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審決分類 審判 全部申し立て 発明同一  F24C
審判 全部申し立て 特120条の4、2項訂正請求(平成8年1月1日以降)  F24C
管理番号 1109553
異議申立番号 異議2003-71202  
総通号数 62 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-09-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-05-09 
確定日 2004-10-16 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3362101号「電池式機器」の請求項1、2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3362101号の請求項1、2に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
特許第3362101号の請求項1、2に係る発明は、平成9年3月6日に特許出願され、平成14年10月18日にその特許権の設定登録がなされ、その後、田村義人より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成16年6月15日に訂正請求がなされたものである。

2.訂正の適否についての判断
(1)訂正の内容
ア.訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1の記載について、「電池を電源として動作する運転制御手段と、該運転制御手段の運転モードを、通常の運転を行う通常運転モードと、予め定められた特別な運転を行う特別運転モードとに切替える運転モード切替手段とを備えた電池式機器において、外部からの電源供給が可能な外部電極端子と、電源電圧を検出する電圧検出手段とを設け、前記運転モード切替手段は、該電圧検出手段による検出電圧が前記電池の定格電圧を超える所定電圧以上のときは前記特別運転モードに切替え、該検出電圧が該所定電圧未満のときには前記通常運転モードに切替えることを特徴とする電池式機器。」とあるのを、「電池を電源として動作し、運転制御手段と、該運転制御手段の運転モードを、通常の運転を行う通常運転モードと、予め定められた特別な運転を行う特別運転モードとに切替える運転モード切替手段と、バーナと、該バーナに燃料ガスを供給する燃料供給路に設けられた開閉電磁弁と、該バーナにより加熱される被加熱物の温度を検出するサーミス夕と、報知手段とを備えた電池式機器において、高温異常となったことを前記サーミスタの抵抗値から検出したときに、異常信号を出力する高温異常検出手段と、該高温異常検出手段から前記異常信号が出力されたときに、前記開閉電磁弁のソレノイドへの通電を遮断して前記開閉弁を閉弁する電磁弁駆動手段と、外部からの電源供給が可能な外部電源端子と、電源電圧を検出する電圧検出手段とを設け、前記運転モード切替手段は、該電圧検出手段による検出電圧が前記電池の定格電圧を超える所定電圧以上のときは前記特別運転モードに切替え、該検出電圧が該所定電圧未満のときには前記通常運転モードに切替えて、前記電圧検出手段の検出電圧と前記所定電圧とを比較して比較結果に応じた信号を出力する比較器と、該比較器の出力と前記高温異常検出手段の出力とを入力して、該比較器から前記検出電圧が前記所定電圧以上であることを示す信号が出力され、且つ、前記高温異常検出手段から前記異常信号が出力されたときに、前記報知手段に対して駆動信号を出力する論理回路とを有し、前記特別運転モードは、前記検出電圧が前記所定電圧以上であるときに、前記高温異常検出手段からの前記異常信号の出力の有無に応じて、前記論理回路から前記報知手段への駆動信号の出力/停止が切替る状態であり、前記通常運転モードは、前記検出電圧が前記所定電圧未満であるときに、前記論理回路から前記報知手段への駆動信号の出力が停止した状態であることを特徴とする電池式機器。」と訂正する。

イ.訂正事項b
明細書の第【0010】段落の記載について、「【0010】【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するため、電池を電源として動作する運転制御手段と、該運転制御手段の運転モードを、通常の運転を行う通常運転モードと、予め定められた特別な運転を行う特別運転モードとに切替える運転モード切替手段とを備えた電池式機器において、外部からの電源供給が可能な外部電極端子と、電源電圧を検出する電圧検出手段とを設け、前記運転モード切替手段は、該電圧検出手段による検出電圧が前記電池の定格電圧を超える所定電圧以上のときは前記特別運転モードに切替え、該検出電圧が該所定電圧未満のときには前記通常運転モードに切替えることを特徴とする。」とあるのを、「【0010】【課題を解決するための手段】本発明は、上記目的を達成するため、電池を電源として動作し、運転制御手段と、該運転制御手段の運転モードを、通常の運転を行う通常運転モードと、予め定められた特別な運転を行う特別運転モードとに切替える運転モード切替手段と、バーナと、該バーナに燃料ガスを供給する燃料供給路に設けられた開閉電磁弁と、該バーナにより加熱される被加熱物の温度を検出するサーミス夕と、報知手段とを備えた電池式機器において、高温異常となったことを前記サーミス夕の抵抗値から検出したときに、異常信号を出力する高温異常検出手段と、該高温異常検出手段から前記異常信号が出力されたときに、前記開閉電磁弁のソレノイドへの通電を遮断して前記開閉弁を閉弁する電磁弁駆動手段と、外部からの電源供給が可能な外部電源端子と、電源電圧を検出する電圧検出手段とを設け、前記運転モード切替手段は、該電圧検出手段による検出電圧が前記電池の定格電圧を超える所定電圧以上のときは前記特別運転モードに切替え、該検出電圧が該所定電圧未満のときには前記通常運転モードに切替えて、前記電圧検出手段の検出電圧と前記所定電圧とを比較して比較結果に応じた信号を出力する比較器と、該比較器の出力と前記高温異常検出手段の出力とを入力して、該比較器から前記検出電圧が前記所定電圧以上であることを示す信号が出力され、且つ、前記高温異常検出手段から前記異常信号が出力されたときに、前記報知手段に対して駆動信号を出力する論理回路とを有し、前記特別運転モードは、前記検出電圧が前記所定電圧以上であるときに、前記高温異常検出手段からの前記異常信号の出力の有無に応じて、前記論理回路から前記報知手段への駆動信号の出力/停止が切替る状態であり、前記通常運転モードは、前記検出電圧が前記所定電圧未満であるときに、前記論理回路から前記報知手段への駆動信号の出力が停止した状態であることを特徴とする。」と訂正する。

(2)訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
上記訂正事項aは、発明を特定する事項である「電池式機器の構成」、「異常検知手段とその動作」、および「運転モード」について、それぞれこれらに含まれる事項である「バーナと、該バーナに燃料ガスを供給する燃料供給路に設けられた開閉電磁弁と、該バーナにより加熱される被加熱物の温度を検出するサーミス夕と、報知手段とを備えた電池式機器」、「高温異常となったことを前記サーミスタの抵抗値から検出したときに、異常信号を出力する高温異常検出手段と、該高温異常検出手段から前記異常信号が出力されたときに、前記開閉電磁弁のソレノイドへの通電を遮断して前記開閉弁を閉弁する電磁弁駆動手段」および「前記電圧検出手段の検出電圧と前記所定電圧とを比較して比較結果に応じた信号を出力する比較器と、該比較器の出力と前記高温異常検出手段の出力とを入力して、該比較器から前記検出電圧が前記所定電圧以上であることを示す信号が出力され、且つ、前記高温異常検出手段から前記異常信号が出力されたときに、前記報知手段に対して駆動信号を出力する論理回路とを有し、前記特別運転モードは、前記検出電圧が前記所定電圧以上であるときに、前記高温異常検出手段からの前記異常信号の出力の有無に応じて、前記論理回路から前記報知手段への駆動信号の出力/停止が切替る状態であり、前記通常運転モードは、前記検出電圧が前記所定電圧未満であるときに、前記論理回路から前記報知手段への駆動信号の出力が停止した状態である」に限定し、しかも、限定された事項については、それぞれ願書に添付された明細書の第【0017】から【0021】段落、第【0023】段落および第【0024】から【0034】段落にそれぞれ記載されているから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、また、上記訂正事項bは、上記訂正事項aと整合を図るものであるから、明りようでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、いずれも、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

(3)むすび
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

3.特許異議の申立てについての判断
(1)申立ての理由の概要
甲立人田村義人は、請求項1、2に係る発明は、その出願の日前の他の出願であって、その出願後に出願公開された甲第1号証(特願平7-282754号(特開平9-126452号公報参照))の願書に最初に添付した明細書及び図面(以下、「先願明細書」という。)に記載された発明と同一発明であり、特許法第29条の2の規定に該当し、特許を受けることができないものであるから、同法第113条第1項第2号の規定により特許を取り消すべきと主張している。

(2)本件の請求項1、2に係る発明
上記2.で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1、2に係る発明は、上記訂正請求に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1、2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
【請求項1】
電池を電源として動作し、運転制御手段と、該運転制御手段の運転モードを、通常の運転を行う通常運転モードと、予め定められた特別な運転を行う特別運転モードとに切替える運転モード切替手段と、バーナと、該バーナに燃料ガスを供給する燃料供給路に設けられた開閉電磁弁と、該バーナにより加熱される被加熱物の温度を検出するサーミス夕と、報知手段とを備えた電池式機器において、高温異常となったことを前記サーミスタの抵抗値から検出したときに、異常信号を出力する高温異常検出手段と、該高温異常検出手段から前記異常信号が出力されたときに、前記開閉電磁弁のソレノイドへの通電を遮断して前記開閉弁を閉弁する電磁弁駆動手段と、外部からの電源供給が可能な外部電源端子と、電源電圧を検出する電圧検出手段とを設け、前記運転モード切替手段は、該電圧検出手段による検出電圧が前記電池の定格電圧を超える所定電圧以上のときは前記特別運転モードに切替え、該検出電圧が該所定電圧未満のときには前記通常運転モードに切替えて、前記電圧検出手段の検出電圧と前記所定電圧とを比較して比較結果に応じた信号を出力する比較器と、該比較器の出力と前記高温異常検出手段の出力とを入力して、該比較器から前記検出電圧が前記所定電圧以上であることを示す信号が出力され、且つ、前記高温異常検出手段から前記異常信号が出力されたときに、前記報知手段に対して駆動信号を出力する論理回路とを有し、前記特別運転モードは、前記検出電圧が前記所定電圧以上であるときに、前記高温異常検出手段からの前記異常信号の出力の有無に応じて、前記論理回路から前記報知手段への駆動信号の出力/停止が切替る状態であり、前記通常運転モードは、前記検出電圧が前記所定電圧未満であるときに、前記論理回路から前記報知手段への駆動信号の出力が停止した状態であることを特徴とする電池式機器。(以下、「本件発明1」という。)

【請求項2】
前記外部電極端子が電池収納部の電池用電極端子であることを特徴とする請求項1記載の電池式機器。(以下、「本件発明2」という。)

(3)先願明細書
特許異議申立人が証拠として提示した先願明細書には、燃焼機器の制御装置に関し、それぞれ、以下のような発明が記載されている。

イ.「・・・本発明は機器に専用のコネクタや表示器を設けることなく、制御データを外部に出力する手段を提供することを目的としている。」(第【0018】段落)、

ロ.「・・・電池を接続する電源端子と、その電源端子に印加される電圧を判定する電圧判定手段と、燃焼を制御する制御手段を備えて、電源端子に印加される電圧が電池の電圧より大きい所定の電圧の時に制御手段は検査用プログラム処理を行う構成とした。」(第【0023】段落)、

ハ.「・・・図1は本発明の燃焼機器の制御装置の1実施の形態で、電池1は電池収納ケース内の端子2を介して、制御手段として機器の制御をするマイコン8の電源端子8-aに電池1の使用開始の初期において3.3Vの電圧を印加するとともに、A/D入力端子8-cに電池1の電圧を印加する。」(第【0029】段落)、

ニ.「・・・動作を図2のフローチャートとともに説明する。スイッチ3がオンになるとマイコン8はA/D入力端子8-cの電圧を判定する。通常の使用状態においてこのA/D入力端子8-cに印加される電圧は乾電池2本の直列接続であるから3.5V以下であり、動作としては点火器11を作動させ、A/D入力端子8-eの電圧で着火の有無を判断し、着火していれば端子8-iをハイにして安全弁10を吸着保持する。
次にA/D入力端子8-dの電圧が所定電圧以上であるか、すなわち温度センサーが280℃以上か判断し、以上であれば安全弁10をオフして消火し、未満であれば電池1の電圧が印加されているA/D入力端子8-cの電圧を判定する。電圧が2.3V以上でスイッチ3がオンであれば着火の判断の間をループし、オフであれば調理終了として処理を終了する。電池1の電圧が2.3V未満であればLED9を一定間隔で点滅して使用者に新しい電池への交換を報知する。」(第【0032】、【0033】段落)、

ホ.「テストモードに設定する場合は図1の電池1の代わりに端子2にDC電源等で3.5V以上、且つマイコン8やその他の回路の動作電圧範囲内の電圧を印加し、スイッチ3をオンする。図2に示すように端子2に印加されている電圧が3.5V以上であれば機器が故障状態にあるかを判断する。故障の判断の詳細は図示しないが温度センサー4の温度範囲が所定値外、すなわちあり得ない温度の場合は温度センサー4の断線、短絡故障と判断する等の手段がある。」(第【0034】段落)

と、記載され、図1には、本発明の第1の実施の形態における燃焼機器の制御装置の回路図が、図2には、同燃焼機器の制御装置動作のフローチャートが記載されている。

先願明細書で「通常の使用状態に・・・・電池への交換を報知する。」(上記ニ.参照)と記載された制御手段は通常の燃焼制御手段と認められるので、図面を参照し、上記イ.からホ.の記載をまとめると、先願明細書には、以下の発明が記載されている。

電池1を電池収納ケース内の端子2を介して接続する電源端子を設け、燃焼の制御を行うマイコンを設けた燃焼機器において、電源端子に印加される電圧を判定する電圧判定手段を設け、電源電圧が3.5V以下であれば、通常の燃焼制御を行い、電源電圧が3.5V以上で回路の動作電圧範囲内の電圧を端子2に印加すると検査用プログラム処理を行う燃焼機器の制御装置。

(4)対比・判断
(4-1)本件発明1について
本件発明1と先願明細書に記載された発明を対比すると、先願明細書に記載された発明は、本件発明を特定する事項である、「電圧検出手段の検出電圧と前記所定電圧とを比較して比較結果に応じた信号を出力する比較器と、該比較器の出力と前記高温異常検出手段の出力とを入力して、該比較器から前記検出電圧が前記所定電圧以上であることを示す信号が出力され、且つ、前記高温異常検出手段から前記異常信号が出力されたときに、前記報知手段に対して駆動信号を出力する論理回路とを有し、前記特別運転モードは、前記検出電圧が前記所定電圧以上であるときに、前記高温異常検出手段からの前記異常信号の出力の有無に応じて、前記論理回路から前記報知手段への駆動信号の出力/停止が切替る状態であり、」する事項を備えているのに対し、先願明細書には「端子2に印加されている電圧が3.5V以上であれば機器が故障状態にあるかを判断する。故障の判断の詳細は図示しないが温度センサー4の温度範囲が所定値外、すなわちあり得ない温度の場合は温度センサー4の断線、短絡故障と判断する等の手段がある。」(第【0034】段落)と記載されているにすぎず、当該事項により本件請求項1に係る発明は、「・・・検査モードに切替えられたときに、例えば高温に熱せられた鉄板をサーミスタ5に接触させて強制的に高温異常状態にすると、高温異常検出手段15の出力が高レベルとなり、AND素子32の出力が高レベルとなる。そのためトランジスタ33がオンし、電流制限抵抗34を介して報知手段であるLED14に電流が流れてLED14が点灯する。そして、このLED14の点灯により、検査作業者は高温異常検出回路15が正常に動作することを確認することができる。」(第【0033】段落)という顕著な効果を奏するものであり、本件発明1が上記先願明細書に記載された発明と同一であるとはいえない。

(4-2)本件発明2について
本件発明2は請求項1を引用し、更に「外部電極端子が電池収納部の電池用電極端子であること」なる構成を付加限定したものであるので、本件発明1と同様の理由で本件発明2が上記先願明細書に記載された発明と同一であるとはいえない。

(5)むすび
以上のとおりであるから、特許異議申立ての理由及び証拠によっては、本件請求項1、2に係る特許を取り消すことができない。
また、他に本件請求項1、2に係る特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
電池式機器
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池を電源として動作し、運転制御手段と、該運転制御手段の運転モードを、通常の運転を行う通常運転モードと、予め定められた特別な運転を行う特別運転モードとに切替える運転モード切替手段と、バーナと、該バーナに燃料ガスを供給する燃料供給路に設けられた開閉電磁弁と、該バーナにより加熱される被加熱物の温度を検出するサーミスタと、報知手段とを備えた電池式機器において、
高温異常となったことを前記サーミスタの抵抗値から検出したときに、異常信号を出力する高温異常検出手段と、
該高温異常検出手段から前記異常信号が出力されたときに、前記開閉電磁弁のソレノイドへの通電を遮断して前記開閉弁を閉弁する電磁弁駆動手段と、
外部からの電源供給が可能な外部電源端子と、電源電圧を検出する電圧検出手段とを設け、
前記運転モード切替手段は、該電圧検出手段による検出電圧が前記電池の定格電圧を超える所定電圧以上のときは前記特別運転モードに切替え、該検出電圧が該所定電圧未満のときには前記通常運転モードに切替えて、前記電圧検出手段の検出電圧と前記所定電圧とを比較して比較結果に応じた信号を出力する比較器と、該比較器の出力と前記高温異常検出手段の出力とを入力して、該比較器から前記検出電圧が前記所定電圧以上であることを示す信号が出力され、且つ、前記高温異常検出手段から前記異常信号が出力されたときに、前記報知手段に対して駆動信号を出力する論理回路とを有し、
前記特別運転モードは、前記検出電圧が前記所定電圧以上であるときに、前記高温異常検出手段からの前記異常信号の出力の有無に応じて、前記論理回路から前記報知手段への駆動信号の出力/停止が切替る状態であり、
前記通常運転モードは、前記検出電圧が前記所定電圧未満であるときに、前記論理回路から前記報知手段への駆動信号の出力が停止した状態であることを特徴とする電池式機器。
【請求項2】
前記外部電極端子が電池収納部の電池用電極端子であることを特徴とする請求項1記載の電池式機器。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術の分野】
本発明は、電池を電源として動作する電池式機器の運転モードの切替制御に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電池式機器において、運転モード切替手段を有し、該運転モード切替手段により、通常運転モードと特別運転モードとを切替えるようにしたものが知られている。
【0003】
例えば、電池を駆動源とする運転制御手段を備えたガスコンロにおいて、通常運転モードと特別運転モードである検査モードとを切替えられるようにし、検査モードに切替えた状態で、被加熱物の高温異常や燃焼時の失火に対する安全回路の正常動作検査や、温度センサの出力検査等を行うものがある。
【0004】
具体的には、被加熱物の高温異常や燃焼時の失火を検出する安全回路に、燃焼炎の揺れや電気ノイズによる誤動作を防止するための遅延タイマを設けたガスコンロにおいては、該遅延タイマの設定時間を経過するまでは安全回路が作動しないため、検査時間が長くなってしまう。そこで、この検査時間を削減するため、検査モードに切替えたときに該遅延タイマの設定時間を短縮して検査を行なうようにしている。
【0005】
また、検査時に温度センサの出力を表示させることで、該温度センサの作動状態を確認するものにおいては、検査専用に表示手段を設けるとコストが上昇し好ましくない為、通常運転モードでは他の目的に使用される表示手段を、検査モードに切替えたときにはセンサの動作状態を確認する表示手段として兼用させている。
【0006】
そして、このような通常運転モードと検査モードとの切替は、通常、運転制御手段上に設けられたモード切替スイッチの操作や、機器の操作部に設けられた通常運転用のスイッチの特殊操作、例えば複数スイッチの同時操作によって行われる。
【0007】
しかし、運転制御手段上に設けられた切替スイッチにより、検査モードへの切替えを行なうものでは、該切替スイッチを操作するために完成された機器のケースや蓋を外さなければならないため、切替え作業に手間がかかるという不都合があった。
【0008】
また、機器の操作部に設けられた通常運転用のスイッチの特殊操作により、検査モードへの切替を行なうものでは、一般使用者が機器の操作中に誤って該特殊操作をしたときに、検査モードに切り替わってしまうおそれがあり、このときには、通常の運転ができなくなってしまうという不都合があった。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記不都合を解消し、通常運転モードと特別運転モードとの切替が容易に行なえ、且つ、一般使用者の操作では特別運転モードに切り替わることのない電池式機器を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するため、電池を電源として動作し、運転制御手段と、該運転制御手段の運転モードを、通常の運転を行う通常運転モードと、予め定められた特別な運転を行う特別運転モードとに切替える運転モード切替手段と、バーナと、該バーナに燃料ガスを供給する燃料供給路に設けられた開閉電磁弁と、該バーナにより加熱される被加熱物の温度を検出するサーミスタと、報知手段とを備えた電池式機器において、高温異常となったことを前記サーミスタの抵抗値から検出したときに、異常信号を出力する高温異常検出手段と、該高温異常検出手段から前記異常信号が出力されたときに、前記開閉電磁弁のソレノイドへの通電を遮断して前記開閉弁を閉弁する電磁弁駆動手段と、外部からの電源供給が可能な外部電源端子と、電源電圧を検出する電圧検出手段とを設け、前記運転モード切替手段は、該電圧検出手段による検出電圧が前記電池の定格電圧を超える所定電圧以上のときは前記特別運転モードに切替え、該検出電圧が該所定電圧未満のときには前記通常運転モードに切替えて、前記電圧検出手段の検出電圧と前記所定電圧とを比較して比較結果に応じた信号を出力する比較器と、該比較器の出力と前記高温異常検出手段の出力とを入力して、該比較器から前記検出電圧が前記所定電圧以上であることを示す信号が出力され、且つ、前記高温異常検出手段から前記異常信号が出力されたときに、前記報知手段に対して駆動信号を出力する論理回路とを有し、前記特別運転モードは、前記検出電圧が前記所定電圧以上であるときに、前記高温異常検出手段からの前記異常信号の出力の有無に応じて、前記論理回路から前記報知手段への駆動信号の出力/停止が切替る状態であり、前記通常運転モードは、前記検出電圧が前記所定電圧未満であるときに、前記論理回路から前記報知手段への駆動信号の出力が停止した状態であることを特徴とする。
【0011】
かかる本発明によれば、検査作業者等が、電池の代わりに前記所定電圧以上の電源を前記外部電極端子に接続することで、前記運転モード切替手段により、前記運転制御手段の運転モードが、前記特別運転モードに切り替わる。そのため、運転モード切替のための切替スイッチが不要となり、部品コストを削減することができる。また、運転モード切替のための既存スイッチの特殊操作も不要となるので、操作性を向上させることができる。
【0012】
そして、一般使用者が電池をセットしたときには、前記電圧検出手段による検出電圧が該電池の定格電圧を超える前記所定電圧以上となることはないので、前記運転制御手段の運転モードは必ず前記通常運転モードとなり、前記特別運転モードとなることはない。
【0013】
さらに、前記外部電極端子への電源の接続は、電池式機器の外部から行なえるため、運転モードを切替える切替スイッチを前記運転制御手段に設けたときに必要であった、電池式機器のケースや蓋を外す作業が不要となる。そのため、運転モードの切替に要する時間を短縮することができる。
【0014】
また、前記外部電極端子が電池収納部の電池用電極端子であることを特徴とする。
【0015】
かかる本発明によれば、外部からの電源供給が可能な前記外部電極端子を別個に設ける必要がない。また、一般使用者が誤って前記外部電極端子を使用するのを防止することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態の一例を図1,図2を参照して説明する。図1は本実施形態の電池式機器であるガスコンロの構成図、図2は図1に示したガスコンロに備えた電子ユニット6の回路構成図である。
【0017】
図1を参照して、本実施形態のガスコンロは、加熱源であるバーナ1に燃料ガスを供給する燃料供給路であるガス供給路2に設けられた開閉電磁弁3及びガス量調整弁4と、被加熱物である調理物Aの温度を検出するサーミスタ5と、開閉電磁弁3の通電制御等を行う運転制御手段である電子ユニット6とを備えている。
【0018】
開閉電磁弁3は、点火・消火ボタン7による点火操作(押操作)で、バネ8に抗して機械的に開弁されると共に、ソレノイド9への通電により開弁状態が保持され、また、ソレノイド9への通電の遮断によりバネ8の付勢力で閉弁されるようになっている。また、ガス量調整弁4は、使用者がこれに連結された操作子10を操作することでその開度が調整され、バーナ1への燃料ガスの供給量が可変される。
【0019】
サーミスタ5は、電子ユニット6と接続され、バーナ1上に調理物Aが入れられた調理容器Bを載せたときに、調理容器Bの底部に接触するようにバーナ1の中心部に設けられた支持体11の上端部に挿着される。これにより、調理物Aの温度に応じたサーミスタ5の抵抗値が電子ユニット6で検出される。また、バーナ1の近傍に設けられ、電子ユニット6と接続された熱電対12は、バーナ1の燃焼状態を検出するものであり、バーナ1の燃焼炎の温度に応じた起電力を発生し、該起電力が電子ユニット6で検出される。
【0020】
電子ユニット6は、電池50が収納される電池収納部13の電池用電極端子51,52から供給される電源により動作し、該電源の電圧が所定の監視電圧以下となったときに報知手段14により電池50が交換時期にあることを使用者に報知する。また、電子ユニット6は、調理物Aの温度が所定値を越える高温異常状態となったことをサーミスタ5の抵抗値から検出したときに異常信号を出力する高温異常検出手段15と、該異常信号が出力されたときにソレノイド9への通電を遮断する電磁弁駆動手段16と、電池収納部13の電池用電極端子51,52から供給される電源電圧を検出する電圧検出手段17と、電圧検出手段17による検出値に応じて通常運転モードと、特別運転モードである検査モードとを切替える運転モード切替手段18とを備える。
【0021】
尚、19はバーナ1の点火を行うための放電用電極、20は放電用電極19に火花放電を生じさせるスパーカである。
【0022】
以下、図2を参照して、電子ユニット6の構成と動作を説明する。
【0023】
高温異常検出手段15は、比較器23と、分圧抵抗24,25,26とからなり、サーミスタ5と分圧抵抗24の接続点aの電圧Vd1が比較器23の負入力端子に入力され、分圧抵抗25と26の接続点bの電圧Vb1が比較基準電圧(サーミスタ5の検出温度が高温異常判定値である、例えば260℃となったときの電圧)として比較器23の正入力端子に入力される。そして、Vd1がVb1以下となる高温異常時には、比較器23から電磁弁駆動回路16に高レベル信号が出力され、電磁弁駆動回路16によりソレノイド9への通電が遮断されて、開閉電磁弁3が閉弁される。
【0024】
電圧検出手段17は、分圧抵抗27,28からなり、分圧抵抗27が電池収納部13の電池用電極端子51,52から供給される電源電圧VCCに接続される。これにより、VCCの電圧変動に応じて分圧抵抗27、28の接続点cの電圧Vd2が変化する。
【0025】
運転モード切替手段18は、比較器29と、分圧抵抗30,31と、AND素子32とからなり、電圧検出手段17の出力電圧Vd2が比較器29の正入力端子に入力され、分圧抵抗30と31の接続点dの電圧Vb2が比較基準電圧として比較器29の負入力端子に入力される。
【0026】
そして、Vb2は電池収納部13に電池50がセットされたときの電源電圧VCCの定格電圧(例えば3V)を超える所定電圧(例えば5V)に対応した値に設定される。そのため、電池収納部13に電池50がセットされたときは、Vd2がVb2未満となり、比較器29の出力が低レベルとなる。そしてこの場合、AND素子32の出力は高温異常検出手段15の出力が高レベルであるか低レベルであるかに関わらず低レベルとなり、高温異常状態となっても報知手段であるLED14が点灯しない通常運転モードとなる。
【0027】
また、電池収納部13に電池50がセットされず、その電池用電極端子51,52が外部電極端子として使用され、該電池用電極端子51,52から電池50の定格電圧を超える電源(例えば6V)が供給されたときには、Vd2がVb2以上となり、比較器29の出力が高レベルとなる。そしてこの場合、高温異常検出手段15の出力が高レベル(高温異常状態)であればAND素子32の出力が高レベルとなり、高温異常検出手段15の出力が低レベル(高温異常状態でない正常状態)であればAND素子32の出力が低レベルとなる検査モードとなる。
【0028】
電池電圧監視手段21は、比較器35と、分圧抵抗36、37と、分圧抵抗38,39とからなり、電池収納部13の電池用電極端子51,52から供給される電源電圧VCCを分圧抵抗38,39により分圧したe点の電圧Vd3が、比較器35の負入力端子に入力され、安定電圧VREFを分圧抵抗36,37で分圧したf点の電圧Vb3が比較基準電圧(回路を正常動作させるのに必要となる最低電圧に対応した電圧)として比較器35の正入力端子に入力される。
【0029】
そして、電池収納部13に電池50をセットして使用する通常運転モードで、電池50の放電が進み、電池50の電圧が低下してe点の電圧Vd3がf点の電圧Vb3以下となると、比較器35の出力が高レベルとなる。これにより、トランジスタ33がオンし、LED14に電流が流れてLED14が点灯して、使用者に電池50が交換時期にあることを認識させることができる。
【0030】
尚、ダイオード40は比較器35の出力が高レベルであり、AND素子32の出力が低レベルであるときに、比較器35からAND素子32に過電流が流れるのを防止するためのものである。また、比較器23,29,35の出力端子に接続されたプルアップ抵抗53,54,55は、オープンコレクタタイプの各比較器の出力電圧がVREFと0Vに切り替わるようにするためのものであり、トランジスタ33のベース端子に接続された抵抗56は、該ベース端子への入力電流を制限するためのものである。
【0031】
レギュレータ22は、電池収納部13の電池用電極端子51,52から供給される電源電圧VCCから安定電圧VREF(例えば1.5V)を生成するものであり、このレギュレータ22により、VCCの電圧が変動してもVREFの電圧が一定に保たれる。
【0032】
このように構成したガスコンロの検査工程において、検査作業者は、電池収納部13に電池50をセットする代わりに、電池収納部13の電池用電極端子51,52から電池の定格電圧を超える電源を供給することで、容易に通常運転モードから検査モードに切替えることができる。そのため、検査作業者は、従来、電子ユニット6に運転モードと検査モードとの切替スイッチを設けた場合のように、ガスコンロのケースや蓋を外して該切替スイッチを操作する必要がなく、検査にかかる時間を短縮することができる。
【0033】
そして、検査モードに切替えられたときに、例えば高温に熱せられた鉄板をサーミスタ5に接触させて強制的に高温異常状態にすると、高温異常検出手段15の出力が高レベルとなり、AND素子32の出力が高レベルとなる。そのためトランジスタ33がオンし、電流制限抵抗34を介して報知手段であるLED14に電流が流れてLED14が点灯する。そして、このLED14の点灯により、検査作業者は高温異常検出回路15が正常に動作することを確認することができる。
【0034】
また、電池50により動作する通常運転モードでは、運転モード切替手段18の出力が常時低レベルとなるので、電池50の出力電圧が低下し、電池電圧検出手段21の出力が高レベルとなったとき以外にLED14が点灯することがない。そのため、通常の使用時に意味不明のLED14の点灯により、使用者を混乱させることがない。
【0035】
また、本実施形態では、電池収納部13の電池用電極端子51,52を外部電極端子として使用し、電池用電極端子51,52から外部電源を供給したが、電池用電極端子51,52とは別個に外部電極端子を設けてもよい。
【0036】
また、本実施形態では電池式機器としてガスコンロを示したが、小型湯沸器に本願発明を適用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電池式機器であるガスコンロの構成図。
【図2】図1のガスコンロに備えた電子ユニットの回路構成図。
【符号の説明】
1…バーナ、2…ガス供給路、3…開閉電磁弁、4…ガス量調整弁、5…サーミスタ、6…電子ユニット、7…点火・消化ボタン、8…バネ、9…ソレノイド、10…操作子、11…支持体、12…熱電対、13…電池収納部、14…報知手段、15…高温異常検出手段、16…電磁弁駆動回路、17…電圧検出手段、18…運転モード切替手段、19…放電電極、20…スパーカ、21…電池電圧監視手段、22…レギュレータ、50…電池、51,52…電池用電極端子
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-09-21 
出願番号 特願平9-51352
審決分類 P 1 651・ 832- YA (F24C)
P 1 651・ 161- YA (F24C)
最終処分 維持  
前審関与審査官 豊島 唯  
特許庁審判長 橋本 康重
特許庁審判官 長浜 義憲
佐野 遵
登録日 2002-10-18 
登録番号 特許第3362101号(P3362101)
権利者 リンナイ株式会社 アール・ビー・コントロールズ株式会社
発明の名称 電池式機器  
代理人 佐藤 辰彦  
代理人 千葉 剛宏  
代理人 佐藤 辰彦  
代理人 千葉 剛宏  
代理人 千葉 剛宏  
代理人 佐藤 辰彦  

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