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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1112076
審判番号 不服2000-8501  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-05-02 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2000-06-08 
確定日 2005-02-10 
事件の表示 平成 8年特許願第134984号「ハンドフリーコンピュータ装置とハンドフリーで情報を検索および表示するための方法」拒絶査定に対する審判事件[平成 9年 5月 2日出願公開、特開平 9-114543]について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 理由
1.手続の経緯、本願発明
本願は、平成8年5月29日(パリ条約による優先権主張1995年(平成7年)10月2日、アメリカ合衆国)の出願であって、その請求項15に係る発明は、平成9年5月26日付け手続補正書、平成10年5月1日付け手続補正書、平成11年7月16日付け手続補正書及び平成11年12月28日付け手続補正書によって補正された明細書の特許請求の範囲の請求項15に記載された事項により特定される次のとおりのもの(以下、「本願発明」という)である。(なお、平成12年7月10日付け手続補正は、却下された。)
「作動手段、表示装置、およびプロセッサ手段を含むハウジングを含み、コンピュータが提供する画像をユーザが手を使わずに見れるようにユーザに装着した前記表示装置および前記作動手段を有する移動式ハンドフリーコンピュータシステムを提供および利用する段階と、
前記プロセッサ手段は、内部記憶手段を含み、且つ、ユーザには装着されないもので、通常のキーボード無しに前記作動コマンドだけを用いて手を使わずに作動させて、そのプロセッサの動作をコンピュータコマンドに変換するハンドフリー作動コマンドを用いて指示する段階と、
前記プロセッサ手段の中で作動コマンドを電気信号に変換し、前記プロセッサが、前記コマンドを電気信号または情報によって認識し、前記情報を前記表示装置に交信することによって前記認識されたコマンドに応答する段階と、
前記コンピュータシステムが、ハンドフリー作動コマンドだけを利用して受信情報を手を使わずに表示すべく作動できるようにするという段階と、
音声作動手段、眼球追跡作動手段、脳波作動手段、およびその組み合わせからなる群から利用可能であるハンドフリー作動手段を作動する段階を有するハンドフリーで情報を検索および表示するための方法。」

2.引用文献の記載事項
これに対して、原査定で引用された特開平7-249006号公報(以下、「引用文献1」という)には、次の技術事項が記載されている。
(a1)「【請求項1】 手を使わずに情報を検索及びディスプレイするためにユーザにより完全に支持されたコンパクトで独立した携帯用計算装置であって、
ユーザが手を使わずに運べるようにユーザにハウジングを取り外し可能に取り付けるための取り付け手段を備えたハウジングと、
前以て入力された情報を記憶するための前記ハウジング内に取り付けられた記憶手段と、
記憶されているプログラムに従って情報及びユーザのコマンドを受信し、検索し、処理するために前記記憶手段と交信する前記ハウジング内に取り付けられたプロセッサ手段と、
ユーザからのオーディオコマンドを受信し、前記受信したオーディオコマンドを電気信号に変換し、前記変換された電気信号を前記プロセッサ手段に送るために前記プロセッサ手段と交信するオーディオトランスジューサ及びコンバータ手段であって、手を使わずにユーザにより支持される前記オーディオトランスジューサ及びコンバータ手段と、
前記プロセッサ手段からの出力情報を受信し、前記受信した情報をユーザに対して表示するために前記プロセッサ手段と交信する計算機ディスプレイ手段と、
ユーザの視野の一部において前記計算機ディスプレイ手段を手を使わずに運べるように前記計算機ディスプレイ手段をユーザに取り付け、それによって、オーディオコマンドのみを使用して手を使わない方法で前記検索された情報を表示するように前記計算装置を動作させることが可能である手段を有し、
前記プロセッサ手段が、前記変換された電気信号の中のコマンドを認識して前記記憶手段から対応する情報を検索して出力することにより認識されたコマンドに応答するための手段を有するものである計算装置。」
(a2)「【請求項12】 ユーザにとってコンパクトで独立した携帯用計算装置により、手を使わずに情報を検索して表示するための方法において、
ユーザにより手を使わずに運べるように、記憶手段とプロセッサ手段とを有するハウジングをユーザに取り付ける過程と、
ユーザの視野の一部においてユーザが手を使わずに運べるように計算機ディスプレイデバイスをユーザに取り付ける過程と、
手を使わずに運べるよう、また、ユーザからの口頭発話を受け取るようにオーディオトランスジューサをユーザに取り付ける過程と、
前記オーディオトランスジューサでユーザからの口頭発話を受け取る過程と、
前記オーディオトランスジューサで前記受け取った口頭発話を電気信号に変換する過程と、
前記変換された電気信号を前記オーディオトランスジューサから前記プロセッサ手段へ転送する過程と、
前記受け取った口頭発話にマッチするユーザコマンドを識別するために前記プロセッサ手段により前記変換された電気信号を認識する過程と、
記憶されているプログラムに従って前記プロセッサ手段によりユーザコマンドを処理する過程とを有し、
前記処理する過程が、ユーザコマンドが情報検索リクエストを表すかどうかを判定する過程と、ユーザコマンドが情報検索リクエストを表す場合には、前記記憶装置に前以て入力されたデータベースから要求された情報を検索する過程と、
ユーザに対して検索した情報を前記計算機ディスプレイデバイス上に表示する過程とを有し、これにより、オーディオコマンドのみを用いて手を使用しない方法で前記検索された情報を表示するように計算装置を動作させる方法。」
(a3)「【産業上の利用分野】
本発明は概して計算機に関し、更に詳細には、手を使用せずユーザによって支持され、頭部で支持された接眼ディスプレイ及び音声認識能力を備えたた携帯用計算機に関する。」(【0001】参照)
(a4)「【課題を解決するための手段】
本発明は、手を使用することなしに情報を検索し、その情報をユーザに対して表示するためにユーザによって完全に支持されたコンパクトで独立した携帯用計算装置に関する。本計算装置は、ユーザによって支持するためにハウジングを取り外し可能にユーザに取り付ける手段を備えたハウジングを有する。更に、本ハウジングは、事前に入力された情報を記憶するための記憶手段、及び、記憶されているプログラムに従って情報及びユーザのコマンドを受信、検索及び処理するために記憶手段と交信するプロセッサ手段を有する。更に、本計算装置は、ユーザからオーディオコマンドを受信し、受信したオーディオコマンドを電気信号に変換し、変換した電気信号を認識し、そして、認識した電気信号をプロセッサ手段に送るために、プロセッサ手段と交信するオーディオトランスジューサ及びコンバータ手段を有し、前記のオーディオトランスジューサ及びコンバータ手段は同様にユーザによって支持される。更に、本計算装置は、プロセッサ手段から情報を受信し、そして、受信した情報をユーザに対して表示するために、プロセッサ手段と交信するディスプレイ手段を有し、前記ディスプレイ手段はユーザによって支持され、それにより、ユーザは、オーディオコマンドのみを用いて手を使用しない方法により、情報を表示するように計算装置を操作することが可能である。」(【0005】参照)
(a5)「計算機102は、本実施例においてはストラップ又はベルト104に相当する取付け手段を備えた、例えばシステムユニット106のようなハウジングを有し、この場合の取付け手段は、ユーザがハウジング又はシステムユニットを支えるようにユーザに取り付ける目的でオペレータの腰の周りに装着されるように工夫されている。」(【0007】参照)
(a6)「計算機102は、システムユニット106から情報を受信し、受信した情報をユーザ又はオペレータに対して表示するためのディスプレイ手段を有する。」(【0008】参照)
(a7)「計算機102は、ユーザからのオーディオコマンドを受信し、受信機のオーディオコマンドを電気信号に変換し、変換された電気信号を認識し、認識された電気信号をシステムユニット106内のプロセッサに送るために、システムユニット106と連絡したオーディオトランスジューサ及びコンバータ手段を有する。」(【0009】参照)
(a8)「ユーザは、マイクロホン122によって計算機システム102を口頭で制御し、タスクの遂行を妨げないようにユーザを手を使わないモード(ハンドフリーモード)に維持しながら、所要の情報を表示させることが可能である。」(【0011】参照)
(a9)「背後パネル308には、システムユニット106をベルト104に取り付けるために、クリップ328が連結されている。」(【0012】参照)
(a10)「【図1】 本発明に従った計算機を装着したオペレータの概略正面図である。
【図2】 図1の計算機を装着したオペレータの概略側面図である。
【図5】 図1の計算機の概略構成図である。」(【図面の簡単な説明】参照)
以上の記載から、引用文献1には、本願発明の記載に従って記載すると次の発明が記載されている。
「マイクロホン122、ディスプレイスクリーン110、およびプロセッサ手段(CPU504、メモリー506)を有するハウジング(システムユニット106)を含み、計算機102が提供する画像をユーザが手を使わずに見れるようにユーザに装着した前記ディスプレイスクリーン110および前記マイクロホン122を有する携帯用計算機102を提供および利用する段階と、
前記プロセッサ手段は、メモリー506を含み、且つ、ユーザに取り外し可能に装着されるもので、通常のキーボード無しにオーディオコマンドだけを用いて手を使わずに作動させて、そのプロセッサの動作を計算機の処理に変換するオーディオコマンドを用いて指示する段階と、
前記プロセッサ手段の中でオーディオコマンドを電気信号に変換し、前記プロセッサが、前記コマンドを電気信号または情報によって認識し、前記情報を前記ディスプレイスクリーン110に交信することによって前記認識されたコマンドに応答する段階と、
前記携帯用計算機102が、オーディオコマンドだけを利用して受信情報を手を使わずに表示すべく作動できるようにするという段階と、
マイクロホン122を作動する段階を有するハンドフリーで情報を検索および表示するための方法。」

また、原査定で引用された特開平6-51901号公報(以下、「引用文献2」という)には、次の技術事項が記載されている。
(b1)「使用者に提供すべき情報を表示する小型の表示手段と;この表示手段の表示画面前方に設置されて表示画面を拡大する可動レンズ系と;使用者の視線の方向を検出する眼球追跡手段と;少なくとも前記表示手段、可動レンズ系および眼球追跡手段を、使用者の頭部に装着固定する固定手段と;前記眼球追跡手段からの信号および事前に行なった校正データに基づき、使用者の注視点を表示画面上の座標点に変換する変換手段と;前記眼球追跡手段からの信号に基づき、所定の注視範囲に対する注視の継続時間を検出する注視時間検出手段と;前記変換手段および注視時間検出手段からの信号に基づき、表示画面の表示内容を制御する表示制御手段と;を具備することを特徴とする視線認識によるコミュニケーション装置。」(【請求項1】参照)
(b2)「このように、眼球15の動きを追跡して、虚像スクリーン10上の視点19の座標を求め、その視点19の注視継続時間と音声とを用いて、画面表示を制御するようにしているので、操作に両手を必要としない。」(【0041】参照)

さらに、原査定で引用された特開昭64-18814号公報(以下、「引用文献3」という)には、次の技術事項が記載されている。
(c1)「二次元の表示ディスプレイと、該表示ディスプレイの使用者の脳内に発生する神経細胞の磁気反応を検出する、超伝導素子を用いた磁気センサと、該磁気センサの出力に基づいて、前記表示ディスプレイ上に表示された複数個の情報の中から、使用者が注視した情報を検知し、その注視された情報の入力を行う情報処理手段とを具備することを特徴とする情報入力装置。」(特許請求の範囲1)参照)

3.対比
本願発明と、引用文献1に記載された発明とを対比する。
引用文献1に記載された発明おける「マイクロホン122」、「ディスプレイスクリーン110」、「(携帯用)計算機102」、「メモリー506」、「オーディオコマンド」、「計算機の処理」は、それぞれ、本願発明の「(音声)作動手段」、「表示装置」、「(移動式ハンドフリー)コンピュータ(システム)」、「内部記憶手段」、「(ハンドフリー)作動コマンド」、「コンピュータコマンド」に相当する。
したがって、本願発明と引用文献1に記載された発明とは次の一致点及び相違点を有する。
(一致点)
「作動手段、表示装置、およびプロセッサ手段を含むハウジングを含み、コンピュータが提供する画像をユーザが手を使わずに見れるようにユーザに装着した前記表示装置および前記作動手段を有する移動式ハンドフリーコンピュータシステムを提供および利用する段階と、
前記プロセッサ手段は、内部記憶手段を含み、通常のキーボード無しに前記作動コマンドだけを用いて手を使わずに作動させて、そのプロセッサの動作をコンピュータコマンドに変換するハンドフリー作動コマンドを用いて指示する段階と、
前記プロセッサ手段の中で作動コマンドを電気信号に変換し、前記プロセッサが、前記コマンドを電気信号または情報によって認識し、前記情報を前記表示装置に交信することによって前記認識されたコマンドに応答する段階と、
前記コンピュータシステムが、ハンドフリー作動コマンドだけを利用して受信情報を手を使わずに表示すべく作動できるようにするという段階と、
音声作動手段をハンドフリー作動手段として作動する段階を有するハンドフリーで情報を検索および表示するための方法。」

(相違点1)
プロセッサ手段は、本願発明においては、ユーザには装着されないものであるのに対し、引用文献1に記載された発明では、ユーザーに取り外し可能に装着されるものである点。
(相違点2)
本願発明においては、(プロセッサの動作を指示する)ハンドフリー作動手段が、音声作動手段、眼球追跡作動手段、脳波作動手段、およびその組み合わせからなる群から利用可能であるのに対し、引用文献1に記載された発明では、マイクロフォン(「音声作動手段」に相当)のみがプロセッサのハンドフリー作動に用いられる点。

4.当審の判断
相違点について検討する。
(相違点1)について
引用文献1に記載された発明において、プロセッサ手段は、ユーザに取り外し可能に装着されるものであり、また、ユーザから取り外した状態においても使用可能であることは明らかであるから、これを必要に応じて取り外した状態でも使用することは当業者が容易に想到できたものである。
(相違点2)について
ハンドフリーでプロセッサの動作を指示する手段として、眼球追跡作動手段、脳波作動手段、複数の作動手段を組み合わせたものは、それぞれ、引用文献2、引用文献3に記載されているように当業者に周知の技術であるから、引用文献1に記載された発明において、ハンドフリー作動手段として、音声作動手段に加えて上記周知の眼球追跡作動手段、脳波作動手段、および複数の作動手段を組み合わせたものから利用可能にすることは当業者が容易に想到できたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願の請求項15に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献2、引用文献3に記載された周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2002-09-05 
結審通知日 2002-09-06 
審決日 2002-09-19 
出願番号 特願平8-134984
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 竹井 文雄堀江 義隆圓道 浩史津幡 貴生  
特許庁審判長 片岡 栄一
特許庁審判官 今井 義男
千葉 輝久
発明の名称 ハンドフリーコンピュータ装置とハンドフリーで情報を検索および表示するための方法  
代理人 小堀 益  

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