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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02F 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G02F |
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管理番号 | 1108840 |
審判番号 | 不服2002-7515 |
総通号数 | 62 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1997-09-09 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-04-30 |
確定日 | 2004-12-15 |
事件の表示 | 平成 9年特許願第 420号「液晶表示装置用薄膜トランジスタ基板およびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 9月 9日出願公開、特開平 9-236827〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成9年1月6日(パリ条約による優先権主張平成7年12月29日、韓国)の出願であって、平成14年1月22日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成14年4月30日付で拒絶査定に対する審判請求がなされ、平成14年5月30日付で平成14年改正前の特許法第17条の2第1項第3号の規定による手続補正がなされたものである。 2.平成14年5月30日付の手続補正(以下、「本件補正」という。)について [補正却下の決定の結論] 平成14年5月30日付の手続補正を却下する。 [理由] (1)補正の内容 本件補正は、補正前の請求項の数28を1つ増加し29とする(独立請求項の数を3から4に増加する)ものであり、特許請求の範囲の請求項8を下記のようにする補正を含むものである。 「【請求項8】基板上に形成されているゲート線及びゲート電極と、 前記ゲート線及びゲート電極を覆っているゲート絶縁膜と、 前記ゲート絶縁膜上に形成されている半導体層と、 前記ゲート線と交差しているデータ線、前記データ線と連結されているソース電極及び前記ゲート電極を中心に前記ソース電極と対向しているドレイン電極と、 前記ゲート絶縁膜を媒介に前記ゲート線と重畳されている連結部と、 前記半導体層と前記ドレイン電極及び前記連結部の一部を覆っている保護膜と、 前記ドレイン電極及び前記連結部の露出されている各々の部分と連結されている画素電極とを含む液晶表示装置用薄膜トランジスタ基板。」 (2)当審の判断 上記補正事項については、同日付けで提出された審判請求書の理由補充書をみても、補正の根拠が示されている程度であり、補正後の各請求項と補正前の各請求項との対応関係についてはなんら説明がなされていないが、請求項8については、全文にアンダーラインが付されているところから、新たな請求項を追加しようとしたものであることが分かる。 また、補正前の「液晶表示装置用薄膜トランジスタ基板」に関する一番上位の請求項である請求項1を、新たな請求項1と請求項8に分割したものと仮定してみても、補正後の請求項8は、補正前の請求項1に比べ、少なくとも「前記ドレイン電極の露出された部分と連結されている画素電極と、を含み、前記保護膜は所定の形状にパターニングされており、かつ前記半導体層は前記所定の形状にパターニングされた保護膜をマスクとしてエッチングされることにより前記保護膜の外部に露出されているドレイン電極の下部を除いては前記保護膜と同一のパターンで形成されている」との構成を欠くとともに、なんら記載の無かった「連結部」に関する事項を付加するものである。 そして、補正前の他の請求項をみても、補正後の請求項8が適法に追加されたものとは認められない。 結局、本件補正は、請求項の数を増加するものであり、また、補正前の請求項を拡張又は変更する補正事項を含むものであって、請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しない。 (3)むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について (1)本願発明 平成14年5月30日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成13年5月29日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜28に記載された事項によって特定されるものと認められるところ、請求項1に係る発明は以下のものである。 「【請求項1】基板上に形成されているゲート線およびゲート電極と、 前記ゲート線およびゲート電極を覆っているゲート絶縁層と、 前記ゲート絶縁層上に形成されている半導体層と、 前記半導体層上に形成されているデータ線、ソース電極およびドレイン電極と、 前記データ線および前記ソース電極を覆っており、前記ドレイン電極を一部覆っている保護膜と、 前記ドレイン電極の露出された部分と連結されている画素電極と、 を含み、前記保護膜は所定の形状にパターニングされており、かつ前記半導体層は前記所定の形状にパターニングされた保護膜をマスクとしてエッチングされることにより前記保護膜の外部に露出されているドレイン電極の下部を除いては前記保護膜と同一のパターンで形成されている液晶表示装置用薄膜トランジスタ基板。」(以下、「本願発明」という。) (2)引用例記載の発明 原審の拒絶の理由に引用した、この出願前公知の刊行物である特開平6-250210号公報(以下、「引用例」という。)には、下記の記載が認められる。 「【請求項1】 基板上に形成された走査信号電極と、走査信号電極上に形成されたゲート絶縁膜と前記ゲート絶縁膜上に形成された半導体膜と、前記半導体膜上に形成された映像信号電極およびソース電極と、前記ソース電極に接続された画素電極とからなるアクティブマトリックス基板と、前記アクティブマトリックス基板に対向する対向基板と、前記アクティブマトリックス基板および前記対向基板に挟持された液晶層とを有する液晶表示装置において、 前記映像信号電極およびソース電極上には保護絶縁膜が形成され、前記半導体膜とゲート絶縁膜は同一の平面形状であって、その形状は前記保護絶縁膜の平面形状に等しいか、または前記保護絶縁膜と前記映像信号電極と前記ソース電極の平面形状の和に等しく、かつ前記映像信号電極と前記ソース電極のパターンの下層には前記半導体膜とゲート絶縁膜が存在することを特徴とする液晶表示装置。」、 「【0015】[実施例1] 図1は本発明の第1の実施例の単位画素の平面図である。図2は図1中にAーA′で示した切断面における断面図を示す。研磨したガラス基板1上にAlよりなる走査信号電極10を形成し、前記走査信号電極の表面をAlの陽極酸化膜であるアルミナ膜20によって被覆した。走査信号電極10を覆うようにゲート窒化Si(ゲートSiN)膜21と非晶質Si(a-Si)膜30を形成し、a-Si膜30上にn型a-Si膜31,ソース電極15および映像信号電極14を形成した。更に、前記映像信号電極14およびTFTのチャネル領域を保護SiN膜23により被覆し、前記ソース電極15に接続するように透明電極であるインジウム-スズ-酸化物(ITO)膜を形成し画素電極13となしている。ここで、a-Si膜30およびゲートSiN膜21の平面形状は、保護SiN膜23とソース電極15の各々の平面形状の和に等しくなっている点に特徴がある。 【0016】図1及び図2の構造は、次のような製造工程によって実現される。 【0017】(1)研磨したガラス基板1上にAl膜を堆積し、通常のホトエッチング法によりパターニングとして走査信号電極10を形成する。 【0018】(2)陽極酸化法により走査信号電極10表面にアルミナ膜20を形成する。 【0019】(3)前記走査信号電極を形成した基板全面にゲートSiN膜21,a-Si膜30およびn型a-Si膜31を順次堆積する。 【0020】(4)その上にAl膜を堆積し、通常のホトエッチング工程を経てパターニングして映像信号電極14とソース電極15を得、続いて同じマスクパターンを用いてn型a-Si膜31をエッチングする。 【0021】(5)前記映像信号電極とソース電極を形成した基板全面にSiNを堆積し、保護絶縁膜23を形成する。 【0022】(6)前記保護絶縁膜上にホトレジストパターンを形成する。 【0023】(7)前記ホトレジストパターンをマスクとして保護SiN膜23をパターニングし、続いてホトレジストおよびソース電極パターンをマスクとしてa-Si膜30およびゲートSiN膜21をパターニングする。これらのエッチング工程は実質的には連続して1ステップで実施する。 【0024】(8)ホトレジストを除去後ITO膜を形成し、パターニングして画素電極13とする。 【0025】このようにすることにより、a-Si膜30およびゲートSiN膜21のパターニングを保護SiN膜23とソース電極15の各々のパターンをマスクとして実施すれば良いことになるので、従来必要であったa-Si膜30およびゲートSiN膜21をパターニングするためのホトマスクが不要となる。これにより製造工程数を大幅に低減出来た。」 また、図1及び図2には、走査信号電極10は、非晶質Si膜30の下に絶縁膜を介して下方に突出した部分を有し、映像信号電極14は、非晶質a-Si膜30の上であって、上記ゲート電極の上方まで延長された右方に突出した部分を有していること、映像信号電極14及びソース電極15は非晶質Si膜30上で間隙を有して配置されており、非晶質Si膜30の下方にはゲート窒化Si膜21を介して走査信号電極10の突出部分が配置されていること、ガラス基板1上に形成された走査信号電極10の突出部分上に、ゲート窒化Si膜21、非晶質Si膜30、映像信号電極14とソース電極15が、順に形成されていること、さらに、前記の一部(露出部)を除き、TFTのチャンネル領域が保護SiN膜23により被覆されており、その露出したソース電極15と画素電極13が接続されていることがみてとれる。 (3)対比 本願発明と上記引用例記載の発明(以下、「引用発明」という。)とを対比する。 (a)引用発明の「走査信号電極10」、「ゲート窒化Si膜21」、「非晶質Si膜30」、「映像信号電極14」、「保護SiN膜23」及び「アクティブマトリックス基板」が、それぞれ本願発明の「ゲート線」、「ゲート絶縁層」、「半導体層」、「データ線」、「保護膜」及び「薄膜トランジスタ基板」に相当することは明らかである。 (b)引用例の図2に10で示され、下方に突出した走査信号電極10の突出部分は、半導体層である非晶質Si膜30の下に絶縁膜を介して配置されていることから、本願発明の「ゲート電極」に相当する。 (c)引用例の図1に14で示され、図2に右方に突出した映像信号電極14の突出部分は、半導体層である非晶質Si膜30の上であって、上記ゲート電極の上方まで延長して配置されていることから、本願発明の「ソース電極」に相当する。 (d)引用例の図1及び図2に示された「ソース電極15」は、画素電極13に接続されるとともに、半導体層である非晶質Si膜30の上であって、上記ゲート電極の上方にまで配置されていることから、本願発明の「ドレイン電極」に相当する。 よって、両者は、「基板上に形成されているゲート線およびゲート電極と、 前記ゲート線およびゲート電極を覆っているゲート絶縁層と、 前記ゲート絶縁層上に形成されている半導体層と、 前記半導体層上に形成されているデータ線、ソース電極およびドレイン電極と、 前記データ線および前記ソース電極を覆っており、前記ドレイン電極を一部覆っている保護膜と、 前記ドレイン電極の露出された部分と連結されている画素電極と、 を含む、液晶表示装置用薄膜トランジスタ基板」である点で一致し、次の点で相違する。 相違点: 本願発明では、「前記保護膜は所定の形状にパターニングされており、かつ前記半導体層は前記所定の形状にパターニングされた保護膜をマスクとしてエッチングされることにより前記保護膜の外部に露出されているドレイン電極の下部を除いては前記保護膜と同一のパターンで形成されている」のに対して、引用発明では、前記保護絶縁膜23上に形成したホトレジストパターンをマスクとして保護絶縁膜23をパターニングし、続いてホトレジストおよびソース電極パターンをマスクとして半導体膜30をパターニングするものであるが、上記の事項について明記がない点。 (4)判断 上記相違点に付き検討する。 まず、引用発明において、「保護絶縁膜23上に形成したホトレジストパターンをマスクとして保護絶縁膜23をパターニング」しているのであるから、保護絶縁膜は所定の形状にパターニングされているということができる。 また、引用発明においても、保護絶縁膜のパターニングに続いて半導体膜をパターニングするのであるから、上記パターニングされた保護絶縁膜もマスクとして働くことは明らかである。さらに、このような絶縁膜等をパターニングするのにエッチングを用いることは技術常識である。 そして、引用発明において、ホトレジスト、パターニングされた保護絶縁膜及びソース電極パターン(本願発明の「ドレイン電極の露出部」に相当。)をマスクとして半導体膜30をパターニングすれば、該半導体膜は、保護絶縁膜の外部に露出されているソース電極の下部を除いては前記保護絶縁膜と同一のパターンで形成されることは、当業者に明らかである。 一方、本願明細書の【0020】には、 「次に、図18および図25に示すように、フォトレジストを0.5〜3μmの厚さで積層した後、第3マスクを用いてパターニングして光遮断膜62を形成する。次いで、光遮断膜62をマスクにして保護膜61をエッチングする。この過程において、データ線51およびソース電極52は全部光遮断膜62および保護膜61で覆われ、ドレイン電極53の一部が露出される。その後、光遮断膜62および保護膜61、そして露出されたドレイン電極53をマスクにして非晶質シリコン層30をエッチングする。」と記載されている。 すなわち、本願発明には、保護膜61の上に光遮断膜62が重なったものをマスクとして用いることが含まれているのであり、しかも、本願発明において、光遮断膜62を除去してから半導体層をエッチングすることが規定されているわけでもない。 したがって、本願発明の上記相違点の構成は、引用発明のパターニングの詳細を記載したにすぎないものであって、これは当業者が技術常識等を加味すれば引用例に基づき適宜記載しうる事項である。 そして、本願発明によってもたらされる効果は、引用例に記載された事項から当業者が予想し得る程度のものにすぎない。 (5)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-07-14 |
結審通知日 | 2004-07-20 |
審決日 | 2004-08-02 |
出願番号 | 特願平9-420 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G02F)
P 1 8・ 572- Z (G02F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 井口 猶二 |
特許庁審判長 |
平井 良憲 |
特許庁審判官 |
山下 崇 稲積 義登 |
発明の名称 | 液晶表示装置用薄膜トランジスタ基板およびその製造方法 |
代理人 | 小野 由己男 |