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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F02D
管理番号 1113963
審判番号 不服2002-24411  
総通号数 65 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1995-07-18 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-12-19 
確定日 2005-03-17 
事件の表示 平成5年特許願第292020号「車両用制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成7年7月18日出願公開、特開平7-180602〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】本願発明
本願は、平成5年11月22日(優先権主張:平成5年11月10日)の出願であって、その請求項1〜3に係る発明は、平成12年1月14日付け、平成14年7月22日付け及び平成15年1月16日付け手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜3に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1に記載された発明は、次のとおりである。
「【請求項1】 車体フレームに設けられエンジンを始動・停止する電気回路を組み込むエンジンコントロールユニットと、前記エンジンコントロールユニットと協働してエンジンの作動制御に供されるとともに、エンジンを自動的に始動状態にする機能を備えるカードキーと、を有し、
前記カードキーは、前記エンジンコントロールユニットに必要な全ての制御用マップデータを記憶可能な記憶手段と、該エンジンコントロールユニットに予め記憶されている全ての制御用マップデータを前記記憶手段に記憶されている制御用マップデータに書き換えるためのデータ書き換え手段と、を備え、
前記エンジンコントロールユニットは、前記制御用マップデータが書き換えられた後に、該書き換えられた制御用マップデータに対応する表示に変更される表示部を備えることを特徴とする車両用制御装置。」

【2】引用例の記載事項
これに対し、原査定の拒絶の理由で引用した実願昭61-183924号(実開昭63-88556号)のマイクロフィルム(以下、「引用例1」という。)、及び、「周知例」として引用した特開昭58-110340号公報(以下、「周知文献」という。)には、次のような技術的事項が記載されている。
・引用例1;
「この考案は従来技術におけるこのような問題点を解決するためになされたものであって、たとえばスポーツ走行とか省燃費走行とか、ドライバの個々の希望するドライブパタンに応じたドライブパタンICカードをいくつか準備し、このドライブパタンICカードを車のカードデータ読取装置に差し込むことによってコントロールユニットにそのデータを送り、メーカによってコントロールユニットにあらかじめ設定された制御信号に種々の調整変更を加えて制御対象装置に送るようにしたICカード制御自動車をその要旨とし、具体的にはエンジン、サスペンションなどの制御対象装置を、各装置に関連するセンサ群からの信号データを受けて演算する各コントロールユニットからの信号によって制御するようにされた電子制御自動車において、所望のドライブパタンICカードを挿入するようにされたカードデータ読取装置を設け、このカードデータ読取装置からその読み取ったデータに基づく出力信号を前記各コントロールユニットに送り、これによって各コントロールユニットからその制御対象装置に向けられる制御信号を調整変更するように構成したことを特徴とするICカード制御自動車を提供するものである。」(明細書第4頁第15行〜第5頁第18行)
「すなわち、メーカーが設定した一般的なドライブパタンにはあきたらず、もっとハードなスポーティ走行を望む人や、逆にメーカー設定の標準パタンよりさらにおとなしい省燃費運転をしたい人などは、それぞれ、例えばスポーティパタン、あるいは省燃費パタンなどのドライブパタンICカード2を選んでドライブ前にこのカードデータ読取装置14に差し込むようにするのである。こうすれば、そのドライブパタンICカード2に記憶されたデータがカードデータ読取装置14によって読み取られ、図示の信号回路を経由してエンジンコントロールユニット12に送られ、エンジン関係センサ群13からここに入るデータと一緒に演算されて、カードデータ読取装置14からのデータがなかった時にエンジンコントロールユニット12から燃料噴射弁5に送られたであろう、つまりメーカー設定の一般的パタンとは別の、ドライバが希望する運転パタンに即したタイミングおよび噴射量が燃料噴射弁5に指令されることになるのである。」(同第7頁第12行〜第8頁第11行)
そして、「エンジンコントロールユニット12」は、エンジンの電子制御装置であるから、当該ユニット12にエンジンを始動・停止する電気回路が組み込まれていることは、当業者にとって技術常識である。
また、「ドライブパタンICカード2」は、ドライブパターンの違いによりエンジンの制御用データが全く別のデータとなるものであるから、エンジンコントロールユニット12に必要な全ての制御用データを記憶する手段を有するものであるといえる。
それゆえ、以上の記載、及び、図面の記載からみて、引用例1には、
「エンジンを始動・停止する電気回路を組み込むエンジンコントロールユニット12と、前記エンジンコントロールユニット12と協働してエンジンの作動制御に供されるドライブパタンICカード2とを有し、前記ドライブパタンICカード2は、前記エンジンコントロールユニット12に必要な全ての制御用データを記憶可能な記憶手段を備えている自動車用制御装置」
という発明が記載されているものと認められる。
・周知文献;
「内燃機関の燃料供給量を制御するマイクロプロセッサを備えた自動車のエンジンキー装置において、この自動車の運転席に、上記マイクロプロセッサに接続された磁気カード読取装置が設けられ、この磁気カード読取装置に挿入されて読取が行われあらかじめその自動車に固有のキー情報が記録された磁気カードを備え、さらに、自動車には、上記マイクロプロセッサに接続され上記内燃機関の始動装置の電気回路を開閉するリレーを備え、上記固有のキー情報が記録された磁気カードが上記磁気カード読取装置に挿入されたときに上記電気回路を始動状態とするように構成されたことを特徴とするエンジンキー装置。」(第1頁左下欄第5〜17行)
「運転者がエンジンを始動するときに、磁気カード1を書込読取回路5に差込めば、CPU3は磁気カード1に記録されたキー情報とROM6の記憶内容を照合し、両者が一致すれば出力インタフェース14を介してリレー巻線15に電流を流す。これによりリレー17が閉じ負荷回路18に電流が流れ車両は始動状態となる。また車両が所定の走行を終了して運転者が磁気カード1を書込読取回路5から引抜けば、CPU3はリレー巻線15に流していた電流を切り、リレー17を開く。このとき磁気カード1には、書込読取回路5から引抜く直前の積算された走行距離および燃料残量がRAM7およびCPU3を介して書込読取回路5により書込まれ、記録される。」(第2頁左下欄第9行〜右下欄第2行)

【3】対比・判断
[対比]
そこで、請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)と上記引用例1に記載された発明とを対比すると、引用例1に記載された発明の「ドライブパタンICカード2」、「自動車」は、それぞれ、本願発明1の「カードキー」、「車両」に相当するものであるから、両者は、
「エンジンを始動・停止する電気回路を組み込むエンジンコントロールユニットと、前記エンジンコントロールユニットと協働してエンジンの作動制御に供されるカードキーと、を有し、前記カードキーは、前記エンジンコントロールユニットに必要な全ての制御用データを記憶可能な記憶手段を備える車両用制御装置」
で一致し、以下の各点(イ)〜(ホ)で相違している。
[相違点]
(イ)本願発明1のエンジンコントロールユニットは、車体フレームに設けられるものであるのに対して、引用例1に記載された発明は、そのようなものではない点。
(ロ)本願発明1のカードキーは、エンジンを自動的に始動状態にする機能を備えているのに対して、引用例1に記載された発明は、そのような機能を備えていない点。
(ハ)本願発明1の制御用データは、マップデータであるのに対して、引用例1に記載された発明は、マップデータかどうか、明らかでない点。
(ニ)本願発明1のカードキーは、エンジンコントロールユニットに予め記憶されている全ての制御用マップデータを記憶手段に記憶されている制御用マップデータに書き換えるためのデータ書き換え手段を備えているのに対して、引用例1に記載された発明は、そのような手段を備えるものであるのか、明らかでない点。
(ホ)本願発明1のエンジンコントロールユニットは、制御用マップデータが書き換えられた後に、該書き換えられた制御用マップデータに対応する表示に変更される表示部を備えるものであるのに対して、引用例1に記載された発明は、表示部を備えるものでない点。
[相違点の検討]
以下、前記各相違点(イ)〜(ホ)について検討する。
・相違点(イ)について;
自動二輪車において、車体フレームにエンジンを含むパワーユニットを保持することは、本願出願前、当業者にとって周知・慣用の技術事項である。
したがって、エンジンを制御するためのエンジンコントロールユニットを、エンジンと同様、車体フレームに設けることは、当業者が容易になし得るものと認められる。
・相違点(ロ)について;
磁気カードをカード読取装置に挿入することにより、エンジンを自動的に始動状態にすることは、周知文献に記載されている。
一方、引用例1記載の発明のカードキー(ドライブパタンICカード2)も、周知文献に記載された磁気カードと同様に、エンジンの始動前にカード読取装置14に挿入されるものであり、また、引用例1記載の発明のカードキーに、エンジンを自動的に始動状態にする機能を備えさせることを妨げる特段の事情があるものとも認められないから、引用例1記載の発明のカードキーに周知文献に記載された上記事項(発明)を適用し、もって、引用例1記載の発明のカードキーに、エンジンを自動的に始動状態にする機能を備えさせることは、当業者が容易になし得るものである。
・相違点(ハ)について;
ドライブパターンに応じたエンジンの制御用データにマップデータを用いることは、本願出願前、当業者にとって常套手段にすぎないから、相違点(ハ)は、当業者が必要に応じて適宜変更し得る程度の単なる設計事項にすぎない。
・相違点(ニ)について;
ICカードのよく知られた代表的なものとして、(本願発明1の実施例として示されているような)「非接触式」のICカードがあり、この非接触式ICカードが、データを記憶する記憶手段と、当該記憶手段に記憶された前記データをカード読取装置に送り出す手段を備えるものであることは、本願出願前、当業者にとって周知の技術事項である。
そして、コントロールユニットが外部データの読み取りを行う場合、外部データ読取装置から読みとられたデータは、CPU内で処理される形にデータ変換された後、CPU内の所定のデータ領域に格納され、その格納の結果、予め記憶されていたデータは当該読みとられたデータに取って換わられることとなり、結局、コントロールユニットに予め記憶されているが、データ処理に不要となるようなデータは、当該読みとられたデータに書き換えられるものであることは、当業者にとって技術常識である。
したがって、引用例1に記載された発明のICカードを、「非接触式」ICカードとなし、さらに、当該ICカードのデータを送り出す手段を、「エンジンコントロールユニットに予め記憶されている制御用データを記憶手段に記憶されている制御用データに書き換えるための手段」(データ書き換え手段)とすることは、当業者が容易になし得るものと認められる。
・相違点(ホ)について;
制御手段(コントロールユニット)が表示部を備え、ドライブパターンの選択により制御用データが切り換わった場合に、該表示部を前記切り換えられた制御用データに対応する表示とすることは、例えば、特開昭61-257324号公報、特開昭59-186742号公報、…等に記載されるように、本願出願前、当業者にとって周知の技術事項であるので、引用例1記載の発明に上記周知事項を適用し、もって、制御用データに対応する表示を行う表示部を備えるようにすることは、当業者が容易になし得ることである。
そして、この場合、上記表示部の制御用データに対応する表示は、カード読取装置に挿入されたカードキーの違いにより、換言すれば、書き換えられた制御用データの違いにより異なるものとなるから、結局、制御用データが書き換えられた後は、表示部は、該書き換えられた制御用データに対応する表示に変更されるものと認められる。
それゆえ、上記適用時に、表示部にカードキーの記憶部に記憶されている制御用データに対応する表示がなされるようにすることは、当業者が必要に応じて容易になし得るものと認められる。
したがって、引用例1記載の発明に上記周知事項を適用し、もって、引用例1記載の発明のエンジンコントロールユニットを、相違点(ホ)に係る本願発明1の構成のようにすることは、当業者が容易になし得ることである。
[効果について」
そして、本願発明1の構成によってもたらされる効果も、引用例1に記載された発明、周知文献に記載された発明及び上記周知事項から当業者であれば当然予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

【4】むすび
以上のとおりであって、本願発明1は、引用例1に記載された発明、周知文献に記載された発明及び上記周知事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものと認められるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-01-05 
結審通知日 2005-01-11 
審決日 2005-01-24 
出願番号 特願平5-292020
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F02D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 林 浩竹之内 秀明  
特許庁審判長 大橋 康史
特許庁審判官 清田 栄章
長谷川 一郎
発明の名称 車両用制御装置  
代理人 宮寺 利幸  
代理人 千葉 剛宏  
代理人 佐藤 辰彦  

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