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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1108876
審判番号 不服2001-15267  
総通号数 62 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-11-04 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-08-30 
確定日 2004-12-16 
事件の表示 平成9年特許願第101500号「半導体装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年11月4日出願公開、特開平10-294311〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 理 由
[1]手続の経緯・本願発明
本願は、平成9年4月18日の出願であって、その請求項1〜3に係る発明は、平成13年4月9日付け、平成13年8月30日付け、及び平成16年7月16日付けの各手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は次のとおりである。
「シリコン基板上に、シリコン酸化膜からなる層間絶縁膜を形成する工程において、シランと過酸化水素水を原料ガスに用いて前記シリコン酸化膜を成長させた後に、前記シリコン基板を0.1Pa以下の低圧力下に放置し、その後、反応ガスによるプラズマにより基板を加熱処理することを特徴とする半導体装置の製造方法。」

[2]引用刊行物の記載事項
これに対して、当審において平成16年5月17日付けで通知した拒絶の理由に引用した、本願出願前頒布された刊行物である下記の引用刊行物1、2、及び、同拒絶の理由に、本願出願前周知の技術を記載した刊行物の例として提示した、本願出願前頒布された刊行物である下記の引用刊行物3、4には、それぞれ以下の事項が記載されている。
引用刊行物1:特開平8-203892号公報
引用刊行物2:特開平3-72656号公報
引用刊行物3:特開平4-174520号公報
引用刊行物4:特開平7-231039号公報

[2-1]引用刊行物1:特開平8-203892号公報
引用刊行物1には、図1、図2が示されるとともに、
「【0025】まず、図2(a)に示すように、半導体基板(例えばシリコン基板)30上の絶縁膜31上に下層配線用の第1の配線材料‥‥‥‥‥‥‥を例えばスパッタ法により堆積後、フォトリソグラフィ技術および反応性イオンエッチング(RIE)技術を用いて第1の配線材料のパターニングを行って下層配線32を形成する。
【0026】次に、前記半導体製造装置を使用して、下層配線32の配線間に絶縁膜を埋め込むと共に下層配線上に絶縁膜を堆積することにより層間絶縁膜を形成する。上記層間絶縁膜の形成工程においては、まず、下層配線形成後の半導体基板30を前記カセットローダー室1内の例えば石英製のボート上にセットする。
【0027】次に、ドライポンプ(図示せず)を用いてカセットローダー室1内を100mTorr以下の真空状態に設定し、ロボットアーム2により、前記半導体基板30をプラズマCVD装置10の反応室11内に搬入させる。このプラズマCVD装置10の反応室11内を5mTorr以下の真空状態に設定すると共に下部電極13を300℃程度に設定しておき、半導体基板20上の全面に0.1μm以上(本例では100nm)の厚さの第1のプラズマSiO2膜33を形成する。
【0028】次に、ロボットアーム2により、前記半導体基板30をプラズマCVD装置の反応室11内から減圧CVD装置の反応室21内へ搬送させる。そして、この減圧CVD装置の反応室21内に、SiH4ガス供給源からSiH4ガス供給管25を介してSiH4ガスを120sccmの流量で導入し、かつ、H2O2供給源からH2O2供給管26を介してH2O2を0.6g/分の流量で導入し、かつ、不活性ガス(例えばN2ガス)を500sccmの流量で導入し、かつ、前記マイクロ波導波管を通したラジカルな状態のフッ素系ガス(例えばCF4ガス)を20sccmの流量で導入して、5Torr以下(本例では500mTorr)の真空中、-10℃以上+10℃以下の温度範囲内(例えば0℃)で互いに反応させ、図2(b)に示すように、上記半導体基板30上にリフロー形状を有する0.4μm以上、1.4μm以下(本例では0.8μm)の厚さのリフローSiO2膜34を得る。
【0029】次に、図2(c)に示すように、上記減圧CVD装置の反応室11内で5mTorr以下の真空中に上記半導体基板30を30秒以上(本例では30秒)放置する。
【0030】次に、ロボットアーム2により、前記半導体基板30を減圧CVD装置の反応室21内からプラズマCVD装置の反応室11内へ搬送させる。そして、図2(d)に示すように、プラズマCVD装置10の反応室内で、300℃以上、450℃未満の高温(本例では300℃)中に120秒以上、600秒未満の時間(本例では120秒)放置する。
【0031】この後、図2(e)に示すように、半導体基板30上の全面に0.3μm以上(本例では300nm)の厚さの第2のプラズマSiO2膜35を形成する。この後、上記半導体基板30を上記半導体製造装置から取り出し、別の半導体製造装置を使用して450℃、30分のファーネスアニールを行う。」(段落【0025】〜【0031】)、
「【0035】なお、リフローSiO2膜34を形成した後に所定の真空中に所定時間以上放置し、さらに、所定の高温中に所定時間以上放置することにより、リフローSiO2膜34の形成工程において絶縁膜の成膜中に水分が発生して絶縁膜中に水分が含まれたとしても、絶縁膜中の水分を低減させるように制御し、クラック耐性の良いリフローSiO2膜34を得ることが可能になる。」(段落【0035】)と記載されている。

[2-2]引用刊行物2:特開平3-72656号公報
引用刊行物2には、第2図、第3図、第5図が示されるとともに、
「SOG5を4,000Åの厚さに塗布したウエハー4を先ず、前室8に入れ、処理室7の真空度に近い領域までロータリーポンプ18で排気した後、ゲートバルブ9を開いて、ウエハー4を処理室7のウエハーホルダー6の上にセットする。ロータリーポンプ17及びターボポンプ16を運転して、処理室7の真空度が目標の真空度,例えば1×10-6Torrになったら、マグネトロン11の電源13を入れて、処理室7に2.45GHzのマイクロ波を導波管12及び石英窓19を通って、ウエハー4に導入する。200Wattのマイクロ波出力によりウエハー4が250℃に加熱され、その熱によってSOGの脱水縮合反応が進む。‥‥‥‥‥‥脱水・縮合による水分ならびに揮発したSOGの溶剤は処理室の圧力を上昇させる。この際の真空度を随時測定して、実験的に定められた一定の脱ガスが進むまで処理を続行する。」(第3頁左上欄12行〜右上欄12行)、
「焼成による脱水状況を比較するため、真空度と加熱時間の関係を第5図に示す。加熱は赤外線でウエハーを300℃に上昇させて、処理室の真空度の時間との関係を調べた。」(第3頁左下欄11〜14行)と記載されている。

[2-3]引用刊行物3:特開平4-174520号公報
引用刊行物3には、第1図が示されるとともに、
「本発明に類似の従来技術として、応用物理学会昭和62年春季講演会予稿集、P516「プラズマ処理によるシリコーン膜の膜質改善」に記載されるようなプラズマ処理がある。この従来例では、N2のプラズマを用いてシリコーン膜の表面をSiO2化しているが、これは主に高エネルギのNイオンが膜表面に衝突する際の表面に極在して発生する熱を利用したものである。」(第2頁左上欄10〜17行)、
「本発明は主に無機SOG化膜から水分を除去し、かつ膜の吸湿性を低減させ、かつベーク時の発生応力を低減させる、低い温度で実行可能な非常に効率的な方法を提供する。しかし、有機SOGに対しても同様の効果を示す。また、CVD法により作成したSiO2膜の吸湿性低減にも効果がある。」(第2頁右下欄13〜18行)、
「活性ガスの励起、ガスと膜との反応による発熱により膜は加熱される。上述のように膜は局部的に加熱されるとSiO2化が進行し緻密な層ができる。」(第3頁左上欄15〜18行)、
「Si基板上にSOG(‥‥‥)をスピン塗布し厚さ0.2μmのSi-O化合物の膜を得た。このSi基板をN2気流中で200℃×30分でアニールを行ない、次に、平行平板電極型のプラズマ処理装置中でO2ガスを用いてプラズマ処理を行なった。‥‥‥‥‥‥‥‥‥ガス圧力は50mTorr、電力は500W、処理時間は30分である。RFの周波数は13.56MHzである。サセプタにはグラファイトを用いた時にはプラズマの発光色は黄色でCO分子の存在が認められた。グラファイト中の炭素が酸素プラズマ処理と反応したものと考えられる。比較のためにSiO2サセプタを用いて同様の処理を行なった。これらのサセプタは水冷により100℃以下に保持された。第1図に(a)200℃アニール、グラファイトサセプタを用いたプラズマ処理、450℃ベークの後レジスト剥離液、メタノール、水に各々10分浸漬したときの膜、(b)上記の処理の後水のみに浸漬した膜、および(c)200℃アニールおよび450℃ベークを行なった膜に含有する水分の重量(膜重量で規格化)を示す。水分はSOG膜を形成した基板を真空中で加熱し基板から発生するガスを質量分析により定量したものである。図から、グラファイトサセプタを用いたプラズマ処理により膜中の含有水分および吸湿性が激減することがわかる。」(第3頁左下欄13行〜右下欄20行)と記載されている。

[2-4]引用刊行物4:特開平7-231039号公報
引用刊行物4には、図2(a)〜(c)が示されるとともに、
「【0015】‥‥‥絶縁膜11上に1層目の電極配線膜1を形成した後、絶縁膜2をP-CVD法によって成膜し、そのうえに、絶縁膜3を回転塗布法にて成膜して表面を平坦化する。なお、絶縁膜3の表面にはプラズマ処理が行われる。さらに、絶縁膜4をP-CVD法によって成膜する。‥‥‥‥【0016】次に、形成したホールに対してN2プラズマ処理を行う。プラズマ状態のN2ガス7の持つプラズマエネルギーが効果的にホール側壁に露出する絶縁膜3にアタックすることによって、プラズマ処理された絶縁膜3のホール側壁部6で水分が除去される(図2(b))。‥‥‥‥‥‥‥‥‥【0017】なお、上述した実施例1の説明において、プラズマ処理のガスとして、N2を用いたが、プラズマ状態にできるガスであればプラズマエネルギーの効果があるので、O2,O3等のガスによるプラズマ処理を用いてもよい。」(段落【0015】〜【0017】)と記載されている。

[3]対比・判断
[3-1]本願発明1について
上記[2-1]に摘記した事項を総合すると、引用刊行物1には、「シリコン基板上に、第1のプラズマSiO2膜、リフローSiO2膜、第2のプラズマSiO2膜からなる層間絶縁膜を形成する工程において、上記第1のプラズマSiO2膜を形成し、次に、減圧CVD装置の反応室内で、SiH4ガスとH2O2を導入して上記リフローSiO2膜を形成した後に、上記シリコン基板を5mTorr以下の真空中に30秒以上放置し、その後、プラズマCVD装置の反応室内で、300℃以上の高温中に放置し、次に、上記リフローSiO2膜上に上記第2のプラズマSiO2膜を形成する半導体装置の製造方法」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されており、上記「第1のプラズマSiO2膜、リフローSiO2膜、第2のプラズマSiO2膜からなる層間絶縁膜」、「SiH4ガスとH2O2を導入して上記リフローSiO2膜を形成」、「上記シリコン基板を5mTorr以下の真空中に30秒以上放置し」、「上記シリコン基板を‥‥‥その後、プラズマCVD装置の反応室内で、300℃以上の高温中に放置し」はそれぞれ、本願発明1における「シリコン酸化膜からなる層間絶縁膜」、「シランと過酸化水素水を原料ガスに用いて前記シリコン酸化膜を成長」、「前記シリコン酸化膜を‥‥‥低圧力下に放置し」、「その後、‥‥‥基板を加熱処理する」に相当する。そうすると、両者は、「シリコン基板上に、シリコン酸化膜からなる層間絶縁膜を形成する工程において、シランと過酸化水素水を原料ガスに用いて前記シリコン酸化膜を成長させた後に、前記シリコン酸化膜を低圧力下に放置し、その後、基板を加熱処理する半導体装置の製造方法」の点で一致し、下記の点で相違する。
(イ)「前記シリコン酸化膜を‥‥‥低圧力下に放置し」の「低圧力」が、本願発明1では、0.1Pa以下であるのに対し、引用発明では、5mTorr以下である点。
(ロ)本願発明1では、反応ガスによるプラズマにより基板を加熱処理するのに対し、引用発明では、基板をプラズマCVD装置の反応室内で、300℃以上の高温中に放置して加熱処理する点。
そこで、まず相違点(イ)について検討するに、引用発明における「5mTorr以下」の低圧力も、本願発明1の低圧力と同様、シリコン酸化膜の水分を低減するためのものであることは明らかである。一方、引用刊行物2には、シリコン酸化膜付きウエハーをセットし、該シリコン酸化膜の水分、未揮発分を脱水、揮発させる処理室の真空度を1×10-6Torrとすること、及び、該処理室にセットする前のシリコン酸化膜付きウエハーを入れた前室を、上記真空度に近い領域まで排気することが記載されており、そして、この1×10-6Torrの真空度は0.1Pa以下の低圧力の範囲に含まれるのであるから、シリコン酸化膜付きシリコン基板を放置してそのシリコン酸化膜の水分、未揮発分を脱水、揮発させる処理室内の圧力として、「0.1Pa以下」の低圧力は格別なものとはいえない。
してみると、引用発明におけるシリコン酸化膜の水分を低減するための「5mTorr以下」の低圧力を「0.1Pa以下」とすることは、当業者が適宜に設定できることである。
次いで、相違点(ロ)について検討するに、引用発明における「300℃以上の高温中に放置して加熱処理する」ことも、本願発明1における「反応ガスによるプラズマにより基板を加熱処理する」ことと同様、シリコン酸化膜の水分を低減するためのものであることは明らかである。一方、引用刊行物3には、「N2のプラズマを用いてシリコーン膜の表面をSiO2化しているが、これは主に高エネルギのNイオンが膜表面に衝突する際の表面に極在して発生する熱を利用したものである。」、「活性ガスの励起、ガスと膜との反応による発熱により膜は加熱される。上述のように膜は局部的に加熱されるとSiO2化が進行し緻密な層ができる。」、「Si基板上にSOG(‥‥‥)をスピン塗布し厚さ0.2μmのSi-O化合物の膜を得た。このSi基板を‥‥‥‥‥‥‥‥‥平行平板電極型のプラズマ処理装置中でO2ガスを用いてプラズマ処理を行なった。‥‥‥‥‥‥‥‥‥ガス圧力は50mTorr、電力は500W、処理時間は30分である。RFの周波数は13.56MHzである。サセプタにはグラファイトを用いた時にはプラズマの発光色は黄色でCO分子の存在が認められた。グラファイト中の炭素が酸素プラズマ処理と反応したものと考えられる。比較のためにSiO2サセプタを用いて同様の処理を行なった。これらのサセプタは水冷により100℃以下に保持された。」(摘記[2-3]参照)との記載により、N2、O2等の反応ガスのプラズマによりシリコン酸化膜付き基板を脱水のために加熱処理すること、及び、該プラズマにより加熱され過ぎないように水冷することが述べられており、また、引用刊行物4には、「形成したホールに対してN2プラズマ処理を行う。プラズマ状態のN2ガス7の持つプラズマエネルギーが効果的にホール側壁に露出する絶縁膜3にアタックすることによって、プラズマ処理された絶縁膜3のホール側壁部6で水分が除去される(図2(b))。‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥プラズマ状態にできるガスであればプラズマエネルギーの効果があるので、O2,O3等のガスによるプラズマ処理を用いてもよい。」(摘記[2-4]参照)との記載により、絶縁膜中に含まれる水分が、N2、O2,O3等の反応ガスのプラズマエネルギーのアタックによって除去されることが述べられ、このプラズマエネルギーのアタックによって脱水に必要な反応熱や気化熱が与えられることは、当業者に自明の事項であるといえるから、シリコン酸化膜等の絶縁膜の脱水のため、N2、O2等の反応ガスのプラズマで該絶縁膜付き基板を加熱処理することは、本願出願前周知の技術であると認められる。
してみると、引用発明において、シリコン酸化膜の水分を低減するためにプラズマCVD装置の反応室内で300℃以上の高温中に放置して加熱処理する際に、N2、O2等の反応ガスのプラズマにより加熱処理することは、当業者が容易に想到し得ることである。
そして、相違点(イ)のように低圧力を設定し、併せて相違点(ロ)のように加熱処理することによって得られる本願発明1の効果も、引用刊行物1,2に記載された発明及び上記周知技術から普通に予測できる程度のものであって、格別なものは見出せない。
したがって、本願発明1は、刊行物1、2に記載された発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

[4]むすび
以上のとおり、本願発明1は、刊行物1、2に記載された発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
また、上記のとおり本願発明1が特許を受けることができないため、本願の他の請求項2、3に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-10-13 
結審通知日 2004-10-19 
審決日 2004-11-02 
出願番号 特願平9-101500
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 和瀬田 芳正加藤 浩一池渕 立  
特許庁審判長 影山 秀一
特許庁審判官 市川 裕司
瀬良 聡機
発明の名称 半導体装置の製造方法  
代理人 村山 光威  

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