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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F |
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管理番号 | 1115396 |
審判番号 | 不服2004-10462 |
総通号数 | 66 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 1996-11-01 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-05-19 |
確定日 | 2005-04-14 |
事件の表示 | 平成7年特許願第280984号「データ著作権管理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成8年11月1日出願公開、特開平8-287014〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明の要旨 本願は、平成7年10月27日(優先権主張平成6年10月27日)の出願であって、その請求項1に係る発明は、特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める(以下、「本願発明」という)。 「データを利用する端末装置、受信装置、記録装置、またはコンピュータ装置の内部に接続して用いられ、 第1秘密鍵及び第2秘密鍵を保存する手段と、 前記端末装置、受信装置、記録装置、またはコンピュータ装置から暗号化データの供給を受ける手段と、 前記暗号化データが前記端末装置、受信装置、記録装置、またはコンピュータ装置で利用される場合に、前記第1秘密鍵を用いて暗号化データを復号データに復号する手段と、 前記第2秘密鍵を用いてその利用されたデータを再暗号化データへ暗号化する再暗号化手段と から構成されることを特徴とするデータ著作権管理装置」 2.引用例 1)これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、特開平4-181282号公報(以下、「引用例1」という)には、次の事項が記載されている。 1-1)「回線暗号は通信する電子計算機同士が共通の暗号鍵を有し、この暗号鍵に従って回線に送出するデータを暗号化し、受信側は該暗号鍵により同様に復号化することになっている。 ファイル暗号はファイル対応にファイル鍵を生成し、この鍵に従ってファイル内データを暗号/復号化することになっている。 ある電子計算機上のデータを他の電子計算機のファイルに安全に格納するためには次の処理が必要である。まず、回線暗号手順を用いて作成元電子計算機と格納先電子計算機間で暗号通信を行い、データを安全に転送する。次に、ファイル暗号手順を用いて、データを暗号化してファイルに格納することとなる。」(第1頁右下欄左上欄14行目〜第2頁左上欄7行目) 1-2)「(1)回線上のデータ保護のために、ワークステーションからファイルサーバあるいはファイルサーバからワークステーションへのデータ送信の度に回線暗号を行い、また、ファイル保護のために、ファイルサーバにおいてファイルのデータの格納あるいはデータの読みだしの度にファイル暗号を行う必要がある。」(第2頁左上欄13〜19行目) したがってこれら記載事項によると、引用例1には、 「ファイルのデータを利用する電子計算機の内部に接続して用いられ、 回線暗号のための暗号鍵及びファイル暗号のためのファイル鍵を用いて、 前記電子計算機から暗号化データの供給を受ける手段と、 前記暗号化データが前記電子計算機に格納される場合に、前記回線暗号のための暗号鍵を用いて暗号化データを復号データに復号する手段と、 前記ファイル鍵を用いてその復号データを別の暗号化データへ暗号化する暗号化手段と から構成されるファイルのデータを暗号化する方式」 の発明(以下「引用例1に記載の発明」という)が記載されている。 2)また、原査定の拒絶の理由に引用された、情報処理学会研究報告、第93巻、第64号(93-IS-45-3)、1993年7月20日、社団法人情報処理学会、関一則他著「暗号を利用した新しいソフトウエア流通形態の提案」、p.19-28(以下、「引用例2」という)には、次の事項が記載されている。 2-1)「本システムでは、このようなコンセプトを実現するために、ソフトウェアは暗号化されて流通されるためにそのままの形では利用できないこととし、実行に際しては、その都度これを復号化することにより行う。ここで、復号に必要となる鍵をネットワークを介して提供者から得ることにより、ソフトウェアを利用する権利を与えられる。したがって、ユーザはネットワークを通して容易にソフトウェアを入手でき、復号鍵をレンタルすることにより利用に対する課金が実現される。」(第20頁右欄30〜38行目) 2-2)「2.2.7 ソフトウェア管理アーキテクチャ ソフトウェア管理アーキテクチャは、多くのソフトウェア著作権者から提供されたソフトウェアを管理するために必要となる。ソフトウェア管理アーキテクチャによって管理される情報は、暗号化された流通状態のソフトウェア、ソフトウェア暗号鍵、ソフトウェア識別番号、ソフトウェア著作権者の個人情報である。・・・(中略)・・・これらのソフトウェア暗号鍵、ソフトウェア識別番号、ソフトウェア著作権者の個人情報は、まとめてソフトウェア管理ファイルに保存される。」(第22頁右欄1〜14行目) 2-3)「ソフトウェアの暗号化 ソフトウェア著作権者によって流通されるソフトウェアが指定されると、鍵管理アーキテクチャによってこのソフトウェアの暗号に用いられるソフトウェア暗号鍵が生成される。」(第23頁右欄3〜6行目) 2-4)「本システムで流通される商品はソフトウェアに限らず基本的にはあらゆるデジタル情報を扱うことができる。そこで、我々は試作システムにおいてプログラムとしてのソフトウェア以外に一般で扱われているソフトと呼ばれるデジタル情報として、音声データ(例CDソフト)と画像データ(例ビデオソフト、LDソフト)の流通をサポートすることを試みた。」(第24頁右欄37行目〜第25頁左欄4行目) 2-5)「ソフトウェア著作権の保護 本システムではユーザ間でのコピーによって流通したソフトウェアが利用されても、ソフトウェア復号鍵の通信状況によってユーザに課金することで、著作権の保護を可能にする。」(第25頁右欄1〜4行目) したがってこれら記載事項から、引用例2には、「ソフトウェア暗号鍵を用いて暗号化されたソフトウェア(一般にソフトとして扱われているデジタル情報を含む)がネットワークを通して供給され、該ソフトウェア暗号鍵を用いて該暗号化されたソフトウェアを復号化して利用すると共に、該ソフトウェアの著作権を管理/保護する」技術が記載されている。 3.対比 そこで、本願発明(以下、「前者」という)と引用例1に記載の発明(以下、「後者」という)とを対比すると、 a)後者の「ファイルのデータ」が前者の「データ」に相当する。 b)「秘密鍵」が、暗号化のための鍵の一種であることは極めて周知のことであるから、「暗号鍵」に相当することは議論のないところ、後者の「回線暗号のための暗号鍵」と前者の「第1秘密鍵」とは、「第1の暗号鍵」という点で、また後者の「ファイル暗号のためのファイル鍵」と前者の「第2秘密鍵」とは、「第2の暗号鍵」という点で、それぞれ共通する。 c)後者の「電子計算機」が、端末装置、受信装置、記録装置またはコンピュータ装置を包含するものであることは自明であることから、後者の「電子計算機」が前者の「端末装置、受信装置、記録装置、またはコンピュータ装置」に相当する。 d)後者において用いられる「回線暗号のための暗号鍵及びファイル暗号のためのファイル鍵」が、何らかの形で保存されていることは自明であることから、後者においても、「回線暗号のための暗号鍵及びファイル暗号のためのファイル鍵を保存する手段」を有していることは明白である。 e)後者における「暗号化データが前記電子計算機に格納される」ことと、前者における「暗号化データが前記端末装置、受信装置、記録装置、またはコンピュータ装置で利用される」こととは、共に当該暗号化データが端末装置、受信装置、記録装置、またはコンピュータ装置で処理される点において共通する。 f)後者の「前記ファイル鍵を用いてその復号データを別の暗号化データへ暗号化する」ことは、換言すれば、「第1の暗号鍵」とは別の「第2の暗号鍵を用いて」、「その復号データを再暗号化データへ暗号化する」ことと同義であるから、後者の「前記ファイル鍵を用いてその復号データを別の暗号化データへ暗号化する暗号化手段」は、前者の「第2秘密鍵を用いてその復号データを再暗号化データへ暗号化する再暗号化手段」に相当する。 g)後者においても、ファイルのデータを暗号化して当該データを管理する装置を構成していることは明白である。 したがって、両者は、 「データを利用する端末装置、受信装置、記録装置、またはコンピュータ装置の内部に接続して用いられ、 第1の暗号鍵及び第2の暗号鍵を保存する手段と、 前記端末装置、受信装置、記録装置、またはコンピュータ装置から暗号化データの供給を受ける手段と、 前記暗号化データが前記端末装置、受信装置、記録装置、またはコンピュータ装置で処理される場合に、前記第1の暗号鍵を用いて暗号化データを復号データに復号する手段と、 前記第2の暗号鍵を用いてその処理された復号データを再暗号化データへ暗号化する再暗号化手段と から構成されるデータ管理装置」 である点において一致し、次の点で相違する。 i)「データ」について、前者では、その発明の詳細な説明を参酌すれば広く「デジタルデータ」を対象としているのに対し、後者では、「ファイルのデータ」として記載されているのみで対象が明らかにされていない点。 ii)「第1の暗号鍵及び第2の暗号鍵」が、前者では、「第1秘密鍵及び第2秘密鍵」であるのに対し、後者では、「回線暗号のための暗号鍵及びファイル暗号のためのファイル鍵」である点。 iii)「暗号化データが」「復号データ」に「復号」され、更に該「復号データ」が「再暗号化」される場合となる、「端末装置、受信装置、記録装置、またはコンピュータ装置で処理される」態様が、前者では「利用される場合」であるのに対し、後者では「格納される場合」であって当該復号データのユーザによる利用について明示されていない点。 iv)前者は「データ著作権管理装置」であるのに対し、後者はデータの著作権を管理するものであるか明示されていない点。 4.相違点に対する判断 次に、これら相違点について以下に検討する。 (イ)相違点i)及び相違点iv)について 上記2.2)で示した通り、一般にソフトとして扱われているデジタル情報を含むソフトウェアを、暗号鍵を用いて暗号化してネットワークを通してユーザに供給し、ユーザにおいて該暗号鍵を用いて該ソフトウェアを復号化して利用すると共に、該ソフトウェアの著作権を管理/保護する技術は、引用例2に記載のようによく知られた技術であるから、引用例1に記載の発明に引用例2に記載の技術を適用して、その「ファイルのデータ」の対象を、ソフトとして扱われているデジタル情報を含むソフトウェアとすると共に、該ソフトウェアの著作権を管理することは、当業者が容易に想到し得る事項であり、当該各相違点は格別のものではない。 (ロ)相違点ii)について 「秘密鍵」が、暗号の技術分野において周知慣用技術である「公開鍵暗号方式」で用いられる暗号鍵の1種であることは周知であるから、引用例1に記載の発明において、「回線暗号のための暗号鍵」として「第1秘密鍵」、及び、「ファイル暗号のためのファイル鍵」として「第2秘密鍵」、それぞれを採用することは、当業者が適宜に採用し得る設計的事項に過ぎず、当該相違点は何ら格別のものではない。 (ハ)相違点iii)について 引用例1に記載の発明では、ファイルのデータの伝送(通信)時に暗号化し受信側で一旦復号化し、次に、該ファイル格納時に別の暗号鍵(ファイル鍵)にて暗号化していることから鑑みれば、該データの受信後から格納までの間に、該データの利用(例えば該データの参照といった行為)がなされることは、当業者ならば当然想定されてしかるべきところ、引用例1には、その点の明示又は示唆は認められない。しかしながら、一旦復号化されたデータをユーザの利用を介して再暗号化することは、例えば、特開昭59-169000号公報(特公昭62-42304号)の第5頁4〜17行目に「要求されるファイル#XはキーコードK0を使用して、従来の方法で脱暗号化され、明確な文章にて、呼出しデータ29を提供することができる。次いで、データは販売、預金、引出し等のようなデータ使用による処理を反映する新しいデータ変更を伴って、もしくは伴わずに、記憶手段に戻され、新しいキーコードK1を使用して、暗号化形態にて再記憶される。これは、キーコード発生装置23を設定器38により再設定し、暗号化モジュール21にキーコードK1を供給し、変更された或いはされないデータ33をモジュール21内でキーコードK1と共に暗号化を行なうことにより行われ得る。」と記載されているように、当該技術分野において周知の技術に他ならない。 してみれば、引用例1に記載の発明及び上述した周知の技術から、本願発明のように、一旦復号化されユーザに利用されたデータを再暗号化することは、当業者ならば容易に想到し得るものであり、当該相違点は格別のものとは認められない。 そして、本願発明の作用効果も、引用例1、引用例2及び上述した周知の技術から当業者が予測できる範囲のものである。 5.むすび したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明、引用例2に記載の技術、及び、上述した周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-02-09 |
結審通知日 | 2005-02-15 |
審決日 | 2005-02-28 |
出願番号 | 特願平7-280984 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G06F)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 宮司 卓佳 |
特許庁審判長 |
岩崎 伸二 |
特許庁審判官 |
須原 宏光 篠原 功一 |
発明の名称 | データ著作権管理装置 |
代理人 | 遠山 勉 |
代理人 | 永田 豊 |
代理人 | 川口 嘉之 |
代理人 | 松倉 秀実 |