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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A63F
審判 全部申し立て 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備  A63F
審判 全部申し立て 発明同一  A63F
管理番号 1111079
異議申立番号 異議2003-72907  
総通号数 63 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2002-07-02 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-11-26 
確定日 2004-11-08 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3415118号「弾球遊技機」の請求項1ないし8に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3415118号の請求項1ないし7に係る特許を維持する。 
理由 第1.手続の経緯
特許第3415118号の請求項1ないし8に係る発明についての出願は、平成12年12月21日に特許出願され、平成15年4月4日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、その特許について、異議申立人済藤隆義、榊原吉保、町田彬より特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内である平成16年7月13日に訂正請求がなされたものである。

第2.訂正の適否についての判断
1.訂正の内容
ア.訂正事項a(下線部訂正箇所)
特許明細書の特許請求の範囲の【請求項1】の記載について、「遊技球の入賞可能な入賞口が設けられた遊技盤と、払出用の遊技球を貯留する貯留タンクと、前記貯留タンクから遊技球を流下させる誘導樋と、前記誘導樋を流下してきた遊技球を球停止位置で一旦停止させ、前記入賞口への一の入賞球に対して予め設定された遊技球の払出個数を単位賞品球数として遊技球を払い出す賞球払出手段と、前記誘導樋を流下してきた遊技球を、前記賞球払出手段より上流の誘導樋に設けられた誘導切替部で、前記賞球払出手段への誘導又は誘導切替部より上流の遊技球を強制的に排出する球抜樋への誘導に切り替える誘導切替手段とを有する弾球遊技機において、前記誘導切替手段により遊技球の誘導が球抜樋への誘導に切り替えられて誘導切替部より上流の遊技球が排出された際に、前記誘導切替部から賞球払出手段の球停止位置までの間に残存する残球遊技球数が、前記単位賞品球数の整数倍のみとなるように構成されたことを特徴とする弾球遊技機。」とあるのを、「遊技球の入賞可能な複数の入賞口が設けられた遊技盤と、払出用の遊技球を貯留する貯留タンクと、前記貯留タンクから遊技球を流下させる誘導樋と、前記誘導樋に連通する遊技球通路を有し、前記誘導樋を流下してきた遊技球を前記遊技球通路に設けた球停止位置で一旦停止させ、前記球停止位置を介して遊技球を払い出すように構成され、前記入賞口への一の入賞球に対して入賞口毎に予め設定された遊技球の払出個数を単位賞品球数として遊技球を払い出す賞球払出手段と、前記誘導樋を流下してきた遊技球を、前記賞球払出手段より上流の誘導樋に設けられた誘導切替部で、前記賞球払出手段への誘導又は誘導切替部より上流の遊技球を強制的に排出する球抜樋への誘導に切り替える誘導切替手段と、前記賞球払出手段から前記球停止位置を介して払い出された払出遊技球の個数をカウントする払出遊技球検出センサとを有し、前記払出遊技球検出センサにより前記賞球払出手段から払い出される払出遊技球の個数の不足が検出された場合にはエラー動作が発生する弾球遊技機において、前記複数の入賞口の少なくとも1つを特定入賞口とするとともに、前記誘導切替手段により遊技球の誘導が球抜樋への誘導に切り替えられて誘導切替部より上流の遊技球が排出された際に、前記誘導切替部から賞球払出手段の球停止位置までの間に残存する残存遊技球数が、前記特定入賞口に設定された単位賞品球数の整数倍のみとなるように前記誘導切替部より下流側の前記誘導樋長さ及び径、前記遊技球通路の長さ及び径、並びに前記球停止位置の設置位置が決定されたことを特徴とする弾球遊技機。」と訂正する。

イ.訂正事項b
特許明細書の特許請求の範囲について、【請求項2】を削除し、請求項3を請求項2に繰り上げて、その【請求項2】の記載を、「整数倍が1倍であることを特徴とする請求項1に記載の弾球遊技機。」と訂正する。

ウ.訂正事項c
特許明細書の特許請求の範囲について、請求項4を請求項3に繰り上げて、その【請求項3】の記載を、「整数倍が2倍以上であることを特徴とする請求項1に記載の弾球遊技機。」と訂正する。

エ.訂正事項d
特許明細書の特許請求の範囲について、請求項5を請求項4に繰り上げて、その【請求項4】の記載を、「遊技球の入賞可能な複数の入賞口が設けられた遊技盤と、払出用の遊技球を貯留する貯留タンクと、前記貯留タンクから遊技球を流下させる誘導樋と、前記誘導樋に連通する遊技球通路を有し、前記誘導樋を流下してきた遊技球を前記遊技球通路に設けた球停止位置で一旦停止させ、前記球停止位置を介して遊技球を払い出すように構成され、前記入賞口への一の入賞球に対して入賞口毎に予め設定された遊技球の払出個数を単位賞品球数として遊技球を払い出す賞球払出手段と、前記誘導樋を流下してきた遊技球を、前記賞球払出手段より上流の誘導樋に設けられた誘導切替部で、前記賞球払出手段への誘導又は誘導切替部より上流の遊技球を強制的に排出する球抜樋への誘導に切り替える誘導切替手段と、前記賞球払出手段から前記球停止位置を介して払い出された払出遊技球の個数をカウントする払出遊技球検出センサとを有し、前記払出遊技球検出センサにより前記賞球払出手段から払い出される払出遊技球の個数の不足が検出された場合にはエラー動作が発生する弾球遊技機において、前記誘導切替手段により遊技球の誘導が球抜樋への誘導に切り替えられて誘導切替部より上流の遊技球が排出された際に、前記誘導切替部から賞球払出手段の球停止位置までの間に残存する残存遊技球数が、前記複数の入賞口毎に設定された単位賞品球数の公倍数のみとなるように前記誘導切替部より下流側の前記誘導樋長さ及び径、前記遊技球通路の長さ及び径、並びに前記球停止位置の設置位置が決定されたことを特徴とする弾球遊技機。」と訂正する。

オ.訂正事項e
特許明細書の特許請求の範囲について、請求項6を請求項5に繰り上げて、その【請求項5】の記載を、「公倍数が最小公倍数であることを特徴とする請求項4に記載の弾球遊技機。」と訂正する。

カ.訂正事項f
特許明細書の特許請求の範囲について、請求項7を請求項6に繰り上げて、その【請求項6】の記載を、「公倍数が最小公倍数の2倍以上であることを特徴とする請求項4に記載の弾球遊技機。」と訂正する。

キ.訂正事項g
特許明細書の特許請求の範囲について、請求項8を請求項7に繰り上げて、その【請求項7】の記載を、「賞球払出手段が貸球払出手段を兼ね、球貸条件が成立した場合には、前記賞球払出手段より遊技球を貸し出すことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の弾球遊技機。」と訂正する。

ク.訂正事項h
特許明細書の段落番号【0006】の記載を、「【課題を解決するための手段】すなわち、請求項1の発明は、遊技球の入賞可能な複数の入賞口が設けられた遊技盤と、払出用の遊技球を貯留する貯留タンクと、前記貯留タンクから遊技球を流下させる誘導樋と、前記誘導樋に連通する遊技球通路を有し、前記誘導樋を流下してきた遊技球を前記遊技球通路に設けた球停止位置で一旦停止させ、前記球停止位置を介して遊技球を払い出すように構成され、前記入賞口への一の入賞球に対して入賞口毎に予め設定された遊技球の払出個数を単位賞品球数として遊技球を払い出す賞球払出手段と、前記誘導樋を流下してきた遊技球を、前記賞球払出手段より上流の誘導樋に設けられた誘導切替部で、前記賞球払出手段への誘導又は誘導切替部より上流の遊技球を強制的に排出する球抜樋への誘導に切り替える誘導切替手段と、前記賞球払出手段から前記球停止位置を介して払い出された払出遊技球の個数をカウントする払出遊技球検出センサとを有し、前記払出遊技球検出センサにより前記賞球払出手段から払い出される払出遊技球の個数の不足が検出された場合にはエラー動作が発生する弾球遊技機において、前記複数の入賞口の少なくとも1つを特定入賞口とするとともに、前記誘導切替手段により遊技球の誘導が球抜樋への誘導に切り替えられて誘導切替部より上流の遊技球が排出された際に、前記誘導切替部から賞球払出手段の球停止位置までの間に残存する残存遊技球数が、前記特定入賞口に設定された単位賞品球数の整数倍のみとなるように前記誘導切替部より下流側の前記誘導樋長さ及び径、前記遊技球通路の長さ及び径、並びに前記球停止位置の設置位置が決定されたことを特徴とする。」と訂正する。

ケ.訂正事項i
特許明細書の段落番号【0007】の記載を削除する。

コ.訂正事項j
特許明細書の段落番号【0008】の記載を、「請求項2の発明は、請求項1において、整数倍が1倍であることを特徴とする。」と訂正する。

サ.訂正事項k
特許明細書の段落番号【0009】の記載を、「請求項3の発明は、請求項1において、整数倍が2倍以上であることを特徴とする。」と訂正する。

シ.訂正事項l
特許明細書の段落番号【0010】の記載を、「請求項4の発明は、遊技球の入賞可能な複数の入賞口が設けられた遊技盤と、払出用の遊技球を貯留する貯留タンクと、前記貯留タンクから遊技球を流下させる誘導樋と、前記誘導樋に連通する遊技球通路を有し、前記誘導樋を流下してきた遊技球を前記遊技球通路に設けた球停止位置で一旦停止させ、前記球停止位置を介して遊技球を払い出すように構成され、前記入賞口への一の入賞球に対して入賞口毎に予め設定された遊技球の払出個数を単位賞品球数として遊技球を払い出す賞球払出手段と、前記誘導樋を流下してきた遊技球を、前記賞球払出手段より上流の誘導樋に設けられた誘導切替部で、前記賞球払出手段への誘導又は誘導切替部より上流の遊技球を強制的に排出する球抜樋への誘導に切り替える誘導切替手段と、前記賞球払出手段から前記球停止位置を介して払い出された払出遊技球の個数をカウントする払出遊技球検出センサとを有し、前記払出遊技球検出センサにより前記賞球払出手段から払い出される払出遊技球の個数の不足が検出された場合にはエラー動作が発生する弾球遊技機において、前記誘導切替手段により遊技球の誘導が球抜樋への誘導に切り替えられて誘導切替部より上流の遊技球が排出された際に、前記誘導切替部から賞球払出手段の球停止位置までの間に残存する残存遊技球数が、前記複数の入賞口毎に設定された単位賞品球数の公倍数のみとなるように前記誘導切替部より下流側の前記誘導樋長さ及び径、前記遊技球通路の長さ及び径、並びに前記球停止位置の設置位置が決定されたことを特徴とする。」と訂正する。

ス.訂正事項m
特許明細書の段落番号【0011】の記載を、「請求項5の発明は、請求項4において、公倍数が最小公倍数であることを特徴とする。」と訂正する。

セ.訂正事項n
特許明細書の段落番号【0012】の記載を、「請求項6の発明は、請求項4において、公倍数が最小公倍数の2倍以上であることを特徴とする。」と訂正する。

ソ.訂正事項o
特許明細書の段落番号【0013】の記載を、「請求項7の発明は、請求項1ないし6のいずれかにおいて、賞球払出手段が貸球払出手段を兼ね、球貸条件が成立した場合には、前記賞球払出手段より遊技球を貸し出すことを特徴とする。」と訂正する。

タ.訂正事項p
特許明細書の段落番号【0034】の記載を、「前記賞球払出装置(賞球払出手段)140は、図11の上面図(a)、正面図(b)、右側面図(c)及び図12に示すように、上端がケースレールの賞球払出誘導樋95aと通じ、下端が図示しない払出通路を介して遊技球払出口38に通じる遊技球通路151を内部に有し、該遊技球通路151の途中を回動可能な賞球ストッパー147で開閉するようにされるとともに、払出遊技球の数を払出遊技球検出センサ145で検出するものであって、次の構成部品よりなる。すなわち、前記遊技球通路151の形成された賞球ケース本体141と、該賞球ケース本体141に蓋をするように組み合わされる賞球本体カバー144と、前記遊技球通路151の脇に設けられるフォトセンサ等からなる払出遊技球検出センサ145及びそのカバー146と、前記賞球ケース本体141及び賞球本体カバー144間に設けられる賞球ソレノイド142、賞球アーム143、賞球ストッパー147、賞球リンク148、賞球ストッパー軸149及び賞球リンク軸150等で構成されている。」と訂正する。

チ.訂正事項q
特許明細書の段落番号【0055】の記載を、「【発明の効果】 以上図示し説明したように、請求項1に係る弾球遊技機によれば、遊技機メーカーにおける検査(特に払出装置動作検査)終了後や遊技店による故障メンテナンス時等で、遊技機内の遊技球を全て抜き出す必要がある場合において、遊技球の誘導切り替えによって誘導切替部より上流の遊技球が排出された後に、誘導切替部から賞球払出手段の球停止位置までの間に残存する残球遊技球が、複数の入賞口のうち予め決定された特定入賞口に対する単位賞品球数の整数倍のみとなるように前記誘導切替部より下流側の誘導樋長さ及び径、遊技球通路の長さ及び径、並びに前記球停止位置の設置位置が決定されているため、作業者が残存遊技球の抜き取りに際して、入賞口を間違える可能性が低くなるとともに、その後、入賞口に遊技球を強制的に入賞させて残存遊技球を排出させる際に、最後まで払出遊技球の不足が検出されず、エラーなく合理的に残存遊技球の抜き取り作業を行うことができる。」と訂正する。

ツ.訂正事項r
特許明細書の段落番号【0056】の記載を削除する。

テ.訂正事項s
特許明細書の段落番号【0057】の記載を、「さらに、請求項2に係る遊技機においては、残存遊技球数が、入賞口或いは特定入賞口に予め設定された単位賞品球数の1倍数のみとなるように構成されているため、1球の入賞で残存遊技球を全て抜き取ることができ、効率的に残存遊技球を排出させることができる。」と訂正する。

ト.訂正事項t
特許明細書の段落番号【0058】の記載を、「また、請求項3に係る遊技機においては、残存遊技球数が、入賞口或いは特定入賞口に予め設定された単位賞品球数の2以上の整数倍のみとなるように構成されているため、多くの遊技球を誘導樋や賞球払出手段に貯留することができる。」と訂正する。

ナ.訂正事項u
特許明細書の段落番号【0059】の記載を、「さらに、請求項4に係る遊技機においては、残存遊技球数が、複数設けられた入賞口毎に設定された単位賞品球数の公倍数のみとなるように誘導切替部より下流側の誘導樋長さ及び径、遊技球通路の長さ及び径、並びに球停止位置の設置位置が決定されているため、複数の入賞口のうち、どの入賞口に遊技球を入賞させて残存遊技球の排出を行っても、最後まで払出遊技球の不足が検出されず、より確実にエラーのない残存遊技球の抜き取り作業を行うことができる。」と訂正する。

ニ.訂正事項v
特許明細書の段落番号【0060】の記載を、「さらに、請求項5に係る遊技機においては、残存遊技球数が、入賞口毎に設定された単位賞品球数の最小公倍数のみとなるように構成されているため、少ない作業で残存遊技球を全て抜き取ることができ、効率的に残存遊技球を排出させることができる。」と訂正する。

ヌ.訂正事項w
特許明細書の段落番号【0061】の記載を、「また、請求項6に係る遊技機においては、残存遊技球数が、入賞口毎に設定された単位賞品球数の最小公倍数の2以上の整数倍のみとなるように構成されているため、多くの遊技球を誘導樋や賞球払出手段に貯留することができる。」と訂正する。

ネ.訂正事項x
特許明細書の段落番号【0062】の記載を、「加えて、請求項7に係る遊技機においては、賞球払出装置が貸球払出装置を兼ねているため、球貸条件が成立した場合には、賞球払出手段(賞球払出装置)より遊技球を貸し出すことができるので、賞球払出装置と貸球払出装置を別々に設ける必要がない。そのため、残存遊技球の抜き取り時に、誘導切替部から賞球払出装置までの残存遊技球さえ排出すればよくなり、より効率的に残存遊技球の抜き取りを行うことができる。」と訂正する。

2.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(1)上記訂正事項aは、請求項1において、
ア.遊技盤に設けられる入賞口が「複数」であることに限定し、
イ.賞球払出手段について、「誘導樋に連通する遊技球通路を有し、」球停止位置が「前記遊技球通路に設けた」ものであり、遊技球を「前記球停止位置を介して」「払い出すように構成され」たものであり、単位賞品球数が「入賞口毎に予め設定された」ものであることに限定し、
ウ.弾球遊技機が「前記賞球払出手段から前記球停止位置を介して払い出された払出遊技球の個数をカウントする払出遊技球検出センサとを有し、前記払出遊技球検出センサにより前記賞球払出手段から払い出される払出遊技球の個数の不足が検出された場合にはエラー動作が発生する」ものであることに限定し、
エ.「残球遊技球数」を実施例の記載と整合させるために「残存遊技球数」と訂正し、
オ.「複数の入賞口の少なくとも1つを特定入賞口と」し、残存遊技球数の設定に関わる単位賞品球数が「前記特定入賞口に設定された」ものであることに限定し、
カ.残存遊技球数を単位賞品球数の整数倍のみとする構成について、「前記誘導切替部より下流側の前記誘導樋長さ及び径、前記遊技球通路の長さ及び径、並びに前記球停止位置の設置位置が決定された」ものであることに限定するものであるから、
上記訂正事項aは、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当する。
そして、上記ア.は本件特許明細書の段落番号【0015】及び【0016】の記載、上記イ.は同【0023】、【0034】及び【0036】の記載、上記オ.は同【請求項2】及び【0047】の記載、上記カ.は同【0047】の記載にそれぞれ基づくものであるから、新規事項の追加に該当しない。
さらに、上記ウ.は同【0002】ないし【0004】、【0034】、【0036】及び【0039】、並びに図面図11の記載に基づくものである。
払出遊技球検出センサについて、段落番号【0036】に「賞球ストッパー147が回動して非突出状態となり、遊技球が払い出される。また同時に、払出遊技球検出センサ145によって払出遊技球のカウントを行う。」と記載され、図面図11に記載された賞球ストッパー147及び払出遊技球検出センサ145の位置関係は、賞球ストッパー147の下流側に払出遊技球検出センサ145が位置するものと認められるので、本件特許明細書及び図面には、「賞球払出手段から前記球停止位置を介して払い出された払出遊技球の個数をカウントする払出遊技球検出センサ」が記載されていると認められる。
また、エラー動作に関連して、段落番号【0002】に「前記払出遊技球検出センサにおいて、払出遊技球の個数が不足している場合にはエラーとなり、エラー報知手段によりエラー報知したり、払出装置の動作を停止させたりして、球不足による弊害が波及しないように構成されている。」、同【0004】に「払出遊技球検出センサによって払出遊技球の不足が検出されてエラーとなり、前記エラー動作が発生してしまう。このようなエラー動作が発生した場合、払出装置の停止状態を解除したり、払出装置を強制的に作動させたり、エラー状態を解除したりする等の面倒な作業が必要となり、球抜き作業に多大なる労力を費していた。」、同【0039】に「賞球払出装置140及び貸球払出装置160の払出遊技球検出センサ145,165において、払出遊技球の個数が不足している場合にはエラーとなり、エラー報知手段によりエラー報知したり、払出装置の動作を停止させたりして、球不足による弊害が波及しないように構成されている。」との記載があり、エラー報知、払出装置の動作停止はエラー動作の例示として記載され、エラー動作の内容としては一般的にエラー発生時にエラーに対処するために自動的に行われる事項を含み、その内容を特に限定するものではないと認められるので、本件特許明細書には、「前記払出遊技球検出センサにより前記賞球払出手段から払い出される払出遊技球の個数の不足が検出された場合にはエラー動作が発生する弾球遊技機」が記載されていると認められる。
よって、上記ウ.は新規事項の追加に該当しない。
したがって、上記訂正事項aは、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)上記訂正事項b及びcは、請求項2を削除し、それに伴い請求項3及び4を請求項2及び3にそれぞれ繰り上げるとともに引用する請求項を訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(3)上記訂正事項dは、請求項2を削除することに伴い請求項5を請求項4に繰り上げるとともに独立項とし、上記訂正事項aと同様の限定を加えるものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(4)上記訂正事項eないしgは、請求項2を削除することに伴い請求項6〜8を請求項5〜7に繰り上げるとともに引用する請求項を訂正するものであるから、特許請求の範囲の減縮及び明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(5)上記訂正事項hないしo及び上記訂正事項qないしxは、上記訂正事項aないしgと整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(6)上記訂正事項pは、用語の統一を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

3.むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項において準用する特許法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。

第3.特許異議の申立てについての判断
1.本件の請求項1ないし7に係る発明
上記第2.で示したように上記訂正が認められるから、本件の請求項1ないし7に係る発明(以下、「本件発明1ないし7」という。)は、上記訂正に係る訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし7に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

【請求項1】 遊技球の入賞可能な複数の入賞口が設けられた遊技盤と、払出用の遊技球を貯留する貯留タンクと、前記貯留タンクから遊技球を流下させる誘導樋と、前記誘導樋に連通する遊技球通路を有し、前記誘導樋を流下してきた遊技球を前記遊技球通路に設けた球停止位置で一旦停止させ、前記球停止位置を介して遊技球を払い出すように構成され、前記入賞口への一の入賞球に対して入賞口毎に予め設定された遊技球の払出個数を単位賞品球数として遊技球を払い出す賞球払出手段と、前記誘導樋を流下してきた遊技球を、前記賞球払出手段より上流の誘導樋に設けられた誘導切替部で、前記賞球払出手段への誘導又は誘導切替部より上流の遊技球を強制的に排出する球抜樋への誘導に切り替える誘導切替手段と、前記賞球払出手段から前記球停止位置を介して払い出された払出遊技球の個数をカウントする払出遊技球検出センサとを有し、前記払出遊技球検出センサにより前記賞球払出手段から払い出される払出遊技球の個数の不足が検出された場合にはエラー動作が発生する弾球遊技機において、前記複数の入賞口の少なくとも1つを特定入賞口とするとともに、前記誘導切替手段により遊技球の誘導が球抜樋への誘導に切り替えられて誘導切替部より上流の遊技球が排出された際に、前記誘導切替部から賞球払出手段の球停止位置までの間に残存する残存遊技球数が、前記特定入賞口に設定された単位賞品球数の整数倍のみとなるように前記誘導切替部より下流側の前記誘導樋長さ及び径、前記遊技球通路の長さ及び径、並びに前記球停止位置の設置位置が決定されたことを特徴とする弾球遊技機。

【請求項2】 整数倍が1倍であることを特徴とする請求項1に記載の弾球遊技機。

【請求項3】 整数倍が2倍以上であることを特徴とする請求項1に記載の弾球遊技機。

【請求項4】 遊技球の入賞可能な複数の入賞口が設けられた遊技盤と、払出用の遊技球を貯留する貯留タンクと、前記貯留タンクから遊技球を流下させる誘導樋と、前記誘導樋に連通する遊技球通路を有し、前記誘導樋を流下してきた遊技球を前記遊技球通路に設けた球停止位置で一旦停止させ、前記球停止位置を介して遊技球を払い出すように構成され、前記入賞口への一の入賞球に対して入賞口毎に予め設定された遊技球の払出個数を単位賞品球数として遊技球を払い出す賞球払出手段と、前記誘導樋を流下してきた遊技球を、前記賞球払出手段より上流の誘導樋に設けられた誘導切替部で、前記賞球払出手段への誘導又は誘導切替部より上流の遊技球を強制的に排出する球抜樋への誘導に切り替える誘導切替手段と、前記賞球払出手段から前記球停止位置を介して払い出された払出遊技球の個数をカウントする払出遊技球検出センサとを有し、前記払出遊技球検出センサにより前記賞球払出手段から払い出される払出遊技球の個数の不足が検出された場合にはエラー動作が発生する弾球遊技機において、前記誘導切替手段により遊技球の誘導が球抜樋への誘導に切り替えられて誘導切替部より上流の遊技球が排出された際に、前記誘導切替部から賞球払出手段の球停止位置までの間に残存する残存遊技球数が、前記複数の入賞口毎に設定された単位賞品球数の公倍数のみとなるように前記誘導切替部より下流側の前記誘導樋長さ及び径、前記遊技球通路の長さ及び径、並びに前記球停止位置の設置位置が決定されたことを特徴とする弾球遊技機。

【請求項5】 公倍数が最小公倍数であることを特徴とする請求項4に記載の弾球遊技機。

【請求項6】 公倍数が最小公倍数の2倍以上であることを特徴とする請求項4に記載の弾球遊技機。

【請求項7】 賞球払出手段が貸球払出手段を兼ね、球貸条件が成立した場合には、前記賞球払出手段より遊技球を貸し出すことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の弾球遊技機。

2.特許異議申立て理由の概要
(1)申立人・済藤隆義は、甲第1号証(特許第2521245号公報)及び甲第2号証(特許第2769665号公報又は特開2000-135364号公報)を提出し、訂正前の本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、当業者が甲第1号証に記載された発明に基いて、訂正前の本件特許の請求項8に係る発明は、当業者が甲第1及び2号証に記載された各発明に基いてそれぞれ容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、また、訂正前の本件特許は、特許法第36条第6項第1号及び第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである、旨主張している。

(2)申立人・榊原吉保は、甲第1号証(特開2000-308742号公報)、甲第2号証(特開平6-142312号公報)、甲第3号証(特開2000-167170号公報)及び甲第4号証(特開平4-269985号公報)を提出し、訂正前の本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、当業者が甲第1ないし3号証に記載された各発明に基いて、訂正前の本件特許の請求項8に係る発明は、当業者が甲第1ないし4号証に記載された各発明に基いてそれぞれ容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、また、訂正前の本件特許は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであり、取り消されるべきものである、旨主張している。

(3)申立人・町田彬は、甲第1号証(特開平10-80546号公報)、甲第2号証(特開2000-70500号公報)、甲第3号証(特開2000-245926号公報)、甲第4号証(特開2000-254325号公報)、甲第5号証(特開2000-84206号公報)及び甲第6号証(特開2001-252439号公報)を提出し、訂正前の本件特許の請求項1ないし7に係る発明は、当業者が甲第1及び5号証に記載された各発明に基いて、訂正前の本件特許の請求項8に係る発明は、当業者が甲第1ないし5号証に記載された各発明に基いてそれぞれ容易に発明をすることができたものであるから、その特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、また、訂正前の本件特許の請求項1ないし8に係る発明は、甲第6号証に記載された発明と同一であり、発明者及び出願人のいずれもが異なるものであるから、その特許は、特許法第29条の2規定に違反してなされたものであり、取り消されるべきものである、旨主張している。

3.取消理由の概要
当審が平成16年5月14日付けで通知した取消理由は、本件訂正前の請求項1ないし8に係る発明の特許は、特許法第36条第6項第1号及び第2号の要件を満たしていない特許出願に対してなされたものであるから、いずれも取り消されるべきものであるというものである。

4.特許法第29条第2項について
(1)刊行物記載の発明
刊行物ア:特許第2521245号公報
(申立人・済藤隆義の提出した甲第1号証)
刊行物イ:特許第2769665号公報(同甲第2号証)
刊行物ウ:特開2000-135364号公報
(申立人・済藤隆義の提出した特許異議申立書に記載された甲第2号証)
刊行物エ:特開2000-308742号公報
(申立人・榊原吉保の提出した甲第1号証)
刊行物オ:特開平6-142312号公報(同甲第2号証)
刊行物カ:特開2000-167170号公報(同甲第3号証)
刊行物キ:特開平4-269985号公報(同甲第4号証)
刊行物ク:特開平10-80546号公報
(申立人・町田彬の提出した甲第1号証)
刊行物ケ:特開2000-70500号公報(同甲第2号証)
刊行物コ:特開2000-245926号公報(同甲第3号証)
刊行物サ:特開2000-254325号公報(同甲第4号証)
刊行物シ:特開2000-84206号公報(同甲第5号証)

ア.上記刊行物アには、次の事項が記載されている。
(ア-1)「【0001】【産業上の利用分野】本発明は、弾球遊技機の賞球払い出し装置に関し、回転体の回転による払い出し動作中に球切れを検出した時には、その払い出し動作の終了後に、回転駆動手段を停止させるようにしたものである。」(第1ページ第2欄6〜10行)
(ア-2)「【0003】【発明が解決しようとする課題】この従来の賞球払い出し装置は、ソレノイドで開閉板を駆動して賞球貯留通路の払い出し口を開放する形式であるため、開閉板の開放前に導通スイッチが導通した状態であれば、常に所定数の賞球を払い出すことが可能である。即ち、ソレノイドで開閉板を駆動して払い出し口を開放し、この開閉板の上側にある所定数の賞球を一挙に落下させて払い出すようにしているので、開閉板を1回開閉する毎に所定数づつの賞球を確実に払い出すことができる。
【0004】しかし、この賞球払い出し装置は、1回当たりの賞球の払い出し数が常に一定である上に、賞球の払い出しが間欠的になって、連続的な払い出しができない欠点がある。しかも、所定数づつの賞球を纏めて間欠的に払い出すため、払い出された賞球が落下する時の払い出し通路側に対する衝撃が大になり、払い出し通路側の耐久性が低下する等の欠点がある。
【0005】一方、例えば実開平3-80777号公報に記載さるように、外周に繰り出し凹部が形成された回転体を、賞球貯留通路の下側の賞球払い出し室に回転自在に設け、この回転体を回転駆動するモータ等の回転駆動手段を設けた回転払い出し方式の賞球払い出し手段を採用すれば、賞球貯留通路内の賞球を回転体の回転により所要数づつ繰り出して払い出すので、回転体の回転角度に応じて払い出し数を任意に設定できると共に、多数の賞球を払い出す場合には連続的に能率良く払い出すことができ、しかも連続的な払い出しであるため、払い出し通路側の衝撃を少なくすることが可能である。
【0006】しかし、回転払い出し方式の賞球払い出し装置において、前述の導通スイッチ又はこれに近い球切れスイッチを設ければ、そのスイッチが賞球貯留通路内の球切れを検出した時には、回転体の回転を直ちに停止させることになる。従って、回転払い出し方式の場合には、賞球貯留通路内のスイッチから上側で球詰まりが発生して、スイッチが球切れ状態を検出すれば、回転体とスイッチとの間に、1回の払い出し動作による払い出し数分以上の賞球があっても、直ちに回転体が停止して賞球の払い出しを中断することになるので、1回の払い出し動作で払い出すべき所要数の賞球を最後まで完全に払い出すことができない欠点がある。
【0008】本発明は、かかる従来の課題に鑑み、回転払い出し方式を採用するにも拘わらず、払い出し動作中に回転体の近傍で球詰まり等による球切れが生じても、本来払い出すべき所要数の賞球を全て確実に払い出すことができる弾球遊技機の賞球払い出し装置を提供することを目的とする。」(第2ページ第3欄第11行〜第4欄第6行)
(ア-3)「【0011】【実施例】・・・図2はカード式パチンコ機の正面図である。・・・前面枠2 にはガラス扉枠3 及び前面板4 が装着され、またその後側に遊技盤5 が着脱自在に装着されている。遊技盤5 の前面には、打球を案内するガイドレール6 が設けられる他、入賞領域を構成する入賞口7 や変動入賞装置8 及び可変表示装置9 、或いはアウト口10等が夫々配置されている。」(第2ページ第4欄第38〜47行)
(ア-4)「【0015】27は賞球を貯留する賞球タンクで、裏セット板20の裏側の上部に装着されている。28は賞球タンク27に連通する賞球タンクレールで、賞球タンク27の下側で裏セット板20の上部に取付けられている。」(第3ページ第5欄第26〜29行)
(ア-5)「【0016】33は賞球を所要数づつ払い出す賞球払い出し手段で、制御基板21の側方で裏セット板20に装着されている。賞球払い出し手段33は、賞球貯留通路34と賞球払い出し通路35とを左右に二列備えると共に、その各列の通路34,35 間に払い出し用の回転体36を備え、この回転体36を払い出しモータ(回転駆動手段)37により回転駆動するようになっている。賞球貯留通路34は上側の賞球タンクレール28に連通し、賞球払い出し通路35は下側の賞球案内通路38を経て前側の上皿11内に連通されている。」(第3ページ第5欄第15〜44行)
(ア-6)「【0026】賞球貯留通路34の上端には、この通路34の賞球Aによって押し上げられる感知アーム92が設けられている。感知アーム92は中間隔壁56とスイッチケース89の側壁との間の枢支ピン93により上下動自在に枢支されると共に、先端側の上面に孔94付きの突出部95と下降制限用のストッパー96とを有する。そして、球切れ確認スイッチ39は、感知アーム92が賞球Aにより押し上げられて孔94が球切れ確認スイッチ39に対応した時にオンし、またストッパー96が賞球払い出しケース55の上面に当接した時に、突出部95が遮光してオフするようになっている。」(第4ページ第7欄第31〜41行)
(ア-7)「【0035】一方、入賞球検出スイッチ52が入賞球を検出すると、払い出し異常判別手段102 に払い出し指令信号S3 が入り、賞球払い出し手段33の払い出しモータ37が所定角度だけ回転し、その出力軸67に固定された回転体36を図4のb矢印方向に回転させる。そして、賞球タンク27から賞球タンクレール28を経て賞球払い出し手段33の賞球貯留通路34に供給されてストックされている賞球Aを回転体36の回転によって所要数づつ繰り出して払い出す。回転体36の回転により払い出された賞球は、賞球払い出し通路35から落下し、賞球案内通路38を経て上皿11へと供給されていく。以下、入賞球検出スイッチ52が入賞球を検出する毎に、賞球払い出し手段33の払い出しモータ37が作動し、回転体36を回転させて賞球Aを順次払い出して行く。」(第4ページ第8欄第49行〜第5ページ第9欄第12行)
(ア-8)「【0023】賞球貯留通路34を形成する通路壁58には、賞球払い出し室57の入口に対応するように賞球排出口69が下部側に開口状に設けられると共に、この賞球排出口69を開閉する開閉板70が設けられている。開閉板70は二列の賞球排出口69に跨がる大きさであって、上端の枢支ピン71により開閉自在に枢着され、また上端側にウェイト部72が、下端部の一側に突起73が夫々設けられている。突起73は賞球払い出しケース55の他方の側壁74に形成されたガイド孔75から外方に突出し、これに係合するロック板76により開閉板70が閉状態にロックされている。
【0024】ロック板76は扇形状であって、突起73に係脱自在に係合すべく側壁74の枢支ピン77により枢支されている。ロック板76は下方に突出するアーム部78を有し、このアーム部78の下端の突起79と長孔80を介して開閉レバー81に連動連結されると共に、アーム部78と側壁74に固定のピン82との間に掛装された引張バネ83によりロック方向に付勢されている。開閉レバー81は側壁74に固定の枢支ピン85により回動自在に枢支され、操作部86を引張バネ83に抗して図3のa矢印方向に操作した時に、ロック板76が突起73から外れて開閉板70が開くようになっている。」(第4ページ第7欄第1〜22行)
(ア-9)「【請求項1】・・・賞球貯留通路(34)内の球切れを検出して払い出しを停止させるための球切れ確認スイッチ(39)を、回転体(36)と検出部位との間の賞球貯留通路(34)内に、少なくとも該回転体(36)の1回の払い出し動作による払い出し数分の賞球(A) が残るように回転体(36)から離間して設け、」(第1ページ第1欄第2〜15行)
(ア-10)「【0017】・・・この球切れ確認スイッチ39は回転体36との間の賞球貯留通路34に、少なくとも1回の払い出し数分の賞球が残るように、回転体36から上側に離れて賞球貯留通路34の上端部に設けられ、賞球が切れた時にオフするようになっている。」(第3ページ第5欄第45〜50行)
(ア-11)「【0041】【発明の効果】本発明によれば、・・・設けているので、球切れ確認スイッチ39が賞球貯留通路34内の球切れを検出しても、その払い出し動作が終了するまでは回転駆動手段37が回転体36を駆動し続けて、球切れ確認スイッチ39から下側の賞球貯留通路34にある賞球Aを払い出すことができる。
【0042】従って、回転駆動手段37により回転体36を駆動して、この回転体36の回転により賞球貯留通路34の賞球Aを払い出す回転払い出し方式を採用しているにも拘わらず、払い出し動作中に球切れ確認スイッチ39よりも上側での球詰まり等によって球切れが生じた場合でも、その払い出し動作によって本来払い出すべき所要数の賞球Aを確実に払い出すことができる。
【0043】しかも、回転体36との間に少なくとも1回の払い出し数分の賞球Aが残る程度の位置に球切れ確認スイッチ39を設ければ良く、球切れ確認スイッチ39を回転体36から大きく離間させて配置する必要がないので、この球切れ確認スイッチ39から下側での球詰まり等は比較的容易に防止できる。このため、回転払い出し方式を採用しているにも拘わらず、球切れ確認スイッチ39から下側での球詰まり等による回転体36の空払い出し動作を確実に防止でき、前記効果と相俟って常に1回の払い出し動作で払い出すべき所要数の賞球Aを確実に払い出すことが可能である。」(第5ページ第10欄第14〜45行)

イ.上記刊行物イには、次の事項が記載されている。
(イ-1)「【0013】この可変表示装置14には、中央横一列と斜め対角線上とで合計3本の当りライン(組合せ有効列)が定められている。可変表示装置14の停止時に3本の当り列のうち或る当り列上で特定の識別情報の組合せ(たとえば777)が揃った場合には大当りとなり、可変入賞球装置3のソレノイド5が励磁されて開閉板4が開成され、打玉が入賞しやすい遊技者にとって有利な第1の状態となる。」(第4ページ第7欄第3〜10行)
(イ-2)「【0015】この可変入賞球装置3内に入賞したパチンコ玉が特定入賞口(Vポケット)6に入賞すれば、その特定入賞玉が特定入賞玉検出スイッチ7により検出され、その検出出力に基づいて、可変入賞球装置3の第1の状態が終了した後再度開閉板4が開成されて第1の状態の繰返し継続制御が行なわれる。この繰返し継続制御の上限回数はたとえば10回に定められている。この繰返し継続制御の回数がラッキーナンバー・回数表示LEDとしての7セグメント表示器11により表示される。また、可変入賞球装置3の第2の状態としては、打玉が全く入賞しないのでなく打玉が入賞可能であるが入賞困難な状態であってもよい。」(第4ぺージ第7欄第20〜31行)
(イ-3)「【0046】玉通路64a,64bのそれぞれには玉感知部材920a,920bが回動自在に設けられている。玉誘導レール67からパチンコ玉が供給されていない状態では、玉感知部材620a,920bが図示時計回り方向に回動して破線で示す姿勢となり、この玉感知部材920a,920bの回動を検出するレール玉切れスイッチ68a,68bがOFFとなる。一方、玉誘導レール67からパチンコ玉が供給されれば、その供給されてきたパチンコ玉の自重により玉感知部材920a,920bが反時計回り方向に回動し、図示実線に示す姿勢となる。するとレール玉切れスイッチ68a,68bがONとなる。この玉感知部材920a,920bから玉払出器63までの間に所定個数(たとえば15個)以上の玉が存在できるようになっている。すなわち、玉切れ検出装置(玉検知部材920a,920b,レール玉切れスイッチ68a,68b)による玉切れ検出位置と玉払出装置(玉払出機63)との間に、入賞玉1個に対し前記玉払出装置が払出す最大個数(たとえば15個)以上の玉数が存在するように構成されている。
【0047】玉払出器63の下方には金属カバー板55が設けられている。この金属カバー板は、玉の流下を誘導するための起立壁部55a,55bが設けられており、玉払出器63により払出されたパチンコ玉がこの起立壁部55a,55bに誘導されてスムーズに下方に落下するように構成されている。この金属カバー板55にはアース線56が取付けられており、玉払出器63により払出された玉が帯電している場合には、その玉がカバー板55に接触することによりアースされて除電される。図中、419a,419bは払出口、805a,805bは玉送り通路、880a,880bは玉通路部材、41は開口、806は玉圧受け部材である。」(第8ページ第15欄第11〜41行)
(イ-4)「【0048】図5は、玉送り部材800の回転軸に対し直交する方向から見た横断面図である。玉払出器63の玉入口884a,884bにパチンコ玉を供給する玉通路部材880a,880bは、玉入口884a,884bの高さ位置に合わせた形状をしている。玉払出器63の玉入口884a,884bの少し下方部分では、玉圧緩和部材885が設けられており、玉通路64a,64bを通って供給されてきたパチンコ玉の玉圧がこの玉圧緩和部材885の形状部分に加えられ、玉送り通路805a,805bに加えられるパチンコ玉の玉圧が緩和される。
【0049】玉圧緩和部材885内には、空間886が形成されており、投光器802a,半回転検出センサ802bの配線がこの空間886を通して外部に引き出されるように構成されている。玉送り部材800の端部には、1対の凸部887と切込部が設けられており、この1対の凸部887の間が切欠813となる。そして、この1対の凸部887の間に投光器802aが位置するように設けられている。図5に示す状態では、投光器802aから投光された光は凸部887に遮られて半回転検出センサ802bに検出されないように構成されている。そして、玉送り部材800が図5に示す状態から45度回転することにより投光器802aから投光された光が1対の凸部887の間を通って半回転検出センサ802bに到達する状態となる。結局、玉送り部材800が半回転するごとに半回転検出センサ802bが投光器802aからの投光を受光する状態となる。図中915はカバーであり、54は金属板、55は金属カバー板、40は機構板である。」(第8ページ第15欄第42行〜第16欄第20行)

ウ.上記刊行物ウには、次の事項が記載されている。
(ウ-1)「【0013】図8は本発明の機構が搭載される部分を示すパチンコ機1の一部を断面により示した背面図である。前面枠22の背面には金属板で浅い箱型に形成した機枠板38が取付けてあり、遊技盤3はガラス枠25および上受皿10を開放して、前面側から図示しないロック装置により機枠板38と着脱可能になっている。機枠板38の背面には上タンク39、下タンク40、機構枠体41が取付けられており、この機構枠体41は図示しないヒンジにより機枠板38に着脱可能に取付けられている。この機構枠体41には賞品球の通路である誘導路42が設けられている。この誘導路42には上方部位から賞品球確認装置43、 賞品球および貸出球の排出防止装置44を含む賞品球排出装置45、そして、ストッパ機構46が設けられている。」(第3ページ第3欄第22〜34行)
(ウ-2)「【0015】また、ストッパ機構46には賞品球および貸出球をカウントするための計数装置47が設けられており、誘導路42内を降下して上受皿10の払出口11に入る賞品球等の数を管理するようになっている。また、誘導路42の下部側に配設した計数装置47の上流側には球抜部材48が取付けられ、常に計数装置47側に図示しないロック装置によりロックされて、賞品球および貸出球の排出が行なえるようになっている。そして、遊技店の終了時等に上タンク39の遊技球を抜く場合は前記図示しないロック装置のロックを解除して球抜部材48を球抜き樋49側に揺動させて球抜きを行なうようにしている。誘導路42は上受皿10の払出口11への接続樋50と上受皿10のあふれ球が流下する下受皿流下樋51とに接続されている。」(第3ページ第3欄第48行〜第4欄第10行)
(ウ-3)「【0046】図14に示すように、賞品球数が決定されるとS13 において賞品球排出用ソレノイド56(SOL1)を突出作動させる(図24(h) 参照)ことにより賞品球の流下を開始させるので、賞品球カウントスイッチ57(SW2)が賞品球のカウントを開始する(図24(i) 参照)。S14 では賞品球カウントスイッチ57(SW2)がONされたか否かが判定されONが検出されないと、ONが検出される迄待機し、ON が検出されると、S15 でCPUに内蔵されている賞品球カウンタ(CN1) (図示せず)に「1」加算し、次のS16 では賞品球カウンタ(CN2)に「1」加算する。そして、S17 において賞品球カウンタ(CN1) の値がS12-5 で決定された賞品球数nと一致したか否が判定され、一致していない場合にはS14 〜S17 の処理が繰り返される。
【0047】S17 において、賞品球カウンタ(CN1) の値が賞品球数nと一致したと判定されると、S18 で賞品球排出用ソレノイド56(SOL1)を吸引動作させること(図24(h)’参照)により賞品球の流下かを停止させ、次のS19 で賞品球カウンタ(CN1) クリアし、S20 では入賞カウント用ソレノイド90(SOL2)を吸引動作する(図24(c) ’参照) ことにより入賞球を機外に排出し、入賞音を停止、入賞ランプ7(L1)を消灯する。そして、S21 でBUSY信号をOFF (図24(b) ’参照)し、S1へ戻る。」(第7ページ第11欄第39行〜第12欄第11行)
(ウ-4)「【0048】S1において、カードリーダライタ32から球貸し信号が入力された場合、図15に示すように、S23 へ進み、BUSY信号をONし、次のS24 で賞品球確認スイッチ55(SW1) のON状態がT秒継続しているがを判定し、継続していなければT秒の継続を待ってS25 へ進む。S25 では球貸し音を発生開始し、次のS26 で賞品球排出用ソレノイド56(SOL1)を突出動作させるので球の流下が開始され、賞品球カウントスイッチ57(Sw2) カウントを開始する。S27で賞品球カウントスイッチ57(Sw2) がONされたか否かが判定され、ON検出がない場合は、ON検出されるまで待機し、ON検出されるとS28 で賞品球カウンタ(CN3) に「1」が加算される。
【0049】次のS29 ではその賞品球カウンタ(CN3) の値が「25(予め設定された1単位の貸球数)」に達したか否かが判定され、達していない場合にはS27 〜S29 の処理が繰り返される。「25」に達している場合、S30 に進み、賞品球排出用ソレノイド56(SOL1)を吸引動作することにより球の流出を停止させる。S31 では賞品球カウンタ(CN3) をクリアし、S32 で球貸し音を停止させ、S33 で管理コンピュータへの球貸し信号の出力処理を施し、S34 でBUSY信号をOFFシ、 球貸し処理が終了し、S1へ戻る。以後は上記の処理が繰り返される。」(第7ページ第12欄第12〜33行)

エ.上記刊行物エには、次の事項が記載されている。
(エ-1)「【0023】遊技領域に案内された遊技球は、盤面上に設けられた入賞口のいずれかに入賞するか、または、アウト口に入る。遊技球が入賞口に入賞すると、その入賞口によって予め定められた個数(例えば15個)の遊技球が内枠1裏側の裏セット機構板20(図2参照)に設けられた賞球払出装置から賞球通路を経て受け皿に払い出される。」(第3ページ第4欄第18〜24行)
(エ-2)「【0027】また、機構板20の背面側には、その上部に賞球を貯留する球タンク22が設けられ、該球タンク22の下方に貯留された賞球を複数列(2列)整列して機構板20の一側に導くタンクレール25が設けられている。タンクレール25と連通する部分の球タンク22の底面には、賞球が載置しないことによって賞球の不足を検出する補給球切れスイッチ24が球タンク22内に設けられている。補給球切れスイッチ24は、外部接続端子板21の端子を介して管理コンピュータに球切れ情報を提供するものであり、補給球切れスイッチ24は、外部接続端子板21を介して枠飾り10に設けられた球切れランプを点灯させるものである。
【0028】前記タンクレール25の下流側には、ヘアピン状に屈曲したカーブレール(図3の図番47参照)が接続されている。このカーブレールは、賞球を一列に整列して流下させる第1通路部材と第2通路部材とで構成され、第1通路部材と、第2通路部材は、平行に誘導し、ケースレール(図3の図番48参照)を経て賞球払出部の払出スクリュー34の上部に導くようになっている。
【0029】すなわち、球タンク22の底の球出口からタンクレール25に流下した遊技球は2列に整列されながら球抜き装置部35内のカーブレール及びケースレールを経て球払出部(図5も参照のこと)へ送られる。」(第3ページ第4欄第46行〜第4ページ第5欄第18行)
(エ-3)「【0030】球払出部(図5も参照の参照のこと)は、賞球払出モータ27により駆動される賞球払出スクリュー34と、払い出された遊技球を検出する賞球払出センサが設けられる。
【0031】賞球払出モータ27は払出制御基板(図2の図番29参照)から送られてくる1ステップの払出制御信号で7.5度の回転動作を行なうため、24ステップの払出制御信号で180度の回転動作が行なわれる。賞球払出モータ27が180度の回転をするごとに2列のケースレール48内に整列された遊技球は賞球払出スクリュー34により1個ずつ交互に払い出される。その払い出された遊技球は各レール48に臨む賞球払出センサにより検出され、その信号は払出制御基板(図2の図番29参照)に送られる。」(第4ページ第5欄第19〜32行)
(エ-4)「【0033】ここで本発明の遊技機の球抜き制御について説明する。図3は本発明の球抜き装置部35の拡大透視図である。図3において球抜き装置部35には上記したようにヘアピン状に屈曲したカーブレール47がタンクレール25の下流側に接続され、球抜き装置部35においてカーブレール47及びケースレール48に沿って遊技球が貯溜されるようになっている。そして空切り防止スイッチ41は、タンクレール25下端の球抜きクランク43に相対する位置に設けられた検知板42の後方に2列のケースレールそれぞれに対応して2個のスイッチが取り付けられている。」(第4ページ第5欄第44行〜第6欄第4行)
(エ-5)「【0035】上記したように通常、空切り防止スイッチ41は検知板42の作用により「OFF」状態に維持されており、図1の遊技機正面左側に設けられている球抜き穴11に球抜き棒(図示せず)を差し込むと、裏セット機構板20に取り付けられた裏球抜きレバー44が球抜き棒(図示せず)によって押され、カーブレール47と球抜き桶46の分岐位置にある球抜きクランク43をロックしている球抜きストッパ45が作動してロックが解除される。
【0036】つまり球抜き棒(図示せず)の操作に始まる球抜きクランク43の回動により上流位置の遊技球が球抜きされると遊技球が無くなるので空切り防止スイッチ41のアクチュエータのバネ付勢力によって検知板42が押されて「ON」状態に変換する。空切り防止スイッチ41の「ON」状態の変換に伴って、検知板42は軸を中心に自重で落下して回動し、空切り防止スイッチ41の「ON」状態を確実なものとなる。」(第4ページ第6欄第15〜30行)
(エ-6)本発明のパチンコ機における球抜き装置部の拡大透視図である図3(b)球抜き状態には、12個の遊技球が図示されている。(第7ページ)
(エ-1)従来のパチンコ機における賞球払出部の構造を示す図である図5には、2本の通路と、各通路に5個または6個の遊技球が図示されている。(第8ページ)

オ.上記刊行物オには、次の事項が記載されている。
(オ-1)「【0005】本発明は、かかる従来の課題に鑑み、賞球の球切れを極力賞球払出し手段の払出し部の近くで検出して、賞球の詰まり等による空払出し動作を防止すると共に、払出し部の払出し動作中に球切れが生じても、所要数の賞球を全て確実に払出し得るようにすることを目的とする。」(第2ページ第1欄第49行〜第2欄第4行)
(オ-2)「【0014】39は賞球供給通路34の賞球切れを確認する球切れ確認スイッチで、この球切れ確認スイッチ39は回転体36との間の賞球供給通路34に、少なくとも1回の払出し数分の賞球が残るように、回転体36から離れて賞球供給通路34の上端部に設けられ、賞球が切れた時にオフするようになっている。40は賞球払出し手段33からの賞球の払出しを検出する払出し検出スイッチで、賞球払出し通路35の下端部に設けられている。41は満杯検出スイッチで、下皿15の打球が満杯状態となった時に、作動片42を介してオンするようになっている。」(第3ページ第3欄第36〜45行)
(オ-3)「【0036】このような実施例の構成によれば、球切れ確認スイッチ39が賞球払出し手段33の賞球供給通路34の上端部、つまり賞球Aを払出す回転体36に極力近い部分にあるので、賞球タンク27側で球詰まりが発生しても、回転体36が空転して空払出し動作を続行することはない。また球切れ確認スイッチ39と回転体36との間の賞球供給通路34内には、少なくとも1回の払出し動作で払出す賞球数以上の賞球Aがあり、払出し動作中に球切れが生じれば、その動作の終了後に払出しモータ37及び回転体36を停止させるので、球切れ発生時にも確実に所要数の賞球Aを払い出すことができる。」(第5ページ第7欄第30行〜第8欄第1行)

カ.上記刊行物カには、次の事項が記載されている。
(カ-1)「【0042】流路変換樋19における第1〜第3球流路38a〜38cの各流路の入口部分には、遊技球導入片39を揺動可能に軸着してあり、誘導樋18から供給される球が上下に重なることなく第1〜第3球流路38a〜38cへ導き入れられるようにしてあり、その適宜下流に設けた排出待機球検出手段21は、非接触式の排出待機球検出器40と、該排出待機球検出器40に作用して排出待機球を検出させる作用部材41とから構成してある。なお、この排出待機球検出器40の検出信号は、球排出装置20から排出可能な球の残量が予め定めた所定数以下になったことを検出し、賞球もしくは貸球の排出動作を規制するか否かの排出制御に供される。」(第6ページ第9欄第32〜43行)
(カ-2)「【0053】すなわち、7個とか15個といった数が1回の賞球数として採用されていることから、賞球排出専用の第1球排出ユニット20aによる排出待機球の残数を排出待機球検出手段21によって検出する際には、15個程度の待機球を見込める流路長が確保されれば良いのであるが、球貸可能な最低単位金額(例えば100円)で貸し出される遊技球数は25個といった比較的多い数が採用されていることから、貸球排出専用の第2球排出ユニット20bによる排出待機球の残数を排出待機球検出手段21によって検出する際には、25個程度の待機球を見込める流路長が確保されていなければならないため、第1〜第3球排出路38a〜38c内の排出待機球の検出を同一位置で行った後の流路長を調整したのである。」(第7ページ第12欄第28〜41行)

キ.上記刊行物キには、次の事項が記載されている。
(キ-1)「【構成】パチンコ機1の正面側に配置される上皿に設けられる玉貸スイッチを操作することにより、カードユニット装置30のカードユニット制御基板37から賞品玉排出制御基板28に貸玉排出要求信号が送られ、この要求信号に基づいて所定個数の貸玉が賞品玉排出装置22によって排出され、賞品玉排出通路27を通ってパチンコ機1の正面の上皿に排出される。」(第1ページ下欄第5〜11行)
(キ-2)「【請求項1】・・・該玉貸スイッチの操作に基づいて前記賞品玉排出装置を駆動して貸球を排出するようにした」(第2ページ第1欄第2〜13行)
(キ-3)「【0005】・・・貸出された玉が自動的に賞品玉排出装置から遊技機の前面に設けられる上皿に排出される」(第2ページ第2欄第11〜22行)

ク.上記刊行物クには、次の事項が記載されている。
(ク-1)「【0009】前記遊技盤6の表面には、前記発射レール28から誘導された打玉を誘導するための誘導レール10がほぼ円状に植立されている。そして、誘導レール10によって囲まれた領域が遊技領域11を構成するものである。」(第3ページ第3欄第17〜21行)
(ク-2)「そして、開閉扉15内に設けられた特定入賞口15aに入賞すると、再度上記した開放状態を繰り返し、特定入賞口15aに入賞玉が発生する毎に最高10回繰り返すことができるようになっている。
【0010】また、前記可変表示装置12の左右両側、及び可変入賞球装置14の上部には、前記回転ドラム13a〜13cの回転を許容する始動入賞口16a〜16Cが設けられている。この始動入賞口16a〜16cのうち可変入賞球装置14の上部に設けられる始動入賞口16aに打玉が入賞すると、それによって払出される景品玉数は、他の入賞領域に打玉が入賞した際に払出される景品玉数よりも少なくなるように設定されている。
【0011】更に、遊技領域11には、前記可変入賞球装置14の左右側方に通常入賞口17a,17bが設けられ、また、可変入賞球装置14の左右下方にも通常入賞口18a,18bが設けられている。」(第3ページ第3欄第31〜46行)
(ク-3)「なお、この実施形態では、後述するように、始動入賞口16aに打玉が入賞した場合には、7個の景品玉が払出され、他の入賞領域に打玉が入賞した場合には、13個の景品玉が払出されるようになっている。もちろん、始動入賞口16aに入賞する確率に応じてこれらの払出される景品球数の設定を変えることは差し支えない。」(第3ページ第4欄第16〜20行)
(ク-4)「【0020】一方、機構板本体42の後面側の構成について説明すると、その上部に景品玉タンク取付凹部45が形成され、該景品玉タンク取付凹部45に景品玉タンク46が螺着固定される。景品玉タンク46は、図示しない補給機構から補給される景品玉を貯留するものであり、図7に示すようにその内部構造が景品玉タンク46内に貯留された景品玉を一方向に向って流下するように構成されるとともに、その流下下端に方形状の流下開口47が開設されている。」(第4ページ第6欄第9〜17行)
(ク-5)「【0021】景品玉タンク46の下方には、景品玉を整列させるための第1の景品玉誘導樋49と第2の景品玉誘導樋50とが前後方向に重合して設けられている。この第1の景品玉誘導樋49と第2の景品玉誘導樋50とは、景品玉が自然流下するように傾斜して取り付けられる。」(第4ページ第6欄第20〜25行)
(ク-6)「【0031】第1の景品玉誘導樋49及び第2の景品玉誘導樋50の下流側には、屈曲樋83が接続されるように取り付けられている。この屈曲樋83は、第1の景品玉誘導樋49及び第2の景品玉誘導樋50を流下してきた景品玉の流下方向を180度転換させるとともに、連続して流下している景品玉の玉圧を弱めるためにある。屈曲樋83の屈曲部には、選択機構としての玉抜レバー84が設けられ、パチンコ遊技機1の前面から押ピンで押圧することにより玉抜レバー84の係合部(図示せず)と屈曲樋83の構成壁との係合が外れて玉圧により玉抜レバー84が開放し、景品玉タンク46及び第1の景品玉誘導樋49、第2の景品玉誘導樋50に貯留されていた景品玉が後述する玉抜通路90を流下してパチンコ遊技機1外へ排出されるようになっている。」(第6ページ第9欄第43行〜第10欄第6行)
(ク-7)「【0033】また、屈曲樋83の下流部には、ほぼ垂直状の垂直樋部83aが形成され、該垂直樋部83aの末端には、段差部83bが形成されている。垂直樋部83aは、後述する景品玉収納筒94a〜94cに収納される景品玉数よりもやや多い数の景品玉が収納されるような長さに選ばれており、また、段差部83bは、後述する景品玉ケース92の上部玉ストッパー96a,96bがスムーズに動作するように玉圧を弱めるように作用しているものである。」(第6ページ第10欄第33〜41行)
(ク-8)「【0035】前記屈曲樋83の下流側には、景品玉排出機構としての景品玉ケース92が配置される。この景品玉ケース92は、取付板95と景品玉収納筒94a〜94cと上部玉ストッパー96a,96bと下部玉ストッパー98a,98bと上下摺動部材102a,102bとから成る。」(第7ページ第11欄第7〜12行)
(ク-9)「また、下部玉ストッパー98a,98bは、1つの支軸99を中心にして揺動自在に設けられ、その上部に重錘の機能を兼用した当接ローラ101a,101bが設けられ、その下部に景品玉収納筒94a〜94c内に出没するストッパー部100a〜100cが突設されている。そして、下部玉ストッパー98a,98bは、自重により常にストッパー部100a〜100cが景品玉収納筒94a〜94cに侵入するようになっているとともに、ストッパー部100a〜100cを段差状に突設することにより、景品玉収納筒94a〜94cへの上下方向の侵入位置を異ならせるようにしている。
【0037】しかして、ストッパー部100a,100bは、下部玉ストッパー98aに突設されるとともに、景品玉収納筒94a,94bの出口を開閉するように作用し、ストッパー部100cは、下部玉ストッパー98bに突設されるとともに、景品玉収納筒94cの出口を開閉するように作用する。なお、ストッパー部100a〜100cが突設される具体的な位置は、ストッパ-部100aが景品玉収納筒94a内に6個の景品玉が収納されるような位置であり、ストッパ-部100b,100cが景品玉収納筒94b,94c内に7個の景品玉が収納されるような位置である。」(第7ページ第11欄第25〜47行)
(ク-10)「下部玉ストッパー98a,98bがフリーな状態になると、景品玉収納筒94a〜94c内に収納されていた景品玉の玉圧によりストッパー部100a〜100cが押圧されて回動し、景品玉収納筒94a〜94c内に収納されていた景品玉が前記景品玉排出通路91に払出される。」(第7ページ第12欄第30〜35行)
(ク-11)図面図1に第1実施形態に係る景品玉欠乏感知板の動作を示す概略図が記載されている。(第15ページ)
(ク-12)図面図3にパチンコ遊技機の正面図が記載されている。(第15ページ)
(ク-13)図面図4に遊技盤の裏面に取り付けられる入賞玉集合カバー体を示す背面概略図が記載されている。(第15ページ)
(ク-14)図面図5にパチンコ遊技機の背面図が記載されている。(第16ページ)
(ク-15)図面図7に景品玉タンク及び景品玉誘導樋の平面図が記載されている。(第16ページ)
(ク-16)図面図11に景品玉ケースの斜視図が記載されている。(第16ページ)
(ク-17)図面図13に景品玉ケース及び入賞玉処理機構の動作を示す背面概略図が記載されている。(第18ページ)
(ク-18)図面図14に景品玉ケース及び入賞玉処理機構の動作を示す背面概略図が記載されている。(第18ページ)

ケ.上記刊行物ケには、次の事項が記載されている。
(ケ-1)「【0025】球排出ユニット34は、球導出樋33の球出口に接続して設けてあり、本願発明における球排出装置として機能する。この球排出ユニット34は、排出制御装置41によって動作が制御され、所要数の遊技球を賞球或いは貸し球として排出する。本実施形態における球排出ユニット34は、賞球用の球流下路36と貸し球用の球流下路36とからなる2条の球流下路36を備えている。」(第4ページ第6欄第28〜33行)
(ケ-2)図面図2にパチンコ遊技機の背面図が記載されている。(第16ページ)

コ.上記刊行物コには、次の事項が記載されている。
(コ-1)「【請求項7】 前記賞品球払い出し手段(41)を貸し球の払い出し用に兼用し、前記規定払い出し個数を球貸し時の1回の払い出し動作により払い出す貸し球払い出し個数と同じにしたことを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の弾球遊技機。」(第2ページ第2欄第1〜5行)
(コ-2)「【0044】賞品球払い出し手段41が1回の払い出し動作で賞品球を払い出す規定払い出し個数は、25個に限定されるものではない。しかし、自動球貸し機からの球貸し要求により、賞品球払い出し手段41が貸し球の払い出しを兼用する場合には、例えば100円当たりの遊技球の貸し出し個数である25個に規定払い出し個数を設定することが望ましい。即ち、1回の払い出し動作で賞品球を払い出す規定払い出し個数を、球貸し時に1回の払い出し動作で貸し球を払い出す貸し球払い出し個数と同じにすることが望ましい。」(第5ページ第8欄第43行〜第6ページ第9欄第2行)
(コ-3)図面図2に本発明の実施形態を示す弾球遊技機の背面図が記載されている。(第7ページ)

サ.上記刊行物サには、次の事項が記載されている。
(サ-1)「【0092】すなわち、本実施形態においては、電気的制御装置110の役物制御部111と球排出装置制御部112とが協働することにより賞遊技媒体付与制御手段として機能するので、役物制御部111より排出制御信号が入力された場合に、球排出装置制御部112はセーフ球に基づく賞球排出を球排出装置25に行わせて、成立した賞に対応する賞遊技媒体を遊技者に付与でき、玉貸制御装置106と電気的制御装置110の球排出装置制御部112が協働することにより貸出遊技媒体付与制御手段として機能するので、玉貸制御部108より玉貸信号が入力された場合に、球排出装置制御部112はプリペイドカードの使用に基づく玉貸用の球排出を球排出装置25に行わせ、遊技者の貸出操作に基づく所定数の貸出遊技媒体を付与できる。これにより、当該パチンコ機1における唯一の球排出手段たる球排出装置25によって、セーフ球に基づく賞球排出動作と玉貸信号に基づく玉貸用の球排出動作とを行うことができる。」(第10ページ第18欄第25〜41行)
(サ-2)図面図3にパチンコ機の裏面図が記載されている。(第15ページ)
(サ-3)図面図8にパチンコ機の構成概略を示す機能ブロック図が記載されている。(第18ページ)

シ.上記刊行物シには、次の事項が記載されている。
(シ-1)「【0012】ガイドレール29によって円形に囲われた遊技部12aには、可変表示装置30や複数の入賞口31…等が設けられている。」(第3ページ第3欄第41〜43行)
(シ-2)「【0016】一方、球タンク44の底壁44aには下向きにスカート片48が垂設されている。このスカート片48は、図9に示したように、球タンク44の底壁44aと、該球タンク44から供給される景品球を流す導出樋49との間の隙間を塞ぐことによって、景品球が団子状になって球詰まりを起こす、というようなトラブルを防止するためのものである。」(第3ページ第4欄第37〜43行)
(シ-3)「【0020】球抜口52の下には球抜き樋51が臨んでいて、球抜口52から落下する景品球が全てこの球抜き樋51に流れ込む。図16はその球抜き樋51の斜視図である。球抜き樋51はカバー部51aを一体に有しており、該カバー部51aで前記ロック部材56をすっぽりと覆う。また、球抜き樋51の下端は機構板13側の球抜き樋62に連通しており、球抜口52から入った景品球が機構板13の球抜き樋62を通ってパチンコ機設置島内に排出される。」(第4ページ第5欄第32〜40行)
(シ-4)「【0025】上記上方弁66と下方弁67を制御する摺動子68は、球通路65の外側に設けたレール枠69に沿って上下方向に摺動するもので、該レール枠69に嵌まる基板70と、その基板70上に突設した上凸部71及び下凸部72とから構成される。摺動子68は常態で図18実線の下降位置にある。この下降位置にある状態で、摺動子68の上凸部71が上方弁66の後端に係合して球通路65の球入口を開放すると共に、下凸部72が下方弁67のローラ67bに当接して下方弁67の回動を阻止し、球止め爪67aを球通路65内に突出させて景品球を球通路65内にプールする。」(第4ページ第6欄第39〜49行)
(シ-5)図面図1にパチンコ機の正面図が記載されている。(第7ページ)
(シ-6)図面図2にパチンコ機の裏面図が記載されている。(第7ページ)
(シ-7)図面図11に景品球放出関連部品の主要部を示す断面図が記載されている。(第10ページ)
(シ-8)図面図14に球抜き装置を拡大して示す断面図が記載されている。(第11ページ)
(シ-9)図面図18に景品球ケースを示す拡大した断面図が記載されている。(第12ページ)

(2)対比・判断
ア.本件発明1について
本件発明1と上記(1)に摘記した事項から把握される刊行物アないし刊行物シに記載された発明とを比較すると、刊行物アないし刊行物シに記載された発明は、少なくとも本件発明1を特定する事項のうち「前記誘導切替手段により遊技球の誘導が球抜樋への誘導に切り替えられて誘導切替部より上流の遊技球が排出された際に、前記誘導切替部から賞球払出手段の球停止位置までの間に残存する残存遊技球数が、前記特定入賞口に設定された単位賞品球数の整数倍のみとなる」という構成(以下、「本件発明1特有の構成」という。)を備えておらず、上記構成は刊行物アないし刊行物シに記載された事項から自明であるとも、本件発明が出願された時点で周知であるということもできない。
そして、本件発明1は、本件発明1特有の構成により明細書記載の「入賞口に遊技球を強制的に入賞させて残存遊技球を排出させる際に、最後まで払出遊技球の不足が検出されず、エラーなく合理的に残存遊技球の抜き取り作業を行うことができる」(訂正明細書段落【0055】参照。)という顕著な効果を奏するものと認められる。
したがって、本件発明1は刊行物アないし刊行物シに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとすることができない。

イ.本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1を特定する事項にさらに限定を加えたものに相当するから、上記ア.で説示したと同様の理由により、刊行物アないし刊行物シに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとすることができない。

ウ.本件発明4について
本件発明4と上記(1)に摘記した事項から把握される刊行物アないし刊行物シに記載された発明とを比較すると、刊行物アないし刊行物シに記載された発明は、少なくとも本件発明4を特定する事項のうち「前記誘導切替手段により遊技球の誘導が球抜樋への誘導に切り替えられて誘導切替部より上流の遊技球が排出された際に、前記誘導切替部から賞球払出手段の球停止位置までの間に残存する残存遊技球数が、前記複数の入賞口毎に設定された単位賞品球数の公倍数のみとなる」という構成を備えておらず、上記構成は刊行物アないし刊行物シに記載された事項から自明であるとも、本件発明が出願された時点で周知であるということもできない。
そして、本件発明4は、当該構成により明細書記載の「複数の入賞口のうち、どの入賞口に遊技球を入賞させて残存遊技球の排出を行っても、最後まで払出遊技球の不足が検出されず、より確実にエラーのない残存遊技球の抜き取り作業を行うことができる」(訂正明細書段落【0059】参照。)という顕著な効果を奏するものと認められる。
したがって、本件発明4は刊行物アないし刊行物シに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとすることができない。

エ.本件発明5及び6について
本件発明5及び6は、本件発明4を特定する事項にさらに限定を加えたものに相当するから、上記ウ.で説示したと同様の理由により、刊行物アないし刊行物シに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとすることができない。

オ.本件発明7について
本件発明7は、本件発明1又は4を特定する事項にさらに限定を加えたものに相当するから、上記ア.及びウ.で説示したと同様の理由により、刊行物アないし刊行物シに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できたものとすることができない。

(3)申立人の主張について
ア.申立人・済藤隆義の主張について
申立人・済藤隆義は、その特許異議申立書第15ページ第8〜12行において、その甲第1号証(刊行物ア)の【0026】にストッパー96が記載されていることを根拠に、当該ストッパー26を適用して遊技球を一旦停止させることは、当業者が必要に応じてできることにすぎない旨主張し、当該主張を前提として、同第11ページ第8〜18行、第15ページ第25行〜第16ペ-ジ第10行において、刊行物アの【請求項1】及び【0017】の記載を根拠に、本件発明1特有の構成は、当業者の設計的事項である旨主張している。
しかしながら、刊行物アの【0026】の記載によれば、前記ストッパー96は賞球Aの存在を感知する感知アーム92の上下動を規制するためのものであり、感知アーム92が賞球Aの移動を制限するものでもないので、前記ストッパー96を適用して遊技球を一旦停止させようとする動機づけがあるとは認められず、かかる主張は根拠がない。

イ.申立人・榊原吉保の主張について
申立人・榊原吉保は、その特許異議申立書第14ページ第19行〜第16ページ第17行において、本件特許明細書の記載を根拠に本件発明1が解決しようとする課題が本件出願前において公知である旨主張し、当該主張を前提として、本件発明1特有の構成は、その甲第1ないし3号証(刊行物エないしカ)に記載された発明に基づいて、当業者が容易に想到し得たものである旨主張している。
しかしながら、本件特許明細書には、本件発明1が解決しようとする課題が本件出願前において公知である旨の記載はなく、当該課題が公知であることを示す証拠はないので、かかる主張は根拠がない。

ウ.申立人・町田彬の主張について
申立人・町田彬は、その特許異議申立書第29ページ第26行〜第31ページ第6行において、残存遊技球数を単位賞品球数よりも多くすることがその甲第1又は5号証(刊行物ク又はシ)に記載されていることを根拠に、本件発明1特有の構成は、技術の具体的適用に伴う設計変更に該当し、当業者の通常の創作能力の発揮の範囲内であって、格別な技術的困難性を有するものではなく、その奏する効果も刊行物ク又はシに記載の発明から当然に予測されるものである旨主張している。
しかしながら、刊行物ク及びシには、入賞口に遊技球を強制的に入賞させて残存遊技球を抜き取る旨の記載はなく、どのような技術を適用する際の設計変更であるのかが不明であり、かかる主張は根拠がない。

5.特許法第29条の2について
(1)先願明細書記載の発明
先願ス:特願2000―66057号(特開2001-252439号)
(申立人・町田彬の提出した甲第6号証)
上記先願スの願書に最初に添付した明細書及び図面(以下、「先願ス当初明細書」という。)には、次の事項が記載されている。
(ス-1)「【0026】 次に、本実施例の遊技盤10の表面構造の詳細を図2を参照して説明する。遊技盤10は、略長方形の木製の板状体であって、後述する裏機構盤102(図3参照)により保持され、その表面に設けられた外レール14と内レール15とにより略円形状に形成される遊技領域11内に、・・・左上入賞口19、右上入賞口20、左入賞口21、右入賞口22・・・等が配設されて、構成されている。」(公報第5ページ第7欄第23〜32行)
(ス-2)図面図2に遊技盤の正面図が記載されている。(公報第11ページ)
(ス-3)「この機構盤102の上部の左側には、タンク球切れ検知スイッチ104をタンク底部に備えた賞球タンク105と、この賞球タンク105に接続されるタンクレール106とが取り付けられている。このタンクレール106は前記機構盤102の右側部分において下方へ方向変換され、賞球タンク105に貯留されている補給球を下方へ流下させる。」(公報第6ページ第9欄第42〜48行)
(ス-4)図面図3にパチンコ機の裏面概略図が記載されている。(公報第12ページ)
(ス-5)図面図4にパチンコ機の一部切り欠き拡大平面図とその矢視図が記載されている。(公報第13ページ)
(ス-6)「【0039】 このタンクレール106の末端部分には補給球通路110が接続され、この補給球通路110は賞球・球貸し装置111に接続されている。」(公報第6ページ第10欄第33〜35行)
(ス-7)「【0042】 図9〜図11には賞球・球貸し装置111の内部構造が例示されている。まず、図9に示すように、賞球・球貸し装置111は、ガイドレール223上を流下される賞球あるいは貸し球を受け止め、この賞球あるいは貸し球を1個宛払い出すカム210と、・・・とから構成されている。」(公報第7ページ第11欄第30〜42行)
(ス-8)「【0050】 そして、遊技盤10上に配置されたいずれかの入賞口、例えば左上入賞口19に遊技球を入れてその左上入賞口通過検知スイッチ19sを通過させる。この検知信号に基づき10個の賞球個数データが枠制御部150へ送信され、枠制御部150は賞球排出信号の送信により賞球・球貸し装置111を作動させる。・・・なお、左上入賞口19の賞球個数は10個であるので、上記作業を繰り返して補給球通路110及び賞球・球貸し装置111内に残る補給球Tを排出することになる(図6参照)。」(公報第8ページ第13欄第40行〜第14欄第3行)
(ス-9)図面図9に賞球・玉貸し装置の説明図が記載されている。(公報第12ページ)
(ス-10)図面図10に賞球・玉貸し装置の構造説明図が記載されている。(公報第13ページ)
(ス-11)図面図11に賞球・玉貸し装置の矢視断面図が記載されている。(公報第14ページ)
(ス-12)「【0037】 図4〜図8にその詳細を示すように、下方へ方向変換されたタンクレール106の左側には補給球切れ検出スイッチ107が設置されている。」(公報第6ページ第9欄第49行〜第10欄第1行)
(ス-13)「【0038】 この補給球切れ検出スイッチ107の直近下部には、・・・球抜きレバー109bを備えた球抜き装置109が設置されている。・・・そして、補給球Tをタンクレール106から排出しないときには球抜きレバー109bの前面壁部109cがタンクレール106と一体となる。また、補給球Tをタンクレール106から排出するときにはピン109a接点を枢支点として球抜きレバー109bが上方へ旋回することにより、その前面壁部109cがタンクレール106から離れて補給球Tが流下する出口となる。この出口を経た補給球Tは島設備(図示略)へ排出される。」(公報第6ページ第10欄第17〜32行)
(ス-14)図面図1に本発明の一実施例たるパチンコ機の正面図が記載されている。(公報第12ページ)
(ス-15)図面図5にパチンコ機裏面の作動説明図とその矢視図が記載されている。(公報第13ページ)
(ス-16)図面図6にパチンコ機裏面の作動説明図とその矢視図が記載されている。(公報第14ページ)
(ス-17)図面図7にパチンコ機裏面の作動説明図が記載されている。(公報第14ページ)
(ス-18)図面図8に振り分け装置の作動説明図が記載されている。(公報第11ページ)
(ス-19)「【0047】 上述のパチンコ機1において、その裏面側の賞球タンク105、タンクレール106、補給球通路110及び賞球・球貸し装置111から全ての補給球Tを抜く場合がある。・・・【0048】 この場合、図4(a)に示すように補給球Tはガイドレール106、補給球通路110及び賞球・球貸し装置111内にほぼ並列状態で残っている。まず、ピン109a接点を枢支点として球抜きレバー109bを上方へ旋回させて、その前面壁部109cをタンクレール106から離して補給球Tが流下する出口とする(図5参照)。したがって、賞球タンク105及びタンクレール106内に残っている補給球Tはこの出口から排出され、この出口を経た補給球Tは島設備へ排出される。」(公報第8ページ第13欄第1〜18行)
(ス-20)「【0049】 このため、補給球通路110及び賞球・球貸し装置111内に残っている補給球T(通常25球とされている:貸し球1回分に相当)を排出するため、メンテナンスレバー108を作動させることになる。」(公報第8ページ第13欄第25〜28行)

上記記載事項(ス-1)ないし(ス-20)、及び、弾球遊技機において遊戯中の入賞に対して払出賞品球の不足を検出した場合にエラー動作を発生することが周知技術であることから、先願ス当初明細書には、次の発明(以下、「先願ス発明」という。)が実質的に記載されているものと認められる。
「遊技球の入賞可能な複数の入賞口が設けられた遊技盤と、払出用の遊技球を貯留する貯留タンクと、前記貯留タンクから遊技球を流下させる誘導樋と、前記誘導樋に連通する遊技球通路を有し、前記誘導樋を流下してきた遊技球を前記遊技球通路に設けた球停止位置で一旦停止させ、前記球停止位置を介して遊技球を払い出すように構成され、前記入賞口への一の入賞球に対して入賞口毎に予め設定された遊技球の払出個数を単位賞品球数として遊技球を払い出す賞球払出手段と、前記誘導樋を流下してきた遊技球を、前記賞球払出手段より上流の誘導樋に設けられた誘導切替部で、前記賞球払出手段への誘導又は誘導切替部より上流の遊技球を強制的に排出する球抜樋への誘導に切り替える誘導切替手段と、前記賞球払出手段から前記球停止位置を介して払い出された払出遊技球の個数をカウントする払出遊技球検出センサとを有し、前記払出遊技球検出センサにより前記賞球払出手段から払い出される払出遊技球の個数の不足が検出された場合にはエラー動作が発生する弾球遊技機において、前記誘導切替手段により遊技球の誘導が球抜樋への誘導に切り替えられて誘導切替部より上流の遊技球が排出された際に、前記誘導切替部から賞球払出手段の球停止位置までの間に残存する残存遊技球数が、貸し球1回分に相当する25球となるように前記誘導切替部より下流側の前記誘導樋長さ及び径、前記遊技球通路の長さ及び径、並びに前記球停止位置の設置位置が決定された弾球遊技機。」

(2)対比・判断
ア.本件発明1について
本件発明1と先願ス発明とを対比すると、残存遊技球数が、本件発明1においては特定入賞口に設定された単位賞品球数の整数倍のみとなるように構成されているのに対し、先願ス発明においては貸し球1回分に相当する25球となるように構成されている点において少なくとも両者の構成は相違する。
そして、上記相違点における本件発明1が有する構成は、周知技術・慣用技術の付加・転換であるとは認められないので、本件発明1は先願ス発明と同一であるとすることができない。

イ.本件発明2及び3について
本件発明2及び3は、本件発明1を特定する事項にさらに限定を加えたものに相当するから、上記ア.で説示したと同様の理由により、先願ス発明と同一であるとすることができない。

ウ.本件発明4について
本件発明4と先願ス発明とを対比すると、残存遊技球数が、本件発明4においては複数の入賞口毎に設定された単位賞品球数の公倍数のみとなるように構成されているのに対し、先願ス発明においては貸し球1回分に相当する25球となるように構成されている点において少なくとも両者の構成は相違する。
そして、上記相違点における本件発明4が有する構成は、周知技術・慣用技術の付加・転換であるとは認められないので、本件発明4は先願ス発明と同一であるとすることができない。

エ.本件発明5及び6について
本件発明5及び6は、本件発明4を特定する事項にさらに限定を加えたものに相当するから、上記ウ.で説示したと同様の理由により、先願ス発明と同一であるとすることができない。

オ.本件発明7について
本件発明7は、本件発明1又は4を特定する事項にさらに限定を加えたものに相当するから、上記ア.及びウ.で説示したと同様の理由により、先願ス発明と同一であるとすることができない。

(3)申立人の主張について
ア.申立人・町田彬の主張について
申立人・町田彬は、その特許異議申立書第46ページ第22行〜第48ページ第9行において、その甲第6号証(先願ス当初明細書)の図4、5の記載を根拠に、先願ス当初明細書には、残存遊技球数を単位賞品球数である10個の2倍である20個とすることが開示されている旨主張している。
しかしながら、図4、5には、2列の補給球通路110内の残存遊技球全てが図示されてはいない。そして、各列内の残存遊技球の位置は遊技球2分の1個分のずれがあるので、仮に一方の列における残存遊技球数が10個であるとしても、他方の列における残存遊技球数は11個である可能性があり、残存遊技球数が20個であると断定することはできない。さらに、先願ス当初明細書には、残存遊技球数に関して、単位貸球数と同じ数とする旨の記載はある(上記摘記事項(ス-20)参照)ものの、単位賞品球数との関係を表す記載は認められないので、上記図4、5に図示された残存遊技球の数が意図的に定められたものとも認められない。
よって、上記申立人の主張は採用できない。

6.特許法第36条第6項第1号及び第2号について
ア.各請求項にエラー動作を発生する点が含まれておらず、発明の詳細な説明に記載されたものではない点については、上記訂正事項a、dにより解消した。なお、賞球払出手段を停止させることはエラー動作の一例であると認められるので、請求項にエラー動作の内容として賞球払出手段の停止が記載されないことをもって、発明の詳細な説明に記載されたものではないとすることはできない。

イ.残存遊技球数を特定するための単位賞品球数と入賞口との関係が明確でない点については、上記訂正事項a、dにより解消した。

ウ.払出遊技球検出センサの位置が明確でない点については、上記訂正事項a、dにより解消した。

エ.空切り防止スイッチは、本件明細書の記載からはエラー動作を発生させるものとは認められないので、空切り防止スイッチが請求項に含まれていないために発明が不明確になっているとは認められない。

7.むすび
以上のとおりであるから、特許異議の申立ての理由及び証拠によっては、本件発明1ないし7についての特許を取り消すことはできない。
また、他に本件発明1ないし7についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
なお、申立人・町田彬が提出した平成16年7月30日付けの上申書を検討したが、上記結論に影響を与えない。
よって、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
弾球遊技機
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 遊技球の入賞可能な複数の入賞口が設けられた遊技盤と、
払出用の遊技球を貯留する貯留タンクと、
前記貯留タンクから遊技球を流下させる誘導樋と、
前記誘導樋に連通する遊技球通路を有し、前記誘導樋を流下してきた遊技球を前記遊技球通路に設けた球停止位置で一旦停止させ、前記球停止位置を介して遊技球を払い出すように構成され、前記入賞口への一の入賞球に対して入賞口毎に予め設定された遊技球の払出個数を単位賞品球数として遊技球を払い出す賞球払出手段と、
前記誘導樋を流下してきた遊技球を、前記賞球払出手段より上流の誘導樋に設けられた誘導切替部で、前記賞球払出手段への誘導又は誘導切替部より上流の遊技球を強制的に排出する球抜樋への誘導に切り替える誘導切替手段と、
前記賞球払出手段から前記球停止位置を介して払い出された払出遊技球の個数をカウントする払出遊技球検出センサとを有し、
前記払出遊技球検出センサにより前記賞球払出手段から払い出される払出遊技球の個数の不足が検出された場合にはエラー動作が発生する弾球遊技機において、
前記複数の入賞口の少なくとも1つを特定入賞口とするとともに、前記誘導切替手段により遊技球の誘導が球抜樋への誘導に切り替えられて誘導切替部より上流の遊技球が排出された際に、前記誘導切替部から賞球払出手段の球停止位置までの間に残存する残存遊技球数が、前記特定入賞口に設定された単位賞品球数の整数倍のみとなるように前記誘導切替部より下流側の前記誘導樋長さ及び径、前記遊技球通路の長さ及び径、並びに前記球停止位置の設置位置が決定されたことを特徴とする弾球遊技機。
【請求項2】 整数倍が1倍であることを特徴とする請求項1に記載の弾球遊技機。
【請求項3】 整数倍が2倍以上であることを特徴とする請求項1に記載の弾球遊技機。
【請求項4】 遊技球の入賞可能な複数の入賞口が設けられた遊技盤と、
払出用の遊技球を貯留する貯留タンクと、
前記貯留タンクから遊技球を流下させる誘導樋と、
前記誘導樋に連通する遊技球通路を有し、前記誘導樋を流下してきた遊技球を前記遊技球通路に設けた球停止位置で一旦停止させ、前記球停止位置を介して遊技球を払い出すように構成され、前記入賞口への一の入賞球に対して入賞口毎に予め設定された遊技球の払出個数を単位賞品球数として遊技球を払い出す賞球払出手段と、
前記誘導樋を流下してきた遊技球を、前記賞球払出手段より上流の誘導樋に設けられた誘導切替部で、前記賞球払出手段への誘導又は誘導切替部より上流の遊技球を強制的に排出する球抜樋への誘導に切り替える誘導切替手段と、
前記賞球払出手段から前記球停止位置を介して払い出された払出遊技球の個数をカウントする払出遊技球検出センサとを有し、
前記払出遊技球検出センサにより前記賞球払出手段から払い出される払出遊技球の個数の不足が検出された場合にはエラー動作が発生する弾球遊技機において、
前記誘導切替手段により遊技球の誘導が球抜樋への誘導に切り替えられて誘導切替部より上流の遊技球が排出された際に、前記誘導切替部から賞球払出手段の球停止位置までの間に残存する残存遊技球数が、前記複数の入賞口毎に設定された単位賞品球数の公倍数のみとなるように前記誘導切替部より下流側の前記誘導樋長さ及び径、前記遊技球通路の長さ及び径、並びに前記球停止位置の設置位置が決定されたことを特徴とする弾球遊技機。
【請求項5】 公倍数が最小公倍数であることを特徴とする請求項4に記載の弾球遊技機。
【請求項6】 公倍数が最小公倍数の2倍以上であることを特徴とする請求項4に記載の弾球遊技機。
【請求項7】 賞球払出手段が貸球払出手段を兼ね、球貸条件が成立した場合には、前記賞球払出手段より遊技球を貸し出すことを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の弾球遊技機。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、弾球遊技機に関し、特には遊技機内の遊技球を強制的に排出する構造を有する弾球遊技機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、パチンコ遊技機等の弾球遊技機には、払出用の遊技球を貯留する貯留タンクから誘導樋を介して流下してきた遊技球を、賞球払出装置(賞球払出手段)の球停止位置で一旦停止させておき、遊技盤に設けられた入賞口に入賞球があると、入賞球の個数に応じた個数の賞品球を払い出す構造になっているものが多い。なお、前記入賞口においては、一の入賞球に対して払い出される遊技球の個数が単位賞品球数(単位払出球数とも称される。以下同じ。)として予め設定されている。また、賞品球の払出しに際して、前記払出装置には、払い出す遊技球をカウントする払出遊技球検出センサが設けられており、払出遊技球の個数が入賞口への入賞球数に応じた個数(単位賞品球数の整数倍)になると遊技球の払出しを停止するようになっている。さらに、前記払出遊技球検出センサにおいて、払出遊技球の個数が不足している場合にはエラーとなり、エラー報知手段によりエラー報知したり、払出装置の動作を停止させたりして、球不足による弊害が波及しないように構成されている。
【0003】
また、このような弾球遊技機においては、遊技機メーカーにおける検査(特に払出装置動作検査)終了後や遊技店による故障メンテナンス時等に、遊技機内の遊技球を全て抜き出さねばならない場合がある。前記球抜き方法としては、払出装置より上流の誘導樋に誘導切替部を設け、誘導切替手段の操作で遊技球を前記誘導切替部から払出装置への誘導又は遊技機外へ連通する球抜樋への誘導に切り替えられるようにしておき、前記切り替えによって、誘導切替部より上流の遊技球を遊技機外に排出させるものが一般的である。ところで、前記誘導切替手段の操作では、誘導切替部から払出装置の球停止位置までの間に残存する遊技球(残存遊技球)によっては排出することができない。そのため、従来では、検査等の終了後に遊技盤を開けて入賞口に遊技球を強制的に入賞させて払出装置を作動させる等して、前記残存遊技球を単位入賞球数ずつ抜き取っている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の弾球遊技機においては、球抜き時に最後に抜き出される(払い出される)遊技球の数が前記単位賞品球数以下となった場合には、前述した払出遊技球検出センサによって払出遊技球の不足が検出されてエラーとなり、前記エラー動作が発生してしまう。このようなエラー動作が発生した場合、払出装置の停止状態を解除したり、払出装置を強制的に作動させたり、エラー状態を解除したりする等の面倒な作業が必要となり、球抜き作業に多大なる労力を費していた。
【0005】
本発明はこのような状況に鑑みなされたもので、合理的に遊技機内の遊技球の抜き取りができる弾球遊技機を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち、請求項1の発明は、遊技球の入賞可能な複数の入賞口が設けられた遊技盤と、払出用の遊技球を貯留する貯留タンクと、前記貯留タンクから遊技球を流下させる誘導樋と、前記誘導樋に連通する遊技球通路を有し、前記誘導樋を流下してきた遊技球を前記遊技球通路に設けた球停止位置で一旦停止させ、前記球停止位置を介して遊技球を払い出すように構成され、前記入賞口への一の入賞球に対して入賞口毎に予め設定された遊技球の払出個数を単位賞品球数として遊技球を払い出す賞球払出手段と、前記誘導樋を流下してきた遊技球を、前記賞球払出手段より上流の誘導樋に設けられた誘導切替部で、前記賞球払出手段への誘導又は誘導切替部より上流の遊技球を強制的に排出する球抜樋への誘導に切り替える誘導切替手段と、前記賞球払出手段から前記球停止位置を介して払い出された払出遊技球の個数をカウントする払出遊技球検出センサとを有し、前記払出遊技球検出センサにより前記賞球払出手段から払い出される払出遊技球の個数の不足が検出された場合にはエラー動作が発生する弾球遊技機において、前記複数の入賞口の少なくとも1つを特定入賞口とするとともに、前記誘導切替手段により遊技球の誘導が球抜樋への誘導に切り替えられて誘導切替部より上流の遊技球が排出された際に、前記誘導切替部から賞球払出手段の球停止位置までの間に残存する残存遊技球数が、前記特定入賞口に設定された単位賞品球数の整数倍のみとなるように前記誘導切替部より下流側の前記誘導樋長さ及び径、前記遊技球通路の長さ及び径、並びに前記球停止位置の設置位置が決定されたことを特徴とする。
【0007】
【0008】
請求項2の発明は、請求項1において、整数倍が1倍であることを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1において、整数倍が2倍以上であることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、遊技球の入賞可能な複数の入賞口が設けられた遊技盤と、払出用の遊技球を貯留する貯留タンクと、前記貯留タンクから遊技球を流下させる誘導樋と、前記誘導樋に連通する遊技球通路を有し、前記誘導樋を流下してきた遊技球を前記遊技球通路に設けた球停止位置で一旦停止させ、前記球停止位置を介して遊技球を払い出すように構成され、前記入賞口への一の入賞球に対して入賞口毎に予め設定された遊技球の払出個数を単位賞品球数として遊技球を払い出す賞球払出手段と、前記誘導樋を流下してきた遊技球を、前記賞球払出手段より上流の誘導樋に設けられた誘導切替部で、前記賞球払出手段への誘導又は誘導切替部より上流の遊技球を強制的に排出する球抜樋への誘導に切り替える誘導切替手段と、前記賞球払出手段から前記球停止位置を介して払い出された払出遊技球の個数をカウントする払出遊技球検出センサとを有し、前記払出遊技球検出センサにより前記賞球払出手段から払い出される払出遊技球の個数の不足が検出された場合にはエラー動作が発生する弾球遊技機において、前記誘導切替手段により遊技球の誘導が球抜樋への誘導に切り替えられて誘導切替部より上流の遊技球が排出された際に、前記誘導切替部から賞球払出手段の球停止位置までの間に残存する残存遊技球数が、前記複数の入賞口毎に設定された単位賞品球数の公倍数のみとなるように前記誘導切替部より下流側の前記誘導樋長さ及び径、前記遊技球通路の長さ及び径、並びに前記球停止位置の設置位置が決定されたことを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項4において、公倍数が最小公倍数であることを特徴とする。
【0012】
請求項6の発明は、請求項4において、公倍数が最小公倍数の2倍以上であることを特徴とする。
【0013】
請求項7の発明は、請求項1ないし6のいずれかにおいて、賞球払出手段が貸球払出手段を兼ね、球貸条件が成立した場合には、前記賞球払出手段より遊技球を貸し出すことを特徴とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下添付の図面に基づき本発明の好適な実施形態を説明する。図1は本発明の一実施例に係る遊技機全体の正面図、図2は同遊技機の遊技盤の正面図、図3は同遊技機の遊技盤の裏面図、図4は同遊技機の制御系を簡略に示すブロック図、図5は同遊技機全体の裏面図、図6は同遊技機の裏機構板を示す図、図7は裏機構における誘導切替部付近を示す図、図8は裏機構板に設けられるケースレールの分解斜視図、図9は誘導切替手段の構造を示す斜視図、図10は誘導切替手段による球抜き時を示す図、図11は賞球払出装置を示す図、図12は賞球払出装置の分解斜視図、図13は貸球払出装置を示す図、図14は貸球払出装置の分解斜視図である。
【0015】
図1ないし図4に示す弾球遊技機は、この発明の一実施例に係るパチンコ遊技機1である。このパチンコ遊技機1は、枠体2の内側に遊技盤3が着脱交換可能に収容されており、その遊技盤3の縁に遊技球の外側ガイドレール4及び内側ガイドレール5が略円形に立設され、前記内側ガイドレール5によって囲まれた遊技領域6に、遊技球の入賞可能な入賞口等が設けられている。この実施例では、前記遊技盤3の遊技領域6に、次に説明するような複数の入賞口が設けられている。
【0016】
まず、遊技領域6の中心線上に設けられた表示装置9の下方に、上側第1種始動入賞口10及び普通電動役物で可動片11a,11bを有する下側第1種始動入賞口11、特別電動役物である大入賞口15が配設されており、その下方にはアウト口17が配設されている。また、上方両側にはランプ風車18a,18b、その下方に普通図柄変動開始用左ゲート19及び普通図柄変動開始用右ゲート21、その下方に風車22a,22bが設けられており、その下方に左袖入賞口23と右袖入賞口25が配設され、さらには前記大入賞口15の両側に左落とし入賞口27と右落とし入賞口29が配設されている。
【0017】
また、前記遊技機1の前面側には、遊技状態を報知するランプ表示器35、払い出された遊技球を受けるための上側球受け皿36、該上側球受け皿36の飽和時に遊技球を受けるための下側球受け皿37、遊技者による操作ハンドル92の発射操作に応じて遊技球を遊技領域6に向けて弾発発射する発射装置91等がそれぞれ組み付けられている。
【0018】
前記発射装置91は、図1及び図4から理解されるように、操作レバー92と、該操作レバー92の操作により駆動する発射モータ93と、該発射モータ93の駆動により間欠的に揺動して遊技球を弾発発射する打球杆94とを有している。前記発射装置91により発射された発射球は、前記遊技盤面に立設された外側誘導レール4と内側誘導レール5間で構成される発射球誘導路を介して遊技領域6に誘導されるようになっている。前記発射球誘導路により遊技領域6に誘導された遊技球は、転動しつつ下方へ落下し、前記各入賞口に入賞するか、或いは何処にも入賞しなければ前記アウト口17から遊技盤3の裏側へ排出されるように構成される。
【0019】
なお、図中の表示装置9に関し符号41は数字,アルファベット,記号或いは絵(キャラクタ)等の図柄を変動表示及び停止表示(最終的に確定停止表示する前の仮停止表示を含む、以下同じ)可能な普通図柄表示装置、43は同じく特別図柄表示装置、45は普通図柄表示装置41の7セグメントLED等からなる普通図柄表示部、47はLED等からなる普通図柄変動数記憶表示器、49は表示装置9の窓枠部、50は特別図柄表示装置43の液晶表示器(TFT-LCDモジュール)等からなる画像表示部、51はLED等からなる特別図柄変動数記憶表示器である。この実施例の前記画像表示部50の表示画面は、横に並ぶ3つの表示領域に分割されており、各表示領域で判定結果表示用の特別図柄がそれぞれ変動表示及び停止表示可能とされている。また、前記画像表示部50には、前記特別図柄に加えて背景画像(キャラクタ,背景,文字等を含む。)が表示されることもあり、該背景画像が特別図柄の変動開始等の所定条件に起因して変動表示可能となっている場合もある。
【0020】
さらに、大入賞口15に関し符号61は開閉板、63は特定領域入賞口であり、また、符号38は上側球受け皿36に遊技球を払い出す遊技球払出口である。なお、前記特別図柄表示装置43については、画像表示部50が前記したように液晶表示器に限られるものではなく、LED、EL、CRTやその他発光体で構成されていてもよい。
【0021】
前記遊技盤3の背面(裏面)には、入賞口への遊技球の入賞を検出する検出スイッチ等が設けられている。この実施例では、図3に示すように、検出スイッチが各入賞口に対してそれぞれ設けられている。例えば、前記左袖入賞口23と右袖入賞口25の入賞球を検出する左袖入賞口用検出スイッチ78と右袖入賞口用検出スイッチ79、前記左落とし入賞口27と右落とし入賞口29の入賞球を検出する左落とし入賞口用検出スイッチ81と右落とし入賞口用スイッチ82が、それぞれ対応する遊技盤背面に設けられている。
【0022】
また、前記第1種始動入賞口10,11に入賞した球を検出する特別図柄変動開始スイッチ(始動入賞口センサ)55a,55bが入賞球用通路に設けられており、該入賞球の検出によって前記特別図柄表示装置43の図柄変動を開始するようになっている。さらに、前記遊技盤3の大入賞口15の背面側には、前記特定領域入賞口63への入賞球を検出する特定入賞球検出スイッチ(特定領域センサ)65が設けられ、該入賞球の検出により大入賞口15を再度開ける継続権利が成立するようにされている。また、大入賞口15内の略中央には、前記大入賞口15に入賞し、かつ前記特定領域入賞口63に入賞しなかった入賞球を検出する入賞球数カウントスイッチ(カウントセンサ)67が設けられている。
【0023】
前記各入賞口への遊技球の入賞を各検出スイッチが検出すると、後述する賞球払出装置(賞球払出手段)140によって、入賞球数に応じた所定数の賞品球が払い出されるようになっている。各入賞口には、一の入賞球に対して払い出される遊技球数が単位賞品球数(単位払球数)として設定されており、一入賞球毎に単位賞品球数を払い出す、又は一定時間の入賞球数に応じて単位賞品球数の整数倍の遊技球を払い出すようになっている。また、この実施例では、入賞口の種類によって2種類の異なる単位賞品球数が設定されている。具体的には、大入賞口15への入賞球に対しては、一入賞球あたり14球の単位賞品遊球数、その他の入賞口への入賞球に対しては、一入賞球あたり7球の単位賞品球数が設定されている。
【0024】
なお、各入賞口に設定される単位賞品球数の種類としては、前記したような2種類に限らず、1種類、又は3種類以上の単位賞品球数が設定されていてもよい。また、単位賞品球数の球数も適宜でよい。さらに、この実施例では、前記のように各入賞口のそれぞれに検出スイッチを設けているが、この発明の弾球遊技機はこれに限られるものではない。例えば、各入賞口の入賞球を1箇所に集めて検出し、その入賞球の累積計算を行うようにしてもよい。
【0025】
前記した検出スイッチの他に遊技盤背面に設けられているものとしては、前記下側第1種始動入賞口11の可動片11a,11bを開閉する第1種始動入賞口用ソレノイド53と、前記大入賞口15の開閉板61を開閉する大入賞口ソレノイド59、前記特定領域入賞口63の開閉扉(図示せず)を所定条件時に開閉するための特定領域開放用ソレノイド64、前記普通図柄変動開始用左ゲート19及び普通図柄変動開始用右ゲート21を通過する遊技球を検出する普通図柄変動開始スイッチ56,57等がある。
【0026】
なお、該普通図柄変動開始スイッチ56,57で両ゲート19,21を通過する遊技球を検出することによって、前記普通図柄表示装置41の図柄変動を開始させるようになっている。そして、前記普通図柄表示装置41の普通図柄表示部45において図柄変動した後に確定表示された図柄が予め設定されている特定の図柄であった場合には、小当たり(普通図柄当たり)となり、前記下側第1種始動入賞口11のの可動片11a,11bの拡開開放を所定時間行うようになっている。
【0027】
前記大入賞口15の作動について説明すれば、前記第1種始動入賞口10,11に遊技球が入賞し、特別図柄変動開始スイッチ55a,55bによって入賞球が検出されると、前記特別図柄表示装置43の画像表示部50の各表示領域で特別図柄の変動を開始する。そして、所定時間変動後、予め設定された順で特別図柄が変動停止して、停止図柄の組合せが確定表示される。なお、図柄変動パターン等によっては、特別図柄の確定表示以前に、いわゆるリーチ状態となったり、いわゆるリーチ予告、当たり予告等が行われたりすることがある。
【0028】
そして、前記確定表示された停止図柄の組合せが、予め決められた特定の大当たり図柄組合せ、例えば、同一図柄の組合せからなる通称ぞろ目であると、大当たり状態(特別遊技状態)に移行する。大当たり状態になると、前記大入賞口15の開閉板61が開いて遊技領域6表面を落下してくる遊技球を受け止め、大入賞口15内へ入賞可能にし、該大入賞口15への入賞があると、前記したように所定数の遊技球が賞品球として払い出される。
【0029】
前記普通図柄表示装置41及び特別図柄表示装置43における図柄変動の制御は、図4に示す主制御回路121及び該回路121と前記表示装置9とを接続する表示制御回路125によって行われる。なお、図4中の符号140は後述する賞球払出装置(賞球払出手段)、160は同じく後述する貸球払出装置である。
【0030】
前記主制御回路(主制御基板)121は、CPU,RAM,ROM,複数のカウンタを備えたコンピュータと、該コンピュータと表示制御回路125等を結ぶ入出力回路と、前記コンピュータと大入賞口15に接続される中継回路等を結ぶ入出力回路等で構成される。前記CPUは、制御部,演算部,各種カウンタ,各種レジスタ,各種フラグ等を備え、演算制御を行う他、大当たりの発生確率や小当たり(下側第1種始動入賞口11の拡開開放を行う普通図柄当たり)の発生確率を定める乱数等も生成している。また、前記RAMは、特別図柄変動開始スイッチ55a,55bの検出信号及び普通図柄変動開始スイッチ56,57の検出信号用の記憶領域,CPUで生成される各種乱数値用の記憶領域,各種データを一時的に記憶する記憶領域やフラグ,CPUの作業領域を備えている。さらに、前記ROMには、遊技上の制御プログラムや制御データが書き込まれている他、大当たり及び小当たりの判定値等が書き込まれている。
【0031】
また、前記表示制御回路125は、CPU,RAM,ROMを備えたコンピュータと、該コンピュータと前記主制御回路121を結ぶ入力回路と、前記コンピュータと普通図柄表示装置41及び特別図柄表示装置43を結ぶ出力回路等で構成される。前記CPUは、内部に制御部,演算部,各種カウンタ,各種レジスタ,各種フラグ等を有し演算制御を行うようになっている。また、前記RAMは、各種データの記憶領域と前記CPUによる作業領域等を有している。さらに、前記ROMには、前記画像表示部50への表示データや各種表示プログラム等の図柄データが書き込まれている。
【0032】
前記遊技機1の裏側には、図5に示すような裏機構を備えており、払出用の遊技球を溜める貯留タンク101、誘導樋95、賞球払出装置(賞球払出手段)140、貸球払出装置160、払出制御基板(払出制御回路)118等が配設された裏機構板100を有している。なお、図5中の符号103は枠用外部出力端子、104は枠用外部出力端子基板、105は枠飾りランプ中継基板、106は受電基板、107は空切り防止スイッチ(球切れ検知スイッチ)、108は空切り防止スイッチ基板(球切れ検知スイッチ基板)、109は盤面用外部出力端子、110は盤面用外部出力基板、111は中央カバー、112は音声制御基板、113はフォト分配基板、114は電源基板、115はランプ制御基板、116はエラー表示部、117はミドルプレート、119は発射装置制御基板、120は下基板ベース、121は主制御基板、122はカードインターフェイス接続部、123,124は電源プラグである。
【0033】
前記裏機構のうち、特に遊技球の払出しに関して、図6ないし14を用いて説明する。図6の裏機構板100に示すように、弾球遊技機の設置島から供給された払出用の遊技球は、まず、裏機構板100に配設されている遊技球の貯留タンク101に貯留される。貯留タンク101には誘導樋95と連通する連通口が設けられており、遊技球が誘導樋95に流れるようになっている。誘導樋95は、前記貯留タンク101から流れてきた遊技球を賞球払出装置(賞球払出手段)140及び貸球払出装置160に誘導するものであり、この実施例では、貯留タンク101の連通口に一端が接続されるタンクレール102と、該タンクレール102の他端に一端が接続されて他端が賞球払出装置140及び貸球払出装置160に至るケースレール130との2部材で構成されている。また、この実施例の誘導樋95は、遊技球を効率よく誘導できるように、タンクレール102内部分では、平行に配列された3列の樋で構成されており、各列の樋内で遊技球が1列になってケースレール130へ流下するようになっている。そして、この実施例では、前記3列の誘導樋95は、ケースレール内130で1列の賞球払出用誘導樋95aと2列の貸球払出用誘導樋95bとに振り分けられている。なお、誘導樋95はタンクレール102とケースレール130の2部材からなっていなくてもよく、1部材又は3部材以上からなっていてもよい。タンクレール102及びケースレール130を流下してきた遊技球は、後述する誘導切替部96の上を通り、空切り防止スイッチ107を経て、賞球払出装置(賞球払出手段)140又は貸球払出装置160に達する。
【0034】
前記賞球払出装置(賞球払出手段)140は、図11の上面図(a)、正面図(b)、右側面図(c)及び図12に示すように、上端がケースレールの賞球払出誘導樋95aと通じ、下端が図示しない払出通路を介して遊技球払出口38に通じる遊技球通路151を内部に有し、該遊技球通路151の途中を回動可能な賞球ストッパー147で開閉するようにされるとともに、払出遊技球の数を払出遊技球検出センサ145で検出するものであって、次の構成部品よりなる。すなわち、前記遊技球通路151の形成された賞球ケース本体141と、該賞球ケース本体141に蓋をするように組み合わされる賞球本体カバー144と、前記遊技球通路151の脇に設けられるフォトセンサ等からなる払出遊技球検出センサ145及びそのカバー146と、前記賞球ケース本体141及び賞球本体カバー144間に設けられる賞球ソレノイド142、賞球アーム143、賞球ストッパー147、賞球リンク148、賞球ストッパー軸149及び賞球リンク軸150等で構成されている。
【0035】
この例の賞球ソレノイド142は、伸縮可能な作動部材142aを下向きにして配置され、その作動部材142aに賞球アーム143が係止されている。前記賞球ストッパー147は、賞球ストッパー軸149によって賞球ケース本体141に回動可能に取り付けられ、その回動によって先端の爪147aが前記遊技球通路151途中の開口151aから遊技球通路151に対し進入(突出)及び退避(非突出)可能とされている。また、前記賞球リンク148は、前記賞球ストッパー147の一部と係合する係合ピン148aと、前記賞球アーム143と係合する係合凹部148bを有するものであって、前記賞球リンク軸150によって回動可能に賞球ケース本体142に軸着され、この賞球アーム143の回動によって前記賞球ストッパー147が回動するようになっている。
【0036】
賞球払出装置140における具体的な作動について述べる。前記賞球払出用誘導樋95aから賞球払出装置140の遊技球通路151に入った遊技球は、図11の(b)図に示すように、遊技球通路151内へ突出状態となっている賞球ストッパー147によって、一旦、賞球払出装置140の球停止位置で停止する。なお、ここでは、賞球ストッパー147の突出部分が賞球払出装置140における球停止位置となっている。ここで、前記遊技盤3に設けられた各入賞口に遊技球の入賞があったことを検出スイッチが検出すると、前記払出制御回路118から信号が出されて賞球ソレノイド142が作動し、賞球ストッパー147が回動して非突出状態となり、遊技球が払い出される。また同時に、払出遊技球検出センサ145によって払出遊技球のカウントを行う。そして、前記したように単位賞品球数(又は単位賞品球数の整数倍)に達すると、再び、賞球ソレノイド142の作動によって賞球ストッパー147が回動して遊技球通路151内に突出して遊技球の払出しを止める。なお、払い出された遊技球(賞品球)は、前記遊技球払出口38から上側球受け皿36に供給される。
【0037】
前記貸球払出装置160は、図13の上面図(a)、正面図(b)、右側面図(c)及び図14に示すように、球貸ケース本体161、球貸スクリュー162を有する球貸モーター163、球貸本体カバー164、払出遊技球検出センサ(ここではフォトセンサ)165、球貸ケース軸受166、球貸ケース軸受カバー167等で構成されている。前記貸球払出装置160は、球貸モーター163が作動することによって、球貸スクリュー162が回転するようになっており、貸球払出用誘導樋95bから貸球払出装置160に入って球貸スクリュー162の羽部分に乗った遊技球が徐々に下方へ移動して、球払出口(図示せず)から遊技球が払い出されるようになっている。
【0038】
そして、遊技者が現金を投入したり、ボタン等の操作を行ったりするなどによって、球貸条件が成立した場合には、前記払出制御回路118から信号が出されて前記球貸モーター163を作動し、遊技球が払い出されるようになっている。また同時に、払出遊技球検出センサ165が作動し、払出遊技球のカウントを行い、所定数に達すると、球貸モーター163を停止して遊技球の払出しを止めるようになっている。払い出された遊技球(貸球)は、前記遊技球払出口38から上側球受け皿36に供給される。
【0039】
なお、前記賞球払出装置140及び貸球払出装置160の払出遊技球検出センサ145,165において、払出遊技球の個数が不足している場合にはエラーとなり、エラー報知手段によりエラー報知したり、払出装置の動作を停止させたりして、球不足による弊害が波及しないように構成されている。また、前記賞球払出装置140及び貸球払出装置160は、この実施例で記載したものに限らず、適宜の構造のものを使用すればよい。例えば、ここでは払出遊技球検出スイッチとしてフォトセンサを使用しているが、近接スイッチ等の他の検出手段を使用してもよい。
【0040】
次に、遊技機メーカーにおける検査(特に払出装置動作検査)終了後や遊技店による故障メンテナンス時等に、遊技機内の遊技球を全て抜き出す際の作動について、図6ないし10を用いて説明する。この遊技機1は、前記誘導樋95を流下してきた遊技球を、前記賞球払出装置(賞球払出手段)140及び貸球払出装置160等への誘導と、後述する球抜樋134への誘導とに切り替える誘導切替手段131が前記レールケース130に設けられている。
【0041】
この実施例のケースレール130について、図7の正面図、図8の分解図、図9の誘導切り替手段の主要部斜視図及び図10の正面図を用いて説明する。前記ケースレール130は、ケースレール本体130aと、第1仕切部材130bと、第2仕切部材130cと、ケースレール本体カバー130dとよりなり、ケースレール130内部が、誘導樋95及び球抜樋134に区画形成されている。前記ケースレール130内の誘導樋95は第1仕切部材130b及び第2仕切部材130cで仕切られた3列とされ、該ケースレール130内における誘導樋95の途中に形成された誘導切替部96より下流位置で1列の賞球払出用誘導等95aと2列の貸球払出用誘導樋95bに振り分けられている。
【0042】
前記誘導切替部96は、ケースレール130における誘導樋95途中の傾斜が緩やかな部分に設けられ、該傾斜が緩やかな部分下面に形成された球抜用開口97を有し、該球抜用開口97を通った遊技球を球抜用開口97直下の球抜樋134へ誘導するようになっている。なお、この実施例では、前記誘導切替部96における第1仕切部材130b及び第2仕切部材130cの球抜用開口縁98は、後記する誘導切替部材132の誘導切替板132aが過剰に上方へ回動するのを規制する回動規制部となっている。
【0043】
前記切替手段131は、前記玉抜き用開口97を開閉させて遊技球の誘導を切り替えるものであって、誘導切替部材132と誘導切替ロック部材136と、誘導切替操作レバー133とより構成される。誘導切替部材132は、前記球抜用開口97を下から塞ぐことのできる大きさの誘導切替板132aと、該誘導切替板132の回動軸から下方に垂下しケースレール130外へ突出するおもり部132bとよりなる。この誘導切替部材132は、前記球抜用開口97付近におけるケースレール本体130aとケースレール本体カバー130d間に誘導切替板132a側を上下回動可能にして軸着され、おもり部132bの重みで誘導切替板132a側が自然に上方へ回動して前記回動規制部としての球抜き用開口縁98に下方から当たるようにされている。そして、前記誘導切替板132aが球抜き用開口縁98に当たることによって、さらなる上方回動が規制されるとともに、前記球抜用開口97を塞ぐようになっている。また前記誘導切替板132aの下方回動により、球抜用開口97を開放できるようになっている。なお、前記おもり部132bの下面には誘導切替ロック部材136と係合する係合突条132cが形成されている。
【0044】
誘導切替ロック部材136は、前記誘導切替板132aの自由な下方回動を阻止するとともに球抜き時に誘導切替板132aの下方回動を可能にするものである。この実施例の誘導切替ロック部材136は、ケースレール本体130aとケースレール本体カバー130d間に上下回動可能に軸着された上下回動可能な部材とされ、該部材136の上面には前記おもり部132bの係合突条132cと解除可能に係合する係合爪136aが形成され、また該部材136の下面にはケースレール130の外面と接触してこの誘導切替ロック部材136の係合爪136a側を上向きに付勢するバネ片136bが形成されている。前記係合爪136aは、前記誘導切替板132aが球抜用開口97を塞いだ状態となっているときに、前記おもり部132b下面の係合突条132cと係合して、前記誘導切替板132aの下方回動を阻止する。また、前記バネ片136bに抗する誘導切替部材132の下方回動によって係合爪136aが係合突条132cから離れ、前記おもり部132bの上方回動、すなわち誘導切替板132aの下方回動を可能にする。
【0045】
誘導切替操作レバー133は、前記誘導切替部材132を下方回動させるためのものであって、前記誘導切替ロック部材136の回動軸から離れる端部136c付近と係合する係合ピン133aが横方向に突出して形成された構造からなり、前記ケースレール130外面に軸着されて誘導切替ロック部材136へ向かう横方向に回動可能とされている。前記誘導切替操作レバー133を誘導切替ロック部材136側へ回動させると、前記係合ピン133aが下方へ回動して前記誘導切替ロック部材136を下方へ押し、それによって誘導切替ロック部材136が下方回動して前記係合爪136aと係合突条132cの係合を解除する。符号133bは回動軸着用筒部であり、前記ケースレール本体130a外面のボス135に回動可能に嵌合する。
【0046】
球抜き時、前記のように誘導切替操作レバー133を誘導切替ロック部材136側へ回動させて、誘導切替ロック部材136の係合爪136aと切替操作部材132の係合突条132cとの係合を解除すると、前記誘導切替板132a上に位置する遊技球の重さによって誘導切替板132aが下方へ回動して球抜き用開口97が開放され、前記誘導切替部96より上流の遊技球が球抜き用開口97から球抜樋134へ誘導されて遊技機1外へ強制的に排出される。
【0047】
このとき、遊技機1内における前記誘導切替部96(この例では球抜き用開口97)から賞球払出手段(ここでは賞球払出装置140)の球停止位置(残存遊技球中における最下流の遊技球停止位置)までの間Lには、まだ遊技球が残存しており、この残存遊技球を遊技機外へ排出する必要がある。そのため、この発明の遊技機1では、前記誘導切替部96から賞球払出装置140の球停止位置までの間Lは、単位賞品球数の整数倍の残存遊技球が残るように、誘導樋95の長さ及び径、賞球払出装置140の遊技球通路151の長さ及び径、賞球ストッパー147の設置位置等が決定されている。この実施例では、大入賞口15を球抜きのための特定入賞口としており、大入賞口15(特定入賞口)に入賞があった際の単位賞品球数の2倍数、具体的には28球の遊技球が残存遊技球として遊技機内のL間に残るようにされている。
【0048】
このように、残存遊技球数が大入賞口15への入賞に対する単位賞品球数の整数倍のみとなっているため、従来から行っているように入賞口に遊技球を強制的に入賞させて賞球払出装置140を作動させることによって残存遊技球を排出する際に、大入賞口15に遊技球を入賞させていけば、球不足によるエラーが発生せずに全ての残存遊技球を抜き取ることができる。また、この実施例の大入賞口15のように、残存遊技球を排出する際に遊技球を入賞させる入賞口を特定入賞口として設定しておけば、遊技盤3の入賞口毎に異なる単位賞品球数が設定されていても、特定入賞口に入賞させることにより残存遊技球を間違いなく完全に、かつ効率的に排出することができる。さらに、この実施例では、特定入賞口となる大入賞口15に対する単位賞品球数の2倍数が残存遊技球数として設定されているため、大入賞口15に遊技球を2回だけ入賞させれば全ての残存遊技球を排出することができ、何回も遊技球を入賞させる手間が省けるという利点もある。
【0049】
なお、この実施例では、残存遊技球数は大入賞口15への入賞に対する単位賞品球数の2倍であったが、これに限るものではなく、他の整数倍であってもよい。例えば、前記単位賞品球数の1倍とすれば、大入賞口15に遊技球を1回だけ入賞させれば全ての残存遊技球を排出することができる。また、残存遊技球数は大入賞口以外の何れかの入賞口の単位賞品球数の整数倍であってもよい。そのとき、球抜きに利用される当該入賞口を特定入賞口として、マークをつける等して他の入賞口と区別できるようにしておくのが好ましい。
【0050】
さらに、残存遊技球数が、前記複数の入賞口において、入賞口毎に設定された2以上又は全部の単位賞品球数の最小公倍数となるようにされていてもよい。このようにしておけば、球抜き時にどの入賞口に遊技球を入賞させても、球不足によるエラーを発生することなく遊技球を完全に排出することができるので、球抜き作業に利用する入賞口がどれであるか迷う必要がない。また、前記最小公倍数であれば、球抜き時に遊技球を入賞させる回数も抑えることができ、迅速に遊技球の排出を行うことができる。
【0051】
なお、残存遊技球数が前記したような単位賞品球数の1倍数又は最小公倍数でなく、単位賞品球数の2倍以上の整数倍、又は単位賞品球数の最小公倍数の2倍以上の整数倍のみとなるようにされていてもよい。このときには、遊技者が遊技を行っている際に、多くの遊技球を遊技機内の誘導樋や賞球払出手段に貯留しておくことができるという利点がある。
【0052】
また、前記誘導切替手段131による球抜樋134への遊技球の誘導後は、誘導切替部96と貸球払出装置160の球停止位置(球貸スクリューの内部等における遊技球の最下流停止位置)間にも遊技球が残存しているが、この残存遊技球の排出についても、前記賞球払出装置140の場合のように、1回の球貸動作で払い出される遊技球数(単位貸球数)の整数倍が残存遊技球数となるようにしておけば、外部払出指令装置等から球貸条件成立のダミー信号を送って単位貸球数ずつ残存遊技球を排出する際などに、球不足によるエラーが発生せず、さらに効率的に遊技球を排出させることができる。
【0053】
また、この実施例では、前記賞球払出装置140における払出及び払出停止を、前記賞球ソレノイド142による賞球ストッパー147の回動によって行っているが、この発明はそれに限るものではない。例えば、この実施例における前記球貸払出装置160に用いた球貸スクリュー162と同様のスクリュー機構を用いて賞球払出装置の払出及び払出停止を行うようにしてもよい。その場合でも、前記球停止位置は残存遊技球中の最下流に位置する遊技球の停止位置である。
【0054】
また、この実施例では、賞球払出装置と貸球払出装置はそれぞれ別々に設けられていたが、これに限るものではない。例えば、賞球払出装置(賞球払出手段)が貸球払出装置を兼ねており、前記したような球貸条件が成立した場合には、賞球払出手段より遊技球を貸し出す(払い出す)ようになっていてもよい。
【0055】
【発明の効果】
以上図示し説明したように、請求項1に係る弾球遊技機によれば、遊技機メーカーにおける検査(特に払出装置動作検査)終了後や遊技店による故障メンテナンス時等で、遊技機内の遊技球を全て抜き出す必要がある場合において、遊技球の誘導切り替えによって誘導切替部より上流の遊技球が排出された後に、誘導切替部から賞球払出手段の球停止位置までの間に残存する残存遊技球が、複数の入賞口のうち予め決定された特定入賞口に対する単位賞品球数の整数倍のみとなるように前記誘導切替部より下流側の誘導樋長さ及び径、遊技球通路の長さ及び径、並びに前記球停止位置の設置位置が決定されているため、作業者が残存遊技球の抜き取りに際して、入賞口を間違える可能性が低くなるとともに、その後、入賞口に遊技球を強制的に入賞させて残存遊技球を排出させる際に、最後まで払出遊技球の不足が検出されず、エラーなく合理的に残存遊技球の抜き取り作業を行うことができる。
【0056】
【0057】
さらに、請求項2に係る遊技機においては、残存遊技球数が、入賞口或いは特定入賞口に予め設定された単位賞品球数の1倍数のみとなるように構成されているため、1球の入賞で残存遊技球を全て抜き取ることができ、効率的に残存遊技球を排出させることができる。
【0058】
また、請求項3に係る遊技機においては、残存遊技球数が、入賞口或いは特定入賞口に予め設定された単位賞品球数の2以上の整数倍のみとなるように構成されているため、多くの遊技球を誘導樋や賞球払出手段に貯留することができる。
【0059】
さらに、請求項4に係る遊技機においては、残存遊技球数が、複数設けられた入賞口毎に設定された単位賞品球数の公倍数のみとなるように誘導切替部より下流側の誘導樋長さ及び径、遊技球通路の長さ及び径、並びに球停止位置の設置位置が決定されているため、複数の入賞口のうち、どの入賞口に遊技球を入賞させて残存遊技球の排出を行っても、最後まで払出遊技球の不足が検出されず、より確実にエラーのない残存遊技球の抜き取り作業を行うことができる。
【0060】
さらに、請求項5に係る遊技機においては、残存遊技球数が、入賞口毎に設定された単位賞品球数の最小公倍数のみとなるように構成されているため、少ない作業で残存遊技球を全て抜き取ることができ、効率的に残存遊技球を排出させることができる。
【0061】
また、請求項6に係る遊技機においては、残存遊技球数が、入賞口毎に設定された単位賞品球数の最小公倍数の2以上の整数倍のみとなるように構成されているため、多くの遊技球を誘導樋や賞球払出手段に貯留することができる。
【0062】
加えて、請求項7に係る遊技機においては、賞球払出装置が貸球払出装置を兼ねているため、球貸条件が成立した場合には、賞球払出手段(賞球払出装置)より遊技球を貸し出すことができるので、賞球払出装置と貸球払出装置を別々に設ける必要がない。そのため、残存遊技球の抜き取り時に、誘導切替部から賞球払出装置までの残存遊技球さえ排出すればよくなり、より効率的に残存遊技球の抜き取りを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の一実施例に係る遊技機全体の正面図である。
【図2】
同遊技機の遊技盤の正面図である。
【図3】
同遊技機の遊技盤の裏面図である。
【図4】
同遊技機の制御系を簡略に示すブロック図である。
【図5】
同遊技機全体の裏面図である。
【図6】
同遊技機の裏機構板を示す図である。
【図7】
裏機構における誘導切替部付近を示す図である。
【図8】
裏機構板に設けられるケースレールの分解斜視図である。
【図9】
誘導切り替手段の主要部斜視図である。
【図10】
誘導切替手段による球抜き時を示す図である。
【図11】
賞球払出装置を示す図である。
【図12】
賞球払出装置の分解斜視図である。
【図13】
貸球払出装置を示す図である。
【図14】
貸球払出装置の分解斜視図である。
【符号の説明】
1 遊技機
3 遊技盤
15 大入賞口
95 誘導樋
101 貯留タンク
131 誘導切替手段
132 誘導切替部
134 球抜樋
140 賞球払出手段(賞球払出装置)
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-10-18 
出願番号 特願2000-388920(P2000-388920)
審決分類 P 1 651・ 537- YA (A63F)
P 1 651・ 161- YA (A63F)
P 1 651・ 121- YA (A63F)
最終処分 維持  
前審関与審査官 塩崎 進  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 白樫 泰子
渡戸 正義
登録日 2003-04-04 
登録番号 特許第3415118号(P3415118)
権利者 株式会社サンセイアールアンドディ
発明の名称 弾球遊技機  
代理人 後藤 憲秋  
代理人 吉田 吏規夫  
代理人 後藤 憲秋  
代理人 吉田 吏規夫  

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