要素の温度が高ければ高い程、(ガラスの破損の原因となる収縮を伴なわずに)実現可能な最大変形が大きくなる。その結果、所定の変形を実現するため、この表面要素の温度が高ければ高い程、この変形を実現するのに必要とされる時間は短くて済む。
【0007】
実際には、変形時間及び変形の「大きさ」というこれら2つのファクタは共に影響力を有し、そのいずれか一方を不当に大きくすることは望ましいことではない。実際上、変形時間を長くすれば、湾曲成形工程に固有の成形傷が生ずる危険性が著しく増す。一方、変形の大きさに関しては、成形しようとする板ガラスの形状に左右される。
【0008】
本発明の発明者は、ガラス板表面の一部の要素が不適当な加熱に本質的に起因した流動学的観点から不適当な挙動を有するとともに、この表面要素が、例えばガラス板の他の部分と同一温度である一方で、より大きく変形させることを望まれることから、より複雑化した変形方法に至ることは極めて普通のことであると確証した。
【0009】
ガラス板を加熱する際の精度に関する問題は、既に過去に解決しようとする試みが為されていた。米国特許公報A-4441907号において、例えば、ガラス板の湾曲成形炉内での移動の一部に伴ってこのガラス板と共に動く複数のバーナが記載されている。これらのバーナはこの目的のため、炉の軸線に対して平行に動くキャリッジ上に取り付けられる。また、ヨーロッパ特許出願A-338216号において、ガラス板の長手方向への変位と同期して横方向に動く付加的な抵抗器を炉に設け、これら抵抗器が湾曲線を正確に加熱し得るように移動可能にする提案が為されている。こうした局部的な加熱の主な欠点は、加熱が比較的早期に行われ、従って、例えばガラス板を上方部材の下方に位置決めするとき等、ガラス板の温度が少なくとも一部分、均等になる危険を有することにある。さらに、ガラス板のあらゆる変形の危険性を排除することが望ましい場合は、過度の加熱を制限しなければならない。
【0010】
例えば、日本国特許公告公報第88058771号において、跡を残さずに消える塗料又は他の吸熱剤によりガラス板に湾曲線を標識することも提案されている。この場合にも、必要な過度の加熱は湾曲成形のはるか以前に行われる。さらに、この工程を実施するためには、噴射装置によって吸熱剤を塗布するための補助ステーションを必要とする。
【0011】
湾曲成形炉中のこれら動作は、湾曲成形室内部の動作自体によって補助し、又は置換することが出来る。フランス特許出願A-2284570号及びA-2315486号により、ガラス板用の湾曲成形ブレスの圧縮要素に、ブレスを開放空気中に配置するとき、ガラス板の冷却を補正することを目的とする所定数のバーナを設けることが公知である。これらバーナは、例えば、貫通オリフィスの存在によって上記の冷却が特に強力に行われるこれらの領域において、特に機能を発揮する。
【0012】
しかし、上記の従来技術は、ガラス板が上方部材の下方で停止する前であっても、バーナが作動しているため、例えば湾曲線に沿って実際に局部的に加熱することは出来ない。さらに、これらガラス板は上記の各圧縮要素間に極めて短時間だけ滞まるため、この方法は高温環境を維持する場合に特に適用可能である。本発明の主題である湾曲成形技術におけるこの高温環境は、湾曲成形工具を単に炉自体又はその付属物内に配置することだけで得られるものである。そして、提案されたバーナは火災の危険を有するため、湾曲成形温度にある湾曲成形室自体に取り付けることが出来ない。
【0013】
多少なりとも局部的なこれらの異なる加熱作用を別にして、湾曲成形装置は正確に湾曲成形することが最も困難な領域に成形補助手段を備えることが公知である。この成形補助手段は、ガラス板に付与される主要な力に付加してガラス板に力を及ぼす点状のガス噴流により実現されるが、このような手段は局部的、特に端縁に沿ってその効率が劣る(ヨーロッパ特許公報B-5306号又はヨーロッパ特許公報298426号)。光学的欠点の進展を防止するため、このガス噴流はガラス板が湾曲成形室に入るときの温度と実質的に等しい温度まで加熱される。しかし、この場合、ガスの加熱はガラス板に対する全ての熱作用を阻止するためにだけ行われ、したがってガラス板を下方部材の上に配置した後、ガス噴流の衝撃領域は周囲領域よりも大きく変形する可能性を有さない。
【0014】
本発明の目的は、さらに高圧を作用させることなく、ガラスの粘度を局部的に増加させることにより上記の湾曲成形が困難な領域を湾曲させるとともに、この局部的作用を可能な限り精密化することにより、根本的に全く異なる手段を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段と作用】
上記目的を達成するため、本発明に係るガラス板の湾曲成形方法は、ガラス板の湾曲成形温度に実質的に等しい温度を有する湾曲成形ステーションで実施されるガラス板の湾曲成形方法において、ガラス板を湾曲成形温度まで予加熱し、予加熱したガラス板を湾曲成形ステーションに導入して、湾曲成形用の上方部材の下方の水平位置に配置し、水平位置から、予加熱したガラス板を、上昇ガス流により移送して上方部材に接触させ、ガラス板が上方部材に接触しているときに、湾曲成形温度よりも高温のガスを、ガラス板の下面の局部的表面部分に向けて吹き出すことを開始して、局部的表面部分のガラス流動性をガラス板の他の部分よりも増加させ、以って上記上昇ガス流により、局部的表面部分に沿ってガラス板を曲げ、局部的表面部分に沿って曲げられたこのガラス板を、上方部材の下に配置した加圧フレーム型式の下方湾曲部材の上に届くこと、を特徴とするものである。また、この吹き出し時間は、5秒を超えて継続しないようにされる。
【0016】
本発明の上記説明から明らかであるように、ガラス板は湾曲成形温度、即ちガラス板の全体に適した温度ではあるが、所定の局部的な表面要素には不十分な湾曲成形温度まで予め加熱される。この基本的な加熱により、湾曲成形後に加熱強化工程を行わない場合、ガラス温度は約500℃まで上昇し、湾曲成形後、加熱強化工程を行なう場合は620〜650℃まで上昇する。これにより、高温度でのガスの吹き出しに伴うガラスに対する悪影響、特に渦巻き状の変形を防止することが可能となる。
【0017】
本発明において、高温とはガラスの基本温度を少なくとも100℃、特に望ましくは200℃だけ上廻る程度の温度を意味するものとし、流量及び吹き出し圧力はガラス板の上記表面要素の温度を例えば5秒間の吹き出し時間の場合、10℃程度上昇させ得るように調節する。このことは、ここで考慮した温度範囲で、ガラスの流動性がこれら表面要素において2倍になることを意味する。故に、本発明は、下方部材を上方部材の下方に位置決めするための時間に適合する短い処理時間にて極めて応答性に富んだ動作を可能にし、このため、この工程は湾曲成形工程に完全に組み込むことが出来る。基準位置にてガラス板に作用させることにより、この吹き出し動作を局部的に行うことが一層容易となる。
【0018】
極めて普遍的に、本発明は水平位置にて湾曲成形する全ての方法に適用可能である。これらの方法において、ガラス板は、ガラス板を湾曲成形炉内へ運ぶコンベヤから下方部材へと、炉自体又は炉に続く湾曲成形ステーションの、ガラスに対する湾曲成形温度に実質的に等しい温度の高温の雰囲気が維持される高温領域内に配置した上方部材により搬送される。
【0019】
例えば、ガラス板を把持要素により吸着し、次に湾曲成形フレーム上に落下させる湾曲成形方法(ヨーロッパ特許公報A-3391号及びA-240418号)、ガラス板を吸着しかつ成形把持要素により予め成形し、次に環状フレームにより解放又は加圧する湾曲成形方法(フランス特許公報A-2085464号、ヨーロッパ特許公報A-240355号)、或はガラス板を成形上方部材に押し付ける高温の上昇ガス流によりガラス板を持ち上げ、次に機械的加圧を行なう湾曲成形方法について以下に更に詳細に説明する。勿論、これら基本的な方法の変形例又は組み合わせの全ては当該技術分野にて周知である。
【0020】
本発明による局部的な加熱方法の別の利点は、バーナ及びその他の付加的な加熱手段により損傷される可能性のあるモータ駆動ローラによりガラス板を全体的に搬送する場合、及び特にガラス板の下面を更に加熱する結果、この面がローラの摩擦及び波状作用による変形を受け易い場合、湾曲成形炉内では困難であるガラス板の下面への作用が可能である点にある。しかし、装飾及び/又は骨組バンドを形成するエナメルの燃焼に伴なう諸問題点は、上方部材が一般に上向きの凹状面を有する湾曲形状を有し、このためガラス板の凸側がその下面に対応することを生じさせる。更に、延伸による変形は凹状側部に対する圧縮による変形よりも全体としてより臨界的であり、従ってより高温度を必要とする。
【0021】
本発明による方法の別の有利な点は、ガラス板に付与される熱の総量を少なくすることが可能であり、所望の箇所に正確に熱を付与することが出来ることである。あるいはまた、ガラスの密度の変化はここで考慮した温度領域内で極めて急速に行われ、これに起因する高温又は低温という概念は僅か数度の程度に過ぎないことを考慮すると、比較的低温のガラス板に作用することが可能といえる。熱強化により冷却される前に環状フレームにより支持されていないガラス板の中央部分はそれ自体の重量の作用で変形する傾向が少ないため、低温のガラスはより高度の光学的品質及びより優れた湾曲率を備えるガラスと同義となる。他方、エナメル被覆した板ガラス上の全ての部分は常に板ガラスの凹状側(取り付け後の自動車の方向)にあり、故に、極めて高温のガスを両面に吹き付けることでこの部分が損傷される危険性は全くない。
【0022】
上記吹き出しは、ガラス板を持ち上げることが出来ず、又は相当な力が簡単にはガラス板に付与され得ないような圧力及び流量にて行うことが望ましい。典型的に、この吹き出しは加熱すべき領域にて500Pa以下の圧力にて行われる。このため、例えば950℃以上の極めて高温のガスを作用させることが特に有利であり、これによりかなり少ない流量を維持することが可能となる。この場合、吹き出しは空気圧の作用に影響を及ぼさず、強制的上昇気流による加熱で純然たる加熱作用を行なう。その結果、本発明による方法は、ガラス板を傷つける危険性を生じずに適用することが出来、この際ガラス板は上方部材の所定領域に特別には当接しない。
【0023】
極めて普遍的に、本発明の方法によれば、上方部材に接触するときに行われる予成形は、例えば上方部材を十分遠方に移動させ、環状フレームで加圧することによる補助的工程を不要にすることにより改善される。そのため平均湾曲率(典型的に最小曲率半径が1m以下でないガラス板に対して。ただしこれら限界点は曲率半径、特に容積寸法、屈曲部の位置及び数以外の判断基準の関数である。)の場合、ガラス板の落下後、上方部材との接触状態で予成形されたガラス板を再配置するとともに、その後の強化工程中、ガラス板を支持する下方構成部材によって直接進めることが可能となる。実際上、ガラス板を水平コンベアから上方の成形部材まで搬送する目的にて吸着する場合、この吸着が上方部材自体を通して又はその周縁に沿って行なうかどうかを問わず、本発明による吹き出しはある程度まで、ガラス板が上方部材の形状に沿って上方部材と接触状態で予成形される可能性を向上させることで、この吸着をより効果的にする。本発明は又、上方部材に押し付けて予成形しない場合でも適用可能であることを理解すべきである。
【0024】
特に有利な場合は、極めて大きく湾曲成形されるガラス板の場合であり、このガラス板は通常、相互に関節式に接続された幾つかの部品から成る加圧フレーム型式の下方部材の使用を要する。フレーム体は単一バーフレームよりも極めて高価であり、特に、関節接続した部品を作動させる例えばジャッキ式の手段を必要とするために、装置を極めて複雑にする。本発明によれば、関節接続式でないフレームにより最小曲率半径が50mmのガラス板を形成することが可能となる。単一バーフレームにおける下方限界値は通常80mmである。
【0025】
上述のように、付加的な加熱によりガラスの流動性は極めて顕著に増大させることが出来る。しかし、緩和時間はそれ自体同一の比率にて分割することが出来るが、これは空気圧による加圧中には行い得ず、又、ガラス板の固有の性質を変質させるものでもない。この点は湾曲率が極めて大きい場合に特に重要であり、この場合、極めて急速に破損する結果を生む危険のある最大応力の極めて大きいガラス板が製造されないようにするためには、ゆっくりと加工するか、又は成形工程後のある時間、加圧フレームを適所に残すことが必要である。これらの共通の目的は応力を除去することにある。本発明による加工により、サイクル時間を短縮することが可能となり、このことは製造速度の面から有利であるのみならず、工具がガラス板に長時間接触した後に残るであろう工具の傷痕を軽減することも可能にする。
【0026】
本発明はさらに、湾曲成形炉と、湾曲成形炉に内設されてガラス板を運搬する水平コンベヤと、湾曲成形炉の端部に対し等温状態で湾曲成形炉に隣接して、水平コンベヤが内部に達するとともに、雰囲気がガラス板の湾曲成形温度に実質的に等しい温度を有する湾曲成形ステーションとを具備し、湾曲成形ステーションが、水平コンベヤの上方に配置される上方部材と、ガラス板を水平コンベヤから移送して上方部材に接触させる気体圧力手段と、ガラス板を気体圧力手段の上昇ガス流の作用により上方部材に接触させた後に、このガラス板を受けるために上方部材の下方に配置される加圧フレーム型式の下方部材とを備えてなる、ガラス板の湾曲成形装置において、ガラス板が上方部材に接触しているときに、ガラス板の下面の局部的表面部分に向けた強制的な上昇気流による、湾曲成形温度よりも高温のガスの吹き出しを開始して局部的表面部分を加熱するとともに、局部的表面部分のガラス流動性をガラス板の他の部分よりも増加させる加熱手段を備えることを特徴とする装置を提供する。
【0027】
本発明による加熱手段は、ガスをガラス板に向けて吹き出す要素に直接関係する限り、下方部材を担持するキャリッジ上に取り付けられることが望ましく、このことは良好な位置決めを実現し、故に好適な加熱位置を設定することを確実にするものである。
【0028】
強制的な上昇気流による加熱手段という用語は、例えばノズル、多数のオリフィス又はスリットが形成された管、或は吹き出し室を意味するものであり、これらの要素は例えば800℃以上の温度まで加熱した空気又は噴霧ガスを吹き出す。このために、湾曲成形炉を通過させかつ小型で極めて高温の電気炉を通過させることにより適当な温度、例えば1000℃まで予熱された圧縮空気を使用することが有利である。湾曲成形ステーションの外側に取り付けられたバーナから送り出され、ベンチュリー管型式の装置又はその他のブロアにより加速された噴霧ガスを使用することも出来る。
【0029】
本発明の変形例において、強制的な上昇気流によるこれら加熱手段は、例えば下面から僅か数センチ、例えば約5cmの位置に配置された穏やかな火災バーナからなる。このバーナには、空気-アセチレン又は酸素-アセチレンのアセチレン系混合ガスが供給される。実際上、かかる混合ガスにより、特に天然ガス、メタン又はプロパンのようなその他の全ての炭化水素物により得られる温度と比較して極めて高温の火災温度を達成することが可能となる(酸素-アセチレン混合体の火災温度は3160℃である)。ガラス板はその可塑変形温度よりも高温、特に望ましくは620℃以上の温度の火災を当てる限り、高温ガスの作用はガラス板の光学的品質に有害ではなく、表面の変形に特に寄与しない。
【0030】
アセチレン系混合ガスは極めて高温であるため、付加的な加熱時間を更に著しく短縮し、例えばその時間を1又は2秒に制限することも可能である。
【0031】
本発明のこの変形例は、下方部材が、高温の湾曲成形ステーション内に恒久的に位置せず、強化ステーションを通過する間に冷却される場合、又は一般に炉の外側の待機位置すなわち非加熱領域内にある場合に、下方部材を担持するキャリッジ上にバーナを取り付ける場合に特に適している。実際、アセチレンは300℃以上の温度で分解するが、これは湾曲成形ステーション内に恒久的に配置する上で問題を生じる。しかし、ガス管に対する断熱手段が設けられるならば、かかる恒久的な配置は決して不可能ではないことに留意すべきである。
【0032】
本発明のその他の詳細及び有利な特徴は、添付図面に関する以下の説明から明らかになるであろう。
【0033】
【実施例】
以下、本発明の実施例に関し、ヨーロッパ特許公報B-169770号に開示された、上昇する高温のガス流によりガラス板を水平コンベアから上方部材へ搬送する湾曲成形装置に適用した場合について詳細に説明する。しかし、本発明はこの型式の搬送手段への適用に限定されるものではなく、特に、上方部材を通じて直接吸引するか又はガラス板の周縁に沿って吸引することにより、ガラス板を吸引する段階を備えた湾曲成形方法にも適用可能である。
【0034】
図1に示した湾曲成形装置はトンネル型の炉1を備え、炉1内ではガラス板が回動ローラ2からなる水平コンベアにより運ばれる。このコンベアは湾曲成形ステーション3内に達し、炉1及び湾曲成形ステーション3に属するそれぞれの壁4,5に適当な穴が形成されている。また、湾曲成形ステーション3の側部は、壁6により境界が形成されている。湾曲成形ステーション3は、隣接する炉の端部と等温状態であることが望ましく、その温度は典型的に550〜650℃程度、少なくとも620℃のガラスを湾曲成形するのに適した温度であることが望ましい。湾曲成形ステーション3は側方出口形式であり、ガラス板は壁6の反対側の壁に形成された開口を通じて湾曲成形された後に除去される。
【0035】
湾曲成形ステーション3は、下方ダクト7及び上方ダクト8を有する煙突内に組み込まれ、上昇する高温ガス流が閉回路において、ダクト7により放出されかつダクト8により回収される。湾曲成形ステーション3は、昇降装置により作動される中実の雄型湾曲成形金型10から成る上方部材を備える。ガラス板がこの湾曲成形上型10に関して正確に位置決めされると直ちに、この場合ファンの始動により簡略化した操作が開始される。このファンは上昇するガス流を発生させるが、このガス流は、ローラ2からガラス板9の重量の一部を除去するのに十分であり、従って上記ローラ上でのガラス板9の摩擦を軽減するのに十分な低圧を有する。
【0036】
この実施例において、ガラス板9の中央部分は湾曲成形する必要はなく、その側方フランジは、ローラ2に対して平行な2つの折り重ね軸線11,12を中心として屈曲させる必要がある。このような湾曲成形を行なうためには、曲率半径が比較的小さい場合、通常、関節接続フレーム形式の下型を使用することが必要とされる。さもなければ、極めて大きく湾曲されるフレームの端部分が板ガラスの周縁に当接せず、境界領域に光学的欠点を生じさせるからである。この傷付け現象は、本発明によって、雄型金型による予成形を改良し、下方部材をガラス板に接触させるようにしたとき、ガラス板のフランジの一部が既に屈曲成形されているようにすることで防止することが可能である。
【0037】
この実施例において、図3にさらに詳細に示した環状フレーム13は、湾曲成形上型10の周縁に対応する周縁を形成する連続的な単一のレールから単純に構成されている。環状フレーム13は、コンベヤのローラ2に対して平行に取り付けられたレール15上で湾曲成形ステーション3に入るキャリッジ14により担持される。
【0038】
キャリッジ14には、キャリッジ14が上方部材の下方位置にあるとき、湾曲成形線11,12の真下に配置される複数のバーナ16が設けられる。これらのバーナ16はガスノズル管を備える形式のものであり、ダクト17,18と管20に接続されたホース19とを介して燃料ガス、望ましくはアセチレン形式のガスが供給される。燃焼ガス、空気又は望ましくは純酸素は、管21、ホース22、及びダクト23,24を通じて同様に供給される。燃料ガス及び燃焼ガスのそれぞれの流量は弁25,26により調節される。
【0039】
ホース19,22はクローラバンド27の形式のチェーンにより案内することが望ましく、クローラバンド27はキャリッジ14が湾曲成形ステーション3に出入りする間、ホース19,22を保護する。このクローラバンド27は所望とあれば断熱要素にて形成することが出来るが、キャリッジ14が湾曲成形ステーション3に滞在する時間は極めて短時間であるため、必ずしもそうでなくともよい。
【0040】
図3は、本発明による湾曲成形方法を示す。湾曲成形上型10が下降され、上昇するガス流の作用によりガラス板9が運ばれて上型10と接触している。この図から明らかなように、ガラス板の側方部分は僅かに湾曲されている。次に、フレーム13を担持するキャリッジ14を送入すると、バーナ16が屈曲線11,12に対して極めて正確に高温ガスを吹き出し、このためガラスの粘度が局部的に増し、上昇するガス流の動作はフランジの少なくとも一部を上型10に押し付けるのに十分となる。したがって、ここに図示しないその後の段階、即ち、環状フレームによる加圧段階は、加圧工程を完了させることのみを目的とするものであり、板ガラスの品質を損なう危険性を伴わずにほとんど瞬間的に行なうことが出来る。
【0041】
加圧後、キャリッジ14はレール15により案内されて、湾曲成形ステーション3から出る一方、ガラス板はレール15に対して平行なレール上を走行するキャリッジ上に取り付けられた図示しない強化フレームにより回収される。このように、ガラス板は強化ステーションに向けて搬送される。
【0042】
局部的な更なる加熱の程度は吹き出されるガスの温度、及びその流量並びに圧力に依存する。以下の表には、5秒間高温の空気を吹き出す場合、ガラスの更なる加熱面積1m2(フロートガラス厚さ3mm)当たりで計算した、10℃の温度上昇に対応するデータが示されている。
【0043】

【0044】
上記表に掲げた値から、350Pa以下の圧力(したがってガラス板を持ち上げることは出来ない圧力)で950℃以上の温度の空気は、ガラス板を極く少量の空気(例えば更なる加熱が0.5m2程度の面積に影響を与えると仮定した場合、4m3以下の量)で更に加熱することが可能であることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
下方部材を担持するキャリッジ上に取り付けられたガスバーナを備えるガラス板の湾曲成形装置の図である。
【図2】
図1に示したキャリッジの拡大図である。
【図3】
湾曲成形上型及び環状フレームから成る湾曲成形プレスの、加圧工程の直前における図である。
【符号の説明】
1…炉
2…ローラ
3…湾曲成形ステーション
6…壁
7…下方ダクト
8…上方ダクト
9…ガラス板
10…上型
11,12…軸線
13…フレーム
14…キャリッジ
15…レール
16…バーナ
27…クローラバンド
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-09-21 
出願番号 特願平3-205921
審決分類 P 1 651・ 534- YA (C03B)
P 1 651・ 113- YA (C03B)
P 1 651・ 121- YA (C03B)
最終処分 維持  
前審関与審査官 武重 竜男  
特許庁審判長 大黒 浩之
特許庁審判官 西村 和美
野田 直人
登録日 2002-03-01 
登録番号 特許第3283887号(P3283887)
権利者 サン-ゴバン ビトラージュ
発明の名称 ガラス板の湾曲成形方法及びその装置  
代理人 西山 雅也  
代理人 青木 朗  
代理人 戸田 利雄  
代理人 石田 敬  
代理人 石田 敬  
代理人 西山 雅也  
代理人 青木 朗  
代理人 戸田 利雄  
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