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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1109107
審判番号 不服2001-13662  
総通号数 62 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-08-11 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2001-08-02 
確定日 2004-12-24 
事件の表示 平成 9年特許願第 16730号「事故車修理費用見積システム」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 8月11日出願公開、特開平10-214283〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年1月30日の出願であって、平成13年6月25日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月2日に拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。さらに、当審において、平成16年6月7日に拒絶理由が通知され、同年8月9日に意見書が提出されたものである。

2.本願発明について
本願特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下本願発明という)は、以下のものである。
「見積対象である事故車の車種を特定する車種特定データを入力するためのデータ入力手段と、
見積対象である事故車の画像を撮像してイメージデータに変換する事故車画像入力手段と、
過去に修理が行われた事故車の前記車種特定データに対応させて、当該事故車の修理費用見積に関するデータである見積データを保持する見積データ保持手段と、
過去に修理が行われた事故車の前記車種特定データに対応させて、当該事故車のイメージデータを保持するイメージデータ保持手段と、
見積対象である事故車の車種特定データに基づいて前記イメージデータ保持手段からイメージデータを読み出すイメージデータ読出手段と、
前記読み出されたイメージデータに対応した前記見積データを前記見積データ保持手段から読み出す見積データ読出手段と、
前記読み出された全てのイメージデータおよび前記見積データを、前記見積対象の事故車の画像とともに表示する表示手段と、
前記表示手段に表示された前記見積データを選択する選択データを入力するための選択データ入力手段と、
前記選択データによって選択された前記見積データに基づいて見積対象である事故車の修理費用見積を行う修理費用見積手段と
を備えたことを特徴とする事故車修理費用見積システム。」

(2)引用例
当審の拒絶の理由に引用された、特開平8-239017号公報(以下、引用例1という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
「 【0013】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、一般車両の整備作業から事故車の修理や特装車の改造に到る種々の作業に際し、未熟練工でも作業内容の手順・作業方法が即座に理解でき、同時に作業内容の見積、作業費用見積を中古市場の価格をも参照して迅速且つ的確に処理できるようにした車両の整備・修理・改造作業の指導・見積装置を提供するものである。」(3ページ左欄28-34行)
「 【0030】
操作者は前記キーボード11によるキー入力やマウス12のクリック操作によって、先ず対象となる当該目的車両の作業名(整備か修理か改造かの大別を含む)を表示画面から選択し(N1)、次に当該目的車両の車種を選択する(N2)。
…(中略)…
【0032】
次に、見積書作成フローに入り、過去の同種の上物や部品による同種の車両に対する同種の作業といった類似する作業データを検索(N5)して該作業の見積筆頭データを画面表示し、これと当該作業との異同を吟味して必要な変更(例えば車両番号、整備種別、機種の型式番号、担当者名、整理番号等)を加えて新規登録する(N6)。
【0033】
次に、見積書の明細部を入力する(N7)。この際、過去の類似作業データ(見積書明細)を情報1cから検索して画面表示する(N8)。
【0035】
上記明細の入力作業(N7)においては過去の作業データ1cの作業内容との比較吟味をして作業名、部品材料の取捨選択、置き換えを行う(N7a)。この際、使用部品のイラスト図が視覚的に作業内容を把握することに役立つ。
【0036】
尚、整備作業については、定型の整備作業名を選択して適宜使用部品名を選択する。この際、過去の同種車両の整備作業データを読み出すことで殆ど時間を要さずに作業工程見積と使用部品材料の見積ができる。蓋し、整備作業では作業の定型化を進めることができるので、過去の作業データ(同種の車両または当該車両自身の過去の整備作業データ)の蓄積が直載に役立つのである。
…(中略)…
【0038】
また、事故車等の大きな修理作業では、該当する修理部位の作業名を情報1aないし1bから選択して画面表示し、画面の部品イラスト図とともに付記された使用部品材料(交換部品)を適宜選択する。この際、過去の事故車修理の作業データ1cの中から修理すべき部位、破損程度を同じくする類似した修理データを選択して表示させ、これを基に当該修理作業との異同を参照して異なる部分のみを置き換えることにより、当該修理作業内容を迅速に決定することができる。
…(中略)…
【0050】
図3は目的車両の作業名選択・車種選択を示す表示画面図であり、操作者はマウスによって目的該当車種(ないし一般作業名)をクリックして選択する。
【0051】
図4は目的車両ないしクレーン(部品名)のメーカー名の選択表示画面であり、上記同様の方法で選択を行う(以下の選択方法も同様)。
【0052】
図5は当該クレーン架装作業に関する作業見積、費用見積を行うに際して、過去の参照見積データを検索する画面表示である。
【0053】
図6は上記検索によって選択した過去の類似する参照作業の見積筆頭データであり、これを基に当該作業に適合するよう異なる項目を変更して新規登録する。
【0054】
次に、見積明細の作成作業に入り、過去の作業データを基に異同を吟味して追加、変更を加えて当該作業の見積明細を作成する。
【0055】
即ち、図7のような部品・作業名と数量、単価、金額を記載した過去の見積明細データを読み出し、これを本作業に適合させるのである。
【0056】
具体的には図8のように上物(部品)である目的のクレーンを選択してそのイラスト図を各部の名称を付記して画面表示し、目的作業の部位を選択(作業項目の選択)し、図9のように該作業項目の部位をイラスト図で示すとともに細目の作業名を表示して、必要作業名を選択する。
【0057】
また、同時に図10のように上記作業名に対応した細目の部品名一覧を表示して使用部品の選択を行う。」(4ページ右欄27行-6ページ左欄6行)

よって、引用例1には、以下の発明(以下、引用例1発明という)が記載されている。
「見積対象である事故車の車種を特定する車種特定データを入力するための入力装置と、
過去に修理が行われた事故車の前記車種特定データに対応させて、当該事故車の修理費用見積に関するデータである見積データを保持する記憶装置と、
見積対象である事故車の車種特定データに基づいて前記記憶装置から見積データを読み出す読取装置と、
前記読み出された全ての参照見積データを表示する表示装置と、
前記表示手段に表示された前記参照見積データを選択する選択データを入力するための入力装置と、
前記選択データによって選択された前記参照見積データに基づいて見積対象である事故車の修理費用見積を行う制御処理装置と
を備えたことを特徴とする車両の整備・修理・改造作業の指導・見積装置。」

また、当審の拒絶の理由に引用された、特開昭62-145464号公報(以下、引用例2という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
「センターS側では、受信画像を一旦記憶し、受信画像と同一角度から撮影した画像を、前記光ディスク記憶装置7内に記憶されている基準画像ファイルから取り出す。そして、必要ならば、受信画像と同じサイズになるように画像の縮小、拡大、回転等を行う。受信画像と基準画像とを比較して事故程度の査定を行う。」(2ページ左下欄4-10行)

また、当審の拒絶の理由に引用された、交通毎日新聞第9面、1996年9月4日発行(以下、引用例3という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
「即時に着手、高い品質」(見出し右から3行)
「修理個所をデジタルカメラで撮影し、コンピュータに入力すると画像情報が関係部門に送られる。」(第2段右から7-11行)
「蓄積された画像付き見積もりデータを利用し、今まで専門職のみ可能であった見積書を事故データベースを活用することにより、誰でも短時間に作成できる。」(第3段右から4-10行)
「デジタルフォトには写真データと見積もり内容や事故データベースが蓄積される。事故データベースの蓄積後、新規見積もり作業時に過去の類似写真の見積もり内容を再利用し、見積もり作業の迅速化が図れる、と言う大きなメリットもある。」(最下段右から33-42行)

(3)対比
そこで、本願発明と引用例1発明とを対比すると、引用例1発明の「入力装置」は、本願発明の「データ入力手段」に相当し、以下同様に、「記憶装置」は「イメージデータ保持手段」に、「読取装置」は「イメージデータ読出手段」に、「参照見積データ」は「見積データ」に、「読取装置」は「見積データ読出手段」に、「表示装置」は「表示手段」に、「入力装置」は「選択データ入力手段」に、「制御処理装置」は「修理費用見積手段」に、それぞれ相当する。また、引用例1発明の「車両の整備・修理・改造作業の指導・見積装置」は、整備、修理及び改造作業を指導及び見積を行う装置であるから、本願発明の「事故車修理費用見積システム」を含む。
よって、両者は、
「見積対象である事故車の車種を特定する車種特定データを入力するためのデータ入力手段と、
過去に修理が行われた事故車の前記車種特定データに対応させて、当該事故車の修理費用見積に関するデータである見積データを保持する見積データ保持手段と、
見積対象である事故車の車種特定データに基づいて、前記見積データを前記見積データ保持手段から読み出す見積データ読出手段と、
前記読み出された全ての見積データを表示する表示手段と、
前記表示手段に表示された前記見積データを選択する選択データを入力するための選択データ入力手段と、
前記選択データによって選択された前記見積データに基づいて見積対象である事故車の修理費用見積を行う修理費用見積手段と
を備えたことを特徴とする事故車修理費用見積システム。」
で一致し、以下の点で相違する。

[相違点1]
本願発明では、見積対象の事故車画像と過去の事故車画像を比較し、その中で類似画像を見つけ出し、その見積内容データを再利用するために、以下(a)-(d)の構成を有しているが、引用例1発明は、過去の見積内容データを再利用する点は同じであるが、以下(a)-(d)の構成を有していない点。
(a)見積対象である事故車の画像を撮像してイメージデータに変換する事故車画像入力手段
(b)過去に修理が行われた事故車の前記車種特定データに対応させて、当該事故車のイメージデータを保持するイメージデータ保持手段
(c)見積対象である事故車の車種特定データに基づいて前記イメージデータ保持手段からイメージデータを読み出すイメージデータ読出手段
(d)読み出されたイメージデータに対応した前記見積データを前記見積データ保持手段から読み出す見積データ読出手段

[相違点2]
本願発明では「読み出された全てのイメージデータおよび前記見積データを、前記見積対象の事故車の画像とともに表示する表示手段」であるのに対し、引用例1発明は「読み出された全ての参照見積データを表示する表示手段」である点。

(4)判断
上記各相違点について検討する。
[相違点1]について
引用例3は、見積対象の事故車画像と過去の事故車画像を比較し、その中で類似画像を見つけ出し、その見積内容データを再利用するためのものであり、そのために以下のとおり(a)-(d)の構成を有するものである。すなわち、(a)については、引用例3第2段右から7-11行に記載のデジタルカメラが、見積対象である事故車の画像を撮像してイメージデータに変換する事故車画像入力手段に相当する。(b)については、引用例3第3段右から4-10行には、過去の事故車画像付き見積データを蓄積している事故データベースが記載されており、過去に修理が行われた事故車の車種特定データに対応させて、事故車のイメージデータを保持するイメージデータ保持手段に相当する。(c)については、引用例3第3段右から4-10行には、過去の事故車画像付き見積データを蓄積している事故データベースが記載されており、この事故データベースに蓄積されている画像や見積データを採用することは当業者であれば通常行い得る事項である。(d)については、引用例3第3段右から4-10行には、過去の事故車画像付き見積データを蓄積している事故データベースが記載されており、イメージデータと見積データが対に記録されているから、読み出されたイメージデータに対応した前記見積データを前記見積データ保持手段に相当する。そして、データベースからデータ読出を行わないと、データが活用できないから、前記事故データベースが、当該データを見積データ保持手段から読み出す見積データ読出手段を有することは明らかである。
以上から、引用例1発明に引用例3を適用して、見積対象の事故車画像と過去の事故車画像を比較し、その中で類似画像を見つけ出し、その見積内容データを再利用することとし、そして、相違点(a)-(d)の構成を付加することは、当業者が容易に想到しうることである。
なお、請求人は、平成16年8月9日付意見書中で、見積データとイメージデータを独立して記憶する点を主張しているが、引用例1にも4ページ左欄36-40行の「分割された車両各部の使用部品材料の名称とそのイラスト図及び細分化された作業名とその工数及び使用部品材料の名称とイラスト図(以上情報1b)、過去の作業済車両の整備・修理・改造作業に関する文字情報と映像の作業データ(以上情報1c)」の様に、イメージやイラストなどの画像データと作業や見積などの文字データを独立に記憶することが記載されている。また、平成10年10月28日付け拒絶理由通知書で引用された特開平4-315258号公報2ページ右欄-3ページ左欄及び図1にもイメージデータと見積データが独立に記憶されている点が記載されており、当業者であれば周知技術である。

[相違点2]について
引用例2には、自動車損害査定装置において、比較する2つの画像を同時に表示することが記載されており、引用例1に引用例3の手段を適用する際、比較する画像を同時に表示させることは、当業者が適宜実施しうることと認められる。

したがって、本願発明は、引用例1発明に引用例2及び引用例3を適用して、当業者が容易に想到しえたものである。また、本願発明の作用効果も、引用例1乃至引用例3から当業者が予測できる範囲のものである。

なお、請求人は、平成16年8月9日付意見書中で、各引用例の組み合わせの困難性について主張しているが、本願発明及び引用例1乃至引用例3に記載されたものは車両修理見積システムである点で同じ技術分野に属している。また、引用例1及び引用例3はいずれも本願発明と同様、「迅速かつ的確に処理」するという課題を有する。さらに、引用例2の3ページ右上欄17-19行には、「査定担当者が査定に必要とする画像を適確に得ることができる。」と記載されており、本願発明と同様、「適確」に処理するという課題を有している。
以上から、引用例1-3を組み合わせることに格別の困難性は見られない。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1乃至引用例3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-10-25 
結審通知日 2004-10-26 
審決日 2004-11-08 
出願番号 特願平9-16730
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 ▲吉▼田 耕一  
特許庁審判長 山下 弘綱
特許庁審判官 須原 宏光
竹中 辰利
発明の名称 事故車修理費用見積システム  
代理人 松倉 秀実  
代理人 遠山 勉  
代理人 川口 嘉之  
代理人 永田 豊  

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