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審決分類 |
審判 全部申し立て 2項進歩性 H05K |
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管理番号 | 1114662 |
異議申立番号 | 異議2003-72469 |
総通号数 | 65 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許決定公報 |
発行日 | 1994-12-06 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2003-10-07 |
確定日 | 2005-04-04 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 特許第3393676号「多層セラミック回路基板の製造方法」の請求項1及び2に係る特許に対する特許異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 特許第3393676号の請求項1及び2に係る特許を維持する。 |
理由 |
第1.[事件の経緯と本件特許発明] 本件特許第3393676号(以下、「本件特許」という)は、平成5年5月31日に出願された特願平5-129543号の特許出願に係り、平成15年1月31日に設定登録されたところ(請求項の数2、特許公報発行日平成15年4月7日)、平成15年10月7日に、全請求項に関して特許異議の申立があったもので、当該特許異議の申立てに係る本件特許発明は、本件特許設定登録時の明細書における特許請求の範囲の請求項1及び2に記載された次のとおりのものと認める。 「【請求項1】ガラス-セラミックから成る複数の積層された絶縁層と、前記絶縁層間に配置された内部配線と、 前記異なる絶縁層間の内部配線を接続するためのビアホール導体とを含む多層セラミック回路基板の製造方法であって、 ガラス材料、セラミック材料、光硬化可能なモノマーを含むスリップ材を薄層化し、乾燥して絶縁層となる絶縁膜を形成する工程と、 前記絶縁膜に選択的な露光・現像を行い、ビアホール導体を形成する位置に貫通穴を形成する工程と、 前記貫通穴にビアホール導体となる導体部材を導電性ペーストの充填により形成するとともに、前記絶縁膜表面に光硬化可能なモノマーを含む導電性ペーストを印刷し、前記内部配線となる内部配線パターンを形成する工程と、 前記内部配線パターンを露光処理により硬化する工程と、 前記各工程を繰り返し、ビアホール導体となる導体部材を有する絶縁膜と内部配線パターンとを多層に積層した積層体を形成する工程と、 前記積層体を一体的に焼成する工程とから成り、 前記絶縁膜に選択的な露光現像により貫通穴を形成するにあたり、この貫通穴の下部に先の工程で形成した露光処理により硬化された内部配線パターンを露出させることを特徴とする多層セラミック回路基板の製造方法。 【請求項2】ガラス-セラミックから成る複数の積層された絶縁層と、前記絶縁層間に配置された内部配線と、前記異なる絶縁層間の内部配線を接続するためのランド電極、ビアホール導体とを含む多層セラミック回路基板の製造方法であって、 ガラス材料、セラミック材料、光硬化可能なモノマーを含むスリップ材を薄層化し、乾燥して絶縁層となる絶縁膜を形成する工程と、 前記絶縁膜に選択的な露光・現像を行い、ビアホール導体を形成する位置に貫通穴を形成する工程と、 前記貫通穴にビアホール導体となる導体部材を導体性ペーストの充填により形成するとともに、前記絶縁膜表面に導電性ペーストの印刷により、内部配線となる内部配線パターンを形成する工程と、 前記絶縁膜上に薄層化される絶縁膜の貫通穴形成部分に対応する位置に、光硬化可能なモノマーを含む導電性ペーストを印刷して、ランド電極となるランド電極パターンを形成して、露光処理により硬化する工程と、 前記各工程を繰り返し、ビアホール導体となる導体部材を有する絶縁膜と内部配線パターンとランド電極パターンとを多層に積層した積層体を形成する工程と、 前記積層体を一体的に焼成する工程とからなり、 前記絶縁膜に選択的な露光・現像により貫通穴を形成するにあたり、この貫通穴の下部に先の工程で形成した露光処理により硬化されたランド電極パターンを露出させることを特徴とする多層セラミック回路基板の製造方法。」(以下では、上記請求項1の発明を「本件発明1」といい、請求項2の発明を「本件発明2」という) 第2.[特許異議申立に係る証拠と申立理由の概要] 1.<証拠方法> 甲第1号証:特開平5-114531号公報 甲第2号証:特開平4-17394号公報 甲第3号証:特開平4-139894号公報 2.<申立理由の概要> 特許異議申立人は、上記の証拠をもとに、次のような主張をしている。 (1)本件発明1について 甲第1号証には、セラミック積層体部品の製造方法に関して、「感光性樹脂とセラミック粉末とを含有する基材ペーストで部品基体となるグリーンシート」を形成し、「所定の透光パターンを有するフォトマスキングによる光線照射で露光部を形成し、この露光部を現像除去して所定パターンの抜き穴をグリーンシートのシート面に形成」することや、「感光性樹脂を含有する導電材ペースト」で「グリーンシートのシート面に導電材シートを形成し、この導電材シートに」「フォトマスキングによる光線照射で異質材シートの露光部とほぼ同じパターンの露光部を形成し、その露光部を現像除去して」導電パターンを形成する手法に加えて、当該手法を、「抜き穴として相対的に小径のスルーホールを設け、そのスルーホールに充填される導電性材料でインダクタ部品のコイルパターン相互を接続し、或いはLC複合部品を形成」するときにも適用できる旨の記載があり、これらの記載は、本件発明1の基本的な構成を開示したものといえる。 そして、甲第2号証には、「ガラスセラミック」によって多層基板を製造する旨の記載がある。 したがって、本件発明1は、甲第1、2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 (2)本件発明2について また、甲第3号証には、多層セラミック基板に関して、「還元焼成した電極ランド」のさらにその上面に「銅ペーストを印刷し、焼成した表面電極ランド」を設ける旨の記載があるが、この記載は本件発明2の「ランド電極」に係る構成を示唆するものである。 したがって、本件発明1は、甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第3.[甲各号証の記載事項] 1.甲第1号証の主要な記載事項は次のイ〜ホのとおりである。 イ 「【産業上の利用分野】本発明は、主としてシート法を適用することによりセラミックグリーンシート並びに当該セラミックシートから形成されるセラミック多層基板,積層チップ部品を含むセラミック積層体部品を製造する方法に係り、詳しくはその製造過程でグリーンシートのシート内に導電性材料や他の材質の異なる異質材料を充填形成するのに適用される異質材部を有するセラミックグリーンシート並びにセラミック積層体部品の製造方法に関するものである。」(第2頁第2欄第9〜17行) ロ 「【実施例】このセラミックグリーンシート並びにセラミック積層体部品の製造方法は主としてシート法を適用し、後述する各工程から各グリーンシートを形成すると共に、当該グリーンシートの多層化でセラミック積層体部品を形成するのに適用されている。・・・このグリーンシートによる積層体自体から積層チップ部品を完成体として得る場合の他、その積層体を基板として他の電子部品を搭載するのに用いられるセラミック多層基板を形成するにも適用される。なお、積層チップ部品としては、磁性材単独による場合にはチップインダクタ、誘電材単独による場合にはコンデンサネットワーク、複合化部品にはLC複合フィルター等を挙げることができる。」(第4頁第5欄第28〜45行) ハ 「【0019】グリーンシート1は磁性材または誘電材のセラミック粉末と感光性樹脂とを含有する基材ペーストを用いて担持シートPのシート面に形成・・・されている。 【0020】このグリーンシート1を担持シートPのシート面に形成後、所定の透光パターンを有するフォトマスキング11をグリーンシート1のシート面に被せて光線の照射処理を行う。そのフォトマスキング11の透光パターンは後工程で形成される導電パターンの形状にほぼ対応する・・・その光線照射でグリーンシート1のシート面に露光部2aを形成し、この露光部2aを1-1-1トリクロロエタン・・・等で現像処理して除去乾燥することにより抜き穴2として形成する。その抜き穴2はフォトマスキング11による光線照射でフォトリソグラフィ法を適用することから、レーザ加工,パンチング加工に比べて高スピードで高精度に形成するようにできる。」(第4頁第6欄第7〜26行) ニ 「【0022】・・・グリーンシート1の・・・所定個所に電極部となる導電パターン4を形成する。この導電パターン4は導電性材料を含有する導電ペーストを用い、スクリーン印刷で形成するようにできる。・・・ 【0023】この導電パターン4はスクリーン印刷に代えて、抜き穴2・・・の形成工程と同様にフォトリソグラフィ法で形成するのが好ましい。図2は導電パターン4のフォトリソグラフィ法による成形工程を示すものであり、ここでは感光性樹脂を含有する同電材ペーストを用いて・・・グリーンシートのシート面に導電材シート4aを形成する。その導電材シート4aに対してはフォトマスキング13を被せ、光線照射による露光部4bを形成する。・・・その露光部bは同様に現像処理して除去し、・・・導電パターン4を形成できる。」(第4頁第6欄第48行〜第5頁第7欄第19行) ホ 「【0028】なお、上述した・・・工程を適用することにより抜き穴として相対的に小径のスルーホールを設け、そのスルーホールに充填される導電性材料でインダクタ部品のコイルパターン相互を接続し、或いはLC複合部品を形成するときに各電極相互を接続・・・するのにも適用することができる。」(第5頁第8欄第22〜30行) 2.甲第2号証には、「ガラスセラミック多層回路基板」に関して、ガラスセラミック材料に「感光性樹脂」を加えておき、ドライエッチングによって、導電ペースト充填用の穴あけ加工をする旨が記載されている。(第8頁右下欄第16行〜第9頁左上欄第9行参照) 3.更に、甲第3号証には、多層セラミック基板に「部品実装用の表面電極ランド」を設けることに関して、「上部最外層基板・・・の上面に酸化銅ペーストを印刷し、還元焼成した電極ランド、・・・さらにその電極ランド11の上面に銅ペーストを印刷し、焼成した表面電極ランド」を形成する旨の記載がある。(第1頁左下欄第10〜11行、第2頁右上欄第14行〜同左下欄第10行参照) 第4.[当審の判断<本件発明1について>] 1.発明の対比 (1)本件発明1の構成事項と、甲第1号証の記載事項とを対比する。 甲第1号証の上記イ〜ニで説明されている「セラミック積層体部品」の製造方法を、同じくホに記載されている「スルーホールに充填される導電性材料でインダクタ部品のコイルパターン相互を接続」したものや、「LC複合部品」等に適用した場合を想定すると、甲第1号証には、<セラミック系の材料から成る複数の積層された絶縁層と、前記絶縁層間に配置された内部配線と、前記異なる絶縁層間の内部配線を接続するためのビアホール導体とを含む多層セラミック回路基板の製造方法>を、実質上開示する記載があるといえる。 そして、甲第1号証(ハ)でいう「グリーンシート」は、「スリップ材を薄層化し、乾燥して絶縁層となる絶縁膜」となるものといえるところから、同ハの記載は<セラミック材料、感光性樹脂を含むスリップ材を薄層化し、乾燥して絶縁層となる絶縁膜を形成する工程>に加えて、<前記絶縁膜に選択的な露光・現像を行い、ビアホール導体を形成する位置に貫通穴を形成する工程>を開示したものと解しうる。他方、本件発明1でいう「光硬化可能なモノマー」は、<感光性樹脂>に包含されるものである。 また、甲第1号証では、上記ホにおいて、「スルーホールに充填される導電性材料」に言及し、ニにおいて「導電パターン4のフォトリソグラフィ法による成形工程・・・ここでは感光性樹脂を含有する同電材ペーストを用いて・・・グリーンシートのシート面に導電材シート4aを形成する」としているが、これらの記載は<貫通穴にビアホール導体となる導体部材を導電性ペーストの充填により形成するとともに、前記絶縁膜表面に感光性樹脂を含む導電性ペーストを用いて前記内部配線となる内部配線パターンを形成する工程>を開示したものと解しうる。 更に、同号証(イ)でいう「シート法」による場合であっても、<前記各工程を繰り返し、ビアホール導体となる導体部材を有する絶縁膜と内部配線パターンとを多層に積層した積層体を形成する工程>が含まれることが全く想定できないわけではないし、また、<積層体を一体的に焼成する工程>は当然含まれる。 (2)一致点と相違点 上記の対比から、本件発明1と甲第1号証記載の発明との一致点を次のとおりに認定できる。 【一致点】「セラミック系の材料から成る複数の積層された絶縁層と、前記絶縁層間に配置された内部配線と、前記異なる絶縁層間の内部配線を接続するためのビアホール導体とを含む多層セラミック回路基板の製造方法であって、 セラミック材料、感光性樹脂を含むスリップ材を薄層化し、乾燥して絶縁層となる絶縁膜を形成する工程と、 前記絶縁膜に選択的な露光・現像を行い、ビアホール導体を形成する位置に貫通穴を形成する工程と、 前記貫通穴にビアホール導体となる導体部材を導電性ペーストの充填により形成するとともに、前記絶縁膜表面に感光性樹脂を含む導電性ペーストを用いて前記内部配線となる内部配線パターンを形成する工程と、 前記各工程を繰り返し、ビアホール導体となる導体部材を有する絶縁膜と内部配線パターンとを多層に積層した積層体を形成する工程と、 前記積層体を一体的に焼成する工程とから成る 多層セラミック回路基板の製造方法」に係る発明といえる点。 一方、本件発明1と甲第1号証記載の発明との間には、次の相違があるといえる。 【相違点1】 本件発明1が「ガラス-セラミック」から成る絶縁層を形成するのに対して、甲第1号証には「ガラス材料」の使用について言及がない点。 【相違点2】 スリップ材及び導電性ペーストに含まれる感光性樹脂が、本件発明1では、いずれも「光硬化可能なモノマー」であって、露光部を残すもの(ネガ型)であるのに対して、甲第1号証記載の発明では「露光部2aを・・・現像処理して除去」としており、いずれも露光部を除去するもの(ポジ型)である点。 【相違点3】 本件発明1では、内部配線パターンを形成する工程が「光硬化可能なモノマーを含む導電性ペーストを印刷」することにより行われると共に、「前記内部配線パターンを露光処理により硬化する工程」を含み、更に「前記絶縁膜に選択的な露光現像により貫通穴を形成するにあたり、この貫通穴の下部に先の工程で形成した露光処理により硬化された内部配線パターンを露出させる」というものであるのに対して、甲第1号証記載の発明はこれらの要件を欠く点。 2.相違点の検討 (1)相違点1について 甲第2号証の「ガラスセラミック多層回路基板」に関する言及は、「ガラス-セラミック」から成る絶縁層を形成することを開示したものといえ、このような絶縁層を、甲第1号証記載の「セラミック積層体部品」に採用することは格別困難なことではない。 したがって、相違点1で指摘した本件発明1の構成は当業者が容易に想到できる設計事項といえる。 (2)相違点2について 当該技術分野においては、感光性樹脂として光硬化型のものも普通に採用されているとみられるところから、「光硬化可能なモノマー」の利用自体は特段想到しがたいこととはいえない。しかし、後述する相違点3との関係から、甲第1号証記載の発明において、感光性樹脂として「光硬化可能なモノマー」を採用することが必ずしも容易とはいえない。 (3)相違点3について 甲第1号証(ニ)には、「導電パターン4は導電性材料を含有する導電ペーストを用い、スクリーン印刷で形成するようにできる。・・・この導電パターン4はスクリーン印刷に代えて、・・・フォトリソグラフィ法で形成するのが好ましい。」という記載があるが、この記載は、内部配線パターンをスクリーン印刷で形成する場合に、<感光性樹脂を含む導電性ペースト>を使用することを開示あるいは示唆したものとはいえない。甲第1号証記載の発明ではポジ型の感光性樹脂を使用するため、当該樹脂を含む導電性ペーストで印刷した内部配線パターンを露光すると、分解されやすくなるという不都合を生じるからである。また、同様の理由で、「内部配線パターンを露光処理により硬化する工程」や、「前記絶縁膜に選択的な露光現像により貫通穴を形成するにあたり、この貫通穴の下部に先の工程で形成した露光処理により硬化された内部配線パターンを露出させる」ことはありえない。 したがって、相違点3で指摘した本件発明1の構成は、甲第1号証に開示又は示唆されたものとはいえず、これは甲第2号証以下についてみても同様である。 (4)作用効果との関係について 本件発明1は、「内部配線パターンを形成するにあたり、導電性ペーストの印刷、乾燥を行い、露光により硬化させる。次に、この内部配線パターンを覆うように・・・スリップ材を・・・塗布し、乾燥した後、貫通穴を形成すべく露光・現像した時に、貫通穴の除去の終了によって、貫通穴から露出する下層の内部配線パターンが現像液に触れても、当該内部配線パターンが光硬化されているため、現像液によって溶解することがなく、安定した内部配線パターンを存在させることができる」という作用効果を期するものである(【0016】参照)。 上記のような作用効果は、相違点3で指摘した本件発明1の構成が存在することによって、はじめて実現可能なものとなることは明らかであるが、上述のとおり、相違点3に係る構成を開示又は示唆するものはない。しかも、相違点3に係る構成をとるためには、相違点2に係る「光硬化可能なモノマー」の採用が必然の要件となるが、当該要件を欠く甲第1号証記載の発明において、相違点3に係る構成をとることは不可能である。 したがって、本件発明1を、上記の甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 第5.[当審の判断<本件発明2について>] 1.発明の対比 本件発明2と甲第1号証記載の発明とを対比すると、次のとおりの一致点と相違点が認められる。 【一致点】「セラミックから成る複数の積層された絶縁層と、前記絶縁層間に配置された内部配線と、前記異なる絶縁層間の内部配線を接続するためのビアホール導体とを含む多層セラミック回路基板の製造方法であって、 セラミック材料、感光性樹脂を含むスリップ材を薄層化し、乾燥して絶縁層となる絶縁膜を形成する工程と、 前記絶縁膜に選択的な露光・現像を行い、ビアホール導体を形成する位置に貫通穴を形成する工程と、 前記貫通穴にビアホール導体となる導体部材を導電性ペーストの充填により形成するとともに、前記絶縁膜表面に導電性ペーストの印刷により、内部配線となる内部配線パターンを形成する工程と、 前記各工程を繰り返し、ビアホール導体となる導体部材を有する絶縁膜と内部配線パターンとを多層に積層した積層体を形成する工程と、 前記積層体を一体的に焼成する工程とからなる 多層セラミック回路基板の製造方法」に係る発明といえる点。 【相違点1】 本件発明2が「ガラス-セラミック」から成る絶縁層を形成するのに対して、甲第1号証には「ガラス材料」の使用について言及がない点。 【相違点2】 スリップ材及び導電性ペーストに含まれる感光性樹脂が、本件発明2では、いずれも「光硬化可能なモノマー」であって、露光部を残すもの(ネガ型)であるのに対して、甲第1号証記載の発明では「露光部2aを・・・現像処理して除去」としており、いずれも露光部を除去するもの(ポジ型)である点。 【相違点3】 本件発明2は「異なる絶縁層間の内部配線を接続するためのランド電極」を設けるものであって、「前記絶縁膜上に薄層化される絶縁膜の貫通穴形成部分に対応する位置に、光硬化可能なモノマーを含む導電性ペーストを印刷して、ランド電極となるランド電極パターンを形成して、露光処理により硬化する工程」を備えると共に、「前記絶縁膜に選択的な露光・現像により貫通穴を形成するにあたり、この貫通穴の下部に先の工程で形成した露光処理により硬化されたランド電極パターンを露出させる」というものであるのに対して、甲第1号証記載の発明はこれらの要件を欠く点。 2.相違点の検討 (1)相違点1及び2について 上記本件発明2と甲第1号証記載の発明との間の相違点1及び2は、本件発明1と甲第1号証記載の発明との間の相違点1及び2と変わるところがなく、その評価についても、上述したところと基本的には同様である。 (2)相違点3について 特許異議申立人が指摘するとおり、甲第3号証では「電極ランド」について言及されており、これは本件発明2でいう「ランド電極」と同義の用語といえる。 しかし、甲第3号証記載のものは「部品実装用の表面電極ランド」であって、本件発明2でいう「異なる絶縁層間の内部配線を接続するためのランド電極」とは技術的な意義を異にするものである。また、本件発明2の「光硬化可能なモノマーを含む導電性ペーストを印刷して、ランド電極となるランド電極パターンを形成して、露光処理により硬化する工程」や、「前記絶縁膜に選択的な露光・現像により貫通穴を形成するにあたり、この貫通穴の下部に先の工程で形成した露光処理により硬化されたランド電極パターンを露出させる」ことについては、甲第1〜3号証のいずれにも、開示又は示唆するものがない。 (3)作用効果について 上記相違点3に係る構成によって、本件発明2では「ランド電極は、上述のように、導電性粉末、光硬化可能なモノマーを含む導電性ペーストで形成され、露光によって光硬化処理されているため、第1の発明と同様に、ランド導体膜の溶解がなく、内部配線となる導体膜にも悪影響を与えることがない。」「さらに、この貫通穴を形成する絶縁膜の厚みは、内部配線となる導体膜と、ランド電極とが重なり合う分だけ、薄くなるため、絶縁膜を露光した場合、少なくとも貫通穴を形成する部分(ランド導体を形成した部分に相当する部分)の絶縁膜の露光が確実に行われるため、未露光による光硬化の不充分さに起因する、現像時のオーバーエッチを抑えることができる。」という作用効果を奏しうる(【0018】〜【0019】参照)。 これに対して、甲第1〜3号証には、上記の作用効果についての言及がないというだけでなく、当該作用効果に係る技術課題についても言及や示唆がない。 したがって、本件発明2を、上記の甲第1〜3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。 第6.[むすび] 以上のとおりであるから、特許異議申立人の主張する理由と提出した証拠によっては、本件請求項1及び2に係る各本件特許を取り消すべきものとすることはできない。 また、他に上記各本件特許を取り消すべき理由も発見しない。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2005-03-17 |
出願番号 | 特願平5-129543 |
審決分類 |
P
1
651・
121-
Y
(H05K)
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最終処分 | 維持 |
特許庁審判長 |
神崎 潔 |
特許庁審判官 |
増岡 亘 鈴木 久雄 |
登録日 | 2003-01-31 |
登録番号 | 特許第3393676号(P3393676) |
権利者 | 京セラ株式会社 |
発明の名称 | 多層セラミック回路基板の製造方法 |