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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 C08J |
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管理番号 | 1112228 |
審判番号 | 不服2002-6348 |
総通号数 | 64 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1994-06-07 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-04-12 |
確定日 | 2005-02-18 |
事件の表示 | 平成 4年特許願第315165号「耐擦傷性を有するトリアセチルセルロースフィルム、偏光板及びその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 6年 6月 7日出願公開、特開平 6-157791〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成4年11月25日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成14年2月6日付け手続補正書で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める(以下、「本願発明1」という)。 「【請求項1】 トリアセチルセルロースフィルム上に、電離放射線硬化型樹脂100重量部に対して溶剤乾燥型樹脂としてセルロース系樹脂を10重量部以上100重量部以下含む塗料組成物を塗布し、電離放射線を照射して塗膜を硬化することにより得られる、硬化塗膜を形成してなることを特徴とする耐擦傷性を有するトリアセチルセルロースフィルム。」 2.引用刊行物記載の発明 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願日前に頒布された特開昭57-165252号公報(以下、「引用刊行物」という)には、以下の事項が記載されている。 (1)「放射線により重合可能な不飽和結合を有する化合物とZn…Sn…Wの中から選ばれる少くとも1種以上の金属の酸化物または/及びこれらの金属の酸化物より構成された少くとも1種以上の金属複合酸化物を主体とする導電性微粒子とよりなる層を少くとも1層設け放射線重合硬化せしめた事を特徴とするプラスチックフィルム。」(特許請求の範囲) (2)「本発明の上記目的はZn…Sn…Wの中から選ばれる少くとも1種以上の結晶性金属酸化物または/及びこれらの複合酸化物を主体とする導電性微粒子を放射線による重合可能な不飽和結合を有する化合物あるいは当該化合物を含有するバインダー中に分散し、プラスチックフィルム上に少なくとも1層設け該層を放射線により重合硬化せしめることにより達成された。」(第2頁右上欄10行〜18行) (3)「放射線により重合可能な不飽和結合を有する化合物としてはビニルないしビニリデン基を有するモノマー、オリゴマーあるいはポリマーであり、モノマーとしては…などを上げることが出来る。 オリゴマーあるいはポリマーとしては好ましくは主鎖に二重結合を有する化合物あるいは直鎖の両末端にアクリロイル、メタアクリロイル基を有する化合物であり、これらは…に引用されている。」(第2頁右下欄15行〜第3頁左上欄末行) (4)「導電性微粒子を上記重合性化合物に分散して塗布してもよいし、また導電性微粒子をバインダーに分散し、その分散液に上記重合性化合物を添加し塗布してもよい。 バインダーとしては通常コーティングに用いられるポリマーならばよく、例えばセルローズ・アセテート、… などのセルローズエステル類、可溶性ポリエステル、ポリカーボネート、可溶性ナイロン、ポリ塩化ビニル…アルキルアクリレート含有共重合体(アルキル基C1 〜C4 )などを上げることが出来る。」(第4頁左下欄2〜17行) (5)「バインダーと重合性化合物の重量比は好ましくは8/2〜0/10である。」(第5頁左上欄6〜8行) (6)「使用しうるプラスチツクフィルムとしては…セルローストリアセテート…のようなセルロースエステル類、…などを上げることが出来る。」(第5頁右上欄10行〜左下欄5行) (7)「これらプラスチツクフィルムへ前記の分散組成物よりなる層を設ける方法としてはブレードコート…等での塗布が利用でき…。」(第5頁左下欄6〜13行) (8)「重合硬化せしめる放射線としては電子線、紫外線、X線、γ線などを上げることができる。」(第5頁左下欄14〜15行) (9)「本発明によれば電導性微粒子分散組成物を塗布、乾燥し、次いで放射線照射することにより、実質的に透明で、耐傷性、耐摩耗性がすぐれ、かつ、帯電防止性のすぐれたプラスチツクフィルムを得ることが出来る。」(公報第5頁右下欄13〜17行) (10)「実施例1 … 上記粉末を使用し、次の組成の液をボールミルで分散した。 上記粉末 150部 ウレタン系アクリレート 20部 … 上記分散液を100μのセルロースアセテート支持体に乾燥膜厚が2μになるように塗布し、溶剤を乾燥させた。 … 」(公報第6頁左上欄9行〜左下欄7行) 3.対比・判断 本願発明1と引用刊行物に記載された事項とを対比すると、引用刊行物では、基材フィルムとして実施例1でセルロースエステル類が使用され、セルローストリアセテートフィルムも例示されており((6)、(10)参照)、ハードコート層成分についても放射線により重合可能な不飽和化合物とバインダーであるセルロースエステル類との混合物が使用でき((1)〜(4)参照)、両者の配合割合は重量比で2/8〜10/0であることが記載されている((5)参照)。 また、ハードコート層成分を基材フィルム上に塗布後、放射線を照射して硬化塗膜を形成し((1)、(2)、(7)〜(10)参照)、該塗膜が耐傷性、耐摩耗性にすぐれること((9)参照)も記載されている。 したがって、本願発明1と引用刊行物発明とは、(a)引用刊行物では、基材フィルムであるトリアセチルセルロースフィルムとハードコート層の一成分であるセルロース系樹脂とを実際に組み合わせた例が記載されていない点、(b)引用刊行物では、ハードコート層成分の放射線重合可能な不飽和化合物とバインダーであるセルロースエステル類との配合割合がより広範囲である点で本願発明1と相違する。 以下、上記相違点について検討する。 (a)トリアセチルセルロースフィルムとハードコート層のセルロース系樹脂との組み合わせについて 引用刊行物では基材フィルムとして実施例1でセルロースエステル類が使用されており、セルロースエステル類としてセルローストリアセテートも例示されているのであるから、その例示化合物を使用することは当業者にとって容易である。 また、基材フィルム上にハードコート層を形成するに際し、基材フィルムとの密着性を考慮してハードコート層の成分を選定すること自体は当業者に自明の課題であり、両者の接着性を考えた場合、一般的に基材フィルムとハードコート層成分とを類似の成分とすることが好ましいことも自明のことである。 したがって、セルローストリアセテート基材フィルムに対し、接着性の観点から基材フィルムと類似の材質であるセルロースエステル系樹脂をバインダー樹脂として採用することは当業者にとって容易である。 (b)放射線重合可能な不飽和化合物とセルロースエステル類との配合割合について ハードコート層成分の放射線重合可能な不飽和化合物とバインダーであるセルロースエステル類との配合割合についても、先行技術に示された配合範囲の中でより適切な範囲を選択することは、当業者が必要に応じ実験等により適宜なし得る程度のことである。 (他の請求項について) なお、本願発明1以外の拒絶査定の対象となった請求項についても、請求項4の付加要件「紫外線硬化型樹脂」は引用刊行物に記載されている事項であり((3)、実施例3参照)、請求項6は請求項1の発明と実質的に同一内容の発明であり、請求項3及び請求項8の付加要件「レベリング剤」はUV硬化樹脂に必要に応じ配合される一般的な成分である(例えば、「新高分子文庫21 UV硬化技術入門(加藤清視、他1名著(株)高分子刊行会1984年1月15日発行)」29頁参照。)から、それらの請求項に係る発明についても、原査定の判断に誤りはない。 4.むすび したがって、本願発明1は、引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2004-12-07 |
結審通知日 | 2004-12-16 |
審決日 | 2005-01-04 |
出願番号 | 特願平4-315165 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(C08J)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | ▲吉▼澤 英一 |
特許庁審判長 |
松井 佳章 |
特許庁審判官 |
佐野 整博 藤原 浩子 |
発明の名称 | 耐擦傷性を有するトリアセチルセルロースフィルム、偏光板及びその製造方法 |
代理人 | 光来出 良彦 |