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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16L
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 F16L
管理番号 1109449
審判番号 不服2003-24026  
総通号数 62 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-03-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-12-11 
確定日 2005-01-06 
事件の表示 平成11年特許願第248698号「金属製中空筒状体及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年3月23日出願公開、特開2001-74173〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年9月2日の出願であって、平成15年11月7日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年12月11日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、審判請求と同日付けの同年12月11日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成15年12月11日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「金属製の中空筒状体であって、塑性加工によりシームレスパイプ素管を略0.03〜0.15mmの厚さにその厚さ方向にフレキシブルに形成したことを特徴とする金属製中空筒状体。」から、
「複写機やプリンタ等の感光体ドラムもしくは定着器に使用されるSUS製の中空筒状体であって、塑性加工によりシームレスパイプ素管を略0.03〜0.15mmの厚さにその厚さ方向にフレキシブルに形成したことを特徴とする金属製中空筒状体。」に補正された。なお、下線は、補正個所を明確化するために、当審で付したものである。
上記補正事項は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「金属製」をその下位概念である「SUS製」に限定するとともに、「中空筒状体」を「複写機やプリンタ等の感光体ドラムもしくは定着器に使用される」ものに限定したものであるから、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)刊行物記載の発明及び周知技術
(2-1)本願の出願前に国内で頒布された刊行物である特開平8-234600号公報(以下、「刊行物1」という。)には、以下の事項が記載されている。
(イ)段落【0001】
「【産業上の利用分野】本発明は、電子写真方式、静電記録方式等を採用する画像形成装置に具備される定着装置、詳しくは、互いに圧接して配設される加熱部材と加圧部材とで構成される加熱装置、及び該加熱装置を備えた画像形成装置に関するものである。」
(ロ)段落【0061】〜【0063】
「11は加圧部材としての薄肉金属スリーブであり、鉄やSUS、ニッケル等の金属を薄肉中空円筒状に成形したスリーブである。該薄肉金属スリーブ11の肉厚tは、弾性変形しその弾性変形によって生じる弾性力によりニップの形成が可能で、且つ適度な剛性をもち、加圧回転によっても挫屈しない範囲に設定する必要がある。・・・例えば構成材料としてニッケルを使用し、半径r=10.0[mm]の薄肉金属スリーブを作成する場合、該スリーブの厚みの適正値は、・・・60μm<t<150μmの範囲にあり、その範囲内で任意の肉厚を選択すればよい。」
(ハ)段落【0071】
「・・・図に示したように、加圧部材として薄肉ニッケルスリーブを用いることで、装置立ち上げ時の耐熱性フィルムの温度の上昇が加圧部材として弾性ローラを用いた従来構成の場合より早くなり、その後この温度はほぼ一定となった。これは薄肉スリーブを採用することで加圧部材の熱容量が小さくなり、熱伝導性も良好になったため、ニップに対向する加圧部材温度の立ち上がりが早く、さらに立ち上がり後はヒータの制御に追従しながらほぼ一定温度を保っているため、これにより耐熱性フィルムの温度も加熱体の目標温度を一定値にしてもほぼ一定に保たれるためである。従って本発明を適用した加熱定着装置では、一定の定着目標温度で定着性を満足させ且つ高温オフセットの発生しない良好な画像が得られるため、紙間ヒータOFF(或いはON)による1枚毎の目標温度設定といった制御が不要となり、ヒータの制御が簡略化出来る。」
上記の摘記事項(イ)〜(ハ)からみて、刊行物1には、
「画像形成装置の定着装置に使用される鉄やSUS、ニッケル等の金属製の薄肉中空円筒状のスリーブであって、例えば構成材料としてニッケルを使用する場合60〜150μmの肉厚に形成し、弾性変形しうる金属製薄肉中空円筒状のスリーブ」の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されていると認められる。
(2-2)周知技術
特開平7-51733号公報(以下、「周知例1」という。)の特許請求の範囲には、
「【請求項1】 管状の素材に芯金を挿入しダイスを通して引き抜く管引法によりMoまたはMo合金のシームレス細管を製造する際に、硬さがHV650以上で、熱膨張率が管の材料よりも大きい芯金を用い、芯金が必要な剛性を維持できる範囲の温度での温間引抜きを行い、引抜き1パス当たりの減面率を15%以下とし、材料の硬さがHV330未満に維持されるように引抜きパス間で焼鈍を行うことを特徴とするMoまたはMo合金シームレス細管の製造方法。
【請求項2】 外径2mm以下、肉厚50μm以下の細管を製造する請求項1記載の方法。」と、
特開平6-273957号公報(以下、「周知例2」という。)の段落【0026】には、
「まず、アルミニウム合金性シリンダー素管を図1に示す拡管装置にセットする。ここで101は拡管装置本体、102はアルミニウム合金性シリンダー素管、103は拡管用ウレタンゴム、104は拡管用ウレタンゴム103に加える圧力である。次いでシリンダー内側に位置する拡管用ウレタンゴム103に圧縮空気を導入し、約300kg・f/cm2 の圧力104をシリンダー102にかけることによって拡管する。」と、
「チューブフォーミング-管材の二次加工と製品設計-」、社団法人日本塑性加工学会編、株式会社コロナ社、1992年10月30日初版第1刷発行、1998年5月25日初版第2刷発行、第187頁〜第188頁の「12.1.1回転しごき加工」の項には、
「管材などは従動するロールでしごきを行うことによって,かなりの薄物まで加工でき,精度の向上も期待できる。・・・以上は,しごき加工の一般的方法であるが,タングステン線を心金として微細極薄肉管(SUS304,外径0.3mm,肉厚10μm以下)のマイクロスピニング4)、5)なども開発され,調質と加工条件が研究されている。」と、それぞれ記載されている。
これらの周知例1〜3の記載からみて、本願の出願前に金属製の中空筒状体の技術分野において、
「シームレスパイプ素管から塑性加工により薄肉の中空筒状体を形成すること」が周知技術であると認められる。

(3)対比
そこで、本願補正発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、後者の「画像形成装置」は、その技術的意義からみて、前者の「複写機やプリンタ等」に相当し、同様にして、後者の「定着装置」は前者の「感光体ドラムもしくは定着器」に、後者の「鉄やSUS,ニッケル等の金属」は前者の「SUS」に、後者の「薄肉中空円筒状のスリーブ」は前者の「中空筒状体」に、後者の「60〜150μmの肉厚」は前者の「略0.03〜0.15mmの厚さ」に、後者の「弾性変形しうる」は前者の「厚さ方向にフレキシブルに形成した」に、それぞれ相当する。
そうすると、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。
〈一致点〉「複写機やプリンタ等の感光体ドラムもしくは定着器に使用されるSUS製の中空筒状体であって、略0.03〜0.15mmの厚さにその厚さ方向にフレキシブルに形成した金属製中空筒状体。
〈相違点〉前者は、中空筒状体を塑性加工によりシームレスパイプ素管から形成するのに対して、後者は、そのように特定されていない点。
ところで、金属製の中空筒状体の技術分野において、「シームレスパイプ素管から塑性加工により薄肉の中空筒状体を形成すること」は、上述したように、従来周知の技術である。
そして、刊行物1記載の発明と上記周知技術とは、「金属製の中空筒状体」という同一の技術分野に属するから、刊行物1記載の発明の上記相違点に係る構成を、上記周知技術を組み合わせて本願補正発明のものとすることは、当業者が容易になし得ることである。
さらに、本願補正発明の作用効果も、刊行物1記載の発明及び上記周知技術から当業者が予測できる範囲のものであって、格別のものではない。
したがって、本願補正発明は、刊行物1記載の発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成15年12月11日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1〜3に係る発明は、平成15年10月17日付けの手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「金属製の中空筒状体であって、塑性加工によりシームレスパイプ素管を略0.03〜0.15mmの厚さにその厚さ方向にフレキシブルに形成したことを特徴とする金属製中空筒状体。」

(2)刊行物記載の発明及び周知技術
(2-1)原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に国内で頒布された刊行物である特開平11-231724号公報(以下、「刊行物2」という。)には、次のとおり記載されている。
(イ)段落【0070】
「像担持体140は、この実施の形態では感光体として構成されており、導電層をなす可撓性を有する導電性基材140b(図3参照)の表面(外周面)に感光層140cを形成することにより構成されている。導電性基材140bとしては、例えば、電鋳法にて作製したニッケルシームレス管を用いることができる。感光層は、いわゆるOPC(有機感光体)をディッピング法で形成することができる。このような感光体140の可撓性すなわち柔軟さは、基材140bの厚みと径とを調整することにより決定することが可能であるから、使用される画像形成装置に応じて適宜設定することが可能である。例えば、基材厚み20〜200μm、基材直径10〜300mmの範囲で適宜設定する。・・・」
(ロ)段落【0132】〜【0135】
「【実施例】感光体140に関し
(1)感光体140の基材140bとしては、電鋳法にて作製したニッケルシームレス管を用い、その厚さは、40μm程度とする。・・・基材の厚さが小さすぎると、剛性(自らが形状を保持する強さ)が弱くなり、円筒度不良や現像ローラ等の当接部材との当接不良が生じる。したがって、基材の厚さは、0.04mm以上とすることが望ましい。・・・一方、基材の厚さが大きすぎると、良好な可撓性が得られ難くなるとともに、当接部材との当接によって生じる応力も大きくなってしまう。また、電鋳時間が長くなることから、製造コストも増大してしまう。したがって、基材の厚さは、0.05mm以下とすることが望ましい。・・・そこで、この実施例では、基材の厚さを、40μm程度とする。」
上記の摘記事項(イ)〜(ロ)からみて、刊行物2には、
「ニッケルシームレス管であって、電鋳法により20〜200μmの厚さにその厚さ方向に可撓性に形成したニッケルシームレス管」

(2-2)周知技術は、前記「2.(2-2)」に記載したとおりである。

(3)対比・判断
本願発明と刊行物2記載の発明とを対比すると、後者の「ニッケルシームレス管」は前者の「金属製の中空筒状体」に、後者の「20〜200μm」は前者の「略0.03〜0.15mm」に、後者の「可撓性に形成した」は前者の「フレキシブルに形成した」に、それぞれ相当するから、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。
〈一致点〉金属製の中空筒状体であって、略0.03〜0.15mmの厚さにその厚さ方向にフレキシブルに形成した金属製中空筒状体。
〈相違点〉前者は、中空筒状体を塑性加工によりシームレスパイプ素管から形成するのに対して、後者は、中空筒状体を電鋳法により形成する点。
ところで、上記相違点については、すでに検討したとおりである。
したがって、本願発明は、刊行物2記載の発明及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

(4)むすび
以上のとおりであるから、請求項2〜3に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-11-02 
結審通知日 2004-11-09 
審決日 2004-11-24 
出願番号 特願平11-248698
審決分類 P 1 8・ 575- Z (F16L)
P 1 8・ 121- Z (F16L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 神崎 孝之遠藤 秀明  
特許庁審判長 西川 恵雄
特許庁審判官 上原 徹
林 茂樹
発明の名称 金属製中空筒状体及びその製造方法  
代理人 丹羽 宏之  
代理人 野口 忠夫  
代理人 野口 忠夫  
代理人 丹羽 宏之  

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