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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A01B
管理番号 1111168
異議申立番号 異議2003-72356  
総通号数 63 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 1998-11-04 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-09-19 
確定日 2004-11-24 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3389046号「畦塗り機」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3389046号の請求項1,2に係る特許を取り消す。 
理由 第一.手続の経緯
本件特許第3389046号の請求項1ないし3に係る発明は、平成9年4月18日に特許出願され、平成15年1月17日にその特許権の設定登録がなされたものであって、その後、特許異議申立がなされて取消しの理由が通知され、その指定期間内である、平成16年8月31日に訂正請求がなされたものである。

第二.訂正の適否
[1].訂正の内容
<1>.訂正事項a
特許請求の範囲の請求項1の記載を、
「トラクタの懸架機構に連結される連結部を有する機枠と、
この機枠の後方に配置され、一端部に畦塗り用の泥土を切削して跳ね上げる多数の切削刃を有する回転自在のロータリー及びこのロータリーの後方に位置してこのロータリーの各切削刃にて跳ね上げられた泥土を旧畦に塗り付けて旧畦を修復する回転自在の畦塗り体を有する可動フレームと、
前記機枠に前記可動フレームを移動自在に連結し、この可動フレームの前記ロータリー及び畦塗り体を前記トラクタの車輪より外側方に突出させた畦塗り作業位置及び前記トラクタの内側方に後退させた非畦塗り作業位置にそれぞれ移動可能にした平行リンクと、
前記機枠に回動自在に取り付けられ、前記ロータリー及び畦塗り体を畦塗り作業位置及び非畦塗り作業位置に移動させた前記平行リンクを移動不能に支持する平行リンク支持手段とを具備し、
前記平行リンクは、所定の間隔をおいて平行に配設される一対のリンクにて形成され、
この一対のリンクの一端部が前記機枠の両側部に設けた上下方向の取付軸にてそれぞれ回動自在に取り付けられているとともに、その他端部が前記可動フレームの両側部に前記両側部の取付軸と略同一間隔をおいて設けた上下方向の連結軸にてそれぞれ回動自在に取り付けられており、
畦塗り作業時には、前記平行リンクを形成する前記一対のリンクの前記取付軸を中心とする一方向への回動にて前記可動フレームが前記機枠に対して離間した後に接近するように外側方に向かって水平移動され、この水平移動した可動フレームが前記平行リンク支持手段による前記平行リンクの支持にて固定され、この可動フレームの固定にて前記ロータリー及び畦塗り体が畦塗り作業位置に位置決めされ、
非畦塗り作業時には、前記平行リンクを形成する前記一対のリンクの前記取付軸を中心とする他方向への回動にて前記可動フレームが前記機枠に対して離間した後に接近するように内側方に向かって水平移動され、この水平移動した可動フレームが前記平行リンク支持手段による前記平行リンクの支持にて固定され、この可動フレームの固定にて前記ロータリー及び畦塗り体が非畦塗り作業位置に位置決めされるものであり、
前記可動フレームは、前記ロータリーを上下方向に位置調節可能に支持した調節手段を有し、 前記連結部は、左右両側のロワアームの先端部に設けられたロワピンと、マストの先端部に設けられた連結ピンとにて形成され、 前記可動フレームの前記ロータリー及び前記畦塗り体を非畦塗り作業位置に移動する際に、前記ロータリーが前記機枠の一方側の前記ロワピンまたは前記ロワアームに当接して非畦塗り作業位置に移動できない場合には、前記調節手段の操作により前記ロータリーが前記機枠の一方側の前記ロワピンまたは前記ロワアームから離間した位置に下降され、前記ロータリーが前記機枠の一方側の前記ロワピンまたは前記ロワアームに当接することなく非畦塗り作業位置に移動されることを特徴とする畦塗り機。」と訂正する。

<2>.訂正事項b
請求項3の削除

<3>.訂正事項c
明細書の段落【0005】の記載を
「【課題を解決するための手段】 請求項1記載の畦塗り機は、トラクタの懸架機構に連結される連結部を有する機枠と、この機枠の後方に配置され、一端部に畦塗り用の泥土を切削して跳ね上げる多数の切削刃を有する回転自在のロータリー及びこのロータリーの後方に位置してこのロータリーの各切削刃にて跳ね上げられた泥土を旧畦に塗り付けて旧畦を修復する回転自在の畦塗り体を有する可動フレームと、前記機枠に前記可動フレームを移動自在に連結し、この可動フレームの前記ロータリー及び畦塗り体を前記トラクタの車輪より外側方に突出させた畦塗り作業位置及び前記トラクタの内側方に後退させた非畦塗り作業位置にそれぞれ移動可能にした平行リンクと、前記機枠に回動自在に取り付けられ、前記ロータリー及び畦塗り体を畦塗り作業位置及び非畦塗り作業位置に移動させた前記平行リンクを移動不能に支持する平行リンク支持手段とを具備し、前記平行リンクは、所定の間隔をおいて平行に配設される一対のリンクにて形成され、この一対のリンクの一端部が前記機枠の両側部に設けた上下方向の取付軸にてそれぞれ回動自在に取り付けられているとともに、その他端部が前記可動フレームの両側部に前記両側部の取付軸と略同一間隔をおいて設けた上下方向の連結軸にてそれぞれ回動自在に取り付けられており、畦塗り作業時には、前記平行リンクを形成する前記一対のリンクの前記取付軸を中心とする一方向への回動にて前記可動フレームが前記機枠に対して離間した後に接近するように外側方に向かって水平移動され、この水平移動した可動フレームが前記平行リンク支持手段による前記平行リンクの支持にて固定され、この可動フレームの固定にて前記ロータリー及び畦塗り体が畦塗り作業位置に位置決めされ、非畦塗り作業時には、前記平行リンクを形成する前記一対のリンクの前記取付軸を中心とする他方向への回動にて前記可動フレームが前記機枠に対して離間した後に接近するように内側方に向かって水平移動され、この水平移動した可動フレームが前記平行リンク支持手段による前記平行リンクの支持にて固定され、この可動フレームの固定にて前記ロータリー及び畦塗り体が非畦塗り作業位置に位置決めされるものであり、前記可動フレームは、前記ロータリーを上下方向に位置調節可能に支持した調節手段を有し、前記連結部は、左右両側のロワアームの先端部に設けられたロワピンと、マストの先端部に設けられた連結ピンとにて形成され、前記可動フレームの前記ロータリー及び前記畦塗り体を非畦塗り作業位置に移動する際に、前記ロータリーが前記機枠の一方側の前記ロワピンまたは前記ロワアームに当接して非畦塗り作業位置に移動できない場合には、前記調節手段の操作により前記ロータリーが前記機枠の一方側の前記ロワピンまたは前記ロワアームから離間した位置に下降され、前記ロータリーが前記機枠の一方側の前記ロワピンまたは前記ロワアームに当接することなく非畦塗り作業位置に移動されるものである。」と訂正する。 (なお、下線部分は訂正箇所を示す。)

<4>.訂正事項d
明細書の段落【0017】、【0018】、【0019】、【0084】、【0085】の削除

[2].訂正要件充足性の検討
訂正事項aは、特許請求の範囲の請求項1の明瞭でない記載の釈明、及び減縮を目的とするものであり、【0003】、【0018】、【0021】等に記載されている事項が付加されたものであるから、当該訂正は前記明瞭でない記載の釈明、及び減縮を目的とした訂正に該当し、また、訂正事項bは請求項の削除であるから特許請求の範囲の減縮を目的とするものであり、訂正事項cは、上記訂正事項aと整合を図るものであるから、明瞭でない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、訂正事項dは、請求項3の削除に伴う明りょうでない記載の釈明に該当し、何れも新規事項の追加には該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

[3].まとめ
したがって、上記訂正は、特許法第120条の4第2項及び同条第3項で準用する同法第126条第2項及び第3項の規定に適合するので当該訂正を認める。


第三.特許異議申立についての判断
[1].本件の請求項1、2に係る発明
前記「第二」で示したように前記訂正が認められるものであるから、本件の請求項1、2に係る発明(以下「本件発明1、2」という)は、前記訂正に係わる訂正明細書の特許請求の範囲の請求項1、2に記載されたとおりのものである。

[2].特許法第29条第2項の検討
<1>.当審で通知した取消理由において引用した刊行物は、(A)特開平8-149902号公報(以下「刊行物A」という)、及び、平行リンクによる移動手段が周知であることを示す刊行物として、(B)実願昭58-116822号(実開昭60-27609号)のマイクロフィルム(以下「刊行物B」という)、(C)特開平5-3706号公報(以下「刊行物C」という)、(D)実願昭60-166364号(実開昭62-74505号)のマイクロフィルム(以下「刊行物D」という)、(E)実願昭55-97227号(実開昭57-22557号)のマイクロフィルム(以下「刊行物E」という)、(F).実願昭56-72942号(実開昭57-187857号)のマイクロフィルム(以下「刊行物F」という)、ロータリーを上下方向に位置調節可能にすることが畦塗り機において周知であることを示す刊行物として、(G)特開平9-98601号公報(以下「刊行物G」という)、(H)実願平5-12358号(実開平6-64403号)のCD-ROM(以下「刊行物H」という)、(J)特開平8-37804号公報(以下「刊行物J」という)等を例示し、また、平行リンクの移動軌跡が円弧状軌跡となることが周知であることを示す刊行物として、「馬場秋次郎編著、「機械工学必携」、(第7版、第483頁、「12.6. 平行運動機構」、1986年7月25日、株式会社三省堂発行)」(以下「刊行物K」という)を例示し、さらに、伸縮手段として複数設けられた係合部の係合位置を選択することによることを示す刊行物として、特開平8-336558号公報(第9図)(以下「刊行物L」という)、実開昭60-13125号公報(第5図)(以下「刊行物M」という)例示したものである。

<2>.刊行物A記載事項
(A-1).「【0006】 【課題を解決するための手段】請求項1記載の畦塗り機は、トラクタに連結する三点連結部を有する機枠と、この機枠の後側部に取着された上下方向の回動中心軸と、この回動中心軸に進行方向に対して左右方向に回動自在に取着され旧畦に向かって畦塗り用の泥土を跳ね上げる回転自在のロータリー及びこのロータリーから跳ね上げられた泥土を旧畦に塗り付けて整畦する回転自在の畦塗り体を有する可動機枠と、前記機枠に設けられ前記回動中心軸を中心として前記可動機枠を左右方向に回動し旧畦の畦塗り作業位置にロータリー及び畦塗り体を配置してロックするロック手段と、を具備したものである。」
(A-2).「【0022】1は機枠で、この機枠1は基板2を有し、この基板2の上方部には左右の側板3を介して支持板4が一体に固着され、この支持板4の左右方向の略中間上部にはマスト5が前方に向かって一体に突設され、このマスト5の突出端部には左右方向の連結ピン6が取着されている。
【0023】また、前記基板2と支持板4との間の前側左右部には左右のヒッチアーム7がそれぞれ前方に向かって一体に突設され、この左右のヒッチアーム7の突出端部には左右方向のロワピン8がそれぞれ一体に固着されている。そして、前記マスト5の連結ピン6及び前記左右のヒッチアーム7のロワピン8にてトラクタTに連結する三点連結部が構成されている。」
(A-3).「【0034】また、前記ミッションケース35の前側部には前記第1の入力軸36を回転自在に貫通した左右方向の第1の伝動ケース39が進行方向の右側下方に向かって傾斜して一体に突設され、この第1の伝動ケース39の右側下端部には旧畦際の泥土を旧畦Aに向かって跳ね上げるロータリー40が回転自在に軸架されている。このロータリー40は、前記第1の伝動ケース39の下端部に軸受体41にて回転自在に軸架された前後方向の回転軸42を有し、この回転軸42に固着された略三角形状のフランジ43の周側部には旧畦際の泥土を旧畦Aに向かって跳ね上げる複数の跳上爪44がフランジ43の外方に向かって放射状に突設されている。」
(A-4).「【0039】また、前記回転軸54には前記ロータリー40の各跳上爪44にて跳ね上げられた泥土を旧畦Aに塗り付けて旧畦Aを整畦する畦塗り体58が抜き差し自在の連結ボルト59にて軸方向に位置調節自在に連結されている。この畦塗り体58は、前記ロータリー40の後方に位置して配設されるもので、前記回転軸54に軸方向に位置調節自在に嵌合された筒状の連結体60を有し、この連結体60には前記旧畦Aの上面部を整畦する円筒状の上面塗り部61及び前記旧畦Aの側面部を整畦する円錐形状の側面塗り部62を固着して形成されている。」
(A-5).「【0048】そして、前記機枠1の前記回動中心軸33を中心として前記可動機枠34を回動し、この機枠1の固定孔78に前記ミッションケース35の連通孔79を連通させ、この固定孔78及び連通孔79に固定ピン80を挿脱自在に挿着することにより、機枠1の後方部に可動機枠34が配置されて固定され、畦塗り作業をしない畦塗り機の運搬等に備えるようになっている。」
(A-6).「【0050】トラクタTのトップリンク及び左右のロアリンクにクイックカプラー32を連結し、このクイックカプラー32に機枠1の三点連結部すなわち、連結ピン6及び左右のロワピン8をそれぞれ連結する。また、トラクタTのPTO軸(図示せず)に動力伝達軸を介して入力連結軸11を連結する。また、圃場の状況に応じてゲージ輪68を上下方向に高さを調節してゲージ輪68を所定の接地位置に設定する。また、スタンド30を地面から上方に離間する。」
(A-7).してみると、刊行物Aには以下の発明(以下「引用発明」という)が記載されている。
「切削刃を有するロータリーと、該ロータリーの後方に回転自在の畦塗り体と具備する可動機枠が、マストの連結ピン、ヒッチアームのロワピン等から成る三点連結部にてトラクタに連結される機枠に対して移動可能とされており、当該移動範囲は、畦塗り作業時には、ロータリー、及び畦塗り体がトラクタの車輪より外側方になるように、また、非畦塗り作業時にはロータリー、及び畦塗り体がトラクタの後方になるように回転移動され、ロック手段にて位置固定される畦塗り機。」

<3>.引用発明と本件発明1との比較
(1).構成の対応関係
(i).引用発明における「機枠」は、本件発明1の「機枠」に対応する。
(ii).引用発明における「三点連結部」は、本件発明1において、ロワアーム、ロワピン、連結ピン等からなる「連結部」に対応する。
(iii).引用発明における「可動機枠」は、機枠に連結され、ロータリー及び畦塗り体を具備するものであるから、本件発明1の「可動フレーム」に対応する。
(iv).引用発明における「回動中心軸」及び「固定ピン80」による可動機枠回転手段は、可動機枠に具備された、ロータリー及び畦塗り体をトラクタの車輪より外側方に突出させた畦塗り位置及び前記トラクタの内側方に後退させた非畦塗り位置に移動させる、可動フレーム移動手段において、本件発明1の「平行リンク」と共通する。
(2).引用発明と本件発明1との一致点
「トラクタの懸架機構に連結される連結部を有する機枠と、
この機枠の後方に配置され、一端部に畦塗り用の泥土を切削して跳ね上げる多数の切削刃を有する回転自在のロータリー及びこのロータリーの後方に位置してこのロータリーの各切削刃にて跳ね上げられた泥土を旧畦に塗り付けて旧畦を修復する回転自在の畦塗り体を有する可動フレームと、
前記機枠に前記可動フレームを移動自在に連結し、この可動フレームの前記ロータリー及び畦塗り体を前記トラクタの車輪より外側方に突出させた畦塗り作業位置及び前記トラクタの内側方に後退させた非畦塗り作業位置にそれぞれ移動可能にした可動フレーム移動手段とを具備し、
前記連結部は、左右両側のロワアームの先端部に設けられたロワピンと、マストの先端部に設けられた連結ピンとにて形成される畦塗り機。

(3).引用発明と本件発明1との相違点
(i).可動フレーム移動手段として、本件発明1では、リンクを固定する支持手段を備えた平行リンク、すなわち、所定の間隔をおいて平行に配設される一対のリンクにて形成され、この一対のリンクの一端部が固定部である機枠の両側部に設けた上下方向の取付軸にてそれぞれ回動自在に取り付けられているとともに、その他端部が可動部である前記可動フレームの両側部に前記両側部の取付軸と略同一間隔をおいて設けた上下方向の連結軸にてそれぞれ回動自在に取り付けられており、移動に際しては前記平行リンクを形成する前記一対のリンクの前記取付軸を中心とする他方向への回動にて可動部である可動フレームが固定部である機枠に対して離間した後に接近するように水平移動され、この水平移動した可動部である可動フレームが平行リンク支持手段による平行リンクの支持にて固定され、当該固定位置に可動部である可動フレームが位置決めされるものであるのに対し、引用発明では、可動部と固定部との位置を固定するロック手段を備え、可動部は固定部に対して軸回動による移動手段である点。
(ii).ロータリーを上下方向に位置調節可能にして、ロータリーを非畦塗り位置に移動した際に機枠のロワアームなどに当接する場合には、ロワアームから離間した位置に下降させる調節手段を、本件発明1は備えているのに対し、引用発明は備えていない点

(4).相違点の検討.
(i).相違点(i)について、
トラクタに連結される作業機械において、当該作業機械をトラクタの車輪に対して左右方向に移動する手段として平行リンクを用いることは、刊行物B〜Fに記載されているように周知の事項であり、しかも平行リンクが、所定の間隔をおいて平行に配設されたリンクの端部が回動自在となっており、ピン等のロック手段により移動不能とすることも前記刊行物B〜Fに示されるように周知の構成であり、さらに当該リンクが一方から他方へ移動する際の移動軌跡として、円弧状軌跡を描くことは、刊行物Kに示されるように周知の移動軌跡である。
そして、引用発明における可動フレームの移動手段として、前記刊行物B〜Fに示されるような周知の平行リンクを用いることは、当業者ならば容易に想到できることである。
したがって、当該相違点は格別のものではない。
(ii).相違点(ii)について、
トラクタ等に牽引されて作業を行う作業機器を、作業位置、非作業位置に変位させることは、畦塗り機を含め前記刊行物A〜Fに示されるように周知事項であり、しかも当該変位に際して障害物が存在する場合には当該障害物を回避する回避手段を講じることは技術常識であり、当該回避手段として、障害物に対して上、下、前、後位置方向に回避する回避手段は周知の事項であるから、作業位置、非作業位置変位に際して障害物を、上、下、前、後の如何なる位置にて回避するかは、障害物の状況に応じて選択する単なる設計的事項である。
そして、ロータリーに対して障害物が存在する場合にはロータリーに前記回避手段を適用することは、ロータリーを上下方向に位置変位させることが前記刊行物Gに示されるように既に行われていることを考慮すれば、当業者が容易に想到できることである。
してみると、当該相違点は格別のものではない。
(iii).まとめ
以上のように各相違点は当業者が容易に為し得る程度の事項であり、これらを総合的に判断しても格別のものとは認められない。

(5).むすび
したがって、本件発明1は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。


<4>.引用発明と本件発明2との対比
(1).本件発明2は、本件発明1の平行リンク支持手段についてさらに限定したものであるので、当該限定事項について検討する。
(2).平行リンクにおける変位、設定位置の保持のために、平行四辺形の一方の対角位置と他方の対角位置に回転自在、且つ伸縮自在な対角部材を設けることは、刊行物B、C、Fに見られるように平行リンクにおいて周知の事項であり、しかも、伸縮手段として複数設けられた係合部の係合位置を選択することによるものも、刊行物L,Mに示されるように周知の伸縮手段である。
そして、平行リンクにおける変位、設定位置の保持のために必要とされる対角部材の伸縮手段として、複数設けられた係合部との係合による前記周知の伸縮手段を採用することは当業者が適宜為しえる程度の事項である。

(3).まとめ
したがって、本件発明2は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。


第三.結論
以上のように、本件発明1,2は、上記刊行物A、及び周知事項の例として挙げた刊行物B〜Mに記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、当該発明に係る特許は拒絶の査定をしなければならない出願についてなされたものである。
したがって、本件発明1、2についての特許は、特許法第113条第2項に該当し、取り消されるべきものである。
よって結論のとおり決定する。


なお、
本件発明1の実施例には「ロータリーを上下方向に位置調節可能に支持した調節手段」として調節手段56が記載されている。
しかしながら、ロータリー33、及び畦塗り体42は、各々フレーム本体19を回転軸として回転する回動板21、及び第3の伝動ケース38に装着されて、回動板21と伝動ケース38とが調節手段56の長さに依存して決まる角度をなす構成であるから、前記調節手段56の長さを変化させることは、前記角度の変化をもたらしても、ロータリー33、及び畦塗り体42のどちらが上昇、下降するのかを決するものではない。
例えば、両者の重量が同じであるならば、単に角度が開くだけであると認められ、この点明細書には十分に記載されていない。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
畦塗り機
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 トラクタの懸架機構に連結される連結部を有する機枠と、
この機枠の後方に配置され、一端部に畦塗り用の泥土を切削して跳ね上げる多数の切削刃を有する回転自在のロータリー及びこのロータリーの後方に位置してこのロータリーの各切削刃にて跳ね上げられた泥土を旧畦に塗り付けて旧畦を修復する回転自在の畦塗り体を有する可動フレームと、
前記機枠に前記可動フレームを移動自在に連結し、この可動フレームの前記ロータリー及び畦塗り体を前記トラクタの車輪より外側方に突出させた畦塗り作業位置及び前記トラクタの内側方に後退させた非畦塗り作業位置にそれぞれ移動可能にした平行リンクと、
前記機枠に回動自在に取り付けられ、前記ロータリー及び畦塗り体を畦塗り作業位置及び非畦塗り作業位置に移動させた前記平行リンクを移動不能に支持する平行リンク支持手段とを具備し、
前記平行リンクは、所定の間隔をおいて平行に配設される一対のリンクにて形成され、
この一対のリンクの一端部が前記機枠の両側部に設けた上下方向の取付軸にてそれぞれ回動自在に取り付けられているとともに、その他端部が前記可動フレームの両側部に前記両側部の取付軸と略同一間隔をおいて設けた上下方向の連結軸にてそれぞれ回動自在に取り付けられており、
畦塗り作業時には、前記平行リンクを形成する前記一対のリンクの前記取付軸を中心とする一方向への回動にて前記可動フレームが前記機枠に対して離間した後に接近するように外側方に向かって水平移動され、この水平移動した可動フレームが前記平行リンク支持手段による前記平行リンクの支持にて固定され、この可動フレームの固定にて前記ロータリー及び畦塗り体が畦塗り作業位置に位置決めされ、
非畦塗り作業時には、前記平行リンクを形成する前記一対のリンクの前記取付軸を中心とする他方向への回動にて前記可動フレームが前記機枠に対して離間した後に接近するように内側方に向かって水平移動され、この水平移動した可動フレームが前記平行リンク支持手段による前記平行リンクの支持にて固定され、この可動フレームの固定にて前記ロータリー及び畦塗り体が非畦塗り作業位置に位置決めされるものであり、
前記可動フレームは、前記ロータリーを上下方向に位置調節可能に支持した調節手段を有し、
前記連結部は、左右両側のロワアームの先端部に設けられたロワピンと、マストの先端部に設けられた連結ピンとに形成され、
前記可動フレームの前記ロータリー及び前記畦塗り体を非畦塗り作業位置に移動する際に、前記ロータリーが前記機枠の一方側の前記ロワピンまたは前記ロワアームに当接して非畦塗り作業位置に移動できない場合には、前記調節手段の操作により前記ロータリーが前記機枠の一方側の前記ロワピンまたは前記ロワアームから離間した位置に下降され、前記ロータリーが前記機枠の一方側の前記ロワピンまたは前記ロワアームに当接することなく非畦塗り作業位置に移動される
ことを特徴とする畦塗り機。
【請求項2】 平行リンク支持手段は、一対のリンク及びこの一対のリンクの両端部間を結んで形成される平行四辺形の一方の対角位置に配設される支持片にて形成され、この支持片は一端部を機枠の一方の取付軸に回動自在に取り付けるとともに、他側部に可動フレームの他方の連結軸に着脱自在に係合する軸方向に離間した複数の係合部を有する、
ことを特徴とする請求項1記載の畦塗り機。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は畦塗り機に係り、主として水田を区画する旧畦を畦塗り修復して整畦するものに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の畦塗り機としては、たとえば、特開平8-9706号公報に記載されているように、トラクタに連結する機枠に左右方向の伝導ケースを突設し、この伝導ケースに畦際の土を掘土する回転自在の掘土ロータリ及び前記トラクタの車輪の外側方に突出して前記掘土ロータリからの掘土を旧畦上に落下させる誘導部材をそれぞれ固定し、この誘導部材の後方に位置して前記機枠に固定された前後方向の伝導ケースに旧畦上に落下された盛土を掻き込んで畦塗り整畦する整畦体を回転自在に軸架した構成が知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
前記公報に記載の構成では、掘土ロータリを有する誘導部材及び畦塗り整畦する整畦体はトラクタの車輪の外側方に突出した状態で機枠に位置固定されているため、道路走行時及び圃場への出入り時の非畦塗り作業では掘土ロータリを有する誘導部材及び整畦体はトラクタの一方側の車輪の外側方に大きく突出して片寄ったままの状態でトラクタの懸架機構にて持ち上げ移動されることになり、この掘土ロータリを有する誘導部材及び整畦体にてトラクタ側に偏荷重が生じて重量バランスが損なわれ、道路走行時及び圃場への出入り時の安定走行を確保する上で好ましくなく、また、道路走行時では、掘土ロータリを有する誘導部材及び整畦体はトラクタの一方側の車輪の外側方に大きく突出した状態で走行されるため、交通障害が生じ易い、という問題がある。
【0004】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、ロータリー及び畦塗り体を、トラクタの一方側の車輪より外側方に突出させた畦塗り作業位置及びトラクタの内側方に後退させた非畦塗り作業位置にそれぞれ簡単にオフセットすることを可能にし、非畦塗り作業時ではロータリー及び畦塗り体にてトラクタ側に偏荷重が生じて重量バランスが損なわれることを防止でき、道路走行時及び圃場への出入り時の安定走行を確保でき、道路走行時の交通障害の問題も解消できる畦塗り機を提供することを目的とするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の畦塗り機は、トラクタの懸架機構に連結される連結部を有する機枠と、この機枠の後方に配置され、一端部に畦塗り用の泥土を切削して跳ね上げる多数の切削刃を有する回転自在のロータリー及びこのロータリーの後方に位置してこのロータリーの各切削刃にて跳ね上げられた泥土を旧畦に塗り付けて旧畦を修復する回転自在の畦塗り体を有する可動フレームと、前記機枠に前記可動フレームを移動自在に連結し、この可動フレームの前記ロータリー及び畦塗り体を前記トラクタの車輪より外側方に突出させた畦塗り作業位置及び前記トラクタの内側方に後退させた非畦塗り作業位置にそれぞれ移動可能にした平行リンクと、前記機枠に回動自在に取り付けられ、前記ロータリー及び畦塗り体を畦塗り作業位置及び非畦塗り作業位置に移動させた前記平行リンクを移動不能に支持する平行リンク支持手段とを具備し、前記平行リンクは、所定の間隔をおいて平行に配設される一対のリンクにて形成され、この一対のリンクの一端部が前記機枠の両側部に設けた上下方向の取付軸にてそれぞれ回動自在に取り付けられているとともに、その他端部が前記可動フレームの両側部に前記両側部の取付軸と略同一間隔をおいて設けた上下方向の連結軸にてそれぞれ回動自在に取り付けられており、畦塗り作業時には、前記平行リンクを形成する前記一対のリンクの前記取付軸を中心とする一方向への回動にて前記可動フレームが前記機枠に対して離間した後に接近するように外側方に向かって水平移動され、この水平移動した可動フレームが前記平行リンク支持手段による前記平行リンクの支持にて固定され、この可動フレームの固定にて前記ロータリー及び畦塗り体が畦塗り作業位置に位置決めされ、非畦塗り作業時には、前記平行リンクを形成する前記一対のリンクの前記取付軸を中心とする他方向への回動にて前記可動フレームが前記機枠に対して離間した後に接近するように内側方に向かって水平移動され、この水平移動した可動フレームが前記平行リンク支持手段による前記平行リンクの支持にて固定され、この可動フレームの固定にて前記ロータリー及び畦塗り体が非畦塗り作業位置に位置決めされるのものであり、前記可動フレームは、前記ロータリーを上下方向に位置調節可能に支持した調節手段を有し、前記連結部は、左右両側のロワアームの先端部に設けられたロワピンと、マストの先端部に設けられた連結ピンとに形成され、前記可動フレームの前記ロータリー及び前記畦塗り体を非畦塗り作業位置に移動する際に、前記ロータリーが前記機枠の一方側の前記ロワピンまたは前記ロワアームに当接して非畦塗り作業位置に移動できない場合には、前記調節手段の操作により前記ロータリーが前記機枠の一方側の前記ロワピンまたは前記ロワアームから離間した位置に下降され、前記ロータリーが前記機枠の一方側の前記ロワピンまたは前記ロワアームに当接することなく非畦塗り作業位置に移動されるものである。
【0006】
そして、畦塗り作業時は、平行リンク支持手段にて平行リンクの支持を解除し、機枠に対して平行リンクを介して可動フレームを外側方に向かって押動することにより、この平行リンクを形成する一対のリンクの取付軸を中心とする一方向への回動にて可動フレームが機枠に対して離間した後に接近するように外側方に向かって水平移動され、この可動フレームのロータリー及びこのロータリーの後方に位置した畦塗り体がトラクタの一方側の車輪より外側方に突出される。
【0007】
また、可動フレームのロータリー及び畦塗り体が畦塗り作業位置に突出移動された時点で、平行リンク支持手段にて平行リンクを移動不能に支持して固定することにより、可動フレームが固定されるとともに、この可動フレームのロータリー及び畦塗り体が畦塗り作業位置に位置決めされる。
【0008】
つぎに、トラクタにて機枠が旧畦際に沿って牽引進行されるとともに、この機枠に連結した可動フレームのロータリー及び畦塗り体がそれぞれ駆動回転されることにより、このロータリーの各切削刃にて旧畦の側面部及び旧畦際が順次切削されるとともに、これらの切削土が畦塗り用の泥土として畦塗り体に向かって跳ね上げ供給される。
【0009】
また、畦塗り体に供給された畦塗り用の泥土は、この畦塗り体にて旧畦の側面部及び上面部に沿って順次塗り付けられ、旧畦の側部は下方に向かって拡開した傾斜面に順次修復されると同時に、旧畦の上部が水平状面に順次修復される。したがって、旧畦は所定の形態に順次整畦される。
【0010】
つぎに、非畦塗り作業時は、平行リンク支持手段にて平行リンクの支持を解除し、機枠に対して平行リンクを介して可動フレームを内側方に向かって押動することにより、この平行リンクを形成する一対のリンクの取付軸を中心とする他方向への回動にて可動フレームが機枠に対して離間した後に接近するように内側方に向かって水平移動され、この可動フレームのロータリー及びこのロータリーの後方に位置した畦塗り体がトラクタの内側方に後退される。
【0011】
また、可動フレームのロータリー及び畦塗り体が非畦塗り作業位置に後退移動された時点で、平行リンク支持手段にて平行リンクを移動不能に支持して固定することにより、可動フレームが固定されるとともに、この可動フレームのロータリー及び畦塗り体が非畦塗り作業位置に位置決めされ、このロータリー及び畦塗り体がそれぞれトラクタの一方側の車輪から外側方に大きく突出することが防止される。
【0012】
そして、機枠の後方の所定位置に可動フレーム並びにこの可動フレームのロータリー及び畦塗り体が配置固定され、このロータリー及び畦塗り体にてトラクタ側に偏荷重が生じて重量バランスが損なわれることがなく、道路走行時及び圃場への出入り時の安定走行が確保され、かつ、道路走行時の交通障害の問題も解消される。
【0013】
請求項2記載の畦塗り機は、請求項1記載の畦塗り機において、平行リンク支持手段は、一対のリンク及びこの一対のリンクの両端部間を結んで形成される平行四辺形の一方の対角位置に配設される支持片にて形成され、この支持片は一端部を機枠の一方の取付軸に回動自在に取り付けるとともに、他側部に可動フレームの他方の連結軸に着脱自在に係合する軸方向に離間した複数の係合部を有する、ものである。
【0014】
そして、可動フレームのロータリー及び畦塗り体を畦塗り作業位置にオフセットされた場合には、支持片の他側部の選択した位置の係合部を可動フレームの他方の連結軸に係合することにより、この支持片にて一対のリンクが移動不能に支持して固定される。
【0015】
また、可動フレームのロータリー及び畦塗り体を非畦塗り作業位置にオフセットされた場合には、支持片の他側部の選択した位置の係合部を可動フレームの他方の連結軸に係合することにより、この支持片にて一対のリンクが移動不能に支持して固定される。
【0016】
したがって、可動フレーム並びにこの可動フレームのロータリー及び畦塗り体が畦塗り作業位置及び非畦塗り作業位置にオフセットされた状態に応じて可動フレームの他方の連結軸に対して支持片の複数の係合部を選択して係合することにより、この支持片にてロータリー及び畦塗り体が簡単に畦塗り作業位置及び非畦塗り作業位置に位置固定される。
【0017】(削除)
【0018】(削除)
【0019】(削除)
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施の形態を図面を参照して説明する。
【0021】
1は機枠で、この機枠1は中空角柱状の左右方向の主フレーム2を有し、この主フレーム2の両端部にロワアーム3がそれぞれ前下方に向かって傾斜して一体に突設され、この両側のロワアーム3の先端部に連結部4がそれぞれ突設され、この両側の連結部4は左右方向のロワピン5にてそれぞれ形成されている。
【0022】
また、前記主フレーム2の中間上部にマスト6が前上方に向かって傾斜して一体に突設され、このマスト6の先端部に連結部7が設けられ、この連結部7は着脱可能な連結ピン8にて形成されている。また、前記主フレーム2の下部に沿って板状の取付フレーム9が一体に固着され、この取付フレーム9の左右方向の略中間部に軸受体10にて前後方向の動力中継軸11が回転自在に軸架され、この動力中継軸11は前後に前記軸受体10の前後部から突出された連結軸部12をそれぞれ有している。
【0023】
また、前記主フレーム2の両側端部にこの主フレーム2の上下から後方に向かって取付板13がそれぞれ相対して平行に一体に突設され、この両側端部の上下の取付板13に上下方向の取付軸14がそれぞれ挿脱自在に取り付けられている。
【0024】
さらに、前記一方側のロワアーム3の外側部に上下面に開口した中空筒状のスタンドホルダー15が一体に固着され、前記他方側のロワアーム3の外側部に左右方向の支持アーム16が外側方に向かって水平状に一体に突設され、この支持アーム16の突出端部に上下面に開口した中空筒状のスタンドホルダー17が一体に固着されている。
【0025】
18は前記機枠1の後方に配置される可動フレームで、この可動フレーム18は左右方向に延在した中空パイプ状のフレーム本体19を有し、このフレーム本体19の一端部に前後方向の第1の伝動ケース20が上下方向に回動自在に取り付けられ、前記フレーム本体19の他端部に前記第1の伝動ケース20と平行に前後方向の回動板21が上下方向に回動自在に取り付けられている。
【0026】
また、前記フレーム本体19は中間部に入力軸22を前方に向けて回転自在に突出したミッション23が設けられ、このミッション23の第1の出力軸24が前記フレーム本体19内の一方側に回転自在に設けられ、この第1の出力軸24の出力端部が前記第1の伝動ケース20の基端部内に回転自在に突出されている。
【0027】
また、前記ミッション23の第2の出力軸25が前記フレーム本体19内の他方側に回転自在に設けられている。また、前記ミッション23内に前記第1の出力軸24のベベルギヤ26、前記第2の出力軸25のベベルギヤ27及びこの両ベベルギヤ26,27に噛合した前記入力軸22のベベルギヤ28がそれぞれ設けられている。
【0028】
また、前記第1の伝動ケース20と前記回動板21との先端部間に前記フレーム本体19と平行に中空パイプ状の左右方向の第2の伝動ケース29が取り付けられ、この第2の伝動ケース29内に左右方向の伝動軸30が回転自在に設けられ、この伝動軸30の一端部が前記第1の伝動ケース20の先端部内に回転自在に突出され、この伝動軸30の突出端部は前記第1の出力軸24の出力端部に前記第1の伝動ケース20内に設けた連動媒体31を介して連動連結されている。
【0029】
つぎに、前記伝動軸30の他端部は前記第2の伝動ケース29の他端部に設けた軸受体32にて回転自在に軸支され、この伝動軸30の他端部にこの伝動軸30の延長方向の外側方に向かって畦塗り用の泥土を切削して後述する畦塗り体に跳ね上げるロータリー33が回転自在に連結されている。
【0030】
前記ロータリー33は前記伝動軸30の他端部に連結された左右方向の回転軸34と、この回転軸34に軸方向に間隔をおいて周側部にブラケット35を介して放射状に突設された多数の切削刃36と、を有して構成され、この多数の切削刃36の中で外側端部に位置する切削刃36は他の切削刃36の長さより短くその先端部が内側方に向かって折り曲げ形成されている。
【0031】
また、前記回動板21の先端部に前記ロータリー33の前方面、上方面及び両側方面をそれぞれ被覆したカバー体37が固着されている。そして、前記ロータリー33がアップカット方向に回転駆動されることにより、その各切削刃36にて旧畦の側部及び畦際を畦塗り用の泥土として切削されるとともに、これらの泥土は前記カバー体37に案内されてこのカバー体37の後方面から後述する畦塗り体に跳ね上げ供給されるようになっている。
【0032】
また、前記フレーム本体19の他端部に後下方に向かって下降傾斜した前後方向の第3の伝動ケース38が固定され、この第3の伝動ケース38内に前記第2の出力軸25の出力端部が突出されている。また、前記第3の伝動ケース38の後端部に軸受体39が固定され、この軸受体39に左右方向の回転軸40が回転自在に軸架され、この回転軸40の一端部が前記第3の伝動ケース38内に突出され、この回転軸40の突出端部は前記第2の出力軸25の出力端部に連動媒体41を介して連動連結されている。
【0033】
つぎに、前記回転軸40の他端部に前記ロータリー33の後方に位置してこのロータリー33の各切削刃36にて跳ね上げられた泥土を旧畦に塗り付けて旧畦を修復する畦塗り体42が固着されている。この畦塗り体42は旧畦の側部を下方に向かって拡開した傾斜面に修復する円錐形状の側面修復部43と、この側面修復部43の縮径端部に一体に連設され旧畦の上部を水平状面に修復する円筒状の上面修復部44と、を有している。
【0034】
そして、前記畦塗り体42は前記回転軸40にてダウンカット方向に回転駆動されることにより、その側面修復部43にて旧畦の側部を下方に向かって拡開した傾斜面に修復すると同時にその上面修復部44にて旧畦の上部を水平状面に修復するようになっている。また、前記畦塗り体42は前記カバー体37に連続した延長カバー部37aにて上方部が被覆されている。
【0035】
つぎに、前記フレーム本体19の両側部に前後方向の連結アーム45がそれぞれ前方に向かって水平かつ平行に一体に固着され、この両側部の連結アーム45の先端部の上下に取付板46がそれぞれ相対して平行に一体に固着され、この両側部の上下の取付板46に前記両側部の取付軸14と略同間隔で上下方向の連結軸47がそれぞれ挿脱自在に装着されている。
【0036】
つぎに、前記機枠1の主フレーム2に平行リンク48にて前記可動フレーム18が左右方向に移動自在に連結され、この可動フレーム18の前記ロータリー33及び前記畦塗り体42がトラクタAの一方側の車輪Cより外側方に突出させた畦塗り作業位置及びトラクタAの内側方に後退させた非畦塗り作業位置に移動可能になっている。
【0037】
前記平行リンク48は所定の間隔をおいて平行に配設される前後方向の一対のリンク49にて形成され、この一対のリンク49の一端部に形成された軸挿通部50が前記主フレーム2の両側部の上下の取付板13間にそれぞれ挿入された状態で、この軸挿通部50が前記取付軸14にてそれぞれ回動自在に取り付けられている。また、前記一対のリンク49の他端部に形成された軸挿通部51が前記フレーム本体19の両側部の上下の取付板13間にそれぞれ挿入された状態で、この軸挿通部51が前記連結軸47にてそれぞれ回動自在に取り付けられている。
【0038】
そして、前記一対のリンク49及びこの一対のリンク49を連結した両側部の連結アーム45にて前記機枠1の主フレーム2に前記可動フレーム18のフレーム本体19が所定の高さ位置に支持され、かつ、このフレーム本体19の他端部に固定された前記第3の伝動ケース38を介して前記畦塗り体42が所定の高さ位置に支持されている。
【0039】
そうして、前記一対のリンク49にて前記前側左右の取付軸14及び後側左右の連結軸47を介して前記機枠1の主フレーム2に対して前記可動フレーム18が左右方向に移動自在に連結支持されていることにより、この可動フレーム18の前記ロータリー33及び前記畦塗り体42がトラクタAの一方側の車輪Cより外側方に突出させた畦塗り作業位置及びトラクタAの内側方に後退させた非畦塗り作業位置に移動可能になっている。
【0040】
つぎに、前記機枠1の主フレーム2に前記ロータリー33及び前記畦塗り体42を畦塗り作業位置及び非畦塗り作業位置に移動させた前記一対のリンク49を回動移動不能に支持する平行リンク支持手段52が回動自在に取り付けられている。
【0041】
前記平行リンク支持手段52は前記一対のリンク49及びこの一対のリンク49の両端部間を結んで形成される平行四辺形の一方の対角位置に配設される支持片53にて形成され、この支持片53は一端部が前記主フレーム2の一方の取付軸14の下端部に回動自在に取り付けられ、その他側部にこの支持片53の他端部に向かって所定の間隔をおいて離間し前記他方の連結軸47に係脱自在に係合する係合部としての複数の係合孔54がそれぞれ形成されている。
【0042】
つぎに、前記第3の伝動ケース38の前端部に略コ字形状のブラケット55が前方に向かって一体に突設され、このブラケット55に前記回動板21を介して前記ロータリー33を上下方向に設定位置を調節可能に支持する調節手段56が取り付けられている。
【0043】
前記調節手段56は、前記ブラケット55に支持された左右方向の中空円筒状の軸支体57と、この軸支体57内に回動自在に挿通された回動軸58と、この回動軸58の一端部に取り付けられ上下方向に貫通した摺動孔59を有するブロック状の支持体60と、この支持体60の摺動孔59内に摺動自在に挿通された摺動軸部61を有する上下方向の調節螺杆62と、前記支持体60の上部に位置して前記調節螺杆62に固着されこの調節螺杆62を抜け止め支持するストッパー63と、を有している。
【0044】
また、前記調節手段56は、前記支持体60の下方に位置して前記調節螺杆62に形成された環状係止体64に係止されこの調節螺杆62を被覆した調節螺杆62より大径の中空筒状の上下方向のガイド体65と、前記調節螺杆62に螺合されこの調節螺杆62の回動により前記ガイド体65内に沿って上下動される上下方向の調節支杆66と、前記回動板21に突設された略L字形状のブラケット67に軸架され前記調節支杆66の下端部に形成された軸支部68に回動自在に挿通した取付支軸69と、前記調節螺杆62の上端部に突設されこの調節螺杆62を回動操作する操作ハンドル70と、を有している。
【0045】
そして、前記操作ハンドル70を回動操作することにより、この調節螺杆62にて調節支杆66が上下動されるとともに、この調節支杆66にて取付支軸69及びブラケット67を介して回動板21が前記フレーム本体19を中心として上下方向に回動され、かつ、この回動板21にて一端部が第1の伝動ケース20に支持されている第2の伝動ケース29が上下方向に回動され、この第2の伝動ケース29に連結したロータリー33が上下方向に設定位置が調節されるようになっている。
【0046】
つぎに、前記実施の形態の作用を説明する。
【0047】
トラクタAの懸架機構Bすなわち、トップリンクa及び両側部のロワリンクbに連結されたクイックカプラcの上部フックdを機枠1の連結ピン8に係合するとともに前記クイックカプラcの左右の下部フックeを機枠1の両側部のロワピン5にそれぞれ係合する。
【0048】
また、トラクタAの動力取出軸(PTO軸)に動力伝達軸(図示せず)の一端部をユニバーサルジョイントを介して連結するとともに、この動力伝達軸の他端部を機枠1の動力中継軸11の前側部の連結軸部12にユニバーサルジョイントを介して連結する。
【0049】
さらに、機枠1の動力中継軸11の後側部の連結軸部12に動力伝達軸(図示せず)の一端部をユニバーサルジョイントを介して連結するとともに、この動力伝達軸の他端部を可動フレーム18のフレーム本体19に設けたミッション23の入力軸22にユニバーサルジョイントを介して連結する。
【0050】
つぎに、畦塗り作業時は、平行リンク支持手段52すなわち支持片53を連結軸47から取り外すことにより、平行リンク48の支持が解除される。そして、機枠1の主フレーム2に対して平行リンク48を介して可動フレーム18を外側方に向かって押動することにより、図1および図5から明らかなように、この平行リンク48を形成する一対のリンク49の取付軸14を中心とする一方向への回動にて可動フレーム18が機枠1に対して離間した後に接近するように外側方に向かって水平移動され、この可動フレーム18のロータリー33及びこのロータリー33の後方に位置した畦塗り体42がトラクタAの一方側の車輪Cより外側方に突出される。この際、ロータリー33及び畦塗り体42はトラクタAの大きさに応じて突出量を可変調整し、本機を牽引するトラクタAに対応し、このトラクタAの一方側の車輪Cより外方の適正位置に突出する。
【0051】
また、可動フレーム18のロータリー33及び畦塗り体42が畦塗り作業位置に突出移動された時点で、支持片53の所定の位置の係合孔54内に連結軸47を挿入するとともに、この連結軸47に支持片53を抜け止めする抜止めピンを装着することにより、この支持片53が平行リンク48の対角位置の一方の取付軸14と他方の連結軸47との間に掛け渡された状態で位置決めされる。
【0052】
そして、この支持片53にて平行リンク48が回動移動不能に支持されて位置固定されることにより、この可動フレーム18が位置固定されるとともに、この可動フレーム18のロータリー33及び畦塗り体42がトラクタAの一方側の車輪Cより外側方に突出された畦塗り作業位置に位置決めされる。
【0053】
つぎに、トラクタAにて機枠1が旧畦際に沿って牽引進行されるとともに、このトラクタAのPTO軸からの出力により動力伝達軸を介して動力中継軸11が回転され、この動力中継軸11にて動力伝達軸を介して可動フレーム18のミッション23の入力軸22が回転され、この入力軸22のベベルギヤ28にて第1の出力軸24のベベルギヤ26及び第2の出力軸25のベベルギヤ27がそれぞれ回転される。
【0054】
そして、第1の出力軸24にて第1の伝動ケース20内の連動媒体31及び第2の伝動ケース29内の伝動軸30がそれぞれ回転され、この伝動軸30にてロータリー33がアップカット方向に向かって回転駆動される。また、第2の出力軸25にて第3の伝動ケース38内の連動媒体41を介して回転軸40が回転され、この回転軸40にて畦塗り体42がダウンカット方向に向かって泥土に対してスリップ回転する早い速度で回転駆動される。
【0055】
また、ロータリー33が回転駆動されることにより、このロータリー33の各切削刃36にて旧畦の側面部及び旧畦際が順次切削されるとともに、これらの切削土が各切削刃36にてカバー体37に沿って持ち回わられ、かつ、このカバー体37の案内作用により畦塗り用の泥土として畦塗り体42に向かって供給される。
【0056】
この際、ロータリー33がアップカット方向に向かって回転駆動されることにより、このロータリー33の各切削刃36にて切削土がカバー体37に沿って持ち回られるとともに、これらの切削土が旧畦に対して上方から落下され、畦塗り体42の前方に畦塗り用の泥土として十分に供給される。また、切削土が旧畦に対して上方から落下供給されることにより、ロータリー33に畦塗り体42を可及的に近付けた位置に配設することができ、前後方向の全長を可及的に短小化することが可能になる。
【0057】
また、畦塗り体42に供給された畦塗り用の泥土は、この畦塗り体42の側面修復部43にて旧畦の側面部に沿って順次塗り付けられ、この旧畦の側部は下方に向かって拡開した傾斜面に順次修復されると同時に、この畦塗り体42の上面修復部44にて旧畦の上面部に沿って順次塗り付けられ、この旧畦の上部が水平状面に順次修復される。
【0058】
したがって、畦塗り体42の側面修復部43及び上面修復部44にて旧畦の側面部及び旧畦の上面部が固く締め固められて旧畦が所定の形態に順次整畦される。
【0059】
つぎに、非畦塗り作業時は、平行リンク支持手段52の支持片53を連結軸47から取り外すことにより、平行リンク48の支持が解除される。そして、機枠1の主フレーム2に対して平行リンク48を介して可動フレーム18を内側方に向かって押動することにより、図1および図5から明らかなように、この平行リンク48を形成する一対のリンク49の取付軸14を中心とする他方向への回動にて可動フレーム18が機枠1に対して離間した後に接近するように内側方に向かって水平移動され、この可動フレーム18のロータリー33及びこのロータリー33の後方に位置した畦塗り体42がトラクタAの内側方に後退される。
【0060】
この際、すなわち、可動フレーム18並びにこの可動フレーム18のロータリー33及び畦塗り体42を非畦塗り作業位置に後退移動する際に、このロータリー33すなわち、ロータリー33のカバー体37が機枠1の一方側のロワピン5またはロワアーム3に当接して非畦塗り作業位置に移動できない場合には、調節手段56を調節操作することにより、ロータリー33及びカバー体37が機枠1の一方側のロワピン5またはロワアーム3から離間した位置に下降回動される。したがって、可動フレーム18のロータリー33及び畦塗り体42が非畦塗り作業位置にスムーズに後退移動される。
【0061】
すなわち、調節手段56の操作ハンドル70を回動操作することにより、この操作ハンドル70にて調節螺杆62が回動され、この調節螺杆62にて調節支杆66が下降され、この調節支杆66の下端部の軸支部68にて取付支軸69及びブラケット67を介して回動板21が下方に向かって押動される。そして、この回動板21が可動フレーム18のフレーム本体19を中心として下降回動され、この回動板21により下降される第2の伝動ケース29にて第1の伝動ケース20が可動フレーム18のフレーム本体19を中心として下降回動される。
【0062】
したがって、回動板21及び第1の伝動ケース20によりフレーム本体19を中心として下降回動される第2の伝動ケース29にてロータリー33及びカバー体37がこの第2の伝動ケース29と同時に下降回動され、このロータリー33及びカバー体37が機枠1の一方側のロワピン5またはロワアーム3から離間した位置に下降回動され、このロータリー33及びカバー体37が一方側のロワピン5またはロワアーム3に当接することなく非畦塗り作業位置にスムーズに後退移動される。
【0063】
また、可動フレーム18のロータリー33及び畦塗り体42が非畦塗り作業位置に後退移動された時点で、支持片53の所定の位置の係合孔54内に他方の連結軸47を挿入するとともに、この連結軸47に支持片53を抜け止めする抜止めピンを装着することにより、この支持片53が平行リンク48の対角位置の一方の取付軸14と他方の連結軸47との間に掛け渡された状態で位置決めされる。
【0064】
そして、この支持片53にて平行リンク48が回動移動不能に支持されて位置固定されることにより、この可動フレーム18が位置固定されるとともに、この可動フレーム18のロータリー33及び畦塗り体42がトラクタAの内側方に後退移動された非畦塗り作業位置に位置決めされ、このロータリー33及び畦塗り体42がそれぞれトラクタAの一方側の車輪から外側方に大きく突出することが防止される。
【0065】
したがって、機枠1の後方の所定位置に可動フレーム18並びにこの可動フレーム18のロータリー33及び畦塗り体42が配置固定され、このロータリー33及び畦塗り体42にてトラクタA側に偏荷重が生じて重量バランスが損なわれることがなく、道路走行時及び圃場への出入り時の安定走行が確保され、かつ、道路走行時の交通障害の問題も解消される。
【0066】
つぎに、畦塗り作業時は、ロータリー33及びカバー体37が一方側のロワピン5またはロワアーム3から離間した位置に下降された状態を呈しているので、可動フレーム18並びにこの可動フレーム18のロータリー33及び畦塗り体42をスムーズに畦塗り作業位置に移動される。
【0067】
そして、調節手段56の操作ハンドル70を、前記可動フレーム18のロータリー33及び畦塗り体42を非畦塗り作業位置に後退移動させる場合と反対方向に向かって回動して調節操作することにより、この操作ハンドル70にて調節螺杆62が回動され、この調節螺杆62にて調節支杆66が上昇され、この調節支杆66の下端部の軸支部68にて取付支軸69及びブラケット67を介して回動板21が引上げ回動される。そして、この回動板21が可動フレーム18のフレーム本体19を中心として上昇回動され、この回動板21により上昇される第2の伝動ケース29にて第1の伝動ケース20が可動フレーム18のフレーム本体19を中心として上昇回動される。
【0068】
したがって、回動板21及び第1の伝動ケース20によりフレーム本体19を中心として上昇回動される第2の伝動ケース29にてロータリー33及びカバー体37がこの第2の伝動ケース29と同時に上昇回動され、このロータリー33が旧畦を切削する所定の位置に上昇される。
【0069】
また、可動フレーム18のロータリー33及び畦塗り体42を畦塗り作業位置及び非畦塗り作業位置にオフセットされる際は、機枠1の主フレーム2の両側部の取付軸14及び可動フレーム18の両側部の連結軸47を中心として一対のリンク49がそれぞれ回動され、この一対のリンク49にて機枠1の主フレーム2に対して可動フレーム18がスムーズに移動され、この可動フレーム18のロータリー33及び畦塗り体42が容易に畦塗り作業位置及び非畦塗り作業位置にオフセットされる。
【0070】
つぎに、前記実施の形態では、ロータリー33はアップカット方向に向かって回転駆動される場合について説明したが、これに限らず、ロータリー33はダウンカット方向に向かって回転駆動するようにしてもよい。
【0071】
この場合には、たとえば、可動フレーム18のフレーム本体19に設けたミッション23の入力軸22を後方に向かって延長し、この入力軸22の延長部に第1の出力軸24のベベルギヤ26に噛合するベベルギヤ(図示せず)を固着し、この第1の出力軸24のベベルギヤ26は入力軸22のベベルギヤ28には噛合させず、このベベルギヤ28には第2の出力軸25のベベルギヤ27のみを噛合させる。
【0072】
このように構成することにより、ロータリー33はダウンカット方向に向かって回転駆動されるとともに、畦塗り体42はダウンカット方向に向かって回転駆動される。そして、前記実施の形態の場合と同様にロータリー33及び畦塗り体42にて旧畦が順次修復されて所定の形態に整畦される。
【0073】
なお、トラクタAの懸架機構Bにて本機を持ち上げた状態で、その機枠1の両側部のスタンドホルダー15,17にキャスターを有するスタンドの支柱を装着して固定することにより、トラクタAの懸架機構Bにて本機を下降した際には両側部のスタンドにて本機がロータリー33及び畦塗り体42を地面上に離間した状態で支持される。
【0074】
そして、機枠1の各連結部4,7からトラクタAの懸架機構Bを取り外した際には、両側部のスタンドにて本機を吊持した状態で容易に移動することが可能になり、本機を農舎等に容易に格納でき、また、本機にトラクタAの懸架機構Bを容易に連結することが可能になる。
【0075】
前記実施の形態では平行リンク支持手段52として支持片53を用いる場合について説明したが、これに限らず、平行リンク支持手段52は、たとえば、シリンダー装置を用い、このシリンダー装置にてロータリー33及び畦塗り体42を畦塗り作業位置及び非畦塗り作業位置に移動させた平行リンク48を移動不能に支持するようにしてもよい。
【0076】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、畦塗り作業時は、平行リンク支持手段にて平行リンクの支持を解除し、機枠に対して平行リンクを介して可動フレームを外側方に向かって押動することにより、この平行リンクにて可動フレームが外側方に向かって移動され、この可動フレームのロータリー及び畦塗り体をトラクタの一方側の車輪より外側方に簡単に突出させることができる。
【0077】
また、平行リンク支持手段にて平行リンクを移動不能に支持して固定することにより、可動フレームを簡単に固定できるとともに、この可動フレームのロータリー及び畦塗り体を畦塗り作業位置に確実に位置決めできる。
【0078】
また、非畦塗り作業時は、平行リンク支持手段にて平行リンクの支持を解除し、機枠に対して平行リンクを介して可動フレームを内側方に向かって押動することにより、この平行リンクにて可動フレームが内側方に向かって移動され、この可動フレームのロータリー及び畦塗り体をトラクタの内側方に簡単に後退させることができる。
【0079】
また、平行リンク支持手段にて平行リンクを移動不能に支持して固定することにより、可動フレームを簡単に固定できるとともに、この可動フレームのロータリー及び畦塗り体を非畦塗り作業位置に確実に位置決めでき、このロータリー及び畦塗り体がそれぞれトラクタの一方側の車輪から外側方に大きく突出することを確実に防止できる。
【0080】
したがって、ロータリー及び畦塗り体を、トラクタの一方側の車輪より外側方に突出させた畦塗り作業位置及びトラクタの内側方に後退させた非畦塗り作業位置にそれぞれ簡単にオフセットすることができ、非畦塗り作業時ではロータリー及び畦塗り体にてトラクタ側に偏荷重が生じて重量バランスが損なわれることを確実に防止でき、道路走行時及び圃場への出入り時の安定走行を確保でき、道路走行時の交通障害の問題も解消することができる。
【0081】
請求項2の発明によれば、請求項1の発明の効果に加え、可動フレームのロータリー及び畦塗り体を畦塗り作業位置にオフセットされた場合には、支持片の他側部の選択した位置の係合部を可動フレームの他方の連結軸に係合することにより、この支持片にて一対のリンクを確実に移動不能に支持して固定することができる。
【0082】
また、可動フレームのロータリー及び畦塗り体を非畦塗り作業位置にオフセットされた場合には、支持片の他側部の選択した位置の係合部を可動フレームの他方の連結軸に係合することにより、この支持片にて一対のリンクを確実に移動不能に支持して固定することができる。
【0083】
したがって、可動フレーム並びにこの可動フレームのロータリー及び畦塗り体が畦塗り作業位置及び非畦塗り作業位置にオフセットされた状態に応じて可動フレームの他方の連結軸に対して支持片の複数の係合部を選択して係合することにより、この支持片にてロータリー及び畦塗り体を簡単に畦塗り作業位置及び非畦塗り作業位置に位置固定することができる。
【0084】(削除)
【0085】(削除)
【図面の簡単な説明】
【図1】
本発明の一実施の形態を示す畦塗り機の平面図である。
【図2】
同上側面図である。
【図3】
同上可動フレーム部の斜視図である。
【図4】
同上調節手段の断面図である。
【図5】
同上ロータリー及び畦塗り体を非畦塗り作業位置に移動した状態を示す平面図である。
【図6】
同上側面図である。
【図7】
同上ロータリーの作動状態を示す説明図である。
【符号の説明】
1 機枠
4,7 連結部
14 取付軸
18 可動フレーム
33 ロータリー
36 切削刃
42 畦塗り体
47 連結軸
48 平行リンク
49 リンク
52 平行リンク支持手段
53 支持片
54 係合部
56 調節手段
A トラクタ
B 懸架機構
C 車輪
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-10-04 
出願番号 特願平9-102053
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (A01B)
最終処分 取消  
前審関与審査官 西田 秀彦  
特許庁審判長 中村 和夫
特許庁審判官 白樫 泰子
塩崎 進
登録日 2003-01-17 
登録番号 特許第3389046号(P3389046)
権利者 松山株式会社
発明の名称 畦塗り機  
代理人 安原 正之  
代理人 安原 正義  
代理人 島宗 正見  
代理人 樺澤 聡  
代理人 小橋 立昌  
代理人 小橋 信淳  
代理人 服部 秀一  
代理人 樺澤 襄  
代理人 山田 哲也  
代理人 樺澤 襄  
代理人 山田 哲也  
代理人 樺澤 聡  
代理人 島宗 正見  
代理人 服部 秀一  

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