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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 G06F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1110501
審判番号 不服2002-4030  
総通号数 63 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-05-17 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-03-07 
確定日 2005-01-14 
事件の表示 平成 6年特許願第255332号「写真フイルム製造情報検索システム」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 5月17日出願公開、特開平 8-123855〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成6年10月20日の出願であって、平成14年1月28日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月7日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年3月29日付で手続補正がなされたものである。

2.平成14年3月29日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成14年3月29日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、「外表面に個々に異なった識別標識を有するパトローネに収納される写真フイルムの製造情報検索システムであって、前記パトローネを保持した状態で前記識別標識を読み取り、該識別標識と同じ識別標識を潜像焼き込みした写真フイルムを前記パトローネに巻き込む作業を行う複数のフイルム巻込み装置と、各フイルム巻込み装置による識別標識の読み取りを監視しており、識別標識を読み取る毎にそのフイルム巻込み装置を特定するコードを識別標識毎に対応付けして製造データを作成し、この製造データを送る製造データ作成伝送手段と、この製造データ作成伝送手段に通信線を介して接続され、製造データ作成伝送手段から送られた製造データを蓄積するホストコンピュータと、前記ホストコンピュータに通信線を介して接続されており、識別標識の検索入力を行うことにより、ホストコンピュータから該当する製造データを読み出すとともに、製造データの検索入力を行うことにより、ホストコンピュータから該当する識別標識を読み出す端末機とを備えたことを特徴とする写真フイルム製造情報検索システム。」と補正された。
そこで、本件補正が、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものか(特許法第17条の2第2項で準用する特許法第17条第2項の規定に適合するか)を検討する。

(2)補正の適否について
本件補正は、請求項1について、「識別標識の検索入力を行うことにより、ホストコンピュータから該当する製造データを読み出すとともに、製造データの検索入力を行うことにより、ホストコンピュータから該当する識別標識を読み出す端末機」とする補正を含むものであるが、願書に最初に添付した明細書及び図面には、識別標識の入力により製造データを検索出力することは記載されているが、製造データから識別標識を検索することは記載されていないので、本件補正により願書に最初に添付した明細書及び図面には記載されていない新規事項が追加されていると認める。
なお、審判請求人は、審判請求書において、手続補正書で補正した請求項1に記載の「ホストコンピュータに通信線を介して接続されており、識別標識の検索入力を行うことにより、ホストコンピュータから該当する製造データを読み出すとともに、製造データの検索入力を行うことにより、ホストコンピュータから該当する識別標識を読み出す端末機と・・・」との事項は、願書に最初に添付した明細書の請求項2に記載の内容を盛り込んだものである旨の主張をしているので、この主張内容について検討する。
願書に最初に添付した明細書の請求項2には、「前記ホストコンピュータに通信線を介して接続されており、識別標識の検索入力を行うことにより、ホストコンピュータから該当する製造データを読み出す端末機を備えたことを特徴とする請求項1記載の写真フイルム製造情報検索システム。」と記載されており、製造データの検索入力を行うことにより、ホストコンピュータから該当する識別標識を読み出すことについては記載されていないので、この主張は願書に最初に添付した明細書の請求項2の記載に基づく主張とは認められないので、この主張を採用しない。
したがって、本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものとは認められない。

(3)むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第2項で準用する特許法第17条第2項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
なお、審判請求人は審判請求書の上申内容の項において補正案を提示して補正の機会を設けるよう申し出ているが、この補正案も上記の「識別標識の検索入力を行うことにより、ホストコンピュータから該当する製造データを読み出すとともに、製造データの検索入力を行うことにより、ホストコンピュータから該当する識別標識を読み出す端末機」という補正内容を含んでおり、この補正も願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内においてしたものとは認められないので、補正の機会を設ける格別の理由はなく、上記補正案による補正の機会を設けない。

3.本願発明について
(1)本願発明
平成14年3月29日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、願書に最初に添付した明細書の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「外表面に個々に異なった識別標識を有するパトローネに収納される写真フイルムの製造情報検索システムであって、前記パトローネを保持した状態で前記識別標識を読み取り、該識別標識と同じ識別標識を潜像焼き込みした写真フイルムを前記パトローネに巻き込む作業を行う複数のフイルム巻込み装置と、各フイルム巻込み装置の識別標識の読み取りを監視しており、識別標識を読み取る毎に少なくとも読み取ったフイルム巻込み装置を特定するコードからなる補助データを識別標識毎に付与して製造データを作成し、この製造データを送る製造データ作成伝送手段と、この製造データ作成伝送手段に通信線を介して接続され、製造データ作成伝送手段から送られた製造データを蓄積するホストコンピュータとを備えたことを特徴とする写真フイルム製造情報検索システム。」

(2)引用例
(2-1)引用例1
原査定の拒絶の理由に引用された特開昭63-56648号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに、
a)「第1図にはロールフイルム製造装置の概略図が示されており、製造ロール4から引き出されたフイルム1は、そのサイドにマークをプリントするプリント装置5に供給される。このプリント装置5にはデータ設定器6が接続され、このデータ設定装置6により設定されたメーカー名、製造番号、コマ番号等の情報がフイルム1にプリントされる。」(第2頁右下欄第11行-17行)、
b)「実施例は、分岐するフィルム搬送機8及び2個の巻取り機11を備え、さらに製造原判ロールを所定フィルム幅で裁断するときの裁断位置番号、いわゆるスリットナンバーと、製造番号の一つであるシリアルナンバーとを各巻取り機11に振り分けて伝送する伝送系を備えている。」(第3頁左下欄第3行-第3頁左下欄第8行)、
c)「従って、2台の巻取り機11を用いた場合でも、スリットナンバー、シリアルナンバーは重複して存在することなくフイルム自体にプリントされている情報と同一のものが伝送されることになる。次に、包材マーキング機15について説明する。実施例では、包材マーキング機15はテープシーラ14と同じ場所に配設されており、テープシーラ14にて裏紙2の端部を止めるようにテープが貼られた後にマーキングを行なう。」(第3頁右下欄第14行-第4頁右上欄第3行)、
d)「従って、スリットナンバー、シリアルナンバーがテープ上あるいは裏紙サイドに印字されることになり、フイルム自体にプリントされたものと同一の情報を一巻きロールフイルム12の製品上で確認できることになる。なお、実施例ではテープをシールした包装段階でマーキングを行っているが、シールしたロールフイルム12をさらに収納した後にその包装袋にマーキングしたり、パトローネ付きの135フイルムの場合には、パトローネの外表面自体、あるいはこれに貼付されるシール等にマーキングするようにしても良い。」(第4頁左上欄第18行-第4頁右上欄第9行)
と記載されている。
してみると、引用例1には、「パトローネに収納される写真フイルムの巻込包装装置であって、データ設定器から送られたスリットナンバー、シリアルナンバーの情報がプリントされた写真フイルムを前記パトローネに巻き取る作業を行う複数のフイルム巻取り機と、前記パトローネの外表面にデータ設定器から送られたスリットナンバー、シリアルナンバーをマーキングする包材マーキング機とを備えたことを特徴とする写真フイルムの巻込包装装置」との発明(以下「引用例1発明」という。)が記載されている。

(2-2)引用例2
同じく引用された特開平4-7269号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに、
a)「要するに、全ての工程、機台、錘には、それらの1つを特定可能にするための識別符号、この例では背番号が付けられる。この背番号によって、コンピュータ処理が容易になり、オペレータも容易にその場所が判別できるようになる。」(第3頁右下欄第20行-第4頁左上欄第4行)、
b)「そこで、このような関係を明確に把握するため、第5図に示すように、必要ある各工程毎もしくは幾つかの工程グループ毎にサブプロセサ16を所属させ、「当該工程中の1機台又は錘からの何番目のドッフィングが、次の工程の何番目の機台又は錘に供給されて、それが何番目のドッフィングに使用されるか」を把握し、その把握内容をメインプロセサ15のメモリに記憶させる。」(第4頁右上欄第2行-第4頁右上欄第9行)、
c)「各「搬送単位」であるケンス、ボビン、パッケージ等に、磁気的或いは光学的に読み書き可能な記憶媒体、例えば磁気フィルムやIDカードを付設し、サブプロセサ16の制御の下に、読み書き装置18(第5図参照)により、当該工程の各機台毎に、該当する機台における「ドッフィング番号又はロット番号」と、該当する「機台番号又は錘番号」とを書き込み、次工程の該当する機台における読み書き装置18により読み取られるように構成しても良い。この場合には、自動搬送であるか手動搬送であるかに拘わらず、場所的及び時間的情報を管理することができる。いずれにせよ、サブプロセサ16で把握された場所的及び時間的情報は、一般的な各種の品質情報及び生産情報と共に伝送路17に送出され、メインプロセサ15に収集される。」(第4頁右上欄第14行-第4頁左下欄第9行)
と記載されている。
そして、情報が記録されたものを保持した状態で情報を読み取ることは一般的に行われていることであるので、ケンス、ボビン、パッケージ等を保持した状態で情報を読み取っていることは自明である。
また、ケンス、ボビン、パッケージ等に前の工程で付与されたドッフィング番号またはロット番号と、機台番号または錘番号と、を組み合わせた情報は、当該工程に搬送されたケンス、ボビン、パッケージ等毎に個々に異なっており、部材を識別するための情報であることは自明である。
さらに、プロセサがその制御下にある機器の動作を監視することは一般的に行っていることであるので、サブプロセサが各機台に設けられた読み書き装置が行う情報の読み取りを監視することは自明である。
してみると、引用例2には、「各工程の機台に設けられた読み書き装置により、個々に異なる情報を有するケンス、ボビン、パッケージ等を保持した状態で前記の個々に異なる情報を読み取ること」、及び、「読み書き装置によるケンス、ボビン、パッケージ等毎に個々に異なる情報の読み取りを監視し、前記の個々に異なる情報を読み取る毎に、当該工程の各機台を特定する機台番号を前記の個々に異なる情報毎に付与して場所的及び時間的情報を作成し、メインプロセサに送るサブプロセサと、このサブプロセサ伝送路を介して接続され、このサブプロセサから送られた場所的及び時間的情報を蓄積するメインプロセサとを備えること」とが記載されている。

(3)対比
本願発明と引用例1発明を比較すると、引用例1発明の「各々異なったスリットナンバー、シリアルナンバー」、「プリント」、「巻取り機」は、本願発明の、「個々に異なった識別標識」、「潜像焼き込み」、「巻込み装置」に相当するので、両者は、
「パトローネに収納される写真フイルムのためのシステムであって、識別標識を潜像焼き込みした写真フイルムを前記パトローネに巻き込む作業を行う複数のフイルム巻込み装置を備えた写真フイルムのためのシステム。」
である点で一致し、以下の点で相違すると認められる。
(a)本願発明では、フイルム巻込み装置が、外表面に個々に異なった識別標識を有するパトローネを保持した状態で識別標識を読み取り、該識別標識と同じ識別標識を潜像焼き込みした写真フィルムを前記パトローネに巻き込むのに対し、引用例1発明では、個々に異なった識別標識を潜像焼き込みした写真フイルムをパトローネに巻き込み、前記フイルムに潜像焼き込みされた識別標識と同一の識別標識を前記パトローネにマーキングする点。
(b)本願発明は、フイルム巻込み装置の識別標識の読み取りを監視しており、識別標識を読み取る毎に読み取ったフイルム巻込み装置を特定するコードからなる補助データを識別標識毎に付与して製造データを作成し、この製造データを送る製造データ作成伝送手段と、製造データ作成伝送手段に通信線を介して接続され、製造データ作成伝送手段から送られてきた製造データを蓄積するホストコンピュータと、を備えた写真フイルムの製造情報検索システムであるのに対し、引用例1発明は、そのような製造データ作成伝送手段及びホストコンピュータを備えた写真フイルムの製造情報検索システムでない点。

(4)当審の判断
上記相違点(a)について検討する。
フィルムを容器に収納する工程において、その容器の外表面上の固有番号を読み取り、その固有番号と同じ固有番号をフイルムに焼き込みし、読み取った固有番号に基づいて、特定された容器に、その容器が有する固有番号と同一の番号が焼き込まれたフィルムを収納することは周知の技術であり(例えば、特開昭59-26728号公報参照。)、また、引用例1発明の「パトローネ」と引用例2に記載された発明の「ケンス、ボビン、パッケージ等」は、製品を収容する容器という点で共通していることを鑑みれば、引用例1発明に上記周知事項及び引用例2に記載された「各工程の機台に設けられた読み書き装置が容器を保持した状態で個々に異なる情報を読み取る」という発明を適用して、引用例1発明において、写真フイルムを巻き込んだ後にパトローネに識別標識をマーキングする代わりに、外表面に個々に異なった識別標識を有するパトローネを用い、そのパトローネを保持した状態で前記識別標識を読み取り、そのパトローネが有する前記識別標識と同じ識別標識を潜像焼き込みした写真フイルムを前記パトローネに巻き込むことは当業者が容易に考えられる事項である。
上記相違点(b)について検討する。
引用例1発明の「フィルム巻込み装置」、「パトローネ」と引用例2に記載された発明の「機台」、「ケンス、ボビン、パッケージ等」は製造装置、製品を収納する容器であるという点でそれぞれ共通していることを鑑みれば、引用例2に記載された「読み書き装置によるケンス、ボビン、パッケージ等が有する前記の個々に異なる情報の読み取りを監視し、前記の個々に異なる情報を読み取る毎に、製造装置を特定する機台番号を前記の個々に異なる情報毎に付与して場所的及び時間的情報を作成し、メインプロセサに送るサブプロセサと、このサブプロセサ伝送路を介して接続され、このサブプロセサから送られた場所的及び時間的情報を蓄積するメインプロセサとを備えること」という発明を引用例1発明に適用して、引用例1発明の写真フイルムのためのシステムを、各フイルム巻込み装置の識別情報の読み取りを監視し、識別標識を読み取る毎に読み取ったフイルム巻込み装置を特定するコードからなる補助データを識別標識毎に付与して製造データを作成し、この製造データを送る製造データ作成伝送手段と、この製造データ作成伝送手段に通信線を介して接続され、製造データ作成伝送手段から送られた製造データを蓄積するホストコンピュータと、を備えた写真フィルムのためのシステムとすることは当業者が容易に考えられる事項である。
その際に、コンピュータ等に情報を蓄積してその情報を検索できる情報検索システムは、周知であり(例えば、原査定の拒絶の理由で引用された特開平6-53104号公報参照。)、引用例2に記載された発明のメインプロセサは情報を蓄積しているので、引用例1発明の写真フイルムのためのシステムを写真フイルムの製造データ情報検索システムとすることは、単なる設計的事項にすぎない。

そして、本願発明の作用効果は、引用例1及び2に記載された発明及び上記周知事項の作用効果に基づいて当業者が容易に推考し得る程度のものであり、格別のものとはいえない。

(5)結び
以上のとおり、本願発明は引用例1及び2に記載された発明及び上記周知事項に基づいて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-11-10 
結審通知日 2004-11-17 
審決日 2004-11-30 
出願番号 特願平6-255332
審決分類 P 1 8・ 561- Z (G06F)
P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 金子 幸一  
特許庁審判長 赤穂 隆雄
特許庁審判官 篠原 功一
山本 穂積
発明の名称 写真フイルム製造情報検索システム  
代理人 小林 和憲  

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