• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F01N
管理番号 1109468
審判番号 不服2002-2924  
総通号数 62 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-05-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-02-21 
確定日 2005-01-06 
事件の表示 平成 8年特許願第304340号「ディーゼル機関の排ガス中のNOxの浄化方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 5月26日出願公開、特開平10-141048〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、
(1)平成8年11月15日の出願であって、平成13年10月29日付けで手続補正がなされ、平成14年1月29日付けで拒絶査定がなされ(発送日:平成14年2月1日)、
(2)それに対し、平成14年2月21日に拒絶査定に対する審判請求がなされた、
ものである。

II.本願発明
本願の請求項1ないし請求項3に係る発明は、平成13年10月29日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項3に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1及び請求項2に記載された発明は次のとおりである。
「【請求項1】吸気通路に配置される吸気ダンパー、排気通路に配置されるNOx還元触媒装置、吸気通路に配置される還流排ガス出口と排気通路に配置される還流排ガス入口と還流排ガス流量を制御するEGRダンパーとを備えるEGR装置、及び還元剤供給装置を含み、還元剤供給装置は、排気通路の還流排ガス入口とNOx還元触媒装置の間に配置される還元剤供給ノズル及び還元剤制御手段を備えるディーゼル機関の排ガス中のNOxの浄化方法であって、機関回転数、機関負荷、並びに還元触媒装置の入口付近の排ガス温度及び排ガス酸素濃度を検出し、検出された値に基づき、機関負荷が低負荷であり排ガス温度が所定温度より低いと判定されるときは、吸気ダンパーを作動させて吸気量を減少させ、検出された値に基づき、機関負荷が高負荷であると判定されるときは、吸気ダンパーを作動させて吸気量を増加し、EGRダンパーを作動させて還流排ガス流量を減少させ、且つ還元剤制御手段を作動させて還元剤供給量を増加させ、それにより、NOx還元触媒装置を高いNOx浄化率で作動させ、前記検出された値をコンピュータに入力し、コンピュータにより機関負荷が中、低負荷であると判定されるときは、排ガス温度及び排ガス酸素濃度が還元触媒装置の高いNOx浄化率の領域内にあるように、吸気ダンパー、EGRダンパー及び還元剤制御手段を作動させて、吸気量、還流排ガス流量及び還元剤供給量を制御し、還元剤は、軽油とし、電気ヒータにより約200〜300℃に加熱することを特徴とするディーゼル機関の排ガス中のNOxの浄化方法。
【請求項2】ディーゼル機関の排ガス中のNOxの浄化装置であって、吸気通路に配置される吸気ダンパー、排気通路に配置されるNOx還元触媒装置、吸気通路に配置される還流排ガス出口と排気通路に配置される還流排ガス入口と還流排ガス流量を制御するEGRダンパーとを備えるEGR装置、排気通路の還流排ガス入口とNOx還元触媒装置の間に配置される還元剤供給ノズル及び還元剤制御手段を備える還元剤供給装置、並びに吸気量制御信号、還流排ガス流量制御信号及び還元剤供給量制御信号をそれぞれ吸気ダンパー、EGRダンパー及び還元剤制御手段へ供給可能なコンピュータ、を含み、前記コンピュータは、機関回転数センサーから供給される機関回転数信号、機関の負荷センサーから供給される機関負荷信号、NOx還元触媒装置入口付近に設けた温度センサーから供給される排ガス温度信号、及びNOx還元触媒装置入口付近に設けた酸素センサーから供給される排ガス酸素濃度信号に基づいて、吸気量制御信号、還流排ガス流量制御信号、及び還元剤供給量制御信号を計算し出力し、還元剤供給装置は、還元剤加熱器を備えて還元剤を加熱蒸発させ、還元剤を蒸気として還元剤供給ノズルから排ガス中へ供給し、前記還元剤加熱器は、電気ヒータにより構成され、前記還元剤は、軽油であり、電気ヒータにより約200〜300℃に加熱されることを特徴とするディーゼル機関の排ガス中のNOxの浄化装置。」

III.引用刊行物記載の発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前の平成8年5月14日に頒布された「特開平8-121154号公報」(以下、「刊行物1」という。)には、
・「本発明はエンジンの排気ガス浄化方法および装置の改良に関するものである。」(2頁1欄27〜28行)
・「排気ガスの一部を再び吸気に還流させるEGR装置のみで使用すると、混合気中において比熱の大きいCO2濃度が増加し、燃焼時の温度の低減によりNOxの低減ができる。しかし、O2濃度が減少するため空気の十分でない高負荷領域では排煙濃度およびHCが増加して排気中の黒煙や硫黄酸化物が再度エンジン内部に吸入されてピストン、シリンダまわりの摩耗耐久性、エンジンオイル寿命に悪影響を与える。一方、排気浄化装置のみで使用すると、高負荷領域の排気ガス温度が高い所ではNOxの低減の効率は得られるが、低負荷領域では排気ガス温度が低いため、反応が十分行われずNOx低減を図ることができない。そこで、高負荷領域での使用に限られてしまう。」(2頁1欄44行〜同頁2欄6行)
・「エンジンの排気系統にNOx浄化触媒を備えたディーゼルエンジン排気ガス浄化方法において、エンジン回転数と燃料噴射量を検出し、この検出値を受けて現在の負荷状態を判別し」(2頁2欄16〜19行)
・「上記構成により、エンジンの高負荷時では、排気経路を経てNOx浄化触媒から大気に排気ガスを、中・低負荷時ではEGR装置を経て排気ガスを吸気管側に還流させ、熱容量を高めるとともに、燃焼時の燃焼ガスの燃焼最高温度を低下させることによりNOxを低減できる。」(2頁2欄39〜44行)
・「排気管5には排気ガス中のNOxを還元するNOx浄化装置6が配設されている。吸気管3と排気管5との間は、排気管5内の排気ガスを吸気管3に還流するEGR通路7で接続されている。 【0008】また、ディーゼルエンジン1には、エンジンの回転数を検出するエンジン回転数検出器8と、ディーゼルエンジン1への燃料の噴射量の検出するスロットル開度検出器等の燃料噴射量検出器9が配設されている。」(3頁3欄7〜16行)
・「制御装置10は、前記検出器にて検出された信号が入力され、後述するフローチャートにしたがって後述するEGR制御弁11を制御する制御信号i1、および、NOx浄化装置6への還元剤供給量を調節する制御信号i2を出力する。EGR通路7にはEGR制御弁11が配設され、EGR制御弁11は制御装置10からの指令によりEGR通路7を経て吸気管2へ還流する排気ガスの量を調整している。」(3頁3欄19〜26行)
・「排気管5には排気ガス中のNOxを還元する還元剤を供給する還元剤供給ノズル13が配設されている。還元剤はディーゼルエンジン1の燃料である軽油を使用している。」(3頁3欄27〜30行)
・「そして、そのディーゼルエンジン1の燃料供給ポンプ15から配管18、還元剤供給調整弁17、配管19を経て燃料が供給される。還元剤供給調整弁17は、弁開度が絞り調整される電磁弁が使用され、排気ガス中のNOx低減のため還元剤供給量を調整する弁である。」(3頁3欄32〜37行)
・「その結果、ステップS3で現在の負荷が高負荷なのか、それとも中・低負荷なのかを、例えば、図2にしたがって判断する。図2は横軸にエンジンの回転数を、縦軸にエンジン出力トルクを、また双曲線でエンジン等馬力線を示す図である。図2のように、ディゼルエンジン1にかかる負荷がエンジン等馬力曲線の分岐曲線P-Pを境に高負荷域(斜線部A)と中・低負荷域(B)とに設定され、それがマップにメモリされている。いま、燃料噴射量検出器9からのエンジン負荷T1と実回転数n1との交点Y1を求め、この交点Y1が、分岐曲線P-Pを境に右側(A)にあるため高負荷域と判断し、また、エンジン負荷T2と実回転数n2との交点Y2を求め、この交点Y2が、分岐曲線P-Pを境に左側(B)にあるため中・低負荷域と判断する。」(3頁4欄1〜15行)
・「ステップS3で、中・低負荷の交点Y1では、図2の負荷とエンジン回転数に対応するEGR量が定まるマップから吸気管2へのEGR制御量を読み取る。次いで、ステップ5でEGR制御弁11の開度量を制御する信号値i3を決定する。高負荷時では、制御装置10から出力される制御信号i1、i2に応じて還元剤供給量調整弁17および空気量調整弁12の開度量を制御することにより還元剤の量を調整してノズル13より噴射される。中・低負荷時では、制御装置10から出力される制御信号i3に応じてEGR制御弁11の開度量を制御することにより吸気管3へ還流する排気ガスの量を調整する。」(3頁4欄26〜37行)
と記載されている。
上記各記載、及び、【図1】ないし【図3】の記載からみて、刊行物1には、
排気通路に配置されるNOx浄化装置6、吸気通路に配置される還流排ガス出口と排気通路に配置される還流排ガス入口と還流排ガス流量を制御するEGR制御弁11とを備えるEGR装置、及び還元剤供給装置を含み、還元剤供給装置は、排気通路の還流排ガス入口とNOx浄化装置6の間に配置される還元剤供給ノズル13及び還元剤制御手段を備えるディーゼルエンジン1の排ガス中のNOxの浄化方法であって、エンジン回転数、スロットル開度を検出し、検出された値に基づき、エンジン負荷が高負荷であると判定されるときは、還元剤制御手段を作動させて還元剤供給量を調整させ、それにより、NOx浄化装置6を高いNOx浄化率で作動させ、前記検出された値を制御装置10に入力し、制御装置10によりエンジン負荷が中、低負荷であると判定されるときは、EGR制御弁11を作動させて、還流排ガス流量を制御し、還元剤は、軽油とするディーゼルエンジン1の排ガス中のNOxの浄化方法。
及び
ディーゼルエンジン1の排ガス中のNOxの浄化装置であって、排気通路に配置されるNOx浄化装置6、吸気通路に配置される還流排ガス出口と排気通路に配置される還流排ガス入口と還流排ガス流量を制御するEGR制御弁11とを備えるEGR装置、排気通路の還流排ガス入口とNOx浄化装置6の間に配置される還元剤供給ノズル13及び還元剤制御手段を備える還元剤供給装置、並びにEGR制御弁11を制御する制御信号i1及び還元剤供給量を調節する制御信号i2をそれぞれEGR制御弁11及び還元剤制御手段へ供給可能な制御装置10、を含み、前記制御装置10は、エンジン回転数検出器8から供給されるエンジン回転数信号、エンジンのスロットル開度検出器9から供給されるスロットルの開度量信号に基づいて、EGR制御弁11を制御する制御信号i1、及び還元剤供給量を調節する制御信号i2を計算し出力し、還元剤供給装置は、還元剤を還元剤供給ノズル13から排ガス中へ供給し、前記還元剤は、軽油であるディーゼルエンジン1の排ガス中のNOxの浄化装置。
が記載されていると認められる。
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前である昭和62年4月8日に頒布された「実願昭60-146914号(実開昭62-56743号)のマイクロフィルム」(以下、「刊行物2」という。)には、
・「この考案はアルコールエンジンの吸気装置に関する。」(1頁17〜18行)
・「このようなディーゼルエンジンにアルコール燃料を使用した場合、つまりアルコールエンジンにあってはアルデヒドの排出濃度が高く、その浄化のために排気通路に触媒が介装されるが、アルデヒドの反応飽和温度はCOと同じく約300℃で、排気温度の低下する低負荷域では浄化率が下がって、臭いなどの発生量が増大するという問題点がある。」(2頁9〜16行)
・「そこで、この考案は第1図のように、燃料の一部又は全部にアルコールを使用するとともに排気通路に触媒を設けたディーゼルエンジンにおいて、吸気通路に介装した吸気絞弁と、吸気絞弁を開閉する駆動手段と、排気中の酸素濃度を検出する手段と、排気温度を検出する手段と、排気温度が設定値以下の時に排気中の酸素濃度から空気過剰率を演算する手段と、この空気過剰率が所定値になるように吸気絞弁の開度を制御する手段を設ける。」(2頁18行〜3頁6行)
・「例えば、低負荷運転域で排気温度が設定値以下に低下すると、空気過剰率を所定値に抑えるように吸気絞弁の開度が縮小され、この絞り作動により吸入空気量が減少して排気温度が上がるため、触媒の活性化が促進される。」(3頁8〜12行)
・「第2図において、ディーゼルエンジン1の吸気通路2には吸気絞弁3が介装され、吸気絞弁3は駆動手段としてのソレノイド4に連係される。 排気通路5にはマフラ6上流に触媒7が設けられ、触媒7の入口付近の排気温度を検出する温度センサ8と排気中の酸素濃度を検出する酸素濃度センサ9が設けられる。 10は温度センサ8と酸素濃度センサ9の出力に基づいて、吸気絞弁3の開度を制御する制御回路で、制御回路10は第3図のフローチャートで示すように、排気温度が設定値、例えば400℃以下の吸気絞弁制御区域(第4図参照)で、酸素濃度から空気過剰率を演算し、この空気過剰率が所定値、例えば1.4〜1.5(それ以上になると、燃焼状態が悪化して出力の低下及びスモークの増大を来す)以上のときにはこれに応じて吸気絞弁3を閉方向に、また1.4〜1.5以下のときには同じく開方向に作動させるようにソレノイド4の制御電圧を制御する。なお、第5図は吸気絞弁開度-制御電圧特性図である。」(3頁14行〜4頁13行)
・「以上要するにこの考案によれば、例えば低負荷運転時に吸気絞弁の絞り作動により吸入空気量を減少させ、排気温度を高めるようにしたので、触媒の活性化が促進され、臭いなどの発生量が低減する。 また、吸気絞弁の開度を排気中の酸素濃度から求めた空気過剰率に基づいて制御するようにしたので、吸気絞弁の絞り作動によって燃焼状態が悪化し、出力の低下及びスモークの増大を招くこともない。」(5頁2〜11行)
と記載されている。
上記各記載、及び、第1図ないし第5図の記載からみて、刊行物2には、
吸気通路2に配置される吸気絞弁3、排気通路5に配置される触媒7を含むディーゼルエンジン1の排ガス中のアルデヒドの浄化方法であって、触媒7の入口付近の排ガス温度及び排ガス酸素濃度を検出し、検出された値に基づき、排ガス温度が400℃以下と判定され、空気過剰率が1.4以上と判定されるときは、吸気絞弁3を作動させて吸気量を減少させ、触媒7を活性化させ、前記検出された値を制御回路10に入力し、制御回路10により排ガス温度が400℃以下であると判定され、空気過剰率が1.4以上であると判定されるときは、触媒7の活性化が促進されるように、吸気絞弁3を作動させて、吸気量を制御するディーゼルエンジン1の排ガス中のアルデヒドの浄化方法。
及び
ディーゼルエンジン1の排ガス中のアルデヒドの浄化装置であって、吸気通路2に配置される吸気絞弁3、排気通路5に配置される触媒7、並びに吸気量制御信号を吸気絞弁3へ供給可能な制御回路10、を含み、前記制御回路10は、触媒7入口付近に設けた温度センサ8から供給される排ガス温度信号、及び触媒7入口付近に設けた酸素濃度センサ9から供給される排ガス酸素濃度信号に基づいて、吸気量制御信号を計算し出力するディーゼルエンジン1の排ガス中のアルデヒドの浄化装置。
が記載されていると認められる。
本願の出願日前である平成6年8月23日に頒布された「実願平5-2122号(実開平6-60725号)のCD-ROM」(以下、「刊行物3」という。)には、
・「本考案は内燃機関の排気ガス中に含まれる窒素酸化物(NOx)の除去装置に関する。」(4頁4行)
・「ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等の内燃機関から排出されるガス中のNOxの除去手段として」(4頁8〜9行)
・「コントローラ80からライン82を介して送られてくる信号によりアクチュエータの開度を制御することにより、インジェクタ110のノズル112から噴射される還元剤の流量が調整される。」(6頁24〜27行)
・「ヒータ140は例えば電熱式のもので、ハーネス142、144により電源150に連結される。」(7頁2〜3行)
・「ノズルから噴射される還元剤は、ヒータ140により加熱されて霧化が促進されるので、排気中に均一に添加される。したがって、触媒80でNOxの還元効率も向上する。」(7頁19〜20行)
と記載されている。
上記各記載、及び、【図1】ないし【図2】の記載からみて、刊行物3には、
ディーゼルエンジンの排ガス中のNOxの浄化方法において、還元剤は、電熱式のヒータ140により加熱すること
及び
還元剤供給装置は、還元剤加熱器を備えて還元剤を加熱蒸発させ、還元剤を蒸気としてノズル112から排ガス中へ供給し、前記還元剤加熱器は、電熱式のヒータ140により構成され、前記還元剤は、電熱式のヒータ140により加熱されること
が記載されていると認められる。

IV.対比及び判断
(1)請求項1に係る発明について
請求項1に係る発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1に記載された発明の「NOx浄化装置6」は、請求項1に係る発明の「NOx還元触媒装置」に相当し、以下同様に、「EGR制御弁11」は「EGRダンパー」に、「還元剤供給ノズル13」は「還元剤供給ノズル」に、「ディーゼルエンジン1」は「ディーゼル機関」に、「エンジン回転数」は「機関回転数」に、「エンジン負荷」は、「機関負荷」に、それぞれ、相当し、刊行物1に記載された発明の「制御装置10」と請求項1に係る発明の「コンピュータ」とは「制御する装置」の点で一致し、「高負荷」、「中(負荷)」及び「低負荷」については、発明の詳細な説明にも、どの範囲なのかを含め明確な規定はなく、特定されていないので、両者は、
排気通路に配置されるNOx還元触媒装置、吸気通路に配置される還流排ガス出口と排気通路に配置される還流排ガス入口と還流排ガス流量を制御するEGRダンパーとを備えるEGR装置、及び還元剤供給装置を含み、還元剤供給装置は、排気通路の還流排ガス入口とNOx還元触媒装置の間に配置される還元剤供給ノズル及び還元剤制御手段を備えるディーゼル機関の排ガス中のNOxの浄化方法であって、機関回転数を検出し、検出された値に基づき、機関負荷が高負荷であると判定されるときは、還元剤制御手段を作動させて還元剤供給量を調整させ、それにより、NOx還元触媒装置を高いNOx浄化率で作動させ、前記検出された値を制御する装置に入力し、制御する装置により機関負荷が中、低負荷であると判定されるときは、EGRダンパーを作動させて、還流排ガス流量を制御し、還元剤は、軽油とするディーゼル機関の排ガス中のNOxの浄化方法。
の点で一致し、
(イ)請求項1に係る発明では、吸気通路に配置される吸気ダンパーを含むディーゼル機関の排ガス中のNOxの浄化方法であって、機関負荷、並びに還元触媒装置の入口付近の排ガス温度及び排ガス酸素濃度を検出し、検出された値に基づき、機関負荷が低負荷であり排ガス温度が所定温度より低いと判定されるときは、吸気ダンパーを作動させて吸気量を減少させ、検出された値に基づき、機関負荷が高負荷であると判定されるときは、吸気ダンパーを作動させて吸気量を増加し、EGRダンパーを作動させて還流排ガス流量を減少させ、且つ還元剤制御手段を作動させて還元剤供給量を増加させ、それにより、NOx還元触媒装置を高いNOx浄化率で作動させ、前記検出された値をコンピュータに入力し、コンピュータにより機関負荷が中、低負荷であると判定されるときは、排ガス温度及び排ガス酸素濃度が還元触媒装置の高いNOx浄化率の領域内にあるように、吸気ダンパー、EGRダンパー及び還元剤制御手段を作動させて、吸気量、還流排ガス流量及び還元剤供給量を制御し、還元剤は、電気ヒータにより約200〜300℃に加熱するディーゼル機関の排ガス中のNOxの浄化方法であるのに対して、刊行物1に記載された発明では、ディーゼル機関の排ガス中のNOxの浄化方法であって、スロットル開度を検出し、検出された値に基づき、機関負荷が高負荷であると判定されるときは、還元剤制御手段を作動させて還元剤供給量を調整させ、それにより、NOx還元触媒装置を高いNOx浄化率で作動させ、前記検出された値を制御装置10に入力し、制御装置10により機関負荷が中、低負荷であると判定されるときは、EGRダンパーを作動させて、還流排ガス流量を制御するディーゼル機関の排ガス中のNOxの浄化方法である点
で相違する。
相違点(イ)について検討する。
請求項1に係る発明と刊行物2に記載された発明とを対比すると、刊行物2に記載された発明の「吸気通路2」、「吸気絞弁3」、「排気通路5」、「ディーゼルエンジン1」は、請求項1に係る発明の「吸気通路」、「吸気ダンパー」、「排気通路」、「ディーゼル機関」に相当するので、刊行物2には、吸気通路に配置される吸気ダンパー、排気通路に配置される触媒7を含むディーゼル機関の排ガス中のアルデヒドの浄化方法であって、触媒7の入口付近の排ガス温度及び排ガス酸素濃度を検出し、検出された値に基づき、排ガス温度が400℃以下と判定され、空気過剰率が1.4以上と判定されるときは、吸気ダンパーを作動させて吸気量を減少させ、触媒7を活性化させ、前記検出された値を制御回路10に入力し、制御回路10により排ガス温度が400℃以下と判定され、空気過剰率が1.4以上であると判定されるときは、触媒7の活性化が促進されるように、吸気ダンパーを作動させて、吸気量を制御するディーゼル機関の排ガス中のアルデヒドの浄化方法、が記載されていると認められる。なお、検出された値に基づき、排ガス温度が400℃以下と判定され、空気過剰率が1.4以上でないと判定されるときは、吸気ダンパーを作動させて吸気量を増加させることが記載されていると認められる。
i)刊行物1には、機関回転数を検出することが記載されていると認められることの外に、「エンジンの排気系統にNOx浄化触媒を備えたディーゼルエンジン排気ガス浄化方法において、エンジン回転数と燃料噴射量を検出し、この検出値を受けて現在の負荷状態を判別し」(2頁2欄16〜19行)及び「ディーゼルエンジン1への燃料の噴射量の検出するスロットル開度検出器等の燃料噴射量検出器9が配設されている。」(3頁3欄13〜16行)と記載されており、機関負荷を検出するものではないが、本願明細書には「負荷センサー12は、燃料噴射ポンプ13に取り付けられた燃料噴射量検出器により構成される。」(段落【0017】)と記載されており、機関負荷を検出すること、とすることは当業者が容易に想到し得たことである。
そして、刊行物2には、「触媒7の入口付近の排気温度を検出する温度センサ8と排気中の酸素濃度を検出する酸素濃度センサ9が設けられる。」(3頁18〜19行)と記載されており、触媒7の入口付近の排ガス温度及び排ガス酸素濃度を検出していることが記載されていると認められる。
ii)刊行物2には、触媒7の入口付近の排ガス温度及び排ガス酸素濃度を検出し、検出された値に基づき、排ガス温度が400℃以下と判定され、空気過剰率が1.4以上と判定されるときは、吸気ダンパーを作動させて吸気量を減少させ、触媒7を活性化させることが記載されていると認められ、しかも、「以上要するにこの考案によれば、例えば低負荷運転時に吸気絞弁の絞り作動により吸入空気量を減少させ、排気温度を高めるようにしたので、触媒の活性化が促進され、臭いなどの発生量が低減する。 また、吸気絞弁の開度を排気中の酸素濃度から求めた空気過剰率に基づいて制御するようにしたので、吸気絞弁の絞り作動によって燃焼状態が悪化し、出力の低下及びスモークの増大を招くこともない。」(5頁2〜11行)とも記載されており、排気温度を高めれば、活性化が促進される触媒について、記載されているので、NOx還元触媒装置について、検出された値に基づき、機関負荷が低負荷であり排ガス温度が所定温度より低いと判定されるときは、吸気ダンパーを作動させて吸気量を減少させ、それにより、NOx還元触媒装置を高いNOx浄化率で作動させることとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
iii)刊行物1には、「一方、排気浄化装置のみで使用すると、高負荷領域の排気ガス温度が高い所ではNOxの低減の効率は得られるが、低負荷領域では排気ガス温度が低いため、反応が十分行われずNOx低減を図ることができない。そこで、高負荷領域での使用に限られてしまう。」(2頁2欄1〜5行)と記載されており、機関負荷が高負荷であると判定されるときは、排気ガス温度が高く、NOx還元触媒装置を高いNOx浄化率で作動させ得るので、NOx還元触媒装置を使用することを示唆しているので、吸気量を増加しても、高負荷であると判定されるときは、NOx還元触媒装置を使用することを示唆しており、吸気量を増加させるのは、吸気ダンパーを作動させることによるので、機関負荷が高負荷であると判定されるときは、吸気ダンパーを作動させて吸気量を増加することが示唆されていると認められる。
刊行物1には、検出された値に基づき、機関負荷が高負荷であると判定されるときは、還元剤制御手段を作動させて還元剤供給量を調整させることが記載されていると認められ、しかも、「高負荷時と判断された時は、NOx浄化触媒に還元剤を供給する量を・・・負荷に応じて制御する制御手段とを備える」(2頁2欄31〜33行)と記載されており、図2には、より高負荷の側を多とすることが看取されるので、検出された値に基づき、機関負荷が高負荷であると判定されるときは、還元剤制御手段を作動させて還元剤供給量を増加させることは、当業者が容易に想到し得たことである。
刊行物1においては、中低負荷であると判断されるときには、EGRダンパーを作動させることが記載されているので、高負荷であると判断されたときは、EGRダンパーを作動させて還流排ガス流量を減少させること、とすることは当業者が容易に想到し得たことである。しかも、ディーゼル機関の排ガス中のNOxの浄化方法において、運転状態に応じたEGR量とすることは周知である(必要なら、特開平6-50134号公報等参照。)。
iv)ディーゼル機関の排ガス中のNOxの浄化方法において、コンピュータにより、判定し、作動させて、制御することは、周知である(必要なら、特開平5-231142号公報参照。)
刊行物1には、「排気浄化装置のみで使用すると、高負荷領域の排気ガス温度が高い所ではNOxの低減の効率は得られるが、低負荷領域では排気ガス温度が低いため、反応が十分行われずNOx低減を図ることができない。そこで、高負荷領域での使用に限られてしまう。」(2頁2欄1〜6行)と記載されており、低負荷時であるときにも、還元触媒装置の高いNOx浄化率の領域内にあるようにする課題を示唆し、刊行物2にも、「以上要するにこの考案によれば、例えば低負荷運転時に吸気絞弁の絞り作動により吸入空気量を減少させ、排気温度を高めるようにしたので、触媒の活性化が促進され、臭いなどの発生量が低減する。 また、吸気絞弁の開度を排気中の酸素濃度から求めた空気過剰率に基づいて制御するようにしたので、吸気絞弁の絞り作動によって燃焼状態が悪化し、出力の低下及びスモークの増大を招くこともない。」(5頁2〜11行)と記載されており、例えばとして低負荷時に触媒の活性化を促進する領域にあるようにすることが記載されていると認められる。
そして、刊行物2には、排ガス温度が還元触媒装置の高いNOx浄化率の領域内にあるように、吸気ダンパーを作動させて吸気量を制御することが記載されていると認められ、しかも、「排気中の酸素濃度を検出する手段と、排気温度を検出する手段と、排気温度が設定値以下の時に排気中の酸素濃度から空気過剰率を演算する手段と、この空気過剰率が所定値になるように吸気絞弁の開度を制御する手段を設ける。」(3頁2〜6行)とも記載されており、刊行物1には、EGRダンパー及び還元剤制御手段を作動させて、還流排ガス流量及び還元剤供給量を制御することが記載されていると認められる。
なお、本願明細書の段落【0009】には、「本発明のディーゼル機関の排ガス中のNOxの浄化方法は、好ましくは、検出された値をコンピュータに入力し、コンピュータにより、機関負荷が中、低負荷であると判定されるときは、排ガス温度及び排ガス酸素濃度が還元触媒装置のNOx浄化率の高い領域内にあるように吸気ダンパー、EGRダンパー及び還元剤制御手段を作動させて、吸気量、還流される排ガス流量及び還元剤供給量を制御する。」(5頁14〜19行)と記載されているのみで、吸気量、還流される排ガス流量及び還元剤供給量の相互について、発明の詳細な説明にも、その具体的な記載はない。
v)刊行物1には、「排気管5には排気ガス中のNOxを還元する還元剤を供給する還元剤供給ノズル13が配設されている。還元剤はディーゼルエンジン1の燃料である軽油を使用している。」(3頁3欄27〜30行)と記載されている。
ディーゼル機関の排ガス中のNOxの浄化方法において、還元剤は、電気ヒータにより加熱することは、周知である(必要なら、「実願平5-2122号(実開平6-60725号)のCD-ROM」参照。)。そして、加熱する温度を何度にするかは、設計事項であり、NOx還元触媒装置の温度特性等に基づいて当業者が適宜決定すべき事項である。
「高負荷」、「中(負荷)」及び「低負荷」については、特許請求の範囲の請求項1にも、発明の詳細な説明にも、どの範囲なのかを含め明確な規定はなく、特定されておらず、しかも、機関の特性、NOx還元触媒装置の特性、目途とする特性等により決定すべきものである。
したがって、刊行物2に記載された発明及び刊行物1に記載された発明は、ディーゼル機関の排ガス中の有害物質の浄化方法という同一の技術分野、それも、機関負荷に応じて触媒と排気温度等の関係を考慮しつつ制御を行うもの、に属するものなので、刊行物2に記載された発明及びディーゼル機関の排ガス中のNOxの浄化方法に関する周知事項を刊行物1に記載された発明に適用し、もって、吸気通路に配置される吸気ダンパーを含むディーゼル機関の排ガス中のNOxの浄化方法であって、機関負荷、並びに還元触媒装置の入口付近の排ガス温度及び排ガス酸素濃度を検出し、検出された値に基づき、機関負荷が低負荷であり排ガス温度が所定温度より低いと判定されるときは、吸気ダンパーを作動させて吸気量を減少させ、検出された値に基づき、機関負荷が高負荷であると判定されるときは、吸気ダンパーを作動させて吸気量を増加し、EGRダンパーを作動させて還流排ガス流量を減少させ、且つ還元剤制御手段を作動させて還元剤供給量を増加させ、それにより、NOx還元触媒装置を高いNOx浄化率で作動させ、前記検出された値をコンピュータに入力し、コンピュータにより機関負荷が中、低負荷であると判定されるときは、排ガス温度及び排ガス酸素濃度が還元触媒装置の高いNOx浄化率の領域内にあるように、吸気ダンパー、EGRダンパー及び還元剤制御手段を作動させて、吸気量、還流排ガス流量及び還元剤供給量を制御し、還元剤は、電気ヒータにより約200〜300℃に加熱するディーゼル機関の排ガス中のNOxの浄化方法であるとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
発明の効果の予測性について、検討する。
i)本願明細書の【発明の効果】の項の段落【0027】に記載された「排ガスを低酸素濃度に維持し、排気通路に設けたNOx還元触媒装置において、高い浄化率でNOxを浄化することができ」(11頁8〜9行)との効果は、刊行物1には、「上記構成により、エンジンの高負荷時では、排気経路を経てNOx浄化触媒から大気に排気ガスを、中・低負荷時ではEGR装置を経て排気ガスを吸気管側の還流させ、熱容量を高めるとともに、燃焼時の燃焼ガスの燃焼最高温度を低下させることによりNOxを低減できる。」(2頁2欄39〜44行)と記載され、刊行物2には、「排気中の酸素濃度を検出する手段と、排気温度を検出する手段と、排気温度が設定値以下の時に排気中の酸素濃度から空気過剰率を演算する手段と、この空気過剰率が所定値になるように吸気絞弁の開度を制御する手段を設ける。」(3頁2〜6行)及び「以上要するにこの考案によれば、例えば低負荷運転時に吸気絞弁の絞り作動により吸入空気量を減少させ、排気温度を高めるようにしたので、触媒の活性化が促進され、臭いなどの発生量が低減する。 また、吸気絞弁の開度を排気中の酸素濃度から求めた空気過剰率に基づいて制御するようにしたので、吸気絞弁の絞り作動によって燃焼状態が悪化し、出力の低下及びスモークの増大を招くこともない。」(5頁2〜11行)と記載されているので、刊行物1及び刊行物2に記載された発明に基づいて当業者が予測し得たことである。
ii)本願明細書の【発明の効果】の項の段落【0028】に記載された「均一な還元雰囲気を形成し、NOx還元触媒装置においてNOxの浄化を促進する。」(11頁19〜20行)との効果は、刊行物1には、「排気管5には排気ガス中のNOxを還元する還元剤を供給する還元剤供給ノズル13が配設されている。還元剤はディーゼルエンジン1の燃料である軽油を使用している。」(3頁3欄27〜30行)及び「還元剤の量を調整してノズル13より噴射される。」(3頁4欄33〜34行)と記載されており、そして、ディーゼル機関の排ガス中のNOxの浄化方法において、還元剤は、電気ヒータにより加熱することは、周知であるところ、還元剤は、電気ヒータにより加熱するなら、還元剤は排ガス中に均一に分散されることになり、「均一な還元雰囲気を形成し、NOx還元触媒装置においてNOxの浄化を促進する。」ことは、前記周知を示す例として挙示した「実願平5-2122号(実開平6-60725号)のCD-ROM」にも「ノズルから噴射される還元剤は、ヒータ140により加熱されて霧化が促進されるので、排気中に均一に添加される。したがって、触媒80でのNOxの還元効率も向上する。」(7頁19〜21行)と記載されているとおりであり、当業者が予測し得たことである。
そして、本願発明が奏する他の効果も、刊行物1及び刊行物2に記載された発明、並びに周知事項に基づいて、当業者が予測できる程度のものである。

なお、出願人は、「また、通常還流排ガス流量を一定として吸気量を絞ると煙濃度が悪化するが、請求項1の方法は、吸気量制御と還流排ガス流量制御を同時に行うことにより煙濃度の悪化を防ぐことができる。即ち、請求項1の方法は、吸気量制御と還流排ガス流量制御を同時に行っているため、例えば吸気量を絞りながらEGR量をコントロールする事により、排気温度を上げるため吸気量を絞っても煙濃度の悪化を防ぐことが可能である。EGR量を一定のまま(コントロールしないまま)吸気量を絞ると当然煙濃度は悪化するが、請求項1の方法はその問題を解決するものである。」(審判請求書5頁3〜10行)と主張しているが、「コントロールする事」とは、どのようにコントロールすることなのか不明であり、「例えば吸気量を絞りながらEGR量をコントロールする事」については、請求項1に記載はなく、発明の詳細な説明にも、具体的な記載はない。

(2)請求項2に係る発明について
請求項2に係る発明と刊行物1に記載された発明とを対比すると、刊行物1に記載された発明の「ディーゼルエンジン1」は、請求項2に係る発明の「ディーゼル機関」に相当し、以下同様に、「NOx浄化装置6」は「NOx還元触媒装置」に、「EGR制御弁11」は「EGRダンパー」に、「還元剤供給ノズル13」は「還元剤供給ノズル」に、「EGR制御弁11を制御する制御信号i1」は「還流排ガス流量制御信号」に、「還元剤供給量を調節する制御信号i2」は「還元剤供給量制御信号」に、「エンジン回転数検出器8」は「機関回転数センサー」に、「エンジン回転数信号」は「機関回転数信号」に、それぞれ、相当し、刊行物1に記載された発明の「制御装置10」と請求項2に係る発明の「コンピュータ」とは「制御する装置」の点で一致するので、両者は、
ディーゼル機関の排ガス中のNOxの浄化装置であって、排気通路に配置されるNOx還元触媒装置、吸気通路に配置される還流排ガス出口と排気通路に配置される還流排ガス入口と還流排ガス流量を制御するEGRダンパーとを備えるEGR装置、排気通路の還流排ガス入口とNOx還元触媒装置の間に配置される還元剤供給ノズル及び還元剤制御手段を備える還元剤供給装置、並びに還流排ガス流量制御信号及び還元剤供給量制御信号をそれぞれEGRダンパー及び還元剤制御手段へ供給可能な制御する装置、を含み、前記制御する装置は、機関回転数センサーから供給される機関回転数信号に基づいて、還流排ガス流量制御信号、及び還元剤供給量制御信号を計算し出力し、還元剤供給装置は、還元剤を還元剤供給ノズルから排ガス中へ供給し、前記還元剤は、軽油であるディーゼル機関の排ガス中のNOxの浄化装置。
の点で一致し、
(ロ)請求項2に係る発明では、吸気通路に配置される吸気ダンパー、並びに吸気量制御信号、還流排ガス流量制御信号及び還元剤供給量制御信号をそれぞれ吸気ダンパー、EGRダンパー及び還元剤制御手段へ供給可能なコンピュータ、を含み、前記コンピュータは、機関の負荷センサーから供給される機関負荷信号、NOx還元触媒装置入口付近に設けた温度センサーから供給される排ガス温度信号、及びNOx還元触媒装置入口付近に設けた酸素センサーから供給される排ガス酸素濃度信号に基づいて、吸気量制御信号を計算し出力し、還元剤供給装置は、還元剤加熱器を備えて還元剤を加熱蒸発させ、還元剤を蒸気として還元剤供給ノズルから排ガス中へ供給し、前記還元剤加熱器は、電気ヒータにより構成され、前記還元剤は、電気ヒータにより約200〜300℃に加熱されるのに対して、刊行物1に記載された発明では、還流排ガス流量制御信号及び還元剤供給量制御信号をそれぞれEGRダンパー及び還元剤制御手段へ供給可能な制御装置10、を含み、前記制御回路10は、エンジンのスロットル開度検出器9から供給されるスロットルの開度量信号に基づいて、計算し出力し、還元剤供給装置は、還元剤を還元剤供給ノズルから排ガス中へ供給する点
で相違する。
相違点(ロ)について検討する。
請求項2に係る発明と刊行物2に記載された発明とを対比すると、刊行物2に記載された発明の「ディーゼルエンジン1」、「吸気通路2」、「吸気絞弁3」、「排気通路5」、「温度センサ8」、「酸素濃度センサ9」は、請求項2に係る発明の「ディーゼル機関」、「吸気通路」、「吸気ダンパー」、「排気通路」、「温度センサー」、「酸素センサー」に相当するので、刊行物2には、ディーゼル機関の排ガス中のアルデヒドの浄化装置であって、吸気通路に配置される吸気ダンパー、排気通路に配置される触媒7、並びに吸気量制御信号を吸気ダンパーへ供給可能な制御回路10、を含み、前記制御回路10は、触媒7入口付近に設けた温度センサーから供給される排ガス温度信号、及び触媒7入口付近に設けた酸素センサーから供給される排ガス酸素濃度信号に基づいて、吸気量制御信号を計算し出力するディーゼル機関の排ガス中のアルデヒドの浄化装置、が記載されていると認められる。
そして、刊行物2には、触媒7の入口付近の排ガス温度及び排ガス酸素濃度を検出し、検出された値に基づき、排ガス温度が400℃以下と判定され、空気過剰率が1.4以上と判定されるときは、吸気ダンパーを作動させて吸気量を減少させ、触媒7を活性化させ、空気過剰率が1.4以上でないと判定されるときは、吸気ダンパーを作動させて吸気量を増加させることが記載されていると認められ、しかも、「以上要するにこの考案によれば、例えば低負荷運転時に吸気絞弁の絞り作動により吸入空気量を減少させ、排気温度を高めるようにしたので、触媒の活性化が促進され、臭いなどの発生量が低減する。 また、吸気絞弁の開度を排気中の酸素濃度から求めた空気過剰率に基づいて制御するようにしたので、吸気絞弁の絞り作動によって燃焼状態が悪化し、出力の低下及びスモークの増大を招くこともない。」(5頁2〜11行)と記載されており、排気温度を高めれば、活性化が促進される触媒について、記載されているので、NOx還元触媒装置に適用することは当業者が容易に想到し得たことである。
ディーゼル機関の排ガス中のNOxの浄化装置において、信号を供給可能なコンピュータを含み、前記コンピュータは信号に基づいて、信号を計算し出力することは、周知である(必要なら、特開平5-231142号公報参照。)。
刊行物1には、機関回転数センサーから供給される機関回転数信号に基づいて、計算し出力することが記載されていると認められることの外に、「エンジンの排気系統にNOx浄化触媒を備えたディーゼルエンジン排気ガス浄化方法において、エンジン回転数と燃料噴射量を検出し、この検出値を受けて現在の負荷状態を判別し」(2頁2欄16〜19行)及び「ディーゼルエンジン1への燃料の噴射量の検出するスロットル開度検出器等の燃料噴射量検出器9が配設されている。」(3頁3欄13〜16行)」と記載されており、機関の負荷センサーから供給される機関負荷信号に基づいて、計算し出力するのではないが、本願明細書には「負荷センサー12は、燃料噴射ポンプ13に取り付けられた燃料噴射量検出器により構成される。」(段落【0017】)と記載されており、機関の負荷センサーから供給される機関負荷信号に基づいて、計算し出力することとすることは当業者が容易に想到し得たことである。
そして、ディーゼル機関の排ガス中のNOxの浄化装置において、還元剤供給装置は、還元剤加熱器を備えて還元剤を加熱蒸発させ、還元剤を蒸気として還元剤供給ノズルから排ガス中へ供給し、前記還元剤加熱器は、電気ヒータにより構成され、前記還元剤は、電気ヒータにより加熱されることは、周知である(必要なら、「実願平5-2122号(実開平6-60725号)のCD-ROM」参照。)。そして、加熱する温度を何度にするかは設計事項であり、NOx還元触媒装置の温度特性等に基づいて当業者が適宜決定すべき事項である。
したがって、刊行物2に記載された発明及び刊行物1に記載された発明は、ディーゼル機関の排ガス中の有害物質の浄化装置という同一の技術分野、それも、機関負荷に応じて触媒と排気温度の関係等を考慮しつつ制御を行うもの、に属するものなので、刊行物2に記載された発明及びディーゼル機関の排ガス中のNOxの浄化装置に関する周知事項を刊行物1に記載された発明に適用し、もって、吸気通路に配置される吸気ダンパー、並びに吸気量制御信号、還流排ガス流量制御信号及び還元剤供給量制御信号をそれぞれ吸気ダンパー、EGRダンパー及び還元剤制御手段へ供給可能なコンピュータ、を含み、前記コンピュータは、機関の負荷センサーから供給される機関負荷信号、NOx還元触媒装置入口付近に設けた温度センサーから供給される排ガス温度信号、及びNOx還元触媒装置入口付近に設けた酸素センサーから供給される排ガス酸素濃度信号に基づいて、吸気量制御信号を計算し出力し、還元剤供給装置は、還元剤加熱器を備えて還元剤を加熱蒸発させ、還元剤を蒸気として還元剤供給ノズルから排ガス中へ供給し、前記還元剤加熱器は、電気ヒータにより構成され、前記還元剤は、電気ヒータにより約200〜300℃に加熱されることとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。
発明の効果の予測性については、「(1)請求項1に係る発明について」のところに記載したとおりである。

なお、出願人は、「また、吸気量制御と還流排ガス流量制御を同時に行うことにより煙濃度の悪化を防ぐことができる。請求項2の装置は、吸気量制御と還流排ガス流量制御を同時に行っているため、例えば吸気量を絞りながらEGR量をコントロールする事により、排気温度を上げるため吸気量を絞っても煙濃度の悪化を防ぐことが可能である。EGR量を一定のまま(コントロールしないまま)吸気量を絞ると当然煙濃度は悪化するが、請求項2の装置はその問題を解決するものである。」(審判請求書6頁3〜9行)と主張しているが、「EGR量をコントロールする事」とは、どのようにコントロールすることなのか不明であり、請求項2には、「例えば吸気量を絞りながらEGR量をコントロールする事」については、特定はなく、出願人の主張は、請求項2の記載に基づくものではない。

V.むすび
以上のとおり、請求項1及び請求項2に係る発明は、刊行物1及び刊行物2に記載された発明、並びに周知事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-11-11 
結審通知日 2004-11-12 
審決日 2004-11-24 
出願番号 特願平8-304340
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F01N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 亀田 貴志  
特許庁審判長 西野 健二
特許庁審判官 亀井 孝志
平城 俊雅
発明の名称 ディーゼル機関の排ガス中のNOxの浄化方法及び装置  
代理人 千葉 昭男  
代理人 小林 泰  
代理人 社本 一夫  
代理人 増井 忠弐  
代理人 富田 博行  
代理人 神田 藤博  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ