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審決分類 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 B30B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B30B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B30B
管理番号 1115601
審判番号 不服2002-14995  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1997-05-13 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2002-08-08 
確定日 2005-04-21 
事件の表示 平成7年特許願第315720号「廃車の圧縮固化装置」拒絶査定不服審判事件〔平成9年5月13日出願公開、特開平9-122986〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本件出願は、平成7年10月26日の特許出願であって、同13年11月15日付けで拒絶の理由が通知され、その指定期間内の同14年1月16日に意見書と共に明細書について手続補正書が提出されたが、同年7月5日付けで拒絶をすべき旨の査定がされ、同年8月8日に本件審判の請求がされ、その後、同年8月27日に明細書について再度手続補正書が提出されたものである。

第2 平成14年8月27日付けの、明細書についての補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容の概要
本件補正は、特許請求の範囲を含む明細書全体について補正するものであって、特許請求の範囲の請求項1について補正前後の記載を補正箇所に下線を付して示すと以下のとおりである。
(1)補正前の請求項1
「メインシリンダーにより圧縮工程と排出工程を行うように構成した廃車等の圧縮固化装置において、ゲートの前方、即ち押さえ蓋が閉じた状態で押さえ蓋とゲートの間の位置に装置本体に予圧フレームを架設して形成した予圧室を設け、上記メインシリンダーにより作動される押し箱を設けたことを特徴とする廃車等の圧縮固化装置。」
(2)補正後の請求項1
「メインシリンダーにより圧縮工程と排出工程を行うように構成した廃車の圧縮固化装置において、ゲートの前方、即ち押さえ蓋が閉じた状態で押さえ蓋とゲートの間の位置に装置本体に予圧フレームを架設して形成した予圧室を設け、上記予圧フレームの厚さを上記予圧室の高さと同等とし、上記押さえ蓋に蓋ストッパーを設け、上記メインシリンダーにより作動される押し箱を設けたことを特徴とする廃車の圧縮固化装置。」
2 補正の適否
先ず、本件補正が本件出願の願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、当該明細書を「当初明細書」と、当該図面を「当初図面」といい、両者を併せて「当初明細書等」という。)に記載した事項の範囲内においてなされたものであるか否かについて、すなわち、いわゆる新規事項の存否について検討する。
次いで、本件補正のうち特許請求の範囲についての補正は、圧縮固化される対象物を「廃車等」から「廃車」に限定すると共に、「予圧フレーム」についてその厚さを予圧室の高さと同等とすること、また、「押さえ蓋」について蓋ストッパーを設けることを限定するするものであり、特許請求の範囲の減縮を目的とすることが明らかであるので、新規事項の存否に関わらず、さらに、補正後の特許請求の範囲の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるか否かについて、すなわち、いわゆる独立特許要件の存否についても検討する。
(1)新規事項の存否について
本件補正では、上記したように「予圧フレーム」についてその厚さを予圧室の高さと同等とすることを限定している。
そこで、当初明細書を参照して「予圧フレーム」についての記載を摘記すると以下のとおりである。
ア 特許請求の範囲の請求項1
「・・・・、ゲートの前方、即ち押さえ蓋が閉じた状態で押さえ蓋とゲートの間の位置に装置本体に予圧フレームを架設して形成した予圧室を設けて圧縮時に押さえ蓋にかかる圧縮反力を軽減せしめるべく構成する・・・・・。」
イ 発明の詳細な説明の段落【0004】
「【実施例】・・・。前記予圧室3はゲート8の前方、即ち押さえ蓋4が閉じた状態で押さえ蓋4とゲート8の間の位置に装置本体1にフレーム3aを架設しており、メインシリンダー7が作動して押し箱6により圧縮物をゲート8側へ圧縮した時点において押さえ蓋4の非枢着部側にかかる圧縮反力を軽減すべく構成している。・・・・。」
ウ 同段落【0005】
「【発明の効果】・・・・、ゲート8の前方、即ち押さえ蓋4が閉じた状態で押さえ蓋4とゲート8の間の位置に装置本体1に予圧フレーム3aを架設して形成した予圧室3を設けて圧縮時に押さえ蓋4にかかる圧縮反力を軽減せしめるべく構成する・・・・・。」
このように、当初明細書中の「予圧フレーム」についての記載は、三箇所だけであり、そこには予圧フレームの厚さを予圧室の高さと同等とすることについて何等記載されておらず示唆もされていない。
次に、当初図面を参照すると、図3〜図8には、予圧フレーム3a及び与圧室3が記載されており、当該図3〜図8では、予圧フレーム3aの厚さと与圧室の高さとが同程度に示されている。
しかしながら、図面は、明細書中の記載内容を理解する上で必要な程度のもので足り、設計図面のように厳密なものを要しないことを考慮すると、上記図面は、予圧フレーム3aは、与圧室3の上部に配置されるとの位置関係を模式的に示すものに過ぎず、予圧フレーム3aの厚さに関しては、ある程度の厚さであるということができるものの、上記図面の記載から、予圧フレーム3aの厚さが予圧室の高さと同等であるとは到底いえない。
また、予圧フレームの厚さを予圧室の高さと同等とすることを、特許を受けようとする発明を特定するために必要と認める事項とするのであるならば、当然当初明細書中に明記されていてしかるべきであり、明記されていないまでも少なくとも示唆されている必要があるところ、上記したように当初明細書中には当該事項について何等の記載も示唆もない。
してみると、上記補正は、当初明細書等に記載された事項ではなく、また、当初明細書等の記載から自明な事項であるともいえない。
したがって、本件補正が当初明細書等に記載した事項の範囲内においてなされたものであるとすることはできない。
(2)独立特許要件について
ア 補正発明
補正発明は、本件補正により全文補正された明細書及び当初図面の記載からみて、1(2)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの「廃車の圧縮固化装置」であると認める。
イ 引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用され本件出願前に日本国内において頒布された刊行物である実願昭63-39891号(実開平1-143697号)のマイクロフィルム(以下「引用例」という。)には、「空缶プレス装置」に関連して以下の事項が記載されている。
(ア)第6頁第17行〜20行
「第1図に示すように、空缶プレス装置1は空缶を素材によって選別する選別機構2と、この選別機構2の斜め下に位置し、空缶をプレスするプレス機構3とで構成している。」
(イ)第8頁第2行〜第9頁第19行
「前述のプレス機構3は、第3図に示すように、平面長方形状をなす選別機構2の長手方向の側面に開口した鉄缶放出路7の末端放出口の下に位置し、上面に方形状の開口部12を有し、この開口部12に開閉可能な蓋体13を、前述放出口に対し垂直な部分のベルトコンベヤ5の搬送逆方向側に枢着した角柱状のプレス室14と、このプレス14内を前述ホッパ4の長手方向を水平に往復運動する押圧板15と、押圧板15の圧縮運動方向に押圧板15に対向して、上下方向に開閉するよう装着した受圧板16とで構成している。
前述のプレス室14は、鉄缶放出路7と同幅の圧縮部17と、これより押圧板15の圧縮運動方向の圧伏部18とで形成しており、空缶をプレスする場合押圧板15は、およそ圧縮部17内を作動し、圧伏部18では、プレス処理の最終状態となる。また、圧伏部18の底部19は、圧縮部17の底部を水平に形成したのに対し、外方へ向かって下方へ傾斜形成している。
プレス室14の開口部12を開閉する蓋体13は、蓋体13の上面に一端を連結した第一油圧シリンダ21の操作によって開閉する。また、この蓋体13を閉じるときは、前述の方形状の開口部12の口縁に形成したL字状のガード20に装着した光電検知装置(図示省略)により、空缶が一杯になったことを確認されたのち、この光電検知装置に連動する第一油圧シリンダ21が自動的に作動し、蓋体13を閉じる。
また、前述のプレス室14内の押圧板15は、この空缶プレス装置1を載置するトラックのエンジンからプイベルト、プーリと連動作動する第二油圧シリンダ22による作動機構によってプレス室14内を往復運動する。
この押圧板15の圧縮運動方向末端に装着した受圧板16は、両側にこの受圧板16の厚みに嵌合対応する凹条を有した断面凹字型の支持ガイド23,23により支持され、第三油圧シリンダ24,24によって上下方向に開閉する。」
(ウ)第11頁第3行〜第12頁第2行
「鉄缶放出路7は、プレス室14上面の開口部12の上方に末端放出口を開口しており、鉄缶放出路7より放出されたブリキ缶は、プレス室14内へ蓄積されていく。順次蓄積され、空缶がプレス室14内に一杯になると、ガード20に装着した光電検知装置が作動し、第一油圧シリンダ21を作動させ、蓄積した空缶を上から押え込むように蓋体13を閉じる。
そして、エンジンと連動した第二油圧シリンダ22が作動し、押圧板15がプレス室14内を受圧板16の方向へ作動し、プレス室14内の空缶のプレス処理を行なう。
完全にプレスした後、空缶を押圧している押圧板15を約10mm後退させ、前方の受圧板16を第三油圧シリンダ24を作動させて上方へ開放し、再び押圧板15を圧縮運動方向へ作動し、プレス処理した空缶を押出す。すると、この押圧板15の再度の押出しと、外方側を低く形成した圧伏部18の底部19とによって、プレス処理された空缶は、外側へ傾倒し放出される。」
(エ)第1図及び第3図
受圧板16の前方の圧伏部18には、蓋体13が閉じた状態で当該蓋体13と受圧板16との間の位置に装置本体に架設された天井部が設けられていること。
これらの事項を補正発明に照らして整理すると、引用例には以下の発明が記載されていると認める。
「第二油圧シリンダ22により圧縮工程と排出工程を行うように構成した空缶プレス装置において、受圧板16の前方、即ち蓋体13が閉じた状態で蓋体13と受圧板16の間の位置に装置本体に天井部を架設して形成した圧伏部18を設け、上記第二油圧シリンダ22により作動される押圧板15を設けた空缶プレス装置。」
ウ 対比
補正発明と引用例記載の発明とを対比すると、引用例記載の発明の「第二油圧シリンダ22」が補正発明の「メインシリンダー」に相当し、以下同様に「受圧板16」が「ゲート」に、「蓋体13」が「押さえ蓋」に、「圧伏部18」が「予圧室」に相当する。
そして、引用例記載の発明の予圧室の「天井部」は、押さえ蓋が閉じた状態で押さえ蓋とゲートの間の位置に装置本体に架設されているという限りで、補正発明と同様「予圧フレーム」ということができるものである。
また、引用例記載の発明の「空缶」は、圧縮固化される物品、すなわち、被圧縮固化物であるという限りで、同じく「押圧板15」は、押圧部材であるという限りで、それぞれ補正発明の「廃車」及び「押し箱」と共通している。
さらに、引用例記載の発明は「プレス装置」として表現されているが補正発明と同様「圧縮固化装置」としても表現できるものである。
したがって、補正発明と引用例記載の発明とは、次の点で一致しているということができる。
メインシリンダーにより圧縮工程と排出工程を行うように構成した被圧縮固化物の圧縮固化装置において、ゲートの前方、即ち押さえ蓋が閉じた状態で押さえ蓋とゲートの間の位置に装置本体に予圧フレームを架設して形成した予圧室を設け、上記メインシリンダーにより作動される押圧部材を設けた被圧縮固化物の圧縮固化装置、である点。
そして、補正発明と引用例記載の発明とは、以下の4点で相違している。
(ア)相違点1
被圧縮固化物が、補正発明では、廃車であるのに対して、引用例記載の発明では、空缶である点。
(イ)相違点2
補正発明では、予圧フレームの厚さを予圧室の高さと同等としているのに対して、引用例記載の発明では、そのようになっていない点。
(ウ)相違点3
補正発明では、押さえ蓋に蓋ストッパーを設けているのに対して、引用例記載の発明では、そのようになっていない点。
(エ)相違点4
押圧部材が、補正発明では、押し箱であるのに対して、引用例記載の発明では、押圧板である点。
エ 相違点の検討
(ア)相違点1について
廃車を圧縮固化することは、特に例示するまでもなく従来から広く行われているところであり、圧縮固化される対象となる物品を廃車とすることに格別の困難性はない。
(イ)相違点2について
圧縮固化装置に限らず、機械装置の設計一般において、機械装置各部の厚さをどの程度とするかは、当該各部に及ぼされる力によって部材が塑性変形したり、破断したりしないように、その力の大きさに応じて適宜決定すればよい事項である。そして、本願明細書の記載を精査しても、補正発明が「予圧フレームの厚さを予圧室の高さと同等としている」ことに格別の技術的意義を認め得ない。
そうしてみると、圧縮固化装置において、予圧フレームの厚さをどの程度とするかも被圧縮固化物を圧縮固化するのに要する力の大きさに応じて適宜決定すればよい単なる設計的事項にすぎず、補正発明において、予圧フレームの厚さを予圧室の高さと同等とすることに格別の困難性はない。
(ウ)相違点3について
機械装置において、運動を制限するためにストッパーを設けることは、必要に応じて適宜行われている常套の技術手段であり、補正発明において、押さえ蓋に蓋ストッパーを設けることにも格別の困難性はない。
(エ)相違点4について
廃車の圧縮固化装置において、メインシリンダーにより作動される押圧部材を押し箱とすることは、例えば、原査定の際に周知例として挙げられた特開昭53-67968号公報に示されているように従来周知であり、この周知の事項を引用例記載の発明に適用して補正発明のように構成することにも格別の困難性はない。
(オ)補正発明の効果について
補正発明によってもたらされる効果も、引用例記載の発明及び上記従来周知の事項から当業者であれば予測できる程度のものであって格別のものではない。
(カ)したがって、補正発明は、引用例記載の発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
3 むすび
以上のとおり、本件補正は、平成15年法律第47号による改正前の特許法17条の2第3項の規定に違反すると共に同条第5項において準用する同法第126条第4項の規定に違反するので、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第3 本件発明について
1 本件発明
平成14年8月27日付けの補正は、上記のとおり却下されたので、本件出願の請求項1に係る発明(以下「本件発明」という。)は、平成14年1月16日付手続補正書により補正された明細書及び当初図面の記載からみて、第2の1(1)に示す特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりの「廃車等の圧縮固化装置」であると認める。
2 引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載内容は、第2の2(2)イに示したとおりである。
3 対比・検討
本件発明は、第2の2(2)で検討した補正発明から「予圧フレーム」についてその厚さを予圧室の高さと同等とすること、また、「押さえ蓋」について蓋ストッパーを設けることを削除すると共に、圧縮固化される対象物を「廃車」から「廃車等」に拡張するものである。
そうすると、本件発明を構成する事項の全てを含み、さらに他の事項を付加乃至限定する補正発明が第2の2(2)エ(カ)で示したとおり、引用例記載の発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本件発明も、同様の理由により、引用例記載の発明及び従来周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。
4 むすび
したがって、本件発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2005-02-17 
結審通知日 2005-02-22 
審決日 2005-03-07 
出願番号 特願平7-315720
審決分類 P 1 8・ 121- Z (B30B)
P 1 8・ 561- Z (B30B)
P 1 8・ 575- Z (B30B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 充  
特許庁審判長 西川 恵雄
特許庁審判官 菅澤 洋二
林 茂樹
発明の名称 廃車の圧縮固化装置  
代理人 和泉 良彦  
代理人 和泉 良彦  

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