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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  C08L
管理番号 1112918
異議申立番号 異議2003-70171  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2001-01-16 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-01-22 
確定日 2004-12-01 
異議申立件数
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3304954号「シーラント用硬化性組成物」の請求項1ないし5に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 訂正を認める。 特許第3304954号の請求項1〜4に係る特許を取り消す。 
理由 [1]手続きの経緯
本件特許第3304954号に係る出願は、平成3年3月11日に出願された特願平3-45242を原出願とする分割出願として平成12年6月12日に出願され、平成14年5月10日に特許権の設定登録がなされ、その後、旭硝子株式会社より特許異議の申立がなされ、平成15年5月21日付けで取消の理由が通知され、その指定期間内である平成15年7月29日付けで訂正請求書と特許異議意見書の提出がなされ、さらに、平成15年11月19日付けで特許異議申立人から上申書が提出されたものである。
[2]訂正の適否
1.訂正の趣旨
(1)訂正事項A:特許請求の範囲の請求項1における「1.6以下」を「1.5以下」と訂正する。
(2)訂正事項B:特許請求の範囲の請求項2を削除する。
(3)訂正事項C:請求項3,4及び5をそれぞれ請求項2,3及び4に繰上げ、請求項3において引用している「請求項1又は2」を「請求項1」と訂正し、請求項4において引用している「請求項1〜3のいずれか1項」を「請求項1又は2」と訂正し、請求項5において引用している「請求項1〜4のいずれか1項」を「請求項1〜3のいずれか1項」と訂正する。
(4)訂正事項D:段落【0005】における「1.6以下」を「1.5以下」と訂正する。
2.訂正の適否についての判断
(1)訂正事項A
訂正事項Aは、オキシプロピレン重合体のMw/Mnの値である「1.6以下」を「1.5以下」とするものであるが、Mw/Mnの値が好ましくは1.5以下であることは特許明細書の段落【0017】及び原出願の出願当初の明細書に記載されていたことであり、「1.6以下」を「1.5以下」とする訂正は、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(2)訂正事項B
訂正事項Bは請求項2を削除するのであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とした明細書の訂正に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(3)訂正事項C
訂正事項Cは訂正事項Bによって請求項2が削除されたことに伴い、請求項3以下の請求項の番号及びそこで引用されている請求項の番号を繰り上げ訂正するものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(4)訂正事項D
訂正事項Dは発明の詳細な説明における請求項1に対応する記載である段落【0005】において、訂正事項Aによる訂正と同趣旨の訂正を行い、明細書の整合性を維持しようとするものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、実質上特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
そして、訂正事項A〜Dは、いずれも願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内での訂正である。
(5)むすび
以上のとおりであるから、上記訂正は、特許法の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第6条第1項の規定によりなお従前の例によるとされる、特許法第120条の4第3項において準用する平成6年法律第116号による改正前の特許法第126条第1項ただし書、第2項及び第3項の規定に適合するので、当該訂正を認める。
[3]本件発明
本件特許第3304954号の請求項1〜4に係る発明は、訂正された特許明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により構成される次のとおりのものである。
「【請求項1】 (A)重合体主鎖が
【化1】 CH3

式 ―CH―CH2 ―O―
で示される繰返し単位からなり、水酸基又は加水分解性基の結合したケイ素原子を含むケイ素原子含有基を少なくとも1個有するオキシプロピレン重合体であって、Mw/Mnが1.5以下で数平均分子量が6,000以上であるオキシプロピレン重合体、及び、(B)シランカップリング剤を含有するシーラント用硬化性組成物。
【請求項2】(A)成分の重合体の数平均分子量が6,000〜30,000である請求項1記載のシーラント用硬化性組成物。
【請求項3】(A)成分の重合体においてケイ素原子含有基が分子鎖末端に存在する請求項1又は2に記載のシーラント用硬化性組成物。
【請求項4】(B)成分がアミノ基含有シランカップリング剤である請求項1〜3のいずれか1項に記載のシーラント用硬化性組成物。」
[4]特許異議申立理由
特許異議申立人の主張する理由は、概略以下のとおりである。
本件の訂正前の請求項1,3〜5に係る特許発明は、甲第1号証に実質的に記載された発明であるから、当該特許に係る発明は特許法第29条第1項第3号に該当し、また、本件の訂正前の請求項1〜5に係る特許発明は、甲第4号証の1及び甲第5号証に記載された発明に基づき当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、上記訂正前の請求項1〜5に係る特許はいずれも同法第113条第1項第2号に該当し、取り消すべきものである。
[5]取消理由
取消理由の内容は以下のとおりである。
1.引用刊行物
刊行物1:特開昭59-24771号公報(特許異議申立ての甲第1号証)
刊行物2:特開平2-24363号公報(同甲第3号証)
刊行物3:欧州特許出願公開第0397036号明細書(公開日、平成2年11月1 4日、特許異議申立ての甲第4号証の1、その記載事項に関しては、甲第4号証の2(特開平3-72527号公報)参照。)
刊行物4:特開昭57-182350号公報(同甲第5号証)
実験報告書1:旭硝子ウレタン株式会社、田中英明による実験報告書(同甲第6号証)
2.取消理由
刊行物1〜4、実験報告書1には、旭硝子株式会社が提出した特許異議申立書の6頁下から5行目〜8頁16行に指摘されている事項が記載されているものと認められる。
同特許異議申立書の8頁下から2行目〜10頁19行に記載されている理由により、(訂正前の)本件請求項1,3〜5に係る発明は、刊行物1に記載された発明と認められ、また、(訂正前の)本件請求項1〜5に係る発明は、刊行物3及び4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、(訂正前の)本件請求項1〜5に係る発明は、特許法第29条第1項第3号又は同条2項の規定に違反し特許されたものとせざるを得ない。
[6]特許異議申立についての判断
〈1〉刊行物の記載事項
1.刊行物1:特開昭59-24771号公報(特許異議申立ての甲第1号証)
(1)「特許請求の範囲
1.(A)一般式
RIn

(RIIO)3-n―Si―
(式中、RIは炭素数1〜12の1価の炭化水素基、RIIは炭素数1〜6の1価の炭化水素基、nは0〜2の整数である。)
で示される加水分解性ケイ素官能基を末端に有するポリエーテル重合体
(B)
(イ)一般式
R2a

Z―N―RI―Si―(OR3)3-a (式中、RIは炭素数1〜4の2価の炭化水素基、R2及びR3は炭素数1〜4の2価の炭化水素基、Zは水素原子またはアミノアルキル基であり、aは0または1の整数である。)
で示されるアミノアルコキシシラン
(ロ)……エポキシ化合物
…………
(ホ) ……
上記アミノアルキルアルコキシシラン(イ)と、上記エポキシ化合物(ロ)…(ホ)との部分付加縮合物
(C)シラノール化合物の縮合触媒
上記ポリエーテル重合体(A)、上記部分付加縮合物(B)および上記縮合触媒(C)を含有することを特徴とする一液型室温硬化性シーラント組成物。」(特許請求の範囲)
(2)「実施例1
部分付加縮合物(b1)の調整
………
部分付加縮合物(b2)の調整
………
シーラント組成物の調整
ポリエーテル重合体(A)としてポリ(メチルジメトキシシリルエチルエーテル(鐘ケ淵化学工業株式会社商品名MSP-20A)を100部とり、これに可塑剤DOP20部、…撹拌した。 … 次に、以上と同一の方法を再び繰返して同一の組成物を2組調整した。各組の組成物に部分付加縮合物(B)として上記縮合物(b1)または(b2)をそれぞれ1部、及び縮合触媒(C)としてジブチル錫アセテートを1部加え、N2気流下に30分撹拌し、2種類のシーラント組成物を得た。」(公報第6頁右下欄17行〜第7頁左上欄18行)
(3)「比較例1及び2
縮合物(b1)または(b2)のかわりにγ-アミノプロピルトリエトキシシラン又はエピコート828をそれぞれ添加し、そのほかは実施例1と全く同様にしてシーラント組成物を調整し、実施例1と同様に接着試験を行った。…」(公報第7頁左下欄2行〜8行)
(4)「比較例3〜5
実施例1において使用した縮合物(b1)または(b2)のかわりに、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタアクリロキシプロピルトリメトキシシランを使用し、その他は実施例1と全く同様にしてシーラント組成物を調整し、実施例1と同様に接着試験を行った。…」(公報第9頁左下欄8行〜20行)
2.刊行物2:特開平2-24363号公報(特許異議申立人の提出した甲第3号証)
(1)「ガラス、金属などへの接着を改良するためには特にアミノシラン、例えばγ-グリシジルオキシプロピルまたはγ-アミノプロピルトリメトキシシランが使用される。それらは、同時に充填剤中のあり得る水分を捕捉し、良好な貯蔵安定性を確実にし、そしてある程度は共触媒として作用する。」(公報第3頁左上欄15行〜右上欄1行)
(2)「実施例2
………
A B C D
MSポリマー 19.00 … … …
*20A
… … … … …
γ-アミノプロピ 0.80 … … …
ル-トリメトキシ
シラン
… … … … …
*ビス〔3-(メチルジメトキシシリル)プロピル〕-ポリオキシプロピレン」(公報第4頁左下欄1行〜同頁右下欄11行)
3.刊行物3:欧州特許出願公開第0397036号明細書(公開日、平成2年11月1 4日、特許異議申立ての甲第4号証の1、その記載事項に関しては、甲第4号証の2(特開平3-72527号公報)参照。)
上記公開明細書には次のことが記載されている。
(1)「クレーム
3.複合金属シアン化物錯体触媒の存在下イニシエーターに炭素数3以上のモノエポキシドを開環付加重合させ、つづいて分子末端の水酸基を不飽和基に変換し、さらに不飽和基に加水分解性基を有するヒドロシリコン化合物を反応させることを特徴とする、加水分解性シリル基末端ポリアルキレンオキシドの製造法。

10.請求項3項記載の方法で製造された加水分解性シリル基末端ポリアルキレンオキシドを硬化成分とする湿気硬化性樹脂組成物。」(特許請求の範囲、甲第4号証の2の特許請求の範囲(4)及び(12))
(2)「[従来の技術]
末端に不飽和基を有するポリアルキレンオキシドはそれ単独で硬化反応をおこし、弾性材料として用いることができる。また末端不飽和基の反応を利用して加水分解性シリル基などの他の官能基を導入することによって非常に柔軟な硬化性組成物を得ることもできる。上記いずれの場合でも、硬化物に柔軟性を持たせるためには、ポリアルキレンオキシドとして高分子量体のものを用いる必要がある。」(公開明細書第2頁第1欄6〜16行、公報では第2頁右上欄7行〜16行)
(3)「このポリアルキレンオキシドの末端基当たりの分子量は2000以上、特に4000以上が好ましい。また、末端基の数は2〜8、特に2〜6が好ましい。分子量(末端基当たりの分子量×末端基の数)は1.5万〜8万、特に2万〜5万が好ましい。さらに、このポリアルキレンオキシドから誘導される後述の誘導体の硬化特性の面から、末端基の数は2を越えることがより好ましい。即ち、末端基の数が2ポリアルキレンオキシドが高分子量となる程硬化物の架橋点間分子量が大きくなるため、硬化物の伸びは大きくなるが強度等の機械的物性が不充分となるおそれがある。従って、末端基の数が2を超えるポリアルキレンオキシドを使用することによって架橋点を導入しておくことが好ましい。よって特に、ポリアルキレンオキシドとして2.3〜4の末端基を有するポリアルキレンオキシドが好ましい。」(公開明細書第3頁4欄17行〜39行、公報では第4頁左上欄最下行〜同頁右上欄17行)
(4)「本発明における加水分解性基シリル基末端ポリアルキレンオキシドには更に必要であれば補強剤、充填剤、可塑剤、タレ止め剤、架橋剤などを含ませてもよい。……架橋剤としては、前記ヒドロシランの水素原子が加水分解性基あるいはアルキル基に変換された化合物、例えばメチルトリメトキシシランやテトラエトキシシランがある。」(公開明細書第4頁第6欄46行〜第5頁第7欄10行、公報では第5頁左下欄18行〜右下欄16行)
(5)「本発明の加水分解性基シリル基末端ポリアルキレンオキシドを含む湿気硬化性樹脂組成物は、建造物、航空機、自動車等の被覆組成物およびシーリング組成物またはこれらの類似物として好適に使用することができる。」(公開明細書第5頁7欄11行〜16行、公報第5頁右下欄17行〜第6頁左上欄1行)
(6)「(実施例1)
アリルアルコールを開始剤として亜鉛ヘキサシアノコバルテート触媒にてプロピレンオキシドの重合を行い、片末端不飽和基含有ポリプロピレンオキシドを得た。これにナトリウムメチラートのメタノール溶液を加え、メタノールを除去した後、アリルクロライドを加えて、末端の水酸基を不飽和基に変換した。
得られた不飽和基末端ポリアルキレンオキシドの数平均分子量並びに分子量分布をGPCにて分析した結果、数平均分子量は11,800、分子量分布(Mw/Mn)は1.10であった。
上記末端がアリル基である不飽和基末端ポリアルキレンオキシド1モルに塩化白金酸の存在下メチルジメトキシシラン2モル反応させ、1分子当たり平均2個のメチルジメトキシシリル基を有する加水分解性シリル基末端ポリアルキレンオキシドを得た。得られた加水分解性基シリル基末端ポリアルキレンオキシドの数平均分子量並びに分子量分布をGPCにて分析した結果、数平均分子量は12,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.10であった。
得られた加水分解性基シリル基末端ポリアルキレンオキシド100重量部に硬化触媒としてジブチル錫ジラウレート1重量部を混合し、この組成物を大気に暴露し大気中の水分により硬化させた。硬化物の50%モジュラスは3.5Kg/cm2、引張り強度は9.0Kg/cm2、破断伸度は180%であった。
(実施例2)
分子量1,000のジエチレングリコール-プロピレンオキシド付加物を開始剤として亜鉛ヘキサシアノコバルテート触媒にてプロピレンオキシドの重合を行い、ポリプロピレンジオールを得た。これにナトリウムメチラートのメタノール溶液を加え、メタノールを除去した後、アリルクロライドを加えて両末端の水酸基を不飽和基に変換した。得られた不飽和基末端ポリアルキレンオキシドの数平均分子量並びに分子量分布をGPCにて分析した結果、数平均分子量は14,800、分子量分布(Mw/Mn)は1.10であった。
上記末端がアリル基である不飽和基末端ポリアルキレンオキシド1モルに塩化白金酸の存在下メチルジメトキシシラン2モル反応させて、1分子当たり平均2個のメチルジメトキシシリル基を有する加水分解性基シリル基末端ポリアルキレンオキシドを得た。得られた加水分解性基シリル基末端ポリアルキレンオキシドの数平均分子量並びに分子量分布をGPCにて分析した結果、数平均分子量は15,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.10であった。
得られた加水分解性基シリル基末端ポリアルキレンオキシド100重量部に硬化触媒としてジブチル錫ジラウレート1重量部を混合し、この組成物を大気に暴露し大気中の水分により硬化させた。硬化物の50%モジュラスは2.8Kg/cm2、引張り強度は8.5Kg/cm2、破断伸度は260%であった。
(実施例3)
分子量1,000のグリセリン-プロピレンオキシド付加物を開始剤として………得られた加水分解性基シリル基末端ポリアルキレンオキシドの数平均分子量並びに分子量分布をGPCにて分析した結果、数平均分子量は25,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.20であった。
得られた加水分解性基シリル基末端ポリアルキレンオキシド100重量部に硬化触媒としてジブチル錫ジラウレート1重量部を混合し、この組成物を大気に暴露し大気中の水分により硬化させた。硬化物の50%モジュラスは1.3Kg/cm2、引張り強度は9.2Kg/cm2、破断伸度は240%であった。
(実施例4)
分子量1,000のグリセリン-プロピレンオキシド付加物を開始剤として………得られた加水分解性基シリル基末端ポリアルキレンオキシドの数平均分子量および分子量分布をGPCにて分析した結果、数平均分子量は25,100、分子量分布(Mw/Mn)は1.20であった。
得られた加水分解性基シリル基末端ポリアルキレンオキシド100重量部に硬化触媒としてジブチル錫ジラウレート1重量部を混合し、この組成物を大気に暴露し大気中の水分により硬化させた。硬化物の50%モジュラスは2.1Kg/cm2、引張り強度は10.3Kg/cm2、破断伸度は210%であった。
(実施例5)
分子量1,000のグリセリン-プロピレンオキシド付加物を開始剤として………得られた加水分解性基シリル基末端ポリアルキレンオキシドの数平均分子量並びに分子量分布をGPCにて分析した結果、数平均分子量は35,100、分子量分布(Mw/Mn)は1.23であった。
得られた加水分解性基シリル基末端ポリアルキレンオキシド100重量部に硬化触媒としてジブチル錫ジラウレート1重量部を混合し、この組成物を大気に暴露し大気中の水分により硬化させた。硬化物の50%モジュラスは0.8Kg/cm2、引張り強度は7.8Kg/cm2、破断伸度は280%であった。」(公開明細書5頁7欄24行〜第7頁第11欄5行、公報では第6頁左上欄6行〜第7頁右下欄16行)
(7)「[発明の効果]
以上示した様に、複合金属シアン化物錯体触媒を用いて重合したポリアルキレンオキシドを用いることによって末端不飽和基を有する高分子量で分子量分布の狭いポリアルキレンオキシドを簡便で実用的な方法で得られる事が本発明によって明らかとなった。また、この不飽和基末端ポリアルキレンオキシドの不飽和基を加水分解性シリル基に変換することにより、水分の存在下に硬化しうる硬化性樹脂が得られる。この硬化性樹脂の硬化物は優れた物性を有し、シーリング剤等として有用である(公開明細書第7頁11欄6行〜11行、公報では第7頁右下欄17行〜第8頁左上欄8行)。
4.刊行物4:特開昭57-182350号公報(特許異議申立人の提出した甲第5号証)
(1)「1.(a)架橋可能な加水分解性シリコン官能基を有し主鎖が本質的にポリエーテルである重合体100重量部
(b)アミノ基置換シラン系化合物0.01〜20重量部
(c)硬化触媒0.01〜10重量部
を配合してなる密封下では安定で湿気にさらすことにより硬化する室温硬化性組成物。
……
3.ポリエーテルが本質的にポリオキシプロピレンである特許請求の範囲第1項記載の組成物。」(特許請求の範囲)
(2)「本発明で使用する末端に架橋可能な加水分解性シリコーン官能基を有し、主鎖が本質的にポリーテルである重合体とは、
主鎖が本質的に、式
-R1-O- (1)
(式中、R1は炭素数が1〜4である2価のアルキレン基)
で示される化学的に結合された繰り返し単位を含み、かつ末端基が、式………〔…………〕で示される重合体を指す。」(公報第2頁左下欄1行〜右下欄8行)
(3)「本発明に用いるアミノ基置換アルコキシシラン又はアミノ基置換アルコキシシラン誘導体化合物を具体的に例示すると、H2NCH2CH2CH2Si(OCH3)3、H2NCH2CH2NHCH2CH2CH2Si(OCH3)3…等のアミノ基置換アルコキシシラン及び……上記アミノ基置換アルコキシシラン又は、アミノ基置換アルコキシシラン誘導体化合物は、末端に架橋可能な加水分解性シリコーン官能基を有するポリーテル重合体100重量部に対し0.01〜20重量部使用されるのが好ましい。0.01重量部未満では期待される接着性が発現しにくいし、20重量部をこえると硬化後のゴム物性に悪影響を与えるからである。」(公報第3頁右上欄下から2行〜同頁右下欄11行)
(4)「このようにして得られた組成物は、…貯蔵期間中は硬化は進行せず、…大気に曝すことにより、すみやかに表面より硬化が進行するので建造物、自動車、船舶、土木工事等の弾性シーリング材として有用であり、更に注型ゴム、型取り用材料、塗料、接着剤としても使用できる。」(公報第4頁左上欄18行〜同頁右上欄5行)
〈2〉対比及び進歩性の判断
1.本件請求項1に係る発明(以下「本件発明1」と略す、請求項2以下も同様)と刊行物3に記載された発明を対比する。
刊行物3に記載された発明において、加水分解性シリル基末端ポリアルキレンオキシドを硬化成分とする湿気硬化性樹脂組成物(特許請求の範囲)、はシーリング組成物(3.(5))ないしシーリング剤(3.(7))に使用されるものであるから、刊行物3には、加水分解性シリル基末端ポリアルキレンオキシドを含有するシーリング用の硬化性組成物が記載されていると言える。
ここで、「加水分解性シリル基末端」は本件発明1の「加水分解性基の結合したケイ素原子を含むケイ素原子含有基」と異なるものではなく、また「シーリング組成物ないしシーリング剤」は本件発明の「シーラント」と異なるものではない。
そして、刊行物3記載の「ポリオキシアルキレン」は「炭素数3以上のモノエポキサイドを開環付加重合させる」ものであり、該モノエポキサイドはプロピレンオキシドである(特許請求の範囲及び実施例)から、重合体を構成する主鎖の点でも本件発明の「
CH3

式 ―CH―CH2―O―の繰り返し単位」と異なるものではない。
また、刊行物3の実施例1〜5には数平均分子量12,000〜35,100でかつMw/Mnが1.10〜1.23の加水分解性基シリル基末端ポリアルキレンオキシド(具体的にはポリプロピレンオキシド)が記載されているのであるから(3.(6))、この点でも本件発明の「Mw/Mnが1.5以下で数平均分子量が6,000以上であるオキシプロピレン重合体」と異なるものではない。
してみれば本件発明1と刊行物3に記載された発明とは
「 (A)重合体主鎖が
【化1】 CH3

式 ―CH―CH2―O―
で示される繰返し単位からなり、水酸基又は加水分解性基の結合したケイ素原子を含むケイ素原子含有基を少なくとも1個有するオキシプロピレン重合体であって、Mw/Mnが1.5以下で数平均分子量が6,000以上であるオキシプロピレン重合体を含有するシーラント用硬化性組成物」の点で一致し、本件発明1が(B)シランカップリング剤を含有するのに対し、刊行物3記載の発明ではシランカップリング剤を使用するとの記載がない点で相違している。
以下、この相違点について検討する。
刊行物1に記載された発明は、(A)加水分解性ケイ素官能基を末端に有するポリエーテル重合体に(B)(イ)アミノアルキルアルコキシシランと(ロ)〜(ホ)との部分付加縮合物、(C)シラノール化合物の縮合触媒、を含有する一液型室温硬化性シーラント組成物に係るものであるところ(1.(1)特許請求の範囲)、刊行物1の比較例1、3、4には、ポリエーテル重合体(A)としてポリ(メチルジメトキシシリルエチルエーテル)(鐘ヶ淵化学工業株式会社製商品名MSP-20A)を使用し、(B)である(b1)や(b2)に代えてγ-アミノプロピルトリエトキシシラン(比較例1)、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(比較例3)、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(比較例4)を添加配合し接着試験を行っており(1.(2)〜(4))、これ等比較例1、3、4で添加配合される化合物は本件発明においてシランカップリング剤の具体例として本件明細書段落【0030】に記載されている化合物に他ならない。
そして、刊行物2の記載によれば(2.(1))、該MSポリマー20Aとはビス〔3-(メチルジメトキシシリル)プロピル〕-ポリオキシプロピレンのことであるから、これは本件発明の加水分解性基の結合したケイ素原子を含むケイ素原子含有基を少なくとも1個有するオキシプロピレン重合体に該当するものである。
その刊行物2にはガラス、金属などへの接着を改良するためにアミノシラン、例えばγ-グリシジルオキシプロピルまたはγ-アミノプロピルトリメトキシシランが使用できることが記載され(2.(1))、実施例2には、このMSポリマー20Aにγ-アミノプロピル-トリメトキシシランを配合したものも記載されている。
また、刊行物4に記載された発明は「(a)架橋可能な加水分解性シリコン官能基を有し主鎖が本質的にポリエーテル(ポリオキシプロピレン)である重合体100重量部
(b)アミノ基置換シラン系化合物0.01〜20重量部
(c)硬化触媒0.01〜10重量部
を配合してなる密封下では安定で湿気にさらすことにより硬化する室温硬化性組成物。」(特許請求の範囲)に係るものであるところ、該(b)アミノ基置換シラン系化合物とは具体的にはH2NCH2CH2CH2Si(OCH3)3、H2NCH2CH2NHCH2CH2CH2Si(OCH3)3…等のアミノ基置換アルコキシシランであり、その配合により接着性が発現し(4.(3))、そして、その化合物は本件発明1においてシランカップリング剤の具体例として本件明細書段落【0030】に記載されていた化合物に他ならないものである。また、刊行物4に記載の発明の組成物は貯蔵期間中は硬化は進行せず、大気に曝すことにより速やかに硬化が進行するという有用な性質を有するものである(4.(4))。
一方、本件特許明細書の段落【0002】にも、従来技術として、反応性ケイ素基を有するオキシプロピレン重合体を用いた弾性シーラントにおいて重合体の保存安定性や被着体への接着性改善のためにシランカップリング剤を併用する旨のことが記載されている(なお、刊行物4は本件特許明細書の段落【0002】に記載されている従来技術)。
以上の記載から判断すると、加水分解性基の結合したケイ素原子を含有するポリエーテル系のシーリング剤において、接着性等を改善の目的でγ-アミノプロピル-トリメトキシシラン等のシラン系化合物を添加することは、一般的に行われていることと認められる。そうであれば、刊行物2のシラン系化合物あるいは刊行物4の(b)成分を、同様なシーリング剤用のポリエーテル系硬化性組成物である刊行物3に添加配合することは、これらの刊行物の記載を見れば当業者が容易に想到し得ることである。
しかも、上記のように、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、等を加水分解性ケイ素官能基を末端に有するポリエーテル(ポリオキシプロピレン)重合体に添加配合することは刊行物1にも記載されていたことであるから〔更に付言すれば、γ-アミノプロピルトリエトキシシランをMSポリマー20Aに添加配合することも記載されているのであるから、〕、この点からも当業者が容易に想到し得ることであると言える。
なお、本件発明1では(B)成分はシランカップリング剤となっており、刊行物1、2、4にはシランカップリング剤という用語は記載されていない。
しかし、これ等の刊行物には該(B)成分に属する化合物が具体的な化合物名で記載されているのであり、それらの化合物を用いる場合が容易に想到し得るものである以上、それらの化合物を含む上位の(B)シランカップリング剤を用いる本件発明1の場合も容易に想到し得るものであると言える。
従って、上記相違点は、刊行物3に刊行物4ないし刊行物1,2に記載された発明を併せ見れば当業者が容易に想到し得ることである。
次に、本件発明1の効果について検討する。
特許権者は、本件発明の組成物の硬化物は、(A)成分として分子量分布の広い(Mw/Mnが大の)重合体を用いた組成物の硬化物と比較して、(B)成分添加に起因するモジュラスの上昇が小さいという効果を奏すると主張するが、本件明細書には実施例と比較例(Mw/Mn=2.3)、参考例(カップリング剤不含)と参考比較例(カップリング剤不含、Mw/Mn=2.3)の一組の実験例しか記載されていない。
一方、特許異議申立人の提出した甲第6号証の実験報告書によれば、Mw/Mnが1.5(重合体a、例1と例2)と2.0(重合体b、例2と例4)では、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン(シランカップリング剤)を添加した場合(例2と例4)は、添加しない場合(例1と例3)と較べて等しく50%モジュラスが向上しており(50%モジュラス差2.3と2.2)、Mw/Mnが1.5の場合でも該シランカップリング剤の添加によって50%モジュラスがMw/Mnが2.0の場合と同様に上昇してしまう結果となっている。そして、甲第6号証の実験の例1及び例2の組成物は、本件発明の要件を満足するものである。
この両方の記載を併せ考えると、本件発明は請求項1に記載された要件だけで本件明細書記載の効果を奏するものか不確かであり、本件発明の効果は明細書の実施例の場合はともかく、本件発明1のすべての範囲においてその効果を奏すると解するのは相当ではない。
また、特許権者は、本件発明の組成物は硬化前においては、同一分子量で分子量分布の広い従来の反応性ケイ素基含有オキシプロピレン重合体を含有する組成物に比べて粘度が低く取扱いが容易であるとの効果も主張する。
しかし、本件明細書の実施例には合成した重合体の粘度について記載されているだけで、(B)成分のシランカップリング剤を添加配合した組成物についての粘度の記載はなく、かかる重合体の粘度の記載をもって直ちに本件発明1の組成物発明の効果と見ることはできない。
しかも、(B)のシランカップリング剤は本件明細書の記載(段落【0030】)によれば、アミノ基、メトキシ基、メルカプト基、グリシドキシ基、等を複数基有する化合物であり、このような基は一般的には反応性が高いものであるから(少なくとも安定性のある不活性なものであるとは言い難い)、このような化合物の添加によって粘度に少なからぬ影響を生じないと断言することはできない。
してみれば、特許権者が主張する本件発明1の効果について、本件明細書の記載から確認できるとは言えない。
以上のとおりであるから、本件発明1は本出願前に頒布された刊行物3に記載された発明及び本出願前に頒布された刊行物4あるいは更に本出願前に頒布された刊行物1及び2に記載された発明に基づき、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
2.本件発明2について
本件発明2は、本件発明1に対して更に「(A)成分の重合体の数平均分子量が6,000〜30,000である」という要件を付加するものである。
しかし、この点は既に刊行物3に記載されているところであるから(3.(6))、本件発明2と刊行物3に記載された発明との相違点とはならず、容易性の判断に影響を与えるものではない。
したがって、本件発明2は本件発明1の場合と同様の理由により、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
3.本件発明3について
本件発明3は、本件発明1に対して更に「(A)成分の重合体においてケイ素原子含有基が分子鎖末端に存在する」という要件を付加するものである。
しかし、この点は既に刊行物3に記載されているところであるから(3.(1)(6))、本件発明3と刊行物3に記載された発明との相違点とはならず、容易性の判断に影響を与えるものではない。
したがって、本件発明3は本件発明1の場合と同様の理由により、特許法第29条第2項の規定により本来特許を受けることができないものである。
4.本件発明4について
本件発明4は、本件発明1に対して更に「(B)成分がアミノ基含有シランカップリング剤である」という要件を付加しているが、この点は既に刊行物1、2、4に記載されているところであるから(1.(3)(4)、2.(1)、4.(1)(3))、本件発明4と刊行物3に記載された発明との相違点についての容易性の判断は本件発明1の場合と何等異なるところはない。
したがって、本件発明4も本件発明1の場合と同様の理由により特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
[5]むすび
以上のとおり、本件発明1〜4は、本出願前に頒布された刊行物1〜4に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明し得るものであるから、本件発明1〜4に係る特許は特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
よって、特許法等の一部を改正する法律(平成6年法律第116号)附則第14条の規定に基づく、特許法等の一部を改正する法律の施行に伴う経過措置を定める政令(平成7年政令205号)第4条第2項の規定により、結論のとおり決定する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
シーラント用硬化性組成物
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 (A)重合体主鎖が
【化1】

で示される繰返し単位からなり、水酸基又は加水分解性基の結合したケイ素原子を含むケイ素原子含有基を少なくとも1個有するオキシプロピレン重合体であって、Mw/Mnが1.5以下で数平均分子量が6,000以上であるオキシプロピレン重合体、及び、(B)シランカップリング剤を含有するシーラント用硬化性組成物。
【請求項2】 (A)成分の重合体の数平均分子量が6,000〜30,000である請求項1記載のシーラント用硬化性組成物。
【請求項3】 (A)成分の重合体においてケイ素原子含有基が分子鎖末端に存在する請求項1又は2に記載のシーラント用硬化性組成物。
【請求項4】 (B)成分がアミノ基含有シランカップリング剤である請求項1〜3のいずれか1項に記載のシーラント用硬化性組成物。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、反応性ケイ素基を含有するオキシプロピレン重合体、及びシランカップリング剤を含有する新規な硬化性組成物に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】反応性ケイ素基(水酸基または加水分解性基の結合したケイ素原子を含むケイ素原子含有基であって、シロキサン結合を形成し得る基)を有するオキシプロピレン重合体は液状の重合体になり得るもので、湿分等により室温で硬化してゴム状硬化物を生じる。このため、建築物の弾性シ-ラント等に用いられている。この重合体の使用に際しては、重合体の保存安定性の改善(保存中の硬化の防止)や硬化物の被着体への接着性の改善のために、シランカップリング剤との組成物として用いられることがある(特開昭57-182350号、特開昭57-205443号)。
【0003】
しかしながら、このような組成物の硬化物はシランカップリング剤を添加しない場合に比較して引張特性の1つであるモジュラスが上昇し、ゴムとしての性質が損なわれるという欠点を有することが判明した。
【0004】
本発明者等は、鋭意検討の結果、分子量分布が狭く反応性ケイ素基を有するオキシプロピレン重合体を用いると、シランカップリング剤を添加しても硬化物のモジュラスの上昇が小さいことを見出し、本発明に至った。
【0005】
【課題を解決するための手段と作用】
本発明のシーラント用硬化性組成物(以下、単に「硬化性組成物」ともいう)は、(A)重合体主鎖が
【化2】

で示される繰返し単位からなり、水酸基又は加水分解性基の結合したケイ素原子を含むケイ素原子含有基(反応性ケイ素基)を少なくとも1個有するオキシプロピレン重合体であって、Mw/Mn(重量平均分子量/数平均分子量)が1.5以下で数平均分子量(Mn)が6,000以上であるオキシプロピレン重合体、及び(B)シランカップリング剤を含有してなる。
【0006】
【発明の実施の形態】
本発明に使用される(A)成分のオキシプロピレン重合体に含有されている反応性ケイ素基は特に限定されるものではないが、代表的なものを示すと、例えば、下記一般式、化3で表わされる基が挙げられる。
【0007】
【化3】

[式中、R1およびR2は、いずれも炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数7〜20のアラルキル基または(R’)3SiO-で示されるトリオルガノシロキシ基を示し、R1またはR2が2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。ここでR’は炭素数1〜20の1価の炭化水素基であり、3個のR’は同一であってもよく、異なっていてもよい。Xは水酸基または加水分解性基を示し、Xが2個以上存在するとき、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。aは0、1、2または3を、bは0、1または2をそれぞれ示す。また、m個の
【化4】

におけるbは異なっていてもよい。mは0〜19の整数を示す。但し、a+Σb≧1を満足するものとする。]。
【0008】
上記Xで示される加水分解性基は特に限定されず、従来公知の加水分解性基であればよい。具体的には、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメ-ト基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基等が挙げられる。これらの内では、水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメ-ト基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基およびアルケニルオキシ基が好ましいが、加水分解性が穏やかで取扱いやすいという観点からメトキシ基等のアルコキシ基が特に好ましい。
【0009】
この加水分解性基や水酸基は1個のケイ素原子に1〜3個結合することができ、(a+Σb)は1〜5であるのが好ましい。加水分解性基や水酸基が反応性ケイ素基中に2個以上存在する場合には、それらは同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0010】
反応性ケイ素基中に、ケイ素原子は1個あってもよく、2個以上あってもよいが、シロキサン結合等によりケイ素原子の連結された反応性ケイ素基の場合には、20個程度あってもよい。
【0011】
なお、下記一般式、化5で表わされる反応性ケイ素基が、入手容易の点からは好ましい。
【0012】
【化5】

(式中、R2、X、aは前記と同じ。)。
【0013】
また、上記一般式、化3におけるR1およびR2の具体例としては、例えば、メチル基、エチル基などのアルキル基、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、フェニル基などのアリ-ル基、ベンジル基などのアラルキル基、R′がメチル基やフェニル基などである(R′)3SiO-で示されるトリオルガノシロキシ基等が挙げられる。R1、R2、R′としてはメチル基が特に好ましい。
【0014】
反応性ケイ素基はオキシプロピレン重合体1分子中に少なくとも1個、好ましくは1.1〜5個存在するのがよい。重合体1分子中に含まれる反応性ケイ素基の数が1個未満になると、硬化性が不充分になり、良好なゴム弾性挙動を発現しにくくなる。
【0015】
反応性ケイ素基はオキシプロピレン重合体分子鎖の末端に存在してもよく、内部に存在してもよい。反応性ケイ素基が分子鎖の末端に存在すると、最終的に形成される硬化物に含まれるオキシプロピレン重合体成分の有効網目鎖量が多くなるため、高強度、高伸びで低弾性率を示すゴム状硬化物が得られやすくなる。
【0016】
本発明に使用される(A)成分における重合体主鎖を構成するオキシプロピレン重合体は、
【化6】

で示される繰返し単位からなるものである。このオキシプロピレン重合体は、直鎖状であっても分枝状であってもよく、あるいは、これらの混合物であってもよい。
【0017】
このオキシプロピレン重合体の数平均分子量(Mn)としては6,000以上のものが有効に使用されうるが、好ましくは6,000〜30,000の数平均分子量を有するものがよい。さらに、このオキシプロピレン重合体においては、重量平均分子量と数平均分子量との比(Mw/Mn)が1.6以下であり、極めて分子量分布が狭い(単分散性が大きい)。Mw/Mnの値は好ましくは1.5以下であり、さらに好ましくは1.4以下である。分子量分布は、各種の方法で測定可能であるが、通常はゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)法での測定が一般的である。このように数平均分子量が大きいにもかかわらず分子量分布が狭いので、本発明の組成物は、硬化前においては粘度が低く取扱いが容易であり、硬化後においては良好なゴム状弾性挙動を示す。
【0018】
本発明の(A)成分となる反応性ケイ素基を有するオキシプロピレン重合体は、官能基を有するオキシプロピレン重合体に反応性ケイ素基を導入することによって得るのが好ましい。
【0019】
高分子量で分子量分布が狭く官能基を有するオキシプロピレン重合体は、オキシプロピレンの通常の重合法(苛性アルカリを用いるアニオン重合法)やこの重合体を原料とした鎖延長反応方法によって得ることは極めて困難であるが、特殊な重合法である特開昭61-197631号、特開昭61-215622号、特開昭61-215623号、特開昭61-218632号、特公昭46-27250号及び特公昭59-15336号等に記載された方法により得ることができる。なお、反応性ケイ素基を導入すると分子量分布は導入前の重合体に比較し広がる傾向にあるので、導入前の重合体の分子量分布はできるだけ狭いことが好ましい。
【0020】
反応性ケイ素基の導入は公知の方法で行なえばよい。すなわち、例えば、以下の方法が挙げられる。
【0021】
(1)末端に水酸基等の官能基を有するオキシプロピレン重合体に、この官能基に対して反応性を示す活性基及び不飽和基を有する有機化合物を反応させ、次いで、得られた反応生成物に加水分解性基を有するヒドロシランを作用させてヒドロシリル化する。
【0022】
(2)末端に水酸基、エポキシ基やイソシアネ-ト基等の官能基(以下、Y官能基という)を有するオキシプロピレン重合体に、このY官能基に対して反応性を示す官能基(以下、Y′官能基という)及び反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる。
【0023】
このY′官能基を有するケイ素化合物としては、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシランなどのようなアミノ基含有シラン類;γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシランなどのようなメルカプト基含有シラン類;γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのようなエポキシシラン類;ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシランなどのようなビニル型不飽和基含有シラン類;γ-クロロプロピルトリメトキシシランなどのような塩素原子含有シラン類;γ-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルメチルジメトキシシランなどのようなイソシアネート含有シラン類;メチルジメトキシシラン、トリメトキシシラン、メチルジエトキシシランなどのようなハイドロシラン類などが具体的に例示されうるが、これらに限定されるものではない。
【0024】
以上の方法のなかで、(1)の方法、又は(2)のうち末端に水酸基を有する重合体とイソシアネート基及び反応性ケイ素基を有する化合物を反応させる方法が、好ましい。
【0025】
本発明の(B)成分であるシランカップリング剤は、加水分解性基が結合したケイ素原子を含む基(以下、加水分解性ケイ素基という)及びこの基以外の官能性基を有する化合物である。
【0026】
加水分解性ケイ素基の例としては、化3で表わされる基のうちXが加水分解性基であるものをあげることができる。加水分解性基としてはすでにあげた基を例示できるが、メトキシ基等のアルコキシ基が好ましい。加水分解性基の個数は2個以上、特に3個以上が好ましい。
【0027】
加水分解性ケイ素基の中では、化5で表わされる基が好ましい。特に、化5においてaが2又は3の場合、とりわけ3の場合が好ましい。
【0028】
加水分解性ケイ素基以外の官能性基としては、1級、2級、3級のアミノ基、メルカプト基、エポキシ基、カルボキシル基、ビニル基、ハロゲン、イソシアネート基などを例示できる。これらのうち、アミノ基、ビニル基などが好ましい。
【0029】
加水分解性ケイ素基とこれ以外の官能性基は、アルキレン基、アリーレン基などの炭化水素基で結合されていればよいが、特にこれらに限定されるものではない。シランカップリング剤の分子量は500以下、特には300以下が好ましい。
【0030】
シランカップリング剤の具体例としては、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシランなどのアミノ基含有シラン類;γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジエトキシシランなどのメルカプト基含有シラン類;γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのエポキシ結合含有シラン類;β-カルボキシエチルトリエトキシシラン、β-カルボキシエチルフェニルビス(2-メトキシエトキシ)シラン、N-β-(N-カルボキシメチルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシランなどのカルボキシシラン類;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ-アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシランなどのようなビニル型不飽和基含有シラン類;γ-クロロプロピルトリメトキシシランなどのような塩素原子含有シラン類;γ-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、γ-イソシアネートプロピルメチルジメトキシシランなどのようなイソシアネート含有シラン類などをあげることができる。また、これらを変性した誘導体等もシランカップリング剤として用いることができる。
【0031】
本発明においてシランカップリング剤は、反応性ケイ素基含有オキシプロピレン重合体100部(重量部、以下同様)に対し0.01〜20部の範囲で使用される。特に0.1〜10部で使用するのが好ましい。シランカップリング剤は1種類のみで使用してもよいし、2種類以上混合使用してもよい。
【0032】
なお、(B)成分としてアミノ基置換シランカップリング剤を用いると、ガラス、石材、金属はもとより、プラスチック、木材等の種々の被着体に対して特に優れた接着性を有する硬化性組成物が得られる。
【0033】
このようなアミノ基置換シランカップリング剤としては、アミノ基置換アルコキシシラン又はアミノ基置換アルコキシシラン誘導体化合物が好ましい。これらを具体的に例示すると、
【化7】

等のアミノ基置換アルコキシシラン、及び上記アミノ基置換アルコキシシランと
【化8】

の様なエポキシシラン化合物との反応物、又は上記アミノ基置換アルコキシシランと
【化9】

の様なメタクリルオキシシラン化合物との反応物が挙げられる。アミノ基置換アルコキシシランと、エポキシシラン化合物又はアクリロイルシラン化合物との反応は、アミノ基置換アルコキシシラン1モルに対して当該シラン化合物を0.2〜5モル混合し、室温ないし180℃の範囲で1〜8時間撹拌することによって容易に得ることができる。
【0034】
本発明の組成物を硬化させるにあたっては硬化触媒を使用してもしなくてもよい。硬化触媒を使用する場合には、従来公知のものを広く使用することができる。その具体例としては、テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネートなどのチタン酸エステル類;ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズジアセテート、オクチル酸スズ、ナフテン酸スズなどのスズカルボン酸塩類;ジブチルスズオキサイドとフタル酸エステルとの反応物;ジブチルスズジアセチルアセトナート;アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテートなどの有機アルミニウム化合物類;ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナートなどのキレート化合物類;オクチル酸鉛;ブチルアミン、オクチルアミン、ラウリルアミン、ジブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、オレイルアミン、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、ジエチルアミノプロピルアミン、キシリレンジアミン、トリエチレンジアミン、グアニジン、ジフェニルグアニジン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、モルホリン、N-メチルモルホリン、2-エチル-4-メチルイミダゾール、1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン-7(DBU)などのアミン系化合物、あるいはこれらアミン系化合物のカルボン酸などとの塩;過剰のポリアミンと多塩基酸とから得られる低分子量ポリアミド樹脂;過剰のポリアミンとエポキシ化合物との反応生成物;などのシラノール縮合触媒、さらには他の酸性触媒、塩基性触媒などの公知のシラノール縮合触媒等が例示される。これらの触媒は単独で使用してもよく、2種以上併用してもよい。
【0035】
これらの硬化触媒の使用量は、反応性ケイ素基含有オキシプロピレン重合体100部に対して0.1〜20部程度が好ましく、1〜10部程度が更に好ましい。反応性ケイ素基含有オキシプロピレン重合体に対して硬化触媒の使用量が少なすぎると、硬化速度が遅くなることがあり、また硬化反応が充分に進行しにくくなる場合がある。一方、反応性ケイ素基含有オキシプロピレン重合体に対して硬化触媒の使用量が多すぎると、硬化時に局部的な発熱や発泡が生じ、良好な硬化物が得られにくくなるので、好ましくない。
【0036】
反応性ケイ素基含有オキシプロピレン重合体は、種々の充填剤を混入することにより変性しうる。充填剤としては、フユームシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、含水ケイ酸およびカーボンブラックの如き補強性充填剤;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイソウ土、焼成クレー、クレー、タルク、酸化チタン、ベントナイト、有機ベントナイト、酸化第二鉄、酸化亜鉛、活性亜鉛華、水添ヒマシ油およびシラスバルーン、などの如き充填剤;石綿、ガラス繊維およびフィラメントの如き繊維状充填剤が例示される。
【0037】
これら充填剤で強度の高い硬化性組成物を得たい場合には、主にフユームシリカ、沈降性シリカ、無水ケイ酸、含水ケイ酸、カーボンブラック、表面処理微細炭酸カルシウム、焼成クレー、クレー、および活性亜鉛華などから選ばれる充填剤を反応性ケイ素基含有オキシプロピレン重合体100部に対し、1〜100部の範囲で使用すれば好ましい結果が得られる。また、低強度で伸びが大である硬化性組成物を得たい場合には、主に酸化チタン、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、タルク、酸化第二鉄、酸化亜鉛、およびシラスバルーンなどから選ばれる充填剤を反応性ケイ素基含有オキシプロピレン重合体100部に対し5〜200部の範囲で使用すれば好ましい結果が得られる。もちろんこれら充填剤は1種類のみで使用してもよいし、2種類以上混合使用してもよい。
【0038】
本発明の硬化性組成物においては、可塑剤を充填剤と併用して使用すると硬化物の伸びを大きくできたり、多量の充填剤を混入できたりするのでより有効である。この可塑剤としては、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ブチルベンジルフタレートなどの如きフタル酸エステル類;アジピン酸ジオクチル、コハク酸イソデシル、セバシン酸ジブチルなどの如き脂肪族二塩基酸エステル類;ジエチレングリコールジベンゾエート、ペンタエリスリトールエステルなどの如きグリコールエステル類;オレイン酸ブチル、アセチルリシノール酸メチルなどの如き脂肪族エステル類;リン酸トリクレジル、リン酸トリオクチル、リン酸オクチルジフェニルなどの如きリン酸エステル類;エポキシ化大豆油、エポキシステアリン酸ベンジルなどの如きエポキシ可塑剤類;2塩基酸と2価アルコールとのポリエステル類などのポリエステル系可塑剤;ポリプロピレングリコールやその誘導体などのポリエーテル類;ポリ-α-メチルスチレン、ポリスチレンなどのポリスチレン類;ポリブタジエン、ブタジエン-アクリロニトリル共重合体、ポリクロロプレン、ポリイソプレン、ポリブテン、塩素化パラフィン類などの可塑剤が単独又は2種類以上の混合物の形で任意に使用できる。可塑剤量は、反応性ケイ素基含有オキシプロピレン重合体100部に対し、0〜100部の範囲で使用すると好ましい結果が得られる。
【0039】
本発明の硬化性組成物の調製法にはとくに限定はなく、たとえば上記した成分を配合し、ミキサーやロールやニーダーなどを用いて常温または加熱下で混練したり、適した溶剤を少量使用して成分を溶解させ、混合したりするなどの通常の方法が採用されうる。また、これら成分を適当に組合わせることにより、1液型や2液型の配合物をつくり使用することもできる。
【0040】
本発明の硬化性組成物は、大気中に暴露されると水分の作用により、三次元的に網状組織を形成し、ゴム状弾性を有する固体へと硬化する。
【0041】
本発明の硬化性組成物を使用するに際しては、更に、必要に応じて、接着性改良剤、物性調整剤、老化防止剤、紫外線吸収剤、金属不活性化剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、アミン系ラジカル連鎖禁止剤、リン系過酸化物分解剤、滑剤、顔料、発泡剤などの各種添加剤を適宜添加することが可能である。
【0042】
本発明の硬化性組成物は弾性シーラントとして特に有用であり、建造物、船舶、自動車、道路などの密封剤として使用しうる。更に、単独あるいはプライマーの助けをかりてガラス、磁器、木材、金属、樹脂成形物などの如き広範囲の基質に密着しうるので、種々のタイプの密封組成物および接着組成物としても使用可能である。更に、食品包装材料、注型ゴム材料、型取り用材料、塗料としても有用である。
【0043】
【発明の効果】
本発明の組成物の硬化物は、(A)成分として分子量分布の広い重合体を用いた組成物の硬化物に比較し、(B)成分添加に基因するモジュラスの上昇が小さいという効果を有する。
【0044】
なお、本発明の硬化性組成物において(A)成分として使用される反応性ケイ素基含有オキシプロピレン重合体は、数平均分子量が大きいにもかかわらず分子量分布が狭い。従って、本発明の組成物は、硬化前においては、同一分子量で分子量分布の広い従来の反応性ケイ素基含有オキシプロピレン重合体を含有する組成物と比べて粘度が低く取扱いが容易である。
【0045】
このように硬化前の粘度が低いので、作業性が良いだけでなく、多量の充填剤を配合できて優れた室温硬化性組成物を得ることができる。
【0046】
さらに、耐酸性などの耐薬品性が予想外に大幅に改善され、耐溶剤性、耐水性も優れている。
【0047】
【実施例】
本発明をより一層明らかにするために、以下に実施例を掲げる。
【0048】
合成例1
1.5リットル耐圧ガラス製反応容器に分子量15,000のポリオキシプロピレントリオール(Mw/Mn=1.38、粘度89ポイズ)401g(0.081当量)を仕込み、窒素雰囲気下にした。
【0049】
137℃で、滴下漏斗からナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液19.1g(0.099当量)を滴下し、5時間反応させた後、減圧脱揮した。窒素雰囲気下にもどし塩化アリル9.0g(0.118当量)を滴下、1.5時間反応させた後、さらにナトリウムメトキシドの28%メタノール溶液5.6g(0.029当量)と塩化アリル2.7g(0.035当量)を用いてアリル化をおこなった。
【0050】
この反応物をヘキサンに溶かしケイ酸アルミニウムで吸着処理した後、ヘキサンを減圧除去すると311gの黄色透明なポリマーが得られた(粘度68ポイズ)。
【0051】
このポリマー270g(0.065当量)を耐圧ガラス製反応容器に仕込み、窒素雰囲気下にした。塩化白金酸の触媒溶液(H2PtCl6・6H2O25gをイソプロピルアルコール500gに溶かした溶液)0.075mlを添加後、30分撹拌した。ジメトキシメチルシラン6.24g(0.059当量)を滴下漏斗より加え、90℃で4時間反応させた後、脱揮すると260gの黄色透明なポリマーが得られた。
【0052】
合成例2
撹拌機付きフラスコに数平均分子量15,000のポリオキシプロピレントリオール(Mw/Mn=1.38、粘度89ポイズ)220g(0.0447当量)とジラウリン酸ジブチルスズ0.02gを仕込み、窒素雰囲気下でγ-イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン8.45g(0.0447当量)を室温で滴下した。滴下終了後、75℃で1.5時間反応させた。IRスペクトルを測定し、2280cm-1付近のNCO吸収の消失と1730cm-1付近のC=O吸収の生成を確認した後、反応を終了させた。213gの無色透明のポリマーが得られた。
【0053】
比較合成例1
数平均分子量が3,000のポリオキシプロピレングリコール420gと数平均分子量が3,000のポリオキシプロピレントリオール80gとを、窒素置換された耐圧ガラス製反応容器に仕込んだ。水酸化ナトリウム40gを加え、60℃で13時間反応させた後、ブロモクロルメタン19gを60℃で10時間反応させた。(得られたポリマーのMw/Mnは2.1であり、粘度は385ポイズであった。)続いて、塩化アリル15gを加え36時間反応をおこなった。反応終了後、減圧にして揮発物質を除去した。
【0054】
内容物をビーカーにとり出しヘキサンに溶かした。ケイ酸アルミニウムで吸着処理した後、ヘキサンを減圧除去した。
【0055】
このポリマー500gを窒素置換された反応容器に仕込み、塩化白金酸の触媒溶液(H2PtCl6・6H2O25gをイソプロピルアルコール500gに溶かした溶液)0.03gを添加した後、ジメトキシメチルシラン12gを加えて80℃で4時間反応させた。反応終了後、減圧にして揮発物質を除去すると淡黄色透明なポリマーが550g得られた。
【0056】
合成例1、2および比較合成例1で得られたポリマーの粘度をB型粘度計(BMタイプローターNo.4、12rpm)を用いて、23℃で測定した。また、各ポリマーの数平均分子量(Mn)と分子量分布(Mw/Mn)をGPCにより分析した。GPCは、ポリスチレンゲル(東ソー株式会社製)を充填したカラムに留出溶媒としてテトラヒドロフランを用いて、オーブン温度40℃で分析した。その結果を表1に示す。
【0057】
【表1】

【0058】
実施例1
(A)成分として合成例1で得られたポリマ-100部、硬化触媒としてオクチル酸スズ3部、ラウリルアミン0.5部、(B)成分としてN-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン5部をよく混合した後、ポリエチレン製の型枠に気泡が入らないように注意深く流し込み、23℃で2日間、さらに50℃で3日間養生させて、厚さ3mmの硬化物シ-トを得た。
【0059】
この硬化物シ-トから、JISK6301に準拠して3号型ダンベルを打ち抜き、引張速度200mm/分で引張試験を行なった。その結果、50%伸張時応力が、3.16kg/cm2であった。
【0060】
参考例1
合成例1で得られたポリマ-100部、オクチル酸スズ3部、ラウリルアミン0.5部をよく混合して、実施例1と同様の方法で硬化物シ-トを作製し、引張試験を行なった。その結果、50%伸張時応力が3.07kg/cm2であった。
【0061】
比較例1
比較合成例1で得られたポリマ-100部、オクチル酸スズ3部、ラウリルアミン0.5部、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン5部をよく混合して、実施例1と同様の方法で硬化物シ-トを作製し、引張試験を行なった。その結果、50%伸張時応力が3.48kg/cm2であった。
【0062】
参考比較例1
比較合成例1で得られたポリマ-100部、オクチル酸スズ3部、ラウリルアミン0.5部をよく混合して、実施例1と同様の方法で硬化物シ-トを作製し、引張試験を行なった。その結果、50%伸張時応力が2.99kg/cm2であった。
【0063】
比較例1と参考比較例1の50%伸張時応力(50%モジュラス)から明らかなように、(B)成分の添加によりその値がかなり大きく上昇する。これに対し実施例1と参考例1の50%伸張時応力から明らかなように、本発明の組成物においては(B)成分の添加によってもモジュラスの上昇はほとんどないことがわかる。
【0064】
実施例2、参考例2
合成例1で得られたポリマーにかえて合成例2で得られたポリマーを用い、実施例1、参考例1と同様に引張試験を行なったところ、それぞれ実施例1、参考例1とほぼ同様の結果が得られた。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
異議決定日 2004-10-13 
出願番号 特願2000-174698(P2000-174698)
審決分類 P 1 651・ 121- ZA (C08L)
最終処分 取消  
前審関与審査官 ▲吉▼澤 英一  
特許庁審判長 松井 佳章
特許庁審判官 船岡 嘉彦
佐野 整博
登録日 2002-05-10 
登録番号 特許第3304954号(P3304954)
権利者 鐘淵化学工業株式会社
発明の名称 シーラント用硬化性組成物  
代理人 内田 明  
代理人 萩原 亮一  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 橋本 良郎  
代理人 鈴江 武彦  
代理人 石川 祐子  
代理人 橋本 良郎  
代理人 渡部 崇  

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