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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 F16J
管理番号 1115219
審判番号 不服2002-17031  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2001-04-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-09-05 
確定日 2005-04-11 
事件の表示 平成11年特許願第296018号「ロッドレスシリンダのシール構造」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 4月27日出願公開、特開2001-116147〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
1.手続の経緯及び本願発明
本願は、平成11年10月18日の出願であって、その請求項1〜4に係る発明は、平成13年6月29日付け及び平成14年5月27日付け手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1〜4に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、その請求項4に係る発明(以下、「本願発明」という。)は次のとおりのものである。

「【請求項4】圧力流体給排口が穿設されたエンドカバーと、前記圧力流体給排口から供給される圧力流体によってピストンを内部空間に沿って往復動作させるシリンダチューブと、前記シリンダチューブの開口部と前記エンドカバーとを封止するシール部材を有するロッドレスシリンダにおいて、前記エンドカバーは、前記シリンダチューブの内面形状と相似するボス部の端面に段付部を設け、該段付部に前記シール部材が装着されることを特徴とするロッドレスシリンダのシール構造。」

2.刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平11-153104号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「ゴムダンパ」に関して、下記の事項が図面とともに記載されている。

(ア)「この発明は、シリンダチューブ内を移動するピストンが、そのストロークエンドで衝接して、停止時の衝撃を緩和するゴムダンパに関する。」(第2頁右欄第2行〜第4行参照)
(イ)「流体(空気)圧作動のロッドレスシリンダ1を示す図1〜2において、非磁性材料(例えばアルミニウム合金)を押出し、もしくは、引き抜き成形して成るチュ-ブ(シリンダチュ-ブ)2は、非円形(長円形)のシリンダ孔2aを有すると共に、その長手方向全長に亘って、開口部として例示するスリット3が形成してある。」(第3頁右欄第40行〜第46行参照)
(ウ)「エンドキャップ10のチュ-ブ2への嵌入軸部12は、チューブ2のシリンダ孔形状に一致した長円形状を成し、その先端部は、長円形状の細径部12Aとなっている。この先端部の内側には、所定深さで長円形断面の嵌め込み孔12aが形成してある。図4において、ピストン20の端部とピストンストロ-クエンドで衝接する内側のゴムダンパ70において、前記嵌入軸部12の嵌め込み孔12aに、嵌め込み孔12aの形状と一致する長円径の取付部71aがきっちり嵌合され、接着剤で固定される。その取付部71aより軸方向内側位置(図4で左方向)で、シリンダ孔2aより僅かに小さな長円形を成すフランジ71bは、長径方向中央部で接続壁部71cにより取付部71aに接続されて、前記取付部71aと共にゴムダンパ70の本体部71を構成する。接続壁部71cには、軸線方向に流体給排孔72が貫通され、エンドキャップ10の流体ポート15と連通孔15aを介して連通している。嵌め込み孔12aに取付部71aを嵌合すると、嵌入軸部12とゴムダンパ70のフランジ71bとの間にシリンダガスケット13を保持する保持溝16が形成される。」(第4頁右欄第25行〜第44行参照)
(エ)図1、図4等からみて、エンドキャップ10の嵌入軸部12の端面には段付部が設けられている。

以上の記載事項及び図面からみて、刊行物1には、下記の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

(引用発明)
流体給排孔が穿設されたエンドキャップと、前記流体給排孔から供給される圧流体によってピストンを内部空間に沿って往復動作させるシリンダチューブと、前記シリンダチューブの開口部と前記エンドキャップとを封止するシリンダガスケットを有するロッドレスシリンダにおいて、前記エンドキャップには、前記シリンダチューブの内面形状と相似する嵌入軸部の端面に段付部が設けられており、該段付部と、ピストンの端部とピストンストロークエンドで衝接する内側のゴムダンパのフランジ部との間にシリンダガスケットを保持する保持溝が形成される構造。

3.対比・判断
本願発明と引用発明とを対比すると、それぞれの有する機能に照らして、引用発明の「流体給排孔」は本願発明1の「圧力流体給排口」に相当し、以下同様に「エンドキャップ」は「エンドカバー」に、「圧流体」は「圧力流体」に、「シリンダガスケット」は「シール部材」に、「嵌入軸部」は「ボス部」にそれぞれ相当する。また、引用発明の「構造」も「ロッドレスシリンダのシール構造」に関するものである。
したがって、本願発明と引用発明は下記の一致点及び相違点を有する。

(一致点)
圧力流体給排口が穿設されたエンドカバーと、前記圧力流体給排口から供給される圧力流体によってピストンを内部空間に沿って往復動作させるシリンダチューブと、前記シリンダチューブの開口部と前記エンドカバーとを封止するシール部材を有するロッドレスシリンダにおいて、前記エンドカバーは、前記シリンダチューブの内面形状と相似するボス部の端面に段付部を設けたロッドレスシリンダのシール構造である点。

(相違点)
本願発明では、段付部にシール部材が装着されるのに対し、引用発明では、段付部と、ピストンの端部とピストンストロークエンドで衝接する内側のゴムダンパのフランジ部との間にシール部材を保持する保持溝が形成される点。

以下、上記相違点について検討するに、一般にシリンダ端部のシール部材保持構造においてシリンダ端部部材の端面に段付き部を設け、該段付き部にシール部材が装着される構成を採用することは、本願出願前当業者に周知の技術事項(原査定の拒絶の理由に引用された刊行物である実願昭48-091597号(実開昭50-035990号)のマイクロフィルム、特開昭54-062469号公報、実願昭54-000185号(実開昭55-100702号)のマイクロフィルム等を参照)にすぎないものである。
そして、上記周知の技術事項を引用発明のシール部材保持構造に適用することを阻害する事項は格別認めることができない。
そうすると、上記周知の技術事項を知り得た当業者であれば、引用発明の、段付部と、ピストンの端部とピストンストロークエンドで衝接する内側のゴムダンパのフランジ部との間にシール部材を保持する保持溝が形成される構成に替えて、単に段付部のみでシール部材が装着される構成とすることは、容易に想到できる程度のことであって、格別創意を要することではない。

また、本願発明の効果を検討しても、引用発明及び本願出願前周知の技術事項から、当業者が予測し得る範囲内のものであって、格別のものとはいえない。

4.むすび
したがって、本願の請求項4に係る発明(本願発明)は、刊行物1に記載された発明(引用発明)及び本願出願前周知の技術事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そして、本願の請求項4に係る発明が特許を受けることができないものである以上、本願の請求項1〜3に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-02-01 
結審通知日 2005-02-08 
審決日 2005-02-21 
出願番号 特願平11-296018
審決分類 P 1 8・ 121- Z (F16J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 窪田 治彦  
特許庁審判長 亀丸 広司
特許庁審判官 村本 佳史
町田 隆志
発明の名称 ロッドレスシリンダのシール構造  
代理人 宮寺 利幸  
代理人 千葉 剛宏  

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