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審決分類 |
審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 G21B |
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管理番号 | 1114210 |
審判番号 | 不服2002-20198 |
総通号数 | 65 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1999-08-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-10-17 |
確定日 | 2005-03-24 |
事件の表示 | 平成10年特許願第28523号「核反応誘発方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年8月27日出願公開、特開平11-231081〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成10年2月10日の出願であって、平成14年9月10日付けで拒絶査定がなされ、平成14年10月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、平成14年11月18日付けで手続補正がなされ、その後、当審からの審尋に対し平成16年9月8日付けで回答書が提出され、さらに、平成16年12月9日に当庁において技術説明を主目的とした面接が行われたものである。 2.本願発明 本願の請求項1に係る発明は、平成14年11年18日付けの手続補正所によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める(以下、「本願発明」という。)。 「【請求項1】 パラジウム又はその合金或いは前記金属以外の水素を吸蔵するチタン等の金属又はその合金から形成された構造体の一方の側の重水素圧力を上げて前記構造体に重水素を吸蔵させ、前記構造体の他方の側を真空状態或いは重水素圧力が前記一方の側の重水素圧力に比較して相対的に低い状態に保持することにより、前記構造体の前記一方の側と他方の側とに重水素の濃度差を形成して前記構造体内の重水素を拡散させることを特徴とする核反応誘発方法。」 3.原査定の拒絶の理由のうち、記載不備に関する理由は次のとおりである。 A.この出願は、明細書及び図面の記載が下記の点で、特許法第36条第4項及び第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 記 a.本願発明は、請求項1に記載されたとおりの核反応誘発方法に係るものであって、発明の詳細な説明の記載からして、該核反応は、いわゆる常温核融合反応であると考えられる。しかしながら、電解溶液中で電気分解を行うことにより陰極電極内で常温核融合反応が生じるか否か自体、現在に至るまで、一般的な確証さえ得られておらず(必要であれば、例えば「常温核融合確認実験(第2報)」 日本原子力研究所JAERI-Mレポート-90-134(1990)を参照) 、本願明細書の発明の詳細な説明に記載されているX線または過剰熱の発生が、陰極電極内で生じた常温核融合反応に基づくものであると確認することはできない。 ただし、例えば、信頼し得る第3者の再現実験により確認された実験成績証明書により、本願明細書の発明の詳細な説明中の記載及び本願出願当時の技術水準に基づいて、この出願の各請求項に係る発明を容易に実施し得ること(本願にあっては、特に、常温核融合反応の反復再現性)を確認できる場合にはこの限りではない。 なお、いわゆる常温核融合の発生を証明するには、ヘリウムやトリチウム等の核融合生成物を検出するだけでなく、該検出がバックグラウンド、放射能汚染、環境からの侵入、検出器の電圧変動・温度変動等による影響を原因とするノイズの誤認でないことの確認が必要であり、また、その確認のための対照実験等も必要であることに留意されたい。 (実験成績証明書の作成に、この通知書に対する意見書の提出期間を越える期間が必要とされる場合には、意見書にその旨、並びに、作成に要する期間の目安を記載し、その後に、上申書によって実験成績証明書を提出されたい。) b.請求項1において、「構造体の一方の側の重水素圧力を上げて」とあるが、発明の詳細な説明を参照しても該圧力をどのようにして上げるのかが不明である。また、発明の詳細な説明において実施例として示されているものは電気分解装置を用いたもののみであり、それ以外の方法でどのようにして核反応が誘発されうるのかが不明である。 4.平成14年9月10日付け原査定では、「この出願については、平成14年5月16日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって、拒絶査定する。」とし、原査定の備考のうち、記載不備の点について、以下の点を指摘している。 「理由Aについて 補正後の請求項1において「電気分解を行うに際し・・・重水素圧力を上げて」なる記載は、重水素圧力をどのようにして上げているのかが未だ不明瞭である。」 5.請求人の主張 これに対し、請求人は、平成14年12月25日付けの審判請求書の手続補正書において、概略、以下の主張を行った。 (1)第三者による本願発明に関わる核反応の反復再現実験を実施する予定のところ、実験成績証明書の提出には約2年の期間が必要であるので、それまで上申書の提出を猶予願いたいこと。 (2)平成14年11月18日付けの手続補正書により、不明瞭な記載を削除したこと。 また、請求人は、平成16年9月8日に、本願発明の核反応の再現実験結果として参考文献1〜4を添付した回答書を提出し、概略、以下の主張を行った。 (3)本願発明に関わる核反応は、常温核融合とは異なり、凝集系核現象によるものと考えられること。 (4)この凝集系の核反応の再現性は、参考文献1(著者は、三菱重工業(株)の従業者)、参考文献2(著者は、大阪大学の研究者と三菱重工業(株)の従業者)、参考文献3(著者は、三菱重工業(株)の従業者)、及び参考文献4(著者は、三菱重工業(株)の従者業)の記載からも確かめられること。 さらに、請求人は、平成16年12月9日の当庁における面接で、概略、以下の主張を行った。 (5)本願発明に係る核反応は、実験結果から、D-D核反応型の常温核融合反応では説明がつかず、Cs→Pr等の元素変換による凝集系核反応に基づくものと考えられること。 6.当審の判断 (1)本願明細書によれば、本願発明に係る核反応装置は、LiOD重水溶液を電解溶液とし、陰極としてパラジウムを使用し、電気分解を行うと、パラジウム陰極の重水素勾配が高くなり、過剰熱が発生するというものである。しかしながら、請求人の主張する凝集系核反応のメカニズムは、Cs→PrまたはSr→Moのような元素変換に基づくものされているところ、本願明細書には、そのような元素変換についての説明及び凝集系核反応についてのメカニズムの説明はなされておらず、当業者が本願明細書に開示の核反応を追試、再現しようとしても、どのような元素変換物質を使用すればよいか、核反応装置のどの部分に元素変換物質を使用すればよいか、が不明であるから、結局、追試又は再現実験により、本願発明でいう核反応の発生を確認することは不可能に近いものである。 (2)請求人は参考文献1〜4を提示し、元素変換が確認されたと主張しているが、それらの文献に記載の核反応実験装置は、本願明細書に記載の電解溶液を使用した電気分解装置によるものではなく、また、元素変換物質を用いる等、本願明細書に開示のものと同じ実験条件とはいえないものである。したがって、参考文献1〜4の実験結果を参酌することはできない。 (3)さらに、参考文献1〜4の著者は、すべて、本願発明の出願人である三菱重工(株)の従業者を含むものであり、出願人と利害関係のない第三者による文献とはいえないものである。この点からも、参考文献1〜4に記載の実験結果が信頼性が高いものとすることはできない。 以上総合勘案すれば、本発明に係る「核反応誘発方法」が再現性があるものということはできず、かつ、本願発明の方法によって核反応が発生するという確証を得ることはできないものである。 7.むすび したがって、本件出願は、明細書及び図面の記載が、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないから、拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-01-18 |
結審通知日 | 2005-01-25 |
審決日 | 2005-02-07 |
出願番号 | 特願平10-28523 |
審決分類 |
P
1
8・
536-
Z
(G21B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 中塚 直樹、谷山 稔男 |
特許庁審判長 |
鹿股 俊雄 |
特許庁審判官 |
峰 祐治 上野 信 |
発明の名称 | 核反応誘発方法 |
代理人 | 曾我 道照 |
代理人 | 中村 礼 |
代理人 | 醍醐 美知子 |
代理人 | 武井 義一 |
代理人 | 梶並 順 |
代理人 | 曾我 道治 |