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審決分類 審判 訂正 判示事項別分類コード:83 訂正する B65G
管理番号 1113878
審判番号 訂正2004-39232  
総通号数 65 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-04-07 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2004-10-15 
確定日 2005-02-04 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3307555号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3307555号に係る明細書を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり訂正することを認める。 
理由 1.請求の要旨
本件審判の請求の要旨は、特許第3307555号[平成9年2月25日特許出願(パリ条約による優先権主張1996年9月4日、大韓民国)、平成14年5月17日設定登録]に係る明細書[以下、「特許明細書」(特許第3307555号公報参照)という。]を本件審判請求書に添付された訂正明細書のとおり、すなわち、下記(1)ないし(7)のとおり訂正することを求めるものである。

(1)訂正事項a
「【請求項1】
基板を積載するためのスロットが互いに向い合うように形成されているスロット付サイドプレート対と、
前記スロット付サイドプレートの上端を支持する上板と、
前記スロット付サイドプレートの下端を支持する底板と、
前記基板の挿入側と反対側に設けられ、前記スロットから積載される前記基板が抜け出ないようにする、前記上板と底板とに支持された一つ以上のストッパーと、
前記基板の挿入側と反対側に設けられ、前記上板と底板とに支持されたサイドプレートとを含み、
前記ストッパーまたは前記基板の挿入側と反対側に設けられた前記サイドプレートのみに、前記スロット付サイドプレート対で挟まれた空間に向かって突出して延長されかつ互いに平行であって、基板の中央部を支持する複数のサポートバーが形成されており、
前記底板、ストッパー、サイドプレート及びサポートバーは、導電性材質からなり、
前記サポートバーは、前記積載される基板と接触点を有し、前記接触点部分は、サポートバーの主体部分よりも高い表面抵抗率を有する材質で形成されている、
表示装置用基板の積載用カセット。」を、
「【請求項1】
基板を積載するために前記基板の端部を支持するスロットと、 前記スロットが互いに向い合うように形成されているスロット付サイドプレート対と、 前記スロット付サイドプレートの上端を支持する上板と、
前記スロット付サイドプレートの下端を支持する底板と、
前記基板の挿入側と反対側に設けられ、前記スロットから積載される前記基板が抜け出ないようにする、前記上板と底板とに支持された一つ以上のストッパーと、
前記基板の挿入側と反対側に設けられ、前記上板と底板とに支持されたサイドプレートとを含み、
前記ストッパーまたは前記基板の挿入側と反対側に設けられた前記サイドプレートのみに、前記スロット付サイドプレート対で挟まれた空間に向かって突出して延長され、かつ前記基板を互いに平行に支持する複数のサポートバーが形成されており、 前記底板、ストッパー及びサイドプレートは、導電性材質からなり、 前記サポートバーは、前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、金属で形成されている前記サポートバーの主体部分よりも高い表面抵抗率を有する材質で形成され、かつ前記基板の中央部から静電気を除去する、表示装置用基板の積載用カセット。」に訂正する。
(アンダーラインは訂正対応個所を示す。以下同じ。)
(2)訂正事項b
「【請求項5】
基板を積載するためのスロットが互いに向い合うように形成されているスロット付サイドプレート対と、
前記スロット付サイドプレートの上端を支持する上板と、
前記スロット付サイドプレートの下端を支持する、少なくとも一部は金属からなっている第1金属部を含む底板と、
前記基板の挿入側と反対側に設けられ、前記スロットから積載される前記基板が抜け出ないようにする、前記上板と底板とに支持され、かつ前記底板の第1金属部と連結される第2金属部を有している一つ以上のストッパーとを含み、
前記ストッパーには、前記スロット付サイドプレート対で挟まれた空間に向かって突出して延長されかつ互いに平行であって、基板の中央部を支持するサポートバーが形成されており、
前記サポートバーは金属製であって前記ストッパーの第2金属部と連結されており、
前記サポートバーは前記積載される基板との接触点を有し、前記接触点部分は、サポートバーの主体部分よりも高い表面抵抗率を有する材質で形成されている、
表示装置用基板の積載用カセット。」を、
「【請求項5】
基板を積載するために前記基板の端部を支持するスロットと、 前記スロットが互いに向い合うように形成されているスロット付サイドプレート対と、 前記スロット付サイドプレートの上端を支持する上板と、
前記スロット付サイドプレートの下端を支持する、少なくとも一部は金属からなっている第1金属部を含む底板と、
前記基板の挿入側と反対側に設けられ、前記スロットから積載される前記基板が抜け出ないようにする、前記上板と底板とに支持され、かつ前記底板の第1金属部と連結される第2金属部を有している一つ以上のストッパーとを含み、
前記ストッパーには、前記スロット付サイドプレート対で挟まれた空間に向かって突出して延長され、かつ前記基板を互いに平行に支持するサポートバーが形成されており、 前記サポートバーの主体部分は金属製であって前記ストッパーの第2金属部と連結されており、 前記サポートバーは、前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、前記サポートバーの主体部分よりも高い表面抵抗率を有する材質で形成され、かつ前記基板の中央部から静電気を除去する、表示装置用基板の積載用カセット。」に訂正する。
(3)訂正事項d
「【請求項10】
少なくとも一部は金属性材質からなる基板積載用カセットに基板を積載する段階と、
前記基板を前記金属性材質に接触させて静電気を分散させる段階とを含み、
前記基板積載用カセットは、基板の中央部を支持するように互いに平行に形成され前記基板が歪まないよう基板を支持する、導電性材質のサポートバーを含み、前記サポートバーは積載される基板との接触点を有し、前記接触点部分は前記サポートバーの主体部分より高い表面抵抗率を有する材質からなる、
表示装置用基板の静電破壊防止方法。」を、
「【請求項10】
少なくとも一部は金属性材質からなる基板積載用カセットに基板を積載する段階と、
前記基板を前記金属性材質に電気的に接続させて静電気を分散させる段階とを含み、
前記基板積載用カセットは、
基板を積載するために前記基板の端部を支持するスロットと、 前記基板を互いに平行に支持し、かつ前記基板が歪まないよう基板を支持するサポートバーとを含み、 前記サポートバーは、前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、金属で形成されている前記サポートバーの主体部分より高い表面抵抗率を有する材質で形成され、かつ前記基板の中央部から静電気を除去する、表示装置用基板の静電破壊防止方法。」に訂正する。
(4)訂正事項e
「【請求項11】
金属性材質からなる金属部を含む基板積載用カセットに基板を積載する段階と、
前記カセットの金属部を接地させる段階と、
前記基板を前記金属部に接触させて静電気電流を放出する段階とを含み、
前記基板積載用カセットは、基板の中央部を支持するように互いに平行に形成され前記基板が歪まないよう基板を支持する、導電性材質のサポートバーを含み、前記サポートバーは積載される基板との接触点を有し、前記接触点部分は前記サポートバーの主体部分より高い表面抵抗率を有する材質からなる、表示装置用基板の静電気放出方法。」を、
「【請求項11】
金属性材質からなる金属部を含む基板積載用カセットに基板を積載する段階と、
前記カセットの金属部を接地させる段階と、
前記基板を前記金属部に電気的に接続させて静電気電流を放出する段階とを含み、
前記基板積載用カセットは、
基板を積載するために前記基板の端部を支持するスロットと、 前記基板を互いに平行に支持し、かつ前記基板が歪まないよう基板を支持するサポートバーとを含み、 前記サポートバーは、前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、金属で形成されている前記サポートバーの主体部分より高い表面抵抗率を有する材質から形成され、かつ前記基板の中央部から静電気を除去する、表示装置用基板の静電気放出方法。」に訂正する。
(5)訂正事項f
「【0017】【課題を解決するための手段】前記目的を達成するための本発明の表示装置用基板の積載用カセットは、基板を積載させるためのスロットが互いに向い合うように形成されているスロット付サイドプレート対と、前記スロット付サイドプレートの上端を支持する上板と、前記スロット付サイドプレートの下端を支持する底板と、前記基板の挿入側と反対側に設けられ、前記スロットから積載される前記基板が抜け出ないようにする、前記上板と底板とに支持された一つ以上のストッパーと、前記基板の挿入側と反対側に設けられ、前記上板と底板とに支持されたサイドプレートと、前記ストッパーまたは前記基板の挿入側と反対側に設けられた前記サイドプレートのみに、前記スロット付サイドプレート対で挟まれた空間に向かって突出して延長されかつ互いに平行であって、基板の中央部を支持する複数のサポートバーが形成されており、前記底板、ストッパー、サイドプレート及びサポートバーは、導電性材質からなり、前記サポートバーは、前記積載される基板と接触点を有し、前記接触点部分は、サポートバーの主体部分よりも高い表面抵抗率を有する材質で形成されている。」を、
「【0017】【課題を解決するための手段】前記目的を達成するための本発明の表示装置用基板の積載用カセットは、基板を積載するために前記基板の端部を支持するスロットと、前記スロットが互いに向い合うように形成されているスロット付サイドプレート対と、前記スロット付サイドプレートの上端を支持する上板と、前記スロット付サイドプレートの下端を支持する底板と、前記基板の挿入側と反対側に設けられ、前記スロットから積載される前記基板が抜け出ないようにする、前記上板と底板とに支持された一つ以上のストッパーと、前記基板の挿入側と反対側に設けられ、前記上板と底板とに支持されたサイドプレートと、前記ストッパーまたは前記基板の挿入側と反対側に設けられた前記サイドプレートのみに、前記スロット付サイドプレート対で挟まれた空間に向かって突出して延長され、かつ前記基板を互いに平行に支持する複数のサポートバーが形成されており、前記底板、ストッパー及びサイドプレートは、導電性材質からなり、前記サポートバーは、前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、金属で形成されている前記サポートバーの主体部分よりも高い表面抵抗率を有する材質で形成され、かつ前記基板の中央部から静電気を除去する。」に訂正する。
(6)訂正事項g
「【0018】さらに、本発明の表示装置用基板の積載用カセットは、基板を積載するためのスロットが互いに向い合うように形成されているスロット付サイドプレート対と、前記スロット付サイドプレートの上端を支持する上板と、前記スロット付サイドプレートの下端を支持する、少なくとも一部は金属からなっている第1金属部を含む底板と、前記基板の挿入側と反対側に設けられ、前記スロットから積載される前記基板が抜け出ないようにする、前記上板と底板とに支持され、かつ前記底板の第1金属部と連結される第2金属部を有している一つ以上のストッパーとを含み、前記ストッパーには、前記スロット付サイドプレート対で挟まれた空間に向かって突出して延長されかつ互いに平行であって、基板の中央部を支持するサポートバーが形成されており、前記サポートバーは金属製であって前記ストッパーの第2金属部と連結されており、前記サポートバーは前記積載される基板との接触点を有し、前記接触点部分は、サポートバーの主体部分よりも高い表面抵抗率を有する材質で形成されている。」を、
「【0018】さらに、本発明の表示装置用基板の積載用カセットは、基板を積載するために前記基板の端部を支持するスロットと、前記スロットが互いに向い合うように形成されているスロット付サイドプレート対と、前記スロット付サイドプレートの上端を支持する上板と、前記スロット付サイドプレートの下端を支持する、少なくとも一部は金属からなっている第1金属部を含む底板と、前記基板の挿入側と反対側に設けられ、前記スロットから積載される前記基板が抜け出ないようにする、前記上板と底板とに支持され、かつ前記底板の第1金属部と連結される第2金属部を有している一つ以上のストッパーとを含み、前記ストッパーには、前記スロット付サイドプレート対で挟まれた空間に向かって突出して延長され、前記基板を互いに平行に支持するサポートバーが形成されており、前記サポートバーの主体部分は金属製であって前記ストッパーの第2金属部と連結されており、前記サポートバーは、前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、前記サポートバーの主体部分よりも高い表面抵抗率を有する材質で形成され、かつ前記基板の中央部から静電気を除去する。」に訂正する。
(7)訂正事項h
「【0019】さらに、本発明の表示装置用基板の静電破壊防止方法は、金属性材質からなる金属部を含む基板積載用カセットに基板を積載する段階と、前記カセットの金属部を接地させる段階と、前記基板を前記金属部に接触させて静電気電流を放出する段階とを含み、前記基板積載用カセットは、基板の中央部を支持するように互いに平行に形成され前記基板が歪まないよう基板を支持する、導電性材質のサポートバーを含み、前記サポートバーは積載される基板との接触点を有し、前記接触点部分は前記サポートバーの主体部分より高い表面抵抗率を有する材質からなる。」を。
「【0019】さらに、本発明の表示装置用基板の静電破壊防止方法は、金属性材質からなる金属部を含む基板積載用カセットに基板を積載する段階と、前記カセットの金属部を接地させる段階と、前記基板を前記金属部に電気的に接続させて静電気電流を放出する段階とを含み、前記基板積載用カセットは、基板を積載するために前記基板の端部を支持するスロットと、前記基板を互いに平行に支持し、かつ前記基板が歪まないよう基板を支持するサポートバーとを含み、前記サポートバーは、前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、金属で形成されている前記サポートバーの主体部分より高い表面抵抗率を有する材質から形成され、かつ前記基板の中央部から静電気を除去する。」に訂正する。

2.当審の判断
2-1.訂正の目的の適否、新規事項の有無及び拡張・変更の存否
(1)訂正事項aについて
イ.複数のサポートバーについて、「互いに平行」を「前記基板を互いに平行に支持する」とした訂正は、複数の基板が基板積載用カセットに挿入され、サポートバーにより基板が支持された場合、その支持された基板が互いに平行となるようにサポートバーが形成されていることを明りょうにした、つまり、サポートバーの向きは基板の面方向に沿っていることを明りょうにしたものである。そして、「前記基板を互いに平行に支持する」については、特許明細書の「・・・基板を積載し得るように多数のスロット25が突起25’によって互いに向い合うように形成されている。・・・」(段落【0022】参照),「・・・サポートバー27は弾性を有するアルミニウム(Al)からなるので、基板の歪みを自然に補正することができる。・・・」(段落【0026】参照),「・・・このとき、基板29は、スロット25(突起25’上)に支持されると共に、サポートバー27上にも支持されるようになり、このため歪みが防止される。」(段落【0028】参照),「・・・基板29の歪みを防止するため、基板29の中央下端部を長めのサポートバー27を用いて保持しているが、・・・」(段落【0029】参照),「・・・さらに積載している基板が歪まないようにすると共に、・・・」(段落【0035】参照)の記載や、スロットが互いに向い合うように形成されていることを示す【図7】,スロットとサポートバーとにより基板を平行に支持していることを示す【図9】の記載から、自明の事項である。
ロ.「基板の中央部」を「スロットによって支持されない基板の中央部」とした訂正,及び「基板を積載するために前記基板の端部を支持するスロット」を追加した訂正は、スロットにより基板の端部が支持されることを明りょうにするとともに、スロット及びサポートバーが基板を支持しており、特にサポートバーが支持する「基板の中央部」とは、スロットにより支持されない部分であることを特定し、「基板の中央部」が基板のどの部分であるのかを明りょうにしたものである。そして、「スロットによって支持されない基板の中央部」,「基板を積載するために前記基板の端部を支持するスロット」については、特許明細書の「・・・基板積載用カセットは、基板の両端部のみを保持している形態であるため、・・・」(段落【0007】参照),「・・・基板を積載し得るように多数のスロット25が突起25’によって互いに向い合うように形成されている。・・・」(段落【0022】参照),「・・・このとき、基板29は、スロット25(突起25’上)に支持されると共に、サポートバー27上にも支持されるようになり、このため歪みが防止される。」(段落【0028】参照),「・・・基板29の歪みを防止するため、基板29の中央下端部を長めのサポートバー27を用いて保持しているが、・・・」(段落【0029】参照)の記載や、基板は基板積載用カセットのサイドプレートに形成されたスロットによりその両端部を支持されることを示す【図6】及び【図7】,基板がさらにサポートバーにより支持されることを示す【図9】の記載から、自明の事項である。
ハ.「前記積載される基板と接触点を有し」を「前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し」とした訂正は、基板の中央部を支持する部分とは、基板の接触点であることを明りょうにしたものである。そして、「前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し」については、特許明細書の「そして、サポトバー27は、一端がサイドプレート21に連結され、その先端は銛形状となっている。・・・このサポートバー27は弾性を有するアルミニウム(Al)からなるので、基板の歪みを自然に補正することができる。・・・基板29と接触する部分には表面抵抗率が・・・である帯電防止用樹脂を用いて静電気の防止時のショックを防止し、アルミニウム(Al)と帯電防止用樹脂の相互作用により静電気を低く保持する構造となっている。・・・」(段落【0026】参照),「・・・このとき、基板29は、スロット25(突起25’上)に支持されると共に、サポートバー27上にも支持されるようになり、このため歪みが防止される。」(段落【0028】参照)の記載や、基板は基板積載用カセットのサイドプレートに形成されたスロットによりその両端部を支持されることを示す【図6】及び【図7】,基板がさらにサポートバーにより支持されることを示す【図9】の記載から、自明の事項である。
ニ.「サポートバー」を「金属で形成されているサポートバー」とした訂正は、サポートバーにさらなる限定を加えるものである。そして、「金属で形成されているサポートバー」については、特許明細書の「・・・前記サポートバーは金属製であって・・・」(【請求項5】,段落【0018】参照),「・・・サポートバー27およびストッパー24はアルミニウム(Al)と導電性樹脂(PEI)で製作され、・・・」(段落【0025】参照),「・・・このサポートバー27は弾性を有するアルミニウム(Al)からなるので、・・・」(段落【0026】参照)の記載から、自明の事項である。
ホ.「かつ前記基板の中央部から静電気を除去する」を追加した訂正は、サポトバーにさらなる限定を加えるものである。そして、「かつ前記基板の中央部から静電気を除去する」については、特許明細書の「・・・帯電物質と容易に接触可能な基板側面部位と中間部分の静電気が高いことがわかる。・・・」(段落【0013】,【表2】,【表3】,【図5】参照),「・・・なお、中央部のサポートバー27は、一端がストッパー24に連結されている。・・・」(段落【0026】参照),「・・・基板29の歪みを防止するため、基板29の中央下端部を長めのサポートバー27を用いて保持しているが、・・・」(段落【0029】参照)の記載から、自明の事項である。
したがって、訂正事項aは、特許請求の範囲の減縮,明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(2)訂正事項bについて
訂正事項bについての訂正は、上記訂正事項aのイ.ロ.ハ.ホ.と同様の訂正である。
したがって、訂正事項bは、特許請求の範囲の減縮,明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(3)訂正事項d、eについて
訂正事項d、eについての訂正は、上記訂正事項aのイ.〜ホ.と同様の訂正を行うとともに、さらに、「金属性材質に接触させて(金属部に接触させて)」を「金属性材質に電気的に接続させて(金属部に電気的に接続させて)」と訂正し、サポートバーが単に金属性材質(金属部)に接触するのではなく、金属性材質(金属部)と電気的に接続されることを明りょうにしたものである。そして、「金属性材質に電気的に接続させて(金属部に電気的に接続させて)」については、特許明細書の「・・・表面抵抗率が100〜102Ω/m2のアルミニウム(Al)は静電気の吸収が速いので、基板29と接触する部分には表面抵抗率が1010〜1012Ω/m2である帯電防止用樹脂を用いて静電気の防止時のショックを防止し、アルミニウム(Al)と帯電防止用樹脂の相互作用により静電気を低く保持する構造となっている。・・・」(段落【0026】参照)の記載から、自明の事項である。
したがって、訂正事項d、eは、特許請求の範囲の減縮,明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。
(4)訂正事項f,g,hについて
訂正事項f,g,hは、上記訂正事項a,b,d,eと整合を図るものであるから、明りょうでない記載の釈明を目的とした明細書の訂正に該当し、新規事項の追加に該当せず、実質的に特許請求の範囲を拡張又は変更するものではない。

2-2.独立特許要件の判断
(1)本件発明
訂正明細書の請求項1〜12に係る発明(以下、「本件発明1〜12」という。)は、その特許請求の範囲の請求項1〜12に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「【請求項1】
基板を積載するために前記基板の端部を支持するスロットと、
前記スロットが互いに向い合うように形成されているスロット付サイドプレート対と、
前記スロット付サイドプレートの上端を支持する上板と、
前記スロット付サイドプレートの下端を支持する底板と、
前記基板の挿入側と反対側に設けられ、前記スロットから積載される前記基板が抜け出ないようにする、前記上板と底板とに支持された一つ以上のストッパーと、
前記基板の挿入側と反対側に設けられ、前記上板と底板とに支持されたサイドプレートとを含み、
前記ストッパーまたは前記基板の挿入側と反対側に設けられた前記サイドプレートのみに、前記スロット付サイドプレート対で挟まれた空間に向かって突出して延長され、かつ前記基板を互いに平行に支持する複数のサポートバーが形成されており、
前記底板、ストッパー及びサイドプレートは、導電性材質からなり、
前記サポートバーは、前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、金属で形成されている前記サポートバーの主体部分よりも高い表面抵抗率を有する材質で形成され、かつ前記基板の中央部から静電気を除去する、表示装置用基板の積載用カセット。
【請求項2】
前記サポートバーが形成された前記ストッパーは、前記底板の中央部に位置している請求項1に記載の表示装置用基板の積載用カセット。
【請求項3】
前記スロットを通じて積載された基板が前記スロットを通じて再び抜け出ることを防止するよう前記スロットの基板積載位置より高い位置に位置する複数の突起部を有している抜け出し防止手段と、
前記抜け出し防止手段を前記カセットに脱着可能であるように取り付ける取付手段とをさらに含む請求項1または2に記載の表示装置用基板の積載用カセット。
【請求項4】
前記取付手段は少なくとも一つ以上のボルトである請求項3に記載の表示装置用基板の積載用カセット。
【請求項5】
基板を積載するために前記基板の端部を支持するスロットと、
前記スロットが互いに向い合うように形成されているスロット付サイドプレート対と、
前記スロット付サイドプレートの上端を支持する上板と、
前記スロット付サイドプレートの下端を支持する、少なくとも一部は金属からなっている第1金属部を含む底板と、
前記基板の挿入側と反対側に設けられ、前記スロットから積載される前記基板が抜け出ないようにする、前記上板と底板とに支持され、かつ前記底板の第1金属部と連結される第2金属部を有している一つ以上のストッパーとを含み、
前記ストッパーには、前記スロット付サイドプレート対で挟まれた空間に向かって突出して延長され、かつ前記基板を互いに平行に支持するサポートバーが形成されており、
前記サポートバーの主体部分は金属製であって前記ストッパーの第2金属部と連結されており、
前記サポートバーは、前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、前記サポートバーの主体部分よりも高い表面抵抗率を有する材質で形成され、かつ前記基板の中央部から静電気を除去する、表示装置用基板の積載用カセット。
【請求項6】
前記サイドプレートは金属で形成されている第3金属部を含み、前記第3金属部は前記底板の第1金属部と連結されている請求項5に記載の表示装置用基板の積載用カセット。
【請求項7】
前記サポートバーは積載された基板との接触点を有し、前記接触点部分は前記サポートバーの他の部分より高い表面抵抗率を有する材質からなる請求項5または6に記載の表示装置用基板の積載用カセット。
【請求項8】
前記接触点付近の材質は、表面抵抗率が1010〜1012オーム/m2の帯電防止用樹脂である請求項7に記載の表示装置用基板の積載用カセット。
【請求項9】
前記底板の第1金属部、ストッパーの第2金属部及び前記サポートバーの第3金属部は、アルミニウムからなる請求項5または6に記載の表示装置用基板の積載用カセット。
【請求項10】
少なくとも一部は金属性材質からなる基板積載用カセットに基板を積載する段階と、
前記基板を前記金属性材質に電気的に接続させて静電気を分散させる段階とを含み、
前記基板積載用カセットは、
基板を積載するために前記基板の端部を支持するスロットと、
前記基板を互いに平行に支持し、かつ前記基板が歪まないよう基板を支持するサポートバーとを含み、
前記サポートバーは、前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、金属で形成されている前記サポートバーの主体部分より高い表面抵抗率を有する材質で形成され、かつ前記基板の中央部から静電気を除去する、表示装置用基板の静電破壊防止方法。
【請求項11】
金属性材質からなる金属部を含む基板積載用カセットに基板を積載する段階と、
前記カセットの金属部を接地させる段階と、
前記基板を前記金属部に電気的に接続させて静電気電流を放出する段階とを含み、
前記基板積載用カセットは、
基板を積載するために前記基板の端部を支持するスロットと、
前記基板を互いに平行に支持し、かつ前記基板が歪まないよう基板を支持するサポートバーとを含み、
前記サポートバーは、前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、金属で形成されている前記サポートバーの主体部分より高い表面抵抗率を有する材質から形成され、かつ前記基板の中央部から静電気を除去する、表示装置用基板の静電気放出方法。
【請求項12】
前記接地段階は、
前記カセットを接地した運搬機構に搭載する段階と、
前記運搬機構と前記カセットの金属部を接触させる段階とを含む請求項11に記載の表示装置用基板の静電気放出方法。」

(2)刊行物記載の発明等
本件特許第3307555号に係る特許異議申立て[異議2003-70233]において、特許異議申立人によって提示された特開平8-46022号公報[以下、「刊行物1」という。]には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア.「【0010】本発明は、このような背景下において、基板支承用側板の巾を狭くしても必要な強度を有し、しかも基板取り扱い時の帯電を有効に防止すると共に、たとえ帯電しても減衰が適度の範囲でゆっくりと行われるため回路障害を起こすことがなく、さらには基板との摩擦によっても摩耗粉などの塵埃を生じがたいカセットを提供すること、およびそのカセットの主要部を構成する基板支承用側板を提供することを目的とするものである。」(第2頁第2欄第50行〜第3頁第3欄第7行)
イ.「【0014】本発明のカセットは、フレーム(1)および基板支承用側板(2),(2)で箱形に形成され、箱形の1対の相対向する側面に基板支承用側板(2),(2)が配設された基本構成を有する。
【0015】フレーム(1)は、底フレーム(11)、天井フレーム(12)、および基板(O)を受けとめるためのストッパーとしての受けフレーム(13)で構成される。受けフレーム(13)に代えて、カセット最奥側のフレームまたはカセット最奥部の基板支承用側板(2)に適宜のストッパー手段を設けることもできる。フレーム(1)の材質は、樹脂であっても金属であってもよい。」(第3頁第3欄第31〜41行)
ウ.「【0022】加えて本発明においては、上記基板支承用側板(2)として、材質的には、金属体(M)を骨格材としかつ背肉部(21)の少なくとも前面側および棚片(22)が樹脂体(R)で形成され、かつその樹脂体(R)のうち基板(O)との接当部の少なくとも一部は発塵防止性樹脂(Rb)で形成されると共に、樹脂体(R)の発塵防止性樹脂(Rb)以外の部分は導電性物質配合樹脂(Ra)で形成されているものを用いる。
【0023】ここで金属体(M)としては、アルミニウム、ステンレススチールなどが用いられる。」(第3頁第4欄第18〜27行)
エ.「【0035】そのため、基板(O)は実質的に棚片(22)の遊端の山形の頂点の一点で支承されることになり、」(第4頁第5欄第46,47行)
オ.「【0038】また、金属体(M)および導電性物質配合樹脂(Ra)の存在により、基板(O)の取り扱い時の帯電が有効に防止されると共に、たとえ帯電しても減衰時間が0.5秒とか1秒というように一定時間保たれるために減衰が適度の範囲でゆっくりと行われ、回路障害を起こすおそれがない。ちなみに基板支承用側板(2)をオール金属製としたときは、帯電物と接触したときに一気に電流が流れる、」(第4頁第6欄第10〜17行)
カ.「【0041】実施例1
図1は本発明の基板支承用側板(2)の一例を示した斜視図であり、一部を省略表示してある。図2は図1の基板支承用側板(2)の側面図である。図3は本発明のカセットの一例を示した側面図である。
【0042】図3において、(1)はフレームであり、底フレーム(11)、天井フレーム(12)および受けフレーム(13)からなる。底フレーム(11)天井フレーム(12)は、それぞれ後述の発塵防止性樹脂(Rb)、導電性物質配合樹脂(Ra)と同じもので成形されている。受けフレーム(13)は、軸方向に穿孔したポリテトラフルオロエチレン押出成形棒にSUS304製の金属棒をきつく挿入したものからなる。
【0043】(2)は基板支承用側板であり、底フレーム(11)-天井フレーム(12)間に1面につき3枚宛ビスどめしてある。一点鎖線で示した(O)は基板の一例としてのガラス基板であり(図3には1枚のみを表示してある)、相対向する基板支承用側板(2),(2)の対応する棚片(22),(22)間の空隙に収容してある。・・・
【0049】このカセットは比較的軽い上、このカセットにたとえばTFT液晶用ガラス基板を収容したときであっても、帯電防止が確実に図られるためトランジスタの破壊が確実に防止できる。・・・
【0050】実施例2
図4は本発明の基板支承用側板(2)の他の一例を示した斜視図である。
【0051】この実施例2においては、実施例1と同様に背肉部(21)の中央に発塵防止性樹脂(Rb)で形成された突条状の張出部(3x)を縦方向に設けると共に、舌状の棚片(22)の山形構造の棚面の尾根の部分にも発塵防止性樹脂(Rb)で形成された突条状の張出部(3y)を設けてある。
【0052】実施例3
図5は本発明の基板支承用側板(2)のさらに他の一例を示した部分斜視図である。図6は図5の基板支承用側板(2)の巾方向切断断面図である。
【0053】この実施例3においては、背肉部(21)の中央に発塵防止性樹脂(Rb)で形成された突条状の張出部(3x)を縦方向に設けてある。
【0054】実施例4
図7は本発明の基板支承用側板(2)の別の一例を示した部分斜視図である。図8は図7の基板支承用側板(2)の巾方向切断断面図である。
【0055】この実施例4においては、背肉部(21)の中央側の領域に両端側の領域よりも前方に張り出した巾広の張出部(3z)を設けると共に、その張出部(3z)を発塵防止性樹脂(Rb)で形成してある。また、棚片(22)も発塵防止性樹脂(Rb)で形成してある。」(第4頁第6欄第25行〜第5頁第8欄第6行)
上記記載事項ア.〜カ.によると、刊行物1には、
「【A】基板(O)を積載するために前記基板(O)の端部を支持する棚片(22),(22)間の空隙と、
前記棚片(22),(22)間の空隙が互いに向い合うように形成されている基板支承用側板(2)対と、
前記基板支承用側板(2)の上端を支持する天井フレーム(12)と、
前記基板支承用側板(2)の下端を支持する底フレーム(11)と、
前記基板(O)の挿入側と反対側に設けられ、前記棚片(22),(22)間の空隙から積載される前記基板(O)が抜け出ないようにする、前記天井フレーム(12)と底フレーム(11)とに支持された一つ以上の受けフレーム(13)とを含み、
前記底フレーム(11)、受けフレーム(13)及び基板支承用側板(2)は、導電性材質からなり、
前記基板支承用側板(2)は、前記棚片(22),(22)間の空隙によって支持される基板(O)の端部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板(O)を支持し、前記接触点部分は、前記基板支承用側板(2)の骨格材としての金属体(M)よりも高い表面抵抗率を有する導電性物質配合樹脂(Ra),発塵防止性樹脂(Rb)で形成され、かつ前記基板(O)の端部から静電気を除去する、TFT液晶用ガラス基板の積載用カセット。
【B】基板(O)を積載するために前記基板(O)の端部を支持する棚片(22),(22)間の空隙と、
前記棚片(22),(22)間の空隙が互いに向い合うように形成されている基板支承用側板(2)対と、
前記基板支承用側板(2)の上端を支持する天井フレーム(12)と、
前記基板支承用側板(2)の下端を支持する、少なくとも一部は金属からなっている第1金属部を含む底フレーム(11)と、
前記基板(O)の挿入側と反対側に設けられ、前記棚片(22),(22)間の空隙から積載される前記基板(O)が抜け出ないようにする、前記天井フレーム(12)と底フレーム(11)とに支持され、かつ前記底フレーム(11)の第1金属部と連結される第2金属部を有している一つ以上の受けフレーム(13)とを含み、
前記基板支承用側板(2)は骨格材としての金属体(M)を含み、前記金属体(M)は前記底フレーム(11)の第1金属部と連結されており、
前記基板支承用側板(2)は、前記棚片(22),(22)間の空隙によって支持される基板(O)の端部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板(O)を支持し、前記接触点部分は、前記基板支承用側板(2)の骨格材としての金属体(M)よりも高い表面抵抗率を有する導電性物質配合樹脂(Ra),発塵防止性樹脂(Rb)で形成され、かつ前記基板(O)の端部から静電気を除去する、TFT液晶用ガラス基板の積載用カセット。
【C】少なくとも一部は金属性材質からなる基板積載用カセットに基板(O)を積載する段階と、
前記基板(O)を前記金属性材質に電気的に接続させて静電気を分散させる段階とを含み、
前記基板積載用カセットは、
基板(O)を積載するために前記基板(O)の端部を支持する棚片(22),(22)間の空隙と、
前記棚片(22),(22)間の空隙が互いに向い合うように形成されている基板支承用側板(2)対とを含み、
前記基板支承用側板(2)は、前記棚片(22),(22)間の空隙によって支持される基板(O)の端部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板(O)を支持し、前記接触点部分は、前記基板支承用側板(2)の骨格材としての金属体(M)より高い表面抵抗率を有する導電性物質配合樹脂(Ra),発塵防止性樹脂で形成され、かつ前記基板(O)の端部から静電気を除去する、TFT液晶用ガラス基板の静電破壊防止方法。
【D】金属性材質からなる金属部を含む基板積載用カセットに基板(O)を積載する段階と、
前記基板(O)を前記金属部に電気的に接続させて静電気電流を放出する段階とを含み、
前記基板積載用カセットは、
基板(O)を積載するために前記基板(O)の端部を支持する棚片(22),(22)間の空隙と、
前記棚片(22),(22)間の空隙が互いに向い合うように形成されている基板支承用側板(2)対とを含み、
前記基板支承用側板(2)は、前記棚片(22),(22)間の空隙によって支持される基板(O)の端部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板(O)を支持し、前記接触点部分は、前記基板支承用側板(2)の骨格材としての金属体(M)より高い表面抵抗率を有する導電性物質配合樹脂(Ra),発塵防止性樹脂で形成され、かつ前記基板(O)の端部から静電気を除去する、TFT液晶用ガラス基板の静電気放出方法。」
の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されていると認められる。

同じく提示された特開平2-18929号公報[以下、「刊行物2」という。]には、図面とともに次の事項が記載されている。
サ.「産業上の利用分野
半導体製造装置、特に縦型反応装置に用いる基板保持具に関する。
従来の技術
ウエハの大口径化に伴い、膜均一性やダスト低減等から縦型構造を有する反応装置が提案されている。」(第1頁左下欄第9〜15行)
シ.「基板保持具1は二枚の円盤状板1-aと複数の凹凸部を有する柱状基板保持部1-bから成る。前記凸部の先端は球状を有し、基板2との接触を点接触にし、接触面積を小さくしている(第1図(A),(B)参照)。また基板保持部の柱から基板接触部である球状部迄の長さ、すなわち凸部の長さを変化させたり(第1図(A)参照)、凸部先端の球状部の大きさを変化させることにより(第1図(B)参照)基板保持具1における2基板の位置関係が容易で明確に判るようにしている第1図(A)の方法によると基板保持用凸部の長さを長くすることで大口径基板の周辺部のみならず中心部寄りの位置でささえることができ、さらに従来ではできなかった基板挿入側の位置での保持ができる上、その保持が点接触であることから基板に対する熱伝導性等の問題もなく、安定性のよい基板保持を行い得る。その様子を第2図に示す。」(第2頁左上欄第15行〜同頁右上欄第11行)

同じく提示された特開平5-229677号公報[以下、「刊行物3」という。]には、図面とともに次の事項が記載されている。
タ.「【産業上の利用分野】本発明はシート状物品の保管装置、特に、オフセット印刷用の刷版や、活版印刷用の樹脂刷版などのシート状物品を、効率よく保管することのできる保管装置に関する。」(第2頁第1欄第38〜41行)
チ.「本願第1の発明は、シート状物品の保管装置において、シート状物品をほぼ水平に載置するための支持面と、載置されたシート状物品の支持を妨げることのないように形成された切り欠き部と、を有するトレイ層を、互いに所定の間隔をおいて上下に複数枚配置することにより構成される物品収納ユニットと、切り欠き部を通ってトレイ層の支持面を上下に通過しうるアームと、このアームを垂直方向および水平方向に駆動する駆動機構と、を有する物品移載部と、複数のトレイ層のうち、シート状物品を搬入出する対象となる対象トレイ層の上部および下部に、所定の空間が確保できるように、必要なトレイ層を上下に移動させるトレイ昇降部と、を設けたものである。」(第2頁第2欄第26〜38行)

同じく提示された特開平6-191578号公報[以下、「刊行物4」という。]には、図面とともに次の事項が記載されている。
ナ.「【0015】図1(a)において、カセットAは、内面に多数のスリット1を水平状態に平行に設けたスリット付カセット側板2が、基板の幅に対応する間隔を隔てて左右に対向して平行状態に設置されており、その上面と底面に、それぞれ上板3と底板4が固定して取付けられており、上記多数のスリット1の後方位置には、前方(図で左方)より押入れられる基板が後方より抜け出るのを防ぐために、垂直方向の板状のスリット5が各スリット1を跨ぐようにして両側板2,2の対称位置に取付けられていることは、従来例(図3)と変りはないが、本実施例では、スリット1の前方部の基板の出入口側にも、基板飛出し防止用のストッパ6が設けられている。
【0016】上記のストッパ6は、同図(b)に示すように、断面円形又は楕円形の椀状の突起体6aによって構成されている。また、該ストッパ6を構成する各突起体6aを、同図(a)に示す垂直方向部材6cによって上下方向に移動可能に連係し、上下方向に位置調整できるようにすることも可能である。これによってストッパ6の最適位置を得ることができる。」(第3頁第3欄第15〜33行)

(3)対比・判断
<本件発明1について>
本件発明1と刊行物1記載の発明(発明【A】参照。)を対比する。
刊行物1記載の発明の「基板(O)」は、本件発明1の「基板」に相当し、以下同様に、「棚片(22),(22)間の空隙」は「スロット」に、「基板支承用側板(2)」は「スロット付サイドプレート」に、「天井フレーム(12)」は「上板」に、「底フレーム(11)」は「底板」に、「受けフレーム(13)」は「ストッパー」に、「導電性物質配合樹脂(Ra),発塵防止性樹脂(Rb)」は「金属よりも高い表面抵抗率を有する材質」に、「TFT液晶用ガラス基板」は「表示装置用基板」に、それぞれ、相当する。
してみると、両者は、
「基板を積載するために前記基板の端部を支持するスロットと、
前記スロットが互いに向い合うように形成されているスロット付サイドプレート対と、
前記スロット付サイドプレートの上端を支持する上板と、
前記スロット付サイドプレートの下端を支持する底板と、
前記基板の挿入側と反対側に設けられ、前記スロットから積載される前記基板が抜け出ないようにする、前記上板と底板とに支持された一つ以上のストッパーとを含み、
前記底板及びストッパーは、導電性材質からなる、表示装置用基板の積載用カセット。」
の点で一致し、次の点で相違する。
〔相違点1〕本件発明1は、前記基板の挿入側と反対側に設けられ、前記上板と底板とに支持されたサイドプレートを含み、前記サイドプレートは、導電性材質からなるのに対して、刊行物1記載の発明は、当該構成を備えていない点。
〔相違点2〕本件発明1は、前記ストッパーまたは前記基板の挿入側と反対側に設けられた前記サイドプレートのみに、前記スロット付サイドプレート対で挟まれた空間に向かって突出して延長され、かつ前記基板を互いに平行に支持する複数のサポートバーが形成されており、前記サポートバーは、前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、金属で形成されている前記サポートバーの主体部分よりも高い表面抵抗率を有する材質で形成され、かつ前記基板の中央部から静電気を除去するのに対して、刊行物1記載の発明は、前記スロット付サイドプレートは、前記スロットによって支持される基板の端部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、前記スロット付サイドプレートの骨格材としての金属体(M)よりも高い表面抵抗率を有する材質で形成され、かつ前記基板の端部から静電気を除去する点。
上記〔相違点1〕〔相違点2〕について検討する。
〔相違点1〕について
基板の挿入側と反対側において上板と底板とに支持されたストッパー兼用のサイドプレートを複数設けることは、周知の技術(必要なら、特開平5-147680号公報の受け側フレーム(13),(13)、参照。)であるから、しかも、ストッパーを導電性材質で形成することは、刊行物1に開示されているから、刊行物1記載の発明において、ストッパーに加えて、基板の挿入側と反対側において上板と底板とに支持されたサイドプレートを設け、前記サイドプレートを導電性材質で形成することは、当業者が適宜なし得る設計的事項と認められる。
〔相違点2〕について
刊行物2には、上記記載事項サ.シ.によると、複数の凹凸部を有する柱状基板保持部1-bと、前記柱状基板保持部1-bの上端を支持する円盤状板部1-aと、前記柱状基板保持部1-bの下端を支持する円盤状板部1-aとを含む基板保持具1において、「基板2(ウエハ)の挿入側と正反対側に柱状基板保持部1-bを追加して設け、この柱状基板保持部1-bの凸部を基板2の挿入側の空間に向かって突出して延長し、かつ前記基板2を基板2の挿入側の位置で支持することにより、安定性のよい基板保持を行う」技術が、刊行物3には、上記記載事項タ.チ.によると、オフセット印刷用の刷版や,活版印刷用の樹脂刷版などのシート状物品の保管装置において、「少なくともシート状物品の端部及び中央部を支持する」技術が、刊行物4には、上記記載事項ナ.によると、「スリット1を通じて積載された基板が前記スリット1を通じて再び抜け出ることを防止するよう前記スリット1の基板積載位置より高い位置に位置する複数の突起体6aを有しているストッパ6を設けたカセットA」の技術が、それぞれ開示されている。しかしながら、刊行物2〜4には、上記〔相違点2〕に係る本件発明1の構成の内、「前記サポートバーは、前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、金属で形成されている前記サポートバーの主体部分よりも高い表面抵抗率を有する材質で形成され、かつ前記基板の中央部から静電気を除去する」点について、開示も示唆もされていない。
そうすると、刊行物1記載の発明において、刊行物2〜4記載の上記技術を適用してみても、上記〔相違点2〕に係る本件発明1の構成の内、「前記ストッパーまたは前記基板の挿入側と反対側に設けられた前記サイドプレートのみに、前記スロット付サイドプレート対で挟まれた空間に向かって突出して延長され、かつ前記基板を互いに平行に支持する複数のサポートバーが形成されており、」の点については、当業者が格別困難なく想到し得るとしても、「前記サポートバーは、前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、金属で形成されている前記サポートバーの主体部分よりも高い表面抵抗率を有する材質で形成され、かつ前記基板の中央部から静電気を除去する」点については、当業者が格別困難なく想到し得るものとは認められない。
そして、本件発明1は、上記〔相違点2〕に係る本件発明1の構成により、「基板及び基板上の素子の静電破壊の防止を図りながら、基板中央部から電荷を効率的に放出するとともに、基板の歪みの防止を図る」(段落【0001】【0016】【0035】参照)という刊行物1記載の発明,刊行物2〜4記載の技術から当業者が予測し得ない顕著な効果を奏するものと認められる。

<本件発明2〜4について>
本件発明2〜4は、本件発明1を更に限定したものであるから、上記本件発明1についての判断と同様の理由により、刊行物1記載の発明,刊行物2〜4記載の技術から当業者が格別困難なく想到し得るものではない。

<本件発明5について>
本件発明5と刊行物1記載の発明(発明【B】参照。)を対比する。
刊行物1記載の発明の「基板(O)」は、本件発明5の「基板」に相当し、以下同様に、「棚片(22),(22)間の空隙」は「スロット」に、「基板支承用側板(2)」は「スロット付サイドプレート」に、「天井フレーム(12)」は「上板」に、「底フレーム(11)」は「底板」に、「受けフレーム(13)」は「ストッパー」に、「導電性物質配合樹脂(Ra),発塵防止性樹脂(Rb)」は「金属よりも高い表面抵抗率を有する材質」に、「TFT液晶用ガラス基板」は「表示装置用基板」に、それぞれ、相当する。
してみると、両者は、
「基板を積載するために前記基板の端部を支持するスロットと、
前記スロットが互いに向い合うように形成されているスロット付サイドプレート対と、
前記スロット付サイドプレートの上端を支持する上板と、
前記スロット付サイドプレートの下端を支持する、少なくとも一部は金属からなっている第1金属部を含む底板と、
前記基板の挿入側と反対側に設けられ、前記スロットから積載される前記基板が抜け出ないようにする、前記上板と底板とに支持され、かつ前記底板の第1金属部と連結される第2金属部を有している一つ以上のストッパーとを含む、表示装置用基板の積載用カセット。」
の点で一致し、次の点で相違する。
〔相違点〕本件発明5は、前記ストッパーには、前記スロット付サイドプレート対で挟まれた空間に向かって突出して延長され、かつ前記基板を互いに平行に支持するサポートバーが形成されており、前記サポートバーの主体部分は金属製であって前記ストッパーの第2金属部と連結されており、前記サポートバーは、前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、前記サポートバーの主体部分よりも高い表面抵抗率を有する材質で形成され、かつ前記基板の中央部から静電気を除去するのに対して、刊行物1記載の発明は、前記スロット付サイドプレートは骨格材としての金属体(M)を含み、前記金属体(M)は前記底板の第1金属部と連結されており、前記スロット付サイドプレートは、前記スロットによって支持される基板の端部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、前記スロット付サイドプレートの骨格材としての金属体(M)よりも高い表面抵抗率を有する材質で形成され、かつ前記基板の端部から静電気を除去する点。
上記〔相違点〕について検討する。
刊行物2には、上記記載事項サ.シ.によると、複数の凹凸部を有する柱状基板保持部1-bと、前記柱状基板保持部1-bの上端を支持する円盤状板部1-aと、前記柱状基板保持部1-bの下端を支持する円盤状板部1-aとを含む基板保持具1において、「基板2(ウエハ)の挿入側と正反対側に柱状基板保持部1-bを追加して設け、この柱状基板保持部1-bの凸部を基板2の挿入側の空間に向かって突出して延長し、かつ前記基板2を基板2の挿入側の位置で支持することにより、安定性のよい基板保持を行う」技術が、刊行物3には、上記記載事項タ.チ.によると、オフセット印刷用の刷版や,活版印刷用の樹脂刷版などのシート状物品の保管装置において、「少なくともシート状物品の端部及び中央部を支持する」技術が、刊行物4には、上記記載事項ナ.によると、「スリット1を通じて積載された基板が前記スリット1を通じて再び抜け出ることを防止するよう前記スリット1の基板積載位置より高い位置に位置する複数の突起体6aを有しているストッパ6を設けたカセットA」の技術が、それぞれ開示されている。しかしながら、刊行物2〜4には、上記〔相違点〕に係る本件発明5の構成の内、「前記サポートバーの主体部分は金属製であって前記ストッパーの第2金属部と連結されており、前記サポートバーは、前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、前記サポートバーの主体部分よりも高い表面抵抗率を有する材質で形成され、かつ前記基板の中央部から静電気を除去する」点について、開示も示唆もされていない。
そうすると、刊行物1記載の発明において、刊行物2〜4記載の上記技術を適用してみても、上記〔相違点〕に係る本件発明5の構成の内、「前記ストッパーには、前記スロット付サイドプレート対で挟まれた空間に向かって突出して延長され、かつ前記基板を互いに平行に支持するサポートバーが形成されており、」の点については、当業者が格別困難なく想到し得るとしても、「前記サポートバーの主体部分は金属製であって前記ストッパーの第2金属部と連結されており、前記サポートバーは、前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、前記サポートバーの主体部分よりも高い表面抵抗率を有する材質で形成され、かつ前記基板の中央部から静電気を除去する」点については、当業者が格別困難なく想到し得るものとは認められない。
そして、本件発明5は、上記〔相違点〕に係る本件発明5の構成により、「基板及び基板上の素子の静電破壊の防止を図りながら、基板中央部から電荷を効率的に放出するとともに、基板の歪みの防止を図る」(段落【0001】【0016】【0035】参照)という刊行物1記載の発明,刊行物2〜4記載の技術から当業者が予測し得ない顕著な効果を奏するものと認められる。

<本件発明6〜9について>
本件発明6〜9は、本件発明5を更に限定したものであるから、上記本件発明5についての判断と同様の理由により、刊行物1記載の発明,刊行物2〜4記載の技術から当業者が格別困難なく想到し得るものではない。

<本件発明10について>
本件発明10と刊行物1記載の発明(発明【C】参照。)を対比する。
刊行物1記載の発明の「基板(O)」は、本件発明10の「基板」に相当し、以下同様に、「棚片(22),(22)間の空隙」は「スロット」に、「導電性物質配合樹脂(Ra),発塵防止性樹脂(Rb)」は「金属より高い表面抵抗率を有する材質」に、「TFT液晶用ガラス基板」は「表示装置用基板」に、それぞれ、相当する。
してみると、両者は、
「少なくとも一部は金属性材質からなる基板積載用カセットに基板を積載する段階と、
前記基板を前記金属性材質に電気的に接続させて静電気を分散させる段階とを含み、
前記基板積載用カセットは、
基板を積載するために前記基板の端部を支持するスロットを含む、表示装置用基板の静電破壊防止方法。」
の点で一致し、次の点で相違する。
〔相違点〕本件発明10は、前記基板積載用カセットは、前記基板を互いに平行に支持し、かつ前記基板が歪まないよう基板を支持する、サポートバーを含み、前記サポートバーは、前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、金属で形成されている前記サポートバーの主体部分より高い表面抵抗率を有する材質で形成され、かつ前記基板の中央部から静電気を除去するのに対して、刊行物1記載の発明は、前記基板積載用カセットは、前記スロットが互いに向い合うように形成されている基板支承用側板(2)対を含み、前記基板支承用側板(2)は、スロットによって支持される基板の端部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、前記基板支承用側板(2)の骨格材としての金属体(M)より高い表面抵抗率を有する材質で形成され、かつ前記基板の端部から静電気を除去する点。
上記〔相違点〕について検討する。
刊行物2には、上記記載事項サ.シ.によると、複数の凹凸部を有する柱状基板保持部1-bと、前記柱状基板保持部1-bの上端を支持する円盤状板部1-aと、前記柱状基板保持部1-bの下端を支持する円盤状板部1-aとを含む基板保持具1において、「基板2(ウエハ)の挿入側と正反対側に柱状基板保持部1-bを追加して設け、この柱状基板保持部1-bの凸部を基板2の挿入側の空間に向かって突出して延長し、かつ前記基板2を基板2の挿入側の位置で支持することにより、安定性のよい基板保持を行う」技術が、刊行物3には、上記記載事項タ.チ.によると、オフセット印刷用の刷版や,活版印刷用の樹脂刷版などのシート状物品の保管装置において、「少なくともシート状物品の端部及び中央部を支持する」技術が、刊行物4には、上記記載事項ナ.によると、「スリット1を通じて積載された基板が前記スリット1を通じて再び抜け出ることを防止するよう前記スリット1の基板積載位置より高い位置に位置する複数の突起体6aを有しているストッパ6を設けたカセットA」の技術が、それぞれ開示されている。しかしながら、刊行物2〜4には、上記〔相違点〕に係る本件発明10の構成の内、「前記サポートバーは、前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、金属で形成されている前記サポートバーの主体部分より高い表面抵抗率を有する材質で形成され、かつ前記基板の中央部から静電気を除去する」点について、開示も示唆もされていない。
そうすると、刊行物1記載の発明において、刊行物2〜4記載の上記技術を適用してみても、上記〔相違点〕に係る本件発明10の構成の内、「前記基板積載用カセットは、前記基板を互いに平行に支持し、かつ前記基板が歪まないよう基板を支持する、サポートバーを含み、」の点については、当業者が格別困難なく想到し得るとしても、「前記サポートバーは、前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、金属で形成されている前記サポートバーの主体部分より高い表面抵抗率を有する材質で形成され、かつ前記基板の中央部から静電気を除去する」点については、当業者が格別困難なく想到し得るものとは認められない。
そして、本件発明10は、上記〔相違点〕に係る本件発明10の構成により、「基板及び基板上の素子の静電破壊の防止を図りながら、基板中央部から電荷を効率的に放出するとともに、基板の歪みの防止を図る」(段落【0001】【0016】【0035】参照)という刊行物1記載の発明,刊行物2〜4記載の技術から当業者が予測し得ない顕著な効果を奏するものと認められる。

<本件発明11について>
本件発明11と刊行物1記載の発明(発明【D】参照。)を対比する。
刊行物1記載の発明の「基板(O)」は、本件発明11の「基板」に相当し、以下同様に、「棚片(22),(22)間の空隙」は「スロット」に、「導電性物質配合樹脂(Ra),発塵防止性樹脂(Rb)」は「金属より高い表面抵抗率を有する材質」に、「TFT液晶用ガラス基板」は「表示装置用基板」に、それぞれ、相当する。
してみると、両者は、
「金属性材質からなる金属部を含む基板積載用カセットに基板を積載する段階と、
前記基板を前記金属部に電気的に接続させて静電気電流を放出する段階とを含み、
前記基板積載用カセットは、
基板を積載するために前記基板の一部を支持するスロットを含む、表示装置用基板の静電気放出方法。」
の点で一致し、次の点で相違する。
〔相違点1〕本件発明11は、前記カセットの金属部を接地させる段階を含むのに対して、刊行物1記載の発明は、この点につき不明である点。
〔相違点2〕本件発明11は、前記基板積載用カセットは、前記基板を互いに平行に支持し、かつ前記基板が歪まないよう基板を支持する、導電性材質のサポートバーを含み、前記サポートバーは、前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、金属で形成されている前記サポートバーの主体部分より高い表面抵抗率を有する材質から形成され、かつ前記基板の中央部から静電気を除去するのに対して、刊行物1記載の発明は、前記基板積載用カセットは、前記スロットが互いに向い合うように形成されている基板支承用側板(2)対とを含み、前記基板支承用側板(2)は、スロットによって支持される基板の端部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、前記基板支承用側板(2)の骨格材としての金属体(M)よりも高い表面抵抗率を有する材質で形成され、かつ前記基板の端部から静電気を除去する点。
上記〔相違点1〕〔相違点2〕について検討する。
〔相違点1〕について
刊行物1記載の発明は、静電気電流を放出する段階を含むのであるから、金属部を接地させる段階を含むことは、技術常識である。そうすると、刊行物1記載の発明は、「前記カセットの金属部を接地させる段階を含む」ものと認められる。
〔相違点2〕について
刊行物2には、上記記載事項サ.シ.によると、複数の凹凸部を有する柱状基板保持部1-bと、前記柱状基板保持部1-bの上端を支持する円盤状板部1-aと、前記柱状基板保持部1-bの下端を支持する円盤状板部1-aとを含む基板保持具1において、「基板2(ウエハ)の挿入側と正反対側に柱状基板保持部1-bを追加して設け、この柱状基板保持部1-bの凸部を基板2の挿入側の空間に向かって突出して延長し、かつ前記基板2を基板2の挿入側の位置で支持することにより、安定性のよい基板保持を行う」技術が、刊行物3には、上記記載事項タ.チ.によると、オフセット印刷用の刷版や,活版印刷用の樹脂刷版などのシート状物品の保管装置において、「少なくともシート状物品の端部及び中央部を支持する」技術が、刊行物4には、上記記載事項ナ.によると、「スリット1を通じて積載された基板が前記スリット1を通じて再び抜け出ることを防止するよう前記スリット1の基板積載位置より高い位置に位置する複数の突起体6aを有しているストッパ6を設けたカセットA」の技術が、それぞれ開示されている。しかしながら、刊行物2〜4には、上記〔相違点2〕に係る本件発明11の構成の内、「前記サポートバーは、前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、金属で形成されている前記サポートバーの主体部分より高い表面抵抗率を有する材質から形成され、かつ前記基板の中央部から静電気を除去する」点について、開示も示唆もされていない。
そうすると、刊行物1記載の発明において、刊行物2〜4記載の上記技術を適用してみても、上記〔相違点2〕に係る本件発明11の構成の内、「前記基板積載用カセットは、前記基板を互いに平行に支持し、かつ前記基板が歪まないよう基板を支持する、導電性材質のサポートバーを含み、」の点については、当業者が格別困難なく想到し得るとしても、「前記サポートバーは、前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、金属で形成されている前記サポートバーの主体部分より高い表面抵抗率を有する材質から形成され、かつ前記基板の中央部から静電気を除去する」点については、当業者が格別困難なく想到し得るものとは認められない。
そして、本件発明11は、上記〔相違点2〕に係る本件発明11の構成により、「基板及び基板上の素子の静電破壊の防止を図りながら、基板中央部から電荷を効率的に放出するとともに、基板の歪みの防止を図る」(段落【0001】【0016】【0035】参照)という刊行物1記載の発明,刊行物2〜4記載の技術から当業者が予測し得ない顕著な効果を奏するものと認められる。

<本件発明12について>
本件発明12は、本件発明11を更に限定したものであるから、上記本件発明11についての判断と同様の理由により、刊行物1記載の発明,刊行物2〜4記載の技術から当業者が格別困難なく想到し得るものではない。

したがって、本件発明1〜12は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

3.むすび
以上のとおりであるから、本件審判の請求は、特許法第126条第1項第1号,第3号に掲げる事項を目的とし、かつ、同条第3項ないし第5項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
表示装置用基板の積載用カセットおよびこれを用いた静電破壊防止方法
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を積載するために前記基板の端部を支持するスロットと、
前記スロットが互いに向い合うように形成されているスロット付サイドプレート対と、
前記スロット付サイドプレートの上端を支持する上板と、
前記スロット付サイドプレートの下端を支持する底板と、
前記基板の挿入側と反対側に設けられ、前記スロットから積載される前記基板が抜け出ないようにする、前記上板と底板とに支持された一つ以上のストッパーと、
前記基板の挿入側と反対側に設けられ、前記上板と底板とに支持されたサイドプレートとを含み、
前記ストッパーまたは前記基板の挿入側と反対側に設けられた前記サイドプレートのみに、前記スロット付サイドプレート対で挟まれた空間に向かって突出して延長され、かつ前記基板を互いに平行に支持する複数のサポートバーが形成されており、
前記底板、ストッパー及びサイドプレートは、導電性材質からなり、
前記サポートバーは、前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、金属で形成されている前記サポートバーの主体部分よりも高い表面抵抗率を有する材質で形成され、かつ前記基板の中央部から静電気を除去する、表示装置用基板の積載用カセット。
【請求項2】
前記サポートバーが形成された前記ストッパーは、前記底板の中央部に位置している請求項1に記載の表示装置用基板の積載用カセット。
【請求項3】
前記スロットを通じて積載された基板が前記スロットを通じて再び抜け出ることを防止するよう前記スロットの基板積載位置より高い位置に位置する複数の突起部を有している抜け出し防止手段と、
前記抜け出し防止手段を前記カセットに脱着可能であるように取り付ける取付手段とをさらに含む請求項1または2に記載の表示装置用基板の積載用カセット。
【請求項4】
前記取付手段は少なくとも一つ以上のボルトである請求項3に記載の表示装置用基板の積載用カセット。
【請求項5】
基板を積載するために前記基板の端部を支持するスロットと、
前記スロットが互いに向い合うように形成されているスロット付サイドプレート対と、
前記スロット付サイドプレートの上端を支持する上板と、
前記スロット付サイドプレートの下端を支持する、少なくとも一部は金属からなっている第1金属部を含む底板と、
前記基板の挿入側と反対側に設けられ、前記スロットから積載される前記基板が抜け出ないようにする、前記上板と底板とに支持され、かつ前記底板の第1金属部と連結される第2金属部を有している一つ以上のストッパーとを含み、
前記ストッパーには、前記スロット付サイドプレート対で挟まれた空間に向かって突出して延長され、かつ前記基板を互いに平行に支持するサポートバーが形成されており、
前記サポートバーの主体部分は金属製であって前記ストッパーの第2金属部と連結されており、
前記サポートバーは、前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、前記サポートバーの主体部分よりも高い表面抵抗率を有する材質で形成され、かつ前記基板の中央部から静電気を除去する、表示装置用基板の積載用カセット。
【請求項6】
前記サイドプレートは金属で形成されている第3金属部を含み、前記第3金属部は前記底板の第1金属部と連結されている請求項5に記載の表示装置用基板の積載用カセット。
【請求項7】
前記サポートバーは積載された基板との接触点を有し、前記接触点部分は前記サポートバーの他の部分より高い表面抵抗率を有する材質からなる請求項5または6に記載の表示装置用基板の積載用カセット。
【請求項8】
前記接触点付近の材質は、表面抵抗率が1010〜1012オーム/m2の帯電防止用樹脂である請求項7に記載の表示装置用基板の積載用カセット。
【請求項9】
前記底板の第1金属部、ストッパーの第2金属部及び前記サポートバーの第3金属部は、アルミニウムからなる請求項5または6に記載の表示装置用基板の積載用カセット。
【請求項10】
少なくとも一部は金属性材質からなる基板積載用カセットに基板を積載する段階と、
前記基板を前記金属性材質に電気的に接続させて静電気を分散させる段階とを含み、
前記基板積載用カセットは、
基板を積載するために前記基板の端部を支持するスロットと、
前記基板を互いに平行に支持し、かつ前記基板が歪まないよう基板を支持するサポートバーとを含み、
前記サポートバーは、前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、金属で形成されている前記サポートバーの主体部分より高い表面抵抗率を有する材質で形成され、かつ前記基板の中央部から静電気を除去する、表示装置用基板の静電破壊防止方法。
【請求項11】
金属性材質からなる金属部を含む基板積載用カセットに基板を積載する段階と、
前記カセットの金属部を接地させる段階と、
前記基板を前記金属部に電気的に接続させて静電気電流を放出する段階とを含み、
前記基板積載用カセットは、
基板を積載するために前記基板の端部を支持するスロットと、
前記基板を互いに平行に支持し、かつ前記基板が歪まないよう基板を支持するサポートバーとを含み、
前記サポートバーは、前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、金属で形成されている前記サポートバーの主体部分より高い表面抵抗率を有する材質から形成され、かつ前記基板の中央部から静電気を除去する、表示装置用基板の静電気放出方法。
【請求項12】
前記接地段階は、
前記カセットを接地した運搬機構に搭載する段階と、
前記運搬機構と前記カセットの金属部を接触させる段階とを含む請求項11に記載の表示装置用基板の静電気放出方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は表示装置用基板積載用カセットに係り、より詳しくは、カセットの移動途中にカセットに積載している基板が前方に抜け出ないようにし、さらにカセットに積載している基板が歪まないようにすると同時にカセットおよび基板から発生する静電気による基板の静電破壊を防止するための表示装置用基板積載用カセットに関する。
【0002】
【従来の技術】現在、画像表示装置として液晶表示装置(Liquid Crystal Display;以下、LCDという)は薄形、軽量、低消費電力などにより広く脚光を浴びている。前記液晶表示装置を製作する過程において、基板をカセットに積載した後、手で持ち上げるか運搬機構に搭載した後に必要な場所に運搬、移動させる工程が必要になる。【0003】以下、添付図面を参照して従来の液晶表示装置における基板積載用カセットについて説明する。図1は従来の液晶表示装置における基板積載用カセットの斜視図であり、図2は従来の液晶表示装置における基板積載用カセットの正面図であり、図3は従来の液晶表示装置における基板積載用カセットの側面図である。
【0004】図1ないし図3に示すように、従来の液晶表示装置における基板積載用カセット10は、突起15’により形成された基板を積載させるためのスロット15が形成されているサイドプレート11と、底板12および上板13と、積載している基板が後方に抜け出ないようにするためのストッパー14と、作業者がカセット10を容易に運搬できるようにするためのつまみ16とからなる。
【0005】前記した構成による、従来の液晶表示装置における基板積載用カセットの作用について説明する。液晶表示装置用基板を運搬、移動する場合、工程作業者は基板をサイドプレート11に形成されているスロット15に載せることにより、基板をカセット10に積載する。
【0006】すべての基板がカセット10に積載されると、工程作業者は、つまみ16を用いてカセットを持ち上げた後、基板が抜け出ないようにカセット10の前部分をやや上向きにし、この状態で基板を積載したカセット10を運搬、移動させる。しかしながら、前記従来の液晶表示装置における基板積載用カセット10は前面に何らの保護装置が設けられていないため、作業者がカセットを移動させる途中にカセットが前方に傾くと、カセットに積載されていた基板がカセットの外部に抜け出て破損する危険がある。このため、作業者はカセットが前方に傾かないように注意しなければならないという不都合さがある。
【0007】さらに、前記従来の液晶表示装置における基板積載用カセットは、基板の両端部のみを保持している形態であるため、基板の自重により基板の中間部分が歪むという問題点がある。図4は、従来の液晶表示装置において、基板積載用カセットに積載された基板が、自重により中央部分が歪んでいる形態を示すものである。
【0008】同図において、基板の大きさおよび厚さに従い歪み程度を測定したデータを表1に示す。
【0009】
【表1】

【0010】液晶表示装置において基板の偏平度は製品の質を左右する重要な要素であり、基板が漸次大型化、薄型化されるに従って重要な課題となっている。さらに、前記従来の液晶表示装置における基板積載用カセットは、基板が積載されている場合や移動途中に基板から発生する静電気を効果的に除去できないという問題点がある。
【0011】図5は従来の液晶表示装置における基板積載用カセットに積載される基板の静電気発生部位を説明するためのものであって、図5(a)は基板の正面図であり、図5(b)は基板の平面図である。図5において、基板をカセットに積載してから2日が経過した後、位置別に静電気を測定したデータを表2に示す。
【0012】
【表2】

【0013】測定条件に従い実測される静電気量は異なることがあるが、前記表2からわかるように、A位置およびC位置よりはB位置において静電気が高く、特に基板側面上におけるB位置が高い。すなわち、帯電物質と容易に接触可能な基板側面部位と中間部分の静電気が高いことがわかる。前記静電気は人体または設備との接触により増加するが、表2において基板平面上におけるB位置の静電気が人体に接触する以前と人体に接触した後の変化を測定したデータを表3に示す。
【0014】
【表3】

【0015】通常、基板とスロットから発生する静電気は、最小200Vから最大2980Vまで実測している。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は前記のような従来の短所および問題点を解決するためのものであって、その目的は、カセットの移動途中に積載している基板が前方に抜け出ないようにし、さらに積載している基板が歪まないようにし、さらにはカセットおよび基板から発生する静電気が接地を通じて放電され得るようにするための表示装置用基板の積載用カセットおよびこれを用いた静電破壊防止方法を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するための本発明の表示装置用基板の積載用カセットは、基板を積載させるために前記基板の端部を支持するスロットと、前記スロットが互いに向い合うように形成されているスロット付サイドプレート対と、前記スロット付サイドプレートの上端を支持する上板と、前記スロット付サイドプレートの下端を支持する底板と、前記基板の挿入側と反対側に設けられ、前記スロットから積載される前記基板が抜け出ないようにする、前記上板と底板とに支持された一つ以上のストッパーと、前記基板の挿入側と反対側に設けられ、前記上板と底板とに支持されたサイドプレートと、前記ストッパーまたは前記基板の挿入側と反対側に設けられた前記サイドプレートのみに、前記スロット付サイドプレート対で挟まれた空間に向かって突出して延長され、かつ前記基板を互いに平行に支持する複数のサポートバーが形成されており、前記底板、ストッパー及びサイドプレートは、導電性材質からなり、前記サポートバーは、前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、金属で形成されている前記サポートバーの主体部分よりも高い表面抵抗率を有する材質で形成され、かつ前記基板の中央部から静電気を除去する。
【0018】さらに、本発明の表示装置用基板の積載用カセットは、基板を積載するために前記基板の端部を支持するスロットと、前記スロットが互いに向い合うように形成されているスロット付サイドプレート対と、前記スロット付サイドプレートの上端を支持する上板と、前記スロット付サイドプレートの下端を支持する、少なくとも一部は金属からなっている第1金属部を含む底板と、前記基板の挿入側と反対側に設けられ、前記スロットから積載される前記基板が抜け出ないようにする、前記上板と底板とに支持され、かつ前記底板の第1金属部と連結される第2金属部を有している一つ以上のストッパーとを含み、前記ストッパーには、前記スロット付サイドプレート対で挟まれた空間に向かって突出して延長され、前記基板を互いに平行に支持するサポートバーが形成されており、前記サポートバーの主体部分は金属製であって前記ストッパーの第2金属部と連結されており、前記サポートバーは、前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、前記サポートバーの主体部分よりも高い表面抵抗率を有する材質で形成され、かつ前記基板の中央部から静電気を除去する。
【0019】さらに、本発明の表示装置用基板の静電破壊防止方法は、金属性材質からなる金属部を含む基板積載用カセットに基板を積載する段階と、前記カセットの金属部を接地させる段階と、前記基板を前記金属部に電気的に接続させて静電気電流を放出する段階とを含み、前記基板積載用カセットは、基板を積載するために前記基板の端部を支持するスロットと、前記基板を互いに平行に支持し、かつ前記基板が歪まないよう基板を支持するサポートバーとを含み、前記サポートバーは、前記スロットによって支持されない基板の中央部と接触点を有し、かつ前記接触点部分において基板を支持し、前記接触点部分は、金属で形成されている前記サポートバーの主体部分より高い表面抵抗率を有する材質から形成され、かつ前記基板の中央部から静電気を除去する。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。図6は本発明の実施形態に従う表示装置用基板の積載用カセットの斜視図であり、図7は本発明の実施形態に従う表示装置用基
板の積載用カセットの正面図であり、図8は本発明の実施形態に従う表示装置用基板の積載用カセットの抜け出し防止手段の構造図であり、図9は本発明の実施形態に従う表示装置用基板の積載用カセットのサポートバーの構造図であり、図10は図9におけるサポートバーの構造を示す平面図であり、図11は本発明の実施形態に従う表示装置用基板の積載用カセットにおいて底板と上板とを連結するサイドプレートおよびストッパーの構造を示す断面図であり、図12は本発明の実施形態に従う表示装置用基板の積載用カセットにおいて底板および上板とサイドプレートおよびストッパーを取付ける部分の構造を示す断面図である。
【0021】図6および図7に示すように、本発明の実施例に従う表示装置用基板の積載用カセット20は次のような構造を有する。四角形の上板23と底板22が互いに対応するよう上下に配置されており、二つの板22、23は多数のサイドプレート21に結合されている。すなわち、棒状のサイドプレート21の上端には上板23が、下端には底板22がそれぞれ結合されている。
【0022】前方および中央のサイドプレート21には基板を積載し得るように多数のスロット25が突起25’によって互いに向い合うように形成されている。一方、基板を積載するスロット25の反対側、すなわち後方にはスロット25を通じて積載された基板が後方に抜け出ないように多数のストッパー24が上板23および底板22と結合されている。ストッパー24および後方のサイドプレート21には前方側に向けて平行に延長された多数のサポートバー27が形成されている。
【0023】また、作業者がカセット20を持ち上げることができるようにつまみ26が上板23に形成されている。また、スロット25が形成されている前方のサイドプレート21にはカセットが振動するか回転するとき、基板がスロット25を通じて再び抜け出さないようにする抜け出し防止手段28がボルトBにより結合されている。
【0024】前記抜け出し防止手段28の構造は図8に示す通りであるが、図に示されるように、基板29が載せられている突起25’より若干高く位置する突起部28’が多数形成されて基板29が抜け出るのを防止している。ここで、前記底板22および上板23は表面抵抗率が104〜106Ω/m2の導電性樹脂(PEI)で製作し、底板22と上板23の周縁部にアルミニウム(Al)が挿入されている。
【0025】さらに、前記底板22と上板23とを連結するサイドプレート21、サポートバー27およびストッパー24はアルミニウム(Al)と導電性樹脂(PEI)で製作され、前記底板22と前記上板23との連結部分は金属からなるボルトBにより固定されている(図11および図12参照)。図11は図7のA-A’に沿って切った断面図であり、図12は図6のC-Dに沿って切った断面図である。このため、カセット20全体は一つの共通接地に連結され、静電気の帯電が発生する場合、底板22を通じて静電気が放電されるようになっている。
【0026】そして、サポートバー27は、一端がサイドプレート21に連結され、その先端は銛形状となっている。なお、中央部のサポートバー27は、一端がストッパー24に連結されている。このサポートバー27は弾性を有するアルミニウム(Al)からなるので、基板の歪みを自然に補正することができる。表面抵抗率が100〜102Ω/m2のアルミニウム(Al)は静電気の吸収が速いので、基板29と接触する部分には表面抵抗率が1010〜1012Ω/m2である帯電防止用樹脂を用いて静電気の防止時のショックを防止し、アルミニウム(Al)と帯電防止用樹脂の相互作用により静電気を低く保持する構造となっている。ここで、基板と接触する部分は一つ以上に設計することができ、これによって、帯電防止用樹脂も一つ以上に製作することができる(図10参照)。
【0027】このように、カセットが導電性金属または樹脂などで形成されているため、基板などにおいて発生した静電気が分散される。前記した構成による、この発明の実施形態に従う表示装置用基板積載用カセットの作用について説明する。まず、抜け出し防止手段28はカセット20の前部分にあるサイドプレート21と分離されている。
【0028】表示装置用基板29を運搬、移動させる場合、工程作業者は、カセットのサイドプレート21と抜け出し防止手段28とが分離されている状態において、基板29をサイドプレート21に形成されているスロット25に載せることにより、カセット20に積載する。このとき、基板29は、スロット25(突起25’上)に支持されると共に、サポートバー27上にも支持されるようになり、このため歪みが防止される。
【0029】この発明の実施形態においては、基板29の歪みを防止するため、基板29の中央下端部を長めのサポートバー27を用いて保持しているが、この発明の技術範囲がこれに限定されるものでなく、サイドプレート21に形成されているスロット25を長くして基板29の下部を保持することにより、基板29の歪みを防止する構造とすることもできる。
【0030】このように、すべての基板29がカセット20に積載されると、工程作業者はボルトBを用いて抜け出し防止手段28を前部分のサイドプレート21と結合する。これにより、基板29が移動途中に前方に抜け出ないことになる。次に、作業者は、つまみ26を用いてカセット20を持ち上げ、基板29を積載したカセット20を運搬、移動させる。
【0031】この場合、カセット20および基板29から発生する静電気はアルミニウムで互いに連結している底板22、上板23、サイドプレート21およびサポートバー27の共通接地構造を通じて放電される。また、カセット20を接地した場所や運搬機構などに載せておき、底板22を接触させることにより効率的に静電気を放出することができる。
【0032】前記カセット20および基板29を共通接地構造を用いて接地させるときと、接地させないときの静電気電圧を互いに実測して比較したデータを表4に示す。
【0033】
【表4】

【0034】前記表4からわかるように、カセット20および基板29を接地させると、静電気が著しく減少することがわかる。この発明の実施形態においては、カセット20および基板29から発生する静電気を防止するため、導電体であるアルミニウムを用いた共通接地構造を採用したが、この発明の技術的範囲はここに限定されるものではなく、基板と接触する部分に帯電防止材質を用いて静電気の発生を抑制する構造とすることもできる(図10参照)。
【0035】
【発明の効果】以上のように、この発明では、カセットの移動途中に積載している基板が前方に抜け出ないようにし、さらに積載している基板が歪まないようにすると共に、カセットおよび基板から発生する静電気が接地を通じて放電され得るようにする効果を有する。
【0036】この発明のかかる効果は表示装置の生産工程において当業者により用いられる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の液晶表示装置における基板積載用カセットの斜視図である。
【図2】従来の液晶表示装置における基板積載用カセットの正面図である。
【図3】従来の液晶表示装置における基板積載用カセットの側面図である。
【図4】従来の液晶表示装置における基板積載用カセットに基板が積載された後に中央部分が歪む形状を示す図である。
【図5】従来の液晶表示装置における基板積載用カセットに積載される基板の静電気発生部位を説明するための図である。
【図6】本発明の実施形態に従う表示装置用基板の積載用カセットの斜視図である。
【図7】本発明の実施形態に従う表示装置用基板の積載用カセットの正面図である。
【図8】本発明の実施形態に従う表示装置用基板の積載用カセットの抜け出し防止手段の構造図である。
【図9】本発明の実施形態に従う表示装置用基板の積載用カセットのサポートバーの構造図である。
【図10】図9におけるサポートバーの構造を示す平面図である。
【図11】本発明の実施形態に従う表示装置用基板の積載用カセットにおいて底板と上板とを連結するサイドプレートおよびストッパーの構造を示す断面図である。
【図12】本発明の実施形態に従う表示装置用基板の積載用カセットにおいて底板および上板とサイドプレートおよびストッパーを取付ける部分の構造を示す断面図である。
【符号の説明】
20 カセット
21 サイドプレート
22 底板
23 上板
24 ストッパー
25 スロット
26 つまみ
27 サポートバー
28 防止手段
29 基板
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2005-01-25 
出願番号 特願平9-40988
審決分類 P 1 41・ 83- Y (B65G)
最終処分 成立  
特許庁審判長 西野 健二
特許庁審判官 清田 栄章
長谷川 一郎
登録日 2002-05-17 
登録番号 特許第3307555号(P3307555)
発明の名称 表示装置用基板の積載用カセットおよびこれを用いた静電破壊防止方法  
代理人 稲積 朋子  
代理人 小野 由己男  
代理人 小野 由己男  
代理人 稲積 朋子  

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