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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1115188
審判番号 不服2003-4043  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1998-09-11 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-03-13 
確定日 2005-04-04 
事件の表示 平成 9年特許願第 40635号「テレビジョン受像機」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 9月11日出願公開、特開平10-243359〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成9年2月25日の出願であって、平成15年2月3日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年3月13日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年3月18日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成15年3月18日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成15年3月18日付けの手続補正を却下する。
[理由]
[1]本件補正による特許請求の範囲についての補正
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、次のように補正された。(補正部分をアンダーラインで示す。)
「放送映像と番組予約のための文字情報を含む番組ガイドとをモニタに同時に表示するテレビジョン受像機において、
符号化された映像信号およびサブピクチャ信号を含むディジタル放送信号を受信する受信手段、
前記映像信号をデコードする第1デコード手段、
前記サブピクチャ信号をデコードする第2デコード手段、
前記第2デコード手段によってデコードされた前記サブピクチャ信号を所定の表示画面信号に合成して番組ガイド信号を生成する生成手段、
前記第1デコード手段によってデコードされた前記映像信号を圧縮する第1圧縮手段、
前記生成手段によって生成された番組ガイド信号を圧縮する第2圧縮手段、
前記第1圧縮手段および前記第2圧縮手段の出力を合成して前記モニタに出力する出力手段、
表示制御キー、
前記表示制御キーの操作に応答して前記第1圧縮手段を不能化し、非圧縮の前記映像信号を前記第1圧縮手段から出力させる圧縮制御手段、および
前記表示制御キーの操作に応答して前記非圧縮の映像信号のみを前記出力手段から出力させる出力制御手段を備えることを特徴とする、テレビジョン受像機。」
上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「番組ガイド」について「番組予約のための文字情報を含む」との限定を付加するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号で規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

[2]独立特許要件についての検討
そこで、本件補正後の上記請求項1に記載された発明(以下「本願補正発明」という)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に適合するか)について以下に検討する。

[2.1]引用例
原査定の拒絶理由に引用された特開平8-322000号公報(平成8年12月3日公開、以下「引用例」という)には、名称を「受信装置および受信方法」とする発明について次のことが記載されている。
(a)上記発明に係る受信装置は、文字多重放送用のデータである文字放送データが重畳されたテレビジョン放送信号を受信する受信装置であること(第2頁【請求項1】の1〜3行目)。
(b)上記文字多重放送では、文字や図形などが、テレビジョン放送信号の映像信号の垂直ブランキング期間に重畳されて放送され、例えばニュースや、天気予報、株価情報、テレビジョン放送による番組の案内、その他の様々な情報の提供が行われていること(第4頁の段落【段落0016】)。
(c)上記文字放送データは、受信時にバッファに一時記憶された後、表示画面構成部により読み出されて表示データに変換されるものであること(第7頁の段落【0048】)
(d)上記受信装置では、視聴者によるリモコン操作によって、モニタに、あるチャンネルのテレビジョン放送の番組と他のチャンネルの文字多重放送の番組でそれぞれ左画面または右画面が構成されるピクチャアンドピクチャの画面を表示したり、あるいは同一チャンネルのテレビジョン放送の番組と文字多重放送の番組でなるピクチャアンドピクチャの画面を表示したりできるようになされていること(第8頁の段落【0050】〜【0053】)。

[2.2]対比
[2.2.1]本願補正発明と引用例記載の発明(以下「引用発明」という)とを対比すると、
(A)両者は、いずれもテレビジョン受像機(引用発明でいう「テレビジョン放送の受信装置)を対象とするもので、本願補正発明では、該テレビジョン受像機が「放送映像と」「文字情報を含む番組ガイドとをモニタに同時表示する」ものであるとしているところ、引用発明の上記受信装置も、テレビジョン放送の番組(放送映像)と文字多重放送の番組とをモニタにピクチャアンドピクチャ画面(例えば左右に並べた2画面)として表示するものであり〔引用例の前掲記載(d)〕、上記文字多重放送の番組は例えばテレビジョン放送による番組の案内である〔同記載(b)〕というのであるから、本願補正発明と同様、“放送映像と文字情報を含む番組ガイドとをモニタに同時に表示する”ようにしたテレビジョン受像機を開示するものといえ、
(B)また、本願補正発明でいう「サブピクチャ信号」と引用発明での「文字放送データ」(文字多重放送用のデータ)とは、いずれもテレビジョンの放送信号中に映像信号と共に含まれる付加情報といえるもので、本願補正発明と引用発明のいずれにおいても上記付加情報から番組ガイド信号を生成しているといえることが明らかであるから〔後者については引用例の前掲記載(c)参照〕、この点を前提にすると、本願補正発明と引用発明とは、いずれも、上記放送映像と番組ガイドとの同時表示を行う上で、映像信号と付加情報を含む放送信号を受信し、付加情報から番組ガイド信号を生成し、上記映像信号と番組ガイド信号とを合成してモニタに出力するようにしたものといえ、したがって、これら(A),(B)の点で両者は基本的に一致し、両者の相違点は次の(i)〜(iv)の点であると認めることができる。
(i)上記モニタに表示される番組ガイドが、本願補正発明では「番組予約のための」ものであるのに対し、引用発明では特にそのようなものとはしていない点。
(ii)本願補正発明では、受信する放送信号が「ディジタル放送信号」で、これに含まれる映像信号が「符号化された映像信号」であり、これに伴い、「前記映像信号をデコードする第1デコード手段」を設けているのに対し、引用発明では、上記放送信号がディジタル放送信号ではなく、それ故、上記符号化映像信号をデコードする第1デコード手段は設けられておらず、また、本願補正発明では、前記付加情報が上記ディジタル放送信号に含まれる「サブピクチャ信号」であり、これに伴い、「前記サブピクチャ信号をデコードする第2デコード手段」を設け、「前記第2のデコード手段によってデコードされた前記サブピクチャ信号を所定の表示画面信号に合成して」前記番組ガイド信号の生成を行っているのに対し、引用発明では、上記付加情報は「文字放送データ」であり、それ故、上記のようなサブピクチャ信号をデコードする第2デコード手段は設けられておらず、また、同手段によりデコードされたサブピクチャ信号からの上記のような番組ガイド信号の生成はなされていない点。
(iii)本願補正発明では、「前記第1デコード手段でデコードされた前記映像信号を圧縮する第1圧縮手段」と「前記生成手段によって生成された番組ガイド信号を圧縮する第2圧縮手段」とを設け、前記映像信号と番組ガイド信号との合成が「前記第1圧縮手段および前記第2圧縮手段の出力を合成して」行われるようにしているのに対し、引用発明では、そのような第1,第2の圧縮手段については開示がなく、したがってまた、それら圧縮手段の出力の合成についても開示がない点。
(iv)本願補正発明では、「表示制御キー」と「前記表示制御キーの操作に応答して前記第1圧縮手段を不能化し、非圧縮の前記映像信号を前記第1圧縮手段から出力させる圧縮制御手段、および前記表示制御キーの操作に応答して前記非圧縮の映像信号のみを前記出力手段から出力させる出力制御手段」を設けているのに対し、引用発明では、そのような表示制御キー、圧縮制御手段、出力制御手段については開示がない点。

[2.3]判断
[2.3.1] そこで、以下上記相違点(i)〜(iv)について判断する。
[相違点(i)について]
本願補正発明でいう「番組予約のための」番組ガイドとは、明細書での説明をみても、番組予約のための特別のものが開示されているわけではないから、要は、放送予定の番組を前もって知り得る(その結果、番組の受信の予約が可能となる)番組ガイドをいうものと解されるところ、そのような番組ガイドは常套のもので、引用発明での番組ガイドも適宜そのようなものとなし得ることは明らかであるから、相違点(i)において本願補正発明が格別のものであるとすることはできない。
[相違点(ii)について]
ディジタル放送信号の受信や該放送信号中に含まれる付加情報を用いた番組ガイドの表示は、本願明細書でも従来技術として説明されているように周知の技術であるから(必要があれば特開平8-102922号公報等参照)、引用発明における受信放送信号やそれに含まれる付加情報(文字放送データ)をそのような周知の技術によるものとすることは当業者に想到容易な事項というべきであり、また、その際、本願補正発明のように、符号化映像信号を第1デコード手段でデコードすることや、上記付加情報をサブピクチャ信号として第2デコード手段でデコードし、前記番組ガイド信号の生成のために、上記デコードしたサブピクチャ信号を所定の表示画面に合成するようにすることは、受信放送信号やそれに含まれる付加情報を上記周知の技術によるものとする上での当然の事項もしくは一実施態様として当業者が適宜なし得た程度の事項にすぎないものと認められる。
[相違点(iii)について]
複数の画像をモニタに同時表示する上で、各画像信号を適宜圧縮(縮小)して合成することは常套技術であり、引用発明でも、放送映像と番組ガイドとをモニタに同時表示する〔例えば引用例の前掲記載(d)に示されるようにピクチャアンドピクチャ画面として左右に並べて表示する〕上で、映像信号と番組ガイド信号とを適宜圧縮して合成するようになし得ることは、特に明示がなくとも明らかであるから、相違点(iii)において本願補正発明が格別のものであるとすることはできない。
[相違点(iv)について]
相違点(iv)に係る本願補正発明の構成は、表示制御キーの操作に応答して映像信号のみを前記出力手段から出力させる、つまりモニタに同時表示されている番組ガイドを消去して映像のみを表示できるようにする点を要点とするものといえるところ、このような点は、テレビジョン受像機において、表示制御キーの操作に応じて主映像と同時表示されている副映像を消去して主映像のみの表示ができるようにすることが常套技術として普通に行われていることからすると、当業者が設計上適宜なし得た事項というべきものであり、また、そのようにする上で、本願補正発明では、「前記表示制御キーの操作に応答して前記第1圧縮手段を不能化し、非圧縮の前記映像信号を前記第1圧縮手段から出力させる圧縮制御手段」を用い、「非圧縮の」映像信号のみの表示が行われるようにしているが、上記同時表示のために圧縮されていた映像信号を同時表示の解除に伴って非圧縮とすることは当然に予測されることであり、また、上記圧縮制御手段の構成は、圧縮映像信号を非圧縮とする上で当業者が適宜採用すべき一実施態様というべきものであるから、本願補正発明が相違点(iv)に係る構成において格別のものであるとすることはできない。
[2.3.2]以上のように、相違点(i)〜(iv)に係る本願補正発明の構成は、いずれも当業者に想到し難い格別のものとはいえず、またこれら構成を総合的に考慮しても本願補正発明の構成に格別のものがあるとは認められず、その作用効果も、引用例に記載された発明および前記周知技術や常套技術から当業者に予測できる範囲のものである。
したがって、本願補正発明は、引用例に記載された発明及び周知技術や常套技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
[2.4]むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、平成15年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
[1]本願発明
平成15年3月18日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下これを「本願発明」という)は、平成11年12月14日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものである。
「放送映像および番組ガイドをモニタに同時に表示するテレビジョン受像機において、
符号化された映像信号およびサブピクチャ信号を含むディジタル放送信号を受信する受信手段、
前記映像信号をデコードする第1デコード手段、
前記サブピクチャ信号をデコードする第2デコード手段、
前記第2デコード手段によってデコードされた前記サブピクチャ信号を所定の表示画面信号に合成して番組ガイド信号を生成する生成手段、
前記第1デコード手段によってデコードされた前記映像信号を圧縮する第1圧縮手段、
前記生成手段によって生成された番組ガイド信号を圧縮する第2圧縮手段、
前記第1圧縮手段および前記第2圧縮手段の出力を合成して前記モニタに出力する出力手段、
表示制御キー、
前記表示制御キーの操作に応答して前記第1圧縮手段を不能化し、非圧縮の前記映像信号を前記第1圧縮手段から出力させる圧縮制御手段、および
前記表示制御キーの操作に応答して前記非圧縮の映像信号のみを前記出力手段から出力させる出力制御手段を備えることを特徴とする、テレビジョン受像機。」

[2]引用例
原査定の拒絶理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記2.[2][2.1]に記載したとおりである。

[3]対比・判断
本願発明は、前記2.[2]で検討した本願補正発明から前記「番組予約のための文字情報を含む」との番組ガイドについての限定事項を省いたものであるところ、上記限定事項を有する本願補正発明が、前記引用例及び周知技術や常套技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであることは前記2.[2][2.3]で判断したとおりであり、したがって、本願発明も、同様の理由により、前記引用例および周知技術や常套技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

[4]むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、引用例に記載された発明及び周知技術や常套技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-01-25 
結審通知日 2005-02-01 
審決日 2005-02-15 
出願番号 特願平9-40635
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04N)
P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 藤内 光武梅本 達雄  
特許庁審判長 原 光明
特許庁審判官 高瀬 勤
橋爪 正樹
発明の名称 テレビジョン受像機  
代理人 山田 義人  

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