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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C07K
管理番号 1112161
審判番号 審判1999-7642  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2005-04-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-05-13 
確定日 2005-02-16 
事件の表示 平成 3年特許願第506363号「ポリペプチドの精製方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 3年10月17日国際公開、WO91/15502〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、1991年3月29日(優先権主張 1990年3月30日 日本国、1990年8月10日 日本国)を国際出願日とする特許出願であって、その請求項1〜3に係る発明は、平成11年6月14日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1〜3に記載された以下の通りのものと認める(以下、各発明を「本願発明1」〜「本願発明3」という)。
「1.(a) インスリン、成長ホルモン放出因子(GRF)、上皮細胞成長因子(EGF)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、サイモシンα1、サイモシンβ4、サイモポエチン、トランスホーミング成長因子(TGF-α)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、軟骨因子(CDF)、インターロイキン-2及びインターロイキン3から成る群から選択された分子量15,000以下の粗製ポリペプチドを含む水性溶液をpH1〜4の範囲に調整して夾雑物を沈殿させ、次いで除去する工程、ならびに
(b) 逆相系高速流体クロマトグラフィー用充填剤を濾過床とし、その上に前記工程(a) で得られた上清を通過させることにより前記ポリペプチドを該逆相系高速クロマトグラフィー用充填剤に吸着させ、次いで目的ポリペプチドを溶出する工程、
を含んでなるポリペプチドの精製方法。
2.前記精製ポリペプチドが、融合ポリペプチドを目的の生理活性ポリペプチド部分とそれに融合していた他のタンパク質部分とに開裂したものである、請求項1記載の方法。
3.前記濾過床をブフナー漏斗上に形成する請求項1又は2に記載の方法。」

2.引用文献の記載事項
これに対し、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先日前に頒布された引用文献3〜6には、次の事項が記載されている。
(1)引用文献3:J. Chromatogr. (1987), 411, p.345-354
(1-1)「Plasmodium faleiparum由来のマラリアサーカムスポロゾイト蛋白の免疫的に優勢な繰り返し領域が、組換え大腸菌から精製され、サブユニットワクチンとしての可能性について研究された。組換え蛋白R32Leu-Argは、サーカムスポロゾイト蛋白(R32)からの32テトラペプチド反復配列から構成され、ジペプチドLeu-Argに結合している。R32Leu-Argは、温度、硫安及び酸性pHによる処理を含む一連の沈澱ステップ、及び、その後の逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)により、精製された。」(345頁要約1〜7行)
(1-2)「R32Leu-Argの精製 100gの大腸菌細胞ペレットは、400mlの50mMトリス、2mM EDTA、5%グリセリンのpH8緩衝液400ml中での懸濁により溶解された。その後の全ての手順は4℃で行われた。リゾチームが最終濃度0.2mg/mlになるように加えられ、懸濁液は30分間撹拌された。溶菌液は1分間隔で3回ワーリングブレンダー中で混合され、その後、1分間隔で3回ブランソン モデル350音波処理機で音波処理された。DOCが溶菌懸濁液に濃度0.1%(w/v)となるように加えられ、混合液は、30分間撹拌され、12000gで1時間遠心処理された。上澄は、沸騰水浴で5分間撹拌しながら熱せられ、室温で1時間冷却され、熱処理された懸濁液は、上記のように30分間遠心分離された。粗抗原は、熱処理上澄みから、35-50%硫安ペレット中に沈澱し、該ペレットは、100mlの50mMトリス(pH8)中に再溶解された。該溶液は、10%TFAの滴下によりpH2に酸性化され、1時間撹拌され、前記のように30分間遠心分離された。上清は、Beckman Model 344M 液体クロマトグラフをGibson HM Holochrome 紫外線検出器と組み合わせて用い、25x1cm I.D.、Vydac C4、300-Å、5μmカラムによるRP-HPLCにより精製された。サンプル量は、蛋白約20mgであった。」(347頁8〜24行)
(1-3)「再溶解ペレットは、酸処理され、非蛋白夾雑物、特に核酸の大部分が除去される。」(349頁25〜27行)
(1-4)「変性SDSゲル中の電気泳動により、明らかに約90000ダルトンの分子量のものが認められた。これは、R32Leu-Argのアミノ酸組成から予測される理論値13400よりも約7倍大きい。」(351頁下から7〜4行)
(2)引用文献4: 特開昭60-123500号公報
(2-1)「トリ鰓後体を酸性水溶液で抽出した後、次の処理(a)〜(d): (a)目的物含有水溶液に親水性有機溶媒を添加して高分子量体を沈澱せしめ除去する (b)カチオン交換樹脂を用いて塩基性画分を回収する (c)ゲルクロマトグラフィーにより分子量3000〜4000の画分を回収する (d)高速液体クロマトグラフィーによりカルシトニン様生理活性を有する画分を回収する のうち少なくとも1種の処理を施すことを特徴とする 次式:(省略)で示される新規カルシトニン又はその塩の採取法」(特許請求の範囲第2項)
(2-2)「本発明に係る血中カルシウム濃度を低下させる生理活性を有する新規CTの化学的性質は次の如くである。……溶媒に対する溶解性:水、特に酸性水溶液に可溶、クロロホルム、四塩化炭素、ベンゼン、ヘキサンなどに不溶」(2頁右下欄1〜7行)
(2-3)「出発原料をその約5〜10倍量(重量比)の酸性水溶液、好ましくは揮発性の酸性水溶液(例えば、酢酸、ギ酸などの水溶液)中で破砕・混和し、ニワトリCTの懸濁溶液を得る。この場合、用いる酸性水溶液は、pH1〜5であることが好ましい。次いで、この溶液を遠心することにより、中間層にやや透明なCT抽出液が形成される。ここで沈澱物は、主に鰓後体の組織片及び不溶物であり、上層部は、主に脂肪の白色のかたまりである。中間層を採取し、次の処理工程に供する。」(3頁左下欄11〜20行)
(3)引用文献5: J. Biol. Chem. (1983) 258(9), p.5463-5466
(3-1)「プレプロカルシトニンに由来する非カルシトニン分泌ペプチドの精製及びアミノ酸配列」(5463頁表題)
(3-2)「1-2-4腫瘍系のラット腫瘍は、0.1N塩酸中で抽出され、900μgの免疫反応性のペプチドが得られた。該ペプチドは、1)トリクロロ酢酸による夾雑蛋白質の沈澱、2)ゲル濾過、及び最終的に3)逆相高速液体クロマトグラフィー、により均一になるまで精製された。」(5463頁要約13〜18行)
(3-3)「トリクロロ酢酸は、最終濃度が5%になるように、徐々に添加された。懸濁液は、前記のように遠心処理され、得られた上澄は、同量の水で飽和されたジエチルエーテルで3回抽出された。」(5463頁右欄本文下から6〜2行)
(4)引用文献6: Agric. Biol. Chem. (1988) 52(11), p.2823-2830
(4-1)「鮭カルシトニンI(SCT)は、組換プラスミドにより形質転換された大腸菌で生産された。SCT-Glyをコードし、上流にATG、下流に縦に並んだ停止コドンを有する二重鎖DNAが、化学合成及び酵素処理の組み合わせにより構築された。シュードモナス・プチダ由来のメタピロカテカーゼ(C23O)のN末部分とその上流のリボソーム結合部位の遺伝子が、前記合成遺伝子に融合された。この断片の大腸菌への導入は、tacプロモーターの制御下で高効率での融合蛋白の生産をもたらした。該蛋白の臭化シアンによる開裂の後、SCT-Glyは、ゲル濾過及び逆相クロマトグラフィーにより、均一になるまで精製された。該ペプチドの構造は、アミノ酸組成及び配列分析により確認された。該細菌生産物の血清カルシウム低下作用は、SCTの約7分の1であった。」(2823頁要約)

3.対比
次に、本願発明1と引用文献3に記載された発明(以下「引用発明」という)とを対比する。
後者の「pH2に酸性化」(前記2.(1-2)参照)は、本願発明1の「pH1〜4の範囲に調整」に相当する。また、後者において精製の対象とされている「R32Leu-Arg」を含む溶液は、「R32Leu-Arg」の分子量の理論値が13400である(前記2.(1-4)参照)から、前者の「分子量15,000以下の粗製ポリペプチド」に相当する。また、ポリペプチドをカラムによる逆相高速クロマトグラフィー(RP-HPLC)により精製する場合、逆相系高速流体クロマトグラフィー用充填剤に精製対象物を通過させて、目的ポリペプチドを該逆相系高速クロマトグラフィー用充填剤に吸着させ、次いで目的ポリペプチドを溶出する工程が必要であることは技術常識である。
したがって、本願発明1と引用発明とは、「(a) 分子量15,000以下の粗製ポリペプチドを含む水性溶液をpH1〜4の範囲に調製して夾雑物を沈殿させ、次いで除去する工程、ならびに
(b) 逆相系高速流体クロマトグラフィー用充填剤に前記工程(a) で得られた上清を通過させることにより前記ポリペプチドを該逆相系高速クロマトグラフィー用充填剤に吸着させ、次いで目的ポリペプチドを溶出する工程、
を含んでなるポリペプチドの精製方法。」である点で一致し、以下の点で一応相違している。

相違点:
(1) 精製する対象である「分子量15,000以下の粗製ポリペプチド」が、前者では、「インスリン、成長ホルモン放出因子(GRF)、上皮細胞成長因子(EGF)、心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)、サイモシンα1、サイモシンβ4、サイモポエチン、トランスホーミング成長因子(TGF-α)、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)、カルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)、軟骨因子(CDF)、インターロイキン-2及びインターロイキン3から成る群から選択された」ものであるのに対し、後者では、「R32Leu-Arg」である点
(2) 逆相系高速流体クロマトグラフィー用充填剤を、前者では、濾過床とし、その上に溶液を通過させているのに対し、後者では、カラムに詰め、その上に溶液を通過させている点

4.相違点(1)についての判断
引用文献4には、ニワトリカルシトニンを、pH1〜5の酸性水溶液中での沈澱物の除去、および高速液体クロマトグラフィー等の手段により精製することが記載されている。引用文献5には、プレプロカルシトニン由来ペプチドを、酸(なお、トリクロロ酢酸5%溶液のpHは、1〜5の範囲内と認められる)による夾雑蛋白質の沈澱、及び逆相高速クロマトグラフィーを用いて精製することが記載されている。引用文献6には、鮭カルシトニンを逆相クロマトグラフィーで精製することが記載されている。これら引用文献4〜6において、精製されるポリペプチドは、いずれもカルシトニン遺伝子関連ペプチドである。このように、カルシトニン遺伝子関連ペプチドを酸沈殿や逆相高速クロマトグラフィーを用いて精製することは、従来から知られていることである。
(なお、ペプチドの精製において、酸性条件下で夾雑蛋白質を沈澱させ除去すること、及びRP-HPLCを用いることは、社団法人日本生化学会編「新生化学実験講座1 タンパク質I -分離・精製・性質-」株式会社東京化学同人、1990年2月26日発行の128、262〜286頁の記載からも明らかなように、周知技術でもある。)
したがって、引用文献3に記載された、酸沈殿及び逆相高速クロマトグラフィーを用いた精製において、精製対象として「R32Leu-Arg」の代わりにカルシトニン遺伝子関連ペプチドを選択することは当業者が容易に想到しうることである。

5.相違点(2)についての判断
「濾過」とは、「多孔性の膜や層のろ剤を通して、気体あるいは液体の流動相のみを通過させ、混在する固体粒子を分離する操作。」(「世界大百科事典」1988.4.28、平凡社、「ろか」の項)、「固体微粒子を含む流体を、ろ材または隔膜を強制的に通過させ、固体と清澄な流体に分離する技術」(講談社出版研究所編「世界科学大事典」昭52-3-20、株式会社講談社、「ろ過」の項)を意味するものと認められる。
そして、周知のカラムを用いたRP-HPLC(カラム法)においても、カラム中の粒子状の充填剤が、上記のような濾過機能を有していることは明らかである(なお、引用発明における充填材がろ過機能を有していないということであれば、本願発明1の充填剤もろ過機能を有していないことになり、「ろ過床」という記載は技術的に不明瞭なものとなる。)。
とすれば、引用発明のようにカラム法により精製する場合も、充填剤からなる層は、濾過床に相当するものということができ、その上に溶液を通過させている(本願発明1の「上に」が、「上方から」との意味であるのか、「表面に」との意味であるのかは不明瞭であるが、例え、「上方から」の意味であったとしても、カラム法において、縦型のカラムを用い、上方から溶液を供給することはごく一般的なことに過ぎない)ことになる。すなわち、引用発明も逆相系高速流体クロマトグラフィー用充填剤を濾過床とし、その上に精製すべき溶液を通過させているものと認められるから、この点は実質的な相違点とは認められない。
(なお、本願の発明の詳細な説明に記載された実施例は、ブッフナー漏斗を用いたものであるが、同様に、漏斗上にクロマトグラフィ要素からなる濾過床を形成したものを用いて、物質の精製を行うことは、特開昭48-38877号公報に記載されている。)

6.総合的判断
請求人は、審判請求書に実験報告書を添付し、引用文献記載の方法と比較して、本願発明は、濾過床を100回以上反復して使用できるという予想外の効果が得られるものであると主張する。これは主に上記相違点(2)に基づく効果についての主張と思われるが、この点は実質的な相違点とはいえないことは前記の通りである。そして、この実験報告書は、その実験条件を見る限り、本願発明1に含まれる特定の実施の態様、具体的には本件発明3のうち請求項2を引用する部分について、その効果を示そうとするものであって、本願発明1の範囲全体についての効果を示すものではない。また、以下の点からみても、本願発明の顕著な効果についての請求人の主張はこれを採用することができない。
(1) 実験報告書において、本願発明の方法として記載された実験例(以下「本件実験例」という)と比較されている方法の実験例(以下「従来実験例」という)は、酸沈殿を行っていない方法であって引用発明の方法とは異なっている。
(2) 本件実験例では、吸着後に、溶出前に4回洗浄しているのに対し、従来実験例では、そのような洗浄を行っていない。
(3) 本件実験例は、吸着、濾過を吸引しながら行っているのに対し、本願発明1は吸引を構成要件としておらず、一般的には、吸引した方が液が濾過床を通過しやすくなると認められるから、この点でも、実験報告書の実験条件は適切なものとは認められない。
(4) 精製方法の効果は、精製対象のタンパク質の性質や、夾雑物の種類(例えば組換え蛋白であれば、宿主によって相違する)によっても相違するものと認められ、一例を以て本願発明が顕著な効果を奏するものとは認められない。
(5) そもそも本願の出願当初の明細書又は図面には、「吸着方法としては、担体と溶液中のポリペプチドが接触できる方法ならいずれの方法でもよく、例えばポリペプチドが溶解している溶液中に適量の担体を入れ、撹拌又は浸透することにより接触を促進し、吸着させる方法、適当な材質のチューブに担体を充填し、ポリペプチド溶液を通過させ吸着させる方法、担体を濾過床とし、ポリペプチド溶液をその上に注ぎ吸引することにより通過、吸着させる方法等があるが、ペプチドが担体と接触し、吸着させる方法であれば特に限定されるものではない。」と記載されており、特に、担体を濾過床とし、ポリペプチド溶液をその上に注ぎ吸引することにより通過、吸着させる方法が、他の接触・吸着方法と比較して顕著な効果を奏することを伺わせるような記載はない。請求人の主張は、発明の詳細な説明に記載されておらず、当業者がその推論もできない効果についての主張であり、進歩性の判断において参酌することはできない。
したがって、本願発明1が、引用発明と比較して、格別顕著な効果を奏するものであるとはいえない。
以上のことから判断して、本願発明1は、引用文献3〜6に記載された事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものである。

7.むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用文献3〜6に記載された事項に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。したがって、本願発明2及び3については判断を示すまでもなく、本願は特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-12-16 
結審通知日 2004-12-21 
審決日 2005-01-11 
出願番号 特願平3-506363
審決分類 P 1 8・ 121- Z (C07K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大久保 元浩光本 美奈子  
特許庁審判長 鵜飼 健
特許庁審判官 長井 啓子
佐伯 裕子
発明の名称 ポリペプチドの精製方法  
代理人 戸田 利雄  
代理人 西山 雅也  
代理人 石田 敬  
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