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関連判例 | 平成16年(行ケ)20号審決取消請求事件 |
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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04B |
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管理番号 | 1109070 |
審判番号 | 不服2001-23349 |
総通号数 | 62 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1997-12-12 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2001-12-27 |
確定日 | 2004-12-08 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第159200号「無線移動機」拒絶査定に対する審判事件[平成 9年12月12日出願公開、特開平 9-321655]について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成8年5月31日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成15年10月27日付で補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のもの(以下、本願発明という。)である。 「【請求項1】送受信用アンテナと送受信アンテナ端子と外部コネクタ端子とを備える無線移動機において、 第1のλ/4ラインを介して送信回路に接続する第1のスイッチ素子と第2のλ/4ラインを介して受信回路に接続する第2のスイッチ素子とから成り、前記第1のスイッチ素子と前記第2のスイッチ素子とが、前記送受信アンテナ端子に接続する第1の端子と前記外部コネクタ端子に接続する第2の端子との間に並列に配置されているスイッチ回路と、 前記スイッチ回路の接続を切換える制御回路と を具備し、 前記制御回路は、前記送受信用アンテナを通じて送受信するアンテナ端子モードでは、前記第1のスイッチ素子及び第2のスイッチ素子と前記送受信アンテナ端子との開閉を制御し、前記外部コネクタ端子を通じて送受信する外部コネクタ端子モードでは、前記第1のスイッチ素子及び第2のスイッチ素子と前記外部コネクタ端子との開閉を制御することを特徴とする無線移動機。」 2.刊行物 これに対して、当審の拒絶の理由に引用された特開平2-105636号公報(平成2年4月18日出願公開、以下、刊行物1という。)、特開昭59-214338号公報(昭和59年12月4日出願公開、以下、刊行物2という。)には、それぞれ図面とともに、以下のことが記載されている。 [刊行物1] (A)「2.特許請求の範囲 無線機本体は、送信回路と送信フィルタを有する送信部と、受信回路と受信フィルタを有する受信部と、内部アンテナと、上記送信部と受信部でこの内部アンテナを共用して接続する送受信共用部と、上記送信部と受信部をブースタに接続する外部接続端子と、上記送信部と受信部の入出力を上記送受信共用部に接続するか上記外部接続端子に接続するか切り換える切換スイッチとを具備し、・・・とを具備することを特徴とする無線機」(・・・は引用箇所の省略を意味し、以下、同様とする。)(公報第1頁左下欄4行〜右下欄2行) (B)「従って、携帯型無線機1は、受信回路2と、受信フィルタ3と、送受信共用部4と、高周波切換スイッチ5と、送信フィルタ6と、送信回路7と、内部アンテナ8と、受信外部接続端子9と、送信外部接続端子10から構成されている。」(公報3頁左上欄1行〜5行) (C)「上記構成において、通常の携帯型無線機として使用する場合は、第2図に示すのと同様に高周波切換スイッチ5が切り換わり、内部アンテナとして動作になる。 一方、車載時などで送信出力を増幅し、外部アンテナ18を装着して使用する場合は、ブースタ13が接続され、高周波切換スイッチ5は、高周波外部接続端子側に切り換える。」(公報3頁左上欄10行〜17行) 上記(A)〜(C)及び図面を勘案すると、刊行物1には、 内部アンテナと、送受信共用部と、外部接続端子と、 送信フィルタを介して送信回路に接続し受信フィルタを介して受信回路に接続する切換スイッチとを具備し、 前記切換スイッチを、通常の携帯型無線機として使用する場合は、前記送受信共用部を介して前記内部アンテナに接続し、外部アンテナを装着して使用する場合は、前記外部接続端子に接続する携帯型無線機(以下、刊行物1発明という。) が記載されていると認められる。 [刊行物2] (D)「2.特許請求の範囲 (1)アンテナ,該アンテナにその入力を結合する受信λ/4同調フィルタ,該受信λ/4同調フィルタの出力にその入力を結合する受信用バンドパスフィルタ,上記のアンテナにその出力を結合する送信λ/4同調フィルタ,該送信λ/4同調フィルタの入力にその出力を結合する送信用バンドパスフィルタ,依り構成される事を特徴とした同時通話のコードレス電話機のアンテナ回路。」(公報1頁左下欄4行〜13行) 3.対比 本願発明と刊行物1発明を対比する。 (1)刊行物1発明の「内部アンテナ」、「外部接続端子」、「送信回路」、「受信回路」、「携帯型無線機」は、それぞれ本願発明の「送受信用アンテナ」、「外部コネクタ端子」、「送信回路」、「受信回路」、「無線移動機」に対応する。 (2)刊行物1の第1図には、上記切換スイッチが、送信フィルタを介して送信回路に接続する第1のスイッチ素子と受信フィルタを介して受信回路に接続する第2のスイッチ素子とから成ることが記載されており、その点で刊行物1発明の「切換スイッチ」と本願発明の「スイッチ回路」は対応する。 (3)刊行物1には明記されていないが、刊行物1発明においても、切換スイッチを、通常の携帯型無線機として使用する場合は、送受信共用部を介して内部アンテナに接続し、外部アンテナを装着して使用する場合は、外部接続端子に接続するためには、そのように切換スイッチを制御するための手段を備えていることは明らかであり、当該手段が本願発明の「制御回路」に対応する。 (4)本願発明の「前記第1のスイッチ素子及び第2のスイッチ素子と前記送受信アンテナ端子との開閉を制御」すること、及び、「前記第1のスイッチ素子及び第2のスイッチ素子と前記外部コネクタ端子との開閉を制御する」ことには、それぞれ第1のスイッチ素子及び第2のスイッチ素子を送受信アンテナ端子に接続すること、及び、第1のスイッチ素子及び第2のスイッチ素子を外部コネクタ端子に接続することが含まれるから、 してみれば、刊行物1発明の「前記切換スイッチを、通常の携帯型無線機として使用する場合は、前記送受信共用部を介して前記内部アンテナに接続」することと本願発明の「前記送受信用アンテナを通じて送受信するアンテナ端子モードでは、前記第1のスイッチ素子及び第2のスイッチ素子と前記送受信アンテナ端子との開閉を制御」することは、第1のスイッチ素子及び第2のスイッチ素子を送受信アンテナに接続する点で対応し、同様に、刊行物1発明の「外部アンテナを装着して使用する場合は、前記外部接続端子に接続する」ことと本願発明の「前記外部コネクタ端子を通じて送受信する外部コネクタ端子モードでは、前記第1のスイッチ素子及び第2のスイッチ素子と前記外部コネクタ端子との開閉を制御する」ことは、第1のスイッチ素子及び第2のスイッチ素子を外部コネクタ端子に接続する点で対応する。 したがって、本願発明と刊行物1発明は、 送受信用アンテナと外部コネクタ端子とを備える無線移動機において、 送信回路に接続する第1のスイッチ素子と受信回路に接続する第2のスイッチ素子とから成るスイッチ回路と、 前記スイッチ回路の接続を切換える制御回路と を具備し、 前記制御回路は、前記送受信用アンテナを通じて送受信するアンテナ端子モードでは、前記第1のスイッチ素子及び第2のスイッチ素子と前記送受信アンテナとの開閉を制御し、前記外部コネクタ端子を通じて送受信する外部コネクタ端子モードでは、前記第1のスイッチ素子及び第2のスイッチ素子と前記外部コネクタ端子との開閉を制御する無線移動機 である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点1] 本願発明では、送受信アンテナ端子を備えているのに対して、 刊行物1発明では、送受信共用部を備えており、 スイッチ回路を構成する第1のスイッチ素子と第2のスイッチ素子が、 本願発明では、送受信アンテナ端子に接続する第1の端子と外部コネクタ端子に接続する第2の端子との間に並列に配置されているのに対して、 刊行物1発明では、送受信共用部を介して内部アンテナに接続され、又、外部アンテナを装着して使用する場合に、外部コネクタ端子に接続されるものであり、 送受信用アンテナを通じて送受信するアンテナ端子モードにおいて、第1のスイッチ素子及び第2のスイッチ素子との開閉を制御されるものが、 本願発明では、送受信アンテナ端子であるのに対して、 刊行物1発明では、送受信共用部である点。 [相違点2] 送信回路に接続する第1のスイッチ素子と受信回路に接続する第2スイッチ素子が、 本願請求項1に係る発明では、それぞれ第1のλ/4ライン及び第2のλ/4ラインを介して接続するのに対して、 刊行物1発明では、それぞれ送信フィルタ及び受信フィルタを介して接続する点。 4.相違点についての判断 上記相違点について検討する。 [相違点1について] 例えば特開平8-111652号公報(平成8年4月30日出願公開、以下、周知例1という。)の従来の技術の欄、図4、及び図5に記載されているように、アンテナを共用する場合に、送受信共用部を用いるか、あるいは送受信共用部に換えてフィルタ、接続端子を備えるスイッチなどを用いるかは、当業者が設計時に適宜選択し得る設計的事項にすぎないものであり、 してみれば、刊行物1発明において、送受信共用部を送受信アンテナ端子とし、送受信用アンテナを通じて送受信するアンテナ端子モードにおいて、第1のスイッチ素子及び第2のスイッチ素子との開閉を制御されるものを、当該送受信アンテナ端子とすることは、当業者が容易になし得ることである。 又、本願の願書に最初に添付された明細書には、「第1の端子」、「第2の端子」、「並列」なる記載はないが、本願発明の「前記第1のスイッチ素子と前記第2のスイッチ素子とが、前記送受信アンテナ端子に接続する第1の端子と前記外部コネクタ端子に接続する第2の端子との間に並列に配置されている」との記載が、図1に示されるようなスイッチ回路の構成を意味しているのだとすれば、上述のように刊行物1発明において送受信アンテナ端子を備えた場合には、送受信アンテナ端子と、第1のスイッチ素子及び第2のスイッチ素子とが接続される接続点は上記第1の端子に対応し、又、外部コネクタ端子と、第1のスイッチ素子及び第2のスイッチ素子とが接続される接続点は上記第2の端子に対応する。 又、刊行物1には外部コネクタ端子が2端子記載されているが、例えば特開平6-37668号公報(平成6年2月10日出願公開、以下、周知例2という。)に記載されているように、外部コネクタ端子を1端子とすることは本願出願前周知の技術であって、たとえ刊行物1発明の第2の端子が2端子で構成されるものだとしても、その点は格別の差異ではない。 したがって、刊行物1発明において、周知例1、2に記載されているような設計的事項及び周知の技術を参酌して、 送受信アンテナ端子を備え、 スイッチ回路を構成する第1のスイッチ素子と第2のスイッチ素子が、送受信アンテナ端子に接続する第1の端子と外部コネクタ端子に接続する第2の端子との間に並列に配置されているように構成し、 送受信用アンテナを通じて送受信するアンテナ端子モードにおいて、第1のスイッチ素子及び第2のスイッチ素子との開閉を制御されるものを、当該送受信アンテナ端子とすることは、当業者が容易になし得るものである。 [相違点2について] 刊行物2には、同時通話のコードレス電話機において、送信用受信用の共用のアンテナを送信λ/4同調フィルタを介して送信機に接続し、受信λ/4同調フィルタを介して受信機に接続するという技術が開示されており、 かつ、上記[相違点1について]で述べたとおり、アンテナを共用する場合に、送受信共用部を用いるか、あるいは送受信共用部に換えてフィルタ、接続端子を備えるスイッチなどを用いるかは、当業者が設計時に適宜選択し得る設計的事項にすぎないものである。 したがって、同一の技術分野に属する刊行物1発明において、刊行物2の上記の構成を参酌して、送受信共用部に換えて、送信回路に接続する第1のスイッチ素子と受信回路に接続する第2スイッチ素子が、それぞれ第1のλ/4ライン及び第2のλ/4ラインを介して接続するようにすることは、当業者が容易になし得るものである。 5.むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物1、2に記載された発明、設計的事項、及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2003-11-13 |
結審通知日 | 2003-11-18 |
審決日 | 2003-12-01 |
出願番号 | 特願平8-159200 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H04B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 溝本 安展 |
特許庁審判長 |
西川 正俊 |
特許庁審判官 |
新井 則和 橋本 正弘 |
発明の名称 | 無線移動機 |
代理人 | 大橋 公治 |
代理人 | 役 昌明 |
代理人 | 平野 雅典 |