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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 E04B
管理番号 1112384
審判番号 不服2004-17460  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2003-06-24 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-08-24 
確定日 2005-02-23 
事件の表示 特願2001-375563「断熱パネルを用いた住宅の屋根断熱構造」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 6月24日出願公開、特開2003-176594〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成13年12月10日の出願であって、各請求項に係る発明は、平成16年4月22日付けの手続補正書により補正された明細書及び出願当初の図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜9に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項6に記載の発明(以下、「本願発明6」という。)は次のとおりである。
「【請求項6】 断熱材(3)上面に遮熱材(2)の下面を固定した断熱パネル(A)であって、遮熱材(2)は、少なくとも上面の透湿防水性の防風層(9)と下面シート(23)とを含む上下複数の透湿性のシート(9,22,23)層から成り、各シート層は折曲自在な起立片(24,25)群によって連結されて各シート間に空気層空間(S)を有し、空気層空間(S)の下面を規定する少なくとも一層のシート表面が輻射熱反射層(f)を備え、防風層(9)が両側に突出縁(9E)を備えたものである、断熱パネル。」

2.引用例記載の発明
(1)原査定の拒絶の理由において引用された特開平9-184213号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下の記載がある。
「【0024】
【発明の実施の形態】図3には、本発明の断熱施工用通気部材の一実施例が示されている。この断熱施工用通気部材101は、建築物の内壁方向に配置される内壁側面材11と、外壁方向に配置される外壁側面材12と、内壁側面材11及び外壁側面材12を連結して、建築物の上下方向に連通するハニカム状の通気路14を形成する連結材13とで構成されている。この実施例の場合、外壁側面材12の両側は延出されて耳部12aをなし、この耳部12aの部分をタッカーを用いてステープル止めする方法等で柱あるいは縦胴縁に固着できるようにされている。
【0025】連結材13は、内壁側面材11及び外壁側面材12に対して折り曲げ可能とされ、それによって、図3(a)に示すように、連結材13を内壁側面材11及び外壁側面材12に対して立てた状態にもできるし、図3(b)に示すように、連結材13を内壁側面材11及び外壁側面材12に対して折り畳んだ状態にもできるようになっている。・・・」
「【0034】本発明において、内壁側面材11としては、取扱性がよいことから、可撓性を有する軽量な材料を用いることが好ましく、例えば、単位面積重量が10〜100 g/m2 のポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン等の合成樹脂からなるフィルム、これらのフィルムに多数の細孔を設けたもの、前記合成樹脂の繊維からなる不織布あるいは紙、ガラス繊維、炭素繊維等の無機繊維からなる不織布、又は、クラフト紙、ボール紙等の紙製品を使用することができる。
【0035】なお、通気部材を断熱材と外壁との間に配置する場合は、内壁側(室内側)から断熱材内部へ入り込んだ湿気を、通気路14へ逃がすことを可能とするため、透湿性のあるものがより好ましく、特に、透湿性と防水性を兼ね備えた、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂繊維からなる不織布性のシート、防水加工した紙製のシートが好ましく使用される。」
「【0038】・・・更に、通気部材と外壁下地材又は外壁仕上げ材を別々に配設する場合には、外壁側に配設される面材は、外壁側(室外側)から外壁内側へ入り込んだ湿気を通気路に逃がすことを可能にするために透湿性を有する材料を用いることが好ましく、特に、万一外壁側から雨水等が侵入した際に、断熱材まで浸透することを防止するために透湿性と防水性とを兼ね備えた、ポリエチレン、ポリプロピレン等の合成樹脂繊維からなる不織布製のシート、防水加工した紙製のシートを用いることが好ましいが、この場合には防風シートとしての機能を兼ね備えることになる。」
「【0052】図8には、本発明の通気部材付き断熱材の一実施例が示されている。この通気部材付き断熱材301は、図1に示した通気部材101と、断熱材201とを予め一体化したものである。・・・」
これらの記載からみて、引用例1には、「断熱材201上面に通気部材101の下面を固定した通気部材付き断熱材301であって、通気部材101は、少なくとも上面の透湿防水性の外壁側面材12と内壁側面材11とを含む上下複数の透湿性のシート層から成り、各シート層は折曲自在な連結材13群によって連結されて各シート間に通気路14を有し、外壁側面材12が両側に耳部12aを備えたものである、通気部材付き断熱材301。」の発明が記載されているものと認める。

(2)同特開2000-355989号公報の第1頁〜第11頁(以下、「引用例2」という。)には、以下の記載がある。
「【0005】
【課題を解決するための手段及び作用】本発明は、上記目的を達成するために、例えば図1に示す如く、住宅の屋根4内面や、居室Rを囲う天井3や壁等の仕切面材の外面適所にボード状断熱材2を配置し、ボード状断熱材2の外面には、少なくとも上面シート11が上面に熱反射箔Mを備えた複数シート11,12,13から成り、且つ各シート間には倒伏可能な起立片14,15群によって空気層空間Sを形成した遮熱材1を配置し、遮熱材1によって断熱材2への熱の蓄積を軽減する住宅の断熱構造とした(請求項1)。」
「【0011】また、複数シート11,12,13から成る遮熱材1は、少なくとも上面シート11及び次層のシート13が上面に熱反射箔Mを備えているため(請求項2)、比較的汚れ易い上面シート11の熱反射箔Mが微細な塵埃によって熱反射性能を低下し、熱線の一部を下方へ透過しても、次層シート13上面の熱反射箔(アルミニウム箔)の熱反射性能によって遮熱材1全体としての輻射熱(熱線)反射性能の低下を防ぐことが出来、遮熱材1の熱線阻止機能は保持される。・・・」

3.対比・判断
本願発明6と引用例1記載の発明とを対比すると、引用例1記載の発明の「通気部材付き断熱材301」、「外壁側面材12」、「内壁側面材11」、「連結材13」、「通気路14」、「耳部12a」は、それぞれ、本願発明6の「断熱パネル」、「防風層」、「下面シート」、「起立片」、「空気層空間」、「突出縁」に相当する。また、本願発明6の「遮熱材」は、空気層空間による空気流通作用を備えているから、「通気部材」ともいえる。
以上のことから、両発明は、
「断熱材上面に通気部材の下面を固定した断熱パネルであって、通気部材は、少なくとも上面の透湿防水性の防風層と下面シートとを含む上下複数の透湿性のシート層から成り、各シート層は折曲自在な起立片群によって連結されて各シート間に空気層空間を有し、防風層が両側に突出縁を備えたものである、断熱パネル。」
の点で一致しており、次の点で相違していると認められる。

相違点:本願発明6の通気部材(遮熱材)は、空気層空間の下面を規定する少なくとも一層のシート表面が輻射熱反射層を備えた遮熱材であるのに対して、引用例1の通気部材は、そのような構成を備えていない点。

相違点について検討すると、引用例2には、空気層空間の下面を規定する少なくとも一層のシート表面が輻射熱反射層を備えた遮熱材が記載されており、また、透湿性を有する遮熱材自体は、この出願前周知である(特許第2839230号公報参照、また、引用例2にも段落0043に断熱材を覆う多数の細孔を開けた金属蒸着ポリエチレンフィルム等からなる透湿シートが記載されている。)から、上記引用例2記載の遮熱材を引用例1記載の発明の通気部材に適用して、輻射熱反射層を備えた透湿性の通気部材として、本願発明6の上記相違点に係る構成とすることは、当業者が容易に想到できたことにすぎない。
さらに、本願発明6のように構成したことによって奏する明細書記載の作用効果は、引用例1記載の発明に引用例2記載の発明を適用することによって当然に生じる作用効果にすぎない。

4.むすび
したがって、本願発明6は、引用例1、2記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願の他の請求項に係る発明を検討するまでもなく、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-12-21 
結審通知日 2004-12-27 
審決日 2005-01-07 
出願番号 特願2001-375563(P2001-375563)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (E04B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 家田 政明  
特許庁審判長 田中 弘満
特許庁審判官 ▲高▼橋 祐介
新井 夕起子
発明の名称 断熱パネルを用いた住宅の屋根断熱構造  
代理人 戸田 利雄  

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