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審決分類 審判 訂正 4項(134条6項)独立特許用件 訂正する B66B
管理番号 1113882
審判番号 訂正2004-39258  
総通号数 65 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2005-05-27 
種別 訂正の審決 
審判請求日 2004-11-12 
確定日 2005-02-18 
訂正明細書 有 
事件の表示 特許第3489578号に関する訂正審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 特許第3489578号に係る明細書及び図面を本件審判請求書に添付された訂正明細書及び図面のとおり訂正することを認める。 
理由 第1.手続きの経緯
本件特許第3489578号に係わる発明についての出願は、1999年12月6日を国際出願日とする出願であって、平成15年11月7日に設定登録がなされ、平成16年11月12日に参考資料1、2を添付して本件審判が請求され、平成16年12月22日付け(発送日平成16年12月27日)で訂正拒絶理由が通知され、平成17年1月25日に意見書のみが提出された。

第2.請求の要旨
本件審判の請求の要旨は、本件特許第3489578号の願書に添付した明細書(以下、「特許明細書」という。)を、平成16年11月12日付け審判請求書に添付した訂正明細書(以下、「訂正明細書」という。)の記載のとおり、すなわち、以下の1.ないし2.のとおり訂正することを求めるものである。

1.訂正事項1
特許明細書の特許請求の範囲の請求項2に記載された
「昇降路内を昇降するかごと、
前記かごと反対方向に昇降するカウンターウェイトと、
前記かごの水平方向の移動を規制するかご用ガイドレールと、
前記カウンターウェイトの水平方向の移動を規制するカウンターウェイト用ガイドレールと、
前記かごと前記カウンターウェイトを懸架するロープと、
前記昇降路内に配置され、当該ロープが巻き掛けられた綱車及び該綱車を駆動するモータ部を有し、前記綱車を回転させることで前記ロープを介して前記かごおよび前記カウンターウェイトを昇降させる巻上機と、
前記昇降路内に配置され、前記ロープが巻き掛けられて該ロープの方向を転換する第1の返し車とを有するエレベータ装置において、
前記巻上機は、前記綱車の回転軸方向の外形寸法が前記回転軸に対して垂直な方向の外形寸法よりも小さく、前記昇降路の平断面において前記カウンターウェイト及び前記かごとは離れて配置され、前記昇降路の最下階停止時のかご床面より上方でかつ最上階停止時のかご天井より下方に位置し、
前記第1の返し車は、前記巻上機より上方に位置し、前記平断面において前記巻上機の少なくとも一部と重なるよう配置され、
前記第1の返し車の回転面は、近接する前記昇降路の壁面に対して傾斜していることを特徴とするエレベーター装置。」を、
「昇降路内を昇降し、乗降口を有するとともに吊り車が設けられたかごと、
前記かごと反対方向に前記昇降路内を昇降し、該昇降路の平断面において前記乗降口に対して前記かごの側方に配置され、吊り車が設けられたカウンターウェイトと、
前記かごの水平方向の移動を規制するかご用ガイドレールと、
前記カウンターウェイトの水平方向の移動を規制するカウンターウェイト用ガイドレールと、
前記かごを前記かごの吊り車を介して懸架するとともに前記カウンターウエイトを前記カウンターウェイトの吊り車を介して懸架するロープと、
前記昇降路内に配置され、当該ロープが巻き掛けられた綱車及び該綱車を駆動するモータ部を有し、前記綱車を回転させることで前記ロープを介して前記かごおよび前記カウンターウェイトを昇降させる巻上機と、
前記昇降路内に配置され、前記巻上機の綱車から前記かごの吊り車に至る前記ロープが巻き掛けられて該ロープの方向を転換する第1の返し車とを有するエレベーター装置において、
前記巻上機は、前記綱車の回転軸方向の外形寸法が前記回転軸に対して垂直な方向の外形寸法よりも小さく、前記昇降路の平断面において前記カウンターウェイト及び前記かごとは離れて前記カウンターウェイトが配置された前記かごの側方に位置する前記昇降路の壁面に平行にかつ前記カウンターウェイトと前記昇降路の壁面に沿って並んで配置され、前記昇降路の最下階停止時のかご床面より上方でかつ最上階停止時のかご天井より下方に位置し、
前記第1の返し車は、前記巻上機より上方に位置し、前記平断面において、前記巻上機の少なくとも一部と重なるよう配置され、
前記第1の返し車の回転面は、前記昇降路の平断面において前記ロープが前記かごの吊り車へ至る側が前記巻上機の綱車から巻き掛けられる側より前記乗降口から遠ざかる方向に位置して近接する前記昇降路の壁面に対して傾斜していることを特徴とするエレベーター装置。」と訂正する。

2.訂正事項2
特許明細書(特許第3489578号公報第3頁左欄第13行から第34行)の「また、この発明のエレベーター装置では、昇降路内を昇降するかごと、前記かごと反対方向に昇降するカウンターウェイトと、前記かごの水平方向の移動を規制するかご用ガイドレールと、前記カウンターウェイトの水平方向の移動を規制するカウンターウェイト用ガイドレールと、前記かごと前記カウンターウェイトを懸架するロープと、前記昇降路内に配置され、当該ロープが巻き掛けられた綱車及び該綱車を駆動するモータ部を有し、前記綱車を回転させることで前記ロープを介して前記かごおよび前記カウンターウェイトを昇降させる巻上機と、前記昇降路内に配置され、前記ロープが巻き掛けられて該ロープの方向を転換する第1の返し車とを有するエレベータ装置において、前記巻上機は、前記綱車の回転軸方向の外形寸法が前記回転軸に対して垂直な方向の外形寸法よりも小さく、前記昇降路の平断面において前記カウンターウェイト及び前記かごとは離れて配置され、前記昇降路の最下階停止時のかご床面より上方でかつ最上階停止時のかご天井より下方に位置し、前記第1の返し車は、前記巻上機より上方に位置し、前記平断面において前記巻上機の少なくとも一部と重なるよう配置され、前記第1の返し車の回転面は、近接する前記昇降路の壁面に対して傾斜している。」を、
「また、この発明のエレベーター装置では、昇降路内を昇降し、乗降口を有するとともに吊り車が設けられたかごと、前記かごと反対方向に前記昇降路内を昇降し、該昇降路の平断面において前記乗降口に対して前記かごの側方に配置され、吊り車が設けられたカウンターウェイトと、前記かごの水平方向の移動を規制するかご用ガイドレールと、前記カウンターウェイトの水平方向の移動を規制するカウンターウェイト用ガイドレールと、前記かごを前記かごの吊り車を介して懸架するとともに前記カウンターウェイトを前記カウンターウェイトの吊り車を介して懸架するロープと、前記昇降路内に配置され、当該ロープが巻き掛けられた綱車及び該綱車を駆動するモータ部を有し、前記綱車を回転させることで前記ロープを介して前記かごおよび前記カウンターウェイトを昇降させる巻上機と、前記昇降路内に配置され、前記巻上機の綱車から前記かごの吊り車に至る前記ロープが巻き掛けられて該ロープの方向を転換する第1の返し車とを有するエレベーター装置において、前記巻上機は、前記綱車の回転軸方向の外形寸法が前記回転軸に対して垂直な方向の外形寸法よりも小さく、前記昇降路の平断面において前記カウンターウェイト及び前記かごとは離れて前記カウンターウェイトが配置された前記かごの側方に位置する前記昇降路の壁面に平行にかつ前記カウンターウェイトと前記昇降路の壁面に沿って並んで配置され、前記昇降路の最下階停止時のかご床面より上方でかつ最上階停止時のかご天井より下方に位置し、前記第1の返し車は、前記巻上機より上方に位置し、前記平断面において、前記巻上機の少なくとも一部と重なるよう配置され、前記第1の返し車の回転面は、前記昇降路の平断面において前記ロープが前記かごの吊り車へ至る側が前記巻上機の綱車から巻き掛けられる側より前記乗降口から遠ざかる方向に位置して近接する前記昇降路の壁面に対して傾斜している。」と訂正する。

第3.当審の判断
1.訂正の目的の適否、新規事項の有無、及び拡張・変更の存否
(1)訂正事項1について
訂正事項1は、
(a1)「昇降路内を昇降するかご」を、「昇降路内を昇降し、乗降口を有するとともに吊り車が設けられたかご」に限定し、
(b1)「前記かごと反対方向に昇降するカウンターウエイト」を、「前記かごと反対方向に前記昇降路内を昇降し、該昇降路の平断面において前記乗降口に対して 前記かごの側方に配置され、吊り車が設けられたカウンターウェイト」に限定し、
(c1)「前記かごと前記カウンターウェイトを懸架するロープ」を、「前記かごを前記かごの吊り車を介して懸架するとともに前記カウンターウェイトを前記カウンターウェイトの吊り車を介して懸架するロープ」に限定し、
(d1)「前記昇降路内に配置され、前記ロープが巻き掛けられて該ロープの方向を転換する第1の返し車」を、「前記昇降路内に配置され、前記巻上機の綱車から前記かごの吊り車に至る前記ロープが巻き掛けられて該ロープの方向を転換する第1の返し車」に限定し、
(e1)「前記巻上機は、前記綱車の回転軸方向の外形寸法が前記回転軸に対して垂直な方向の外形寸法よりも小さく、前記昇降路の平断面において前記カウンターウェイト及び前記かごとは離れて配置され、前記昇降路の最下階停止時のかご床面より上方でかつ最上階停止時のかご天井より下方に位置し、」を、「前記巻上機は、前記綱車の回転軸方向の外形寸法が前記回転軸に対して垂直な方向の外形寸法よりも小さく、前記昇降路の平断面において前記カウンターウェイト及び前記かごとは離れて前記カウンターウェイトが配置された前記かごの側方に位置する前記昇降路の壁面に平行にかつ前記カウンターウェイトと前記昇降路の壁面に沿って並んで配置され、前記昇降路の最下階停止時のかご床面より上方でかつ最上階停止時のかご天井より下方に位置し、」に限定し、
(f1)「前記第1の返し車の回転面は、近接する前記昇降路の壁面に対して傾斜している」を、「前記第1の返し車の回転面は、前記昇降路の平断面において前記ロープが前記かごの吊り車へ至る側が前記巻上機の綱車から巻き掛けられる側より前記乗降口から遠ざかる方向に位置して近接する前記昇降路の壁面に対して傾斜している」に限定するものであり、「エレベータ装置」を「エレベーター装置」とした点は誤記の訂正であるから、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮、又は誤記の訂正を目的とするものに該当する。

次に、上記(a1)ないし(f1)の訂正事項について、新規事項の有無、拡張・変更の存否について検討する。
(a1)の「昇降路内を昇降し、乗降口を有するとともに吊り車が設けられたかご」の記載、
(b1)の「前記かごと反対方向に前記昇降路内を昇降し、該昇降路の平断面において前記乗降口に対して前記かごの側方に配置され、吊り車が設けられたカウンターウェイト」の記載、
(c1)の「前記かごを前記かごの吊り車を介して懸架するとともに前記カウンターウェイトを前記カウンターウェイトの吊り車を介して懸架するロープ」の記載、
(d1)の「前記昇降路内に配置され、前記巻上機の綱車から前記かごの吊り車に至る前記ロープが巻き掛けられて該ロープの方向を転換する第1の返し車」の記載、
(e1)の「前記巻上機は、前記綱車の回転軸方向の外形寸法が前記回転軸に対して垂直な方向の外形寸法よりも小さく、前記昇降路の平断面において前記カウンターウェイト及び前記かごとは離れて前記カウンターウェイトが配置された前記かごの側方に位置する前記昇降路の壁面に平行にかつ前記カウンターウェイトと前記昇降路の壁面に沿って並んで配置され、前記昇降路の最下階停止時のかご床面より上方でかつ最上階停止時のかご天井より下方に位置し、」の記載、
(f1)の「前記第1の返し車の回転面は、前記昇降路の平断面において前記ロープが前記かごの吊り車へ至る側が前記巻上機の綱車から巻き掛けられる側より前記乗降口から遠ざかる方向に位置して近接する前記昇降路の壁面に対して傾斜している」の記載は、
何れも、特許明細書記載の「これは、エレベーターの乗降口からみてカウンターウェイトがかごの側方にあり、巻上機をカウンターウェイトと同じ側のかごの側方でカウンターウェイトとは昇降路の平断面上で投影面が重ならないように配置した例である。」(特許第3489578号公報の第5頁左欄第50行から右欄第4行)、「制御盤15により駆動される巻上機4のシーブ4aに懸架されたロープ3が返し車5により方向転換され、かごの吊り車11およびカウンターウェイトの吊り車12を介して、かご1およびカウンターウェイト2を昇降させる。」(同第5頁右欄第34行から第38行)、「また、巻上機4は隣接する一つの壁に平行に配置されている。」(同第5頁右欄第9行から第10行)、及び特許明細書に添付した第6図及び第7図に基づくものである。そして、上記(a1)ないし(f1)の訂正事項は、何れも実質上特許請求の範囲を拡張し又は変更するものではない。

したがって、訂正事項1は、特許請求の範囲の減縮、又は誤記の訂正を目的とするものに該当し、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

(2)訂正事項2について
訂正事項2は、訂正事項1に伴って発明の詳細な説明の記載との整合を図るための明りょうでない記載の釈明と認められ、願書に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内のものであって、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではない。

2.独立特許要件
次に、訂正明細書の請求項2に係わる発明について独立特許要件の検討を行う。

2-1.訂正発明
訂正明細書の請求項2に係わる発明(以下、「訂正発明」という。)は、その特許請求の範囲の請求項2に記載された事項により特定される次のとおりのものである。

「昇降路内を昇降し、乗降口を有するとともに吊り車が設けられたかごと、
前記かごと反対方向に前記昇降路内を昇降し、該昇降路の平断面において前記乗降口に対して前記かごの側方に配置され、吊り車が設けられたカウンターウェイトと、
前記かごの水平方向の移動を規制するかご用ガイドレールと、
前記カウンターウェイトの水平方向の移動を規制するカウンターウェイト用ガイドレールと、
前記かごを前記かごの吊り車を介して懸架するとともに前記カウンターウエイトを前記カウンターウェイトの吊り車を介して懸架するロープと、
前記昇降路内に配置され、当該ロープが巻き掛けられた綱車及び該綱車を駆動するモータ部を有し、前記綱車を回転させることで前記ロープを介して前記かごおよび前記カウンターウェイトを昇降させる巻上機と、
前記昇降路内に配置され、前記巻上機の綱車から前記かごの吊り車に至る前記ロープが巻き掛けられて該ロープの方向を転換する第1の返し車とを有するエレベーター装置において、
前記巻上機は、前記綱車の回転軸方向の外形寸法が前記回転軸に対して垂直な方向の外形寸法よりも小さく、前記昇降路の平断面において前記カウンターウェイト及び前記かごとは離れて前記カウンターウェイトが配置された前記かごの側方に位置する前記昇降路の壁面に平行にかつ前記カウンターウェイトと前記昇降路の壁面に沿って並んで配置され、前記昇降路の最下階停止時のかご床面より上方でかつ最上階停止時のかご天井より下方に位置し、
前記第1の返し車は、前記巻上機より上方に位置し、前記平断面において、前記巻上機の少なくとも一部と重なるよう配置され、
前記第1の返し車の回転面は、前記昇降路の平断面において前記ロープが前記かごの吊り車へ至る側が前記巻上機の綱車から巻き掛けられる側より前記乗降口から遠ざかる方向に位置して近接する前記昇降路の壁面に対して傾斜していることを特徴とするエレベーター装置。」

2-2.刊行物1記載の発明
(1)訂正拒絶理由通知書で引用した特開平11-130365号公報(平成11年5月18日公開。以下、「刊行物1」という。請求人が提出した参考資料2である。)には、次の事項が図面とともに記載されている。

ア.「【請求項1】昇降路内の定位置に設置されたトラクションマシンと、このトラクションマシンにより駆動されるロープによって昇降路内を昇降するカウンタウェイトと乗かごとを備えたエレベータ装置において、前記トラクションマシンは、ラジアルギャップ方式の永久磁石型同期モータと、この同期モータの回転子に直結されたブレーキ装置のディスクと、このディスクと直結され前記ロープを巻掛けるシーブと、前記ディスクと対向して配置され固定部分に支持されるブレーキ装置の制動機構とを有することを特徴とするエレベータ装置。
【請求項2】前記トラクションマシンは、前記昇降路の下部に位置し、前記乗かごとカウンタウェイトの垂直方向に投影した断面積の外に配置されることを特徴とする請求項1記載のエレベータ装置。
・・・
【請求項13】前記トラクションマシンとカウンタウェイトは、前記乗かごのドアの位置する側に直列に配置され、前記ロープは、一端が昇降路頂部に固定され他端が前記カウンタウェイト上部のプーリを介して頂部に設けられた第1の頂部プーリを経て前記シーブに巻掛けられ、更に頂部に設けられた第2の頂部プーリを経て前記乗かごの下に設けた第1及び第2の下部プーリを経て前記昇降路頂部に固定されていることを特徴とする請求項2記載のエレベータ装置。」(特許請求の範囲)

イ.「【0009】【発明の実施の形態】本発明によるエレベータ装置の一実施の形態を図1乃至図3に沿って説明する。
【0010】ブレーキ装置は、ディスクブレーキであり、そのディスク2の外周をフレーム3で覆い、ディスク2の下方の両脇に制動機構4が設けられている。制動機構4は、その最外部がトラクションマシン1のフレーム3の最外幅よりはみ出ないように、支持軸10の中心よりも下方に配置されている。
【0011】シーブ5、ディスク2、同期モータ7の順に軸方向に配置されている。ディスク2は、軸受8を介して回転自在で、軸方向には動かないようにボルト9で支持軸10に支持されている。」(段落0009から0011)

ウ.「【0020】シーブ5の中にモータを組み込まないので、同期モータ7の径を大きくすることができ、モータ軸長を短くても必要なトルクを得られるので、トラクションマシン1全体の軸長を短くでき、昇降路内への配置が容易になる。」(段落0020)

エ.「【0026】次に、本発明によるトラクションマシン1を用いたエレベータ装置について図4にもとづいて説明する。
【0027】トラクションマシン1を昇降路25のピットに固定し、トラクションマシン1のシーブ5にロープ26を巻掛ける。このロープ26の一端は昇降路頂部に軸支された頂部プーリ27Aに巻掛けられ、そこから乗かご28の下部に軸支された第1及び第2の下部プーリ29A、29Bを介して昇降路頂部のロープ止め30Aに固定される。また、ロープ26の他端は同様に昇降路頂部に軸支された他の頂部プーリ27Bに巻掛けられ、そこからカウンタウェイト31上に軸支されたプーリ32を介して昇降路頂部のもう一つのロープ止め30Bに固定される。乗かご28は昇降路25内に平行で垂直に固定された一対のかごレール33A、33Bで水平方向にずれないよう上下方向に案内され、カウンタウェイト31は同様に固定されたカウンタウェイトレール34A、34Bで水平方向にずれないように上下方向に案内される。
【0028】トラクションマシン1の同期モータ7、ブレーキ装置は、図示しない制御盤により電源を供給されてその動作を制御される。同期モータ7はシーブ5を回転させ、ロープ26を駆動することにより乗かご28を目的階に昇降させる。ブレーキ装置は、乗かご28の停止時にシーブ5の回転を停止させ、乗かご28を所定階に確実に停止させる。
【0029】上記エレベータ装置によれば、トラクションマシン1は同期モータ7、ブレーキ装置、シーブ5を一体化しても、ブレーキ装置の動作が同期モータ7に影響しないので、不用な振動、騒音を発生することなく、エレベータ利用者やエレベータ装置の設置された建物の居住者に不快感を与えることがないという効果がある。
【0030】図5は、図4に示すエレベータ装置の平面図で、乗かご28のドア35とは反対側に面してカウンタウェイト31を配置し、乗かご28のドア35の隣接する側に面してトラクションマシン1を配置し、乗かご28の下部の左右方向にロープ26が渡るように第1及び第2のかご下プーリ29A、29Bを設ける。更に、カウンタウェイト31とトラクションマシン1との間には頂部プーリ27Bが、トラクションマシン1と第1のかご下プーリ29Aとの間にはもう1つの頂部プーリ27Aが配置される。
【0031】上記構成によれば、乗かご28の下側を通るロープ26は乗かご28の中心を通るように、両かご下プーリ29A、29Bは配置されている。これにより、乗かご28の吊り中心と重心が概略一致するので、吊りにより乗かご28に発生するモーメントは小さく、安定した乗かご昇降が実現できるという効果がある。
【0032】図6は、昇降路内機器配置の別の例を示すもので、乗かご28のドア35とは反対側に面してカウンタウェイト31とトラクションマシン1を夫々平行に配置し、その間に頂部プーリ27Bをほぼ直角に配置する。また、乗かご28の下部のかご下プーリ29A、29Bをかご奥からドア35側へほぼ対角にロープ26が通るように配置し、トラクションマシン1と乗かご奥側のかご下プーリ29Aの間に頂部プーリ27Aを配置する。このように配置することにより、カウンタウェイト31とトラクションマシン1のトータルの奥行き及び幅をコンパクトに配置できるので、昇降路面積を有効に利用できるという効果がある。例えば、この図では、昇降路25のカウンタウェイト31の右側に大きなスペースが生まれるので、そのスペースを利用してガバナ等の昇降路内配置機器を容易に設置できるという効果がある。また、本実施例は、図5に示す配置よりも、昇降路幅が小さくなるので、幅に制約のある昇降路に有効な実施例である。
【0033】図7は、さらに別の昇降路内機器配置を示すもので、トラクションマシン1をカウンタウェイト31の横に配置して、カウンタウェイト31と頂部プーリ27Bとトラクションマシン1のロープ26が同一方向に渡っていくようにしたものである。このようにすることにより、乗かご28の奥のスペースの奥行きが小さくでき、昇降路全体を小さくすることができる。
【0034】図8は、他の昇降路内機器配置を示すもので、乗かご28のドア35に隣接する側にトラクションマシン1とカウンタウェイト31を縦に配置したものである。したがって、昇降路25の奥行きが小さく、横幅が大きくなるので、昇降路25の横幅が余裕あり奥行きが厳しい用途に適している。また、乗かご28の背後に構造物がないので、通り抜け型の2方向で入り口を設ける場合にも適している。
」(段落0026から0034)

オ.「【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態を示すトラクションマシンの正面図。
【図2】図1のA-B線に沿う断面図。
【図3】図1のA-C線に沿う断面図。
【図4】本発明の一実施例の形態によるトラクションマシンを用いたエレベータ装置の概略斜視図。
【図5】図4の拡大平面図。
【図6】本発明による昇降路内機器配置を示す図5相当図。
【図7】本発明による昇降路内機器配置の別の例を示す図5相当図。
【図8】本発明による昇降路内機器配置の他の例を示す図5相当図。
【符号の説明】
1…トラクションマシン、2…ディスク、4…制動機構、5…シーブ、7…同期モータ、28…かご、31…カウンタウェイト。」(図面の簡単な説明、符号の説明)

カ.図8において、25と表示された長方形枠内に、28と表示された長方形枠が表示され、その一辺に35と表示された部材が描かれている。(図8において、「図8」の表示に近い部分を上部とする。この上部をもとに、以下、図8上で、上下、左右という。)25と表示された長方形枠と28と表示された長方形枠のそれぞれの左側の一辺の間に、25と表示された長方形枠の左側の一辺と平行状にかつそれに沿って、1と表示された部材と31と表示された部材が並んで配置されている。1と表示された部材は、全体として25と表示された長方形枠の左側の一辺の方向に横長であり、大小の横長長方形が連結した状態で凸状形の断面として描かれている。これら大小の横長長方形うち、小の横長長方形は、25と表示された長方形枠の左側の一辺と対面しており、小の横長長方形には、26と表示された黒丸と同じ黒丸が2個表示されていることが看てとれる。また、27Aと表示された一点鎖線の横長長方形は、1と表示された部材と重なっており、27Aと表示された長方形の短辺には26と表示された黒丸と同じ黒丸がそれぞれ表示されており、そのうち29と表示された二点鎖線の長方形側の黒丸の方が、35と表示された部材が描かれている、28と表示された長方形枠の下側の一辺に近づく方向に位置している。25と表示された長方形枠の下側の一辺に対して、27Aと表示された一点鎖線の横長長方形は傾斜している。(図8)

(2)ここで、上記記載事項ア.ないしカ.、及び図1ないし8から、次のことがわかる。

上記記載事項イ.、エ.より、次のことがわかる。本発明によるトラクションマシン1を用いたエレベータ装置について図4にもとづいて説明する。トラクションマシン1を昇降路25のピットに固定し、トラクションマシン1のシーブ5にロープ26を巻掛ける。このロープ26の一端は昇降路頂部に軸支された頂部プーリ27Aに巻掛けられ、そこから乗かご28の下部に軸支された第1及び第2の下部プーリ29A、29Bを介して昇降路頂部のロープ止め30Aに固定される。また、ロープ26の他端は同様に昇降路頂部に軸支された他の頂部プーリ27Bに巻掛けられ、そこからカウンタウェイト31上に軸支されたプーリ32を介して昇降路頂部のもう一つのロープ止め30Bに固定される。乗かご28は昇降路25内に平行で垂直に固定された一対のかごレール33A、33Bで水平方向にずれないよう上下方向に案内され、カウンタウェイト31は同様に固定されたカウンタウェイトレール34A、34Bで水平方向にずれないように上下方向に案内される。トラクションマシン1の同期モータ7、ブレーキ装置は、図示しない制御盤により電源を供給されてその動作を制御される。同期モータ7はシーブ5を回転させ、ロープ26を駆動することにより乗かご28を目的階に昇降させる。
図5は、図4に示すエレベータ装置の平面図で、乗かご28のドア35とは反対側に面してカウンタウェイト31を配置し、乗かご28のドア35の隣接する側に面してトラクションマシン1を配置し、乗かご28の下部の左右方向にロープ26が渡るように第1及び第2のかご下プーリ29A、29Bを設ける。更に、カウンタウェイト31とトラクションマシン1との間には頂部プーリ27Bが、トラクションマシン1と第1のかご下プーリ29Aとの間にはもう1つの頂部プーリ27Aが配置される。図8は、他の昇降路内機器配置を示すもので、乗かご28のドア35に隣接する側にトラクションマシン1とカウンタウェイト31を縦に配置したものである。
また、上記記載事項ア.より、トラクションマシン1は、昇降路25の下部に位置し、乗かご28とカウンタウェイト31の垂直方向に投影した断面積の外に配置されたことがわかる。上記記載事項オ.より、図4は本発明の一実施例の形態によるトラクションマシンを用いたエレベータ装置の概略斜視図であり、図5は図4の拡大平面図であり、図8は本発明による昇降路内機器配置の他の例を示す図5相当図であるから、図8の他の昇降路内機器配置のものも、図4のものと配置以外は同じ構成となっている。
カウンタウェイト31は、当然乗かご28と反対方向に昇降路25内を昇降する。

したがって、これらの記載と上記記載事項カ.から、次のことがわかる。
昇降路25内を昇降し、ドア35を有するとともに第1及び第2のかご下プーリ29A、29Bが設けられた乗かご28と、乗かご28と反対方向に昇降路25内を昇降し、昇降路25の平断面においてドア35に対して乗かご28の側方に配置され、プーリ32が設けられたカウンターウェイト31と、乗かご28の水平方向の移動を規制するかごレール33A、33Bと、カウンターウェイト31の水平方向の移動を規制するカウンターウェイト用ガイドレール34A、34Bと、乗かご28を乗かご28の第1及び第2のかご下プーリ29A、29Bを介して懸架するとともにカウンターウエイト31をカウンターウェイト31のプーリ32を介して懸架するロープ26と、昇降路25内に配置され、ロープ26が巻き掛けられたシーブ5及びシーブ5を駆動する同期モータ7を有し、シーブ5を回転させることでロープ26を介して乗かご28およびカウンターウェイト31を昇降させるトラクションマシン1と、昇降路25内に配置され、トラクションマシン1のシーブ5から乗かご28の第1及び第2のかご下プーリ29A、29Bに至るロープ26が巻き掛けられてロープ26の方向を転換する頂部プーリ27Aとを有するエレベーター装置において、トラクションマシン1は、昇降路25の平断面においてカウンターウェイト31及び乗かご28とは離れてカウンターウェイト31が配置された乗かご28の側方に位置する昇降路25の壁面に平行にかつカウンターウェイト31と昇降路25の壁面に沿って並んで配置され、前記昇降路の下部に位置し、頂部プーリ27Aは、トラクションマシン1より上方に位置し、昇降路25の平断面において、トラクションマシン1の少なくとも一部と重なるよう配置され、頂部プーリ27Aの回転面は、昇降路25の平断面においてロープ26が乗かご28の第1及び第2のかご下プーリ29A、29Bへ至る側がトラクションマシン1のシーブ5から巻き掛けられる側よりドア35に近づく方向に位置して近接する昇降路25の壁面に対して傾斜している。
また、上記記載事項ウ.、図1ないし8より、トラクションマシン1は、シーブ5の回転軸方向の外形寸法が前記回転軸に対して垂直な方向の外形寸法よりも小さいことがわかる。

(3)刊行物1記載の発明
上記記載事項(2)より、刊行物1には次の発明が記載されていると認められる。

「昇降路25内を昇降し、ドア35を有するとともに第1及び第2のかご下プーリ29A、29Bが設けられた乗かご28と、乗かご28と反対方向に昇降路25内を昇降し、昇降路25の平断面においてドア35に対して乗かご28の側方に配置され、プーリ32が設けられたカウンターウェイト31と、
乗かご28の水平方向の移動を規制するかごレール33A、33Bと、
カウンターウェイト31の水平方向の移動を規制するカウンターウェイト用ガイドレール34A、34Bと、
乗かご28を乗かご28の第1及び第2のかご下プーリ29A、29Bを介して懸架するとともにカウンターウエイト31をカウンターウェイト31のプーリ32を介して懸架するロープ26と、
昇降路25内に配置され、ロープ26が巻き掛けられたシーブ5及びシーブ5を駆動する同期モータ7を有し、シーブ5を回転させることでロープ26を介して乗かご28およびカウンターウェイト31を昇降させるトラクションマシン1と、
昇降路25内に配置され、トラクションマシン1のシーブ5から乗かご28の第1及び第2のかご下プーリ29A、29Bに至るロープ26が巻き掛けられてロープ26の方向を転換する頂部プーリ27Aとを有するエレベーター装置において、
トラクションマシン1は、シーブ5の回転軸方向の外形寸法が前記回転軸に対して垂直な方向の外形寸法よりも小さく、昇降路25の平断面においてカウンターウェイト31及び乗かご28とは離れてカウンターウェイト31が配置された乗かご28の側方に位置する昇降路25の壁面に平行にかつカウンターウェイト31と昇降路25の壁面に沿って並んで配置され、前記昇降路の下部に位置し、
頂部プーリ27Aは、トラクションマシン1より上方に位置し、昇降路25の平断面において、トラクションマシン1の少なくとも一部と重なるよう配置され、
頂部プーリ27Aの回転面は、昇降路25の平断面においてロープ26が乗かご28の第1及び第2のかご下プーリ29A、29Bへ至る側がトラクションマシン1のシーブ5から巻き掛けられる側よりドア35に近づく方向に位置して近接する昇降路25の壁面に対して傾斜しているエレベーター装置。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。)

2-3.対比
そこで、訂正発明と刊行物1記載の発明を対比するに、刊行物1記載の発明における「ドア35」、「第1及び第2のかご下プーリ29A、29B」、「乗かご28」、「プーリ32」、「かごレール33A、33B」、「カウンターウェイト用ガイドレール34A、34B」、「シーブ5」、「同期モータ7」、「トラクションマシン1」、「頂部プーリ27A」は、訂正発明における「乗降口」、「吊り車」、「かご」、「吊り車」、「かご用ガイドレール」、「カウンターウェイト用ガイドレール」、「綱車」、「モータ部」、「巻上機」、「第1の返し車」にそれぞれ相当する。

したがって、訂正発明と、刊行物1記載の発明は、
「昇降路内を昇降し、乗降口を有するとともに吊り車が設けられたかごと、
前記かごと反対方向に前記昇降路内を昇降し、該昇降路の平断面において前記乗降口に対して前記かごの側方に配置され、吊り車が設けられたカウンターウェイトと、
前記かごの水平方向の移動を規制するかご用ガイドレールと、
前記カウンターウェイトの水平方向の移動を規制するカウンターウェイト用ガイドレールと、
前記かごを前記かごの吊り車を介して懸架するとともに前記カウンターウエイトを前記カウンターウェイトの吊り車を介して懸架するロープと、
前記昇降路内に配置され、当該ロープが巻き掛けられた綱車及び該綱車を駆動するモータ部を有し、前記綱車を回転させることで前記ロープを介して前記かごおよび前記カウンターウェイトを昇降させる巻上機と、
前記昇降路内に配置され、前記巻上機の綱車から前記かごの吊り車に至る前記ロープが巻き掛けられて該ロープの方向を転換する第1の返し車とを有するエレベーター装置において、
前記巻上機は、前記綱車の回転軸方向の外形寸法が前記回転軸に対して垂直な方向の外形寸法よりも小さく、前記昇降路の平断面において前記カウンターウェイト及び前記かごとは離れて前記カウンターウェイトが配置された前記かごの側方に位置する前記昇降路の壁面に平行にかつ前記カウンターウェイトと前記昇降路の壁面に沿って並んで配置され、
前記第1の返し車は、前記巻上機より上方に位置し、前記平断面において、前記巻上機の少なくとも一部と重なるよう配置されているエレベーター装置。」である点で一致し、次の相違点で相違している。

(1)相違点1
訂正発明においては、巻上機は、「前記昇降路の最下階停止時のかご床面より上方でかつ最上階停止時のかご天井より下方に位置し」ているのに対し、刊行物1記載の発明では、巻上機は、「昇降路の下部に位置し」ている点。
(2)相違点2
訂正発明では、「前記第1の返し車の回転面は、前記昇降路の平断面において前記ロープが前記かごの吊り車へ至る側が前記巻上機の綱車から巻き掛けられる側より前記乗降口から遠ざかる方向に位置して近接する前記昇降路の壁面に対して傾斜している」(以下、これを「構成A」という。)のに対して、刊行物1記載の発明では、第1の返し車の回転面は、昇降路の平断面においてロープがかごの吊り車へ至る側が巻上機の綱車から巻き掛けられる側より乗降口に近づく方向に位置して近接する前記昇降路の壁面に対して傾斜している点。

2-4.判断
上記相違点2について、請求人は、意見書(第4頁第20行から第5頁第19行)において以下のように主張している。
『訂正発明は、「前記昇降路の最下階停止時のかご床面より上方でかつ最上階停止時のかご天井より下方に位置」する構成を有するものであるため、かごと巻上機が昇降路の高さ方向においてすれ違うこととなります。そして、訂正発明の「第1の返し車の回転面は、昇降路の平断面においてロープがかごの吊り車へ至る側が巻上機の綱車から巻き掛けられる側より乗降口から遠ざかる方向に位置して近接する昇降路の壁面に対して傾斜している」という構成は、この「前記昇降路の最下階停止時のかご床面より上方でかつ最上階停止時のかご天井より下方に位置」する構成と組み合わされることによって、巻上機とかごがすれ違う間の空間にかごの吊り車へ至るロープが通るという構成となります。従って、この空間にはロープを通さないようにエレベーター装置を構成するのが通常の当業者の発想であることから、何かしらの設計思想に基づかない限り「第1の返し車の回転面は、昇降路の平断面においてロープがかごの吊り車へ至る側が巻上機の綱車から巻き掛けられる側より乗降口から遠ざかる方向に位置して近接する昇降路の壁面に対して傾斜している」という構成は、当業者がなし得ることは困難であると思料致します。ニ.訂正発明は、昇降路の不使用空間の発生を極力押さえることを目的とすることによって、巻上機とかごがすれ違う間の空間にかごの吊り車へ至るロープが通るため、「第1の返し車の回転面は、昇降路の平断面においてロープがかごの吊り車へ至る側が巻上機の綱車から巻き掛けられる側より乗降口から遠ざかる方向に位置して近接する昇降路の壁面に対して傾斜している」という構成としています。つまり、刊行物1のようにロープがかごの吊り車へ至る側が乗降口に近づく方向に位置して近接する昇降路の壁面に対して傾斜させた場合には、昇降路における乗降口側に不使用空間が発生することとなるところ、訂正発明は上記設計思想に基づいて「第1の返し車の回転面は、昇降路の平断面においてロープがかごの吊り車へ至る側が巻上機の綱車から巻き掛けられる側より乗降口から遠ざかる方向に位置して近接する昇降路の壁面に対して傾斜している」という構成を採用するものであります。』

この主張を踏まえて上記相違点2について検討すると、訂正発明の構成Aにより、特許明細書記載の「昇降路内の不使用空間の発生を極力押さえ」(特許第3489578号公報第2頁右欄第36行)、「前記巻上機と前記返し車とを前記昇降路の平断面の投影面上で少なくとも一部を重ね合わせているので、昇降路空間を縮減できる。」(同第7頁左欄第1行から第3行)という格別な効果が認められる。しかも、通過時のロープにぶれが発生し、通常、巻上機とかごがすれ違う間の空間にはロープを通さないようにしていることからも、構成Aの想到には困難性が伴うことが認められる。

さらに、訂正拒絶理由通知書で刊行物2として引用した特開平11-310372号公報(請求人が提出した参考資料1である。)、又は訂正拒絶理由通知書で刊行物3として引用した特開平7-117957号公報の何れにも、「かごをかごの吊り車を介して懸架するとともに、巻上機とカウンターウェイトとが昇降路の壁面に沿って並んで配置されたエレベーター装置において、巻上機の綱車からかごの吊り車に至るロープが巻き掛けられてロープの方向を転換する第1の返し車」であることを前提とした構成Aは示されていない。

したがって、上記相違点1を検討するまでもなく、訂正発明が、刊行物1ないし3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとすることはできない。
よって、訂正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものである。

第4.むすび
以上のとおりであるから、本件審判の請求は、平成15年改正前の特許法第126条第1項ないし4項の規定に適合する。
よって、結論のとおり審決する。
 
発明の名称 (54)【発明の名称】
エレベーター装置
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】 昇降路内を昇降するかごと、
前記かごと反対方向に昇降するカウンターウェイトと、
前記かごの水平方向の移動を規制するかご用ガイドレールと、
前記カウンターウェイトの水平方向の移動を規制するカウンターウェイト用ガイドレールと、
前記かごと前記カウンターウェイトを懸架するロープと、
前記昇降路内に配置され、当該ロープが巻き掛けられた綱車及び該綱車を駆動するモータ部を有し、前記綱車を回転させることで前記ロープを介して前記かごおよび前記カウンターウェイトを昇降させる巻上機と、
前記昇降路内に配置され、前記ロープが巻き掛けられて該ロープの方向を転換する第1の返し車と、
前記第1の返し車を支持するビームと、を有するエレベータ装置において、
前記巻上機は、前記綱車の回転軸方向の外形寸法が前記回転軸に対して垂直な方向の外形寸法よりも小さく、前記昇降路の平断面において前記カウンターウェイト及び前記かごとは離れて配置され、前記昇降路の最下階停止時のかご床面より上方でかつ最上階停止時のかご天井より下方に位置し、前記ビームに下側から取り付けられ、
前記第1の返し車は、前記昇降路の平断面において前記巻上機の少なくとも一部と重なることを特徴とするエレベーター装置。
【請求項2】昇降路内を昇降し、乗降口を有するとともに吊り車が設けられたかごと、
前記かごと反対方向に前記昇降路内を昇降し、該昇降路の平断面において前記乗降口に対して前記かごの側方に配置され、吊り車が設けられたカウンターウェイトと、
前記かごの水平方向の移動を規制するかご用ガイドレールと、
前記カウンターウェイトの水平方向の移動を規制するカウンターウェイト用ガイドレールと、
前記かごを前記かごの吊り車を介して懸架するとともに前記カウンターウェイトを前記カウンターウェイトの吊り車を介して懸架するロープと、
前記昇降路内に配置され、当該ロープが巻き掛けられた綱車及び該綱車を駆動するモータ部を有し、前記綱車を回転させることで前記ロープを介して前記かごおよび前記カウンターウェイトを昇降させる巻上機と、
前記昇降路内に配置され、前記巻上機の綱車から前記かごの吊り車に至る前記ロープが巻き掛けられて該ロープの方向を転換する第1の返し車とを有するエレベーター装置において、
前記巻上機は、前記綱車の回転軸方向の外形寸法が前記回転軸に対して垂直な方向の外形寸法よりも小さく、前記昇降路の平断面において前記カウンターウェイト及び前記かごとは離れて前記カウンターウェイトが配置された前記かごの側方に位置する前記昇降路の壁面に平行にかつ前記カウンターウェイトと前記昇降路の壁面に沿って並んで配置され、前記昇降路の最下階停止時のかご床面より上方でかつ最上階停止時のかご天井より下方に位置し、
前記第1の返し車は、前記巻上機より上方に位置し、前記平断面において、前記巻上機の少なくとも一部と重なるよう配置され、
前記第1の返し車の回転面は、前記昇降路の平断面において前記ロープが前記かごの吊り車へ至る側が前記巻上機の綱車から巻き掛けられる側より前記乗降口から遠ざかる方向に位置して近接する前記昇降路の壁面に対して傾斜していることを特徴とするエレベーター装置。
【請求項3】前記ビームを防振構造としたことを特徴とする請求項1に記載のエレベーター装置。
【発明の詳細な説明】
技術分野
この発明は、昇降路内に、かごとカウンターウェイトと、両者を懸架するロープと、該ロープを駆動する巻上機と、該ロープの懸架方向を転換する返し車とを有するエレベーター装置に関するものである。
背景技術
第12図および第13図は例えば特開平9-165172号公報の図2および図1に示された従来のエレベーター装置を示す平面図および側面図である。
図において、1は人または荷物が載るかご、2はかご1の重量を補償するカウンターウェイト、3はかご1とカウンターウェイト2とを懸架するロープ、4はロープ3を介してかご1とカウンターウェイト2とを駆動し昇降させる薄形の巻上機、4aは巻上機のシーブ、5a、5bはロープ3の懸架方向を転換する返し車、6はかご用ガイドレール、7はカウンターウェイト用ガイドレール、8は昇降路、11はかご1の吊り車、12はカウンターウェイト2の吊り車、13はかご側の綱止め、14はカウンターウェイト側の綱止めである。

巻上機4のシーブ4aに懸架されたロープ3を介して、エレベーターのかご1およびカウンターウェイト2が昇降する。この際、かご用ガイドレール6がかご1の水平方向の移動を規制し、カウンターウェイト用ガイドレール7がカウンターウェイト2の水平方向の移動を規制して、昇降路内の他の機器や昇降路壁とかご1およびカウンターウェイト2との接触・干渉を防止している。ここで、かご1、カウンターウェイト2および巻上機4の垂直投影は互いに離れており、巻上機4は隣接する一つの壁面に平行に置かれている。
近年のエレベーター装置においては、エレベーター占有空間の最小化を狙いとして、機械室を設けず巻上機を昇降路に内臓する各種の方式が提案されている。具体的には、(1)薄形の巻上機をカウンターウェイトの昇降上限より上方に配置する方式、(2)巻上機を昇降路内の頂部即ちかご最上階停止時のかごの天井より上方に配置する方式、(3)巻上機を昇降路内のピット部即ちかご最下階停止時のかご床面より下方に配置する方式である。
このうち、(1)(2)はエレベーターの昇降に必要最小限の高さよりも多くの昇降路高さを要するうえ、昇降路頂部付近においてかご上に乗って巻上機の保守点検をする作業者が予期せぬかごの上昇により昇降路の天井に頭をぶつけないための防護策を講じる必要があるという欠点がある。(2)の場合は、巻上機が発する熱が昇降路の頂部即ち巻上機自信の付近に滞留するので温度上昇により巻上機が故障し易くなる。(3)は最も冠水し易いピット部に巻上機を配置するためにその防護手段が必要という欠点がある。前記の特開平9-165172号のエレベーター装置は、(1)の欠点を解消するものであるが、巻上機の垂直投影面の上方および下方の昇降路全高にわたって不使用空間を生ぜしめるという新たな欠点をもたらしている。
以上のように従来のエレベーター装置では、巻上機の垂直投影面の上方および下方の昇降路全高にわたって不使用空間を生ぜしめるという問題点があった。
発明の開示
本発明は、上記の問題点を解消するためになされたものであり、昇降路内の不使用空間の発生を極力押さえ、巻上機の温度上昇による故障を押さえ、昇降路への冠水に対して巻上機の損傷が無く、また点検時の予期せぬかごの上昇に対する防護手段の必要を無からしめることを目的としている。
この目的を達成するために、この発明のエレベーター装置では、昇降路内を昇降するかごと、前記かごと反対方向に昇降するカウンターウェイトと、前記かごの水平方向の移動を規制するかご用ガイドレールと、前記カウンターウェイトの水平方向の移動を規制するカウンターウェイト用ガイドレールと、前記かごと前記カウンターウェイトを懸架するロープと、前記昇降路内に配置され、当該ロープが巻き掛けられた綱車及び該綱車を駆動するモータ部を有し、前記綱車を回転させることで前記ロープを介して前記かごおよび前記カウンターウェイトを昇降させる巻上機と、前記昇降路内に配置され、前記ロープが巻き掛けられて該ロープの方向を転換する第1の返し車と、前記第1の返し車を支持するビームと、を有するエレベータ装置において、前記巻上機は、前記綱車の回転軸方向の外形寸法が前記回転軸に対して垂直な方向の外形寸法よりも小さく、前記昇降路の平断面において前記カウンターウェイト及び前記かごとは離れて配置され、前記昇降路の最下階停止時のかご床面より上方でかつ最上階停止時のかご天井より下方に位置し、前記ビームに下側から取り付けられ、前記第1の返し車は、前記昇降路の平断面において前記巻上機の少なくとも一部と重なる。
また、この発明のエレベーター装置では、昇降路内を昇降し、乗降口を有するとともに吊り車が設けられたかごと、前記かごと反対方向に前記昇降路内を昇降し、該昇降路の平断面において前記乗降口に対して前記かごの側方に配置され、吊り車が設けられたカウンターウェイトと、前記かごの水平方向の移動を規制するかご用ガイドレールと、前記カウンターウェイトの水平方向の移動を規制するカウンターウェイト用ガイドレールと、前記かごを前記かごの吊り車を介して懸架するとともに前記カウンターウェイトを前記カウンターウェイトの吊り車を介して懸架するロープと、前記昇降路内に配置され、当該ロープが巻き掛けられた綱車及び該綱車を駆動するモータ部を有し、前記綱車を回転させることで前記ロープを介して前記かごおよび前記カウンターウェイトを昇降させる巻上機と、前記昇降路内に配置され、前記巻上機の綱車から前記かごの吊り車に至る前記ロープが巻き掛けられて該ロープの方向を転換する第1の返し車とを有するエレベーター装置において、前記巻上機は、前記綱車の回転軸方向の外形寸法が前記回転軸に対して垂直な方向の外形寸法よりも小さく、前記昇降路の平断面において前記カウンターウェイト及び前記かごとは離れて前記カウンターウェイトが配置された前記かごの側方に位置する前記昇降路の壁面に平行にかつ前記カウンターウェイトと前記昇降路の壁面に沿って並んで配置され、前記昇降路の最下階停止時のかご床面より上方でかつ最上階停止時のかご天井より下方に位置し、前記第1の返し車は、前記巻上機より上方に位置し、前記平断面において、前記巻上機の少なくとも一部と重なるよう配置され、前記第1の返し車の回転面は、前記昇降路の平断面において前記ロープが前記かごの吊り車へ至る側が前記巻上機の綱車から巻き掛けられる側より前記乗降口から遠ざかる方向に位置して近接する前記昇降路の壁面に対して傾斜している。
さらに、前記ビームを防振構造とした。
次に、本発明について、以下の通り、実施例を説明する。
実施例1.

る。
第1図は、この発明のエレベーター装置の実施例1の俯瞰面、第2図は平面図を示す。これは、エレベーターの乗降口からみてカウンターウェイトがかごの後方にあり、巻上機をかごの側方に配置した例である。図において、1は人または荷物が載るかご、2はかご1の重量を補償するカウンターウェイト、3はかご1とカウンターウェイト2とを懸架するロープ、4はロープ3を介してかご1とカウンターウェイト2とを駆動し昇降させる薄形の巻上機、4aは巻上機4のシーブ、4bは巻上機4のモーター、5a、5bはロープ3の懸架方向を転換する返し車、6はかご用ガイドレール、7はカウンターウェイト用ガイドレール、8は昇降路、8aは昇降路8の頂部、8bは昇降路8のピット部、9は巻上機4を支持するビーム、10は返し車5を支持するビーム、11はかご1の吊り車、12はカウンターウェイト2の吊り車、13はかご側の綱止め、14はカウンターウェイト側の綱止め、15は制御盤である。なお、第1図中の一点鎖線Aは、かご最上階停止時のかご天井の高さを示す。即ち、この線より上方が頂部である。また、第1図中の一点鎖線Bは、かご最下階停止時のかご床面の高さを示す。即ち、この線より下方がピット部である。
図において、巻上機4の下端は一点鎖線Bよりも上方にある。即ち、巻上機4は、かご最上階停止時のかごの天井よりも下方で、かつ、下端がかご最下階停止時のかごの床面よりも上方に配置されている。また、巻上機4は隣接する一つの壁に平行に配置されている。
さらに、返し車5aは昇降路8の平断面の投影面上で巻上機4と一部重なり合って配置されており、返し車5bは壁面に対して傾斜して配置されている。
さらに、巻上機4をかご用ガイドレール6およびカウンターウェイト用ガイドレール7によって支持されるビーム9の下側の固定している。そして、巻上機4のシーブ4aは昇降路8の平断面内でかご用ガイドレール6の背面よりもかご側に位置している。ここでガイドレールの背面とは第3図Cの部分を云う。本例では、巻上機4をビーム9に対して直接固定しているが、弾性体を介して取り付け防振構造とすることもできる。また、ビーム9とかご用ガイドレール6、カウンターウェイト用ガイドレール7との間を弾性体を介して取り付けることもできる。
また、返し車5a、5bをかご用ガイドレール6およびカウンターウェイト用ガイドレール7によって支持されるビーム10に固定している。本例では、返し車5a、5bをビーム10に対して直接固定しているが、弾性体を介して取り付け防振構造とすることもできる。また、ビーム10とかご用ガイドレール6、カウンターウェイト用ガイドレール7との間を弾性体を介して取り付けることもできる。
さらに、制御盤15は、下端をかご最下階停止時のかごの床面よりも上方にして、巻上機4とほぼ同じ高さに配置されている。
制御盤15により駆動される巻上機4のシーブ4aに懸架されたロープ3が返し車5a、5bにより方向転換され、かごの吊り車11およびカウンターウェイトの吊り車12を介して、かご1およびカウンターウェイト2を昇降させる。この際、かご用ガイドレール6およびカウンターウェイト用ガイドレール7が、かご1およびカウンターウェイト2の水平方向の移動を規制する。
返し車5aは昇降路8の平断面の投影面上で巻上機4と一部重なり合って配置されかつ、巻上機4のシーブ4aは昇降路8の平断面内でかご用ガイドレール6の背面よりもかご側に位置しているので、昇降路8の平断面の投影面上で巻上機4が占有する面積は小さく、昇降路全高にわたる不使用空間を縮減している。また、巻上機のシーブ4aに巻き掛けられているロープの巻付け角は180°より大きくできるので、トラクション能力を大きくすることができる。また、巻上機4はかご最上階停止時のかご天井より下方にあるので、かご上に乗って作業する点検作業者が、予期せぬかごの上昇によって昇降路の天井に頭をぶつける惧れは無く、防護手段を要しない。さらに、巻上機の発する熱は上方である昇降路の天井付近へゆくので、温度上昇により巻上機が故障することもない。また、返し車5bは昇降路8の壁面に対し傾斜しているので、シーブ4aのロープ溝へのロープ3の入り込み角が小さくなりロープの損傷が防止されている。
また、ビーム9の下に巻上機4が取り付けられ、ビーム10には返し車5a、5bが取り付けられているので、ビーム9を介して、かご用ガイドレール6、カウンターウェイト用ガイドレール7に作用するロープ3の張力による上向きの力と、ビーム10を介して、かご用ガイドレール6、カウンターウェイト用ガイドレール7に作用するロープ3の張力による下向きの力とがガイドレール内部で相殺し合い、建物にかかる力を軽減している。
さらに、巻上機4の下端および制御盤15の下端は、かご最下階停止時のかご床面より上方でかつかご天井面より下方にあるので、ピットが冠水しても損傷を受けることは無い。
この種の機械室の無い方式のエレベーター装置では、ピットの深さは1.2mから1.5m程度であり、この位置に巻上機および制御盤が配置されていると、作業者がピット床に立った時に手が届く範囲、例えば1.2mから1.7m高さの範囲

点検作業が容易である。
なお、巻上機4の下端および制御盤15の下端をかご1階停止時のかご床面より上方でかつかご天井面より下方にした場合には、ピットのみならず地下階全体が冠水しても巻上機4および制御盤15が損傷を受けることは無い。
また、巻上機4の下端をかご基準階停止時のかご床面より上方でかつかご天井面より下方にし制御盤15をほぼ同じ高さに配置した場合、エレベーターの運行管理に即した点検が最もやり易くなる。
巻上機4の下端を最上階停止時のかご床面より上方でかつかご天井面より下方にした場合には、巻上機4と返し車5a、5bとの高さが接近しているので、両者を点検するのに便利である。
また、両者を支持するビームを一体にして、材料の節減と空間の縮減を図ることも可能になる。
実施例2.

する。
第4図はこの発明のエレベーター装置の実施例2の俯瞰図、第5図は平面図を示す。これは、エレベーターの乗降口からみてカウンターウェイトがかごの後方にあり、巻上機をカウンターウェイトの昇降空間の側方に配置した例である。図において、前述の図と同符号は相当部分を示し説明は省略する。
図において、巻上機4の下端は一点鎖線Bよりも上方にある。即ち、巻上機4は、かご最上階停止時のかごの天井よりも下方で、かつ、下端がかご最下階停止時のかごの床面よりも上方に配置されている。また、巻上機4は隣接する一つの壁に平行に配置されている。
さらに、返し車5a、5bは昇降路8の平断面の投影面上で巻上機4と一部重なり合って配置されている。また、返し車5bは昇降路8の壁面に対し傾斜しているので、シーブ4aのロープ溝へのロープ3の入り込み角が小さくなりロープの損傷が防止されている。
さらに、巻上機4をかご用ガイドレール6およびカウンターウェイト用ガイドレール7によって支持されるビーム9に下側から固定している。本例では、巻上機4をビーム9に対して直接固定しているが、弾性体を介して取り付け防振構造とすることもできる。また、ビーム9とかご用ガイドレール6、カウンターウェイト用ガイドレール7との間を弾性体を介して取り付けることもできる。
また、返し車5をかご用ガイドレール6およびカウンターウェイト用ガイドレール7によって支持されるビーム10に固定している。本例では、返し車5をビーム10に対して直接固定しているが、弾性体を介して取り付け防振構造とすることもできる。また、ビーム10とかご用ガイドレール6、カウンターウェイト用ガイドレール7との間を弾性体を介して取り付けることもできる。
さらに、制御盤15は、昇降路8の平断面において投影面が巻上機4と重なる直近の直上または直下に配置されている。
制御盤15により駆動される巻上機4のシーブ4aに懸架されたロープ3が返し車5により方向転換され、かごの吊り車11およびカウンターウェイトの吊り車12を介して、かご1およびカウンターウェイト2を昇降させる。この際、かご用ガイドレール6およびカウンターウェイト用ガイドレール7が、かご1およびカウンターウェイト2の水平方向の移動を規制する。
返し車5aは昇降路8の平断面の投影面上で巻上機4と一部重なり合って配置され、制御盤15は昇降路8の平断面において投影面が巻上機4と重なる直近の直上または直下に配置されているので、昇降路8の平断面の投影面上で巻上機4が占有する面積は小さく、昇降路全高にわたる不使用空間を縮減している。また、巻上機4はかご最上階停止時のかご天井より下方にあるので、かご上に乗って作業する点検作業者が、予期せぬかごの上昇によって昇降路の天井に頭をぶつける惧れは無く、防護手段を要しない。さらに、巻上機の発する熱は上方である昇降路の天井付近へゆくので、熱により巻上機が故障することもない。
また、ビーム9の下に巻上機4が取り付けられ、ビーム10には返し車5a、5bが取り付けられているので、ビーム9を介して、かご用ガイドレール6、カウンターウェイト用ガイドレール7に作用するロープ3の張力による上向きの力と、ビーム10を介して、かご用ガイドレール6、カウンターウェイト用ガイドレール7に作用するロープ3の張力による下向きの力とがガイドレール内部で相殺し合い、建物にかかる力を軽減している。
さらに、巻上機4の下端はかご最下階停止時のかご床面より上方でかつかご天井面より下方にあり、制御盤15は昇降路8の平断面において投影面が巻上機4と重なる直近の直上にあるので、ピットが冠水しても巻上機4および制御盤15は損傷を受けることは無い。
この種の機械室の無い方式のエレベーター装置では、ピットの深さは1.2mから1.5m程度であり、この位置に巻上機が配置されていると、作業者がピット床に立った時に手が届く範囲、例えば1.2mから1.7m高さの範囲(かご最下階

易である。
なお、巻上機4の下端をかご1階停止時のかご床面より上方でかつかご天井面より下方にし、制御盤15を昇降路8の平断面において投影面が巻上機4と重なる直近の直上に配置した場合には、ピットのみならず地下階全体が冠水しても巻上機4および制御盤15が損傷を受けることは無い。
また、巻上機4の下端をかご基準階停止時のかご床面より上方でかつかご天井面より下方にし、制御盤15を昇降路8の平断面において投影面が巻上機4と重なる直近の直上または直下に配置した場合、エレベーターの運行管理に即した点検が最もやり易くなる。
巻上機4の下端を最上階停止時のかご床面より上方でかつかご天井面より下方にした場合には、巻上機4と返し車5との高さが接近しているので、両者を点検するのに便利である。
また、両者を支持するビームを一体にして、材料の節減と空間の縮減を図ることも可能になる。
実施例3.

例3を説明する。
第6図は、この発明のエレベーター装置の実施例3の俯瞰図、第7図は平面図を示す。これは、エレベーターの乗降口からみてカウンターウェイトがかごの側方にあり、巻上機をカウンターウェイトと同じ側のかごの側方でカウンターウェイトとは昇降路の平断面上で投影面が重ならないように配置した例である。図において、前述の図と同符号は相当部分を示し説明は省略する。
図において、巻上機4の下端は一点鎖線Bよりも上方にある。即ち、巻上機4は、かご最上階停止時のかごの天井よりも下方で、かつ、下端がかご最下階停止時のかごの床面よりも上方に配置されている。また、巻上機4は隣接する一つの壁に平行に配置されている。
さらに、返し車5aは昇降路8の平断面の投影面上で巻上機4と一部重なり合って配置されている。また、返し車5a、5bは昇降路8の壁面に対し傾斜しているので、シーブ4aのロープ溝へのロープ3の入り込み角が小さくなりロープの損傷が防止されている。
さらに、巻上機4をかご用ガイドレール6およびカウンターウェイト用ガイドレール7によって支持されるビーム9に下側から固定している。そして、巻上機4のモータ4bは昇降路8の平断面内でかご用ガイドレール6の背面よりもかご側に位置している。ここでガイドレールの背面とは図3のC部分を云う。本例では、巻上機4をビーム9に対して直接固定しているが、弾性体を介して取り付け防振構造とすることもできる。また、ビーム9とかご用ガイドレール6、カウンターウェイト用ガイドレール7との間を弾性体を介して取り付けることもできる。
また、返し車5をかごガイドレール6およびカウンターウェイト用ガイドレール7によって支持されるビーム10に固定している。本例では、返し車5をビーム10に対して直接固定しているが、弾性体を介して取り付け防振構造とすることもできる。また、ビーム10とかご用ガイドレール6、カウンターウェイト用ガイドレール7との間を弾性体を介して取り付けることもできる。
制御盤15により駆動される巻上機4のシーブ4aに懸架されたロープ3が返し車5により方向転換され、かごの吊り車11およびカウンターウェイトの吊り車12を介して、かご1およびカウンターウェイト2を昇降させる。この際、かご用ガイドレール6およびカウンターウェイト用ガイドレール7が、かご1およびカウンターウェイト2の水平方向の移動を規制する。
返し車5aは昇降路8の平断面の投影面上で巻上機4と一部重なり合って配置されかつ、巻上機4のモーター4bは昇降路8の平断面内でかご用ガイドレール6の背面よりもかご側に位置しているので、昇降路8の平断面の投影面上で巻上機4が占有する面積は小さく、昇降路全高にわたる不使用空間を縮減している。また、巻上機4はかご最上階停止時のかご天井より下方にあるので、かご上に乗って作業する点検作業者が、予期せぬかごの上昇によって昇降路の天井に頭をぶつける惧れは無い。さらに、巻上機の発する熱は上方である昇降路の天井付近へゆくので、熱により巻上機が故障することもない。
また、ビーム9の下に巻上機4が取り付けられ、ビーム10には返し車5a、5bが取り付けられているので、ビーム9を介して、かご用ガイドレール6、カウンターウェイト用ガイドレール7に作用するロープ3の張力による上向きの力と、ビーム10を介して、かご用ガイドレール6、カウンターウェイト用ガイドレール7に作用するロープ3の張力による下向きの力とがガイドレール内部で相殺し合い、建物にかかる力を軽減している。
さらに、巻上機4の下端および制御盤15の下端はかご最下階停止時のかご床面より上方でかつかご天井面より下方にあるので、ピットが冠水しても巻上機4および制御盤15は損傷を受けることは無い。
この種の機械室の無い方式のエレベーター装置では、ピットの深さは1.2mから1..5m程度であり、この位置に巻上機および制御盤が配置されていると、作業者がピット床に立った時に手が届く範囲、例えば1.2mから1.7m高さの範

点検作業が容易である。
なお、巻上機4の下端をかご1階停止時のかご床面より上方でかつ上端をかご天井面より下方にし、制御盤15をほぼ同じ高さに配置した場合には、ピットのみならず地下階全体が冠水しても巻上機4および制御盤15が損傷を受けることは無い。また、巻上機4の下端をかご基準階停止時のかご床面より上方でかつ上端をかご天井面より下方にし制御盤15をほぼ同じ高さに配置した場合、エレベーターの運行管理に即した点検が最もやり易くなる。
巻上機4の下端を最も上階停止時のかご床面より上方でかつ上端をかご天井面より下方にした場合には、巻上機4と返し車5とが接近しているので、両者の位置調整が容易であり、点検にも便利である。
実施例4.

明する。
第8図は、この発明のエレベーター装置の実施例4の俯瞰図、第2図は平面図を示し、第9図および第10図は要部を示す。これは、エレベーターの乗降口からみてカウンターウェイトがかごの後方にあり、巻上機をかごの側方でかつ最上階停止時のかご天井高さのすぐ下方で返し車を支持するビームに対して下側に配置した例である。前述の図と同符号は相当部分を示し説明は省略する。
図において、16はビーム10の振動を吸収する弾性体である。ここで、返し車5の昇降路壁に対する傾斜角は可変であり、二つの返し車5相互の間隔も可変の構造としている。この可変構造は、例えばビーム10と返し車5の枠とをボルト締結とし、かつその締結穴を長穴にすれば実現できる。但し、可変構造はこれに限るものではない。また、この可変構造は実施例1から実施例3においても適用可能である。
返し車5を支持するビーム10の下方に、巻上機4を取り付けているので、ロープ3の張力により、巻上機4のシーブ4aに上方向に作用する力と、返し車5に下方向に作用する力とにより、ビーム10に作用する力が内力として相殺されるため、ガイドレールに作用する力が軽減される。
また、巻上機4と返し車5とが同一のビーム10に取り付けられているので相互の位置調整が容易である。
また、巻上機4と返し車5とが同一のビーム10に取り付けられており、ビーム10は弾性体16を介してかごのガイドレール6およびカウンターウェイトのガイドレール7とに取り付けられているので、効果的に巻上機4と返し車5の振動を絶縁できる。
さらに、返し車5の昇降路壁との傾斜角が可変であり、二つの返し車5の相互の間隔も可変であるので、異なるサイズのかご1で、かごの吊り車12、カウンターウェイトの吊り車13との昇降路平面内での位置関係が変わっても、同一設計で対応できる。
実施例5.
第11図を用いて、エレベーター装置に関するこの発明の一実施例を説明する。
第11図は、この発明のエレベーター装置の実施例5を示す。図において、前述の図と同符号は相当部分を示し説明は省略する。図において17は二つあった返し車5のうち一方を置き換えた駆動装置である。なお、この置き換えは実施例1から実施例4において適用可能である。
二つの返し車5a、5bの一方を駆動装置17に置き換え、巻上機4と同期駆動することにより駆動能力を向上させることができ、大容量のエレベーター装置に対しても対応できる。
本発明にかかるエレベーター装置は、以上のように構成されているので、以下に示す効果が得られる。
この発明のエレベーター装置では、昇降路の平断面の投影面上で巻上機が占有する面積は小さく、昇降路全高にわたる不使用空間を縮減している。
また、ロープが巻上機のシーブのロープ溝に入り込む角度が小さいのでロープの損傷が防止できる。
さらに、前記巻上機の下端を前記昇降路の最下階停止時のかご床面より上方になるよう配置しているので、ピットに冠水があっても巻上機が損傷することはない。
さらに、前記第1の返し車を支持するビームに、前記巻上機を下側に取り付けているので、ガイドレールに作用する力を削減できる。また、返し車と巻上機との位置調整が容易であり、点検にも便利である。
さらに、前記ビームを防振構造としているので、巻上機と返し車との振動を効果的に絶縁できる。
さらに、前記巻上機と前記返し車とを前記昇降路の平断面の投影面上で少なくとも一部を重ね合わせているので、昇降路空間を縮減できる。
産業上の利用可能性 以上のように、本発明にかかるエレベーター装置は、昇降路内を昇降するかごと、前記かごと対向方向に移動するカウンターウェイトと、前記かごの水平方向の移動を規制するかご用ガイドレールと、前記カウンターウェイトの水平方向の移動を規制するカウンターウェイト用ガイドレールと、前記かごと前記カウンターウェイトを懸架するロープと、前記昇降路内にあって前記ロープが巻き掛けられ当該ロープを介して前記かごおよび前記カウンターウェイトを昇降させる巻上機とを有するエレベーターにおいて用いられるのに適している。
【図面の簡単な説明】
第1図は、本発明の実施例1のエレベーター装置の俯瞰図である。
第2図は、本発明の実施例1および実施例4のエレベーター装置の平面図である。

である。
第4図は、本発明の実施例2のエレベーター装置の俯瞰図である。
第5図は、本発明の実施例2のエレベーター装置の平面図である。
第6図は、本発明の実施例3のエレベーター装置の俯瞰図である。
第7図は、本発明の実施例3のエレベーター装置の平面図である。
第8図は、本発明の実施例4のエレベーター装置の俯瞰図である。
第9図は、本発明の実施例4のエレベーター装置の要部の図である。
第10図は、本発明の実施例4のエレベーター装置の要部の図である。
第11図は、本発明の実施例5のエレベーター装置の俯瞰図である。
第12図は、特開平9-165172号公報に示された従来のエレベーター装置の平面図である。
第13図は、特開平9-165172号公報に示された従来のエレベーター装置の側面図である。
 
訂正の要旨 審決(決定)の【理由】欄参照。
審決日 2005-02-08 
出願番号 特願2001-543429(P2001-543429)
審決分類 P 1 41・ 856- Y (B66B)
最終処分 成立  
前審関与審査官 志水 裕司  
特許庁審判長 大橋 康史
特許庁審判官 平城 俊雅
清田 栄章
登録日 2003-11-07 
登録番号 特許第3489578号(P3489578)
発明の名称 エレベーター装置  
代理人 伊達 研郎  
代理人 伊達 研郎  
代理人 高橋 省吾  
代理人 高橋 省吾  

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