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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1111873
審判番号 不服2003-3346  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-01-23 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-03-03 
確定日 2005-02-07 
事件の表示 平成 6年特許願第175999号「レンズ構造およびレンズ枠」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 1月23日出願公開、特開平 8- 21938〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成6年7月5日の出願であって、平成15年1月27日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月3日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年3月3日付で手続補正がなされたものである。

2.平成15年3月3日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年3月3日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「第1のレンズおよび第2のレンズと、前記第1のレンズを保持する第1レンズ保持部および、前記第1のレンズと前記第2のレンズを当接させた状態で前記第2のレンズを保持する第2レンズ保持部とが形成された筒状のレンズ枠と、を備えたレンズ構造であって、前記レンズ枠は、前記第1のレンズの、前記第2のレンズと当接する面の反対側の面の周縁部に弾性的に接触する、前記レンズ枠から前記第1のレンズの光軸側に突出して形成された弾性部と、前記レンズ枠の前記第1レンズ保持部と前記第2レンズ保持部の間にあって、前記第2のレンズの周縁部を当接させて前記第2のレンズの位置決めを行なうための位置決め突起と、前記第2のレンズの、前記第1のレンズと当接する面の反対側の面の周縁部に当接し、前記第2のレンズを前記第1のレンズ側に押圧しつつ支持する支持部と、を有し、さらに、前記第1レンズ保持部と前記第2レンズ保持部と前記弾性部と前記位置決め突起と前記支持部は一体成型したものであって、前記支持部は前記第2レンズ保持部側の端部を変形させたことにより形成したことを特徴とするレンズ構造。」
と補正された。
上記補正は、補正前の発明について、「第1のレンズおよび第2のレンズと、・・・筒状のレンズ枠と、を備えたレンズ構造であって、」、「前記レンズ枠は、・・・を有し、」「さらに、前記第1レンズ保持部と前記第2レンズ保持部と前記弾性部と前記位置決め突起と前記支持部は一体成型したものであって、前記支持部は前記第2レンズ保持部側の端部を変形させたことにより形成した」(下線部が補正された部分)との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第3項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第4項において準用する同法第126条第3項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された実願平3-94826号(実開平5-45616号)のCD-ROM(以下、刊行物1という。)には、
ア.「図5はレンズ鏡胴の要部断面図を示すものであり、第一レンズ群1はその最も外側のレンズ面1aの光路外の周縁部分が、レンズ固定枠2の内周面に設けられた固定リング2aによって係止されている。又、第一レンズ群1の最も内側のレンズ3のレンズ面の光路外の周縁部分3aは、図6に示すような略リング状のレンズ押さえリング4によって、図上左側方向に圧接されて加圧固定されている。」(4頁12〜16行)
との記載が認められ、これらの記載と図5によれば、引用例1には、
「最も内側のレンズ3と、その外側の2枚のレンズとを有する第一レンズ群1とレンズ固定枠2とを備え、第一レンズ群1の最も内側のレンズ3のレンズ面の光路外の周縁部分3aは、略リング状のレンズ押さえリング4によって圧接され、第一レンズ群1はその最も外側のレンズ面1aの光路外の周縁部分が、レンズ固定枠2の内周面に設けられた固定リング2aによって係止されたレンズ鏡胴」
の発明(以下「刊行物1発明」という。)が開示されていると認めることができる。

同じく、原査定の拒絶の理由に引用された実願昭60-72031号(実開昭61-188111号)のマイクロフィルム(以下、「刊行物2」という。)には、
イ.「第3図は従来の樹脂鏡胴の構成を示す。第3図において、1,2は分割部片、3〜7はレンズ、8〜11はレンズ固定および位置決めのための樹脂バネ、12,13は分割片1,2を組立状態に保持するためのリングである。」(2頁7〜12行)
と記載されている。

また、同じく、原査定の拒絶の理由に引用された特開平5-27148号公報(以下、「刊行物3」という。)には、
ウ.「上記の構成において、レンズ13,12,11を鏡筒1に組み入れた後、カシメ部1aを熱変形あるいは塑性変形させてカシメ、各レンズを鏡筒1内に保持・固定する。」(段落【0008】)
と記載されている。

(3)対比
そこで、本願補正発明と刊行物1発明とを比較すると、刊行物1発明の「レンズ3」は、本願補正発明の「第1のレンズ」に相当し、以下同様に、「外側の2枚のレンズ」は「第2のレンズ」に、「レンズ固定枠2」は「筒状のレンズ枠」に、「レンズ押さえリング4」は「弾性部」に、「固定リング2a」は「支持部」に、それぞれ相当する。また、刊行物1発明の「レンズ3のレンズ面の光路外の周縁部分3aは、略リング状のレンズ押さえリング4によって圧接され」、「第一レンズ群1はその最も外側のレンズ面1aの光路外の周縁部分が、レンズ固定枠2の内周面に設けられた固定リング2aによって係止された」はそれぞれ、本願補正発明の「第1のレンズの、前記第2のレンズと当接する面の反対側の面の周縁部に弾性的に接触する、前記レンズ枠から前記第1のレンズの光軸側に突出して形成された弾性部」、「第2のレンズの、前記第1のレンズと当接する面の反対側の面の周縁部に当接する支持部」に相当するといえ、また、刊行物1の図5を参照すれば、刊行物1発明のレンズ固定枠2は、レンズ3を保持する保持部と、レンズ3と外側の2枚のレンズを当接させた状態で外側の2枚のレンズを保持する外側の2枚のレンズ保持部とが形成されているといえる。さらに、刊行物1発明の第一レンズ群1と、それを保持するレンズ固定枠2とは本願発明の「レンズ構造」に相当するといえるから、結局、両者は、
「第1のレンズおよび第2のレンズと、前記第1のレンズを保持する第1レンズ保持部および、前記第1のレンズと前記第2のレンズを当接させた状態で前記第2のレンズを保持する第2レンズ保持部とが形成された筒状のレンズ枠と、を備えたレンズ構造であって、前記第1のレンズの、前記第2のレンズと当接する面の反対側の面の周縁部に弾性的に接触する、前記レンズ枠から前記第1のレンズの光軸側に突出して形成された弾性部と、前記第2のレンズの、前記第1のレンズと当接する面の反対側の面の周縁部に当接する支持部と、を有するレンズ構造。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]本願補正発明が、レンズ枠の第1レンズ保持部と第2レンズ保持部の間にあって、第2のレンズの周縁部を当接させて第2のレンズの位置決めを行なうための位置決め突起を有するようにしたのに対し、刊行物1発明には、その点につき明示的な記載がない点。
[相違点2]本願補正発明が、支持部を、第2のレンズを第1のレンズ側に押圧しつつ支持するようにしたのに対し、刊行物1発明には、押圧する点につき明示的な記載がない点。
[相違点3]本願補正発明が、第1レンズ保持部と第2レンズ保持部と弾性部と前記位置決め突起と支持部とを一体成型したのに対し、刊行物1発明がそのような構成を採用していない点。
[相違点4]本願補正発明が、支持部を、第2レンズ保持部側の端部を変形させたことにより形成したのに対し、刊行物1発明がそのような構成を採用していない点。

(4)判断
[相違点1]について
刊行物1発明においては、外側の2枚のレンズの最もレンズ3側の面の周縁部は、レンズ固定枠2の突起した部分と接していることが、刊行物1の図5から読み取れる。そして、当該突起した部分は「第2のレンズの周縁部を当接させて第2のレンズの位置決めを行なうための位置決め突起」であるといえ、上記相違点1は実質的な差異であるとは認められない。

[相違点2]について
刊行物1発明の押さえリング4はレンズを押圧しつつ支持しており、また、刊行物2に記載された、レンズ固定および位置決めのための樹脂バネ8〜11もレンズを押圧しつつ支持しているといえ、レンズを保持するレンズ鏡胴の技術分野において、レンズを押圧しつつ支持することは、周知の技術であるといえる。してみれば、刊行物1発明の固定リング2aにおいても、レンズを押圧しつつ支持するように構成することは、当業者が容易に想到することができたというべきである。

[相違点3]について
刊行物2には、その第3図を参照すると、レンズ固定および位置決めのための樹脂バネ8〜11は、分割部片1,2と一体的に形成されていることが読み取れる。そして、当該技術、すなわち、レンズ固定及び位置決めのための部材を枠体と一体的に形成するという技術を刊行物1発明に適用し、本願補正発明の相違点3にかかる構成とすることに、格別の困難性は認められない。

[相違点4]について
刊行物3には、カシメ部1aを熱変形あるいは塑性変形させてカシメることについて記載されており、当該技術、すなわち、鏡筒からレンズの光軸側に突出する部材を、鏡筒の端部を変形させることにより形成するという技術を刊行物1発明に適用し、本願補正発明の相違点4にかかる構成とすることに、格別の困難性は認められない。

そして、本願補正発明の作用効果も、刊行物1〜3、及び、周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、刊行物1〜3、及び、周知技術に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第4項で準用する同法第126条第3項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成15年3月3日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成15年1月6日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「第1のレンズおよび第2のレンズと、前記第1のレンズを保持する第1レンズ保持部および、前記第1のレンズと前記第2のレンズを当接させた状態で前記第2のレンズを保持する第2レンズ保持部とが形成された筒状のレンズ枠と、前記第1のレンズの、前記第2のレンズと当接する面の反対側の面の周縁部に弾性的に接触する、前記レンズ枠から前記第1のレンズの光軸側に突出して形成された弾性部と、前記レンズ枠の前記第1レンズ保持部と前記第2レンズ保持部の間にあって、前記第2のレンズの周縁部を当接させて前記第2のレンズの位置決めを行なうための位置決め突起と、前記第2のレンズの、前記第1のレンズと当接する面の反対側の面の周縁部に当接し、前記第2のレンズを前記第1のレンズ側に押圧しつつ支持する支持部を有することを特徴とするレンズ構造。」

(1)引用例
当審が通知した拒絶理由通知書の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「第1のレンズおよび第2のレンズと、・・・筒状のレンズ枠と、を備えたレンズ構造であって、」、「前記レンズ枠は、・・・を有し、」「さらに、前記第1レンズ保持部と前記第2レンズ保持部と前記弾性部と前記位置決め突起と前記支持部は一体成型したものであって、前記支持部は前記第2レンズ保持部側の端部を変形させたことにより形成した」の下線部の構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、刊行物1〜3、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、刊行物1〜3、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明、刊行物2に記載された発明、刊行物3に記載された発明、及び、周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-12-15 
結審通知日 2004-12-16 
審決日 2004-12-28 
出願番号 特願平6-175999
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
P 1 8・ 575- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡田 吉美  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 峰 祐治
瀬川 勝久
発明の名称 レンズ構造およびレンズ枠  
代理人 松岡 修平  

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