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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J
審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B41J
管理番号 1115708
審判番号 審判1999-18319  
総通号数 66 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 1999-03-02 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 1999-11-15 
確定日 2005-04-05 
事件の表示 平成10年特許願第124823号「画像形成装置におけるカラーレジストレーション調整方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 3月 2日出願公開、特開平11- 58830〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願の出願からの主だった経緯を箇条書きすると次のとおりである。
・平成10年5月7日 本願出願(パリ条約による優先権主張 大韓民国 1997年 8月1日)
・平成11年8月5日付け拒絶査定
・平成11年11月15日 本件審判請求
・平成16年3月15日付けで当審にて拒絶理由を通知
・同年6月25日 意見書及び手続補正書(以下「第1補正」という。)提出
・同年7月5日付けで当審にて最後の拒絶理由を通知(平成14年改正前特許法17条の2第1項2号にいう「拒絶理由通知を受けた後更に拒絶理由通知」に該当)
・同年10月13日 意見書及び手続補正書(以下「第2補正」という。)提出

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成16年10月13日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正事項
第2補正は、「Y,M,C及びK色相毎に異なる感光ベルト上の領域」を「視覚的に色相を発現させるように配置されたY,M,C及びK色相毎に異なる感光ベルト上の領域」と補正する(これ以外の補正はない。)ものであり、これは特許請求の範囲の減縮(特許法17条の2第4項2号該当)を目的とするものと認める。

2.第2補正後の請求項1に係る発明の独立特許要件の判断
「視覚的に色相を発現させるように配置されたY,M,C及びK色相毎に異なる感光ベルト上の領域」が何を意味するのか、請求項1の記載からは明らかでなく、発明の詳細な説明には同文言の記載も、それに関する説明もない。
請求人は「基本的に、色相を発現する類型として、配列形と重畳形が挙げられます。配列形の場合は、Y,M,C及びK色相毎に相異なる感光ベルト上の領域が存在します。・・・配列形の場合は、・・・記録媒体への転写も1回行えばよいことになります。」(平成16年10月13日付け意見書25〜30行)と主張しており、この主張、特に転写が1回である旨の主張を勘案すると、Y,M,C及びK色の像を、感光ベルト上の肉眼では識別できない程度に近接した異なる位置に形成するとの趣旨に解する(この解釈を、以下「第1解釈」という。)ことが一応は可能である。ただし、第1解釈の場合、Y,M,C及びKそれぞれの画像は連続した領域に形成されるのではなく、Yを例にとれば、1つのY画素と隣接するY画素間に他色画素が存在することになるが、このようにY画素が形成されるとびとびの部分を「領域」と称することは、日本語の用法として甚だ不自然である。
他方、第2補正後の【請求項1】記載の「Y,M,C及びK色相毎に異なる感光ベルト上の領域に各色相毎の露光,現像,乾燥を行い、前記感光ベルト上に現像された画像を記録媒体に転写する処理」との事項を検討するならば、第1解釈以外にも、感光ベルトに沿ってY,M,C及びK色相毎の領域が連続領域として割り当てられており、その割り当てられた領域に対して各色相毎の露光,現像,乾燥を行うとの解釈(以下「第2解釈」という。)も可能である。第2解釈の場合、記録媒体には4回転写することになる。そして、「視覚的に色相を発現させるように配置された」とは、4回の転写の際に記録媒体の同一位置に転写されるように、Y,M,C及びK色相毎に異なる感光ベルト上の連続領域が配置され、転写後「視覚的に色相を発現させる」として理解することが可能である。
したがって、「視覚的に色相を発現させるように配置されたY,M,C及びK色相毎に異なる感光ベルト上の領域」については、第1解釈及び第2解釈が可能であるから、同記載は明確でないというよりない。百歩譲って、同文言を一義的に解することが可能であるとしても、同文言に関する記載は発明の詳細な説明に一切ないのであるから、請求項1に係る発明(及びこれを引用する請求項2〜4に係る発明)が発明の詳細な説明に記載されていないことは明らかである。
すなわち、第2補正後の明細書は、請求項1の記載が特許法36条6項1号及び2号に規定する要件を満たしておらず、発明の詳細な説明は請求項1(及びこれを引用する請求項2〜4)に係る発明を実施可能な程度に記載したものとはいえないから、平成14年改正前特許法36条4項に規定する要件を満たしていない。
したがって、第2補正後の請求項1(及びこれを引用する請求項2〜4)に係る発明は特許出願の際独立して特許を受けることができないから、第2補正は平成15年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条4項の規定に違反している。

3.新規事項
第2補正後の【請求項1】記載の「視覚的に色相を発現させるように配置されたY,M,C及びK色相毎に異なる感光ベルト上の領域に各色相毎の露光,現像,乾燥を行い、前記感光ベルト上に現像された画像を記録媒体に転写する処理」(以下「第2補正事項」という。)の意味は明確でないだけでなく、願書に最初に添付した明細書・図面(以下「当初明細書等」という。)には記載されていないし、自明な事項でもない。その理由は次のとおりである。
2.で述べた第1解釈に従う場合、Y,M,C及びK色の像を、感光ベルト上の肉眼では識別できない程度に近接した異なる位置に形成することは当初明細書等に記載されていないし、自明な事項でもない。
第1解釈において、肉眼では識別できない程度に近接したY,M,C及びK色の像がどのように配されるか、主走査方向に配される場合(以下「第1の場合」という。)と、主走査方向に配されない(副走査方向のみに配される)場合(以下「第2の場合」という。)とが考えられる。ところで、本願の明細書には出願当初から一貫して、「主走査方向(感光ベルトの進行方向に対して横方向)解像度が600dpiであれば、ベルトエッジ検出器の装着(配置)正確度が最小限1/600インチ以内でなければならない。さらにミスカラーレジストレーションの量が1/5画素以内にしたい場合はY、M、C、K各ベルトエッジ検出器201、202、203、204の一直線上への配置(装着)正確度は1/(5×600)inch以内にすべきである。」(段落【0005】)と記載がある。第1の場合、1/600インチ以内の正確度であれば、本来主走査方向の異なる位置に配すべきY,M,C及びK色の像が、異なる位置に配されなくなってしまう。第2の場合、副走査方向の解像度は明らかでないものの、異なる色相の像は1/600インチと遜色ない程度の距離離隔していると推測できる。そうであれば、主走査方向のミスカラーレジストレーションの量を1/5画素以内(1/(5×600)inch以内)とすることには、さほどの技術的意義がないことになる。換言すれば、上記段落【0005】の記載は、Y,M,C及びK色の像を記録媒体上の多少のずれは許容するものの原則同一位置に形成すると解してこそ合理的に理解できるものであって、第1,第2いずれの配置形態であっても、第1解釈と当初明細書等の段落【0005】の記載には齟齬があるといわざるを得ない。そうである以上、第1解釈による第2補正事項は、当初明細書等に記載されていないばかりか、それとは反する事項というべきである。
さらに、第2補正事項によると、Y,M,C及びK色相毎に異なる感光ベルト上の領域に各色相毎の露光,現像がされるだけでなく、これら色相毎の乾燥が行われる。ところで、当初明細書等には乾燥装置を1つだけ有するものしか記載されていない。そうすると、当初明細書等に、Y,M,C及びK色の像を、感光ベルト上の肉眼では識別できない程度に近接した異なる位置に形成することが記載されていると仮にしても、露光・現像ユニットはY,M,C及びK色相毎に設けられている以上、ある色相について乾燥まで行った後に別の色相の露光・現像を行うと解することは不自然である。すなわち、Y,M,C及びK色の像を、感光ベルト上の肉眼では識別できない程度に近接した異なる位置に形成するのであれば、Y,M,C及びKすべての色相の乾燥を一括して行うと理解するのが自然であり、色相毎の乾燥を行うことまでは記載されていない。

2.で述べた第2解釈に従う場合、第2補正事項が当初明細書等に記載されていない理由は次のとおりである。当初明細書等には「転写ローラ116tと密着して相対的な回転運動をすることによって転写ローラ116tで転写された画像を記録用紙117に定着させる定着ローラ116pとよりなる。」(段落【0004】)との記載があり、【図1】には記録用紙117が転写ローラ116tと定着ローラ116p間を直進するように図示されている。記録用紙に4回転写するためには、密着した転写ローラ116t・定着ローラ116p間を何度も往復しなければならないが、そのためには転写ローラ116t・定着ローラ116pが逆回転しなければならない。そのようなことはどこにも記載はないし、不自然である。さらに、当初明細書等には「感光ベルト104のエッジが一直線でなく、屈曲を形成している場合、レーザービーム走査において誤差を発生させる。」(段落【0007】)と記載があるところ、感光ベルトのエッジが屈曲しており、かつ感光ベルトに沿った異なる連続領域にY,M,C及びK色相毎の露光を行うのであれば、感光ベルトの屈曲を反映してエッジからの距離がY,M,C及びKの各露光部毎に異なる位置に露光しなければならない。ところが、当初明細書等には一貫して、感光ベルトのエッジから所定の位置に露光することしか記載されていない。

請求人は、「配列形の場合、本願発明の図1の構成より、四つの色相(Y,M,C及びK)のそれぞれに該当する画像領域が視覚的に色相を発現させるように配置されていることは、当業者であれば当初明細書等の記載から自明または想到できる範囲内と考えます。」(平成16年10月13日付け意見書34〜36行)と主張するが、当初明細書等の【図1】からは、「Y,M,C及びK色相毎に設けられた露光装置及び現像装置」が感光ベルトに沿って並んでいることが読み取れるだけであって、このことから直ちに請求人の上記主張が導かれるわけではない。例えば特開昭60-70872号公報第1図には、感光ベルトと感光ドラムの相違、及びK色の露光・現像ヘッドが存在しない等の相違はあるものの、当初明細書等の【図1】同様に、Y,M,Cの露光・現像ヘッドが感光ドラムに沿って並んだ様子が図示されており、さらに同文献には「帯電器2により表面を一様に帯電させ、・・・潜像を所定位置に形成する。この潜像はC(シアン)色に現像を行うためのものである。その後、この潜像を現像機8によりC色に現像する。次に帯電器3による帯電処理を行った後、・・・潜像を所定位置に形成する。この潜像はM(マジエンタ)色に現像を行うためのものである。その後、この潜像を現像機9によりM色に現像する。次に帯電器4による帯電処理を行った後、・・・潜像を所定位置に形成する。この潜像はY(イエロー)色に現像を行うためのものである。その後、この潜像を現像機10によりY色に現像する。次に、これらの像を転写部11で用紙20に転写し」(1頁右下欄6行〜2頁左上欄1行)及び「複数回現像を行うカラー電子写真装置においては、現像済のトナーを他の色の現像機内に混入させないために非接触方式の現像機が必要である」(2頁左上欄6〜9行)との各記載があるところ、これらの記載はY,M,Cの露光・現像を感光体の同一領域に行うとしてこそ合理的に理解できるものである。そうであれば、本願の当初明細書等の【図1】からも、Y,M,C,Kの露光・現像を感光ベルトの同一領域に行うと理解することが自然である。

以上のとおり、第2補正事項をどのように解釈したとしても、第2補正事項は当初明細書等に記載されておらず、それから自明の事項でもないから、第2補正は平成14年改正前特許法17条の2第3項の規定に違反している。

[補正の却下の決定のむすび]
以上のとおりであるから、第2補正は平成14年改正前特許法159条1項で準用する同法53条1項の規定により却下されなければならない。
よって、補正の却下の結論のとおり決定する。

第3 本件審判請求についての当審の判断
第2補正は却下されたから、第1補正により補正された明細書に基づいて審理する。当審における平成16年7月5日付け拒絶理由は、第1補正後の【請求項1】記載の「Y,M,C及びK色相毎に異なる感光ベルト上の領域に各色相毎の露光,現像,乾燥を行い、前記感光ベルト上に現像された画像を記録媒体に転写する処理」(以下「第1補正事項」という。)が新規事項であるというものである。
第1補正事項についても、第2補正事項同様第1解釈及び第2解釈が可能であるが、第1補正事項には「視覚的に色相を発現させるように配置された」との文言がないから、第2解釈がより妥当である。
しかし、第2解釈による第1補正事項が当初明細書等に記載されておらず、自明でないことは「第2[理由]3」で述べたとおりである。第1補正事項を第1解釈に従って解釈することが可能であるとしても、同解釈に従った第1補正事項が当初明細書等に記載されておらず、自明でないことも「第2[理由]3」で述べたとおりである。
したがって、第1補正事項は当初明細書等に記載された事項でも、それから自明な事項でもないから、第1補正は特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていない。

第4 むすび
第2補正は却下されなければならず、第1補正は特許法17条の2第3項に規定する要件を満たしていないから、その余の要件について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2004-10-26 
結審通知日 2004-11-02 
審決日 2004-11-16 
出願番号 特願平10-124823
審決分類 P 1 8・ 561- WZ (B41J)
P 1 8・ 55- WZ (B41J)
P 1 8・ 575- WZ (B41J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 芝 哲央菅藤 政明  
特許庁審判長 小沢 和英
特許庁審判官 番場 得造
津田 俊明
発明の名称 画像形成装置におけるカラーレジストレーション調整方法  
代理人 伊東 忠彦  

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