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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08G
審判 全部申し立て ただし書き3号明りょうでない記載の釈明  C08G
審判 全部申し立て ただし書き2号誤記又は誤訳の訂正  C08G
審判 全部申し立て ただし書き1号特許請求の範囲の減縮  C08G
管理番号 1107931
異議申立番号 異議2002-71889  
総通号数 61 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-01-20 
種別 異議の決定 
異議申立日 2002-08-05 
確定日 2004-09-22 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3252890号「2液硬化型組成物」の請求項1に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3252890号の請求項1に係る特許を取り消す。 
理由
【1】手続の経緯

本件特許第3252890号は、平成8年6月28日に特許出願され、平成13年11月22日に特許の設定登録がなされ、その後、特許異議の申立てがなされ、取消理由を通知したところ、その指定期間内に訂正請求書と意見書が提出され、訂正拒絶理由を通知したところ、その指定期間内に訂正請求書に対する手続補正書と意見書が提出され、その後、特許権者より上申書が提出されたものである。

【2】訂正の適否

1.訂正請求書に対する補正の適否
訂正請求書に対する手続補正の内容は、下記の訂正事項イ、ロを削除し、それに伴って、訂正請求書の記載を補正するものであるから、訂正請求書の要旨を変更するものではない。
訂正事項イ:請求項2を加入する。
訂正事項ロ:段落【0014】中の、「50重量部より多い場合は、得られる硬化塗膜が堅く脆いものとなることがある。」を「50重量部より多い場合は、得られる硬化塗膜が堅く脆いものとなる。」と訂正する。
したがって、この手続補正は、特許法第120条の4第3項において準用する同法第131条第2項の規定に適合する。

2.訂正事項
手続補正後の訂正請求書による訂正事項は、次のとおりである。
・訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1の
「下記(A)成分及び(B)成分からなる2液硬化型組成物。
(A)1個以上の水酸基を有する(メタ)アクリレートの1種類以上5重量%以上と前記(メタ)アクリレート以外のエチレン性不飽和基を有する単量体の1種類以上95重量%以下とを、150〜350℃の共重合温度において連続重合して得られる、数平均分子量が1000〜20000の共重合体。
(B)有機ポリイソシアネート」を
「下記(A)成分及び(A’)成分並びに(B)成分からなる無溶剤型2液硬化型組成物。
(A)1個以上の水酸基を有する(メタ)アクリレートの1種類以上5重量%以上と前記(メタ)アクリレート以外のエチレン性不飽和基を有する単量体の1種類以上95重量%以下とを、150〜350℃の共重合温度において連続重合して得られる、数平均分子量が1000〜20000の共重合体
(A’)(A)成分100重量部を基準として1〜50重量部の低分子量多価アルコール
(B)有機ポリイソシアネート」と訂正する。
・訂正事項b
段落【0005】における「本発明者らは、鋭意検討した結果、前記課題を解決するためには特定の水酸基を有する共重合体と有機ポリイソシアネートとを組み合わせた2液硬化型組成物が有効であることを見い出した。」を、「本発明者らは、鋭意検討した結果、前記課題を解決するためには特定の水酸基を有する共重合体と特定割合の低分子量多価アルコールと有機ポリイソシアネートとを組み合わせた無溶剤型2液硬化型組成物が有効であることを見い出した。」と訂正する。
・訂正事項c
段落【0014】における「(A)成分には、必要に応じて低分子量多価アルコールを配合することが、得られる硬化塗膜の機械的物性等を向上させることができるため好ましい。」を、「(A)成分には、低分子量多価アルコール(A’)成分を配合することが、得られる硬化塗膜の機械的物性等を向上させるために必要である。」と訂正する。
・訂正事項d
段落番号【0014】の「(A)成分において、低分子多価アルコールを配合する場合の好ましい割合は、水酸基含有共重合体に100重量部に対して1〜50重量部であり、より好ましくは5〜30重量部である。」を、「(A)成分において、低分子多価アルコールを配合する割合は、水酸基含有共重合体に100重量部に対して1〜50重量部であり、好ましくは5〜30重量部である。」と訂正する。
・訂正事項e
段落【0024】の「実施例1」を、「比較例3」と訂正する。
・訂正事項f
段落【0032】の【表1】の第1行に左から「実施例」、「1」、「2」、「3」とあるのをそれぞれ「実施例及び比較例」、「比較例3」、「実施例2」、「実施例3」と訂正する。
・訂正事項g
段落【0033】中の「実施例1」(4箇所)を「比較例3」と訂正するともに、「(A)成分である混合物C-2を得た。」を「(A)成分と(A’)成分を含む混合物C-2を得た。」と訂正する。
・訂正事項h
段落【0034】中の「実施例1」(4箇所)を「比較例3」と訂正するともに、「(A)成分である混合物C-3を得た。」を「(A)成分と(A’)成分を含む混合物C-3を得た。」と訂正する。

3.訂正の目的の適否、訂正の範囲の適否、拡張、変更の存否
訂正事項aのうち(A’)成分を組成物の成分とする訂正は段落【0014】の記載に基づいて特許請求の範囲を減縮するものであり、「2液硬化型組成物」を「無溶剤型2液硬化型組成物」とする訂正は段落【0004】や段落【0040】の記載に基づいて特許請求の範囲を減縮するものであり、「数平均分子量が1000〜20000の共重合体。」の末尾の「。」を削除する訂正は誤記を訂正するものであるから、いずれも訂正の目的の要件を満足し、また、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものである。
訂正事項b〜hは、訂正事項aの訂正に伴い、特許請求の範囲の記載と発明の詳細な説明の記載とが整合しなくなったことを解消するためのものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的としており、訂正事項aと同様に、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内においてなされたものである。
また、訂正事項a〜hは実質上特許請求の範囲を拡張し、または変更するものではない。

4.まとめ
以上のとおりであるから、本件訂正は、特許法第120条の4第2項、及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項から第3項までの規定に適合するので、当該訂正を認める。

【3】本件発明

訂正後の本件の請求項1に係る発明(「本件発明」という)は、訂正明細書の請求項1に記載された、以下のとおりのものと認める。
「下記(A)成分及び(A’)成分並びに(B)成分からなる無溶剤型2液硬化型組成物。
(A)1個以上の水酸基を有する(メタ)アクリレートの1種類以上5重量%以上と前記(メタ)アクリレート以外のエチレン性不飽和基を有する単量体の1種類以上95重量%以下とを、150〜350℃の共重合温度において連続重合して得られる、数平均分子量が1000〜20000の共重合体
(A’)(A)成分100重量部を基準として1〜50重量部の低分子量多価アルコール
(B)有機ポリイソシアネート」
ここで、共重合体の数平均分子量は、段落【0010】で定義された測定法、即ち、溶媒としてテトラヒドロフランを使用し、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィにより測定した分子量をポリスチレン換算した値であると認める。

【4】取消理由について

1.取消理由の概要
当審が通知した取消理由のうち、理由2の概要は、訂正前の請求項1に係る発明は、その出願前に国内において頒布された刊行物1(特公平5-61284号公報:特許異議申立人が提出した甲第1号証)、刊行物2(特開平3-119010号公報:同甲第2号証)、刊行物3(特開平7-196741号公報:同甲第3号証)、刊行物4(特公昭58-21668号公報:同甲第4号証)、刊行物5(特開平4-117418号公報:同甲第5号証)、刊行物6(特開昭57-76045号公報:同甲第6号証)に記載された発明に基づいてその出願前にその発明の属する分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、訂正前の請求項1に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである、というものである。

2.取消理由に対する判断
刊行物1には以下の記載事項がある。
・記載事項a
「1 数平均分子量500乃至6000、・・・を有し、高固形分で低分子量のビニルポリマー生成物を高い収率で製造するバルク重合方法、またはビニルモノマー類の重量を基準として25%以下の反応溶剤の存在下で重合を行う方法であって、同時かつ連続的に:
(a)(i)少なくとも一種類のモノアルケニル芳香族モノマーおよび少なくとも一種類のアクリルモノマーからなるビニルモノマー類の混合物、ならびに
(ii)・・・となる量の重合開始剤
を、前記未反応ビニルモノマーおよび前記ビニルポリマー生成物からなる溶融樹脂混合物を含む連続完全混合反応帯へ仕込み:
(b)上記連続完全混合反応帯において:
(i) ・・・、
(ii)・・・、
(iii)180℃乃至270℃の温度範囲の、・・・反応温度に溶融樹脂混合物を維持する
ことを特徴とするバルク重合方法。
7 反応温度を215℃乃至270℃の範囲内に維持する特許請求の範囲の請求項1記載の方法。
14 モノマー類の仕込みが、10乃至80重量%のモノアルケニル芳香族モノマー、10乃至50重量%のアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルおよび20乃至50重量%のヒドロキシアルキルアクリレートまたはヒドロキシアルキルメタクリレートを含む架橋可能な熱硬化性ポリマーの形成に適合する特許請求の範囲第1項記載の方法。」(特許請求の範囲の請求項1、7、14)
・記載事項b
「とくに断らない限り、分子量はゲル浸透クロマトグラフを使用して測定されたものである。」(第5頁第10欄第17〜19行)
・記載事項c
「このポリマー生成物の架橋に利用できる硬化剤の例としては、・・・ポリイソシアネート類・・・などがある。」(第8頁第16
欄第8〜12行)
・記載事項d
「本発明の目的にたいしては、コーティングの最終固形分を低下される恐れのある外部からの希釈剤類を導入しないことが重要と認識されねばならない。」(第8頁第16欄第25〜28行)
記載事項a〜dからみて、刊行物1には、「「10乃至80重量%のモノアルケニル芳香族モノマー、10乃至50重量%のアクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステルおよび20乃至50重量%のヒドロキシアルキルアクリレートまたはヒドロキシアルキルメタクリレートを180℃乃至270℃の温度範囲、特に、215℃乃至270℃の温度範囲において連続的に重合して得られるゲル浸透クロマトグラフを使用して測定された数平均分子量500乃至6000の共重合体」と「ポリイソシアネート類」からなる希釈剤類の導入がない硬化型組成物」の発明(以下「刊行物1の発明」という。)が記載されていると認められる。
本件発明と刊行物1の発明を対比すると、後者における「ヒドロキシアルキルアクリレートまたはヒドロキシアルキルメタクリレート」は前者における「1個以上の水酸基を有する(メタ)アクリレートの1種以上」に相当し、後者における「「モノアルケニル芳香族モノマー」及び「アクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル」」は前者における「1個以上の水酸基を有する(メタ)アクリレート以外のエチレン不飽和基を有する単量体の1種以上」に相当する。また、前者における「1個以上の水酸基を有する(メタ)アクリレートの1種以上」は5重量%以上であり、後者における「ヒドロキシアルキルアクリレートまたはヒドロキシアルキルメタクリレート」は20乃至50重量%であるから、両者は、20〜50重量%の範囲において重複する。また、前者の「(メタ)アクリレート以外のエチレン性不飽和基を有する単量体の1種類以上」の量は95重量%以下であり、後者の「「モノアルケニル芳香族モノマー」及び「アクリル酸またはメタクリル酸のアルキルエステル」」の量は、それと、20乃至50重量%の「ヒドロキシアルキルアクリレートまたはヒドロキシアルキルメタクリレート」との合計量が100重量%であることから80〜50重量%と計算されるから、両者は、80〜50重量%の範囲において重複する。共重合温度は、前者が150〜350℃であり、後者が180℃乃至270℃、特に、215℃乃至270℃であるから、両者は、180〜270℃、特に、215〜270℃の温度範囲で重複している。また、前者でいう「無溶剤型」と、後者でいう「希釈剤類の導入がない」は意味を同じくすると認められる。前者でいう「ゲルパーミュエーションクロマトグラフィ」と、後者でいう「ゲル浸透クロマトグラフ」は同意義であり(この点について必要ならば、三田達監訳「MARUZEN高分子大辞典」平成6年9月20日 丸善株式会社発行 p.954 ゲル浸透クロマトグラフィーの項を参照されたい。)、共重合体の数平均分子量は、前者が1000〜20000であり、後者が500〜6000であるから、1000〜6000の値で重複している。
したがって、両者は
「下記(A)成分及び(B)成分からなる無溶剤型硬化型組成物。
(A)1個以上の水酸基を有する(メタ)アクリレートの1種類以上20〜50重量%と前記(メタ)アクリレート以外のエチレン性不飽和基を有する単量体の1種類以上80〜50重量%とを、180〜270℃、特に、215〜270℃の共重合温度において連続重合して得られる、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィにより測定した数平均分子量が1000〜6000の共重合体。
(B)有機ポリイソシアネート」
の発明である点で一致し、以下のa、b、dの点で相違し、cの点で一応の相違がある。
a:硬化型組成物が、前者では2液硬化型であるのに対して、後者ではそのような特定がない点。
b:共重合体のゲルパーミュエーションクロマトグラフィによる数平均分子量の測定法が、前者では溶媒としてテトラヒドロフランを使用し、ポリスチレン換算する方法であるのに対して、後者ではそのような測定法の特定がない点。
c:ポリイソシアネートが、前者では有機ポリイソシアネートであるのに、後者では「有機」との特定がない点。
d:前者では(A)成分100重量部を基準として1〜50重量部の低分子量多価アルコールを配合してなるのに対して、後者ではそのような特定がない点。
そこで、これらの相違点について検討する。
(1)相違点aについて
硬化型組成物を2液型とすることは常套手段であるから、刊行物1の発明に係る組成物を2液型として構成することは容易である。
(2)相違点bについて
刊行物2には、水酸基を有する(メタ)アクリレートとそれ以外のエチレン性不飽和基を有する単量体の共重合体の数平均分子量をゲルパーミュエーションクロマトグラフィによって求めるにあたり溶媒としてテトラヒドロフランを使用しポリスチレン換算した値を採用することが記載されている(特に刊行物2の特許請求の範囲の請求項1、2と第6頁右上欄第8〜18行を参照。)。このように、溶媒としてテトラヒドロフランを使用しポリスチレン換算することは、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィによって数平均分子量求める為の一手段にすぎない。してみれば、刊行物1の発明における数平均分子量の測定法として、溶媒としてテトラヒドロフランを使用しポリスチレン換算する方法を採用することは容易である。
(3)相違点cについて
硬化剤としてのポリイソシアネートが有機ポリイソシアネートを意味することは当業者にとって技術常識である(必要ならば、刊行物2〜6を参照)から、刊行物1の発明におけるポリイソシアネートは有機ポリイソシアネートを意味し、従って、この相違点は実質的なものではない。
(4)相違点dについて
刊行物4の特許請求の範囲には「(イ)・・・の脂肪族又は脂環族ポリイソシアネート、(ロ)・・・分子内にアルコール性ヒドロキシル基1個をもち、分子量が150以下の化合物、(ハ)イソシアネート基と反応しうる活性水素を3個以上有する多価アルコール及び(ニ)・・・分子量が20000以下のポリヒドロキシル高分子化合物から成り、・・・ポリウレタン被覆組成物」と記載され、さらに刊行物4の第3頁第5欄第14〜36行には、「(ハ)成分として用いる、多価アルコールは、ポリイソシアネートと反応して三次元架橋構造を生じ、高い硬度、優れた耐摩耗性及び耐溶剤性を示す塗膜を形成させるためのものであって、・・・分子量200以下のものが好ましい。・・・・。本発明の目的からすればジオール類は、・・・、伸び、たわみ性を適当ならしめるためには添加してもよい。これらの望ましいジオール類は、例えば、・・・1,4-ブタンジオール・・・などの分子量200以下のものである。」と記載されているから、低分子量多価アルコールが、塗膜の機械的物性を向上させることが記載されている。また、刊行物4の第4頁第8欄第27行〜第5頁第9欄第3行の実施例2には、第4頁第8欄第3〜7行に記載されているポリヒドロキシル化合物Bの16.0重量部に対して1,5-ペンタンジオール3.8部重量部及びトリメチロールプロパン4.0部重量部からなる多価アルコールを配合した、すなわち水酸基含有重合体100重量部に対して48.8重量部の多価アルコールを配合した例が挙げられており、第5頁第9欄第4〜16行の実施例3には、第4頁第8欄第8〜12行に記載されているポリヒドロキシル化合物Cの27.0重量部部に対してトリメチロールプロパン7.9重量部部からなる多価アルコールを配合した、すなわち水酸基含有重合体100重量部に対して29.3重量部の多価アルコールを配合した例が挙げられている。なお、実施例2、3における「部」が重量部を表すことは、第4頁第7欄第28〜29行に記載されている。
また、刊行物5の特許請求の範囲の請求項1には、
「(A)コモノマーとして水酸基含有エチレン性不飽和モノマーを0.5〜50重量%含有する共重合体、
(B)ポリイソシアネート及び
(C)多価アルコール成分100〜60重量%及び1価のアルコール成分0〜40重量%からなる反応性希釈剤
を含有してなるウレタン系樹脂組成物」と記載され、該多価アルコール成分として第3頁右下欄第6行〜第4頁右上欄第4行には、1,4-ブタンジオール等の低分子量多価アルコールが記載され、また、第4頁左下欄第6〜11行には「(A)成分の共重合体と(C)成分の反応性希釈剤は、重量比で1/10〜2/1となる割合で含有されるのが好ましい。この比が1/10未満であると、塗膜の硬化性、耐クラック性等に劣り、2/1を越えると、溶液の粘度が高くなりすぎて塗装作業性に劣る。」と記載されているから、刊行物5には、(A)成分100重量部に対して(C)成分を好ましくは50量部配合することが記載されている(重量比2/1から換算)。そして、(C)成分中には100〜60重量%の低分子量多価アルコールが含まれるから、(A)成分100重量部に対して低分子量多価アルコールを好ましくは50〜30重量部配合することが記載されていることになる。
以上のとおり、刊行物4、5には、水酸基含有重合体とポリイソシアネートからなる組成物に低分子量多価アルコールを配合することが記載され、特に刊行物4には、低分子量多価アルコール配合による塗膜の機械的物性向上の効果も記載されている。
してみれば、刊行物1の発明において低分子量多価アルコールを配合することは刊行物4、5の記載から容易であり、共重合体100重量部に対する低分子量多価アルコールの配合量は、刊行物5に記載された上記好適な配合量である30〜50重量部や、刊行物4の実施例の配合量である48.8重量部、29.3重量部を参考とし、また、機械的物性の向上効果の程度を考慮し実験により容易に決定することができるものと認められる。
以上のとおりであるから、相違点dにかかる構成は、刊行物4、5の記載に基づいて当業者が容易に採用できるものと認められる。
なお、本件発明の組成物が(A)、(A’)、(B)以外の成分の存在を排除するものでないことは本件明細書の段落【0016】〜【0017】の記載から明らかであり、また、一価のアルコールは反応性である点で無溶剤型を構成する成分となりうるから、刊行物4における(ロ)成分や刊行物5における(C)成分のような一価のアルコールは本件発明の組成物において排除されていないものと認められる。
仮に、本件発明で一価のアルコールが排除されていると仮定しても、刊行物5には、一価のアルコールが0%の場合が記載され、その場合の低分子量多価アルコールの配合量として50重量部(共重合体100重量部を基準としての値。重量比2/1から換算。)が好ましい値として記載されているから、本件発明の配合量のうち50重量部については容易に採用できるものと認められる。また、刊行物5の発明において低分子量多価アルコール50重量部を好ましい値の下限値としている理由は、それ以下であると溶液の粘度が高くなりすぎて塗装作業性に劣る為であるところ(刊行物5の第4頁左下欄第6〜11行を参照。)、刊行物1の発明における共重合体は低粘度である点に特徴がある(刊行物1の第5頁第9欄第33〜36行を参照。)から、刊行物1の発明に低分子量多価アルコールを配合する場合は50重量部を下回っても好ましい粘度となることが期待できる。また、刊行物4には、一価のアルコール((ロ)成分)の存在とは無関係に発現する低分子量多価アルコールの効果が記載されているのであるから、該効果を期待して、低分子量多価アルコールのみを使用することは当業者にとって容易なことと認められる。してみれば、本件発明の配合量のうち50重量部未満の配合量についても、刊行物4、5の記載に基づき容易に採用できるものと認められる。
ところで、特許権者は、刊行物4について、刊行物4では(ロ)成分が塗膜を形成する過程において空気中に揮発するから実質的に無溶剤型でない旨の主張をしている。しかし、刊行物2の第2欄第2〜6行には「溶剤を必要とせず」と記載されているのみならず、「無溶剤型」とは溶剤を成分としないとの意味であって、塗膜を形成する過程において空気中に揮発する成分の有無とは無関係であるから、この主張は採用できない。なお、刊行物4で(ロ)成分が反応することは、第3頁第6欄第29〜40行の記載からみても、また、刊行物5で1価のアルコール成分((C)成分)を反応性としていることからみても明らかである。
また、特許権者は乙第2号証を提出し、その参考実験1において、(A)成分である共重合体100重量部を基準として、多価アルコールである1,4-ブタンジオールが1〜50重量部配合された組成物は、得られる硬化物の引張強度が優れており、共重合体100重量部を基準として、多価アルコールの配合割合を1〜50重量部とすることにより良好な性能を発揮することができた本件発明は容易に想到できないとも主張している。
しかし、刊行物4に活性水素を3個以上有する多価アルコールとジオール類がそれぞれ別々の効果を奏することが記載されていることからわかるように、多価アルコールがすべて同じ効果を持つとは限らないから、1,4-ブタンジオールによる引張強度の効果をもって低分子量多価アルコール全体の効果とみなすことはできないし、また、引張強度の効果が予測できなくても、上記理由により低分子量多価アルコールは、その使用量を含めて容易に採用できるから、この特許権者の主張も採用できない。
以上のとおり、相違点cは実質的な相違点ではなく、相違点a、b、dに係る構成の採用は容易であり、また、これら相違点a、b、dに係る構成をともに採用することも容易である。
したがって、本件発明は、刊行物1、2、4、5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものと認める。

【6】むすび

以上のとおりであるから、本件発明についての特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件発明についての特許は、特許法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
2液硬化型組成物
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 下記(A)成分及び(A’)成分並びに(B)成分からなる無溶剤型2液硬化型組成物。
(A)1個以上の水酸基を有する(メタ)アクリレートの1種類以上5重量%以上と前記(メタ)アクリレート以外のエチレン性不飽和基を有する単量体の1種類以上95重量%以下とを、150〜350℃の共重合温度において連続重合して得られる、数平均分子量が1000〜20000の共重合体
(A’)(A)成分100重量部を基準として1〜50重量部の低分子量多価アルコール
(B)有機ポリイソシアネート
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、水酸基を有する共重合体と有機ポリイソシアネートからなる、常温で硬化可能な2液硬化型組成物に関するものであり、本発明の組成物は、塗料、防水材、床材、シーリング材、注入材及び接着剤等としてこれらの技術分野において有用なものである。
【0002】
【従来の技術】ポリウレタン樹脂は、その優れたゴム弾性、耐候性、耐磨耗性及び耐薬品性等を生かして、エラストマー、コーキング材、塗料、シーラント、塗布防水材、床材、壁材、合成皮革及び接着剤等の各種分野で広く利用されている。
【0003】防水材、塗り床材等に使用されるポリウレタン樹脂では、原料のポリオール成分として、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール等のポリエーテルポリオール、並びにアジピン酸等のジカルボン酸とジオールの重縮合反応によって得られるポリエステルポリオール等が使用されている。これらのポリオールは、室温で液状であり、無溶剤系の有機イソシアネートとの組み合わせて、無溶剤型の厚膜塗り材として用いられているが、ポリエーテルポリオールを使用するポリウレタン樹脂は、その塗膜が熱及び光酸化により劣化したり、又酸により腐食し易いという問題があり、又ポリエステルポリオールを使用するポリウレタン樹脂は、その塗膜が加水分解により劣化し易いという問題を有するものである。又、これらの組成物の多くは、その架橋剤として芳香族ジアミン等を含有させているが、硬化塗膜に存在する当該ジアミンのため、耐候性が低下してしまうという問題を有するものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】防水材や塗料のような耐候性を必要とする用途の場合は、ポリウレタン樹脂として、前記問題が改善されたポリ(メタ)アクリレートポリオールをポリオール成分としたアクリルウレタン系樹脂が使用されている。しかしながら、従来のポリ(メタ)アクリレートポリオールは分子量が高く、常温では流動性がないため、適当な流動性を付与するために組成物を溶剤で希釈する必要があるが、この場合には、塗布後に溶剤が揮発して肉やせし、一度にせいぜい数十〜数百μmの膜厚の硬化塗膜しか得られない。又、環境面を考えた場合、当該組成物中には通常40〜60重量%の溶剤を含有するものであるが、これは乾燥後にほとんど大気中に排出されている。近年では塗料分野をはじめとして、各種産業で使用する有機溶剤、洗浄溶剤が大気中に放出されることよる、地球規模での大気汚染や生物への影響等が懸念されており、無溶剤系の塗料が要望されてきている。又、従来のポリ(メタ)アクリレートポリオールを使用したポリウレタン樹脂は、硬化塗膜の伸びが十分なものではなかった。本発明者らは、粘度が低く流動性に優れ、その硬化塗膜が、耐熱性、耐候性、耐酸性、耐水性及び伸びに優れ、厚塗りが可能な無溶剤型の組成物を見いだすべく、鋭意検討を行ったのである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋭意検討した結果、前記課題を解決するためには特定の水酸基を有する共重合体と特定割合の低分子量多価アルコールと有機ポリイソシアネートとを組み合わせた無溶剤型2液硬化型組成物が有効であることを見い出した。以下本発明を詳細に説明する。
【0006】
【発明の実施の形態】
○(A)成分
本願発明の組成物においては、(A)成分の水酸基を有する共重合体(以下水酸基含有共重合体という)として、1個以上の水酸基を有する(メタ)アクリレート〔以下水酸基含有(メタ)アクリレートという〕の1種類以上と、該(メタ)アクリレート以外で1個のエチレン性不飽和基を有する単量体(以下エチレン性不飽和単量体という)の1種類以上との共重合体を使用する。
【0007】水酸基含有(メタ)アクリレートとしては、種々のものが使用でき、例えばヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート及びヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート及びグリセリンモノ(メタ)アクリレート等の多価アルコールのモノ又はポリ(メタ)アクリレート、並びにシクロヘキセンオキシドと(メタ)アクリル酸との付加物等のエポキシドと(メタ)アクリル酸との付加物が挙げられる。
【0008】エチレン性不飽和単量体は、前記水酸基含有(メタ)アクリレート以外のものであれば種々のものが使用でき、例えば、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビニル及び(メタ)アクリレート等が挙げられる。(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート及びイソボロニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0009】本発明で使用する水酸基含有共重合体は、水酸基含有(メタ)アクリレートとエチレン性不飽和単量体の合計量を基準として、5重量%以上の水酸基含有(メタ)アクリレートが共重合されたものである必要があり、好ましくは15〜60重量%であり、より好ましくは20〜50重量%である。水酸基含有(メタ)アクリレートの共重合割合が、5重量%より少ないと、有機ポリイソシアネートとの反応が不十分で硬化不良になったり、得られる硬化塗膜の耐薬品性、耐磨耗性及び引張物性に劣るものなる。
【0010】共重合体の数平均分子量は、1,000〜20,000である必要があり、好ましくは1,000〜10,000である。数平均分子量が1,000に満たないものは、組成物を厚塗りできなかったり、硬化塗膜が柔軟性に劣るものとなったりし、他方20,000を越えるものは、粘性が高くなってしまい、塗工等の作業性に劣るものとなる。又、本発明において、数平均分子量及び重量平均分子量とは、溶媒としてテトラヒドロフランを使用し、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(以下GPCと略する)により測定した分子量をポリスチレン換算した値である。
【0011】
【0012】本発明の(A)成分は、水酸基含有(メタ)アクリレートとエチレン性不飽和単量体とを、150〜350℃の高温で連続重合して得られる共重合体である。この高温連続重合法によれば、低分子量で粘度の低い水酸基含有共重合体を得ることができ、さらに当該重合方法は、熱重合開始剤を用いる必要がないか、又は熱重合開始剤を用いる場合でも少量の使用で目的の分子量の共重合体が得られるため、熱や光によりラジカル種を発生するような不純物をほとんど含有しない純度の高い共重合体が得られるため、組成物の硬化塗膜を耐候性に優れたものとすることができる。又、従来の溶液重合により得られるものより多分散度の低い共重合体を得ることができる。
【0013】高温連続重合法としては、特開昭57-502171号、同59-6207号、同60-215007号等に開示された公知の方法に従えば良い。例えば、加圧可能な反応器を溶媒で満たし、加圧下で所定温度に設定した後、水酸基含有(メタ)アクリレートとエチレン性不飽和単量体、及び必要に応じて重合溶媒とからなる単量体混合物を一定の供給速度で反応器へ供給し、単量体混合物の供給量に見合う量の反応液を抜き出す方法が挙げられる。重合溶媒を使用する場合、反応開始時に反応器に仕込む溶媒と単量体混合物に混合する重合溶媒は同一であっても異なっていてもよい。溶媒又は重合溶媒は、特に限定されず、生成した共重合体を溶解できるものであれば良い。例えば、トルエン及びキシレン等の芳香族炭化水素、酢酸エチル、酢酸ブチル、セルソルブアセテート、メチルプロピレングリコールアセテート、カルビトールアセテート及び、メチルプロピレングリコールアセテート、カルビトールアセテート及びエチルカルビトールアセテート等の酢酸エステル、並びにアセトン及びメチルエチルケトン等のケトン類等が挙げられる他、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール及びトリプロピレングリコール等のアルコールを使用することができる。重合溶媒の配合割合としては、単量体混合物100重量部に対して200重量部以下であることが好ましい。又、単量体混合物には、必要に応じて熱重合開始剤を配合することもでき、この場合に使用できる熱重合開始剤は、特に限定されず、一般的に熱重合で使用されるアゾニトリル系の開始剤及び過酸化物系の開始剤等が挙げられる。アゾニトリル系の開始剤としては、例えば2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)及び2,2-’アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)等が挙げられ、過酸化物系の開始剤としては、過酸化水素、ジ-t-ブチルパーオキサイド及びベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。熱重合開始剤を単量体混合物に配合する場合の配合量としては、単量体混合物100重量部に対して0.001〜5重量部であることが好ましい。反応温度が150℃に満たない場合には、得られる共重合体の分子量が大きくなりすぎたり、反応速度が遅くなってしまうことがあり、他方350℃を越える場合には、分解反応が発生して反応液に着色が見られたりすることがある。圧力は、反応温度と使用する単量体混合物及び溶媒の沸点に依存するもので、反応に影響を及ぼさないが、前記反応温度を維持できる圧力であればよい。単量体混合物の滞留時間は、2〜60分であることが好ましい。滞留時間が2分に満たない場合は、未反応単量体が60分を越える場合は、生産性が悪くなってしまうことがある。
【0014】(A)成分には、低分子量多価アルコール(A’成分)を配合することが、得られる硬化塗膜の機械的物性等を向上させるために必要である。低分子量多価アルコールの具体例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル1,5-ペンタンジオール、ビスフェノールA、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン及びソルビトール等が挙げられる。(A)成分において、低分子多価アルコールを配合する割合は、水酸基含有共重合体に100重量部に対して1〜50重量部であり、好ましくは5〜30重量部である。1重量部より少ない場合は、得られる硬化塗膜の機械的物性を向上させる効果が十分でなく、50重量部より多い場合は、得られる硬化塗膜が堅く脆いものとなることがある。低分子量多価アルコールは、2種以上を併用することもできる。
【0015】○(B)成分
本発明の(B)成分である有機ポリイソシアネートとしては、種々のものが使用でき、特に溶剤で希釈する必要のない、常温で液状を示すものが好ましい。有機ポリイソシアネートとしては、耐候性に優れる点で、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート及び水添ジフェニルメタンジイソシアネート等、並びにこれらのビュレット体、イソシアヌレート体及びカルボジイミド変性物等の芳香族環を有しない脂肪族系有機ポリイソシアネートを使用することが好ましい。又、これら以外にも、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、液状ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート及びナフタレンジイソシアネート等、並びにこれらのビュレット体、イソシアヌレート体及びカルボジイミド変性物等の種々の有機ポリイソシアネートが使用可能である。これらの有機ポリイソシアネートは、2種以上を併用することもできる。
【0016】○触媒
本発明の2液硬化型組成物は、(A)成分及び(B)成分を混合すれば、ウレタン化反応により硬化塗膜のポリウレタン樹脂を得ることができるが、硬化性を速めることができるため組成物に触媒を配合することが好ましい。触媒としては、トリエチルアミン、N.N-ジメチルシクロヘキシルアミン、N,N,N’N’-テトラメチルエチレンジアミン、N,N,N’N’-テトラメチルプロパン1,3-ジアミン、N,N,N’N’-テトラメチルヘキサン-1,6-ジアミン、N,N,N’,N”N”-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N,N’,N”N”-ペンタメチルジプロピレン-トリアミン、テトラメチルグアニジン、トリエチレンジアミン、N,N’-ジメチルピペラジン、N,-メチル,N’-(2-ジメチルアミノ)-エチルピペラジン、N-メチルモルホリン、N・(N’-ジメチルアミノエチル)-モルホリン、1,2-ジメチルイミダゾール、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエトキシエタノール、N,N,N’-トリメチルアミノエチル-エタノール、N-メチル-N’-(2ヒドロキシエチル)-エタノールアミン、N-メチル-N’-(2-ヒドロキシエチル)-ピペラジン、N-(2-ヒドロキシエチル)モルホリン、ビス(2-ジメチルアミノエチル)エ-テル及びエチレングリコールビス(3-ジメチル)-アミノプロピルエーテル等のアミン系触媒、オクテン酸鉛、オクチル酸鉛、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫メルカプチド、ジブチル錫チオカルボキシレート、ジブチル錫ジマレート、ジオクチル錫メルカプチド及びジオクチル錫チオカルボキシレート等の有機金属化合物、並びに炭酸カルシウム及び重炭酸ソーダ等が挙げられる。これらの中でも、有機金属化合物を使用することが、(A)成分と(B)成分の反応性に優れるため好ましい。これら触媒の配合量としては、水酸基含有共重合体100重量部に対して10重量部以下が好ましく、より好ましくは3重量部以下である。組成物に触媒を配合する場合には、まず(A)成分に触媒を配合し、その後触媒を含有する(A)成分と(B)成分とを混合することが、有機ポリイソシアネートの同士の反応を防ぐことができるため好ましい。
【0017】○その他の配合物
本発明の組成物には、上記成分の他、必要に応じて、硫酸バリウム、酸化珪素、タルク、マイカ、カオリンクレー及び炭酸カルシウム等の充填材、フタロシアニン・ブルー、フタロシアニン・グリーン、酸化チタン、カーボンブラック及び酸化鉄等の着色用顔料、シリコン系及びアクリル系等の消泡剤、カルボジイミド系、アゾジカルボキシリック酸エステル系及び脂肪酸アマイド系等の加水分解防止剤、立体障害をもったフェノール系、芳香族ジアミン等の酸化防止剤、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系及びサルチル酸系等の紫外線吸収剤、シリコン系、アクリル系及び鉱物系等の消泡剤、並びにレベリング剤等を配合することができる。これらを配合する場合の配合割合としては、水酸基含有共重合体の100重量部に対して、100重量部以下であることが好ましい。組成物に、これらその他の配合物を配合する場合は、まず(A)成分にその他の配合物を配合し、この後その他の配合物を含有する(A)成分と(B)成分とを混合することが、その他の配合物に含有する水分と有機ポリイソシアネートの反応に起因する組成物の発泡を防ぐことができるため好ましい。
【0018】○使用方法
本発明の2液硬化型組成物は、従来の2液硬化型ウレタン組成物と同様に、(A)成分及び(B)成分を使用前に混合し、基材に対して塗布又は注入或いは充填すれば良い。(A)成分は、必要により触媒及び/又はその他の配合物と配合した後、(B)成分の有機ポリイソシアネートと配合する前に、脱水操作を行うことが好ましい。当該脱水操作を行うことにより、(A)成分に含有する水分と有機ポリイソシアネートとの反応に起因する組成物の発泡を防ぐことができるため好ましい。脱水操作の方法としては、真空脱水等が挙げられる。(A)成分と(B)成分の好ましい割合は、(B)成分のイソシアネート基の合計量の(A)成分における水酸基の合計量に対する割合が、NCO/OH=0.5〜2(モル比)となる値が好ましく、より好ましくは0.7〜1.5である。この割合が0.5に満たない場合は、硬化塗膜の強度が十分でないことがあり、他方この割合が2を越える場合は、(B)成分として、芳香族系有機ポリイソシアネートより比較的反応性に劣る脂肪族系有機ポリイソシアネートを使用するときにおいては、組成物が硬化不良を起こす場合があり、他方比較的反応性に優れる芳香系有機ポリイソシアネートを使用するときには、硬化塗膜が脆くなる場合がある。
【0019】組成物の塗布方法としては、ローラー、レーキ、コテ及びスプレー等を使用する方法が挙げられ、又注入或いは充填方法としては、コーキングガン、ヘラ、スパチュラ及びコテ等を使用する方法が挙げられる。
【0020】本発明の組成物は、塗料、防水材、壁材及び塗り床材等のコーティング材、シーリング材、注入材並びに接着剤等の種々の用途に使用できる。
【0021】
【実施例】以下に製造例、実施例及び比較例を示し、本発明をより具体的に説明する。尚、以下において、部及び%は重量基準である。
○製造例1(高温連続重合による水酸基含有共重合体の製造)
電熱式ヒーターを備えた容量6000mlの加圧式攪拌槽型反応器を、ジエチレングリコールモノエチルエーテルで満たし、温度を250℃にして、圧力調節器により圧力をゲージ圧で25〜27kg/cm2に保った。次いで、反応器の圧力を一定に保ちながら、水酸基含有(メタ)アクリレートとして2-ヒドロキシエチルメタクリレート16部及び2-ヒドロキシエチルアクリレート20部、エチレン性不飽和単量体として2-エチルヘキシルアクリレート54部及びスチレン10部とからなる単量体混合物A-1を、一定の供給速度(500g/分、滞留時間:12分)で原料タンクから反応器に連続供給を開始し、単量体混合物A-1の供給量に相当する反応物を出口から連続的に抜き出した。反応開始直後に、一旦反応温度が低下した後、重合熱による温度上昇が認められたが、ヒータを制御することにより、反応温度を270〜271℃を保持した。単量体混合物A-1供給開始から温度が安定した時点を、反応液の抜き出し開始点とし、これから35分反応を継続した結果、17.5kgの単量体混合液A-1を供給し、17.4kgの反応液を回収した。反応器を薄膜蒸発器に導入して、未反応モノマー等の揮発成分を分離し、15.5kgの濃縮液(共重合体B-1)を得た。ガスクロマトグラフより、濃縮液中には未反応モノマーは存在していなかった。溶媒としてテトラヒドロフランを使用し、GPCより求めた分子量をポリスチレン換算した共重合体B-1の数平均分子量(以下Mnと略する)は2,000、重量平均分子量(以下Mwと略する)は3,600、多分散度は1.80であった。又、濃縮液の水酸基濃度は3.09meq/gであった。
【0022】○製造例2(高温連続重合による水酸基含有共重合体の製造)
製造例1と同様の反応器を、ジエチレングリコールモノエチルエーテルで満たし、製造例1と同様の条件に保った。次いで、水酸基含有(メタ)アクリレートとして2-ヒドロキシエチルメタクリレート10部及び2-ヒドロキシエチルアクリレート20部、エチレン性不飽和単量体として2-エチルヘキシルアクリレート70部、並びに重合開始剤としてジ-t-ブチルパーオキシド1部とからなる単量体混合物A-2を使用し、供給速度500g/分(滞留時間:12分)とした以外は製造例1と同様の条件にして反応を開始した。反応開始直後に、一旦反応温度が低下した後、重合熱による温度上昇が認められたが、ヒータを制御することにより、反応温度を243〜244℃を保持した。単量体混合物A-2供給開始から温度が安定した時点を、反応液の抜き出し開始点とし、これから40分反応を継続した結果、20.0kgの単量体混合液A-2を供給し、19.9kgの反応液を回収した。反応器を薄膜蒸発器に導入して、未反応モノマー等の揮発成分を分離し17.9kgの濃縮液(共重合体B-2)を得た。ガスクロマトグラフより、濃縮液中には未反応モノマーは存在していなかった。製造例1と同様にして求めた共重合体B-2の分子量は、Mnが2,900、Mwが4,900であり、多分散度は1.70であった。又、濃縮液の水酸基濃度は2.10meq/gであった。
【0023】
【0024】○比較例3
製造例1で得られたB-1の100部、ポリシロキサン系消泡剤BYK-066〔テツタニ(株)製〕1部、酸化チタン2部及びジ-n-ブチル錫ジラウレート0.001部をプラネタリーミキサーに添加し、常温で15分攪拌し、引き続いて100℃で混練しつつ、真空にて脱水操作を1時間行い、(A)成分である混合物C-1を得た。
【0025】次にC-1の100部(3.00meq/g)と(B)成分であるヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体〔スミジュールN3500、NCO基含有量5.14meq/g、住友バイエルウレタン(株)製〕をNCO/OH当量比1.05で添加し十分攪拌して組成物を製造した。得られた組成物を、直ちにテフロン板上へし込み、20℃、湿度60%で静置し硬化させた。168時間後の硬化塗膜の平均膜厚は1.1mmであった。
【0026】得られた組成物及び硬化塗膜について、以下の方法に従い評価を行った。それらの結果を表1に示す。
【0027】○評価
・粘度
(A)成分と(B)成分を混合直後の組成物粘度を、25℃においてB型粘度型にて測定した。
【0028】・引張物性
得られた硬化塗膜を、JIS K 6301に従い引張速度200mm/分で測定し、引張強度及び伸び率を測定した。
【0029】・成膜性
組成物を、25℃において乾燥膜厚が約3mmになるようにモルタル板上に流し込み、反応硬化させた。得られた硬化塗膜を目視により観察した。尚、表1における○、△、×は以下の意味を示す。
○:外観異常なし、△:外観にわずかなしわ等が見られる。×:外観にひび割れ等の異常が見られる。
【0030】・耐候性
得られた硬化塗膜を、スガ試験機(株)製カーボンアークサンシャインウェザーメーターを使用して63℃、1000時間試験した。試験後の硬化膜の色差を△E及び60℃光沢保持率により評価した。尚、表1における◎、○、△、×は以下の意味を示す。
△E :◎;<1、○;1〜2、○;2〜3、×;>3
光沢保持率:◎;>90%、○;70〜90%、△;40〜70%、×;<40%
【0031】・耐薬品性
得られた硬化塗膜を、下に示す薬品に室温にて168時間浸潰し、硬化塗膜の外観を観察した。
・40%水酸化ナトリウム水溶液
・20%硫酸水溶液
・5%酢酸水溶液
・トルエン
尚、表1における◎、○、△、×は以下の意味を示す。
◎:ほとんど変化なし、○:光沢、色がわずかに変化、△:光沢、色が明らかに変化、×:光沢、色が著しく変化
【0032】
【表1】

【0033】○実施例2
製造例1で得られたB-1の100部及び1,4-ブタンジオール10部を使用した以外は、比較例3と同様にして(A)成分と(A’)成分を含む混合物C-2を得た。次にC-2の100部(4.70meq/g)を使用し、NCO/OH当量比を1.05とした以外は、比較例3と同様にして組成物を製造した。得られた組成物を、比較例3と同様にしてテフロン板上へ硬化させたところ、168時間後の硬化塗膜の平均膜厚は1.1mmであった。得られた組成物及び硬化塗膜について、比較例3と同様に評価を行った。それらの結果を表1に示す。
【0034】○実施例3
製造例2で得られたB-2の100部及び1,4-ブタンジオール10部を使用した以外は、比較例3と同様にして(A)成分と(A’)成分を含む混合物C-3を得た。次にC-3の100部(4.07meq/g)を使用し、NCO/OH当量比を1.05とした以外は、比較例3と同様にして組成物を製造した。得られた組成物を、比較例3と同様にしてテフロン板上へ硬化させたところ、168時間後の硬化塗膜は、タックがなく、平均膜厚が1.0mmであった。得られた組成物及び硬化塗膜について、比較例3と同様に評価を行った。それらの結果を表1に示す。
【0035】
【0036】
【0037】○比較例1
Mnが約2,000のポリプロピレングリコール12部〔旭硝子(株)製〕に、3,3’ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン〔イハラケミカル(株)製〕12部とジオクチルフタレート36部、炭酸カルシウム37部、酸化チタン3部及びオクテン酸鉛0.01部を実施例1と同様にして混合した。この混合物に、トリレンジイソシアネート変性ポリプロピレングリコール〔デスモジュールE14:住友バイエルウレタン(株)製、NCO基含有量0.833meq/g〕をNCO/OH当量比1.05で添加し、十分攪拌して組成物を製造した。得られた組成物を、実施例1と同様にテフロン板上へ硬化させたところ、168時間後の硬化塗膜は、タックがなく、平均膜厚は1.1mmであった。得られた組成物及び硬化塗膜について、実施例1と同様に評価を行った。それらの結果を表2に示す。
【0038】比較例2
汎用に用いられている溶剤型アクリルポリオールとして、そのモノマー組成がメタクリル酸n-ブチル49部、スチレン23部、メタクリル酸メチル21部、メタクリル酸ヒドロキシプロピル6重量部及びアクリル酸1重量部であり、Mnが27,000、Mwが65,800である水酸基を含有する共重合体の60%酢酸ブチル溶液を使用した。尚、当該水酸基を含有する共重合体は、それ自体は固形のものである。この溶剤型アクリルポリオールとスミジュールN3500をNCO/OH当量比1.05で添加混合して組成物を製造した。得られた組成物を、テフロン板上へ実施例1と同様の条件で168時間静置して硬化させ、さらに84時間、50℃、湿度60%の条件で静置したが、得られた硬化塗膜の平均膜厚は120μmしかなかく、膜厚の薄い硬化塗膜しか得られなかった。得られた組成物及び硬化塗膜について、実施例1と同様に評価を行った。それらの結果を表2に示す。
【0039】
【表2】

【0040】
【発明の効果】本発明の2液硬化型組成物は、低粘度のため作業性に優れ、無溶剤系の組成物として使用できるため臭気等の問題がなく、又硬化塗膜を厚膜化でき、さらに得られる硬化塗膜は、耐熱性、耐候性、耐薬品性及び伸びに優れるものであり、塗料、防水材、床材、シーリング材、注入材及び接着剤等各種産業分野において有用なものである。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-08-03 
出願番号 特願平8-188660
審決分類 P 1 651・ 852- ZA (C08G)
P 1 651・ 121- ZA (C08G)
P 1 651・ 851- ZA (C08G)
P 1 651・ 853- ZA (C08G)
最終処分 取消  
前審関与審査官 佐藤 健史  
特許庁審判長 宮坂 初男
特許庁審判官 石井 あき子
佐野 整博
登録日 2001-11-22 
登録番号 特許第3252890号(P3252890)
権利者 東亞合成株式会社
発明の名称 2液硬化型組成物  
代理人 新井 清子  

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