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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B21D 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B21D |
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管理番号 | 1115517 |
審判番号 | 不服2002-25297 |
総通号数 | 66 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2001-08-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2002-12-13 |
確定日 | 2005-04-18 |
事件の表示 | 特願2000-44189「圧力調整型プレス機」拒絶査定不服審判事件〔平成13年8月28日出願公開、特開2001-232430〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本件出願は、平成12年2月22日の特許出願であって、同14年8月27日付で拒絶の理由が通知され、その指定期間内の同年10月7日に意見書と共に明細書について手続補正書が提出されたが、同年11月12日付で拒絶をすべき旨の査定がされ、同年12月16日に本件審判の請求がされると共に明細書について再度手続補正書が提出されたものである。 第2 平成14年12月16日受付の補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成14年12月16日受付の補正を却下する。 [理由] 1 補正の内容の概要 本件補正は、特許請求の範囲を含む明細書全体について補正するものであって、 特許請求の範囲の請求項1について補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。 (1)補正前の請求項1 「パンチホルダに複数のパンチを備え、またダイホルダに複数のカウンタを備えてなるトランスファプレス、プレス等のプレス機において、 前記複数のパンチ及び複数のカウンタに、複数のノックアウトピンの復帰を司るバネと、複数のパンチ及び複数のカウンタの降下・上昇を司る圧力調整部をそれぞれ個別に設け、この各圧力調整部を個別に圧力調整し、前記複数のパンチ及び複数のカウンタの動作時の圧力を調整可能とした構成の圧力調整型プレス機。」 (2)補正後の請求項1 「パンチホルダに複数のパンチを備え、またダイホルダに複数のカウンタを備えてなるトランスファプレス、プレス等のプレス機において、 前記複数のパンチ及び複数のカウンタに、複数のノックアウトピンの復帰を司るバネと、複数のパンチ及び複数のカウンタの降下・上昇を司る圧力調整部をそれぞれ個別に設け、この各圧力調整部を個別に圧力調整し、前記複数のパンチ及び複数のカウンタの動作時の圧力を、個別に調整可能とした構成の圧力調整型プレス機。」 2 補正の適否 本件補正のうち特許請求の範囲の請求項1についての補正は、複数のパンチ及び複数のカウンタの動作時の圧力を「個別に調整可能とした」ことを限定するものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とすることが明らかであるので、さらに補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否かについて検討する。 (1)補正発明 補正発明は、本件補正により全文補正された明細書及び願書に最初に添付した図面の記載からみて、1(2)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの「圧力調整型プレス機」であると認める。 (2)引用例 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である特開平9-262699号公報(以下「引用例」という。)には、以下の事項が記載されている。 ア「【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、例えば被加工材に打抜き、曲げ絞り等の加工を行う場合に、1組の装置の中で各工程の加工を行い、順次次の工程に被加工材をピッチ送りして加工を追加して進め、最終工程で加工を完了させる順送り加工装置に関するものであり、特に加工速度が速いと共に、曲げ絞り等の加工精度を確保することができ、かつ加工に伴う偏荷重に対してもバランスが保持できるように構成した順送り加工装置に関するものである。」 イ「【0020】 【発明の実施の形態】図1および図2は各々本発明の第1の実施の形態を示す一部断面要部正面図および要部側面図である。図1および図2において、11はスライドであり、機械プレスのクランク軸および連結棒(何れも図示せず)を介して駆動され、ガイド12に沿って上下動可能に形成されている。次に13はダイセットであり、機械プレスのテーブル14上にボルスター15を介して取付けられている。 【0021】次にダイセット13は、例えば基板16に設けられたガイド17を介して上板18を上下平行移動可能に取付けられて構成され、かつ上板18は例えばガイド17に介装されたばね(図示せず)により、上方に付勢されるように形成する。19は加工ユニットであり、後述するように形成され、ダイセット13内に被加工材20の送り方向(図1における矢印方向)に、mP(mは任意の正の整数、Pは被加工材20の送りピッチ)の間隔に配設されている。21は送り装置であり、例えばテーブル14に設けられたブラケット22上に設けられ、前記被加工材20を送りピッチP宛間欠的に給送可能に構成されている。 【0022】図3および図4は各々図1および図2における加工ユニット19およびその近傍を示す要部断面拡大図であり、同一部分は前記図1および図2と同一の参照符号で示す。図3および図4において、加工ユニット19は、例えばパンチユニット23とダイユニット24とによって構成され、パンチ25がダイ26に係脱可能に形成される。 【0023】次に27は油圧シリンダであり、ダイセット13の上板18内に設けられ、この油圧シリンダ27内にはピストン28が上下動可能に介装される。そして前記パンチユニット23は、ピストン28の下方に一体に固着された取付板29に取付けられ、一方ダイユニット24はダイセット13の基板16に取付けられる。30はガイドであり、取付板29の回動を防止し、ピストン28と共に円滑な上下動を確保するためのものである。 【0024】31,32は各々給油管および排油管であり、油圧シリンダ27の上方に開口するように設けられ、ピストン28の上方への作動油の供給および排出を行うものである。また33は給排油管であり、油圧シリンダ27の下方に開口するように設けられ、ピストン28の下方への作動油の供給排出を行うものである。なお上記給油管31、排油管32および給排油管33を含む油圧回路については後述する。」 ウ「【0026】図5は本発明の第1の実施の形態における油圧回路の例を示す説明図であり、同一部分は前記図3および図4と同一の参照符号で示す。図5において、41は油圧ポンプであり、電動機42によって駆動され、電磁操作弁43,44および逆止弁45等を介して、所定圧力の作動油を油圧シリンダ27に圧送し得るように管路を配設する。46はタンクであり、管路から排出された作動油を収容するためのものである。 【0027】次に排油管32には逆止弁47と、並列に設けられた電磁操作弁48とリリーフ減圧弁49とを接続し、油圧シリンダ27内におけるピストン28上方の作動油を、タンク46へ圧力制御状態で排出可能に形成する。なお図5においては油圧シリンダ27の1個のみについて詳細に示してあるが、他の油圧シリンダ27についても同様の管路構成とする。」 エ「【0030】図3ないし図5において、スライド11の作動前にはピストン28上方の油圧シリンダ27内に油圧ポンプ41からの所定圧力の作動油が供給されており、ピストン28は油圧シリンダ27の最下端に位置している。この状態で機械プレスを作動させてスライド11を下降させると、スライド11はダイセット13の上板18に当接し、次いで上板18を連動状態で下降させるから、加工ユニット19により、被加工材20に例えばパンチ25とダイ26を介して穴明け加工を行うことができるのである。 【0031】この場合、加工ユニット19が曲げ加工または絞り加工を行うものにあっては、パンチユニット23とダイユニット24との係合状態、すなわちパンチユニット23の下方端とダイユニット24との当接若しくは作動状態が所定時間継続することが、曲げ加工または絞り加工の精度を向上させる上で好ましい。 【0032】本発明においては、上記の状態を実現するために、パンチユニット23の下方端とダイユニット24とが作動状態となってもなおスライド11が若干下降するように、その下死点を予め調整しておく。このような調整により、パンチユニット23の下方端がダイユニット24と当接した後においてもダイセット13の上板18が更に下降するため、油圧シリンダ27内の作動油の圧力が上昇する。 【0033】この場合、電磁操作弁44は上方に作動するように切換えられ、ピストン28の下方の油圧シリンダ27に作動油が供給される。なおピストン28の上方の作動油は逆止弁45により逆流が阻止されている。 【0034】上記のように油圧シリンダ27内の油圧が所定圧力以上になると、図5においてリリーフ減圧弁49が作動し、油圧シリンダ27内の作動油の一部が排油管32および逆止弁47を介してタンク46内に排出し、油圧シリンダ27の下降を許容すると共に、油圧シリンダ27内の作動油の油圧を所定圧力に保持する。従って加工ユニット19におけるパンチユニット23は、所定の作動荷重の下で係合状態のまま加工を継続することができるのである。 【0035】加工ユニット19における所定の加工終了後において、図3および図4に示すスライド11が上昇すると、ダイセット13の上板18もガイド17に介装されたばね(図示せず)の付勢力によって上昇する。これにより図5における油圧シリンダ27内の作動油の油圧が低下するから、電磁操作弁44が復帰し、油圧ポンプ41からの作動油が電磁操作弁44、逆止弁45および給油管31を介して油圧シリンダ27内に供給され、ピストン28は最初の状態に復帰する。 【0036】上記のような油圧シリンダ27内のピストン28による定圧作動作用は、他の油圧シリンダ27,27・・・についても同様である。この場合において、夫々の油圧シリンダ27が作動すべき圧力を異なるように設定することもできる。すなわち排油管32に設けられた逆止弁47により、他の油圧シリンダ27の排油が当該油圧シリンダ27内に供給されるのを防止している。」 これらの記載事項を、特に段落【0036】に「夫々の油圧シリンダ27が作動すべき圧力を異なるように設定することもできる」と記載されているを考慮に入れて、補正発明に照らして整理すると引用例には以下の発明が記載されていると認めることができる。 上板18に複数のパンチ25を備え、また基板16に複数のダイ26を備えてなるプレス機において、 前記複数のパンチ25に、複数のパンチ25の降下・上昇を司るシリンダ27、ピストン28、及びリリーフ減圧弁49を含む油圧回路からなる圧力調整部を個別に設け、この各圧力調整部を個別に圧力調整し、前記複数のパンチ25の動作時の圧力を、個別に調整可能とした構成の圧力調整型プレス機。 (3)対比 補正発明と引用例記載の発明とを対比すると、引用例記載の発明の「上板18」、「基板16」及び「ダイ26」が、それぞれ補正発明の「パンチホルダ」、「ダイホルダ」及び「カウンタ」に相当する。 したがって、補正発明と引用例記載の発明とは、次の点で一致しているということができる。 パンチホルダに複数のパンチを備え、またダイホルダに複数のカウンタを備えてなるプレス機において、 前記複数のパンチに、複数のパンチの降下・上昇を司る圧力調整部を個別に設け、この各圧力調整部を個別に圧力調整し、前記複数のパンチの動作時の圧力を、個別に調整可能とした構成の圧力調整型プレス機、である点。 そして、補正発明と引用例記載の発明とは、次の2点で相違している。 ア 相違点1 補正発明では、複数のパンチ及び複数のカウンタに、複数のノックアウトピンの復帰を司るバネを個別に設けているのに対して、引用例記載の発明では、そのようになっていない点。 イ 相違点2 補正発明では、複数のパンチだけでなく複数のカウンタにも、複数のカウンタの降下・上昇を司る圧力調整部を個別に設け、この各圧力調整部を個別に圧力調整し、前記複数のカウンタの動作時の圧力を、個別に調整可能としているのに対して、引用例記載の発明では、そのようになっていない点。 (4)相違点の検討 ア 相違点1について プレス機において、パンチ及びカウンタに、ノックアウトピンの復帰を司るバネを設けることは、原査定の際にも指摘しているように従来周知であり(周知例として挙げられている特開平5-237576号、特開平8-47736号公報、特開平9-24427号公報を参照のこと。)、この従来周知の事項を引用例記載の発明に適用して補正発明のように構成することに格別の困難性はない。 イ 相違点2について プレス機において、複数のカウンタに、複数のカウンタの降下・上昇を司る圧力調整部を個別に設け、この各圧力調整部を個別に圧力調整し、前記複数のカウンタの動作時の圧力を、個別に調整可能とすることも、原査定の際に指摘しているように従来周知であり(周知例として挙げられている特開昭55-14227号公報、実願昭63-37809号(実開平1-139927号)のマイクロフィルムを参照のこと。)、この従来周知の事項を引用例記載の発明に適用して補正発明のように構成することに格別の困難性はない。 ウ 補正発明の効果について 補正発明によってもたらされる効果も、引用例記載の発明及び上記従来周知の各事項から当業者であれば予測できる程度のものであって格別のものではない。 エ したがって、補正発明は、引用例記載の発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 むすび 以上のとおり、本件補正は、平成15年法律第47号による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、その余の補正の要件について検討するまでもなく、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本件発明について 1 本件発明 平成14年12月16日受付の補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項に係る発明は、平成14年10月7日付手続補正書により全文補正された明細書及び願書に最初に添付した図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項3に記載されたとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、第2の1(1)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの「圧力調整型プレス機」であると認める。 2 引用例 これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載内容は、第2の2(2)に示したとおりである。 3 対比・検討 本件発明は、第2の2で検討した補正発明から、複数のパンチ及び複数のカウンタの動作時の圧力について「個別に調整可能とした」という事項を削除したものである。 そうすると、本件発明を構成する事項の全てを含み、さらに他の事項を付加する補正発明が第2の2(4)エで示したとおり、引用例記載の発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明も同様の理由により当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび したがって、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、本件出願の請求項2及び請求項3に係る発明について検討するまでもなく、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2005-02-21 |
結審通知日 | 2005-02-23 |
審決日 | 2005-03-08 |
出願番号 | 特願2000-44189(P2000-44189) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(B21D)
P 1 8・ 121- Z (B21D) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 鈴木 敏史 |
特許庁審判長 |
西川 恵雄 |
特許庁審判官 |
林 茂樹 鈴木 孝幸 |
発明の名称 | 圧力調整型プレス機 |
代理人 | 竹中 一宣 |
代理人 | 竹中 一宣 |