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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B23Q
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 B23Q
管理番号 1113980
審判番号 不服2003-15020  
総通号数 65 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1996-08-06 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-08-05 
確定日 2005-03-17 
事件の表示 平成 7年特許願第 8126号「工作機械」拒絶査定不服審判事件〔平成 8年 8月 6日出願公開、特開平 8-197361〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成7年1月23日の出願であって、平成15年7月2日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月5日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年9月2日付で明細書を補正対象書類とする手続補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

2.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
2.1 補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「工作物を加工するための工具が着脱可能に先端に装着される主軸と、
前記工具を前記主軸にクランプするためのクランプ機構を備え前記主軸を水平面内の前記主軸の軸線回りに回転可能に軸承した主軸ヘッドと、
前記主軸ヘッドを前記主軸の軸線と平行な方向に進退可能に案内するスライダと、
前記スライダを前記主軸の軸線と直交する平面内で左右動可能かつ上下動可能に案内する案内手段とを備え、前記主軸に装着された前記工具を前記工作物に対して3次元方向に移動させて前記工作物を加工する工作機械において、固定側に設けられ、前記工具を着脱可能に把持する把持爪を周方向等角度間隔に複数配設した回転部材を前記主軸の軸線と平行な割出し軸線回りに回転割出しさせる工具マガジンを備え、工具交換時には、前記工具を把持していない空の前記把持爪を前記割出し軸線の下方の工具交換位置に割出し、前記主軸に装着された加工後の前記工具を前記工具交換位置の前記空の把持爪に把持させるように前記主軸ヘッドを移動させて加工後の前記工具を前記空の把持爪に把持させ、前記主軸ヘッドの前記クランプ装置をアンクランプして前記工具を前記主軸の前記先端から離脱可能とし、前記主軸ヘッドを後退させて前記工具を前記主軸の前記先端から離脱させ、前記把持爪に把持された次に使用する前記工具を前記工具交換位置に割出し、前記次に使用する工具を前記主軸の前記前端に挿入するように前記主軸ヘッドを前進させ、前記クランプ装置をクランプして前記次に使用する工具を前記主軸の前記先端に装着させることを特徴とする工作機械。」から、
「工作物を加工するための工具が着脱可能に先端に装着される主軸と、
前記工具を前記主軸にクランプするためのクランプ機構を備え前記主軸を水平面内の前記主軸の軸線回りに回転可能に軸承した主軸ヘッドと、
前記主軸ヘッドを前記主軸の軸線と平行な方向に進退可能に案内するスライダと、
前記スライダを前記主軸の軸線と直交する平面内で左右動可能かつ上下動可能に案内する案内支持手段と、
前記主軸の回転軸線と直交する平面内に設置され前記主軸ヘッドの左右動および上下動に連動して伸縮するXY可動カバーと、固定側に設けられ、前記工具を着脱可能に把持する把持爪を周方向等角度間隔に複数配設した回転部材を前記主軸の軸線と平行な割出し軸線回りに回転割出しさせる工具マガジンと、前記主軸が前記工作物を加工する加工領域と前記工具マガジン装置が収納されるマガジン領域との間を開閉可能に遮断するマガジンカバーとを備えたことを特徴とする工作機械。」に補正された。
なお、下線は、補正個所を明確化するために、当審で付したものである。

2.2 補正の適否の判断
上記補正は、以下の内容を含むものと認められる。
〈補正事項a〉「案内手段」を「案内支持手段」と補正する。
〈補正事項b〉請求項1に記載した発明の構成に不可欠の必要な事項である「工作機械」について、「前記主軸に装着された前記工具を前記工作物に対して3次元方向に移動させて前記工作物を加工する」という事項を削除する。
〈補正事項c〉請求項1に記載した発明の構成に不可欠である、「工具交換時には、前記工具を把持していない空の前記把持爪を前記割出し軸線の下方の工具交換位置に割出し、前記主軸に装着された加工後の前記工具を前記工具交換位置の前記空の把持爪に把持させるように前記主軸ヘッドを移動させて加工後の前記工具を前記空の把持爪に把持させ、前記主軸ヘッドの前記クランプ装置をアンクランプして前記工具を前記主軸の前記先端から離脱可能とし、前記主軸ヘッドを後退させて前記工具を前記主軸の前記先端から離脱させ、前記把持爪に把持された次に使用する前記工具を前記工具交換位置に割出し、前記次に使用する工具を前記主軸の前記前端に挿入するように前記主軸ヘッドを前進させ、前記クランプ装置をクランプして前記次に使用する工具を前記主軸の前記先端に装着させる」という事項を削除する。
〈補正事項d〉「前記主軸の回転軸線と直交する平面内に設置され前記主軸ヘッドの左右動および上下動に連動して伸縮するXY可動カバー」という事項を追加する。
〈補正事項e〉「前記主軸が前記工作物を加工する加工領域と前記工具マガジン装置が収納されるマガジン領域との間を開閉可能に遮断するマガジンカバー」という事項を追加する。

上記補正事項のうち、補正事項b及びcは、特許請求の範囲を減縮するものではなく、また、請求項の削除、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明のいずれにも該当しないから、本件補正は特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たさない。

2.3 むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明
本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成15年6月6日付の手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本件発明」という。)は、以下のとおりである。
「工作物を加工するための工具が着脱可能に先端に装着される主軸と、
前記工具を前記主軸にクランプするためのクランプ機構を備え前記主軸を水平面内の前記主軸の軸線回りに回転可能に軸承した主軸ヘッドと、
前記主軸ヘッドを前記主軸の軸線と平行な方向に進退可能に案内するスライダと、
前記スライダを前記主軸の軸線と直交する平面内で左右動可能かつ上下動可能に案内する案内手段とを備え、
前記主軸に装着された前記工具を前記工作物に対して3次元方向に移動させて前記工作物を加工する工作機械において、
固定側に設けられ、前記工具を着脱可能に把持する把持爪を周方向等角度間隔に複数配設した回転部材を前記主軸の軸線と平行な割出し軸線回りに回転割出しさせる工具マガジンを備え、
工具交換時には、前記工具を把持していない空の前記把持爪を前記割出し軸線の下方の工具交換位置に割出し、
前記主軸に装着された加工後の前記工具を前記工具交換位置の前記空の把持爪に把持させるように前記主軸ヘッドを移動させて加工後の前記工具を前記空の把持爪に把持させ、
前記主軸ヘッドの前記クランプ装置をアンクランプして前記工具を前記主軸の前記先端から離脱可能とし、
前記主軸ヘッドを後退させて前記工具を前記主軸の前記先端から離脱させ、
前記把持爪に把持された次に使用する前記工具を前記工具交換位置に割出し、
前記次に使用する工具を前記主軸の前記前端に挿入するように前記主軸ヘッドを前進させ、
前記クランプ装置をクランプして前記次に使用する工具を前記主軸の前記先端に装着させることを特徴とする工作機械。」

4.刊行物記載の発明(事項)
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に国内で頒布された刊行物である、特開平4-183544号公報(以下、「刊行物1」という。)及び特開昭57-144641号公報(以下、「刊行物2」という。)には、以下の事項が記載されていると認められる。

4.1 刊行物1
a.特許請求の範囲
「1 コラムに設けられた左右一対の上下方向案内部と、
その左右一対の上下方向案内部により案内され、前記コラムとの間に設けられた上下方向駆動装置によって上下方向に駆動されるサドルと、
そのサドルの前記一対の上下方向案内部の間の部分に設けられた前後方向に長い前後方向案内部と、
その前後方向案内部によって案内される比較的短い被案内部を有し、前記サドルとの間に設けられた前後方向駆動装置により前記左右一対の上下方向案内部の間を通って前後方向に駆動される主軸ヘッドと、
その主軸ヘッドに回転可能に支持され、一端に各種工具を着脱可能に装着する主軸と、を備えることを特徴とする工作機械。
2 前記主軸の回転軸線が、主軸ヘッドのサドルに対する被駆動方向と平行にされていることを特徴とする請求項1に記載された工作機械。
3 前記サドルが、前記主軸に装着される複数の工具を回転割り出し可能に装着する工具マガジンを搭載し、その工具マガジンと主軸との間の工具交換動作が、サドルと主軸との間の相対運動に基づいて行われるようにされていることを特徴とする請求項1または2に記載された工作機械。
4 前記工具マガジンの回転割り出しが、前記主軸の回転軸線と平行な軸を中心に行われるようにされていることを特徴とする請求項3に記載された工作機械。
5 前記コラムが、ベッドに対して移動可能とされており、その移動の方向が、前記主軸の回転軸線を含み前記サドルのコラムに対する被駆動方向に平行な平面に対して直交する軸線の方向とされていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかにに記載された工作機械。」
b.第3ページ右上欄第13〜17行
「主軸19の前端面には工具ホルダ40を装着するテーパ穴が設けられ、主軸19内に工具ホルダ40のプルスタッドを挟持し工具ホルダ40をクランプする公知の工具クランプ装置が組み込まれている。」
c.第3ページ右下欄第5行〜第4ページ左上欄第2行
「中空の主軸19内に工具ホルダ40のプルスタッドを挟持し工具ホルダ40をクランプする公知の工具クランプ装置のドローバーに結合されたピン24が、主軸19に形成された軸方向長穴25を挿通して両端部が水平方向に突出している。ピン24は主軸19を定位置停止した時に水平方向を向く。
そのピン24に係合するクランクレバー26が水平軸27により揺動自在に主軸ヘッド17に支承されている。第4図に示す様に、クランクレバー26の上方に延びる腕は二股に分かれて主軸19を挟む様にされ、その二股部によりピン24の両端を押圧できるようにされている。クランクレバー26の他方の腕の先端にはローラ28が回転自在に支持されている。そのローラ28に当接してローラ28を押し上げるための揺動体30が、水平軸29により揺動自在に主軸ヘッド17に支承されている。」
d.第1図及び第2図
水平面内に主軸の回転軸線を有する工作機械が示されている。

工具が工作物を加工するために使用されることは自明である。また、上記摘記事項中の「工具ホルダ」とは、本件発明でいう「工具」を指すものと認められる。
したがって、上記摘記事項aないしdからみて、刊行物1には、
「工作物を加工するための工具が着脱可能に先端に装着される主軸と、
前記工具を前記主軸にクランプするための工具クランプ装置を備え前記主軸を水平面内の前記主軸の軸線回りに回転可能に軸承した主軸ヘッドと、
前記主軸ヘッドを前記主軸の軸線と平行な方向に進退可能に案内するサドルと、
前記サドルを前記主軸の軸線と直交する平面内で上下動可能に案内するとともに、主軸の軸線と直交する平面内で左右動可能に案内されたコラムとを備え、
前記主軸に装着された前記工具を前記工作物に対して3次元方向に移動させて前記工作物を加工する工作機械において、
サドルに設けられ、回転部材を前記主軸の軸線と平行な割出し軸線回りに回転割出しさせる工具マガジン、を備えた工作機械。」
の発明(以下、「刊行物1記載の発明」という。)が記載されていると認められる。

4.2 刊行物2
a.第2ページ右上欄第2〜4行
「第1図、第2図において、ベース1上にはコラム2が垂直に載置されている。」
b.第3ページ左上欄第19行〜右上欄第3行
「一方、前記コラム2上面には枠体41が形成されている。該枠体41と該枠体41前面に固着された箱体42とに跨ってマガジン43の軸44が軸受45、46を介して回転自在に軸承されている。」
c.第4ページ左上欄第10行〜第5ページ左上欄第6行
「今、マガジン43は次工程で使用される工具を割出しており、ラム7が後退端にあり、主軸9にはまだ工具15が挿着されていない状態とする。
従って、第3図に示す通り主軸ラム7を支持した主軸頭4がモータ5の作用でコラム上昇端にあり、歯車39は歯車51と歯合している。
ラム7はモータ8の作用で、ボールスクリュー58、ナット59の螺合動作でマガジン43側に前進する。このときラム7の移動で歯車51に噛合していた歯車39はそのままの状態を保持しながら係合部材53に係合する。
また、前記ラム7の前進で位置決めピン54はスプリング55の弾発力でマガジン43の穴56に嵌入する。従って交換工具15は定角度に割出された主軸キー32に係合し、主軸9に挿着される。
更にシリンダ24の作用で押圧体23が後退すると、前記ドローバー19は皿ばね18の弾発力で後方に押圧され、ボールコレット20に嵌挿されている鋼球21が工具のプルスタッド22の溝部にくい込み、工具15を主軸9に強固に固定する。(第4図)
かくして、主軸9に工具が固着されると主軸頭は下降して工作物14の加工が実行される。
加工が終わると再び主軸頭4はモータ5の作動で上昇端まで上昇する。前記主軸頭4の上昇中に主軸9は緩動回転し、検出装置31による被検出部材30の検出で主軸キー32の角度位置決めを完了し停止する。またラム7は前進端にあるので、上昇端位置では前記主軸9に把持された使用済工具15がマガジン43の元の位置に挿入される。
前記主軸頭4の上昇端完了信号で主軸9内のドローバー19はシリンダ24の作用で押圧体23により前方に押し出される。
前記ドローバー19の皿ばねに抗する前進動作で、ボールコレット20とプルスタッド22の係合が解除され工具15は主軸9から開放される。
このとき、主軸9の後方にあるボールコレット20解除確認のリミットスイッチ28が押される。該リミットスイッチ28の完了信号でモータ8が作動し、前記ラム7は後退し、工具15は前記マガジン43の把持部に把持されたまま主軸9から離脱し、同時に位置決めピン54はマガジン43の穴から離脱する。(第3図)
このラム7の後退動作で係合部材53と係合していた歯車39はそのままの姿勢を保持しつつ移動し、定位置に割り出されている歯車51の歯と歯合する。
かくして、工具貯蔵マガジンは次の使用予定工具を工具交換位置に持ち来たすために、モータ10の作用で旋回する。
この場合、前述した通り、主軸9のキー32の位置は主軸1回転に対し、マガジン1ピッチ旋回になる様な構成になっている為、主軸9の角度位置は何回転しても交換位置に割出されたマガジン43の各々の把持工具のキー溝57と対応する。
即ち、マガジン43の単位回転角(隣り合う把持工具の間の回転角)に応じて1パルスの信号が出される。このパルス信号は計数装置にて計数されマガジンの回転角度に対応するパルス信号の数にて各工具の識別が行われる。
主軸9の回転で、前記主軸後方の被検出部材30が検出装置31でパルスカウントされ、次に使用される工具が呼び出されるとき主軸モータ10は停止する。従って、主軸モータ10の停止でマガジン43の割出し動作は完了する。
前記マガジン43の割出し動作が完了すると、再びラム7が前進し、次の使用予定工具は主軸9内に挿着され、以上前述した如く使用済み工具と次の使用予定工具との交換が行われる。
続いて、シリンダ24の作用で押圧体23が後退すると、主軸9に挿入された工具15は皿ばね18の弾発力で固着される。このリミットスイッチ28の完了信号で主軸頭4は再び下降し、工作物14の加工を始める。以下、前記動作は繰返される。」
d.第3図
マガジン43の軸44が主軸9の軸線と平行にあり、工具交換位置の把持部は軸44の下方に位置することが示されている。

上記摘記事項aから、コラム2がベース1上に固定されていることは明白であり、摘記事項bにより、マガジン43がコラム1上に設けられていることが示されているから、マガジンが固定側に設けられていることは明白である。また、ラム7に設けられたシリンダ24、押圧体23,ドローバー19及びボールコレット20は、工具15を主軸9にクランプするためのクランプ装置を形成していると認められる。
したがって、上記摘記事項aないしdからみて、刊行物2には、
「固定側に設けられ、工具を着脱可能に把持する把持部を周方向等角度間隔に複数配設した回転部材を主軸の軸線と平行な軸回りに回転割出しさせるマガジンを備え、
工具交換時には、前記工具を把持していない空の前記把持部を前記軸の下方の工具交換位置に割出し、
前記主軸に装着された加工後の前記工具を前記工具交換位置の前記空の把持部に把持させるようにラムを移動させて加工後の前記工具を前記空の把持部に把持させ、
前記ラムのクランプ装置をアンクランプして前記工具を前記主軸の前記先端から離脱可能とし、
前記ラムを後退させて前記工具を前記主軸の前記先端から離脱させ、
前記把持部に把持された次の使用予定工具を前記工具交換位置に割出し、
前記次の使用予定工具を前記主軸の前記前端に挿入するように前記ラムを前進させ、
前記クランプ装置をクランプして前記次の使用予定工具を前記主軸の前記先端に装着させる工作機械」(以下、「刊行物2記載の事項」という。)が記載されていると認められる。

5.対比
本件発明と刊行物1記載の発明とを比較すると、後者の「工具クランプ装置」及び「サドル」が、前者の「クランプ機構」及び「スライダ」に相当することは明白であり、また、後者では、サドルを主軸の軸線と直交する平面内で上下動可能に案内するコラムが左右動可能に案内されているから、「サドルを主軸の軸線と直交する平面内で左右動可能かつ上下動可能に案内する案内手段」を備えているというべきである。
したがって、刊行物1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「工作物を加工するための工具が着脱可能に先端に装着される主軸と、
前記工具を前記主軸にクランプするためのクランプ機構を備え前記主軸を水平面内の前記主軸の軸線回りに回転可能に軸承した主軸ヘッドと、
前記主軸ヘッドを前記主軸の軸線と平行な方向に進退可能に案内するスライダと、
前記スライダを前記主軸の軸線と直交する平面内で左右動可能かつ上下動可能に案内する案内手段とを備え、
前記主軸に装着された前記工具を前記工作物に対して3次元方向に移動させて前記工作物を加工する工作機械において、
スライダに設けられ、回転部材を前記主軸の軸線と平行な割出し軸線回りに回転割出しさせる工具マガジン、を備えた工作機械。」

してみると、両者の間には以下の一致点及び相違点が認められる。
〈一致点〉工作物を加工するための工具が着脱可能に先端に装着される主軸と、
前記工具を前記主軸にクランプするためのクランプ機構を備え前記主軸を水平面内の前記主軸の軸線回りに回転可能に軸承した主軸ヘッドと、
前記主軸ヘッドを前記主軸の軸線と平行な方向に進退可能に案内するスライダと、
前記スライダを前記主軸の軸線と直交する平面内で左右動可能かつ上下動可能に案内する案内手段とを備え、
前記主軸に装着された前記工具を前記工作物に対して3次元方向に移動させて前記工作物を加工する工作機械。
〈相違点〉工具マガジンが、前者では固定側に設けられ、かつ、「工具交換時には、前記工具を把持していない空の前記把持爪を前記割出し軸線の下方の工具交換位置に割出し、前記主軸に装着された加工後の前記工具を前記工具交換位置の前記空の把持爪に把持させるように前記主軸ヘッドを移動させて加工後の前記工具を前記空の把持爪に把持させ、前記主軸ヘッドの前記クランプ装置をアンクランプして前記工具を前記主軸の前記先端から離脱可能とし、前記主軸ヘッドを後退させて前記工具を前記主軸の前記先端から離脱させ、前記把持爪に把持された次に使用する前記工具を前記工具交換位置に割出し、前記次に使用する工具を前記主軸の前記前端に挿入するように前記主軸ヘッドを前進させ、前記クランプ装置をクランプして前記次に使用する工具を前記主軸の前記先端に装着させる」という動作を行うものであるのに対し、後者ではこのようなものでない点。

6.当審の判断
以下に、上記相違点について検討する。
刊行物2記載の事項の「把持部」、「軸」、「マガジン」、「ラム」及び「次の使用予定工具」が、本件発明の「把持爪」、「割出し軸線」、「工具マガジン」、「主軸ヘッド」及び「次に使用する工具」にそれぞれ相当することは明白であるから、刊行物2には、以下の事項が記載されていると認められる。
「固定側に設けられ、工具を着脱可能に把持する把持爪を周方向等角度間隔に複数配設した回転部材を主軸の軸線と平行な割出し軸線回りに回転割出しさせる工具マガジンを備え、
工具交換時には、前記工具を把持していない空の前記把持爪を前記軸の下方の工具交換位置に割出し、
前記主軸に装着された加工後の前記工具を前記工具交換位置の前記空の把持爪に把持させるように主軸ヘッドを移動させて加工後の前記工具を前記空の把持爪に把持させ、
前記主軸ヘッドのクランプ装置をアンクランプして前記工具を前記主軸の前記先端から離脱可能とし、
前記主軸ヘッドを後退させて前記工具を前記主軸の前記先端から離脱させ、
前記把持部に把持された次に使用する工具を前記工具交換位置に割出し、
前次に使用する工具記を前記主軸の前記前端に挿入するように前記主軸ヘッドを前進させ、
前記クランプ装置をクランプして前記次に使用する工具を前記主軸の前記先端に装着させる工作機械」

刊行物2記載の事項は、刊行物1記載の発明と同様の工作機械に係るものであるから、刊行物2記載の事項を刊行物1記載の発明に組み合わせて、工具マガジンの構成を本件発明のものとすることは、当業者が容易になし得る。
そして、本件発明の効果は、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項から、普通に予測されるものである。
したがって、本件発明は、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

7.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、請求項2ないし4に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-12-14 
結審通知日 2004-12-21 
審決日 2005-01-31 
出願番号 特願平7-8126
審決分類 P 1 8・ 572- Z (B23Q)
P 1 8・ 121- Z (B23Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岡野 卓也  
特許庁審判長 西川 恵雄
特許庁審判官 林 茂樹
豊原 邦雄
発明の名称 工作機械  

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