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審決分類 審判 全部申し立て 2項進歩性  A23L
審判 全部申し立て 1項3号刊行物記載  A23L
管理番号 1113047
異議申立番号 異議2003-73259  
総通号数 64 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許決定公報 
発行日 2001-11-20 
種別 異議の決定 
異議申立日 2003-12-25 
確定日 2005-02-10 
異議申立件数
事件の表示 特許第3442030号「食味の優れた弁当用飯の製造方法」の請求項1ないし3に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 特許第3442030号の請求項1に係る特許を取り消す。 同請求項2ないし3に係る特許を維持する。 
理由 1.手続の経緯
本件特許第3442030号の請求項1ないし3についての出願は、平成12年5月12日に出願され、平成15年6月20日にその発明について特許権の設定登録がなされ、その後、株式会社アイホー、及び有限会社ツヤチャイルドより特許異議の申立てがなされ、取消しの理由が通知され、その指定期間内に意見書が提出されたものである。

2.特許異議の申立ての概要
(1)申立人 株式会社アイホーは、下記の甲第1〜4号証を提出し、請求項1に係る発明は、甲第1号証及び甲第2号証に記載された発明、並びに甲第3号証及び甲第4号証に例示された周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであると主張している。
甲第1号証:特公昭54-27430号公報(a)
甲第2号証:特開昭57-18952号公報(b)
甲第3号証:「大量調理施設の衛生管理マニュアル、食中毒調査マニュア
ル」、厚生労働省 食品衛生調査会食中毒部会、平成9年
3月17日(c)
甲第4号証:特開平5-187762号公報(d)
(2)申立人 有限会社ツヤチャイルドは、下記の甲第1〜10号証を提出し、請求項1ないし3に係る発明は、甲第1号証ないし甲第4号証に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、或いは甲第1号証ないし甲第10号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、同法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない旨主張している。
甲第1号証:「アイホー テクニカルニュース」NO.11、1982年
1月(e)
甲第2号証:「アイホー テクニカルニュース」NO.2、1981年
4月(f)
甲第3号証:特公昭58-47148号公報(g)
甲第4号証:実願昭59-115329号(実開昭61-30442号)
のマイクロフィルム(h)
甲第5号証:「食品工業」Vol.42 No.1999年11月30日
号、第42〜50頁(i)
甲第6号証:「食品衛生小六法 平成10年版」平成9年8月20日発行、 第2391〜2393頁(j)
甲第7号証:「弁当,そうざいの衛生規範」社団法人日本食品衛生協会
発行、1994年4月1日第8刷、第22〜23頁、第33
〜34頁(k)
甲第8号証:「米飯の技術とその利用」工業技術会株式会社発行、
1990年9月10日、第314頁、321頁ないし323
頁(l)
甲第9号証:「ライスフレンド物語」株式会社幸書房発行、1998年
6月1日、第88頁(m)
甲第10号証:「米やさんが書いた米の本」株式会社三水社発行、
1994年6月15日、第181頁(n)

3.請求項1ないし3に係る発明
本件特許第3442030号の請求項1ないし3に係る発明(以下、「本件発明1ないし3」という。)は、特許明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし3に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】 油脂無添加で炊飯した飯を少なくとも50℃以上の温熱状態で、空気を抱き込ませながら分割成型機で順次成型し、成型した飯を順次繰り出される弁当用容器上に機械的に載置し、そのまま25℃以下に冷却して弁当に用いることを特徴とする、食味の優れた弁当用飯の製造方法。
【請求項2】 請求項1における飯の成型時に、成型をした飯の側面が弁当用容器の内壁に接触せず、冷却時の空気が弁当用容器と成型された飯の間を通過して、冷却時に熱い飯より発生する水蒸気が弁当用容器に結露しないように冷却することを特徴とする、食味の優れた弁当用飯の製造方法。
【請求項3】 請求項2における飯の成型時に、成型した飯の底面に溝を設け、弁当用容器と接触する面の空気の通過量を増大させて、成型された熱い飯の側面とともに、飯の底面から発生する水蒸気が弁当用容器に結露しないように冷却することを特徴とする、食味の優れた弁当用飯の製造方法。」

4.本件発明1の特許について
当審が通知した取消理由において引用した刊行物(e)には、「自動弁当盛付機“ライスモールII”」との見出しの下に、「弁当箱へ自動的にご飯を盛付ける弁当盛付機は、いまでも数社のメーカーが生産しています。その構造は、コンベアによって連続的に移動する弁当箱へ上部から、ほぐしたご飯を落下させ、盛上った部分をならして、弁当箱にすり切れ一杯ご飯を収めてゆく方式であり、弁当箱の供給速度とご飯の供給速度をバランスよく合致させて盛付けを行う連続式盛付機である。この度、当社が新製品として発表した “ライスモールII”は、ほぐしたご飯を計量して1個1個弁当箱に収める方式であり、在来型に比べ多くの特長をもった自動式盛付機である。」、「炊飯釜反転装置 炊き上った炊飯釜をセットしてスイッチを押せばチェーンにより上方に運搬し、更に反転してご飯をホッパー内へ投入する。・・・」、「自動ほぐし装置 ホッパーへ投入したご飯を、A・B1対のほぐし羽根によってほぐし、順次自動計量装置内へ落下供給する。・・・」、「自動計量装置 弁当箱が所定の位置にあることを確認した後に、上部シャッターが閉じてご飯の量を設定し、次に下部シャッターが開いて計量桝内のご飯を落下させる。上下1組のシャッターによる桝計量方式であり、・・・・・又、上下シャッター間の寸法を変化させることにより、ご飯の量を増減できるため、計量器の交換だけで、1種類の弁当箱に異なった量のご飯を盛付けることができ便利である。」、「自動弁当箱搬送装置 コンベアで搬送される弁当箱へ、ステップ運転によって1個づつ正確にご飯を盛込んで行く。自動計量装置で計量したご飯を弁当箱の中へ正確に詰めるために、弁当箱を常に正確な位置へ停止させる構造となっている。」、及び「蓋締めコンベア 自動弁当箱搬送装置から送り出された弁当箱はベルトコンベア上に受け止められ移動する間に蓋締め作業を行う。」と記載されている。
また、同じく引用した刊行物(f)には、「炊き上った炊飯釜を反転装置で上方に持ち上げ、ご飯をホッパー内に投入する」ように構成された電子秤量式全自動どんぶり盛付機“ライスモール”が記載されている。
(対比・判断)
本件発明1と刊行物(e)に記載の発明を対比する。
通常の炊飯においては油脂を添加しないのが普通であるところ、刊行物(e)には炊飯時に油脂を添加することについて記載されていないのであるから、後者の「ご飯」は、油脂を添加せずに炊飯した飯であると解するのが相当である。
また、後者の装置では、炊き上った炊飯釜を反転装置で上方に持ち上げ、ご飯をホッパー内に投入する前の段階で特に炊飯釜内のご飯を強制的に冷却している形跡はないこと、及び刊行物(f)に記載の全自動どんぶり盛付機“ライスモール”は、食堂等において用いられるもので、ご飯を冷却することなく炊き上った熱い状態でどんぶりに盛付けていると解されるところ、後者と刊行物(f)とは炊飯から盛付けまでの手段がほぼ同じであることを併せ考えると、後者の弁当箱に盛付けるご飯は、どんぶりへの盛り付けの場合と同様に、炊き上り後で未だ熱い状態にあるご飯、すなわち、前者の「少なくとも50℃以上の温熱状態」にあるものと解される。
そうすると、両者は、油脂無添加で炊飯した飯を少なくとも50℃以上の温熱状態で、空気を抱き込ませながら分割成型機で順次成型し、成型した飯を順次繰り出される弁当用容器上に機械的に載置して弁当に用いることを特徴とする弁当用飯の製造方法の点で一致し、(1)前者は、弁当容器上に載置したご飯をそのまま25℃以下に冷却しているのに対して、後者には、 弁当容器上に載置したご飯を冷却することについて記載されていない点、及び(2)前者は、盛付けた弁当用飯を「食味に優れた」と限定しているのに対して、後者には、盛付けた弁当用飯の食味について何も記載されていない点、で両者は相違する。
上記相違点について検討する。
相違点(1)について
本件明細書の「従来の技術」の欄にも「コンビニエンスストアなどで毎日大量に販売されている弁当は、・・・・・製造工場に於いて、毎日大量に炊飯処理して弁当を製造している。この弁当製造に於いて考慮すべき事は、第一に安全な製品の製造であり、特に微生物の繁殖・増殖防止である。このために、飯は炊飯直後の高温時に、なるべく早く強制的に冷却することが望ましく、通常20〜25℃程度にまで冷却されている。」(段落【0002】)と記載されているように、コンビニエンスストアなどで販売する弁当を工場等で大量に製造する際に、食中毒の原因となる微生物による汚染を防止するために、出荷するまでの間に弁当容器に盛付けたご飯や副食を十分冷却した状態にしておくことは当業者の技術常識であるから、弁当製品の食中毒予防等の安全性を考慮して、未だ熱い状態にある刊行物(e)に記載の弁当箱に盛付けたご飯を冷却することは、当業者ならば当然に試みることであり、その際ご飯の冷却温度を「25℃以下」に設定することも当業者が適宜なし得ることである。
この点について、特許権者は平成16年11月29日付け意見書において、「甲第1号証(刊行物(e)に相当)の弁当盛付機は、弁当箱に飯を盛付け後、直接次の工程で蓋締めする構成となっている」(意見書7頁9〜10頁)と指摘した上で「甲第1号証の弁当盛付機で製造された弁当を冷却することが考えられても、甲第1号証の弁当盛付機の弁当製造工程中に冷却工程を設けることは、当業者でも容易に想到し得ないことである」と主張している。
しかし、刊行物(e)の自動弁当盛付機においては、弁当箱へのご飯の盛付け及弁当箱の蓋締めは共に一連のベルトコンベア上で行われているから、ベルトコンベアによる弁当箱の搬送距離を長く設定し、上流側の盛付け位置と下流側の蓋締め位置との間にご飯を冷却する区域を設定すれば、盛付け後のご飯を冷却できることは当業者ならば容易に想到し得ることである。
したがって、申立人の上記主張は採用しない。
相違点(2)について
本件明細書の記載によれば、本件発明1において、食味に優れた弁当用飯が得られるのは、油脂を添加せずに炊飯した飯を少なくとも50℃以上の温熱状態で弁当用容器に盛付けた結果によるものと認められるが、上記したとおり、刊行物(e)においても油脂を添加せずに炊飯した飯を少なくとも50℃以上の温熱状態で弁当用容器に盛付けているといえるから、後者においても食味に優れた弁当用飯が得られているものと認められる。
そうすると、相違点(2)は両者の実質的な相違点とはいえない。
また、本件発明1は、刊行物(e)に記載の弁当用飯の製造方法に比較して格別の効果を奏するものではない。
したがって、本件発明1の特許は、刊行物(e)に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.本件発明2の特許について
本件発明2は、本件発明1における飯の成型時に、成型した飯の側面が弁当用容器の内壁に接触せず、冷却時の空気が弁当用容器と成型された飯の間を通過して、冷却時に熱い飯より発生する水蒸気が弁当用容器に結露しないように冷却して、弁当用飯の周囲が水分を必要以上に含んでふやけるようなことがないようにした点に特徴を有するものである。
これに対して、申立人 有限会社ツヤチャイルドが証拠として提出した刊行物(e)には、上記「4.本件発明1の特許について」の欄に摘記したとおりのことが記載され、刊行物(f)には、刊行物(e)に係る弁当箱がどんぶりに置き換わっただけで刊行物(e)とほぼ同じ内容が示されているが、刊行物(e)に記載のものは、分割成型機による飯の成型時に、成型した飯の側面が弁当用容器の内壁に接触するものである(構造図参照)し、また、刊行物(f)に記載のどんぶり盛付機は、食堂等で使用されるものであるから、どんぶりに盛付けた熱いご飯を冷却することをそもそも想定していない。
確かに、上記「4.本件発明1の特許について」の欄に記載したとおり、刊行物(e)に記載の弁当箱に盛付けた熱いご飯を冷却することは当業者が当然に試みることではあるが、本件発明2のように飯の成型時に成型した飯の側面と弁当用容器の内壁との間に結露を防止できるだけの隙間を形成すれば、後に弁当容器の形状に合うようにハンドワーク(手作業)で成型された飯の形状を修正しなければならないから、弁当箱へのご飯の盛付けにあたって、わざわざ上記した隙間を形成することは当業者が考えないのが普通である。
してみると、弁当用飯の製造において、ご飯冷却時の結露防止という点に着目して、「飯の成型時に、成型した飯の側面が弁当用容器の内壁に接触せず、冷却時の空気が弁当用容器と成型された飯の間を通過して、冷却時に熱い飯より発生する水蒸気が弁当用容器に結露しないように冷却する」という構成を採用することは、当業者といえども刊行物(e)及び(f)に基づいて容易に想到し得ることではない。
刊行物(g)及び(h)には、炊飯した飯を熱い状態で空気を抱き込ませながら分割成型機で順次成型し、成型した飯をどんぶりに盛付けるように構成された飯盛付機が記載されているが、刊行物(g)及び(h)に記載のものは、刊行物(f)と同様に盛付けた熱い飯を冷却することは想定しておらず、本件発明2の「飯の成型時に、成型した飯の側面が弁当用容器の内壁に接触せず、冷却時の空気が弁当用容器と成型された飯の間を通過して、冷却時に熱い飯より発生する水蒸気が弁当用容器に結露しないように冷却する」ことを教示するものではない。
刊行物(i)には、「製品の保管はホットの米飯の場合は65〜70℃、常温の場合は15〜20℃、・・・で行う。米飯温度が47〜50℃まで低下するとB.subtilis(枯草菌)、B.cereus(セレウス菌)といった耐熱菌の生育可能な条件となる。常温保存の場合、15℃保管で3日間腐敗しない物が、20℃では2日間、25℃では1日で腐敗するため。厳密な温度管理を行う必要がある。」(49頁右欄)と記載され、刊行物(j)には、「大規模食中毒の発生防止について」との見出しの下に「食中毒予防の三原則(清潔、迅速、加熱と冷却)を実践するよう指導すること。」と記載され、刊行物(k)には、「他方、どうしても副食と主食を同一容器にいっしょに入れなければならない場合には各食品を十分冷却してから詰合わせなければならない。なお、その場合の冷却温度は10℃以下にすることが必要であり、この温度は米飯の場合には甚だきびしいが、食中毒予防上は絶対必要である。」(34頁)と記載され、刊行物(l)には、愛豊式ライスフレンドS-20・40による炊飯作業のフローチャートが記載され、刊行物(m)には「昭和49年頃、当時では最新型の弁当箱盛付機が開発された。・・・炊飯から盛付までをシステム化された。それがライスフレンド20と機械盛付機である。」(88頁)と記載され、刊行物(n)には、「ご飯がむれたらさっそくお弁当箱に盛り付け、フタをしないでそのまま冷ますことが大切です。」(181頁)と記載されている。
しかし、これらの刊行物には、熱いご飯を冷却するときの結露防止に言及する記載はなく、本件発明2の「飯の成型時に、成型した飯の側面が弁当用容器の内壁に接触せず、冷却時の空気が弁当用容器と成型された飯の間を通過して、冷却時に熱い飯より発生する水蒸気が弁当用容器に結露しないように冷却する」ことについて教えるところはない。
そして、本件発明2は、上記構成を備えることにより、弁当用飯の周囲が水分を必要以上に含んでふやけるようなことがない等特許明細書に記載されたとおりの効果を奏するものである。
したがって、本件発明2は、上記刊行物(e)ないし(n)に記載の発明に基づいて当業者が容易に想到し得たものということはできず、申立人 有限会社ツヤチャイルドの本件発明2に関する主張は採用しない。

なお、申立人 株式会社アイホーは、本件発明2ないし3に対して異議の申立てをしていないので、刊行物(a)ないし(d)について言及する必要はないが、念のために触れると、下記に示すとおり、刊行物(a)ないし(d)によっても本件発明2の進歩性を否定することはできない。
刊行物(a)には、連続盛付機を用いて炊き上げた後の熱い状態にあるご飯を一定量ずつ自動的に弁当箱に盛付けることが記載され、刊行物(b)には、炊き上り後で未だ冷えない状態にある米飯を弁当箱内に詰めた後、この弁当箱を密閉可能な真空容器中に収容して米飯を真空冷却することが記載されている。
しかし、刊行物(a)に記載のものは、分割成型機による飯の成型時に、成型した飯の側面が弁当用容器の内壁に接触するようにしたものであって(第2図参照。)、本件発明2の「飯の成型時に、成型した飯の側面が弁当用容器の内壁に接触せず、冷却時の空気が弁当用容器と成型された飯の間を通過して、冷却時に熱い飯より発生する水蒸気が弁当用容器に結露しないように冷却する」ことについて教えるところはない。
また、刊行物(b)には、分割成型機の使用の有無を含めて米飯を弁当箱内に詰める方法について具体的な記載は何もないし、また、弁当箱に詰めた熱い米飯を真空冷却することが記載されているが、かから記載から本件発明2の上記構成を想到することは当業者といえども困難である。
さらに、刊行物(c)には、加熱調理後食品を冷却する場合には、病原菌の発育至適温度帯(約20℃〜50℃)の時間を可能な限り短くする必要があることが記載され、刊行物(d)には、25℃〜45℃の温度帯は大腸菌や黄色ぶどう球菌等の細菌が最も活発に繁殖する環境であることが記載されているが、これらの刊行物は、コンビニエンスストアなどで販売される弁当を出荷するとき、食中毒の原因となる微生物による汚染を防止するために、出荷するまでの間に弁当容器に盛付けたご飯や副食を十分冷却した状態にしておくことが当業者の周知事項であったことを示しているに過ぎないものである。
してみると、本件発明2は、刊行物(a)ないし(b)に記載の発明及び刊行物(c)ないし(d)に示される周知事項に基づいて当業者が容易に発明できたとはいえない。

6.本件発明3の特許について
本件発明3は、本件発明2における飯の成型時に、成型した飯の底面に溝を設け、弁当用容器と接触する面の空気の通過量を増大させて、成型された熱い飯の側面とともに、飯の底面から発生する水蒸気が弁当用容器に結露しないように冷却して、弁当用飯の底部が水分を必要以上に含んでふやけるようなことがないようにした点に特徴を有するものである。
これに対して、上記刊行物(e)ないし(n)には、本件発明3において特定する「飯の成型時に、成型した飯の底面に溝を設け、弁当用容器と接触する面の空気の通過量を増大させて、成型された熱い飯の側面とともに、飯の底面から発生する水蒸気が弁当用容器に結露しないように冷却して、弁当用飯の底部が水分を必要以上に含んでふやけるようなことがないようにする」ことについて教えるところはない。
また、刊行物(a)ないし(d)について検討しても、これらの刊行物には、本件発明3で特定する上記構成について教えるところはない。
してみると、本件発明3は、刊行物(e)ないし(n)に記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたとはいえないし、また、刊行物(a)ないし(b)に記載の発明及び刊行物(c)ないし(d)に示される周知事項に基づいて当業者が容易に発明できたとはいえない。

7.むすび
以上のとおり、本件発明1は、刊行物(e)に記載の発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明1についての特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してされたものであり、同法第113条第2号に該当し、取り消されるべきものである。
また、本件発明2及び3についての特許を取り消すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり決定する。
 
異議決定日 2004-12-15 
出願番号 特願2000-139338(P2000-139338)
審決分類 P 1 651・ 121- ZC (A23L)
P 1 651・ 113- ZC (A23L)
最終処分 一部取消  
前審関与審査官 北村 弘樹  
特許庁審判長 田中 久直
特許庁審判官 河野 直樹
種村 慈樹
登録日 2003-06-20 
登録番号 特許第3442030号(P3442030)
権利者 株式会社武蔵野
発明の名称 食味の優れた弁当用飯の製造方法  
代理人 橋本 剛  
代理人 山田 哲也  
代理人 須藤 阿佐子  
代理人 小林 博通  
代理人 須藤 晃伸  
代理人 樺澤 襄  
代理人 樺澤 聡  

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